時事通信が行った管直人元首相の原発事故についての回想インタビューを見たが、杏里の歌ではないが、怒りというよりはもはや悲しみが止まなかった。。

以下はそのほんの一部である。
★抜粋★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
-政府は阪神大震災などを教訓に官邸の危機管理態勢を強化した。危機管理監の動きも見えなかった。機能しなかったのか。

(評価は)政府の事故調査・検証委員会などの検証を基本的には待つべきだ。しかし、どの仕組みがどうだったというよりも、ほとんど機能しなかった。
役職的な危機管理監の責任はあるだろう。しかし、原発事故の状況を当然一番分かるのは、事業者(東電)だ。事業者の情報以外なら保安院の現地の情報だ。しかし、私の知っている限り、(情報は)来なかった。情報そのものが極めて不十分だった。

(事故の)早い段階でいえば、東電はトップ2(会長、社長)が東京にいなかった。それが影響したかどうかも分からない。

地震、津波に関しては、被災者からは「もっと早く」と言われるが、ある程度やれたと思う。

原発に関しては、極めて不十分だった。つまり、東電から上がってくる情報そのものが極めて不十分だった。(原因は)どうしても全部「3・11」前になる。つまりは(原発の)全電源喪失を一切想定しなかったからだ。電源が喪失すればメーターが見えない。メーターが見えなくなることを想定していないわけだから、危機管理が残念ながら結果としてうまくいかなかった。

(官邸が)ほかの理由で機能しなかったんじゃないか、と言われるかもしれないが、少なくとも、最大の問題は備えがないことだった。

-首相が前面に出ることに批判もあった。

首相が陣頭指揮を執るのは例外だ。今回は一般的には多分、例外になるから、やらざるを得なかった。つまりは、野党も国会で「将たる者はあそこ(官邸執務室)に座るべきだ」と言っていたが、黙って座っていても何にも情報が来ない。そこを「じっと待って」という人は、そういう政治家であって、陣頭指揮が一般的にいいのか悪いのかではなく、私は必要だと思ってやった。

-政府の震災関連会議の議事録が未作成だったことをどう思うか。

もちろん知らなかった。議事録がないこと自体は恥ずかしい限りだ。しかし、議事録の有無の問題と、情報開示の問題は若干違う。会議はほとんどの場合、冒頭にテレビカメラが入り、決定したことは直後に官房長官が発表した。

議事録がないこと自体は弁解のしようがないが、情報を隠したとか、情報がその時点で出ていないかというと、ほとんど出ていた。

-原発事故が深刻になった場合を想定した「最悪シナリオ」が昨年3月25日作成されたが、公表されなかった。

セカンドオピニオンというのか、現場に直接携わっていなくても原子力に詳しい人たちの意見も聞いておくことが必要だと判断した。最悪の状態が重なったときにどういう状況が起き得るのか、私自身の参考にしたいと思った。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★抜粋終

あきれるべきは、津波の対応については、「地震、津波に関しては、被災者からは「もっと早く」と言われるが、ある程度やれたと思う。」と話しているところだ。

「ある程度はやれた?」

たとえば津波だが、3月11日、震災より約40分後、午後3時27分に福島第一原発を襲った。詳細はさまざま報道されており省くが、福島第一原発は、全電源を喪失したのである。

「驚きました。本当に首相官邸には情報があがってこなかったのですね。それではいったい「だれが伝えるべきで」「だれが情報を受けるべき」だったのか。それを検証しないことには原発を再稼働させる、もしくは電気料金をあげるという話にはならないと思います」(福島県民)

その通りだと思う。

私は、管直人元首相に原発事故の責任を転嫁する大手マスコミが好きではない。原発事故は誘致してきた歴代の首相の責任であり、東電のゆるい検査システムであり、原発を政治の道具にしてきた政治家が起こしたものである。

管直人元首相は確かに言い訳に終始している。

「情報がこなかった。だから手を打てなかった。福島に乗り込まざるを得なかったのだ」と語っているのだ。

管直人はブログでこう書く。

『私は「脱原発」の行方は来年の3月11日の、福島原発事故2周年までが勝負だと考えている。世界最大の原発事故を引き起こした日本が「脱原発」を決められるか、それとも元の木阿弥に戻っていくのか問われている。原発事故の根本的原因を調べる上で、インタビューやヒヤリングを求めるべきは、原発を作ってきた人、つまりこれまで長年、原子力政策を強力に推進してきた政治家、官僚、経済人だ。しかしこうした長年、原発を推進してきた有力者は沈黙を決め込んでいる。そして、脱原発派に対し、「脱原発は無責任」というキャンペーンで圧力をかけている。原子力村はまだ健在だ。国民との力比べだ。』

もはや対岸の火事のような言いぐさである。確かに、原発を増やすという閣議決定をした2010年、鳩山政権時に閣僚でなかった管は冷や飯を食っていた。
だからそのような突き放した物言いが出るのだろう。

しかし、それでも管には原発事故について真摯に、事実を語り続けていただきたい。急務なのは、政府の危機管理システムの検証と、再構築だろう。首都圏直下の地震がきたらどうするのか。またも官邸は機能不全に陥り、首都の3000万人を見殺しにするのだろうか。

野田首相だけの問題ではない。これは、国家そのものが抱える、喫緊の重要課題だ。尖閣諸島をだれが買うか論じている場合ではない。政府の震災関連会議の議事録が存在しないと管は語る。もし本当に議事録が存在しないなら、永田町で税金を使ってやっていることは町内会の自治会レベルである。

原発事故だけの問題でなく、日本が緊急事態に巻きまれたときに、「日本政府が無能」であることを、原発事故はさらしたのだから。

(渋谷三七十)