◆1.4. 花崗岩層と泥岩層、礫層

経産省資源エネルギー庁とNUMOが開催した説明会では、説明員がやたら「岩盤、岩盤」といい、最終処分法にしたがい、ガラス固化体を格納したオーバーパック4万体を人工バリアで包み、50年かけて地下300m以深の「岩盤」に埋設する、といいます。NUMOの説明員がいう「岩盤」とは、何のことでしょうか(ちなみに、最終処分法に「岩盤」という言葉は記載されていません)。

地表には、生物の死骸や糞尿等が積み重なってできた土壌があります。土壌の下に礫層があり、地下水が流れています。礫層の下に泥岩層があり、化石水が滞水しています。そして、泥岩層の下に花崗岩層があり、岩盤水が滞水している場合があります。

NUMOが「岩盤」と呼んでいるものは、花崗岩層です。[図5]は、経産省資源エネルギー庁やNUMOが考える、地層のイメージです。NUMOは、岩盤=花崗岩層内に広さ6~10平方㎞の地下施設をつくり、ガラス固化体を格納したオーバーパックを人工バリアで包み、埋設するつもりでいます。

[図5]

NUMOは、岩盤=花崗岩層を「天然バリア」と呼んでいます。天然バリアは花崗岩なので、1万年後に人工バリアが壊れても、埋設したガラス固化体=高レベル放射性廃棄物を10万年保管できるというのがNUMOの考えです。しかし、地下300~400mが必ず花崗岩層であるとの保障がありません。説明は後述しますが、日本の場合、花崗岩層でない場合が多いとさえいえます。

[図6]は、経産省資源エネルギー庁とNUMOが考える、地下施設のイメージです。地下施設の広さは6~10平方㎞です。[図6]では、まっすぐな立坑が地上施設と地下施設をつないでいますが、NUMOは、らせん状の坑道で地上施設と地下施設をつなぐつもりでいます。坑道の長さは200~300㎞になるとのことです。

[図6]

フランスは、ビュール県に地層処分施設を建設しました。フランスの人工バリア(当然、内部にガラス固化体を含んでいます)の重量は10トン未満です。10トン未満の重量物は、大型のクレーンで上げ下げできます。したがって、ビュール県の地層処分施設はまっすぐな立坑で地上施設と地下施設をつないでいます。しかし、日本の人工バリアの重量は17.5トンです。現状、10トン以上の重量物を上げ下げできるクレーンはありません。NUMOが全長200~300㎞のらせん状の坑道で地上施設と地下施設をつなぐことにしたのは、そのような理由によると考えます。

日本の地層処分施設では、ガラス固化体を格納したオーバーパックを人工バリアで包み、その人工バリアを搭載した無人搬送車がらせん状の坑道をゆっくり走り、地上施設から地下施設に下降します。地下施設内では、ロボットのような機械が人工バリアを埋設します。

NUMOは、このような方法で、50年かけてガラス固化体を格納したオーバーパック4万体を地層処分するつもりでいますが、その50年間に、大きな事故が生じた場合どう対処するか、まともな説明しません。たとえば、地下水が地下施設に流入した場合、クラッキング工事で塞ぐといい、岐阜県瑞浪市の地下研究所での漏水で効果を実証した、などといいますが、瑞浪市の地下研究所で漏水した水は地下水ではありません。化石水あるいは岩盤水です。化石水や岩盤水は泥炭層や花崗岩層に帯水している水です。しかし、地下水は礫層の中を流れる水です。つまり、地下水系は地下を流れる「川」です。地下水系の高低差は1000~2000m以上あると考えられ、水流のパワーはかなり強く、クラッキング工事等で浸水を阻止することはできません。

礫層内の地下水系が坑道の壁を突き破り、水が流れ込めば、短時間で地下施設と坑道が満水状態になり、地上施設に水が溢れ出ます。そして、人工バリアで包んだオーバーパックとTRU廃棄物が水没します。ビュール県の地層処分施設でしたら、水没する前に地上に引き上げることができるかもしれませんが、日本の場合、全長200~300㎞のらせん状の坑道で地上施設と地下施設をつないでいるので、引き上げることができません。そして、「大惨事」が勃発しますが、大惨事の説明をする前に、TRU廃棄物と中深度処分を説明させてください。(つづく)

◎平宮康広 僕が放射性廃棄物の地層処分に反対する理由(全7回連載)
〈1〉日本原燃が再処理工場を新設する可能性
〈2〉ガラス固化体の発熱量は無視できても、地温は無視できない
〈3〉NUMOがいう地下300m以深の「岩盤」は、本当に「天然のバリア」なのか

