人工画像・動画と新世代の世論誘導、USAIDは廃止されたが別の手口が… 黒薮哲哉

メディアの世界でこのところやたらと目に留まるのが、加工した画像や動画である。特にXなどSNSを媒体としたニュース報道では、加工が施されているものが、日増しに増えている。事実を正確に伝える役割を持つジャーナリズムの中に、恣意的なイメージ操作が闖入してきたのである。しかも、こうした現象は、西側メディアだけではなく、非西側メディアでも観察できる。

画像や動画の加工は、フェイクニュースの原点であり、ジャーナリズムを破壊し、最後にはジャーナリストの存在を無意味なものにしてしまう。その危険性に大半の情報発信は気づいていない。事実、国内外を問わず影響力のある人々まで、おそらくは罪悪感なく加工行為に手を染めている。

◆取材しない「ジャーナリズム」の氾濫

数カ月前、あるメディアの経営者が、「わたしの媒体は、取材はしません」と淡々と話していた。取材経費が乏しい上に、スタッフの数が少ないので、現地に足を運んで取材するよりもインターネットで情報を探し、それをリライトしてニュースとして公開しているのだという。取材しない「ジャーナリズム」を社のモットーにしているのである。

別のメディア関係者も、取材よりもインターネット上の情報収集が「仕事」の主流を占めると話していた。従ってスタッフを採用する際も、ジャーナリストよりも、ネット上で情報を収集する能力が採用の鍵になる。たとえば外国語が堪能で、翻訳能力と作文能力があれば、申し分のない人材である。外国語の記事を、あたかも自社の果実であるかのようにアレンジできるからだ。

こうしたメディア状況の下で、フェイクニュースと事実・真実の区別が付かなくなり始めている。これは視聴者や読者にとっては、憂慮すべき事態である。自分たちが生活している世界を客観的な事実で再認識することが不可能になるからだ。命をリスクにかけて、紛争地帯まで足を運んで事実を確認する必用もなくなる。

◆たちの悪い反共プロパガンダが影響力を高める

米国のUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)やNED(全米民主主義基金)を廃止が、世界的にトランプ政権の評価を高め、非西側メディアまでもそれを歓迎しているが、USAIDやNEDの次世代の世論誘導装置が、SNSや画像・動画の加工になることに気づいている人はほとんどいない。USAIDやNEDの戦術は、特定の組織や個人を抽出して、そこに資金を投入して、「人力」で世論運動活動を実施するものだった。

これに対して次世代の世論誘導は、不特定多数の人々が直接的なターゲットになる。USAIDやNEDの活動よりも、よりたちが悪い反共プロパガンダが、今後、圧倒的な影響力をもってわれわれの生活の中に闖入してくる危険性があるのだ。

イーロン・マスク氏がXを買収し、さらにトランプ政権に入閣した目的を再考する必用があるのではないか。ジャーナリズムは、エンターテイメントではない。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月20日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

「カウンター大学院生リンチ事件」(「しばき隊リンチ事件」)から10年(下)──あらためてその〈意味〉と〈責任〉を問う 鹿砦社代表 松岡利康

くだんの大学院生リンチ事件は、私たちにいろんなことを教えてくれた。元々私は、いわゆる「知識人」もマスメディアも司法(裁判所)も、これまでも数多裏切られてきたことで信用はしていなかったが、このリンチ事件でそれが決定的になった。

◆「知識人」の醜態

このリンチ事件をめぐっては多くの「知識人」が蠢き右往左往してきた。それはそうだろう、「反差別」運動の旗手として自分たちが崇めてきた李信恵とこの親衛隊と言ってもいい者らが、思いもよらない凄惨な事件を起こしたのだから──。

李信恵ら事件現場に連座した者らは一夜明けて、おそらく胸中では『しまった!』と思ったに違いない。実際に五人のうち李信恵ら3人は「謝罪文」を被害者М君に提出し「活動自粛」も約束している。

また、その「反差別」運動を支援したり、なんらかの形で関わった者らは『なんてことをしてくれたんだ!』と愕然としたり絶望したりしたに違いない。当初、この事件を知った辛淑玉は「Мさんリンチ事件に関わった友人たちへ」と題するステートメント(全7枚)を公にしている。のちに撤回することになるが、おそらく事件を知ったショックから執筆した本音だろう。

しかし彼らはこぞってそれを反故にし活動を再開した。ここには人間としての良心の欠片もない。

在日の「知識人」として著名な辛淑玉は、なぜここで踏みとどまらなかったのか、ここに大きな錯誤があり、被害者М君を絶望のどん底に落とした。加害者らに影響力のある彼女が踏みとどまり、厳しく対処していれば、また違った展開になっていただろう。

加害者らと近い、当時参議院議員だった有田芳生や作家で法政大学教授の中沢けいらは事件直後来阪し善後策を練っている。特に有田は事件当日の午後に来阪している。これは偶然だろうか?

「知識人」として加害者らに信頼が篤く「李信恵さんの裁判を支援する会」の事務局長だった岸政彦(当時龍谷大学教授。現京都大学教授)は、当初コリアNGOセンターが行った、加害者への事情聴取にも立ち合い、彼の立場からして事件の内容をよく知ったはずだし、人間として研究者として、また「李信恵さんの裁判を支援する会」の事務局長として厳正に対処すべきだった。岸が厳正な姿勢を貫けば、彼の株ももっと上がり、事件後の展開ももっと違ったものになったはずである。責任ある立場にあった彼がどう考えているか、みずからの意見を表明しないので鹿砦社特別取材班は彼の研究室(龍谷大学)を訪れ直撃し問い質したが右往左往するばかりだった(この時の彼の発言と画像は『反差別と暴力の正体』に掲載)。

取材班の直撃取材に慌てふためく岸政彦

ちなみに鹿砦社特別取材班は、岸の他に有田芳生、中沢けいらにも直撃取材している(『人権と暴力の深層』に掲載)。

さらに、いわゆる「知識人」として取材を試みたが逃げられた者に師岡康子弁護士、精神科医・香山リカらがいる。

師岡は俗に「師岡メール」(『暴力・暴言型社会運動の終焉』に全文掲載)と言われるメールをМ君の知人・金展克に送り、М君が刑事告訴しないように説得してほしいと依頼している。М君は事件後しばらくは刑事告訴を躊躇したが、加害者らの態度に誠意が見られなかったことなどでやむなく刑事告訴に踏み切った。その後、加害者5名や彼らを支援する周囲の者らは開き直り謝罪文を反故にし活動自粛の約束を破った。さらには、あろうことか加害者と連携する者らによってМ君に対する激しいセカンドリンチが本格化する。

ここで師岡はリンチ被害者М君について「これからずっと一生、反レイシズム運動の破壊者」と言って憚らない。なんという「人権派弁護士」だろうか? 真の「反レイシズム運動の破壊者」は、集団リンチを行った者だろうに。

また、香山リカに至っては、精神科医とは思えない対応をした。私たちはまず加害者と何らかの関係がある者らと共に彼女にも質問状を送ったが返答が来ないので、彼女が業務委託している事務所に電話で慇懃丁寧に取材を申し込んだところ取材班のスタッフに電話を「ガチャ切り」されたと嘘をツイートしている。密かに録音されていることもあるので、取材班は殊更慇懃丁寧に電話し、その場に私もいたが、「ガチャ切り」は真っ赤な嘘である。

そうして、質問書を「どこに送付したか、書いてみては?」と言うから正直に送った住所をSNSに書いたところ、本当に書くと思わなかったらしく、しばらくして神原元弁護士から削除要請の電話があった。

さらには、鹿砦社が裁判を起こし「小口ビジネスモデルに活路を見出した」と大ウソをついている。確かに鹿砦社は1995年頃から訴訟まみれになりながらも億を越す資金を費やし闘ってきた。しかし、それで儲けたことはなく、逆に神経を擦り減らし資金を注ぎ込んだだけで「小口ビジネス」などにはなっていない。さらに香山は「嫌がらせされ続けている」とか「『リンチ』ですらなかった」とか「鹿砦社の罪は重い」とか言い放っている。私たちは香山に「嫌がらせ」など続けていないし、香山は判決文を読んだのか、「『リンチ』ですらなかった」ということが妄言で、「罪が重い」のはリンチ事件を隠蔽し、よって被害者М君がPTSDに苛まされていることに手を貸した香山のほうこそ「罪は重い」! 特に香山は精神科医だから、暴力で、未来を嘱望されていた某国立大学大学院博士課程(当時)のМ君の人生を台無しにしたリンチ事件の重みが解っていないのか、精神科医・香山の見識と人間性、精神科医としての資質と職責を問う。

ここでは紙幅の都合上リンチ事件に蠢いた数人を採り上げるにとどまったが、これらの他にも弾劾されるべき人物は決して少なくはない。血の通った人間ならば、胸に手を当てて虚心に反省すべきだ。

◆報じるべき問題を報じないメディアの責任

大小を問わず、本件リンチ事件を報じたメディアは唯一鹿砦社のみだった。『週刊実話』がコラム記事で小さく採り上げたが、加害者らとつながる者による激しい抗議で謝罪した。以来、被害者と鹿砦社へのメディアの援軍は遂に現れなかった。SNSで、この問題に言及する者がいたにすぎない(主に右派とされる者)。

メディアは、朝日新聞はじめほとんどのマスメディアが李信恵を「反差別」運動の旗手として持ち上げてきた手前か、真相が明らかになってきた段階でも無視した。つまり、言ってしまえば犯罪に加担したと言っても過言ではない。メディア、特に大手新聞は社会の木鐸ではなかったのか?

