令和全日本キック初のチャンピオン、瀬川琉がベテランのオーシャン・ウジハラに辛くも勝利。
全日本キックの将来を背負うであろう勇生はアグレッシブにヒジ打ちで圧勝。
期待の広翔も試合運びが上手く攻勢を維持して圧倒の勝利。
◎原点回帰 四ノ陣 / 12月28日(土)後楽園ホール17:30~21:24
主催:全日本キックボクシング協会 /
前日計量は27日14時より稲城ジムにて行われ、ヘビー級と女子は別格で未確認ですが、他は全員パスしています。戦績はパンフレットを参照し、この日の結果を加えています。
◆第13試合 60.0kg契約3回戦
全日本スーパーフェザー級チャンピオン.瀬川琉(稲城/1998.6.6東京都出身/59.8kg)
21戦14勝(4KO)6敗1分
VS
オーシャン・ウジハラ(=氏原文男/無所属/1986.10.12高知県出身/59.8kg)
27戦13勝(8KO)14敗
勝者:瀬川琉 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:竜矢29-28. 和田30-28. 勝本剛司30-28
オーシャン・ウジハラは2009年9月23日にWBCムエタイ日本フェザー級初代チャンピオンとなった心・センチャジム選手です。
初回、蹴り中心の様子見からハイキックも見せる瀬川琉。首相撲に移ると氏原文男のムエタイテクニックの圧力が優るが、離れると瀬川のサウスポーからの左ストレートヒットでリズムを掴んでいく。主導権を奪うには至らない両者のもどかしい互角の蹴り合いが続く中、瀬川が僅差判定勝利を掴んだ。
◆第12試合 スーパーライト級3回戦
勇生(ウルブズスクワッド/2005.石川県出身/63.3kg)5戦4勝(1KO)1分
VS
ユン・ジソン(韓国/ 61.9kg)4戦3勝1敗
勝者:勇生 / TKO 2ラウンド 3分0秒 / ヒジ打ちによる左眉カット
主審:椎名利一
勇生は前回6月13日に滝口遥輝にKO勝利。両者、性格的にもアグレッシブに攻める中、我武者羅に出るユン・ジソンに対し、勇生の距離に応じて上下の蹴りパンチ、ユン・ジソンの蹴り終わりを攻めたりとテクニックが優っていく展開。第2ラウンド終盤に首相撲に移った中で、勇生の右ヒジ打ちがユン・ジソンの左眉上をカットした様子。レフェリーがタイムストップを掛けたのはラウンド終了ゴングと同時だったが、ドクターチェックに入り、傷が深くストップ勧告を受入れ、レフェリーストップとなった。
◆第11試合 バンタム級3回戦
広翔(稲城/ 53.4kg)4戦3勝(1KO)1敗
VS
ハリィ永田(Astra Workout/ 53.5kg)32戦13勝17敗2分
勝者:広翔 / TKO 3ラウンド 50秒
主審:和田良覚
広翔は前回、9月6日に風間祐哉に判定勝利。
初回、蹴りの攻防から広翔の蹴りパンチヒザ蹴りで攻勢を強める。長身を活かしたハリィ永田が蹴りで攻めるも、広翔も距離を掴んで蹴り返し主導権を奪うと、首相撲から転ばせる技も使って優勢を目立たせた。
第2ラウンドも広翔のリズムで進み、終盤はローキックからパンチ連打で永田を劣勢に追い込んで終了。第3ラウンド、広翔は左フックで永田をグラつかせ、ヒザ蹴りからパンチ連打でノックダウンを奪い、更に猛攻でパンチ連打で圧倒し、崩れ行くところをレフェリーストップとなった。広翔のスピーディーさ、攻めの圧力はデビューから1年足らずで成長。来年はこの団体のタイトル争いに浮上するだろう。
◆第10試合 58.0kg契約3回戦
杉浦昴志(キックスターズジャパン/ 57.85kg)3戦2勝1分
VS
中村健甚(稲城/ 57.8kg)3戦1敗2分
引分け 0-1
主審:勝本剛司
副審:椎名29-29. 少白竜29-30. 和田29-29
打撃はアグレッシブに多彩に出るまだ3戦目の両者。パンチと蹴りのコンビネーションが揃わず、勝ちに行く姿勢はあるが、これで倒そうという技が無い印象のまま引分けに終わった。
◆第9試合 52.0kg契約3回戦
吉田鋭輝(team彩/ 51.85kg)3戦2勝1敗
VS
HIROKI(AKIRA ~budo school~/ 51.7kg)4戦3勝1敗
勝者:HIROKI / 判定0-3
主審:竜矢
副審:勝本29-30. 椎名29-30. 和田28-30