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

全103試合(3試合中止)の長丁場。1試合の時間は1分から2分制の2回戦と少なく、試合と試合の間も短いので進行は速かった。

次代を担うジュニア選手は最軽量級が19kg以下、王座は23kg以下級より上位へ、一般男子では82kg級、無差別級まである模様。この日は78kg級まででした。あくまでこのDEAD HEATの制定によるもので、他団体ではまた違った制定があるでしょう。

この日のDEAD HEAT王座挑戦者決定戦は7試合、王座決定戦は8試合、王座防衛戦が2試合ありました。

新日本キックボクシング協会興行前座枠に何度か出場経験ある武田竜之介が、やや劣勢から巻き返せず接戦の敗戦。

一般男子では40歳超えと50歳超えの試合もあり、今年1月28日に全日本キックボクシング協会アマチュア大会に出場した、かつての日本ライト級チャンピオン、飛鳥信也さんがこの日も出場。1分制2ラウンドで、対戦相手の染谷勝がアグレッシブにスピードと手数圧倒、飛鳥信也はコーナーに追い込まれ、第1ラウンドにスタンディングダウン。第2ラウンドもスタンディングダウンを奪われ連打されたところでレフェリーストップとなった。

◎DEAD HEAT AMATEUR COMPETITION 20 /
10月27日(日)大森ゴールドジム10:00~17:10
後援:全日本キックボクシング協会

 

55kg級王座奪取した深谷千穂乃と実行委員会代表の遠藤裕之氏

チャンピオン&挑戦者決定1dayトーナメント 主要17試合(+1試合)

◆ジュニア男子27kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

鈴木翔太(CYCLONE)vs 島川琉空(KAGAYAKI)
勝者:鈴木翔太 / 判定3-0

◆ジュニア男子29kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

石川竜之介(健成会)vs 姉帯礼恩(CYCLONE)
勝者:姉帯礼恩 / 判定0-3

◆ジュニア男子31kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

小貝春喜(拳伸)vs 晴空(Master’s pit)
勝者:晴空 / 判定0-3

◆ジュニア男子40kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

中里晃聖(AKIRA budo school)vs 島川湊翔(KAGAYAKI)
勝者:中里晃聖 / 判定3-0

◆ジュニア女子29kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

鈴木彩心(KAGAYAKI)vs YUNON(KING)
勝者:YUNON / 判定0-3

◆ジュニア女子31kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

SARA(Team SRK)vs YU-NA(KING)
勝者:YU-NA / 判定1-2

◆ジュニア男子52kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

塚原陸翔(PAL)vs 渡邉麟生(JTクラブ)
勝者:塚原陸翔 / 判定2-1

◆ジュニア男子46kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

姉帯心(CYCLONE)vs 京太郎(TEAM KAMIKAZE)
勝者:姉帯心 / 判定3-0

◆ジュニア女子34kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

野本かれん(WIVERN)vs 原ななみ(Team SRK)
勝者:野本かれん / 判定3-0

◆ジュニア女子43kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

野中あいら(HIDE)vs 渡邉名那佳(拳伸)
勝者:渡邉名那佳 / 判定0-3

◆ジュニア男子37kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

大井鼓哲太(チームドラゴン)vs 日野原晴海(HIDE)
勝者:日野原晴海 / 判定0-2

◆ジュニア男子49kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

阿部一心(KDK)vs 英義(稲城)
勝者:英義 / 判定0-3

◆ジュニア男子31kg級タイトルマッチ2回戦(2分制)

チャンピオン.武田竜之介(伊原越谷)vs 挑戦者.岡月音(SUCCEED)
勝者:岡月音 / 判定0-3

武田竜之介(左/伊原越谷)、今回は勝てずも落ち込む様子無く先を見据えていた

◆ジュニア男子52kg級タイトルマッチ2回戦(2分制)

チャンピオン.八十島陸翔(昌平校柏道場)vs 挑戦者.横山琉希(SUCCEED)
勝者:八十島陸翔 / 判定3-0

八十島陸翔、初回は連打でノックダウンを奪った

◆一般女子55kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

深谷千穂乃(北眞館)vs MAHO(北眞館)
勝者:深谷千穂乃 / 判定3-0

一般女子、深谷千穂乃は果敢に攻めて判定勝利

◆一般男子55kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(2分制)

篠原翔夢(Team SRK)vs 鬼久保海斗流(健成会)
勝者:鬼久保海斗流 / 判定0-3

◆一般男子62kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(2分制)

