聖地を揺るがせたMAGNUM61は4名の挑戦者が王座奪取! 堀田春樹

新スター誕生、青コーナーから出場の4名の新チャンピオン。
木下竜輔はジョニー・オリベイラを失神ノックアウト。二度目の担架搬送に。
赤平大治は王座決定戦だったが、格上・瀬戸口勝也に連打で圧倒ノックアウト。
珠璃は浅井春香のV3を阻む。若さと圧力で優った
撫子が小さな身体で二階級制覇、適正階級で上真を破る。

◎MAGNUM.61 / 3月2日後楽園ホール 17:30~21:16
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

◆第15試合 WKBA世界フェザー級王座決定戦 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/1983.8.1鹿児島県出身/ 57.0kg)
45戦31勝(14KO)11敗3分
        VS
NJKFフェザー級4位.赤平大治(VERTEX/2001.10.31栃木県出身/ 57.05kg)
9戦6勝(4KO)2敗1分
勝者:赤平大治 / TKO 1ラウンド 2分47秒 /
主審:椎名利一

瀬戸口勝也の強打を上回る赤平大治の重かったパンチで先手を打った。瀬戸口のパンチを躱し、距離を詰めロープ際で右ミドルキックとパンチ連打でノックダウンを奪った。ダメージ残る瀬戸口に最後は左フックで仕留め、ノーカウントのレフェリーストップが掛かり、タオル投入も同時だった。

瀬戸口勝也は打ち合いに屈した。赤平大治はアウェイで初めての王座奪取
赤平大治が連打で瀬戸口勝也を倒すとレフェリーストップが掛かり、タオルも舞った

試合後のマイクアピールでは、「これからが自分のスタートだと思ってますので、今後の活躍を楽しみにして、もし赤平大治のことちょっとでも気になったら、インスタグラムで調べれば出て来るので、今後の試合も注目宜しくお願いします。」と語った。

国内王座は数ある中、いきなり世界という称号の王座奪取となったが、本人がマイクで語ったとおり、ここからがチャンピオンロードのスタートで、本当の世界最高峰へどこまで這い上がれるか。

赤平は試合後、「最初ジャブから繋げていくと、瀬戸口さんがカウンター合わせようとして来たので、一発当たってちょっと揺らいだんで、そこを連打して倒しました。早めに倒そうとは思っていました。」と語った。

赤平大治を囲むVERTEXジム陣営とNJKF坂上顕二代表

◆第14試合 日本スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

初代選手権者.ジョニー・オリベイラ(トーエル/ブラジル出身46歳/ 58.75kg)
65戦16勝(1KO)31敗18分
        VS
挑勝者:2位.木下竜輔(伊原/1996.2.12福岡県出身/ 58.75kg)12戦5勝(3KO)7敗
勝者:木下竜輔 / TKO 3ラウンド 2分46秒 /
主審:少白竜

初回からローキック中心に圧力掛けた木下竜輔。対して下がり気味だったジョニー・オリベイラ。この様子見ではまだ先の展開はわからなかったが、パンチの強打より鋭いローキックで木下ペースは続いた。

第2ラウンドには木下は飛びヒザ蹴りでジョニーによりプレッシャーを与えた。余裕と威圧の笑顔が見え始めた木下。ジョニーの蹴りのタイミングが合わず、木下の距離の掴み方が優った。

笑いは威嚇でもあるが、余裕が出て完全に主導権支配した木下竜輔のローキック

第3ラウンドにもプレッシャーを与えた飛びヒザ蹴りに続けて更に飛びヒザ蹴りでノックダウンに繋げ、更にタイミングを計って飛びヒザ蹴りがジョニーのアゴを突き上げると仰向けに倒れノーカウントのレフェリーストップ。立ち上がれず担架で運ばれたジョニー・オリベイラだったが、意識はすぐ回復。帰りはしっかり歩いて会場を後にした。

木下竜輔が飛ぶ毎にジョニー・オリベイラを圧倒、KOへ結び付けた

木下竜輔はジョニー・オリベイラと2勝1敗となったが、2勝はいずれも担架が必要となる完封勝利だった。ジョニー・オリベイラは初防衛成らず。木下竜輔は第2代チャンピオン。

木下竜輔は「作戦というのは特に無くて、伊原越谷道場での新しい環境で周りの方々の指導や助言が後押しとなりました。僕一人だと弱いので、そんな伊原道場の皆さんの協力の御陰です。」と謙虚に語った。

