2024年7月7日執行の東京都知事選挙では、前安芸高田市長の石丸伸二さんが「小池百合子VS蓮舫」の(日本の女性政治家だけでなく現代の東京を代表する政治家)いわば「横綱対決」に割って入り、台風の目となっています。

◆期待していた人も「東京へ行くのは残念」、コミュニケーション不足指摘の声も多く

さて、この石丸伸二さん。地元・安芸高田市を含む広島都市圏での評判はどうなのでしょうか? 筆者は、安芸高田市内に本社を置く病院や高齢者施設を運営する企業に2011年から3年間、勤務したことがある「元在勤者」です。また、石丸氏の出身高校の地元である地域を政治活動上の地盤としています。そうした人的ネットワークを活かし、電話や対面、SNSメッセージなどで取材を行いました。

正直、ポジティブな意見は、安芸高田市を含む広島3区では、リアルでもあまり、うかがわないのです。ただ、若手の市役所職員や教員の間には、石丸さんを惜しむ声もあったそうです。

他方で、安芸高田市から少し離れた呉市とか、県東部では、石丸さんに期待する声も結構あります。

ただ、石丸さんに期待している人でも、

「もっと安芸高田市で頑張ってくれたらいいのに。」

「広島県内で頑張ればいいのに、東京なんか行って何を考えているのだ?」

というご意見が多くなっています。

また、

「石丸さんはお勉強ができるけれども、地元の人たちは振り回されるだけだったのではないか?」(安芸高田市出身、広島市在住の70代男性)

「最後まで、地元の人とすれ違いになってしまったのではないか?」(石丸さんの出身高校近くで店を開く60代女性)

など、石丸さんのコミュニケーション不足を指摘する声も多く上がっています。

◆台風時にトライアスロン参加を優先し、安芸高田市を不在にしていた市長 ── 地道に頑張っている「同年代」から「嫌いになった」の声も

一方で、石丸さんに対して批判的な声も多くあります。一つは、安芸高田市内で農業を営み、消防団の元分団長もされた40代男性の声です。石丸さんとは同年代。故郷(ふるさと)のために地道に頑張っておられる方です。

2022年9月、西日本に台風14号が接近しました。この時、石丸市長(当時)は千葉県へトライアスロン競技に参加するために安芸高田市を不在にしていたのです。そのことを後に議会でとがめられると、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」と開き直られたのが石丸さんです。

この元分団長は、以下のように発言されています。
 

「みなさんのお住いの行政組織図(機構図)を見ていただくとわかるように、消防本部の上をたどると市長がトップになっていると思います。

市長は消防機関の長を通じて指揮監督を行う立場にあるのです。これにはもちろん消防団も含まれます。

災害出動、それも「過去に例がないほどの大型台風」ともなれば最悪人命に関わることは簡単に想像できるでしょう。

市民の命と財産を守るためとはいえ、消防職団員にも命の危険がある災害出動を命令しなければならない立場というのは私には想像もつきません。

そんな立場にある人間が、ただただ詰問された議員に反省の弁もなく、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」

信じられない発言です。前もって指示をだしているから大丈夫?あなたは市民の命を財産を守る立場にいるのではないですか?人の命の重さを全く感じさせない言動は吐き気を催します。

大規模災害が想定される場合、消防団員は防災センターに詰めて出動命令を待つこともあるでしょう。

消防団員は非常勤特別職の地方公務員とされていますが、普通にサラリーマンだったり、農家だったり鳶職人だったりします。分団長は階級があるとはいえ、分団員に出動命令(お願い)する立場です。

そんな人たちに災害対応させておいて、自分はプライベートでトライアスロン? まったく、全然理解できません。万が一、そんな時に自分の所属する分団員が災害対応によって落命したとしたら、絶対に、絶対に納得できません。許せません。」

 

安芸高田市に隣接する広島市北部の安佐南区沼田町吉山。台風14号で大きな被害が出た(2023年5月筆者撮影)

◎[引用元]「私は、こうして石丸伸二さんを嫌いになりました。」(seijiさんの2024年6月23日付note) 

まったくそのとおりです。消防団員は非常勤特別職の地方公務員ですが、いわば雀の涙の報酬でやっているボランティアです。確かに、トップが不在だったら機能しない行政機構はまずい。しかし、一方で、では、トップが台風接近中だというのに、行き先も告げずに自治体を不在にするのもいかがなものか?
 
この台風14号では、安芸高田市に隣接する広島市北部でも大きな被害が出ています。この地区ではがけ崩れ寸前になっているような場所もあったのです。ただ、幸い、死傷者がでるようなことがなかったのが不幸中の幸いでした。

また、同じく当時広島県北部の建設会社の支社に勤務していた男性によると、

「あの時の安芸高田市高宮エリアに現場があったが、道が刳れるような被害だったし、現場詰め所が流されるところだった。

自分は免除だったけど上の人は非常呼集されたぐらいだ。だから、(石丸さんのことは)最初から信用していない。」

と証言しています。


◎[参考動画]最高傑作!石丸市長 10手先を読む戦略がトライアスロン(取材不足 2024年6月1日)

◆市議会・新聞批判に県議批判まで 広報「あきたかた」の異常

安芸高田市民の60代の女性は安芸高田市の広報「あきたかた」が異常だ、と呆れておられます。

実際に拝見してみると、異常さが分かります。市議会や地元新聞と石丸市長が対立しているのは筆者ら市外の人間もよくわかっています。わかっていますが、わざわざ、税金を使った市の広報紙で地元新聞を名指しで批判するのはいかがなものか?
 
さらに、石丸市長は市民に県政について伝える、と称して、地元選出の玉重県議にインタビューを申し入れ、断られたそうです。そこで、この広報紙には、

「一方で、県議は市長選への立候補を表明した人物を紹介して回っているという情報が届きました。自身の政治活動を優先し、市民への説明責任を劣後させる状況となっています。」

と県議を批判しています。

安芸高田市の広報「あきたかた」の誌面

しかし、県政について伝えるのは、県議自らが、議会報告なり、ご自身の街頭演説なり、すればいいことです。県議の仕事が足りない、有権者が判断すれば、次の選挙でその県議を有権者が打倒すれば良いだけのことです。

行政の広報紙で特定の県議などを批判するのは、おかしい。石丸氏は、「政治屋を一掃する」と言っておられますが、行政とご自身の政治活動を混同する政治屋はご自身ではないのか? 反省していただきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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