折に触れて地方に思いを馳せていきたいが、今回は淡路島のことを書きたい。
自然豊かで温泉もある淡路島は、神戸から車で1時間弱と、日帰り旅行には最適の距離。
だが、神戸から淡路島の中心地の洲本まで、神戸淡路鳴門自動車道で行くと、ETC割引を使っても、往復で5000円前後かかってしまう。
世界最長の吊り橋である、明石海峡大橋の建設費を回収するということで、割高になっているのだ。地元の人々は「橋代が高い」と嘆く。
これでは、自然と温泉を味わうなら他のところへ行こう、となってしまうだろう。
淡路島から見ると、どうか。
淡路島には、映画館は1軒しかない。神戸まで車で1時間なら、ちょっと映画を見に行くにも遠い距離ではないが、5000円は痛い。これだったら、神戸に出て行って働こうと、若者なら思うだろう。
神戸と橋で繋がるというのは、島の人々にとって悲願だったはずだが、観光客は来ない、若者は出て行ってしまうという、ストロー現象が如実に働いてしまっている。
「淡路にはなんもあらへん。魚もたまねぎも女も、ええとこはすっかり神戸と徳島にもってかれてまうんや。淡路は阿波への道で、徳島への単なる通り道なんや」と地元の男性は嘆く。
そう言えば、港には「ホステス募集」の看板がポツンと立っていたが、応募先は徳島の電話番号だった。
淡路島といえば、鳴門の渦潮。大鳴門橋には、遊歩道「渦の道」がある。渦潮の発生する真上まで行くことができ、床の一部がガラス張りになっている。だが入り口は、徳島側のみにある。渦潮さえ、徳島に取られてしまっているかっこうだ。
だが、実際には何もないとうことはなく、ちょっと住んでみたいと思わせる土地だ。
なによりも、図書館がいい。
淡路島洲本市の図書館は港のすぐ近くにあり、東京ではお目にかかれない瀟洒な煉瓦造りの建物。広々しすぎていて、どこから入るのか戸惑うほどの贅沢な造りのエントランス。中もゆったりしていて、椅子に腰掛けて本を読めるスペースが広い。中庭もあり、そこでも本を開くことができる。日がな一日ここですごせば、きっと心休まりそうだ。
淡路の風土を生かして、さぞや優秀な建築家が設計したのだろうと思ったが、元は紡績工場の建物だったらしい。
試しにいくつかマニアックな本を検索してみたが、東京と比べても所蔵数は数的にも質的にも見劣りするものではない。
神戸と徳島の両都市に近いというところも本来は魅力なのだが、高い高速代がネックだ。
高速の完全無料化は難しいとしても、こうした苦境には対処してほしいものだ。
(FY)