伊原越谷ジム会長は「こいつ元々武器あるじゃないですか。パンチの当て方、準備出来るものやれるだけやらせたので、3ラウンドで決めると言ってちゃんと3ラウンドで決めて、試合を完全に支配したので本当に人生で一番練習した結果ですね。」と圧勝を称えていた。

ジョニー・オリベイラ陣営のセコンド、中川卓氏は「最初は手数出して相手を軸に回っていくという戦略も手数足りなかったですね。いつものことながら練習ではバンバン強く出るのに試合では出ないですね。」と語った。

新チャンピオンとなった木下竜輔を囲む伊原ジム陣営とチント・モルディージョ氏

◆第13試合 ヘビー級3回戦

ISKA日本ライトクルーザー級チャンピオン.佐野克海(拳之会/岡山県出身23歳/ 101.65kg)
22戦14勝(7KO)6敗2分
        VS
工藤勇樹(前KROSS OVERヘビー級Champ/エス/宮城県出身40歳/ 89.3kg)
56戦29勝(18KO)25敗2分
勝者:佐野克海 / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:椎名30-27. 中山29-27. 少白竜30-26

ローキックからパンチで顔面からボディーブローも効果的にヒット。圧倒していく佐野克海。早々に攻勢を維持し右ストレートでノックダウンを奪った。

工藤勇樹はダメージは少なそうだが、巻き返そうと攻めて来るも、佐野がクリーンヒットする攻勢は変わらず。工藤は攻められて横向いたり俯いたりと不利な体勢を作ってしまうも、佐野が倒し切れないもどかしさはあったが、圧倒の展開で判定勝利。

終始圧倒した佐野克海。ガード固める工藤勇樹の空いたボディーを攻める

◆第12試合 76.0kg契約3回戦

マルコ(伊原/イタリア出身34歳/ 75.55kg)12戦6勝(1KO)3敗3分
      VS
TOMO JANJIRA(ジャンジラ/京都府出身33歳/ 75.6kg)10戦4勝5敗1分
勝者:マルコ / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名29-28. 宮沢30-28. 少白竜30-28

パンチとローキックの攻防はマルコのローキックが重く鋭くTOMOにヒット。ヒザ蹴りもハイキックもインパクトを与えるマルコ。TOMOも果敢に攻めるがマルコのヒットの正確さが優り、内容的にも大差となるマルコが判定勝利した。

◆第11試合 女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ 3回戦

選手権者.浅井春香(無所属/1987.1.22愛知県出身/ 55.15kg)33戦17勝(2KO)10敗6分
        VS
挑戦者4位.珠璃(=安黒珠璃/闘神塾/兵庫県出身18歳/ 54.85kg)6戦5勝(1KO)1分
勝者:珠璃 / 判定0-3
主審:中山宏美      
副審:勝本28-29. 宮沢27-30. 少白竜29-30

いつもより蹴りが出ていた浅井春香だったが、パンチと蹴りで前進する圧力は珠璃が優っていく。組み合ってのヒザ蹴りは浅井の得意技であっても流れを引き寄せられない。

やや不利な展開ながら、微差が付かないとしたら、また引分け防衛も有り得るかという中、的確差が優った珠璃が順当な判定勝利で王座奪取となった。浅井春香はV3成らず。

浅井春香をロープ際に追い詰めた珠璃
珠璃を囲む闘神塾陣営と坂上顕二氏、伊原信一氏、竹越義晃氏

◆第10試合 女子(ミネルヴァ)ペーパー級(95LBS)タイトルマッチ 3回戦

選手権者.上真(ROAD MMA/1985.10.16石川県出身/ 42.4kg)16戦6勝10敗
        VS
挑戦者1位.撫子(GRABS/2000.7.7北海道札幌市出身/ 42.05kg)16戦11勝(1KO)4敗1分
勝者:撫子 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:宮沢28-29. 勝本28-29. 中山29-30

撫子(なでしこ)が上真の技を封じて王座奪取。手数は互角も的確差で撫子が優った。撫子が先手を打った多彩に蹴って出た前蹴りの効果も出てヒットを増やし、判定勝利で最軽量級の新チャンピオン(第2代)。上真は昨年10月13日に初代王座獲得となりながら5ヶ月足らずで陥落となった。

撫子の前蹴りが上真の顔面にヒット、先手を打つ技の素早さが優った

◆第9試合 女子ミネルヴァ 52.0kg契約3回戦(2分制)