М君や鹿砦社は何度も司法記者クラブに記者会見を申し込んだが、一切拒否された。一方加害者らの記者会見はすんなりと何度も開かれた。リンチ事件の真相が明らかになった段階でも、大手新聞は李信恵の活動や生き方を美談として採り上げ続けた。ジャーナリズムの見識を疑わざるをえない。

特に、当時朝日新聞の大阪社会部記者だった阿久沢悦子は、М君が同紙で事件を採り上げてもらえると期待したが裏切られた。阿久沢記者は「浪速の歌う巨人」と自他称される趙博を紹介し、体よく貴重な資料を趙に渡す。趙は一時は私たちと共闘を約束し一献傾けたが、突然掌を返す。当時まだ公になっていないA級資料ばかりだ。この資料はどこへ行ったのか? まさか権力の元に渡されたのではないか、という危惧が絶えない。趙は、いろんな運動や組織に顔を出し、こうした行為を行っていると聞く。ある党派では「スパイ」視されているそうだ。阿久沢にこうしたことを聞き質そうとしたら、またもや逃げられた。いやしくも朝日の記者ならば、堂々と私たちの取材に応じよ!

メディアで言えば、これに出入りする「ジャーナリスト」と称される者らも責任を問われるべきだ。特に事件の詳細を知る安田浩一、西岡研介らは逃げないだけましだが、終始加害者側に与した。安田は李信恵と公私ともども深い関係にあるとされるし、西岡は先の『週刊実話』謝罪問題に関わったとの情報がある。

いずれにしろ、メディアが事件隠蔽に手を貸し、いまだに李信恵を持て囃し立てていることは大いに問題だと言わざるをえない。

ジャーナリストで本件事件に関心を寄せ被害者に寄り添ってくれたのは山口正紀(故人)、北村肇(故人)、黒薮哲哉、寺澤有ぐらいである。それも私たちが出版した本を渡したりして説明してからだ(私たちとて事件から1年余り経ってから知ったのだが)。加害者側の隠蔽活動が成功したということだろう。それでも事件を発見し社会に摘示するのがメディアの責任だと思うのだが……。

◆果たして司法(裁判所)は公平・公正なのか?

誰しも司法(裁判所)は「憲法の番人」で公平・公正だという神話を信じている。果たしてそうか?

本件一連の裁判闘争に関わるまでは、私もまだその神話をわずかながらも信じていた。だが、一連のリンチ事件関連訴訟を体験する中で、その神話が完全に崩れた。

おそらくリンチ被害者М君も、ようやくしっかりした代理人が就き司法(裁判所)への期待が大きかったようだし、完全勝訴を信じてやまなかった。

ところが、その期待はあえなく裏切られる。

M君が加害者五人組を提訴した民事訴訟、一審大阪地裁は、李信恵がМ君の胸倉を掴み一発殴り(ここのところが、グーなのかパーなのか激しいリンチで記憶が定かでないことを衝き、これは認められなかった)集団リンチへの口火を切ったにもかかわらず免責された。

刑事でも同様だ。なにか在日の李信恵に対して躊躇や遠慮が感じられた。李信恵のみならず、伊藤大介、松本英一らについても同様だ。伊藤は一審では賠償が認められたが控訴審では一転免責された。この訴訟の経過については、山口正紀(故人。元読売新聞記者)の長大なレポート「〈М君の顔〉から目を逸らした裁判官たち──リンチ事件・対5人訴訟“免罪判決”の構造」(『暴力・暴言型社会運動の終焉』掲載)をぜひご一読いただきたい。

結局、高裁で賠償が認められたのは金良平に113万円余プラス金利、一発だけ殴った凡に1万円だけで、あとの3人は免責されるという非常識極まりない判決だった。軽微な判決と断ぜざるを得ない。さすがに裁判所も全面免責というわけにはいかなかったのか、李信恵ら3人だけを免責し、金良平と凡にのみ賠償を課しお茶を濁したということだろうと思う。

また、М君の裁判闘争への応援の意味もあって、鹿砦社は李信恵を訴え、さらに3年間鹿砦社に入り込みほとんどの就業時間に本来の業務を怠りネットで活動を続けたカウンター活動家・藤井正美も訴えた。これらについて李信恵、藤井正美ともに反訴し(李、藤井両人の代理人は神原元弁護士)、鹿砦社の請求は一部は認められたがほぼ棄却され、一方鹿砦社は李信恵に110万円(一審は165万円。控訴審で減額)、同藤井に11万円の支払いが命じられた。

各々の訴訟の詳細は省くが、不公平・不公正感は否めない。特に対藤井訴訟では、あれだけの職務怠慢を平気な顔をして続けながら免責、逆に多大な被害を被った鹿砦社に賠償を課すという非常識な判決だった。この訴訟、鹿砦社の代理人は森野俊彦弁護士、司法を裁判所の中から変えようと「日本裁判官ネットワーク」で現役の裁判官時代から活動され顔を出して会見をされたりしていた。裁判所としては愉快ではない存在だったのだろう、当初からとっちめてやろうという敵意さえ感じられた。

ともあれ、私たちが「カウンター大学院生リンチ事件」と呼び、俗に「しばき隊リンチ事件」といわれる本件から10年が経過した──。

人生を狂わされたМ君にはМ君なりの想いがあろう。事件が隠蔽され1年余り経ってから関わった私にも私なりの想いがあり、その一部を申し述べさせていただいた。
それにしても、なぜ「知識人」は逃げたりメディアは報じなかったり裁判所は真正面から傷ついたМ君に向き合わなかったのか ── なんらかの〈意志〉が働いているとしか思えない。私たちの後から関わってくれた黒薮哲哉が指摘するように一連の訴訟は、司法当局が管理する「報告事件」かもしれない。闇は深い。(本文中敬称略)

《関連過去記事カテゴリー》  M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/

鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

なんじゃこりゃ?! トランプ2.0政権のウクライナ・ガザ「和平」……「米露権威主義の枢軸」vs「市民発・法の支配」の時代へ! さとうしゅういち

米国のトランプ大統領は、2025年1月20日に就任すると、(ある程度就任前から予告していた)とはいえ、世界を震撼させる外交方針を打ち出しました。

◆火事場泥棒にも程がある! トランプ大統領

一つは、ガザ停戦。米国がガザを所有し、巨大リゾート開発を行う、という、奇想天外なものです。これが火事場泥棒と言わずしてなんというのか? そして、〈ハマス壊滅〉でイスラエルは徹底的に支援するという点は、バイデンと変わりはありません。これでは和平など夢のまた夢でしょう。

二つ目は、ロシア・ウクライナ戦争の終戦です。トランプ大統領はICCから国際指名手配中でもあるロシアのプーチン大統領と電話会談。終戦への協議を開始しました。これについては、選挙公約通りです。ただし、終戦のやり方が問題です。

筆者は、今回の戦争で、先に手を出したロシアが悪いと考えています。他方で、ロシアが侵攻する前のドンパス戦争については、ウクライナ側にも一定の問題がありました。100%ロシアが悪いわけでもなく、また、平和記念式典に広島市長がロシアを招待しないのはおかしいと考えています。

とはいえ、今回のトランプ大統領による和平案は明らかにおかしい。仲介者でありながら、最初からウクライナに領土をあきらめるように迫っています。さらには、レアアースなどの天然資源を米国にいわば「献上」するように求めています。

三つ目には、ロシアのプーチン大統領や、ガザにおける大虐殺でイスラエル首相のネタニヤフ被疑者に逮捕状を出していたICC(国際刑事裁判所)=赤根智子所長に対して、トランプ政権は制裁を科しました。

ガザにせよ、ウクライナにせよ、火事場泥棒と言う言葉がトランプ大統領には良く当てはまります。こんなことを放置しておけば、そのうち「尖閣、竹島、北方領土は米国が所有」とでも言いだしかねません。

◆「米国自身が戦争」から「ブローカー」へ

米国自身が戦争をするスタイルの帝国主義はおそらく、2021年8月15日、アフガニスタンからバイデンが撤退したことで、実は終わったとみられます。ウクライナにしても、バイデン政権は武器を送るだけでした。 

もちろん、核保有国であるロシアとの直接対決を避けたかったことはありますが、それだけではない。米国自身にもう、余裕がないのです。そこで、企業でいうと総会屋みたいな感じで紛争の仲介でぼろ儲け。そういうビジネスモデルの転換があるのではないでしょうか?

◆第二次世界大戦以降のダブスタ国家からダークサイドで筋通すトランプへ?!

