2024年3月下旬、金沢レインボープライド事務局長・奥村兼之助氏(50)が覚醒剤を所持、「かなざわにじのま」で使用したとして逮捕。その後、金沢地裁に覚醒剤取締法違反容疑で起訴された。その事件が報道されたのは、3ヶ月近くが経過した6月4日の初公判の翌日だった。

その間、金沢レインボープライドは事件をひた隠しにしていた。あるLGBT活動界隈の方からは、「実は、金沢レインボープライドの一般スタッフにも、奥村氏逮捕は知らされていなかった。団体から彼が突然消えたことに関しては、幹部同士でけんかや対立があったのではないかという憶測だけが流れていた」との情報も寄せられた。これが事実なら、金沢レインボープライド幹部は運動を支える仲間たちにも事件をひた隠しにしてきたということになる。不誠実極まりないと言えはしないか?
奥村氏逮捕を知ったLGBT当事者の間では、当然、金沢レインボープライドに対する批判の声があがった。「報道がなければ、ずっと隠すつもりだったのか?」「身内の犯罪に甘すぎる!」と。

それにあわてたのか、金沢レインボープライドは逮捕報道の直後に、公式HPとXで次のような謝罪文を発表した。

 ご報告とお詫び

 本年3月に弊団体元スタッフ1名が覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕・ 起訴されました。

 このような事件が発生したことは誠に遺憾であり、関係の皆様方に多大なるご心配とご迷惑をお掛けしておりますことに対し、 深くお詫び申し上げます。また、警察の捜査に対してはすでに全面的に協力しておりま すことを申し添えます。

 今後は裁判の行方を見守り、事実関係を踏まえ厳正に対応してまいります。また、弊団体全スタッフの法令順守の取り組みを一層徹底してまいります。

                          2024年6月5日
                          金沢レインボープライド

逮捕された事務局長の名前だけでなく、代表者名まで伏せた謝罪文

この短い「ご報告とお詫び」文書に、LGBT当事者はざわついた。

「『元スタッフ』って、なに? 逮捕されたときには事務局長だったよね?」
「しかも匿名?」
「事務局長って言ったら、普通、団体代表に次ぐナンバー2でしょ? それがシャブ歴20年のうえ、運営施設でキメてたのに、これで終わらせるつもりか?」
「団体代表の名前すら出さずに、謝罪? なにコソコソしてるのよ!」
「これだけ? こんな簡単な詫び文で済ませるつもり?」

実は、事件の悪質性や社会に及ぼす影響以外にも、LGBT当事者から見るとツッコミポイントがあったのだ。

皆様は、2023年3月に岸田文雄首相の秘書官・荒井勝喜氏がLGBT差別的な発言をし、LGBT活動家が「差別だ!」と大騒ぎし、辞任に至った事件は、覚えておいでだろうか? あれは元々、オフレコとして荒井秘書官が口にしたものを、毎日新聞電子版が記事にしてしまい、騒ぎに発展したものだった。

以下に、その記事を引用する(https://mainichi.jp/articles/20230203/k00/00m/010/329000c)。

首相秘書官、性的少数者や同性婚巡り差別発言/毎日新聞/2023年2月3日

 LGBTQなど性的少数者や同性婚のあり方を巡り、経済産業省出身の荒井勝喜首相秘書官が3日夜、記者団の取材に「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと差別的な発言をした。首相官邸でオフレコを前提にした取材に対し発言したが、進退問題に発展しかねず、国会で岸田文雄首相の任命責任が問われる可能性がある。

 記者団は1日の衆院予算委員会で岸田首相が同性婚の合法化などについて「社会が変わっていく問題だ」などと述べたことについて質問。荒井氏は「社会に与える影響が大きい。マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」などと発言したほか、「人権や価値観は尊重するが、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」との趣旨の言及もあった。【高橋恵子】