遅刻100%(team YU-TO)vs 郁哉TORNADO(TORNADO)
勝者:郁哉TORNADO / 判定0-3

一般男子、郁哉トルネードの飛びヒザ蹴り、楽しんでいるかのような表情

郁哉トルネードが62kg級王座奪取

◆第66試合 一般男子(OVER50)62kg以下級Dクラス2回戦(1分制)

飛鳥信也(目黒)vs 染谷勝(GRIT)
勝者:染谷勝 / TKO 2ラウンド / レフェリーストップ

《取材戦記》

アマチュア大会も取り上げること増えたこの頃、今回はDEAD HEATを取り上げてみました。

アマチュアキックボクシング(ムエタイ)は多くの主催者、団体が存在する中、DEAD HEAT主催者の遠藤裕之氏は茨城県水戸市の平戸ジムでキックボクシングを始めた人。1993年6月19日、当時の日本キックボクシング連盟フェザー級チャンピオン、遠藤周作(伊原)との遠藤対決では逆転KO勝利。後の10月9日、再戦での王座挑戦は敗れるも1勝1敗の星を残しました。平戸ジムに於いては小野瀬邦英の先輩となる遠藤裕之氏である。

[左]現役時代の遠藤裕之氏、精悍な顔つきである/[右]現在の遠藤裕之代表。渋い風貌、存在感である

 

出番前の飛鳥信也さん。ベテランの落ち着きぶりは語り口調が変わらなかった

2018年には地元の水戸市でアマチュアキックボクシングDEAD HEAT興し、20回目となる今回初めて東京進出となりました。

遠藤裕之氏は今回の大会終了後、「初めての東京大会で、地方のアマチュア大会が東京に来てどれだけ通用するかなと思いましたが、遠い所は富山から来てくれたり、近県の方から来てくれたりと皆さん頑張ってくれましたので、良い大会になったと思います。」と来場関係者との対面で忙しかった中、語ってくれました。

一般男子50歳超えに出場した飛鳥信也氏は試合後、「相手(染谷勝)は強かったですよ。開始からアグレッシブに勢いよく出て来られたら、効いてはいなかったけど打たれると印象悪いですね。ああいう相手とは戦略的には5ラウンドがあればいいですね。躱していなして疲れるの待って崩していく。けどまあ私も筋力落ちてるし、スタミナもたないからダメですけど、私とかつて戦った越川豊タイプならガンガン打ち合いに出て、今日の相手とは噛み合うでしょうね。今回は62kg以下級というのも無理があって、もう少し落としていきたいですね。元々現役時代にライト級でも軽い方だったので。」と語る。

かつて東京ドームでベニー・ユキーデと対戦した飛鳥信也さんが、今ではアマチュア、一般枠に戻ってまで、敢えて出場料払って試合しているのも生涯青春を貫きたい拘りがあるからだろう。打たれると周囲からすれば心配になりますが、戦って来た試合勘はしっかりしていて、怯まずカウンターパンチ入れる上手さも垣間見れるのも実力者の証でしょう。今年は10戦こなしており、年内あと2試合予定しているという。プロの厳しさは無い一般枠での戦いは楽しそうで“生涯青春”をまだ暫くは続けられそうである。

飛鳥信也さんは染谷勝の勢いに勝てずとも、返しのパンチ蹴りが上手かった

アマチュア大会の取材で、ジュニアなど若年層から対象がテーマズレした感のレポートとなり、主催者の遠藤裕之氏と試合を続ける飛鳥信也氏が主役となりました。「継続力は力なり」を実践するお二人。また東京大会が開催される場合は他興行と被らなければ追っていきたいと思います。

次回のDEAD HEAT 21は来年2月9日(日)に水戸市民会館で開催が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

◆自民も立憲も原発容認・推進に向かって雪崩を打った

立憲民主党の代表選(9月23日)、自民党の総裁選(9月27日)から衆院選(10月27日)にかけての「原発に関する主張」からは、両党とも、雪崩を打って原発容認、推進に向かって変節したと言えます。

立憲民主党は綱領で「原発ゼロ」を掲げていますが、4人の代表候補者は、積極的な脱原発の主張を避けました。何れもが「避難計画の不備」などを指摘したものの、当面の原発稼働を容認しています。国民民主党に配慮したためとの報道もあります。