第二次世界大戦以降、バイデンまでの米国、特に民主党政権や共和党でもジョージ・ブッシュらネオコンは、人権や民主主義を「錦の御旗」に掲げつつ、自分たちの都合の悪いことには口をつぐむ。そういう意味では偽善的であり、ダブスタなところもありました。

第二次世界大戦までは、米国はいわゆるモンロー主義が強く、第一次世界大戦でも、自分たちが大きな被害を受けてから参戦するくらいでした。第二次世界大戦が開始されるまでもその空気は強かった。だが、日本軍の真珠湾攻撃がある意味それを変えてしまった。

第二次世界大戦では米国は「民主主義とファシズムの戦いだ!」と言いながら、当時の戦時国際法に反するような民間人爆撃、広島・長崎への原爆投下を行ったのは米国、それも民主党政権でした。

冷戦期には、ソビエトを悪に見立て、民主主義の守護者を自称しつつ、ベトナム戦争などで蛮行を繰り返してきました。あるいは、イランの民主政権をクーデターで倒し、皇帝独裁を復活させるなど、ご都合主義的な面も目立ちました。それでも、「人権」「民主主義」は米国の点前でした。

そして、1989年に冷戦が崩壊すると、しばらくは米国の「一人勝ち」状態になった。1990年代は国連のお墨付き付きで、ブッシュジュニア政権以降は「有志連合」方式で、「米国の気に食わない政府は武力で倒して民主化する」方向で暴走。オバマ政権も実は、これを継承していました。オバマが広島に来た時「死が舞い降りてきた」などと他人事のような演説をしていましたが、オバマとはそもそもそういう人です。期待する方が間違いです。

バイデン政権は、ロシア・ウクライナ戦争では、ロシア非難、ウクライナ支援。一方で、パレスチナ問題についてはネタニヤフによるパレスチナ侵略や虐殺を支持し、パレスチナ支持の学生運動を弾圧しました。これがダブスタと言わずなんというのでしょうか? 他方で、トランプ政権1.0を受け継いで、アフガンから撤退する、保護貿易を進める、前後のトランプ政権との連続性も見受けられます。むしろ、このころには米欧日vs中露の新冷戦と言われる時代に突入したかに見えました。

しかし、2025年発足のトランプ2.0政権は、ロシアーウクライナ戦争で、ウクライナに領土放棄や天然資源の献上を迫っています。一方で、パレスチナ問題では、米国がガザを所有という、パレスチナ人を人とも思わない態度はバイデンから受け継いでいるとも言えます。ある意味、悪い意味で筋が通るようになったとも言えます。

◆〈法の支配〉では筋通すICC

ICCは、プーチンとネタニヤフ、両方に逮捕状を出しています。従って、プーチンを支持する一部日本の左翼の方々、ネタニヤフ被疑者を支持する日本の右派の方々両方から評判が悪い。

しかし、新冷戦における東側=ロシア、西側のイスラエル双方の戦争責任を問うているわけで、極めて公平です。ただ、それは、実はプーチン、ネタニヤフ両方と仲がいいトランプにとっては、不都合であり、今回の制裁になったのです。

◆米露権威主義の枢軸で戸惑う日本政府

日本政府は、バイデンまでの米国が建前「法の支配」を主張しており、その尻馬に乗る形で、「自由で開かれたインド太平洋」とか「法の支配」「力による現状変更を許さない」とオウム返しで言ってきただけではないか? 〈法の支配〉の大切さを本当に理解していたわけではないでしょう。

しかし、冷静に考えると、日本も軍拡では中国に対抗し続けるのは土台無理です。〈法の支配〉しかないのです。ネタニヤフもプーチンも、逮捕状が出たことで、外交に制約がかかり、だいぶ堪えています。習近平主席だって、それを見たら、うかつなことは控えるでしょう。

日本は、ICCの赤根所長を守っていくべきです。ただ、トランプによるICC制裁に反対する独仏英などの声明に日本政府は参加しませんでした。情けない。もちろん、イギリスにはパレスチナ問題の原因として、ドイツには、いままでさんざん、イスラエルを支持してきたことの反省は求めたいですが。かくなるうえは、市民や広島市などの平和行政のレベルで、ICCの姿勢を支持することを呼びかけます。

◆ゼレンスキーはパレスチナに謝罪し、共同して〈米露権威主義の枢軸〉に当たれ!

さて、ウクライナのゼレンスキー大統領は2023年10月7日のハマス政権によるイスラエルへの〈攻撃〉(恒常的に続いてきたネタニヤフ被疑者による侵略・虐殺への報復)を受けて、ネタニヤフ被疑者を全面支持してしまいました。

しかし、これを契機に、ゼレンスキー氏は、インド(パキスタンと険悪な関係で、反イスラム色が強い)以外のグローバルサウスからドン引きされてしまい、旗色が悪くなったのです。もはや、トランプになって米国はウクライナのはしごを外しました。

また、ネタニヤフ被疑者率いるイスラエルはロシア制裁に加わらないほぼ唯一の西側国家です。ゼレンスキー氏は潔くネタニヤフ被疑者支持が誤りであったことを認め、パレスチナに謝罪されたらどうでしょうか? その上で〈米国によるガザ所有にもウクライナ領土のロシアへの割譲および、トランプの火事場泥棒的なウクライナ天然資源巻き上げに断固反対する〉共同声明を出し、世界中の市民、グローバルサウスやEU諸国、あるいは日本や中国などに支持を呼び掛けるのです。

もはや、ゼレンスキーがロシアとまともに武力で闘っても勝てません。消耗戦なら人口が多いロシアが有利に決まっている。それを直視した上で、各国政府だけでなく、市民レベルでの国際政治での多数派工作に徹し、米ロとイスラエルの〈権威主義の枢軸〉に対抗すべきだ。この場合、中国も米露側においやらない柔軟さが求められます。

◆日本・広島は〈法の支配〉軸に横の連携で〈米露権威主義の枢軸〉けん制を

また、日本も他人事ではない。それこそ、トランプが〈尖閣・竹島・北方領土を所有〉などと言いだしたらどうするのか?そうさせないためにも、裏で良いのでウクライナとパレスチナの首脳会談をセットするなどしても良いでしょう。官房機密費とはこういう時のためにあるもので、自民候補の選挙費用ではないのです。

米欧日vs露中の〈新冷戦〉から 米露中の権威主義の枢軸vs市民が進める法の支配へ、対立軸は変化しています。大国間の戦争は起きづらくなるが、大国政府の談合で市民が犠牲になりやすい時代にもなりかねない。

日本政府は、核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加をしない、と2月18日決めました。しかし、再考願いたい。岩屋外相の発言を意訳すると米国が核兵器の先制使用をしてくれることも日本政府は当てにしているから、というのが不参加の理屈です。だが、そうなると、ロシアの核威嚇も否定できなくなる。そして、いまや、米露が談合して、ロシアによる核威嚇も不問に付している。そういう状況の下で、過度な米国忖度は無意味です。

こうした中、広島はどう対応すべきか? まず、平和首長会議など横の連携重視に徹するべきです。オバマやバイデン相手の米国忖度路線は通用しません。核兵器禁止条約批准国や平和首長会議加入自治体と広島はスクラムを組み、核兵器保有国の首脳を突き上げていく。それしかないのではないでしょうか?

原爆ドーム前でのネタニヤフ被疑者による侵略・虐殺への抗議行動。毎日18時頃から有志が今も粘り強くたち続けています(2月13日筆者撮影)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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新鋭もロートルも、DUELで輝くRORD TO CHAMPION! 堀田春樹

前日計量は2月8日、12時よりVALLELYジムにて、全員一回でパス。
DUELのリングでNJKF 2024年の年間表彰式が行われました。大田拓真が2年連続最優秀選手賞獲得。

◎DUEL.33 / 2月9日(日)GENスポーツパレス 18:00~20:10
主催:VALLELYジム / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)

戦績は興行プログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第7試合 67.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級3位.マリモー(=沼耕平/KING/ 66.5kg)39戦15勝23敗1分 
        VS
ソムプラユン・ヒロキ(=緑川広樹/DANGER/ 66.5kg)7戦2勝5敗
勝者:マリモー / 判定3-0
主審:児島真人
副審:宮沢30-27. 中山29-27. 多賀谷30-27

両者パンチとローキックの攻防。ソムプラユン・ヒロキは長身を利した前蹴りやハイキックも使うが、マリモーはガードを固めて回避し我武者羅にパンチで攻める。

第2ラウンドには蹴りから首相撲の展開も見られ、マリモーはソムプラユンをロープ際に追い込んで、パンチ連打でより一層追い詰めて更にパンチからヒザ蹴り、左ボディーブローでノックダウンを奪った。第3ラウンドに入っても仕留められなかったが、優勢を保ったマリモーが判定勝利を飾った。

マリモーのハイキックがソムプラユン・ヒロキの顔面を襲う
マリモーのハイキックがソムプラユン・ヒロキの顔面を襲う
マリモーの前蹴りがソムプラユン・ヒロキの喉元にヒット
マリモーの前蹴りがソムプラユン・ヒロキの喉元にヒット