アグレッシブにパンチと蹴り、首相撲で組み合う攻防も見られる中、僅差ながらHIROKIの勝利。
◆第8試合 スーパーフライ級3回戦
横尾空(稲城/ 51.9kg)3戦2勝1分
VS
風間祐哉(WSR三ノ輪/ 51.7kg)4戦1勝2敗1分
引分け 0-0
主審:少白竜
副審:勝本28-28. 椎名28-28. 竜矢28-28
横尾空は前回、9月6日に内山朋紀に僅差ながら判定勝利。風間祐哉は同日、広翔に判定負け。
初回、横尾空が飛びヒザ蹴りを出した後、パンチの攻防から風間裕哉も飛びヒザ蹴りを出し、これが効いたか、その後パンチが当たったか、横尾がノックダウン。呼吸を整える横尾にはまだ余裕ある表情。
第2ラウンドから横尾が冷静に試合を組み立て、風間を上回るパンチと蹴りで巻き返していくと、パンチを喰らった風間は鼻血が激しくなる苦しい展開。第3ラウンドにドクターチェックを受ける風間だったが、鼻は折れてはいない様子。完全に主導権奪った横尾が巻き返すもポイント的に引分けに終わった。
◆第7試合 68.0kg契約3回戦
義人(kickboxing Fplus/ 67.3kg)3戦2勝(1KO)1敗
VS
石塚健太(武士魂 二代目闘心塾/ 66.0kg)1戦1敗
勝者:義人 / TKO 2ラウンド 1分44秒 /
主審:和田良覚
初回、パンチ中心の攻防から第2ラウンドも義人が打って出て組んでのヒジ打ちも打って攻勢を強め、更に組んでのヒザ蹴り、パンチ連打から右フックで石塚健太を倒すとレフェリーはほぼノーカウントでストップ。石塚は担架で運ばれた。
◆第6試合 女子48.0kg契約3回戦
牛山華子(HIDE’S KICK)1戦1敗
VS
あー子(無所属)2戦2勝
勝者:あー子 / 判定1-2 (29-28. 29-30. 28-30)
この令和の全日本キックボクシング協会に於いては初の女子試合。そして3回戦ではあるが、男子と同じ3分制で行なわれた。
蹴りはパンチへの繋ぎ技でパンチ中心に攻めた両者。採点も分かれる差の付き難い展開はジャッジ三者が揃うラウンド無くあー子がスプリット僅差判定勝利。
◆第5試合 スーパーライト級3回戦
滝口遥輝(中島道場 / 62.6kg)3戦2敗1分
VS
NAOKI(WSR西川口/ 63.35kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:NAOKI / KO 2ラウンド 2分4秒 /
パンチと蹴りの攻防はNAOKIが圧していく展開。NAOKIの組みに行ってのヒザ蹴りで滝口遥輝が身体をくの字に、うつむいてしまうのは危なくて守りにならない。
第2ラウンドもNAOKIのパンチからヒザ蹴りの攻勢で滝口からノックダウンを奪い、踏ん張る滝口はパンチで出るが再びNAOKIのヒザ蹴りに捕まり、計3度となるノックダウンによるNAOKIのKO勝利。
◆第4試合 ヘビー級3回戦
オマル・ファーレス(稲城)1戦1敗
VS
ピクシー犬飼(府中ムエタイクラブ)3戦1勝1敗1NC
勝者:ピクシー犬飼 / 判定0-3 (26-29. 26-29. 27-30)
◆第3試合 スーパーバンタム級3回戦
二宮渉(アウルスポーツ/ 54.85kg)2戦1勝1敗
VS
馬上一樹(G-1 TEAM TAKAGI/ 55.3kg)4戦4敗
勝者:二宮渉 / 判定3-0 (28-26. 28-26. 29-26)
◆第2試合 スーパーライト級3回戦
野竹生太郎(ウルブズスクワッド/ 63.2kg)2戦2勝
VS
小玉倭夢(無所属/ 63.15kg)1戦1敗
勝者:野竹生太郎 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-28)
主審:勝本剛司
野竹生太郎は勇生の実弟。パンチでリズム掴むと蹴りも優っていき大差判定勝利。
◆第1試合 スーパーフライ級3回戦
鬼久保海斗流(健成会/ 52.05kg)1戦1敗
VS
井上蓮治(パラングムエタイ/ 51.95kg)1戦1勝(1KO)
勝者:井上蓮治 / TKO 2ラウンド 59秒 / カウント中のレフェリーストップ