毎日新聞のオフレコ破り記事。末尾には「高橋恵子」との署名あり

この報道を受け、ただちに荒井秘書官は謝罪し、発言を撤回。岸田首相も謝罪し、彼を更迭した。

しかし、このとき、活動家ではないLGBT当事者は、荒井氏よりもマスコミに対して非常に辛辣な感想を洩らしていたのである。

「オフレコを前提にした発言を記事にするなんて、毎日新聞の記者が非常識なだけ」
「同性愛者を『見るのも嫌だ』という人がいても、べつにいいんじゃない? いちいち大騒ぎするようなことかしら?」
「差別的な本音を口にするのはどうかと思うけど、オフレコ発言を記事にする記者のほうがヤバくない?」
「まーた、LGBT活動家がLGBT商売のネタに食いついてるよ。まさに虹ヤクザ」

さらにはその後、複数のLGBT団体の者が官邸に押しかけ、岸田首相に謝罪させたのを、皆様は覚えておいでだろうか? あの中の一人が、金沢レインボープライド代表の松中権氏だったのである。

今でも確認できるウェブ媒体の中で、団体名を明記している日刊スポーツの記事を、ここでご紹介する(https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202302170001287.html)。

実は、マスコミ報道の中には、彼らLGBT活動家をまるで一般のLGBT当事者であるかのように報じるケースも多く、油断できないのである。

岸田文雄首相「不快な思いさせた」性的少数者の支援団体と面会し直接謝罪 元秘書官の差別発言/日刊スポーツ/2023年2月17日

 岸田文雄首相は17日、LGBTなど性的少数者を支援する団体と官邸で面会し、元首相秘書官による差別発言を謝罪した。「極めて不適切。多くの方に不快な思いをさせたことを心からおわびを申し上げたい」と述べた。
 今月3日に元秘書官の差別発言が出た後、首相が関係者に直接謝罪したのは初めて。「多様性が尊重され、すべての人々が互いの尊厳を大切にする社会を目指すべく努力していかなければならない」と述べた。
 面会は、予定時間を超えて約50分に及んだ。「プライドハウス東京」「LGBT法連合会」「ReBit」の3団体の関係者が出席した。
 出席者によると、首相は1日の衆院予算委員会で、同性婚の法制化に関して「社会が変わってしまう課題」と発言した真意について「ネガティブな意味ではない」などと釈明。今後は、団体側の意見を参考にする考えも示したという。
 支援団体側は面会の中で、首相に差別禁止法や同性婚の法制化を要請した。LGBT法連合会の神谷悠一事務局長は、面会後の取材に「(この日の面会を経て)抜本的に政策が加速し、変化していくことを期待している」と話した。
 首相はまたこの日付で、森雅子首相補佐官を、新たにLGBT理解増進担当に任命した。性的少数者の人権問題を専門に担当する首相補佐官の創設は、支援団体側が求めていた。

──はい、首相官邸に押しかけたLGBT団体の名がちゃんと記録されていますね。「プライドハウス東京」「LGBT法連合会」「ReBit」。

この中の「プライドハウス東京」の代表として首相に謝罪を迫ったのが、松中権氏だ。大物LGBT活動家である彼は、「金沢レインボープライド」の他にも、複数のLGBT団体を運営しているのである。

この報道で、Yahoo!ニュースは、岸田首相が松中氏に頭を下げているかのような写真を記事に使用した。動画を確認すると、実はこれは、首相が書類をテーブルの上に置こうと身をかがめた一瞬のことだったとわかる。LGBT活動家の威光を示して首相を貶めたいという反権力気取りの担当者が、わざわざこの画像を切り取ったのだろう。

ほぼ捏造に近い切り取り。偏向報道と呼ぶには、あまりにもセコい

当然、LGBT当事者はYahoo!ニュースの報道に不快感を示した。

「まーた、松中が『いいとこ取り』するために、わざわざ金沢から上京してきたよ」
「LGBT活動家とズブズブのマスコミが、卑怯な切り取りをして!」
「プライドハウス東京、LGBT法連合会、ReBit……LGBT商売がうまい団体ばかり」
「私たちの代表者ヅラして、首相に謝罪させるなんて、あいつら、何様のつもり?」
「LGBT差別禁止法だの同性婚法制化だの、こっちは望んでいないのに、また、勝手なことを……」
「あいつらに出し抜かれたLGBT活動家たちが、一番、ムカついてることでしょうね。笑うわ」

