〈Ⅲ〉「脱炭素」を名目に原発再稼働
これまでみたように「脱炭素」の切札として主力電源化を目指す太陽光発電など再エネ発電は不安定(水力発電などは除く)であり、火力発電の補完が必要で低効率な電力である。
そのため政府や電力会社は「脱炭素」を名目に原発の活用を急ぐ。太陽光など再エネ発電に比べて安定的に電力を供給できるためである。第6次基本計画でも原発は現在総発電量の6%(2019年)を占めるにすぎないのに、これを20~22%と3倍強増やす現行目標を維持している。
◆原発廃絶こそ最も緊急を要する課題
しかし私たちは2011年、福島原発事故を経験した。事故が起きれば周辺の住民は故郷を追われる。使用済み核燃料の処分方法も決まっていない。そして地震列島・日本では次の原発事故が迫っている。原発の即時廃絶こそが最も緊急を要する課題である。しかし原発廃絶の大きな壁になっているのが「脱炭素」である。
前述の通り、野党を含めて「脱炭素」が「挙国一致」の目標となっている。共産党などは老朽火力発電廃絶とともに「原発ゼロ」を掲げ、再エネ発電推進を訴えるが、「脱炭素」のためには未熟で不安定な再エネ発電を補うために原発再稼働や新増設が必要と唱える政府や電力会社の主張を許してしまう。
◆「脱炭素」を名目に補助金
また、原発の経済性が悪化している点を指摘しても「脱炭素」がその根拠を崩してしまう。例えば、大島堅1龍谷大学教授は「安全対策により原子力発電の経済性は悪化し、競争力を失っている」として「国家による原発延命策は許されない」とする(「原発の本当のコストを評価する」『世界』2019年7月号」)。
4月27日、杉本達治福井県知事は高浜・美浜の老朽原発について再稼働を認めた。その背景は政府が4月6日「脱炭素」を名目に40年超原発1基当たり最大215億円を交付することを決定したことである(2021年4月28日付け毎日新聞)。
原発は経済性が失われたても「脱炭素」を口実にした補助金により再稼働や新増設が続く。「CO2説」やそれによる「気候危機」を否定しない限り、再エネ発電とともに原発が必要という政府の主張や補助金による延命策を止められない。
〈Ⅳ〉原発廃絶・縮小社会の実現を
第6次エネルギー基本計画は「2030年度CO2 46%削減」のため、再エネ発電を現在の約2倍、原発を現在の約3倍に発電量を増大しようというものである。
しかし「CO2説」は科学的根拠が曖昧で、「気候危機」はデータの裏付けに乏しい。そして何よりも問題なのはこのような科学的根拠に乏しい「CO2説」に基づいて原発や再エネ発電(主に太陽光や風力)を著しく増やそうという点である。
特に原発は一旦事故を起こしたら取り返しがつかない。地震列島・日本では次の原発事故が迫っている。即時廃止が差し迫った課題である。にもかかわらず、「脱炭素」を名目に政府は再稼働を進める。また、再エネ発電は「自然エネルギー発電」ともいうが、実際には「自然破壊エネルギー」である。その上、不安定かつ非効率でCO2を減らせるかどうかも疑わしい。「脱炭素」を名目に原発や再エネ発電を増やしてはならない。
政府・経産省が「脱炭素」を名目に再エネ発電や原発再稼働を推進するのはデジタル化やEV(電気自動車)の普及に伴う電力需要をまかない、GDPを増大させるためである。「環境破壊」や「資源枯渇」を止めなければならないことに議論の余地はない。
しかし、そのためには再エネ発電や原発再稼働ではなく、電力に過度に依存する社会を見直し、天然ガス、石炭、石油などの使用を徐々に減らして経済成長をマイナスにするしかないのである。そのことは今後」人口減少の著しい日本では十分可能である。
本稿は『NO NUKES voice』(現・季節)30号(2021年12月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。文中での全国の原発に関する記述は、2021年当時の状況であること、あらかじめご了承ください。
◎「脱炭素」その狙いは原発再稼働 ──「第6次エネルギー基本計画」を問う
〈前編〉原因と結果を取り違えたCO2説
〈後編〉原発廃絶・縮小社会の実現を http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50965
▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住
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《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
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原子力規制委員会を責め続けて11年
原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会
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