ルンピニースタジアムのONE FRIDAY FIGHTS(ONE Championship)で2連勝の睦雅は堂々たるメインイベンターとして力強いTKO勝利。
瀧澤博人は再起戦を飾れず、元・ムエタイ2大殿堂上位ランカーに屈す。
皆川裕哉、期待の初防衛は成らず。19歳の新星、勇成が王座奪い獲る。
細田昇吾、先を見据えた大舞台に向けて前進の大差判定勝利。
◎KICK Insist 21 / 11月17日(日)後楽園ホール17:15~20:49
主催:VICTORY SPIRITS / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA)
戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。
◆第12試合 63.0kg契約 5回戦
JKAライト級チャンピオン.睦雅(=瀬戸睦雅/ビクトリー/ 1996.6.26東京都出身/63.0kg)
25戦19勝(12KO)4敗2分
vs
ユッタカーン・コー・プラサートジム(チェンマイStadiumライト級Champ/タイ/ 62.9kg)
76戦55勝19敗2分(推定)
勝者:睦雅 / TKO 2ラウンド 2分50秒
主審:西村洋
初回、睦雅はローキックで牽制とパンチを打ち込む距離を探る展開で、ヒジ打ちを狙っていそうな相手の出方を覗いつつ、前進気味にローキックでプレッシャーを与えていく。首相撲になっても組み負けないバランスを保つ。
第2ラウンドも睦雅が距離を詰め、ユッタカーンをロープ際に追い詰めローキックを蹴り込む展開が続くと効いてきた様子が窺え、パンチやヒジ打ち、ローキックでダメージを与え、空いたボディーへヒザ蹴りでノックダウンを奪って圧勝ムード。
再開後にボディブローを決め、カウント中のレフェリーストップに追い込んだ。睦雅は今年KICK Insistに於いて3勝(2KO)とONE FRIDAY FIGHTSで2勝(2KO)と5連勝を築いた。
睦雅は「今日はコンデション的には、勝ったから言えるとことですけど、あんまり良くなくて、ずっとここ3週間ぐらい体調不良で、あまり追い込めなかったところもあったのですが、“5ラウンドまで長期戦でいく”、そういう崩し方も出来るというのを見せたくて、相手のリズムで敢えて戦ってみようかなと、自分のギアではなくて相手のリズムで1ラウンド終わって、“ヒジもパンチも見えるな”と思ってまあ大丈夫だなと、このまま相手のリズムで倒してやろうという流れで、結果、倒せました。」
ボディーブローについては、「下(脚)を凄く意識されていたので、ローキック対策されているのかという感はありましたが、その分、腹が残るので狙えるとなと。」と語り、会長からの対策もあって試しながらの結果がKOに繋がった様子でした。
ONEが行われるルンピニースタジアムの雰囲気について=「ONEは満員に近いぐらい入っているので、昔のムエタイと違う雰囲気でもあり、独特な選手が立つ場という感じがして僕は好きです。皆が目指す舞台になっていくと思います。」と語られました。
◆第11試合 58.0kg契約3回戦
WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 57.8kg)
42戦26勝(14KO)12敗4分
vs
ファーモンコン・タエンバーンサエ(元・ラジャダムナン系バンタム級2位/タイ/ 58.0kg)
151戦103勝46敗2分(推定)
勝者:ファーモンコン / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:椎名28-29. 西村28-29. 中山28-29
瀧澤博人は7月28日のWMO世界フェザー級王座決定戦でペットタイランドに僅差の判定負けで目指していた王座を手にすることは成らず。9月にはラジャダムナンスタジアムでも判定負けの模様。
初回の蹴りの応酬の様子見は瀧澤博人もハイキックを加えた蹴りで前進。
第2ラウンドはファーモンコンが距離を詰めて来てパンチを打ち込むファーモンコン。更に相打ち気味に右縦ヒジ打ちを顔面に打ち込み、瀧澤博人はノックダウンを喫した。
鼻血を流しながら立ち上がる瀧澤博人。ヒジ打ちで倒しに掛かるファーモンコン。組み付くとヒザ蹴りで攻め込む。
第3ラウンドには瀧澤のパンチか、ファーモンコンも鼻血を流し、蹴りの距離に戻った流れで瀧澤が追うが、ファーモンコンも逃げ切って終了。瀧澤は再起戦を飾れず。
