8月22日(土)、青森県弘前市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
弘前市の中心部に位置する中三デパート横の広場を出発し、弘前公園方面へ進み、市役所前~弘前大学前を通過して青森銀行隣の広場まで約2kmを行進した。


[動画]青森デモ!戦争法案反対!@弘前 – 2015.8.22 青森県弘前市(3分48秒)

青森県内で戦争法案に反対する若者グループが、青森市に続き弘前市でデモを行なった。国会前だけでなく、自分たちの街からも声をあげようと青森でも若者主体のデモが企画されている。
デモ出発前の集会では、「青森は経済的理由で自衛隊に行く人が多い」「経済的にも戦争が起れば大変なことになる」「経済的徴兵制ができたら貧しい人が戦争の犠牲になる」という経済の話が多く出た。若者たちも青森の厳しい経済状況を意識せざるをえないのだろう。戦争に使う金があったら貧しい人や被災者に回せというのはもっともだ。

映像には警察官の姿が映っていないが、デモの警備にはちゃんと来ていて、隊列の最後尾にパトカー1台がついてきていた。基本的に警官は車から降りてくることはなく、直接デモを警備せず、信号操作も誘導も何もしてくれない。この警備方式は、私が知るだけで青森県弘前市(弘前警察署)と岡山県津山市(津山警察署)で採られている。
一番後ろにパトカーがいるので、後方から来る車はデモを避けてくれ、一応は警官がそばにいるので、何か起きたらすぐに対応してくれる。しかし、何か起きてからでは遅いので、デモではきちんと自分たちで警備を行なわなければいけない。
車道を通行する際は交通法規に則り、赤信号では止まらないといけないのだが、デモ行進中はその事を忘れがちな参加者が多い。今回も赤信号を無視しそうになったデモ参加者がいたので「信号が赤なので止まってください」と注意した。警察官がデモ警備を行なっている場合、赤信号でも通行できるが、それは警察官の指示が信号機より優先されているから赤信号を無視できるだけだ。「標識・標示によって示された交通の規制と違っていた場合、警察官の指示が優先される」というのが交通ルールなので、警察官が指示を出していない場合は、デモ行進中だろうと赤信号で止まらなければならない。デモでも交通ルールには十分気をつけて欲しい。

また、今回は戦隊ヒーローのピンク&グリーンレンジャー、そしてスーパーマンのコスチュームをした参加者がいた。
まず最初に言っておくと、私はコスプレや着ぐるみ等でのデモ参加に否定的だ。それは、デモを目撃した人々に、「主張と関係ないところで拒絶されたらもったいない」というシンプルな理由が一番大きい。デモ撮影をしていると通行人の声がよく聞こえてきて、コスプレや仮装に対してかなり反発が強いと痛切に感じているのだ。
もちろん、服装なんて各々の自由であるし、様々な表現や考え方はあって良いと思う。だが、耳付きのカチューシャ等の控えめな仮装、パーティーグッズ類を身に付けただけでも反発があるという事実は、頭の片隅に置いておく必要があるだろう。
街の人にどう思われようと関係ないというのは一つの考えだし、それはそれで良いと思う。そもそも「一般人」や「普通の人」なんていうものは幻想であるとも言えるし、ターゲットとしている一部の人に届けば良いという考えもあるだろう。しかし、コスプレをしてデモに参加している方の中には、それが街の人々に対して有効なアピール方法であるとむしろ積極的に考えているか、あるいは誰を対象にコスプレで訴えるかなど考えることもなくそれを行っているケースも少なくないように見受けられる。

デモで意思表示をする際は、なるべく「ノイズ」が少なくなるようにアピールを行なうのが最善の方法だと思う。要するに、そこからメッセージが汲み取れないから街行く人々がコスプレに対して否定的な意見を持ってしまっているということだ。
悲しいことに、街からの評価は「減点方式」だと思ったほうが良いだろう。これをしたからプラスになるというのではなく、これがあるからマイナスと、そのように評価されていると私は感じる。より多くの人に主張を伝達するための妨げ=ノイズとなる行為はしない方が得策だ。
当然ながら、絶対的な評価基準というものは存在するはずもなく、デモの格好に正解も不正解もない。同じ主張を共有する者同士であれば、あとは個人が自由で好き勝手にやるのが理想だろう。
しかし、まだまだ日本にデモが根付いていない事を考えてみると、コスプレはデモに対する偏見を助長させてしまう可能性があるように思えてならない。

とはいえ、コスプレや仮装が全て悪いというわけではなく、時間・場所・目的によっては有効な場合もあるはずだ。
例えば、団体のノボリだらけ、ロングシュプレヒコールで堅苦しい団体主催のデモ等の中にコスプレや着ぐるみがあると、それはそれで場を和ませる効果もあるだろう。あるいは、そういうオールドスクールのデモしか行なわれていない街では、差別化を意識して行なうのは意味があるのかもしれない。
それは、「デモ」は怖いから「パレード」という名称にする感覚と近く、その土地ではそれが最適なのだろう。あくまで主催や現場の人の主体性、そして何よりもセンスは重視、尊重されてしかるべきだ。
なぜ、今これほどまで「若者デモ」が広がりを見せ、社会にインパクトを与えているのか。恐らく、かつてのデモのイメージを払拭したからだろう。デモは民主主義における正当な行為であり、そこに疑う余地はない。にも関わらず、今まではデモに対して良いイメージがなかった人が多かった。現代の若者のセンスが日本を変えたとも言えるかもしれない。

その街の雰囲気や参加者のノリ、TPOを考えてこれからも思い思いのデモを行なっていくことが必要だ。日本にデモ文化を根付かせるのは、もう難しいとは思わない。
ここ青森でも若者たちが自分たちの考えでデモが行なわれている。


[2015年8月22日(土)・青森県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《022》戦争法案に反対する若者たち VOL.16 仙台
◎《021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田
◎《020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷
◎《019》戦争法案に反対する若者たち VOL.13 福岡
◎《018》戦争法案に反対する若者たち VOL.12 福島

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