上は総理安倍から下は市会議員、村会議員まであらゆる階層で「毒素」がばら撒かれ蔓延する何とも嫌な時代になってしまった。先日の予算委員会では安倍が民主党の質問者発言の際に「日教組!」「日教組は!」とヤジを飛ばし、委員長から注意されていた。
確かに昔の日教組には骨のある活動実績もあったけども「連合」に加盟してこれといって際立った存在でもなくなった日教組を未だに目の敵にしている安倍の本音が露わになった。時々街で見かける大音量で改造車から軍歌を流している街宣車に乗っている右翼の方々と安倍は同意見なのだ。
◆2次関数の曲線のようにエスカレートする安倍の暴言暴走
安倍の暴走振りは2次関数の曲線のように日に日にエスカレートしているように思えてならない。安倍は「絶対に」、「全く」、「完全に」という言葉を頻繁に使うようになってきた。「絶対に」はイスラム国に向けた敵愾心の中で吐露されていた「卑怯なテロは絶対に許さない」だ。同様に「全く」は日本人人質事件で対応に問題はなかったかとの質問に対する回答だ。この質問への回答の中で「対応に全く問題はなかった」と断言している。「完全に」は政府の姿勢を正当化する答弁の際にしばしば登場する。
前回総理を勤めていた時、安倍の発言は今に比べればまだ慎重だった。やっていたことは「教育基本法」の改悪だったり、防衛庁の防衛省への格上げだったり今同様悪業の限りを尽くしていたのだけれども、言い回しはもっと迂遠(遠回し)で、今のように傲慢ではなかった。衆参両院で公明を入れれば絶対多数を維持しファシズムの下支えが盤石だからだろうか、もうこの男には日本語文法や原則的な憲法論が通用しなくなってきている。内心独裁者気取りだろう。
◆「パワハラ認定」中原徹=大阪府教育長は卑怯者「維新」の代表格
一方、厚顔無恥と屁理屈では安倍と双璧の大阪市長橋下はどうやらとうとう「弾切れ」に陥ったようだ。橋下が「改革」の名の下に行った「暴政」が次々に綻びを見せている。
橋下の手下で許せない人間の一人に大阪府教育長の中原徹がいる。奴は府知事時代の橋下によって大阪府立和泉高等学校の校長に民間出身、歴代最年少で就任した。中原は弁護士資格を持ち橋下とは大学時代からの友人だ。これだけで賢明な読者には怪しさが伝わるだろう。
和泉高校で中原が行った功績と言えば何と言っても行事の際に教員が「君が代」を歌っているかどうか「口の動き」をチェックさせたことだ。当時の大阪府教育委員長ですら「そこまでやらなくても」とコメントするなど多くの批判を浴びた中原だが、橋下はその行為に「素晴らしいマネージメントだ」と太鼓判を押した。戦前の特高警察、現在の公安警察並の行為を校長が行うことのどこが「素晴らしいマネージメント」だというのか。
また中原は「平和教育」と称して、生徒を自衛隊へ連れて行き、実質的な体験入隊に近いことまでさせていた。新聞が疑問も呈さずにあたかも新しい試みのように中原の「平和教育」を掲載していたので、電話取材を何度も試みたが中原はついに電話には出てこなかった。公立高校の校長のくせに卑怯な取材拒否だった。
橋下は調子に乗ると止まらない。手下の松井大阪知事を使って、あろうことか中原を校長から大阪府の教育長に引き上げた(2013年4月)。そして中原は当然のように事件を起こした。中原が「パワハラ」を行っていたことが2月20日認定されたのだ。立川さおり教育委員と教育委員会事務局の職員4人に対し、パワハラに当たる発言を行ったことが明らかになった。認定された「パワハラ」は3件だそうだがこれは「真っ黒」が3件と見るべきで、「グレー」な言動は数限りなくあったことだろう。中原は立川教育委員に対して「誰のおかげで教育委員でいられるのか。罷免要求出します」と発言したそうだ。天に唾吐くとはこのことではないか。「関西ファシズム」台風の目、橋下がいるからこそ、中原は民間出身校長に就任することができ、身分不相応な教育長にまで上り詰めている。橋下がいなければ中原が高校の校長や教育長に就任するような異常事態は起こりえなかった。
◆立地も建築も欠陥だらけの「咲州」府庁機能移転という「維新」幻想
カジノ設置候補地として横浜と大阪が選定されたそうだ。でもそんなことはもう橋下の追い風にはならないだろう。関西以外の読者の皆さんは現在の大阪府庁がどこに位置しているがご存知だろうか。橋下の当初の構想通り進んでいれば、そして東日本大震災が起こっていなければ、今頃、府庁機能は全て住之江区南港北にある「咲州」(さきしま)庁舎に移っていたはずだ。
現在大阪府庁の機能は大阪市中央区大手前にある旧来からの府庁舎と咲州庁舎に分かれている。旧庁舎は老朽化が進んでいるので建て替えか移転を模索していたが、橋下が知事時代に目を付けたのが旧「大阪ワールドトレードセンター」として建築され、財政破たんした大阪湾至近の咲州物件だった。地上55階、地下3階建てのこのビルはバブルの遺産ともいうべき無残な廃墟寸前だった。大阪市が一部を借り切りなんとか最終破綻を食い止めていたところに知事である橋下が「府が買い取る」と名乗りを上げた。もっとも当初は議会に反対されたり紆余曲折があったのだが、最終的に大阪府が買い取ることになった。
しかしだ、このビルがある場所は埋立地だから、海抜ゼロメートル(ひょっとすると海抜マイナス地帯かもしれない)だろう。ちょっとした高波、いわんや津波が来た際に機能しなくなる場所であることは素人にも自明だった。複数研究者の想定によれば南海、東南海地震による最大津波は内陸6キロ以上に及び大阪駅周辺も水没するとされている。なのに、海沿の孤立が確実な場所に庁舎を移転してどうするのだ。職員や知事はボートで庁舎へ行き来するのか。
更に立地だけでなくこのビルはとんでもない「欠陥建築」だということが判明した。東日本大震災時、大阪では震度3の揺れを観測している。日本で震度3と言えば驚きはするけども被害の出るような揺れではないはずだ。ところが咲洲庁舎では天井の落下や床の亀裂など360箇所が損傷、防火戸の破損、エレベーター全26基が緊急停止し、うち4基に男性5人が5時間近く閉じこめられ、エレベーターを支えるワイヤロープが絡まる、地震発生24時間後の12日夜の時点でも8基が復旧しないなどあきらかな「欠陥建築」であることが露呈したのだ。こんな被害が出た場所は関西でここだけだろう。
もう多言は要すまい。そんな場所、そんな建物に災害の時には対策の指揮を執るべき役所をおいているのが橋下を中心とする「維新」勢力だ。これでもあなたはまだ「維新」幻想を抱き続けるだろうか。
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ
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