マリモーは「全然駄目だったんで出直して来ます。前蹴りとか対策して来たんですけど何も出来なかったんで」と反省点を振り返っていた。

ソムプラユン・ヒロキも似た反省点で「全然駄目でしたね。ヒザ蹴り貰ってしまいました。」と言葉少なに反省を語りました。

ラウンドガールとツーショットはなかなか無いぞ、マリモー

◆第6試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級6位.愁斗(Bombo Freely/ 50.75kg)11戦6勝(3KO)3敗2分 
        VS
NJKFフライ級9位.明夢(新興ムエタイ/ 50.8kg)14戦4勝(1KO)7敗3分
勝者:愁斗 / 判定2-0
主審:梅下湧暉
副審:宮沢29-29. 中山29-28. 児島30-29

愁斗は前回11月10日にNJKFフライ級9位.永井雷智(VALLELY)にTKO負け。

明夢は前回、12月8日にNJKFフライ級7位.悠(=吉仲悠/VALLELY)と対戦し引分け。

初回早々から蹴りの交錯が始まり、愁斗がスピードで優る。離れた距離から接近してのヒザ蹴りも鋭い愁斗。明夢は出遅れ気味でも我武者羅に前進し、首相撲の展開では明夢も踏ん張り愁斗を崩し転ばす場面もあり。愁斗はテクニックの差は魅せたが、粘った明夢も善戦した。

愁斗の鋭いハイキックが明夢を翻弄
愁斗のヒザ蹴りが明夢のボディーにヒット
フライ級戦線、期待が掛かる愁斗

◆第5試合 スーパーフェザー級3回戦

パヤヤーム浜田(KING/ 58.75kg)16戦2勝(1KO)14敗
          VS
翔吾(DANGER/ 58.6kg)3戦1勝1敗1NC
勝者:翔吾 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:宮沢29-30. 梅下28-30. 児島28-29

初回早々は翔吾がパンチ連打と蹴りも合わせてパヤヤーム浜田をロープに詰めたが、浜田もミドルキックやローキックで態勢を立て直すも、翔吾がやや攻勢を維持。
しかし、浜田の左ミドルキックが冴えた。翔吾のパンチの攻勢も浜田の返す左ミドルキックが強くヒットした。

両者、主導権を奪うに至らずも終盤は打ち合う流れで終了。僅差で翔吾が判定勝利を掴んだ。

翔吾のハイキックがパヤヤーム浜田にヒット、手数で優った
パヤヤーム浜田も左ミドルキックで翔吾を苦しめた

◆第4試合 女子ミネルヴァ 45.0kg級契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ペーパー級4位.Uver∞miyU(T-KIX/ 44.95kg)14戦4勝9敗1分
      VS
杉田風夏(谷山ジム小田原道場/ 44.75kg)3戦2勝1敗
勝者:杉田風夏 / 判定0-3
主審:中山宏美      
副審:多賀谷28-30. 梅下29-30. 児島29-30

蹴りとパンチは一進一退も、接近戦で組み合うとヒザ蹴りが優った杉田風夏。ジャッジ三者が揃ったラウンドは無かったが、ヒザ蹴りで優った杉田が僅差判定勝利した。

杉田風夏は組み合ってのヒザ蹴りがUver∞miyUに優る展開に導いた

◆第3試合 フライ級3回戦

西村心(菅原道場/ 50.4kg)2戦1勝(1KO)1敗
VS
手塚瑠唯(VERTEX/ 50.5kg)4戦2勝(1KO)2敗
勝者:手塚瑠唯 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:多賀谷24-30. 梅下24-30. 中山24-30

初回、アグレッシブに多彩な攻防を魅せた両者。手塚瑠唯はパンチからハイキックでロープに詰めパンチからヒザ蹴りでノックダウンを奪った。

第2ラウンドも攻勢維持した手塚だが、西村心もパンチで攻め心折れないアグレッシブな攻め。手塚は組み付くいてヒザ蹴り連打を続けるとレフェリーはスタンディングダウンを宣した。更にヒザ蹴りで猛攻の後、崩し転ばすとダメージあることからノックダウン扱いとなって2度目となるダウン。

第3ラウンド、手塚も勢い落ちたが攻勢を維持し圧倒した展開で終了。

◆第2試合 フライ級3回戦

高橋大輝(エス/ 50.45kg)6戦3勝3敗1分
     VS
トマト・バーテックスジム(VERTEX/ 50.4kg)5戦4敗1分 
勝者:高橋大輝 / 判定3-0
主審:児島真人
副審:多賀谷30-28. 宮沢30-29. 中山30-29

◆第1試合 55.0kg契約3回戦

上原心汰(MWS/ 54.9kg)3戦1勝2敗
      VS
堤昇之(DANGER/ 54.75kg)2戦1敗1分
勝者:上原心汰 / 判定3-0
主審:梅下湧暉
副審:多賀谷29-28. 児島29-28. 中山29-28

年間表彰選手、前列は左から基山幹太、吉田凛汰朗、大田拓真、真美、小林亜維二

《取材戦記》

負けが込んでいる者同士の戦いでも、いかに目立った試合が出来るか、埋もれた実力を発揮できるかが勝負のDUEL興行。

アグレッシブにノックダウン奪って勝利したマリモーは、マイクアピールで「これだけは言わせてください」と何やら動物愛護のアピールをしていたようですが、応援ファンも「マリモー、聞こえねえぞ!」と野次られるほどマイクに声が響かない。

リングを下りたマリモーに聞いてみると「僕は動物虐待とか殺処分とか大嫌いなんです。動物たちを見守ってあげて欲しいです」と訴えていた。

以前も動物愛護精神を持ったマリモーということを聞いたことがあり、キングジムでも蛙とヘビが飼われていた時の生き物係はマリモーだったと思うが、そんな、顔に似合わない優しさを持つマリモー。もっとリング上で訴えるには今後も勝利して後楽園ホールのリングで語って貰いたいところです。

GENスポーツパレスに於いてDUEL興行でNJKF年間表彰式とは珍しいパターンでした。ちょっと規模縮小の感も拭えずも、先週2月2日興行は終了時間制限の事情もあったでしょう。昨年は後楽園飯店で行なわれましたが、後楽園ホールで興行の際の年間表彰式はリング上で最も注目される場所でしょう。プロボクシングでの年間表彰式は東京ドームホテルで開催が多く、競技組織のスケールの違いを感じます。

以下はニュージャパンキックボクシング連盟の年間表彰選手です。昨年の表彰式で「来年は俺がMVP」と宣言していた嵐は努力賞に留まるも、努力の成果が出るのが今年となるか。大田拓真のMVPは内外で活躍した結果で順当なところでしょう。

年間最優秀選手=大田拓真(新興ムエタイ)

年間最高試合(2024年6月2日開催64.0kg契約)

吉田凛汰朗(VERTEX)vs基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM)

女子ミネルヴァ優秀選手=真美(team lmmortaL)

殊勲賞=吉田凛汰朗(VERTEX)

敢闘賞=小林亜維二(新興ムエタイ)

技能賞=宮越慶二郎(拳粋会宮越道場)

努力賞=嵐(KING)

新人賞=永井雷智(VALLELY)、藤井昴(KING)

ゴング格闘技賞=小林亜維二(新興ムエタイ)

Fight&Life賞=谷津晴之(新興ムエタイ)

イーファイト賞=大田拓真(新興ムエタイ)

バウトレビュー賞=大田拓真 (新興ムエタイ)

先週の次回興行予定にこの2月9日のDUEL興行が抜けていましたが、次回NJKF関連は3月16日(日)に女子ミネルヴァ興行、「GODDESS OF VICTORY Ⅲ」がGENスポーツパレスで開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年3月号

釜ヶ崎地域合同労組委員長が「日本維新の会」交野支部幹事長を選挙妨害の疑いで提訴 裁判は2月27日13時30分~ 大阪地裁808号法廷です! 尾﨑美代子

釜ヶ崎から「日本維新の会」の選挙妨害に対する裁判が始まります。

原告は釜ヶ崎地域合同労組委員長の稲垣浩さん、被告は日本維新の会・交野支部幹事長の高石康氏です。稲垣さんは、2023年3月31日告示、4月9日投票日の大阪市議会議員選挙(西成区、定数3)に出馬しました。

その際、自身の顔写真と氏名を印刷したポスターを掲示板に貼り選挙活動を行いました。すると4月4日午後3時20分、当時のTwitter(現Ⅹ)のアカウント名「やっぱり満里奈様」というユーザーが、稲垣さんのポスターの写真に「ヨゴレ稲垣」と書いた記事を投稿しました。

これを見つけた稲垣さんは、8月28日、Ⅹ社を被告として東京地裁に発信者情報開示命令を申し立てたところ、稲垣さんの申し立てを認める決定がでました。Ⅹ社は決定に従って、人物を特定するためⅩ社に登録されたアカウントの電話番号を開示。稲垣さんの代理人がその番号について照会をかけたところ、日本維新の会のと判明しました。そのため、稲垣さんは高石氏を被告として選挙妨害で損害賠償請求裁判を提訴いたしました。

