このブログでは、東電マネーに籠絡されてきたマスコミの惨状を追及し続けている。
つぶさに周りを見回してみれば、他にも様々な情報が、歪められて伝えられていることに気付く。
たとえば消費者金融と呼ばれるようになった、サラ金。
国内でも指折りの人気を誇るタレントがにこやかにCMで微笑み、借り入れは銀行やコンビニ、ショッピングセンターのATMでもできる。
過去にはサラ金による借金苦の悲惨さはマスコミでも伝えられたが、出資法改正などで、今は問題は去ったかのよう思われている。

問題はまだ続いていると鋭く訴えているのが、橋本玉泉著『仮面の消費者金融』(鹿砦社)だ。
日本で、自殺者は年間3万人に及ぶが、そのうちの実に1万人近くが借金苦によるものだ。
毎日およそ27人が、借金のために自ら命を絶っている。

自己破産は、年間10万人から申し立てられている。ここでまた、現実とマスコミの乖離が露わになる。
多くなりすぎたために、「もう自己破産はネタにならない」「いまさら誰も見向きもしない」として、取り上げられない。
「300万円程度の借金じゃつまらないな。3000万円ならいいけれど」とのたまった編集者もいるという。
債務総額が1000万円を超える者は、全体の1割にしかすぎない。ほとんどは500万円以下の債務で、時には自殺を選んでしまうほどに苦しんでいるのだ。

借金苦というと、ブランド品を買いすぎた、ギャンブルや水商売にはまった、などの理由を思い浮かべ、自業自得だと思う向きも多いだろう。
消費者金融の業者に聞くと、借り入れする客の理由で多くなってきたのが、給与の遅配だ。
給料が遅れるので、家賃や公共料金の支払いに間に合わない。それで利用するのだ。
家賃など頼めば待ってもらえるし、公共料金の支払いなど、遅れてもすぐに止められることはない。消費者金融に利子を払っても、それらを払いたいと思うのだから、まじめな人たちと言っていいだろう。

正社員なみにフルタイムで働いても年収が200万にも満たないワーキングプアは、ここ数年増え続けている。そうした人々が、困難なやりくりをした末に、今月は2万円足りない、3万円足りない、と借り入れていくうちに泥沼にはまっていくのだ。
消費者金融は、きわめて今日的な問題だと言えるだろう。

銀行員なみの給料を受け取り経費も使い放題の大マスコミの編集者には、貧困というものに実感が湧かず、「努力不足だ」「甘えだ」という感覚しか持てないのだろう。
大マスコミの情報はあてにならないという実例が、ここにもあるわけだ。それを本書は丹念に掘り起こしている。

「無料相談」「安い費用」などのキャッチコピーで借金で苦しむ債務者を呼び寄せ、やたらと高い解決金を要求し、さらに債務者を苦しめる悪徳弁護士が多くいることも、本書では指摘されている。

(FY)