広島県の産廃行政は〈穴だらけ〉どころか〈穴だけ〉ではないでしょうか?

 

11月15日に行われた控訴審の口頭弁論。原告団のSNSより

11月11日、広島県は、三原市と竹原市の水源地のど真ん中に許可している〈三原本郷産廃処分場=JAB協同組合=〉から基準値の7.5倍のBOD(Biochemical Oxygen Demand=生物化学的酸素要求量)が検出されたとして、同協同組合に警告の行政処分を行いました。

一応、同組合は、操業を一旦停止して対策を立てるとのことです。しかし、これまでも同組合は2023年夏以降、何度も県から〈警告〉や〈指導〉を受けていました。業者がその場しのぎの対策にもなっていない対策を行い、県も〈それでよし〉とし、また汚染水が流出する。その繰り返しです。こうした中、産廃処分場許可取り消しを求める住民裁判の第4回口頭弁論が11月15日、行われました。

◆県が裁判を引き延ばす間に汚染が広がる

そもそも、2023年7月には、住民が県を相手取って、産廃処分場の許可取り消しを求める裁判で県は敗訴しました。産廃処分場の許可取り消しを命じられています。普通なら、ここで判決を受け入れるものですが、湯崎英彦県知事はこれを控訴。さらに、広島高裁での控訴審では県は、業者を裁判に県側で補助参加させ、県が業者と一体となって、県民に敵対しています。県が裁判を引き延ばしている間に、汚染がどんどん広がる。これが実態です。

 

◆6割の田んぼで作付け断念!

すでに、周辺の農業への影響は深刻です。日名内上地区の田は2024年春、250アールのうち157アール稲作付けを断念しました。ほぼ毎日農業用水の参考基準値のCOD(Chemical Oxygen Demand =化学的酸素要求量)が6mmg/リットルを超えています。6月からは100~300という数値が毎朝夕検出されています。三原市は川の上流の水を流す管をつけましたが、それは上部の少しの田にしか届きません。また、10月には三原側だけでなく、竹原側の川でも泡水が出ました。三原市、竹原市の農業はもちろん、パン作りやお酒造り、さらには漁業にも大きな影響が出かねません。湯崎英彦知事は、2024年度の県政の大きな柱として「広島の食材・料理のPR」を掲げています。しかし、穴だらけというより穴しかないような産廃行政をそのままにして、有効な施策になるのでしょうか?

これまでの主な流れは以下です。

2020年4月  広島県が三原本郷産廃処分場の設置を許可
      住民側、県に許可取り消しを求める住民訴訟、業者に操業しないよう求める仮処分

2022年秋  処分場操業開始

2023年初夏 処分場から汚染水流出発覚
   7月  広島地裁、県に許可取り消しを命じる判決。湯崎英彦知事は控訴。
          汚染水流出で県が業者を指導。業者は無視。
          業者による無視に対して「警告」
   8月  業者、井戸を真水で洗浄し検査に〈合格〉。警告解除。

2024年6月 三原市議会、水源の保全に関する条例を県内で初めて可決。
      不十分ながらも立ち入り調査や氏名公表などの権限が市に。 
  7月頃 汚染水がさらに激化(写真、筆者撮影)。
   8月 県、鉛が検出されたとして業者を〈指導〉
   9月 指導を解除
   10月 三原側だけでなく竹原側でも泡の立った水。
11月11日 BOD超過として県が業者を〈警告〉。
11月12日、住民が県に対して業者への厳しい行政処分を陳情。
11月15日 控訴審第四回口頭弁論。次回口頭弁論は1月17日(金)13時10分、その次は3月14日で調整中。

11月15日の裁判では県や業者からは特に新しい主張もなかったそうです。住民たちは病院や仕事、家族の介護などの算段をして裁判に臨んでいます。そして、裁判がのびればのびるほど、ゴミは流入してきます。最近ではフクシマの原発事故で汚染されたゴミも規制の甘い広島を目指している状況もあります。高裁の裁判官は、十分にまだ状況を把握されていない、というお話も弁護士からはうかがいましたが、しっかり把握した上で結論を出していただきたい。

また、業者はゴミに対して、即日覆土していません。立木を勝手に伐採し、埋めかけている。一トン土のうのようなフレコンバックをダンプからおろし、展開検査をせずにすぐ埋め立てている状況があります。現行法すら、全く守っていません。三原市には今夏作った条例により立ち入り調査を実施し、同時に排水口で水質検査をしていただきたいものです。

何度も繰り返す通り、広島県はとびぬけて産廃規制が全国でも緩い。こんな広島県が自主的に動くのを待っていては手遅れになりかねません。国の廃棄物処理法を改正し、全国一律で厳しく規制(要は甘すぎる広島以外に合わせる)ことも、参院選など次期国政選挙を前に議論していくべきです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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