「ヨゴレ」とは物理的に何かで汚れているということを意味するだけでなく、釜ヶ崎で野宿している人や労働者を汚れている、劣った者とする差別的な表現です。ちなみに、釜ヶ崎などを警らする西成警察署の警察官は、道路などで泥酔して寝ている労働者や野宿者を見つけると、「センター西側に450(ヨゴレ)が2人」などと報告する隠語として使われているという情報もあります。

この高石氏、身長190センチでスキンヘッド、強面の風体、私も選挙を手伝った際、何度か見ています。大阪ではかなりな「有名人」? 維新関係者からは「入道さん」などと親しみを込めて呼ばれているようです。過去に橋下徹氏の後援会青年部長だったとのこと、橋下氏が市長選に出馬した2014年、同じく市長選に出馬したマック赤坂氏が橋下氏の会見場に、公開討論をやろうと入っていった際、マック氏を羽交い絞めにして会場外に引きずり出したことでも有名です。

選挙の際には松井、吉村などのボディーガードとして動いています。2023年6月には「文春」で、維新の女性府議に強烈なパワハラを行ったことが暴かれていました。

さてこの間、さまざまな選挙の場で、ネットをどう使うかなどSNSの運用について、多くの問題が噴出しています。そんななかで、高石氏の「ヨゴレ稲垣」の投稿がどういう意味をもつかを考えてみます。稲垣氏の出馬した西成区は定員3名で、維新の会の議員も立候補していました。そうした状況下、高石氏が、稲垣氏を侮蔑するSNS活動を行ったことは、稲垣氏を落選させ、維新の会の立候補者を当選させることが目的であることはいうまでもありません。

この間、東京知事選や兵庫県知事選で、元検事の郷原弁護士らが、特定の候補者を当選させさないための、いわゆる「落選運動」を展開しています。これは公職選挙法142条で認められていますが、そこでは「当選をさせないために活動に使用する文書図画を頒布する者」は、チラシなどに電子メールアドレス等を正しく表示することが義務づけられています。しかし、高石氏の「ヨゴレ稲垣」の投稿などに、高石氏のメールアドレスなどは表示されていません。これ一つみても、違法であることは明らかです。

稲垣氏は今回の提訴について、以下のように訴えています。

「ツイッター(現Ⅹ)上の投稿は稲垣を貶めるだけではなく、政治家としての資質、人格を誹謗中傷することであることも明らかです。被告(維新の会)による選挙妨害に対して損害賠償を求める裁判です」

この高石氏は、9年前の大阪市議会補欠選挙に稲垣氏が出馬した際、西成区役所近くで演説をしようと準備を始めた稲垣氏に「橋下徹が来るので立ち去るように」と妨害しました。「こっちが先に来ているだろう」と、妨害をはねのけ演説を終えましたが、その後、選挙カーに戻ろうとすると、うしろから維新の別の運動員が稲垣さんに「ヨゴレ」「ヨゴレ」と何度も言っていました。維新関係者はずっとこんな感じなのでしょうね。

ぜひ、この裁判に、ご注目とご支援をお願いいたします。

【裁判の日程】2月27日(木)午後1時30分~ 大阪地裁808号法廷

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』(鹿砦社)
尾﨑美代子著『日本の冤罪』(鹿砦社)

《緊急声明》今こそ「原発依存社会」への暴走を止める市民運動の大高揚を! 「第7次エネルギー基本計画」の閣議決定を受けて 木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)

2月18日、石破自公内閣は、原発依存度を「可能な限り低減する」とした第6次までのエネルギー基本計画をかなぐり捨て、「原発最大限活用」を明記した「第7次エネルギー基本計画」を、国会審議をすることもなく、閣議決定しました。この基本計画では、既存原発の再稼働、40年超え運転を加速し、60年超え運転の拡大、原発建て替え、新設も画策しています。

東電福島原発事故の悲惨、能登半島地震の教訓をないものとして、「原発依存社会」を定常化しようとするものです。原発は、地震に脆弱で、地震に伴って、原発過酷事故が起これば、避難や屋内退避が困難であることは明かです。

原発は、何万年もの保管を要し、行き場もない使用済み核燃料の発生源でもあります。「第7次エネルギー基本計画」は、現在および未来の人々の命・尊厳・生活を蔑ろにするものです。

なお、自公政権は、原発活用の根拠として、①地球温暖化対策を挙げていますが、原子核に閉じ込められた膨大なエネルギーを解放する原発が温暖化抑制に有効であるはずがありません。また、原発は、建設過程から廃炉、使用済み燃料の処理処分過程まで、あらゆる過程で、二酸化炭素を発生させるのみならず、海水温度を上昇させ、海水中の二酸化炭素の放出も加速します。

一方、②AI活用のために必要な電力を供給するためとしていますが、AI機器の高性能化とも相まって、政府の宣伝するほど大量の電力は不必要との見解も多数です。世界には、自然エネルギーのみでAI電力を賄おうとする国が多数あります。自公政権の「原発ありき」の主張に正当性はありません。

一方、自公政権が、2023年5月末に数を頼んで成立させた「GX脱炭素電源法」の完全施行は、原発運転延長認可の基準の整備などが終了する本年6月6日とされています。完全施行されれば、原発運転期間を「原則40年、最長60年」とした規定を原子炉等規制法(環境省の外局組織「原子力規制委員会(規制委)」の所管)から電気事業法(経産省・資源エネルギー庁の所管)に移し、運転延長を原発推進の経産相が認可するようになります。

また、規制委による再稼働審査の期間や裁判所による仮処分命令での原発停止期間などを「原発運転期間」から除外・上乗せすることで、原発の60年超え運転を可能にしています。「第7次エネルギー基本計画」は、「GX脱炭素電源法」の実態化のための計画と言えます。

◆原発政策で、変貌し続ける自公政権

石破首相は、首相就任以来、原発政策を次々に変節させています。昨年8月の総裁選出馬時には、「原発をゼロに近づけていく」と表明しながら、首相になって以来、岸田政権のエネルギー政策をほぼ踏襲して「原発依存社会」に向かっています。
経団連や経済同友会の主張に迎合・屈服しようとしています。人の命や生活の犠牲の上に、電力会社、原発産業、ゼネコンなどの大企業に税金と電力料金を垂れ流すための政策です。

変節は、石破首相だけではありません。自民党の総裁候補者の内、つい最近まで、原発に関しては慎重派であった河野太郎(元デジタル相)、小泉進次郎(元環境相)の両氏も総裁選では、この主張を取り下げています。

野党の中にも、原発容認、原発推進を掲げる政党もあります。とくに、労使協調路線の電力総連を支持母体とし、議席を増やして政権の行方にキャスティングボートを握る国民民主党は、原発推進を先導すると懸念されます。また、「原発(とくに核融合)推進」を掲げる日本維新の会は議席を減らしたものの、それでも政権の行方の狭間にあり、与野党いづれもが、これに擦り寄ると思われます。

立憲民主党の代表選も昨年9月に行われましたが、4候補者の中に、真っ向から積極的に脱原発を主張する候補はゼロでした。何れもが「避難計画ができていないから原発に賛成できない」程度の姿勢でした。「原発は、避難計画を必要とするほど危険な装置」とは思わないのか?と言いたくなります。

このように、自民党、立民党の変貌は目に余りますが、彼らがいかに変貌し、何を願望しようとも、選挙の都合、政治的思惑あるいは経済的利益で、原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。彼らが変貌すればするほど、原発過酷事故の確率は拡大します。

◆失敗のエネルギー政策の結末が「原発依存社会」への暴走

そもそも、政府や電力会社の「原発依存社会」への暴走は、脱原発の流れに乗り遅れた失敗を取り繕うためです。もし、福島原発事故以降の政権や電力会社が事故の教訓を生かして、原発ときっぱり決別し、自然エネルギーに切り替える政策をとっていたなら、今頃、化石燃料や核エネルギーに依存することなく、電気を供給し、世界の自然エネルギーへの切り替えの流れをリードできていたでしょう。彼らは、エネルギー政策で失敗したのです。自らの失敗を反省せず、更なる原発推進へと暴走する政府と電力会社を厳しく糾弾し、自然エネルギーへの政策転換を求めましょう!

◆自然エネルギーに全面切り替えを!

今、世界は、紆余曲折を経ながらも、原発縮小、自然エネルギーへと向かっています。自然エネルギーのみを利用すれば、①燃料費はほぼゼロですから、コストは原発に比べて圧倒的に安いのは当然です。②地球環境の保全にも有効で、炭酸ガスを増やすこともありません。③大地震が発生しても過酷事故に至りません。また、④自然エネルギーは国際情勢の影響を受けない自前のエネルギーで、エネルギーの自立が可能です。

もとを正せば、人類のエネルギーに対する欲望のために、原子核に閉じ込められた膨大なエネルギーを解放しようとするから、原発過酷事故が起こり、危険極まりない使用済み核燃料が発生するのです。また、地球が数億年かけて地中に蓄えた化石燃料を100年程度で枯渇する勢いで使うから、炭酸ガスが増えるのです。

現在の焦眉の課題・気候問題は、太陽から現在届いている自然エネルギーのみを利用し、原子核や化石燃料に閉じ込められたエネルギーを解放しない社会の実現を求めています。

◆「第7次エネルギー基本計画」の実行を阻止し、「GX脱炭素電源法」を撤廃させましょう!