鈴木咲耶(チーム鈴桜/静岡県出身17歳/ 51.85kg)6戦4勝(1KO)2敗
      VS
RUI・JANJIRA(ジャンジラ/東京都出身24歳/ 51.95kg)10戦3勝(1KO)6敗1分
勝者:鈴木咲耶 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名30-27. 勝本30-28. 中山30-27

長身を活かした的確な蹴りのヒットを続けた鈴木咲耶。距離を上手くコントロールし、組み合ってもヒザ蹴り、離れて前蹴りのヒット、RUIも果敢に攻めたが的確差で鈴木咲耶が上回った。

◆第8試合 ライト級3回戦

崇斗(HAKUBI/香川県出身28歳/ 60.7kg)5戦2勝3敗
      VS
金沢ごりちゅう光輝(AX/ 61.1kg)2戦2勝
勝者:金沢ごりちゅう光輝 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:椎名25-30. 少白竜24-30. 中山25-30

カーフキックが鋭くヒットさせた金沢光輝。ヒザ蹴りも圧倒し、初回に頭部ヒットと最終ラウンドにもヒザ蹴り連打で崇斗からノックダウンを奪い、ノックアウトに近いほど圧倒し大差判定勝利。

◆第7試合 48.0kg契約3回戦

植田琥斗(E.S.G/埼玉県出身18歳/ 47.2kg)3戦1勝2敗
      VS
庄司翔依斗(拳之会/岡山県出身17歳/ 47.2kg)2戦2勝(1KO)
勝者:庄司翔依斗 / KO 1ラウンド 1分36秒 /
主審:勝本剛司

スピード、鋭さで優った庄司翔依斗、ローキックからの右ストレート、更に右ストレートで開始早々30秒ほどでノックダウンを奪った。更にパンチ連打で圧力掛け左フックで二度目のノックダウンを奪った。

蹴りで距離を取りたい植田琥斗も自分の距離を保った庄司がニュートラルコーナーに詰め右ストレートの3ノックダウンで圧勝。兄の庄司理玖斗と競っての成長が期待される。

◆プロ第6試合 女子ミネルヴァ55.0kg契約3回戦(2分制)

MEGU(KICK SPARK/ 54.75kg)9戦2勝7敗
      VS
MIO La Reyna(TEAM REY DE REYES/ 54.4kg)6戦1勝5敗
勝者:MIO La Reyna / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:少白竜28-29. 勝本28-29. 宮沢28-29

※第1試合から第5試合のアマチュアジュニアキックは掲載枠都合で割愛します。

《取材戦記》

木下竜輔は2022年5月15日にジョニー・オリベイラを右ストレートでぶっ倒し脚光を浴びるも、その後は負けが込む中堅クラスに埋もれた感じだった。昨年3月3日の王座決定戦では、ジョニー・オリベイラの“倒されない頑丈さ”に阻まれ王座奪取成らず。「このままでは終われない」と語っていた木下竜輔は、今回見違えたような切れのあるローキック、飛びヒザ蹴りで蘇った。

伊原越谷ジムは2023年春に誕生した支部で、木下竜輔も今回のトレーニングは本部も支部もトレーナーが入り混じって、主にこちらで鍛え上げられた模様。「竜輔やるじゃん!」そんな声も聞かれそうな伊原ジム陣営だろう。

赤平大治は昨年12月8日、DUELで大岩竜世に僅差2-1の判定負け。そこからWKBA世界挑戦に繋がるとは意外だったが、瀬戸口勝也に挑むコンテンダーとして技量は備わっていたと考えられる。そしてニュージャパンキックボクシング連盟の新鋭が一気に新日本キックボクシング協会のトップを喰ってしまった。

最初のノックダウンを奪った際、“やった~!”と舞い上がってニュートラルコーナーに行かず、カウントが中断された際、瀬戸口を回復させてしまう事態に若林直人会長は「何やってんだ、バカ!」と感情むき出しの怒り心頭も、その後倒して勝ったら満面の笑みで赤平を抱き締め褒めていた感情の急変が面白かった若林会長であった。

時代は移り変わり、今回の新しいチャンピオンが誕生。交流戦の在り方も変わりつつある現在である。

昨年10月、瀬戸口勝也を倒した辰樹(Y’ZD)がWKBA世界挑戦を懇願していたが、今後も辰樹が絡んで来る公算もあり、新日本キックボクシング協会にとっては人材不足の今後も交流戦も活発に、他団体選手が注目されることも拒まず、迎え撃つのは木下竜輔が中心となっていくでしょう。

新日本キックボクシング協会次回興行は5月11日(日)に後楽園ホールに於いてTITANS NEOS.36が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」