前回の記事で書いたように、北欧のスウェーデンは世界で唯一「女性の方が喫煙率が高い国」であります。確かに男性の「喫煙率」は17%(女性は21%)と世界トップクラスの低さを誇ります(誇る?)。

しかし「喫煙率」が低いからといって、「タバコ率」が低いわけではないようです。スウェーデン男性にはシガレット(紙巻タバコ)よりも、スヌース(嗅ぎタバコ)の方が人気が高いのです。

スウェーデン男性の21%、女性の4%がスヌースを毎日使用しているといいます。なんでも「あんまりお洒落じゃないから女性の人気がない」とかいうことのようです。

◆スヌースを探して町に飛び出した

三鷹で見つけた『アルカポネ・ミント』

タバコのことをああだのこうだのと書いているくせに今までスヌースを体験したことがなかったことを恥じて、早速こっそりと慌てて急いでゆっくりと近所のタバコ屋さんを訪ねました。私、生まれも育ちも東京都三鷹市なのですが、三鷹には『みわた』というタバコ屋さんがあっていつもお世話になっています。

シガレット(紙巻タバコ)、シャグ(手巻きタバコ)、シガー(葉巻)、パイプ、キセル、スナフ(嗅ぎタバコ)など扱っている商品が実に豊富で、もちろんスヌースもありました。

タバコ本来の味や香りを楽しみたいので、着香していないものがいいと思ったのですが、残念ながらレギュラータイプは売り切れ。メンソールタイプのものしかありませんでした。残念だのなんだのとごちゃごちゃ申しておりましたら、店長が『アルカポネ・ミント』というスヌースの試供品をくれました。ま、結局メンソールタイプなんですけど、ありがたく頂戴いたしました。

◆体験者は語る

では、スヌースの初体験レポートといきましょう。

 

紅茶のティーバッグのようなスヌース

粉状のタバコが紅茶のティーバッグのような不織布の袋に入っています。大きさは28mm×15mmで、ちょうどSDカードの半分のサイズでした。親指の爪くらいといった方がわかりやすいでしょうか。

パッケージには「一包を歯ぐきと頬の内側に挟んで下さい。味わいの強さは口腔内の水分量によります。」と、使用方法が書いてあります。

メンソールタイプは刺激が強くて歯茎がヒリヒリと痛い

唇を指で引っ張って、スヌースを上の歯の歯茎の奥に挟みました。メンソールタイプだからでしょう、ヒリヒリと刺激が強くて歯茎が痛いです。フリスクとか辛いミントのガムみたいな感じです。

女性が敬遠する理由がなんとなくわかります。唇がもっこり膨らんで鼻の下が伸びたような状態になるし、しゃべっている時にペロとスヌースが見えたらかっこ悪いです。

タバコの香りもするような気がしないでもないですが、ミント感が強いのでなんだかよくわかりません。味は、ぼんやりと甘いです。甘味料として漢方やお菓子でもよく使われる甘草(リコリス)が使用されているようです。砂糖とは違うこざっぱりした甘さです。

 

砂糖とは違うこざっぱりした甘草(リコリス)の甘さ

口の中の水分量によって味わいが強くなるということですが、スヌースに唾液が染みてくると甘みが強くなります。そして、メンソールのヒリヒリ感が炸裂しまして、こりゃたまらん、一旦中断です。噛んでるガムを口から出すような遣り場にこまる感じです。幾人か友人に試してもらったところ、半数くらいは最初の一分以内にリタイアしました。結構痛いんです。スヌースを挟む場所を替えて、下唇の歯茎に移したらこちらの方が敏感なようで激しく痛いです。

気を取り直してリトライしてみます。バーやレストランが全面禁煙のスウェーデンでは酒を飲みながらスヌースを使用するようなので、コーヒーを飲んでみました。コーヒーの水分に触れてスヌースから発揮される刺激がより一層強くなります。口が痛い余談ですが、ニコチンを摂取するとカフェインの代謝が早まるそうです。コーヒーを飲むとタバコが吸いたくなるのは生理的な欲求もあるみたいですね。

使用時間の目安はだいたい30分くらいだというのですが、まだ味がなくなったガムをいつまでも噛んでるような感じで、各々の好みで唇に挟んでいればよいもののようですが、注意書きにこう書いてあります。

・ 本製品はニコチンを含むタバコ製品です。絶対に飲み込まないで下さい。
・ 袋がやぶけている場合は使用しないで下さい。
・ 本製品の使用により気分が悪くなる等の症状が生じた場合には、すぐに使用を中止して下さい。

注意書きです

粘っていつまでも口の中に入れているとあまりいいことはなさそうですね。寝タバコで火事が起きるのと同様に、スヌースの誤飲でニコチンの急性中毒とかありそうです。40分くらして飽きたので口から出して捨てました。

◆嫌煙時代の救世主

スヌースを体験し終えた今、一番何がしたいかと聞かれたら迷わずこう答えます。

「タバコが吸いたい」

喫煙の目的が何かという問題ですが「ニコチンを摂取したい」というよりは「煙を吸い込みたい」ということのような気がします。もっと云えば喫煙というのは「手持ち無沙汰だから何か口にくわえていたい」ということのような気がします。

パイプや葉巻のように、煙を肺まで吸い込まない「口腔喫煙」を初めて体験した時にも同じようなことを思いました。私たち第二次世界大戦以降の世代は肺に煙を吸い込まないと満足感を得られない「シガレット世代」だと云っても間違いではないでしょう。

タバコはあくまで嗜好品なので、だらしない酒飲みのように「酔っぱらえればなんでもいい」というような下品な発想に陥らないようにしたいものですね。嗜好品はエレガントに楽しまなければ悪しき因習です。

副流煙による健康被害を理由に嫌煙ブームの昨今、スヌースはオルタナティヴな提案(代替案)として面白いのではないでしょうか。現にスウェーデンではシガレットよりもスヌースの方が人気があるわけです。煙の出ないスヌースは空気を汚さないので、冬の寒さの厳しい地域で重宝されるのは納得できます。

ニコチンパッチやニコレットで頑張って禁煙するくらいならば、スヌースという選択肢の方が遥かに豊かだと思いませんか?

またひとつ世界が広がりました。次回はもう少し掘り下げて、スヌースの健康被害に関する考察をお届けします。

▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。

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