◆第10試合 ジャパンキック協会フェザー級タイトルマッチ 5回戦
チャンピオン初防衛戦.皆川裕哉(KICKBOX/1997.4.11東京都出身/ 57.0kg)
27戦14勝(2KO)11敗2分
vs
挑戦者1位.勇成(Formed/2005.8.17福岡県出身/ 57.15kg)9戦8勝(5KO)1敗
勝者:勇成(新チャンピオン) / KO 3ラウンド 2分42秒
主審:少白竜
初回は蹴りとパンチの探り合いの様子見から勇成が右ストレートでノックダウンを奪う。しかしこのラウンドは無理に出ず冷戦な皆川裕哉。何が当てられるか試しながら後半に持ち込む5回戦の戦い方を理解している流れだったが、第2ラウンドも静かな戦いとなってパンチの交錯は見られたが、ジャッジは揃って勇成を付け、ここまで3ポイント差が付く流れ。
第3ラウンドには勇成がパンチで攻めて来た。皆川裕哉も応戦しながら蹴りで攻める。勇成は前蹴りからパンチで攻め、右ストレートでノックダウンを奪うと、皆川は足下フラ付く状態でテンカウントを聞いた。
◆エキシビジョンマッチ2回戦
ラジャダムナン系スーパーフライ級Champion.名高・エイワスポーツジム(吉成名高/エイワスポーツ)
EX
キヨソンセン・ビクトリージム(元・WMCインターコンチネンタル・スーパーフェザー級Champ/タイ)
12月1日にムエタイ王座防衛戦を控える吉成名高がエキシビジョンマッチを行ない、身軽なフットワーク見事な蹴り合いのコンビネーションで調整具合を披露した。
◆第9試合 スーパーフライ級3回戦
JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/1997.6.4埼玉県出身/ 51.9kg)
22戦14勝(3KO)6敗2分
vs
ローマペット・プロムロブ(ジットムアンノンStadiumライトフライ級5位/タイ/ 51.7kg)
59戦40勝17敗2分
勝者:細田昇吾 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 西村30-28. 勝本30-27
様子見の蹴り中心のせめぎ合いもリズム掴んでローキックからパンチ当てるのが上手い細田昇吾。早々に主導権奪った展開で終盤まで勢い付いていく。ローマは蹴り技持っているが細田にペース奪われて出し切れない困惑気味の表情。相手の持ち味を殺して主導権支配した細田昇吾が内容的にも大差判定勝利。
細田昇吾は「1ラウンドから行けるかなと力んでしまって、ちょっと倒しに行こう、倒そうとし過ぎたなという印象でした。100の力で打っちゃったんで、そこの緩急の付けがちょっと甘かったなという反省です。」
当てるのが上手かったなと言う声については、「まだまだです。先輩方に比べたら全然なので。」
来年王座挑戦は?
「やりたいですね。交渉事もあるので時期は分かりませんが。」
目標とするものは?
「睦雅さんがONEに出ているので、そういう背中追って行きたいなと思っています。ああいう勢い有る団体は世界の強い奴が集まっている団体で本当に世界一と言えると思うので、まずは一歩ずつ獲っていく思いです。」と語られました。
◆第8試合 フェザー級3回戦
JKAフェザー級2位.樹(治政館/2004.10.12埼玉県出身/ 57.0kg)
15戦7勝(4KO)7敗1分
vs
同級6位.石川智崇(KICKBOX/ 57.0kg)7戦3勝3敗1分
勝者:樹 / TKO 1ラウンド 2分27秒
主審:少白竜
蹴りの様子見の両者、石川智崇がやや前進気味も樹は冷静に捌き、一瞬の左フックでノックダウンを奪うと石川は立ち上がるがしっかり立てずカウント中のレフェリーストップ。
◆第7試合 ウェルター級3回戦
JKAウェルター級2位.細見直生(KICKBOX/ 66.1kg)4戦4勝(1KO)
vs
同級5位.我謝真人(E.D.O/ 66.6kg)15戦3勝(1KO)10敗2分
勝者:細見直生 / 判定2-0
主審:西村洋
副審:椎名30-29. 中山30-29. 少白竜29-29
初回、細見直生は重い蹴りとパンチでやや優勢も、後半は接近戦での蹴りを交えた打ち合いは我慢比べの互角の展開が続き、細見直生が序盤の勢いを維持してポイントを譲らず判定勝利。
◆第6試合 ライト級3回戦
JKAライト級2位.貴雅(治政館/ 60.9kg)33戦19勝(3KO)14敗
vs
同級5位.菊地拓人(市原/ 61.1kg)7戦5勝(3KO)2敗
勝者:菊地拓人 / KO 2ラウンド 31秒