目に見え、耳に聞こえる市民の行動の高揚によって、混沌化、流動化しながら反動に進む流れを逆流させ、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を展望しましょう!

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年冬号(NO NUKES voice 改題 通巻41号)
紙の爆弾 2025年1月号増刊
A5判 132ページ 定価770円(税込み)

COP28 原発をめぐる2つの動き 「原発3倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意〈4〉気候危機論」と原発の親和性 原田弘三(翻訳者)

◆「気候危機論」と原発の親和性

米国上院で証言を行ったハンセンは実は熱心な原発推進論者である(ハンセン著『地球温暖化との闘いすべては未来の子どもたちのために』日経BP、2012年参照)。

また、「気候危機論」を世界に広めた米国、フランス、イギリスのいずれもが原発推進に強い動機を持つ国である(この三国はCOP28での原発3倍化宣言国とも重なる)ことが物語っているように、「気候危機論」はその起源からして原発推進と強い親和性がある。先に触れたようにIPCCも従前から報告書の中で「原発はCO2を出さないため気候変動対策に有効」との見解を示してきた。それが今回COP28での「気候変動対策のために原発を推進しよう」という世界的合意として結実したのである。

「気候危機論」発祥の歴史的経緯は、「温暖化が地球環境の危機を招く」というハンセン証言以後の「気候危機論」が、1980年代以降の世界経済情勢に対応するために「人為的」に作り出されたイデオロギーであることを示唆している。そのイデオロギーの主要な意図はCO2という金融商品の活用と原発推進にある(本誌2023年夏号「『気候危機』論に関する1考察」、2023年冬号「『気候危機』論の起源を検証する」参照)。

◆「気候変動」対策を騙った原発推進を許すな

COP28が明確な「お墨付き」を与えたことにより、「気候変動」対策を謳った原発推進の動きが今後ますます強まることは間違いない。今年はエネルギー基本計画改定の年である。その中で、経済産業省は今回のCOP28合意を原発推進の口実として最大限活用するであろう。

パリ協定前文には「気候正義」という理念が掲げられている。これは、気候変動の影響や、負担、利益を公平・公正に共有し、弱者の権利を保護するという人権的な視点である。気候変動は人為的に引き起こされた国際的な人権問題であり、この不公正な事態を正して地球温暖化を防止しなければならないとする。つまり「気候変動」への対策は現代世界の不公正を正す活動であり、社会正義の実現だというのだ。

しかし、COP28合意文書はこともあろうに「気候変動対策のために原発を推進しよう」と世界に宣言したのである。究極の環境破壊である原発の推進が社会正義であろうはずがない。地球は温暖化しているのかもしれない。その温暖化にCO2の人為排出が影響しているのかもしれない。

仮にそれが事実であったとしても、温暖化防止のために原発を推進するなどということは救いようがないほど愚かな選択である。COPがそのような愚行を先導しているという現実を直視する必要がある。今回のCOP28の決定は、COPによって推進されている気候変動対策なるものの本質が、旗印に掲げている地球環境保護とは別の所にあることを物語っている。

COPの原発推進論を是認すべき道理などどこにもありはしない。私たち市民は、COP28合意文書は社会正義に反する「誤り」だと正面から批判すべきである。そして私は、福島原発事故という未曾有の核惨事を経験した国の1市民として、人類社会の持続可能性のためには脱原発こそが最優先である、と世界に向けて胸を張って主張したいと思う。

◎原田弘三 COP28 原発をめぐる2つの動き 「原発3倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意
1〉「原発3倍化宣言」という暴挙
2〉「グローバル・ストックテイク」という文書に求められた役割
3〉「気候変動」3つの概念
4〉気候危機論」と原発の親和性

◎本稿は『季節』2024年夏秋合併号掲載(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

▼原田弘三(はらだ こうぞう)
翻訳者。学生時代から環境問題に関心を持ち、環境・人権についての市民運動に参加し活動している。

昭和のビッグイベント、オープントーナメントのその後! 堀田春樹

◆お祭り騒ぎ後の静けさ

前回までに語りました、キックボクシング界の見事な結集力を見せた活気ある1000万円争奪オープントーナメントも終わってしまうと閑散とした寂しさが残りました。その後は藤原敏男に続いて富山勝治も引退し、テレビに育てられたキックボクシングは終焉を迎えた1983年(昭和58年)で、このオープントーナメントの勢いもままならず、スターは居ない、テレビは付かない、再び沈静化した時代でした。

後の52kg級域頂上決戦は松田利彦が制した(1983.5.28)
暫定的日本統一ランキングは錚々たるメンバーが揃っていたが実現せず(1983.6)

◆タイガー大久保と鴇稔之らの運命

三階級優勝者の長浜勇、松本聖については過去に格闘群雄伝でも語っており簡略しますが、松本聖は興行の不安定さから出番が無くなり、長浜勇は翌1984年5月に優勝候補の一人ながら怪我で不参加だった斎藤京二に第2ラウンドKO負け。

52kg級の優勝者、タイガー大久保はその2ヶ月後、1983年5月28日の士道館興行で、こちらも優勝候補ながら準決勝で敗れ去った松田利彦と対戦。なんと第2ラウンドあっけなくKO負けしてしまいました。混沌としていた52kg級域でしたが、松田利彦株が急上昇。優勝者が崩れ落ちるのも、まだトップスターとして定着していない中での真剣勝負の厳しさがありました。

この後、タイガー大久保はプロボクシングに転向。「キックボクシングではもっと戦う場が欲しかった」という転身でした。

当時、京成小岩駅近くの西川ジムからも近かったロイヤル川上ジムからデビューし、数戦した後、アメリカのロサンゼルスに渡るも、アメリカでの試合は不遇な目に遭ったことも後に語られていて、紆余曲折した渡米のようでした。

3回戦トーナメントは後のチャンピオン、鴇稔之、渡辺明、鹿島龍、飛鳥信也も出場していた新人トーナメントでした。52kg級に出場した鴇稔之は初戦を勝利し、「これは決勝まで行けるな!」と思ったというものの、前回述べましたとおり、トーナメントはその後、立ち消えとなりました。

56kg級においては当初の10名トーナメントの開催が遅れたまま、6名に縮小となり立ち消え、62kg級においても欠場者が増え、いずれもその後の各団体に担った運営では日程も儘ならず、新人トーナメントは当初から計画性も進んでいなかった模様である。

後の62kg級域、ライト級頂上決戦は斎藤京二が制した(1984.5.26)

◆日本統一ランキング制定

同年6月半ば、オープントーナメント実行委員会は、トーナメント(5回戦)の結果を基に暫定的日本統一ランキングを発表されました。当時としてはなかなかの層の厚い名前が連なっていたものでした。

オープントーナメントは各階級を跨る変則的3階級で行なわれましたが、ランキングは当然の正規7階級制。トーナメントに参加していない選手名もランクされていますが、それまでの実績が考慮されての反映でした。

不参加だった伊原信一は新たに開拓していた香港興行が忙しくなった時期でした。先に述べました藤原敏男の後輩、斎藤京二は1982年7月のヤンガー舟木戦で負った顎骨折の影響で不参加でした。

またトーナメント戦から外れている、同シリーズ内で行なわれた重量級交流戦も対象となっており、向山鉄也(北東京キング)vsレイモンド額賀(平戸)戦とシーザー武志(東海)vs福島晃平(高葉)戦の4名はウェルター級とミドル級に分かれてランキングされています(勝敗結果は割愛します)。

正に画期的な日本ランキングでした。なかなか興味深いカードが期待され、これが真の日本統一王座制定へ進めば理想的でしたが、すぐの実現には至りませんでした。

しかし、1000万円争奪オープントーナメントも無駄ではないその後の流れでした。このトーナメントが在ったから辞めず踏み止まる選手やジムがあり、次の時代へ活かされたことでしょう。

◆オープントーナメントの裏側

元々、低迷期脱出と再浮上を狙っての二度に渡ったオープントーナメントでした。

500万円争奪戦はテレビ放映継続へ、1000万円争奪戦は業界全体の低迷からの底上げへ。欲を出せば裏目に出る傾向から、この時はテレビ放映復活の売り込みはしなかった模様。

また、優勝賞金は500万円争奪戦も1000万円争奪戦も資金調達が間に合わなかった様子も窺えました。ここにも苦しいやり繰りがありつつ、いずれも遅延しながらも円満に支払われた模様です。

1000万円争奪オープントーナメント開催前の5回戦組み合わせ抽選では、52kg級優勝者のタイガー大久保においては、新人戦の鴇稔之同様、「これは案外楽に決勝まで行けるぞ!」と思ったところが、抽選やり直しを強行されたという話もありました。56kg級、62kg級においては決勝戦で争うカードが予想され、優勝候補がブロック分けされている工夫が読み取れます。番狂わせもありましたが好カードは幾つも実現しました。

