数日前に役所から封書が届いた。ついにアレが来たか、と一瞬ひやりとしながら封を切ったが、心配の対象ではなかった。私の心配はいつかはやって来るであろう、あの「マイナンバー」だ。
逆に早くもというべきか、ほら見たことか霞が関では早速の摘発劇だ。(「マイナンバー」システムで収賄容疑 厚労省室長補佐を逮捕へ=産経新聞2015年10月13日)
本コラムで指摘してきたが、「マイナンバー」は行政や国家にとっては国民監視の手段でもあるが、同時に形の見えない「大型公共事業」である。従来の「ハコ物」と異なり、姿が見えない「大型公共事業」なので当面批判も浴びにくいだろう。
さらには恫喝にも似た「国民総監視」システムの完成が目的だから、警察をはじめ各省庁、政治家、そして企業群の思惑が交錯するに違いない。もちろんこんな監視システムは、まっぴら御免だし完成などして欲しくはない。
そして、これは私見だが当分「マイナンバー」は順調に稼働しないと予想する。個人に12桁の番号を割り振る作業くらいはさして困難はなかろう。だが企業に13桁の番号を割り振る作業では相当の問題に直面するはずだ。
企業は、真っ当に活動しているものばかりではない。休眠会社もあれば、実体のない「ペーパーカンパニー」も無数にある。それら全てに「平等」な扱いをしなければ、まともな企業からの突き上げを行政は食らうだろう。
さらに個人の定期預金、定額預金などを統合しようとすれば、各々の銀行で使用しているシステムは異なるので、必然的にシステムトラブルの発生が予想される。これは「マイナンバー」ほどの規模でなくともかつて、統合直後の「みずほ銀行」がシステムダウンに陥った前歴を見ても明らかだ。
おそらく、連中はそういった「システムダウン」や「システムトラブル」をしっかり視野に入れて(安定的なシステムという意味ではなく)、貸借対照表をこしらえているはずだ。「マイナンバー」は潰れるに越したことはないけれども、当面はトラブル連続での運用が進むだろう。請負会社にとってそうでなければ「旨み」が出ないし、実際にそのようにオフレコで発言している財界の大物もいるから、ほぼ間違いないだろう。
そして今肝を冷やしている人間の数はどの位に上るだろうか。厚労省の役人だけでなく、口利きをした政治家の名前も既に週刊誌記者の間では取りざたされている。「巨悪は眠らせない」と明言をはいた検察関係者がいたが、彼が存命だったらこの「巨悪」に立ち向かっただろうか。
ともあれ、これから「マイナンバー」関連の不祥事、事件が多発することを予言しておく。
▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。
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