自民党の総裁候補者の内、総裁・首相に選出された石破氏は、8月28日の総裁選出馬時には、「原発をゼロに近付けていく」と表明しながら、首相になってからは、ほぼ岸田政権のエネルギー政策を踏襲して、「原発依存社会」に向かおうとしています。経団連や経済同友会の主張に迎合・屈服しようとしています。人の命や生活の犠牲の上に、電力会社、原発産業、ゼネコンなどの大企業に税金と電力料金を垂れ流すための政策です。河野、小泉両氏は、つい最近まで、原発に関しては慎重派でしたが、総裁選では、これを放棄しました。自らの立場の擁護のために平気で主張を翻すことは、人間として失格です。

◆国民民主党は原発推進の最先鋒

日本維新の会、国民民主党は、元来原発推進です。維新は「次世代原発、とくに核融合発電を推進する」としています。労使協調路線の全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)を支持母体とする国民民主党は「原発の建て替え・新増設により、輸入に頼らない安定的なエネルギーを確保する」とする原発推進の最先鋒です。

このように、立民、自民の変貌、維新、国民民主の原発推進は目に余りますが、彼らがいかに変貌し、何を願望しようとも、選挙の都合、政治的思惑、経済的利益で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。彼らが原発推進に暴走すればするほど、原発過酷事故の確率は拡大します。許してはなりません。

◆失敗を取り繕うための「原発依存社会」への暴走

そもそも、政府や電力会社の「原発依存社会」への暴走は、脱原発の流れに乗り遅れた失敗を取り繕うためです(その裏には、潜在的な核武装推進への願望も見え隠れします)。

もし、福島原発事故以降の政権や電力会社が事故の教訓を生かして、原発ときっぱり決別し、自然エネルギーに切り替える政策をとっていたなら、今頃、化石燃料発電や、原発に依存することなく、電気を供給し、世界の自然エネルギーへの流れをリードできていたでしょう。彼らは、資本主義経済の視点からも失敗したのです。自らの失敗を反省せず、更なる原発推進へと暴走する政府と電力会社を厳しく糾弾し、自然エネルギーへの政策転換を求めましょう!

ところで、10月27日投開票の衆院選では、自公・石破政権が大幅後退し、立民、国民民主、れいわ新選組などが躍進しました。

衆院選での自公両党の大幅減は悦ばしいことながら、この選挙での大きな争点が「裏金問題」であり、その裏で進められる物価高騰、インフレ、弱者切り捨て、格差拡大、軍拡、原発依存などの政策がほとんど議論の対象にならなかったことに政治の貧困を覚えます。

原発問題でも、大勝した立民が、政権獲得のために、議席を伸ばした国民民主に忖度して、原発政策を「原発容認」に大きくシフトさせる可能性があります。また、「原発(とくに核融合)推進」を掲げる維新は議席を減らしたものの、それでも政権の行方の狭間にあり、自公、立民の何れもが、これに擦り寄ると思われます。

原発推進政党を抱きこむことによって、当面の政権を維持すると予想される石破自民党が、「原発推進」にさらに暴走する可能性は大です。とくに、政権の行方にキャスティングボートを握る国民民主は、自公政権との「部分連合」を通して、原発推進を先導するものと考えられます。

なお、「原発即時廃止、地方分散型再エネ普及」を掲げるれいわは躍進したものの、「原発はすみやかににゼロ」「30年度に石炭火力ゼロ」とした共産党は減少しています。社会の右傾化が危ぶまれます。

今回の衆院選の争点は「金権問題」でしたが、それを「裏金」だけに矮小化させてはなりません。

もっと大きな「金権」は、人々から吸い上げた税金や電力料金を、軍需産業や原発産業(旧財閥、電力会社、ゼネコン、自動車産業など)に垂れ流し、軍備拡大、原発推進に暴走する政府の「権力」です。現政府は、人々の命と生活を守るために使用されるべき税金を大企業に垂れ流す「トンネル機関」といっても過言ではありません。

このような理不尽がまかり通り、閉塞感漂う状態の打開のために、いま最も求められているのは「目に見え、耳に聞こえる市民の行動」の高揚です。

12.8「とめよう!原発依存社会への暴走関電包囲大集会」の大成功を勝ち取り、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会に向かって前進しましょう!