後々に第3回オープントーナメントが行われなかったのは、高額優勝賞金調達が難しいことや、当初の企画発案者、野口プロモーションの衰退に対し、業界が低迷期を脱し、定期興行が安定した中、業界が一致団結するイベントは難しくなったことでしょう。

その後は昭和から平成、令和にかけて小規模の幾つものトーナメントは開催されて行く中、今年(2024年)11月10日のNJKF祭から2ヶ月間で行なわれているJAPAN CUP 55kg級最強決定トーナメントは錚々たるメンバーが揃っているところ、チャンピオンクラスが3回戦制とか、準決勝と決勝はワンデートーナメント(12月30日横浜武道館K.O CLIMAX)というアマチュアのような在り方に疑問点はありますが、このイベントが成功すれば他のウェイト、階級でも開催が見込まれており、来年以降もそんな規模が大きくなるトーナメント戦は増えていくと予想されます。また昭和の1000万円争奪オープントーナメントを超える開催に期待したいものです。

時代は令和へ、JAPACUP 55kg級トーナメント、昭和のオープントーナメントを知らない世代たち(2024.11.9)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2025年3月号

横浜副流煙裁判、カウンター裁判で藤井敦子さんらが敗訴、検証が不十分な作田医師交付の診断書 黒薮哲哉

横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が、それぞれ1月14日と22日に言い渡された。裁判所は、いずれも原告(藤井敦子さん、他)の訴えを退けた。藤井さんは、判決を不服として控訴する。判決の全文は、文尾のPDFからダウンロード可。

時系列に沿った事件の概要と、判決内容は次の通りである。

◆事件の概要(下記PDF参照)
 http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2024/12/fdcded61b04523e7464182896e2c1b40.pdf

◆横浜副流煙事件の「反訴」(横浜地裁)

原告:藤井将登、藤井敦子

被告:作田学、A家の3人(A夫-故人、A妻、A娘)

横浜地裁は1月14日、原告の訴えを退ける判決を言い渡した。この事件は、裁判の提起そのものが不法行為に該当するとして、ミュージシャンの藤井将登さんと妻の敦子さんが、前訴を起こしたA家3人と、それを支援した作田学医師を提訴したものである。藤井夫妻が請求された現金は、4518万円だった。俗にいうスラップ訴訟である。

藤井夫妻は、客観的根拠の乏しい診断書を根拠とした訴訟により、3年ものあいだ精神的、あるいは経済的な苦痛を受けたとして、その賠償を求めたのである。

前訴が不当訴訟ではないと裁判所が判断した根拠は、提訴に至る前段で複数の医師が、A家の3人のために、「受動喫煙症」や化学物質過敏症の病名を付した診断書を交付していた事実である。それゆえにA家の3人が、提訴するに足りる理由があったと判断したのである。

◆A娘の診断書

しかし、作田医師によるA娘に対する診断書交付は、無診察による診断書交付を禁じた医師法20条に違反している。作田医師はA娘とは面識がない。インターネットによる診察も実施していない。他の医師がA娘に交付した診断書や、A娘のA夫・A妻の話を聞いて、病名を決め診断書を交付したのである。

実際、A娘の診断書は、作田医師が「倉田医師の診断書や被告A妻から問診で聞いた情報を基に」(17頁下から11行目)作成した杜撰なものであるにもかかわらず、「違法な行為ということはできない」と認定している。こうして裁判所は、医師法20条違反も不問に付しているのである。

◆故A夫の診断書

故A夫の診断書にも不可解な点が見うけられる。作田医師は、診断書に「受動喫煙症」の病名を付しているのだが、A夫は提訴の1年半前までビースモーカーだった。25年間も煙草を吸っていた。A夫本人も喫煙者だったことを認めている。それにもかかわらず、作田医師は「受動喫煙症」の病名を付した診断書を交付したのである。

ちなみに、「受動喫煙症」という病名は、日本禁煙学会が独自に命名したもので、公式には存在せず、保険請求の対象にもなっていない。受動喫煙という現象は喫煙の現場で起こりうるが、その事と病状を呈することは別である。

◆A妻の診断書

さらにA妻の診断書にも、「受動喫煙症」の病名を付したうえに、副流煙の発生源を1階に住む「ミュージシャン」であると事実摘示している。現場を取材して、そのような結論に至ったのではなく、「問診」の中で、患者から聞き取った内容をそのまま記述した結果か、勝手な想像である。

ちなみにA家3人の診断書はいずれも、当時、作田医師が外来を開いていた日本赤十字センターの公式のフォーマットが使用されていない。

このように作田医師が交付した診断書には不可解な部分がある。A家3人が著名な医師を過信して高額訴訟を起こしたことについては、同情の余地もあるが、作田医師の責任は免れない。4518万円の訴訟を起こされた藤井さんの側が、大変な苦痛と不利益を味わったからだ。

本来であれば、裁判所はこれらの点を重点的に検証しなければならないはずだが、判決文からは、診断書に関する問題点を詳細に検討した跡は読み取れない。疑惑の診断書を簡単に是認することになってしまった。医師が交付した診断書であれば、どのようなものでも違法性はないという恐るべき結論を示したのである。

◆スラップ訴訟の法理

訴訟提起の違法性を問う裁判は、次のような法理で審理される。

「提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となるというべきである(最高裁昭和63年1月 26日第二小法廷判決・民集42巻 1号1頁参照)」

引用文の主旨は、訴訟提起に法的な根拠がなく、勝訴の見込みがないことを原告が認識していながら、あえて訴訟にふみ切った場合、訴訟そのものが不法行為に該当するという法理である。この判例でも明らかなように、訴権の濫用を認定させるハードルが高い上に、日本国憲法でも提訴権を保証しているので、過去に訴権の濫用が認定された判例は10件にも満たない。スラップ訴訟が増えている温床にほかならない。

◆名誉毀損裁判(東京地裁)

原告:藤井敦子、酒井久男

被告:作田学

この事件は、1月22日に判決が下された。原告の敗訴である。

裁判の本人尋問の場で、作田医師が藤井敦子さんと酒井久男さんの名誉毀損的な発言を行ったこと対する損害賠償裁判である。法廷という限られた場における発言とはいえ、傍聴席は満員だった。しかも、暴言を吐いたのは、かくれもしない禁煙学の大家として、その名を津津浦浦にまで轟かせている日本禁煙学会の理事長、作田学医師である。まぎれもない公人である。

事件の概要については、この記事の冒頭にある「事件の概要」を参考にしてほしい。裁判所が採用した法理は、次のような論理である。

「反論する機会が保障されており、当事者の主張・立証の当否等は裁判所に判断されることにより、訴訟活動中に毀損された名誉を回復することができる。このような民事訴訟の特質に照らせば、民事訴訟における当事者の表現について、相手方等の名誉等を損なうようなものがあったとしても、それが直ちに名誉毀損として不法行為を構成するものではなく、訴訟と関連し、訴訟のために必要性があり、かつ、表現も著しく不適切で相当性を欠くとは認められないといった事情により、正当な訴訟活動の範囲内と判断される場合には、違法性が阻却されると解される。」

端的に言えば、法廷では反論権が認められているうえに、発言を認定するかどうかを判断するのは、裁判所であるから、著しく不適切な発言をした場合を除いて原則的に自由闊達な発言が認められるというものである。

この点に関して、わたしは原告・酒井久男さんのケースに言及しておきたい。裁判所が、議論の前提となる事実認定を間違っているからだ。事実に基づいた発言なり評論であれば、なのを述べようと自由だが、虚偽の事実に基づいた言論活動は、重罪である。

◆創作された前提事実

「事件の概要」にも記録しているように、酒井さんは2019年7月に日本赤十字センターの作田医師の外来を受診した。当時、藤井敦子さんは、夫の藤井将登さんが被告として法廷に立たされた高額訴訟で、作田医師による診断書交付に関する疑惑を持っていた。そこで酒井さんに、作田医師の外来を受診してもらい、みずからも付き添って診断書交付の現場を自分の眼で確認する計画を立てたのだ。

裁判の判決次第では、家族が経済的に崩壊しかねない状況に追い込まれていたわけだから、疑惑について確かめようとするのは当たり前の行動である。批判される余地はない。

酒井さんと藤井さんは、計画を実施に移した。診察室での酒井さんの態度について、作田医師は別訴(反スラップ裁判)の本人尋問の中で、「うさんくさい患者さんでした」、「うさんくさい人だなと思いました」、「当然、会計にも行っていないと思います」などと供述した。これらの暴言について、酒井さんは、内容証明の書面で作田医師に真意を問い合わせたが、作田医師は回答しなかった。そこで訴訟を提起したのである。

裁判の審理の中で、作田医師はこのような発言に至った理由を説明した。それによると、酒井さんと藤井さんが診察室を退出した後、診察室にたばこの臭いが漂ったので、うさん臭い人間であり、会計にも行っていないと思った。さらに診断を間違ったと判断して、事務の女性に指示して、酒井さんと藤井さんを追跡させた。