主審:勝本剛司
貴雅は蹴りで前進の中、菊地拓人の正面に立った辺りで右ストレートを受け、ノックダウンし立ち上がれずテンカウントを聞いた。
◆第5試合 バンタム級3回戦
JKAバンタム級3位.紫希士(Formed/ 53.2kg)4戦3勝1分
vs
花澤一成(市原/ 53.45kg)9戦1勝(1KO)5敗3分
引分け 3者3様
主審:椎名利一
副審:西村29-30. 勝本29-29. 少白竜29-28
ハイキックやミドルキック、前蹴りは花澤一成の蹴りのリズム。第2ラウンドから紫希士が首相撲で強く出て来て接近戦のペースを掴む。パンチは貰いたくない花澤一成との攻防は一進一退で終了した。
◆第4試合 女子スーパーフライ級3回戦(2分制)
ミネルヴァ・スーパーフライ級3位.YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/52.4→52.4→52.1kg)
13戦5勝5敗3分
vs
同級7位.響子JSK(治政館/ 51.6kg)11戦3勝5敗3分
引分け 3者3様
主審:中山宏美
副審:椎名30-29. 勝本29-29. 西村29-30
◆第3試合 アマチュア61kg以下2回戦(90秒制)
竹森万耀(JKAアマチュア・フェザー級初代覇者/治政館) vs 篤志(team JSA)
勝者:竹森万耀 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)
◆第2試合 アマチュア55kg以下2回戦(90秒制)
草野大翔(ビクトリー) vs 古川在冴都(ONE LINK)
勝者:草野大翔 / 判定2-0 (20-18. 19-19. 20-19)
◆第1試合 アマチュア65kg以下2回戦(90秒制)
木村大夢(KIX) vs 隈澤匠永(BURNING)
勝者:木村大夢 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)
《取材戦記》
ビクトリージム3羽烏の瀧澤博人、睦雅、細田昇吾はそれぞれの明暗は分かれるも、持ち味を発揮した試合でした。瀧澤博人は相手をどう攻略するかが期待される中の、相打ち気味の1瞬先を打たれた流れの悔しい敗戦だが、睦雅は今話題のONE FRIDAY FIGHTに出場して2連勝という勢いが存在感を示しました。
細田昇吾は先輩方に負けない練習量で、相手を圧倒する展開での判定勝利。皆川裕哉は目黒の教訓、“防衛してこそ真のチャンピオン”を成し遂げようと以前から宣言していたが、あっさり倒されてしまう大失態。改めて防衛の難しさが表れる一戦でした。
新チャンピオンの勇成は今年3月24日興行で、このジャパンキックボクシング協会の2023年の新人賞を受賞。7月28日に挑戦者決定戦で樹(治政館)に判定勝利して挑戦権獲得。
樹は5月に市原で皆川裕哉とノンタイトル戦で対戦。そこでは皆川裕哉が余裕の判定勝利しています。
今年3月24日に王座決定戦で櫓木淳平(ビクトリー)を倒して新チャンピオンとなった皆川裕哉。同日、ジャパン・ウェルター級王座初防衛戦で政斗(治政館)に倒され、防衛成らなかった大地フォージャー(誠真)がいました。今年はジャパンキックボクシング協会に於いては2人のチャンピオンが初防衛成らず。倒されて陥落という結果が残りました。
王座が入れ替わる瞬間とは物悲しくもあり、新たなチャンピオンが誕生する新鮮さがあり、昔は日本の頂点におけるタイトルマッチで、こんな衝撃の王座交代劇が幾つもあったものである。最近は防衛しないで返上が多く、こんな記憶に強く残る交代劇が少なくなった時代です。
この日はエキシビジョンマッチながら吉成名高の存在も大きいものでした。一昨年、昨年とKICK Insist、11月興行には2年連続で出場していた吉成名高は、今年は2週間後の12月1日、横浜大さん橋ホールで、ペットヌン・ペットムエタイジム(フランス)と王座3度目の防衛戦を控える中でのエキシビジョンマッチ出場で、身軽なフットワーク、技の切れ味を披露しました。
来年のジャパンキックボクシング協会は、3月23日(日)会場未定、7月13日(日)後楽園ホール、9月15日(月・祝)新宿フェース、11月23日(日・祝)後楽園ホールが予定されています。他、日時未定ながら市原ジム主催興行も予定されています。
睦雅がどこまで躍進するかが2025年の見所でしょう。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」