スピーディーな両者の攻防。一つ一つの蹴りに場内両陣営の応援団の大声援に湧く。デビュー戦からこの盛り上がりはなかなか見られない光景。第2ラウンドには井上蓮治の左ストレートでノックダウンを奪うと井上が更に鬼久保海斗流をコーナーに追い詰め、連打から左ストレートで仕留めた。
《取材戦記》
「ウジハラは歳じゃん! 瀬川が圧倒しないと駄目でしょ!」というリングサイドで聞かれた試合前。
オーシャン・ウジハラは2009年9月23日にアトム山田に判定勝利し、WBCムエタイ日本フェザー級初代王座獲得した心・センチャイジムで、翌年には眼の負傷もあってキックボクシングを離れ、長期治療の後、JBCの認可を受けプロテストを受け、フラッシュ赤羽ジムよりプロボクシングデビューを果たしました。諸々の経緯あって2019年にキックボクシング復帰に至っています。
ウジハラは「今回(瀬川琉に)負けたら引退と思っていましたが、ちょっと冷静に考えます。」とまだ戦う意欲有りの中、今後のことは考え直す様子が窺えました。
元々、センチャイジムではデビュー戦から5回戦だったという。
「キックボクシングは5回戦が基本だからね。」というセンチャイ会長の言葉だった。今回の試合も「5回戦で観たかった」という応援者の声があったという。
その試合は主導権支配には至らなかったが、組み立て方は衰えておらず、ここでの引退は勿体無いところである。もう暫く王座復帰を目指す、チャンピオンを苦しめる、若手の壁になるといった存在であって欲しい。
瀬川琉は「超ダメでした。試合早々に足痛めて蹴れなくなって課題だらけの試合でした。負けたとは思わなかったけど、もっとしっかり勝って、いろいろ言いたかったところは抑えて、出直しだなと思う感じです」と多くは語れない立場という振舞いで、来年に向けては前回リング上で語ったとおり、「全日本のベルトの価値を高めていくこと。他団体のトップどころと戦うリングに立てるように上を目指して行きます」というエース格の自覚がありました。
セミファイナルの勇生は「楽しかったです。今回、リラックスして倒すこと考えてやったら上手くいった感じですね」
「タイトル挑戦があるとしたら?」の問いに「来年中にはタイトル獲りたいですね」という回答でした。
対するユン・ジソンは勇生から受けたヒジ打ちによる傷が深くて骨まで達していた様子で、医務室で傷を縫う治療を受けていました。
セレモニーでは、9月17日に脳梗塞の影響で逝去されました、平成の元・全日本ライト級チャンピオン、須藤信充氏の追悼テンカウントゴングが行われました。御子息の須藤健太氏がジーニアスジムを受け継ぎ、運営していく模様。御挨拶ではマイクが要らないぐらい力強い大きな声で感謝の言葉を述べ、“須藤~信充~!”とコールしてリングを下りました。父親の活発さを受け継ぐ健太氏がまた各所でちょっとユニークな存在で盛り上げてくれることでしょう。
栗芝貴代表の今年の総評は、
「今年(2024)一年、全日本キック立ち上げて大成功だったと思います。他(団体)がどうと言うよりは我々がどういう姿勢で向き合って来たかというところ。来年に向けて、将来に向けて、子供たちに夢や希望を持てるキックボクシング競技にする為に考えてみて、一歩ずつそこに向かっていると間違いなく実感しています。それで賛同してくれる人が本当に今、どんどん増えているので、僕の熱量をどう伝えていくかというところです。来年(2025)は更にチャンピオンを、何とか勇生を中心に仕上げていきたいですけど、そこに追随するウチの協会の選手を来年もデビュー戦からどんどん追っかける選手を作らなきゃいけないですね」と語り、
正に一から始まった全日本キックボクシング協会が、他団体と比べられながらも成長は感じるところでしょう。まず興行の一年目終了。二年目に更なる進化があるかが注目です。
今回、国内加盟ジムが5件増え、A-BLAZE KICK、武士魂二代目闘心塾、百足道場、中島道場、ONE BOXING FITNESSと更に韓国のサムサンムジムが合流。加盟ジムが20件を超えるのはかつての新日本キック並みという勢いです。
令和の全日本キックボクシング協会、2025年の興行日程は3月28日(金)、6月20日(金)、10月5日(日)、12月28日(日)、いずれも後楽園ホール夜興行で開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」