作田医師のこの弁解は、特に重要な点なので、それを裏付ける箇所を尋問調書から引用しておこう。弁護士の質問に答えるかたちで発言している。

弁護士:陳述書でも書いていただいたように、一つには診察が終わった後に男女の2人組み(黒薮注:酒井さんと藤井さんのこと)が出てったら、うっすらとたばこのにおいがしたんだと。それで事務方の方にも確認してもらって、やっぱりたばこのにおいがすると。これは、もしかしたら誤った診断書を出してしまったかもしれないと思って、慌てて後を追ってもらったんだと。ただし見つからなかったという報告があったと。こういう出来事があったことが一点でいいですか。もう一点としては、後に提出された酒井さんの診断書には、検印、割り印ね。病院の印鑑が押してなかった。この2点がまず挙げられているということでいいですかね。

作田:はい、そのとおりです。(略)

弁護士:診察した後に書類を整理していたら、たばこのにおいがしたというわけですね。

作田:はい。

弁護士:そのたばこのにおいがしたというのは、患者さんと思われる二人組が出ていってから何分ぐらい経っていましたか。

作田:まあ、3分ぐらい(※太字は黒薮哲哉)でしょうね。

作田医師は尋問の中で、自分が酒井さんに対して「誤った診断書を出してしまったかもしれないと思って」、事務の女性に後を追わせたと証言しているのである。従って、特別な事情がない限り、作田医師は酒井さんの診断記録を訂正するはずだ。

ところが作田医師が、酒井さんの診断記録を訂正することはなかった。なぜ、そのことが判明したのかと言えば、酒井さんを作田医師に紹介したユミカ内科小児科ファミリークリニックに対して、酒井さんが行った診療記録の開示により、訂正の痕跡がないことが確認されたからだ。

つまり煙草の臭いがしたから、事務員に酒井さんと藤井さんの後を追わせたというのは、この発言が法廷で争点になった後、作田医師が創作した話の可能性が高いのである。実際、喫煙者が退席して、3分後の臭いを感じ始めることなどありえない。また、その前の診察中には、臭いを感じていないのでる。

このように虚偽の事実を前提にして、作田医師は、一連の暴言の正当性を主張し、裁判所もそれを認めたのである。

◆横浜副流煙事件の「反訴」(横浜地裁)判決全文(下記PDF参照)
https://atsukofujii.lolitapunk.jp/%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E5%9C%B0%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%B1%BA%EF%BC%88%E8%A8%B4%E6%A8%A9%E3%81%AE%E6%BF%AB%E7%94%A8%EF%BC%89%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E7%89%882024-01-14-%E5%9C%A7%E7%B8%AE.pdf

◆名誉毀損裁判(東京地裁)判決全文(下記PDF参照)
https://atsukofujii.lolitapunk.jp/%E4%BD%9C%E7%94%B0%E5%90%8D%E8%AA%89%E6%AF%80%E6%90%8D%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E5%88%A4%E6%B1%BA%E6%96%872025-01-22%20%EF%BC%88%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E6%B8%88%EF%BC%89-%E5%9C%A7%E7%B8%AE.pdf

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年1月26日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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USAIDの内部資料で露呈した公権力とジャーナリズムの関係、だれがメディアに騙されてきたのか? 黒薮哲哉

トランプ大統領が、USAID(アメリカ国際開発庁)を閉鎖した件が、国境を超えて注目度の高いニュースになっている。USAIDは、原則的に非軍事のかたちで海外諸国へ各種援助を行う政府機関である。設立は1961年。日本の新聞・テレビは極力報道を避けているが、USAIDの援助には、メディアを通じて親米世論を形成すためのプロジェクトも多数含まれている。

実際、親米世論を育てることを目的に、おもに敵対する左派政権の国々のメディアや市民団体に接近し、俗にいう「民主化運動」で混乱と無秩序を引き起し、最後にクーデターを起こして、親米政権を樹立する手口を常套手段としてきた。そのためのプロジェクトが、USAIDの方針に組み込まれてきたのである。

USAIDの閉鎖後に公開された内部資料によると、助成金を受けていたメディアの中には、米国のニューヨークタイムスや英国のBBCも含まれていた。これらのメディアをジャーナリズムの模範と考えてきたメディア研究者にとっては、衝撃的な事実ではないかと思う。

Columbia Journalism Review誌の報道によると、USAIDは少なくとも30カ国で活動する6,000人を超えるジャーナリスト、約700の独立系メディア、さらに約300の市民運動体に助成金を提供してきた。

ウクライナでは、報道機関の90%がUSAIDの資金に依存しており、一部のメディア企業では、助成金の額がかなりの高額になっているという。

トランプ大統領がUSAIDを閉鎖した正確な理由は不明だが、「小さな政府」を構築すると同時に、事業を民営化する新自由主義政策の一端ではないかと推測される。

その役割を担って入閣したのが、イーロン・マスク氏である。従ってUSAIDが閉鎖されたとはいえ、今後は、従来とは異なった形で、経済的に西側メディアを支配する政策が取られる可能性が極めて高い。本当に資金支援を打ち切れば、西側世界はスケールの大きい世論誘導装置を失うからだ。

◆助成金の支出先がコミュニスト?

USAIDによる助成金に関するニュースの中には、間違った情報も含まれている。たとえば助成金の支出先は、「左派勢力」や「コミュニスト」であったというものだ。これはUSAIDの一方的な閉鎖を正当化するためのでたらめな報道にほかならない。

マスク氏自身も、Xの中で、USAIDを指して、「『非常に腐敗している』『悪だ』『アメリカを憎む急進左派マルクス主義者の巣窟』と表現している」。(Columbia Journalism Review誌)

なぜ、こんな根本的な誤りを犯しているのか? おそらくマスク氏にとって、左派やコミュニストとは、真正のマルクス主義者のことではなく、自分とは意見を異にする者のことである。マルクスやエンゲルスの著書を読んでいれば、こうした間違いはしない。だれがマルクス主義者で、だれがマルクス主義者ではないかも判別できる。

たとえ反トランプの陣営であっても、米国資本主義の枠内での改革を主張する者はマルクス主義者ではない。民主党のバーニー・サンダース氏がその典型例だ。米国共産党のように資本主義経済から、社会主義の目指す勢力がマルクス主義者である。USAIDに関する報道では、この点の区別において、大変な混乱が生じている。

◆NED(全米民主主義基金)の反共戦略

UASIDからの助成金を受け取ってきた個人や団体の大半は、「反共」の旗を掲げた右派勢力である。

たとえば、UASIDの下部組織にあたるNED(全米民主主義基金)を通じて提供された助成金の支払先は、同団体の年次報告書によると、香港の「独立」を目指す市民運動体やニカラグアの左派政権を転覆させよとしている市民運動体である。さらに同じ目的で、ベネズエラやキューバに関連した反共市民団体などである。いずれも左派勢力の転覆を目指す勢力である。

◎[関連リンク]NEDに関するメディア黒書の全記事 

◆日本における公権力によるメディア支援の構図

USAIDを閉鎖したことで図らずも、公的機関がメディアに経済的な援助を実施する構図が、国際的なレベルで判明した。日本のメディア企業やジャーナリスト個人が、助成金を受け取っているかどかは不明(一部は明らかになっている)だが、日本には、メディア会社の収益を劇的に増やす独自の手口もある。それがメディアのタブーとなってきた新聞社による「押し紙」制度である。USAIDの内情が暴露されたこの機会に、「押し紙」について考えることは、日本におけるメディアと公権力の関係を考える上で有益だ。

日本には、政府や公正取引委員会が新聞の「押し紙」制度を黙認することによって、新聞社に莫大な経済的利益をもたらす構造が存在する。わたしの取材によると、新聞業界全体で年間1000億円近い不正な資金が新聞社に流れ込んでいる。つまりUSAIDと世界のメディアの間にある癒着関係と類似した構図が、日本の公権力と新聞・テレビの間にも構築されているのだ。

これに関しては、次の3本の記事を参照にしてほしい。

◎「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、年間932億円の不正な販売収入、公権力によるメディアコントロールの温床に

◎国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に

◎1999年の新聞特殊指定の改訂、「押し紙」容認への道を開く「策略」

◆メディアリテラシーの欠落

改めて言うまでもなくメディア企業を運営するためには、資金が不可欠になる。この点を逆手に取ったのが、USAIDの助成金である。日本の場合は、「押し紙」制度である。「押し紙」の黙認が生む莫大な経済的メリットが、メディアと公権力の距離を縮める。この構図を把握することなしに、報道内容を批判しても、ジャーナリズムの質の向上にはつながらない。問題の解決にはならない。

USAIDの内幕が暴露されたのを機に、再度、メディアやジャーナリズムのあり方を考えてみる必要がある。だまされてきたのは、メディアリテラシーを身に付けていないわれわれ大衆なのである。メディア企業が成り立っている経済的な諸関係を理解した上で記事を解釈した方が良い。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月9日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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