迫力ある悪役を演じる北野武が加わったことで、好調に観客動員数を伸ばしている劇場版「MOZU」。主人公の西島秀俊がヘビースモーカーで「嫌悪感が走る」と嫌煙家たちの間で話題にのぼるも、これに反論した。

劇場版 MOZU

俳優の伊勢谷友介が、「タバコが嫌いなのを映画に当てつけてる」「無視していくべきだと思う」とコメントし、さらに「本当にどうでも良いと思ってる。そういう所やーやー言われても、無視していくべきだと思う」とまっこうから嫌煙の議論に反抗した。これに「よくやってくれた」とばかりに、愛煙家としては久しぶりに溜飲を下げている。とくに「喫煙派の演出家」が喫煙シーンを増やしそうだ。

「いやいや、伊勢谷は、映画とタバコをからめて『喫煙が悪い』とされる風潮に反論したので、別に喫煙を是認したわけではありません。それなのに、現場のディレクターたちは、これでタバコが似合う俳優たちがイキイキとできる。とくに悪役で食っている連中たちは、うれしがっていて、脚本上、タバコのシーンがじわじわ増えているのです」(ベテランの脚本家)

今や、刑事ドラマでも刑事たちは喫煙しない。かわりに楊枝をくわえていたり、ガムを噛んでいるのが通例だ。
「よくよく考えれば、本物の刑事たちも、警察が禁煙なのでそのほうが自然なのですが、遠藤憲一やオダギリジョーなどは、タバコを手にしたほうが絶対に絵になると演出家たちは考えていますよ。女性でも、何も指示しなくとも、小泉今日子や室井滋などは、アクが強い役をやると喫煙したがる。要するに喫煙する、しないは表現の自由だと思いいますよ」(都内のテレビ制作会社スタッフ)

かつて、宮崎駿の引退作のアニメ「風立ちぬ」の喫煙シーンが多いことにクレームがついたのが記憶が新しいが、そのときのクレームは、「病人の前で喫煙している」「学生にタバコを勧めている」の2点が問題となった。

「確かに、テレビシリーズでも映画でも、西島はよく喫煙している。だがこのシリーズに限っては、喫煙シーンは不気味な犯人が得体のしれない目的のために動いている不気味さを描くのに不可欠だと見るのが正しい」(同)

制作したTBSに「タバコのクレームは何件来ていますか」と聞くと「喫煙シーンが多くて不愉快だという意見はいただいていますが、件数は掌握してません」とのこと。

確かに、喫煙するしない、は映画の本質ではない。制作したTBSもそんな枝葉末節なことは「煙にまきたい」というところだろう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。
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