「戦争したくなくてふるえる。」というワードを見聞きした時、それがデモの名称だと分かる人は果たして何人いるだろう。
しかし、これがデモの名前だと分からなくても全然構わない。
自分の好きな歌手、西野カナの曲から着想を得てネーミングしたデモが街に出現したということが重要なのだ。
安倍政権が進める「戦争法案」(安保関連法案)が人々の眠っていた気持ちに火をつけたことは間違いない。

6月26日(金)、札幌市中央区で「戦争したくなくてふるえる。」というデモがあった。
呼びかけ人は、北海道札幌市在住・19歳フリーターの高塚愛鳥(まお)さんだ。
彼女が地元での行動を思い付いてから、たった9日後に700名もの人を集めたデモを行なった。


[動画]戦争したくなくてふるえる。 デモ行進 – 2015.6.26 北海道札幌市(5分13秒)

サイトには、「Stupidな政治家たちに自由で楽しいあたし達の暮らしを奪われてたまるか!絶対に戦争なんかさせない!絶対に絶対に。」と、自分の言葉で「戦争法案」への反対の思いが綴られている。
私はサイトを見てスッキリした思いがあった。
このデモの名称の最後には「。」が付けられていてるのだけど、これはかなり大事なポイントの一つだと感じたのだ。
「戦争したくなくてふるえる。」を表記する時に、「。」が抜けていたり「!」を付けたりしているのを見かけるが、それは主催者の持つ感覚や雰囲気を理解していないし、何よりも主催者の言葉は大事にした方が良いだろう。

この日、愛鳥さんは喋ったりコールをしている時以外つまらなそうな顔をしていたのが非常に印象的だった。
私は写真を撮る為に彼女のことを追っていたのだけれども、彼女はデモが本当につまらなかったように思えた。
しかし誤解しないで欲しいのだが、私はそこにこそ彼女に対して強い共感を覚えた。
デモを行なうことで承認欲求を満たしたり、そこを居場所にしたりしている人々とは違うことが分かり、安心したと同時に尊敬もした。
彼女は本当にエモーショナルな部分からデモを呼びかけたのだと感じた。

この「戦争したくなくてふるえる。」は「新しい」という言葉で表現したり評価するのは安直な気がしている。
新しいもなにも、デモに正解はなくそれぞれの運動がそれぞれの動きをするのは当然だし、自然とやっているのだ。
旧来のデモが嫌な彼女は、せめて自分の好きな西野カナの要素を入れてみたり、コールをラップ調にしてデモを企画した。
映像を観てもらえればわかるのだけど、主催者の思い描いていたリズミカルなシュプレヒコールになっていないブロックもあって、おっさんコーラーが西野カナ感ゼロのフローで「ふるえるっ!」とコールしていたりする。
それは彼女の想いが彼女のもとを離れて広がっていた結果なのだから、かえって素晴らしいと私はデモを見ていて思った。
また、デモには学校帰りでやってきた制服姿の高校生たちもいて、安倍首相が進める国づくりに対する若者たちの危機感・不安感がひしひしと伝わってきた。

デモ行進は大通西8丁目公園からすすきのまで1時間弱のコースで行なわれた。
「戦争ッ、したくなくてふるえるっ!」「戦場ッ、行きたくなくてふるえるっ!」「さっさと辞めろっ、安倍晋三ッ HEY!」「調子に乗るなっ、自民党ッ HEY!」などの若者たちの想いが込められたシュプレヒコールが街に響いた。
ゴール後、すすきの交差点(ニッカ前)に移動し、愛鳥さんら若者たちはマイクを持って街頭アピール行動を行なった。
街宣の映像は他のメディアに任せることにし、私は写真撮影のみに専念した。
以下に3枚の写真を掲載してその様子をお伝えする。

ローカル・ムーブメントの始まりを思わせる片鱗が全国各地で見受けられるようになってきた。
この動きが更に広がることはもう時間の問題だ。

[2015年6月26日(金)・北海道]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《005》戦争法案に反対する若者たち vol.1 京都
◎《004》若者に影響された沼津の戦争法案反対デモ
◎《003》自民党街宣へのカウンターin福岡・天神
◎《002》福島/名古屋ヘイトデモ反対行動
◎《001》150回目の首相官邸前抗議

『NO NUKES voice vol.4』原発いらない!全国から最前線の声を集めた脱原発情報マガジン!