3月8日の「NO NUKES DAY 反原発★統一行動」を取材した。日比谷野音での集会で福島から来られた方が福島の現状を訴え、宇宙飛行士の秋山豊寛さんも原発の危険性について語る。全国から反原発を真剣に訴える2万人超が、「原発いらない」「命を守れ」のコールとともに国会を囲む請願デモを敢行した。
曇天の中、反原発のエネルギーは、「第二部」の首都圏反原発連合が主催する「国会前大集会」の登壇者にも乗り移ったのか、菅直人元首相、志位和夫(共産党委員長)、福島みずほ(参議院議員)、香山リカ(精神科医)などが登壇。それぞれに熱く反原発についてデモ参加者に訴えた。
「原発維持や推進をしようとする人たちは、私、精神科医からみると、心の病気に罹っている人たちに思えます」と香山は叫んだ。なるほど、その通りだと思う。
◆民衆の連帯が無視されるのはなぜか?
「原発」について、誰も「いいものだ、稼働してもよし」とする人は関係する業者と省庁しかいないはずだ。それでも、与党は原発を再稼働させようとしている。いったい、この民衆の連帯が無視されるのは、なぜだろうか。
理由のひとつとして「アメリカから押しつけられたプルトニウムを燃やさないといけない」という暗黙の協定は大きいと思う。
僕は、これだけ大きな事故を起こしながらも、原発に反対の声をあげる人は少しずつ減っていき、毎週、金曜日に行われている首相官邸前のデモが、ついに100人を切ってしまったのを肉眼で見た。集会では、「たんぽぽ舎」の柳田真共同代表が「原子力規制委員会は、じっさいは原子力推進委員会です」と叫んでいたが、まったくその通りで、田中委員長には、原発を止める気概などみじんも感じることはできない。むしろ「安倍首相の操り人形」だ。
◆原発ADRを拒否し続ける東電に対して相次ぐ「生業(なりわい)訴訟」
故郷に帰れず、先の暮らしを見通せない人々の苦悩は、時の経過とともに逆に深まっている福島の現状。
新たな土地で生活の基盤を築くにはきちんとした賠償が必要となる。しかし、東京電力はこの間、賠償に誠実だったとは言えない。国の指導も同じくだ。
町の大半が帰還困難区域に指定された浪江町では2013年春、町民1万5,000人が月10万円の精神的慰謝料の増額を求める集団申し立てを原発ADR(裁判外紛争解決手続き)で行い、一律5万円増の和解案が示された。だが和解案には強制力がなく、東電は受け入れを拒み続けている。
申立人には高齢者も多く、すでに大勢の人が亡くなっている。
原発ADRは被災者に裁判という重い負担を負わせず、早期に賠償問題を解決するために導入されたものだ。その趣旨に照らして出された和解案だ。東電はこれ以上解決を遅らせてはならないし、国はADRの仲介に強制力を持たせる仕組みを作るべきだとの声は多い。
ADRだけでは金銭賠償の解決が期待できないと、裁判所に訴える動きも相次ぐようになった。
「生業(なりわい)訴訟」と呼ばれる集団訴訟がそのひとつ。「故郷を返せ!生活を返せ!」と、北海道から福岡まで。17地裁・支部で精神的慰謝料の支払いが訴えられている。
昨年の夏、福島に行ってみた。
「いや、文化人も評論家も『原発はダメだ』と語るけれど、東京や大阪などの都市にいて論じられてもねえ。私たちにはまったく響かない。『脱原発』を飯の種にしているとしか思えないよ。本当に原発がダメだというなら、福島に住んで主張してみろって」と地元の自営業男性は言う。まさにその通りだと思う。
◆来年、電力が自由化になり、電力会社が選べるようになる
見逃せない事実として、「電力を自由化する」といいながら、東京電力が、他の電力会社の進出を阻んできた事実は大きいと思う。来年、電力が自由化になり、文字通り、電力会社が選べるようになる(※東京新聞2015年3月10日)。 つまり、個人がA社、B社などと電力会社を選べるというわけだ。ここにおいて期待できるのは、企業形態が利益をメンバーで折半する非営利目的の会社であるため、消費者は大電力会社と契約していた時よりはるかに安い値段で電気を購入することができるかもしれない、ということだ。
たとえば、イギリスの新規事業者の中には、Good Energyという、再生可能エネルギーを多く取り入れ、環境に優しいプランであることに力をいれている事業者もある。
Good Energyのプランは、化石燃料などを元にした安さが売りのプランと比べると電気料金は少し高め。だが、それでも大手電力事業者の料金と同等程度で、再生可能エネルギーを主に利用するプランを提供できる。消費者は、環境面を重視してプランを選べるのだが、こうした形の会社も登場するだろう。
いずれにせよ、原発は時代遅れで殺人兵器だ。僕たちは「原発は凶器である」という認識を忘れてはいけない。原発を輸出してもいけない。もしも原発を推進する者があるとすれば、魔物であり、サタンなのだ。
(伊東北斗)
◎「福島の叫び」を要とした百家争鳴を!『NO NUKES Voice』第3号!
◎福島原発事故忘れまじ──この国で続いている原子力「無法状態」下の日常
◎《屁世滑稽新聞19》皇居を核最終処分場にする話……の巻
◎東電はKDDI、規制委員会は日立が請け負う原発関連コールセンターの無責任