基礎経済科学研究所・2024年度秋季研究大会が9月7日から8日、広島弁護士会館で開催されました。

7日、トップバッターとして元広島市長の平岡敬(たかし)さん(任1991-1999)に特別メッセージとしてご講演をいただきました。

 

平岡敬元広島市長(9月7日広島弁護士会館にて)

平岡さんは大阪市生まれで広島育ち。原爆投下時はソウルにおられました。中国新聞の記者から中国放送社長を務め、1991年の市長選挙では経済界や連合広島などに推されて、当時の広島市医師会長らを破って保守分裂の選挙を制し、初当選されました。

在任中は、広島アジア大会が開催され、そうした中で平和首都を目指すと宣言。米国での原爆展開催などに尽力されました。また1991年の平和宣言では、はじめて第二次世界大戦における日本の加害責任にも言及されました。

他方で、経済政策の面では、まさに平成不況の中で財政難にもがいた8年間でもありました。広島広域公園運動場に屋根をつけなかったためにワールドカップ2002の会場から漏れてしまったことは批判にさらされました。ただ、旧市民球場が老朽化して建て替えが必死だった中で、仕方がない面もありました。2期8年で勇退されたあとは、平和運動にまい進されています。今年97歳になられる現在もご活躍されています。

筆者は平岡さんの著書『希望のヒロシマ 市長は訴える』(岩波新書1996年)を大学時代に拝読し、感動。広島で政治家になる、最終的には広島市長か県知事か広島県選出の参院議員か、をめざすと決心した覚えがあります。

以下は平岡さんのお話しの概要です。

※               ※               ※

「広島が広島でなくなるのではないか?」という危機感を覚える。

先日、広島で開催された映画「オッペンハイマー」の試写会を見に行った。

元広島市長ということで、米国を含む海外メディアの取材を受けた。取材を受けた感想として、「まだ米国の人たちは後ろめたい思いがあったのではないか?」と思った。

一方で、米国政府は未だに原爆を正当化している。戦争を早く終わらせ、米軍兵士の命を救ったと今でも言っている。しかし、一方で後ろめたいのだ。

1945年、日本が敗戦すると、米軍は呉のイギリス軍とオーストラリア軍に広島市の占領も任せた。後ろめたかったのではないか? 米軍は表にでてこなかったのだ。

戦後、ずっと米国にとり広島は喉に刺さったトゲだったのだろう。そこで、なんとかヒロシマを封殺したいという米国政府の思いがあるのだ。広島の反核を封じ込めようという思いが顕著になったのだ。

2016年に当時のオバマ米国大統領が来広したあたりが、それが加速するきっかけになったのではないか?」米国内では、オバマが謝罪するのではないかと心配する声があった。そうした米国内の心配を打ち消すため日本政府はもちろん、松井一實広島市長も謝罪を求めなかった。

これは間違いだった。

生きている人がそんな事を言って良いのか。死者に対して傲慢ではないのか。

そして、広島で「死が空から降ってきた」とオバマが言ったときびっくりした。

自分は腹が立ったが多くの市民は黙って聞いていた。被爆者とオバマは抱き合った。世界は米国と広島は和解したと思ったのだ。

しかし、和解には色々条件がある。謝罪、補償、再発防止だ。(オバマ来広には)そのすべてがない。

その後も、日本政府は米国従属を強めた。特に党内基盤が弱い岸田総理はなりふり構わなかった。

安保三文書で日本の防衛政策は専守防衛から敵基地攻撃に変質した。

そして、米国は2027年にいわゆる台湾有事が起きる、と繰り返し煽っている。
戦争は突然起きるのではない、国家が起こすのだ。

広島市民は危機感が薄いと思う。危機感が薄くなる転機は2023年のG7広島サミットだ。

G7広島サミットでは、核抑止力肯定の広島ビジョンが出された。核の有用性を認めたサミットのビジョンに対して広島市民あまり怒らなかった。

日本政府や米国政府は広島市に圧力をかけていた。その結果、はだしのゲンや第五福竜丸が平和教育の教材から削除されてしまった。

また松井市長は米国が持ちかけてきた平和公園とパールハーバーとの姉妹協定を結んでしまった。

NHK朝ドラ「虎に翼」で取り上げられた原爆裁判では国際法違反判決が東京地裁で出た。いまの核兵器禁止条約のバックになっている。しかし、日本政府はその核兵器禁止条約に背を向けている。

いま、広島は(米国政府により)土俵際に追い込まれている。

やはり米国に謝罪させるのが核廃絶の一歩ではないか?

このままでは広島は寄り切られてしまう。広島に声援を!

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筆者としては平岡さんのお話は我が意を得たようなものです。ここ数年の広島の行政・政治の米国への忖度はあまりにも酷すぎます。それも、国政の与野党問わず。

「これでいいのか?! 広島の政治・広島の平和行政」

そう叫びたい。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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