メディアにばらまかれた、年間2000億円ほどの東電の広告費。そこにこめられていたのは「原発について多少危険があっても、黙認してくれ」というシグナルである。
小学館の罪にも触れよう。
『週刊ポスト』には、震災前の1年間に16ページほど東電関連広告が入っている。東電の接待は、事故や不祥事の直後に豪華になる。海外出張のときに現金を渡したり、誕生日や家族の記念日にかこつけて数十万円の商品券を送ったりもした。

原発の事故直前には、小学館の『週刊ポスト』『SAPIO』などの編集長を歴任した坂本隆氏の定年慰労会が計画されたが、その幹事は東電の横浜支社長だった。
「原発事故で、この慰労会がなくなりましたが、開催されていれば、商品券や現金が乱れとんでいたでしょう」(元小学館社員)
小学館の定年になる編集者の慰労会を東電が仕切るとは、嗚呼なんたる堕落か。

そもそも小学館の社員は金遣いが荒い。神保町では小学館の名刺で飲める店がいくつもあり、「小学館の名刺はクレジットカードよりも信用がある」などと囁かれた。さすがに最近はなくなったが、編集部には「夜食」として、老舗料理屋から取り寄せた、うな丼、かつ重、寿司弁当が山のようにあったという。社員が「こんなのには飽きた。渋谷クン、カニでも食べにいこうぜ」と、打ち合わせで言い放った金銭感覚に驚いたことがある。さらに、電車で帰れるのにあえて残業してタクシーで帰ったり、アイドルグラビア雑誌の編集者は「ちょっとハワイに撮影の下見に」などといっては意味なく豪遊していた。

「そういえば、東電幹部とマカオに取材旅行に行った旅行雑誌編集長がいたなあ。まったく記事になっていないから遊びにいったのだろう。一説には、ギャンブルで400万円負けたとか」(元小学館スタッフ)
もはやもう、怒りを通り越して悲しくなってくるような伝説である。

その昔、『週刊ポスト』で記者をしていた男がこっそり語る。
「東電に原発の現状を取材したいというと、福島までの電車の切符やホテルを手配してくれる。温泉にもつれていってくれる。現地では原発を案内してもらって、旅費と称して、おこづかいまでくれる。あれでは誰も原発を悪く書けないよ」
ちなみに、小学館の『小学一年生』などで「電気のしくみ」などを東電に取材するときに、銀座の高級クラブで接待された編集者とライターを知っている。

「小学館は特殊ですよ。仕事は編集プロダクションやライター、デザイナーなどに丸投げして、自分は接待旅行に行く編集者が多かったですね。徹夜ばかりなので文句を言うと、神楽坂の高級料亭を予約してくれて『そこで寝ていい』と。なんでも金で解決する体質でしたね」(小学館系編集プロダクション)

鹿砦社の松岡利康社長は語る。
「ハハハッ、実はボクも、10年余り前は、『ポスト』と組んでスキャンダル記事をバンバンやっていたことがあったけど、こちらは小学館に何度か接待してもらいました(苦笑)。もう今はやってないらしいけど、帰り際にはタクシー券くれてね。その代わり、『ポスト』の連載を元に『八百長』という本を出した時には相撲協会から東京地検特捜部に刑事告訴されたけどね。ちなみに、それは不起訴になりました」

貴族体質、金満出版社の小学館よ!! 一度、仮設住宅に泊めてもらい、じっくりと原発被災者の声を聞け。豪勢な編集者生活は、当分の間、やめていただきたいものだ。

(渋谷三七十)