「押し紙」関連資料の閲覧制限、問われる弁護士の職業倫理、黒塗り書面は墓場へ持参しろ 黒薮哲哉

「押し紙」裁判を取材するなかで、わたしは裁判書面に目を通す機会に接してきた。弁護士から直接書面を入手したり、あるいは裁判所の閲覧室へ足を運んで、訴状や準備書面、それに判決などの閲覧を請求し、その内容を確認してきた。

しかし、最近は、新聞社が書面に閲覧制限をかけていることが多い。書面の一部が黒塗りになっているのだ。

「押し紙」についての新聞社の主張は、昔から一貫していて、「自分たちは販売店に対して新聞の押し売りをしたことは一度もなく、販売店で過剰になっている新聞は、販売店が自分の意思で注文したものだから、『押し紙』には該当しない」というものである。それはまた日本新聞協会の主張でもある。

新聞業界は、今だに「押し紙」は1部たりとも存在しないという事実とはかけ離れた主張を貫いているのだ。試みに読者は日本新聞協会に対して、「押し紙」について問い合わせてみるといい。誠意ある答えは返ってこない。答弁できなくなると、乱暴に電話を切るのがこれまでの対応である。

「押し紙」は1部も存在しないという新聞業界の主張が堂々とまかり通ってきた背景には、新聞社の弁護士たちの支援があるのは言うまでもない。とりわけ人権派の評価がある弁護士が代理人になっている場合、彼らの信頼度が髙いので、彼らが上段に掲げてきたデタラメに、多くの人々がそれに騙されてしまうことがある。

ネット上に「押し紙」回収の現場を撮影した写真や動画が次々と投稿されるに至っても、彼は絶対に主張を変えない。社会正義の実現という弁護士の使命を捨て、腐った金に飛びついているのである。

「押し紙」が客観的な事実であることを認めた上で、その背景にやむを得ない事情があるとする論理で弁護活動をするのであれば、職業倫理を逸脱していないが、彼らは客観的に「押し紙」が存在することを否定しているわけだから論外である。良心のかけらもない。

しかし、裁判書面は保存すれば、永久の残るわけだから、彼らが軽々しく黒塗りした書面を、10年後、あるいは20年後に公開されたとき、そのダメージは大きい。自分が書いた書面は、納棺してもらい忘れずにあの世に持参してもらいたい。嘘は絶対に書かないのが鉄則である。

本稿は『メディア黒書』(2024年12月16日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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