5月17日、大阪では「都構想」に対する住民投票が実施される。意地でもこれを通そうと橋下は多額の税金を使い「説明会」という名の宣伝活動に没頭している。一方これに反対する勢力は「自民党」・「共産党」の合同街頭演説を敢行するなど文字通り大阪を二分するかのような様相を呈している。
◆「泣きの芝居」を打った橋下を見て野々村竜太郎を思い出す
ここ数日、報道機関の世論調査で不利が伝えられると、とうとう橋下は市民の前で「泣く」芝居まで打ち出した。「維新」を名乗る連中、日頃は糞偉そうにふんぞり返って、「自分たちだけが正義だ!」など聞いているこちらの方が赤面する破廉恥な言葉を平然と使う癖に、状況不利と見るや、相手に対して全く見当違いの罵詈雑言を浴びせたり、質問が聞こえないふりをしたり、終いには泣き出してしまう。
まだご記憶であろう、あの「政務調査費」を不正使用した元兵庫県議の野々村竜太郎の号泣会見。日本語がわからなくても動画の面白さだけで世界中に有名になった彼は「維新」所属ではないけれども、選挙ポスターへ勝手に「維新」と書き入れ当の「維新」からも文句を付けられたそうだが、21世紀に「維新」を錦の御旗にする連中は形勢不利には「泣けば済む」と思い込んでいるらしい。
◆大阪市民は「都構想」を否決し、橋下ファシズムからの脱却を!
大阪市民に訴える。17日の「都構想」への住民投票には絶対に「反対」を投じてほしい。大阪を覆い尽くす気怠いファシズムを払しょくするために是非とも否決が必要だと私は考える。
その理由を一々開陳していると読者も退屈であろうから、分かりやすい参考例を1つだけ挙げる。このコラムで何度も取り上げてきた中原徹という男がいる。こいつは橋下に抜擢され2010年、大阪府立和泉高校に校長として就任した。民間出身で史上最年少とかなりの注目を浴びたのだが、中原が行ったことは学校行事の際に教師が「君が代」をしっかり歌っているかどうか口元を調査すること(この行為に対して当時の大阪教育長は「そこまでする必要があるのか」と疑問を呈していた)と、「平和教育」の名の下に生徒を自衛隊へ連れて行き、実質上の「体験入隊」まがいのことをしただけだ。
だが、中原のような人間は橋下が牽引する「維新」では重宝されるらしく、中原は和泉高校校長から2013年6月大阪府教育長に抜擢されている。教育現場も生徒も無視した情実人事が良い結果を招くはずはないのは簡単に予想できることだ。私が指弾し続けていた中原は「パワハラ」を行っていたと今年3月認定された。醜くも中原は抗弁するも結果辞職に追い込まれた。
◆パワハラ騒動で府教育長を辞職した橋下の手下、中原徹はセガサミー役員に就任
これで中原が表舞台から身を引いてボランティア活動などで「罪償い」をしていれば私も追撃はしなかったのだが、あろうことか中原は5月1日付でセガサミーホールディングス社(以下「セガサミー」)の上席執行役員に就任している。
この会社の名前を聞いても業務内容が俄かに思いつく読者は少ないだろうが、「セガサミー」は主としてパチンコ・パチスロ台やゲームを造っている会社であり、先般決定された大阪でのカジノ運営の主導権争いの渦中の会社である。カジノでは桁違いの金が動くからその主導権争いは海外勢も含めて熾烈を極めている。
しかし、所詮は「ギャンブル」である。府立高校の校長や府教育長をパワハラで辞めた人間が即座に再就職する先としては余りにも不整合ではないか。校長として「皆さんギャンブルをしましょう!」と朝礼で訓示していたのだろうか。
2010年10月28日当時知事だった橋下は「カジノの合法化をめざす国会議員らを招いた『ギャンブリング*ゲーミング学会』(2013年9月よりIR*ゲーミング学会に名称を変更)の大会に出席し、『ギャンブルを遠ざける故、坊ちゃんの国になった。小さい頃からギャンブルをしっかり積み重ね、全国民を勝負師にするためにも、カジノ法案を通してください』と議員らにカジノ合法化を求めた」(2010年10月28日付朝日新聞)ことをご記憶の読者はいるだろうか。
成人にも例外を除き禁じられているギャンブルを「小さいころからギャンブルをしっかり積み重ね」と、常軌を逸した発言をしていたのが橋下なのであるが、当時は橋下の賞賛をすれば雑誌が売れる、テレビの視聴率が上がるという時代だったためか、これを問題視した報道や声はかき消されていたように思う。狂気とはこのような状態を指す。
◆耐え難いほど姑息すぎる橋下、中原の言動・行動・身の振り方
橋下も中原も法律を熟知した弁護士である。しかし彼らは法律を「自分にとって都合のよいように」使う術に長けているだけであり、本物の法律専門家とは言い難い。しかもその人間性の醜さは中原の身の振り方が示している。民間弁護士→府立高校校長→府教育長→ギャンブル会社役員との遍歴はおかしくはないか。
橋下や中原の頭の中にあるのは、その周辺をどんな言葉で言い繕おうとも決して社会正義や長期的な視野に立脚した地方自治体の在り方などではなく、「当座、目の前にある利益の確保」だけである。それが失敗すれば自分の判断間違いではなく、状況や他人に責任を転嫁する。
姑息だ。
耐え難いほど姑息だ。
もうこんな連中に騙されてはいけない。同じ心象を持つ安倍という災いが首相の座に居座る不幸の相似形と言ってしまえばそうなのだが、ここまで剥き出しの悪意にはもう退場してもらわなければならない。
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。
◎橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
◎セガサミー会長宅銃撃事件で囁かれる安倍自民「カジノ利権」日米闇社会抗争
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」