元々底意地が悪いLGBT当事者の反発と罵倒と嘲笑に恐れをなしたのか、Yahoo!ニュースはただちに「岸田首相の謝罪写真」を別のものに差し替えたが、今もそれは、ネット上のウェブ魚拓サイトに残っているのである(https://archive.md/x64zJ)。

──と、そんな背景もあり、2024年6月、LGBT当事者は金沢レインボープライドの大変簡素な謝罪文に怒りを表明したのだ。

「自分は岸田首相のところに押しかけて、謝罪を求めておきながら、いざ身内が不祥事を起こしたら、こんな適当な謝罪文で済ませるって、どうなの?」
「単なる失言と、覚醒剤所持・使用とでは、どっが問題だと思っているのかしらね?」
「他人に厳しく、自分に甘い。これで人権を叫んでいるのだから、笑えるわ」

 この謝罪文に対し、ゲイ当事者であるY@su氏(@Yasoo___Japan)が鋭い批判をXに投稿されているので、当事者の声の一つとして、ここにご紹介したい(https://x.com/Yasoo___Japan/status/1798533638910562751)。

「LGBT関連団体」は、当事者が選挙で選んだ訳でも無いのに当事者の代表と言えるのか──ゲイ当事者Y@su氏の問題提起に、皆様はどうこたえますか?

石川県金沢市で「かなざわにじのま」を運営する「金沢レインボープライド」の元事務局長が「覚醒剤使用」の疑いで起訴されていた事が発覚した。「金沢レインボープライド」は「LGBT活動」に深く携わり「婚姻平等」など、様々なLGBT政治運動で重要な役割を担っている、松中権氏が代表を務めている。

その様な団体の運営する「拠点内」で「組織幹部の事務局長」が「常習的に覚醒剤を使用していた」と言うのは尋常では無い。しかも、元事務局長は「20年以上に渡る覚醒剤使用歴」を供述しており、それが事実なら「極めて強い常習性」が認められる。

代表の松中氏は「知らなかったので驚いた」などと、まるで「他人事」の様に発言しているが「最高責任者としての責任感が疑われる態度」だと言わざるを得ない。常習的に「組織の拠点内で覚醒剤を使用」されていて「気付かない」と言うのは、一体どの様な管理・運営がされていたのか。これでは「金沢レインボープライド」のガバナンスは「組織の体」を為しておらず、最早「解体」すべきレベルである。当然だが、松中氏の組織トップとしての「管理責任」は免れ得ず、何故「分からなかった」のか「どの様な施設管理がなされていたのか」などをキチンと究明すべきだ。

本件は「公金を使った公的性格を有する施設内での、常習的覚醒剤使用」であり「松中氏を含むメンバー全員の薬物検査」と「その結果の公表」は必須である。その上で、松中氏は「普段のLGBT活動での声の大きさを超える大きな声」で「事の顛末と、組織内の調査結果」を発表する責務がある。それにもかかわらず、何ら詳細な説明の無い「ありきたりの謝罪文だけが書かれた紙切れ一枚だけ」が提示されたが、人を馬鹿にするにも程がある。

更に、本件は「3月下旬に起訴されていた」にも関わらず、2ヶ月以上何らの発表もしなかった事も「隠蔽」の誹りを免れ得ない。

昨年の「政府高官の差別発言騒動」の際には「大騒ぎして糾弾」し「岸田首相を謝罪に追い込んだ」事を、まさか忘れてはいないだろう。その当人が「都合の悪い事にはダンマリ」を決め込み「曖昧にお茶を濁す様な態度」を取る事が許される筈も無い。

この様な態度を取り続ければ、松中氏の発言の信憑性は失墜し、今後幾ら「LGBTの権利」を主張しても「自らの事が先と鼻で笑われるのが関の山」だと言うほかない。(つづく)

◎森奈津子 LGBT犯罪録 かなざわシャブのま事件
 ── 金沢レインボープライド事務局長が覚醒剤で逮捕

〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50290
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50306
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50381
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=51912

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
Xアカウント https://x.com/MORI_Natsuko
森奈津子 LGBTトピック https://x.com/morinatsu_LGBT

 

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000752

斉藤佳苗『LGBT問題を考える 基礎知識から海外情勢まで』

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