中国電力は2024年12月7日、12年ぶりに島根原子力発電所2号機を再稼働させました。島根2号機は、2011年に大事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉です。女川原発に続いて沸騰水型では2基目の再稼働となります。

原子力規制員会の新安全基準に基づいて審査され、2024年10月23日に「テロ対策施設整備を5年以内に実施すること」を条件に正式に「合格」したことにはなっています。

しかし、以下の問題が残されています。(後述の中国電力前での抗議行動での各弁士のお話しと筆者自身の過去の選挙での政策から構成)

◆裁判所も指摘した避難計画の実効性のなさ

島根原発は全国でも唯一、県都=松江市にある原発です。山陰地方の人口の多くが、30km圏内にある松江市、出雲市、境港市に集中しています。もし事故になれば、住民は島根県西部や広島県、あるいは鳥取県東部方面に避難することになります。

だが、大震災による原発事故の場合、日本海と宍道湖・中海に囲まれた地域は孤立する危険があります。

また、広島県民にとっても他人事ではありません。多くの住民は自家用車で避難するとみられます。その場合は、途中で除染を受けることに建前ではなっています。だが、福島原発の周辺が町村部で人口が少なかったのに対し、島根の場合は避難人口が多い。大混雑が予想されます。そして、スクリーニング検査や除染をスルーして広島県内の避難先に向かう人が多数出るでしょう。

島根原発2号機再稼働を差し止める仮処分申請について裁判所でも、避難計画は実効性がないと断じています。ただ、事故が起きる可能性があるのを証明するのは原告=住民側の義務だ、などと言う理由で、仮処分申請を却下しています。

◆島根県内の活断層連動の危険

島根原発すぐそばには宍道断層があり、M7以上の地震を発生させる可能性が高いとされています

地震動を起こす断層面は、原発の直下にも広がっています。これは、能登半島大震災時の志賀原発よりもさらに厳しい状況です。

さらに、この活断層は鳥取県沖の活断層とも連動する可能性を中電自身も認めています

それこそ、100Km以上に渡って連動すれば、M8以上と言うこともありうる。ただ、能登半島沖の活断層同様、これまで研究が進んでいなかっただけです。それこそ、原発の直下の地盤も大きく変動する。安全装置など役に立たなくなる危険もある。避難どころではなくなる危険もあります。

原子力規制委員会はテロ対策施設以外については、2021年9月15日時点で合格としています。だが、能登半島大震災の教訓を十分に踏まえた知見とは言えないのではないでしょうか?

◆だれも責任を取らない原発

実は原発について、責任を取る人は決まっていません。原子力規制委員会も「基準に合格」と認定するだけです。「許可」をするわけではない。また、過去の判例でも例えば福島原発事故については、東京電力の責任は認めても、国の責任は認めていません。国が原発を推進してきたのですが、実際の運用は電力会社に任されている。そんな状態の物を動かせるのですか?ということです。

◆そもそも中国地方に原発は必要ない

百歩譲っても電力が足りない状況が生じえるのは、日本でも東京電力管内のそれも限られた時間帯です。AI関連のデータセンターで電力需要が増えると言うが、それなら遠方の原発から供給するのではなく近場での発電で賄った方が効率は良いでしょう。環境に配慮した形での再生可能エネルギー、つなぎとしての高効率火力発電。また、スマートグリッド、蓄電池などを進めて行けばよいのです。

また、東京周辺についてはそれこそ、人口が異常に集中しすぎているのが問題です。どうせ、狭い東京に電源を造るのに限界があるのですから、人口を分散させるしかない。「国会等の移転に関する法律」を速やかに実施し、政府機関の移転で人口の分散を図るべきです。

まして中国地方に原発を造るいわれはない。なお、これまで、核燃料税などで潤ってきた地元自治体に対しては国が責任をもって産業振興をすれば良いのです。また、原発廃炉に当たっては電力会社から国が原発を買い上げて責任をもって廃炉にすればいいのです(核燃料が財産として計上されている分も含め、国が保障する)。

◆中国電力前で抗議行動

再稼働の12月7日、「上関原発いらない!広島ネットワーク」など広島県や島根県の市民団体などは中国電力本店前で抗議行動を行いました。

広島に二番目に近い原発・島根原発。広島県民にとっても他人事ではありません。

そもそも、原爆の爆心地=広島1区の市民が選出=任命した衆院議員である岸田前総理が、安倍政権までの「脱原発依存」方針を転換してGX(グリーントランスフォーメーション)を錦の御旗に原発推進に一挙に舵を切りました。広島一区の有権者の責任でもあります。


◎[参考動画]島根原発再稼働に抗議 中国電力前 広島瀬戸内新聞(さとうしゅういち)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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全国各地からの生の報告(全10本)
《青森》山田清彦(核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団)
 六ヶ所再処理工場とむつ中間貯蔵施設の実態
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 再稼働反対11・2集会宣言(抗議声明)案(抜粋)
《福島》木幡ますみ(大熊町議)
 大熊町民の本音
《柏崎刈羽原発》桑原三恵(規制庁・規制委員会を監視する新潟の会)
 ”安全”ではありえない柏崎刈羽原発の再稼動
《日本原電》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 原発を動かす資格のない原電は廃炉作業に専念するよう求めます
《高浜原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
「9・23高浜全国集会」の報告と「12・8関電包囲大集会」の案内
《敦賀原発》山本雅彦(原発住民運動福井・嶺南センター事務局長)
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《中国電力》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 活断層に囲まれた島根原発2号機の再稼働は中止すべきだ!
《四国電力》名出真一(伊方から原発をなくす会)
 伊方原発3号機の即時廃炉を!!
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 大地震の脅威を無視し原子力災害対策指針改訂でお茶を濁す原子力規制委員会

[反原発川柳]乱鬼龍

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