立憲民主党代表選挙(9月23日)、そして自民党総裁選挙(9月27日)が終わりました。終わってみれば、立憲民主党は野田佳彦さん、そして自民党は石破茂さんと「旧新進党OB」が二大政党トップとなりました。
石破さんは、自民党では初の他政党所属経験のある首相になります。
◆1993-94年の政治改革でメジャーデビューした石破・高市・野田・枝野氏
野田さんが決選投票で破った枝野幸男さん、石破さんが破った高市早苗さんも含めて、1993年の「政治改革解散」で注目を浴びた「若手・新人」議員です。いずれも現行の小選挙区比例代表並立制を軸とした「政治改革」の元祖・小沢一郎さんが党首だった政党(新進党か旧民主党)に所属経験がある方です。
1993年の状況をおさらいすると、1980年代末から90年代初めの日本の政治を牛耳っていた金丸信(故人)らによる汚職事件が相次ぐ中で政治改革が叫ばれました。
こうした中で「政治に金がかかるのは中選挙区制のせいだ。また、これからは、政策論争中心の政治にしないといけない。そのためには政党本位の選挙制度にしないといけない」という理屈で小選挙区比例代表並立制を、という議論になりました。
さらに、政党交付金制度が導入され、並行して二大政党に所属していないと国会議員に当選するのはおろか立候補も難しい制度設計とされました。1993年6月に政治改革法案の不成立の責任を問うて野党が提出した内閣不信任案に小沢一郎さんやその側近だった石破さんも含む一部自民党議員も賛成し成立。衆院解散総選挙の結果、自民党が過半数を大きく割り込み、細川政権が成立。1994年に上記のような内容の政治改革法案が成立しました。
しかし、今回の二大政党の党首選挙を拝見すると、30年前に行われたこの政治改革自体が制度疲労をおこしているといわざるを得ません。
◆自民党内の多様性可視化される
自民党総裁選挙では、自民党にもいろいろな考えの方がおられるのが可視化されました。このうち、小泉進次郎さんは親父さんの二番煎じの極端な新自由主義&緊縮財政主義です。解雇規制緩和が小泉さんの目玉でしたが、解雇規制が日本は主要国の中で厳しいとは言えない、と高市早苗さんらに反論され「炎上」。失速しました。
実際、米国は別として日本より解雇規制が緩いとされる北欧などはそのかわり行き届いた福祉や教育=大きな政府があるわけです。今の日本でそこまでの大きな政府を実現する土壌はないし、小泉さん自体が財務省寄りで緊縮財政です。労働者を路頭に放り出した挙句、福祉や教育への予算も不十分なら、大混乱になる。高市さんらの反論は当然です。
高市早苗さんは激しく追い上げた。積極財政であることは筆者も注目しました。この点は小泉進次郎さんよりは評価できる。しかし、高市さんが露骨に靖国参拝を掲げたことは、党内選挙とは言え、「韓国、ひいては米国との関係を悪化させ、日本を孤立させかねない」という不安が自民党員の方の中でも広がったのだろうと推測されます。このために、あと一歩、石破さんに及ばなかったのでしょう。
さて、石破さんが金融所得課税などを主張していたために、石破当選で株価が下がったと言われています。ただ、日本の場合、超大金持ちへの課税は米国さえより甘い実態がある。金融所得課税はどこかでやらないといけません。むろん、その場合でも、米国の利下げなどの動向を見ながら、利上げには当面慎重にするなどの手綱さばきは必要でしょう。慌てて利上げを日本がしなくても米国が下げれば金利差は縮小し、過度な円安→これ以上の物価上昇には歯止めがかかると思われます。
また、石破さんの政策では「気象庁の予算拡充」も注目されます。また、鉄道オタクであることから、芸備線を含む地方交通政策についても注目したい。他方で、消費税増税論者でもあり、この点が野田さんに近い。下手をすると大政翼賛会的な消費増税の危険もあります。
一方、立憲民主党代表になった野田佳彦さん。元総理の今も駅前で1人ででも立ってビラを配っておられるのは正直、頭が下がる。ご自身の選挙は強いと思います。
しかし、彼が野党全体への支持を高められるかといえば、疑問が大きいのです。やはり、2012年に当時の野党だった自公と合意した消費税増税と、セットでの緊縮財政のイメージが強すぎるのです。大震災の復興財源のために現場公務員の給料を減らしたり正規公務員数を減らしたりしたのはまずかった。その後相次いだ災害や感染症への対応で現場が苦労することになりましたし、住民サービスの持続性にも暗雲を投げかけています。野田さんには、ご自身がやったことの反省と総括を最低限お願いしたい。
◆切り捨てられる民意・抑圧される党内民主主義
ともかく、現代にはいろいろな政策課題があり、立憲の支持者も自民の支持者も価値観も多様化しています。いまの小選挙区比例代表制度かつ、政党幹部が財布のひもや公認権を事実上独裁的に握る制度での二大政党が本当に人々のニーズに合致するのでしょうか? 事実上大きな影響を持つ政党が二つでは、やはり、切り捨てられてしまう民意が大きくなってしまいます。
また、広島県内でも、河井案里さん失職に伴う参院選広島再選挙2021の立憲の候補者に内定していた楾大樹先生が、はしごを外されるという事件も発生しています(茶番選挙―仁義なき候補者選考)より。その後も、衆院選2021で一回敗けただけの広島都市圏の立憲候補3人が、事実上クビになっています。これは、政党幹部の独裁を可能とする現行の選挙制度の欠陥ではないでしょうか?
さらに、同じ野党の日本共産党でも本やネットで田村智子さん、志位和夫さんと違う意見を言っただけで、除名・除籍される事件が続発しています。最近では「ごはん論法」考案で有名な紙屋高雪さんが、同党から除籍され、福岡市議団スタッフからもいきなりクビになっています。
また、大阪など関西では「維新」の公認や推薦というだけで、候補者個人の政策や人柄があまり吟味されないまま、爆発的に支持されてしまう現象が最近までありました。斉藤元彦・兵庫県知事による数々のご乱行を巡る混乱も招いています。
それなりの数の政党が存在し、なおかつ枠に入りきらないような無所属の候補も当選できるような選挙制度の設計がやはり望ましいと考えます。政策テーマごとに、政党の組み合わせが違ってもいいのです。
◆選管主催でガチバトルの公開討論会実施を
なお、自民党総裁選挙のガチバトルの公開討論会は自民党を支持しない筆者が見てもそれなりに面白かったです。これを国政・地方選挙で選管主催やったらどうかと思います。そうすれば金を持っている人が有利とかそういうこともなくなるでしょう。
というか、「政治改革」の前は、選管主催で合同立会演説会を公会堂とかでやっていました。政治の面白さが後退しているのです。今後、選挙管理委員会の前候補参加の主催討論会を各公民館で実施、ネットでも配信するなどしていけばいいでしょう。都知事選で悪用され、物議をかもしたポスター公営掲示板よりもよほど有権者に判断材料を提供することになるでしょう。
繰り返します。石破茂さん、高市早苗さん、野田佳彦さんらが注目された1993年総選挙後に行われた政治改革1994。裏金も含めて、本当の改革になっていたのか? そのことを与野党ともに検証すべきときではないのか? 30年たって、むしろ政治が劣化しているとすれば、制度を疑うことも必要ではないでしょうか?
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▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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