出たよ、という感じだ。命をかける、と政治家が言う時。それはウソをつく時だ、とほとんどの国民が気付いているだろうに。
3月24日、「日本アカデメイア」の会合で野田佳彦首相は、消費税増税を含む社会保障と税の一体改革について、「決断できなかったならば、野田内閣の存在意義はない。不退転の決意で政治生命をかけて、命をかける」と語った。

問題は、社会保障と税の一体改革ができるかだ。
3月16日の参院予算委員会では、野田首相はこんなことも言っている。
「将来への不安をなくしていくことで消費や経済を活性化させる要素もある」
なんと、増税で経済が活発になる、と言ったのだ。

今年の夏、エアギター選手権に参加しようと思っている筆者は、フィンランドの友人とよく話す。
よく知られているように、フィンランドの消費税は高い。食品は17%、他の商品は22%。ガソリンは60%が税金。しかも所得税も20~30%と高額だ。
その代わり、医療費は無料に近く、義務教育から大学卒業まで授業料無料だ。
失業すると、前職の給与の65%の失業手当が2年半給付される。

「フィンランドにはホームレスとか、いないんでしょうね」と聞くと、「いないよお。だって、凍ちゃうもの」と友人は笑う。

医療費や教育費にお金がかからないなら、高い税金にも納得しているかと思いきや、「なんでこんなに高いんだ」とは、思うらしい。
それでも税金を払うのは、政治がガラス張りだからだ。トランスペアレンシー・インターナショナルというNGOが公表する腐敗認識指数、すなわち政治のクリーン度で、フィンランドはいつも上位に位置する。2011年も第3位だった。
自分たちの払う税金が無駄に使われていない、という確信があるのだ。
ちなみに日本は14位。日本よりクリーンじゃない国が、ごまんとあることにも驚きだが。

北欧型の福祉国家では経済が停滞する、という見方も以前にはあった。だが、2011年の世界経済フォーラム(WEF)による国際競争力ランキングでは、フィンランドは4位。日本が9位なのは震災の影響で致し方ないとも思えるが、2010年は6位で、やはりフィンランドのほうが上だ。
経済協力開発機構(OECD)による国際的な学習到達度調査(PISA)でも、日本よりフィンランドが上だ。
しかも、学校は午後2時くらいまでには生徒が帰ってしまい塾通いもないという、超ゆとり教育。会社も6時を過ぎれば皆帰ってしまう。

フィンランドのような社会になるのなら、増税もいいだろう。だが、ガラス張りとはほど多い日本の政治。国民が全く政治を信頼していない日本では、とうてい望むべくもない。

3月24日の都内での講演で、野田首相は言った。
「環太平洋連携協定(TPP)はビートルズだ」
謎かけみたいだが、その心はというと、「日本はポール・マッカートニーだ。ポールのいないビートルズはあり得ない」「米国はジョン・レノンだ。この2人がきちっとハーモニーしなければいけない」とのこと。
レノンとポールが仲違いしてビートルズが解散したことを、どじょう首相はご存じないのだろうか?
これは明らかに、謎解きのしかたが間違っている。
「消費税増税はビートルズだ。その心は、解散」が正しいだろう。
命がけというなら、解散して信を問えよ。

(FY)