2024年10月31日
木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)

12.8 とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会

とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会
原発やめて自然エネルギーへ
使用済み核燃料ふやすな

日 時:2024年12月8日(日)13:00~ ※集会後、大阪駅前までデモ

場 所:関西電力本店前
〒530-8270 大阪市北区中之島3-6-16
地下鉄「肥後橋駅」徒歩約5分 京阪「渡辺橋駅」徒歩約4分
地図 https://x.gd/DsbEz
内 容
・13:00 集会開始
 原発の風下・米原市の平尾道雄市長がアピール
 集会後大阪駅前までデモ
・16:00すぎ 解散

主 催:老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先:090-1965-7102
チラシ https://x.gd/hHdCY 

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

《11月のことば》限界突破 あきらめたらそこでおしまい(鹿砦社カレンダー2024より。龍一郎揮毫)

速いもので、今年もあと2ヵ月となりました。
新型コロナ襲来によって、それまで左団扇状態だった雰囲気は暗転しました。
何度も「限界」を感じました。

「あきらめたらそこでおしまい」──

「限界」を「突破」するために皆様のお力を借りて「歯を食いしばって」頑張ってきました。
「限界」に次ぐ「限界」で「あきらめ」かけたりもしました。
コロナで似たような経験をされた方も少なくないでしょう。
しかし、「あきらめ」なければ、浮かぶ瀬は必ずあるものと信じています。

20年近く前の出来事、「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧でも打ちのめされ「限界」を感じましたが、運良く「突破」できました。
奇跡としか言いようがありません。出版業界ではそういわれているそうです。

「限界」は「突破」でき、奇跡は起きると信じたい。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年11月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、トランスジェンダー論争、巨大利権の行方』女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著

◆平塚らいてうと与謝野晶子との違い ──「現実を見る眼」の有無

“時代の現実を見る「眼」は大切”、「時代の現実に背く者は迷走する」が今回のテーマだが、まずは肩慣らしに私たちのwebサイト「ようこそ よど号日本人村へ」の「よど号LIFE」コーナーに書いたものポイント的に述べてイントロダクションに……

似て非なる晶子とらいてう

最近、衛星放送BS1の歴史ドキュメント「英雄の選択」で与謝野晶子をテーマに取り上げた“我は女の味方ならず”を観た。

「京都青春記」の一時期、行動を共にした立命文学部女子に「作家志望の詩人」がいた。彼女は私に言った、「憧れの作家は明治の近代黎明期に彗星の如く現れた平塚らいてうや樋口一葉、でも与謝野晶子はあまり好きじゃない」と。与謝野晶子は“ああ君死にたもうことなかれ”が教科書にも出てくる有名な歌人だから「あまり好きじゃない」という彼女の言葉がちょっと気になった。でも理由は聞きそびれた。

今回観たドキュメント“我は女の味方ならず”で何となくその理由がわかるような気がした。

与謝野晶子は歌人であると共に社会批評もやったが、中でも有名なのが平塚らいてうとの母性保護論争を取り上げていた。

平塚らいてうは女流文芸誌「青鞜(せいとう)」の有名な創刊の辞で「元始、女性は太陽であった。真性の人であった」と高らかに宣言した女性解放運動の先駆者として有名だが、これに共感した与謝野晶子も「青鞜」創刊号のために「山の動く日来(きた)る」という詩を書いて寄稿した。この詩に感動したらいてうは晶子の詩を巻頭に飾った。

そんな互いに尊敬し合う間柄の二人は、やがて「母性保護論争」という激しい論戦を繰り広げることになる。

晶子は男女平等の実践として「女子が自活し得るだけの職業的技能を持つということは、女子の人格の独立と自由とを自ら保証する第一の基礎である」と女性自身の覚醒と努力を説いた。要するに男性に経済的に依存する女性にはなるな、自活しうるだけの職業的技能を持ちなさいと、そんな「女性の自立」の側面を強調した。

更に晶子は「女はあらゆる男子の、知識と筋力と血と汗を集めた労働の結果である財力を奪って我が物の如くに振る舞って居る」と当時の女性一般を批判、ついには「私はまず働かう、私は一切の女に裏切る」とまで宣言。「女性の経済的自立」、たしかに正論ではあるが、「私は一切の女を裏切る」という晶子の宣言は当時の女性の置かれた現実を無視した「唯我独尊」になりかねない。

そんな晶子はついには「我は女の味方ならず」と題した一文を「青踏」に発表した。

このような晶子の主張に8歳年下のらいてうが噛みついた。

「実に人間としての婦人の権利の主張のみならず、女性としての婦人の権利も主張されねばならない」と。

要は男女平等とは言っても男性と女性の違いは厳然とした「現実」であること、「女性としての婦人の権利も主張すべき」こと、特に「母性保護」を婦人の権利として強く主張した。

らいてうは「子供というものは、たとへ自分が生んだ自分の子供でも、自分の私有物ではなく、其の社会の、其の国家のものです」とし、だから国家は婦人の母性を保護する責任があるという論理を立てた。

後に晶子は「(らいてうと)私とは決して目的に於いては異なって居ないのです」とこの論争からは降りるが、らいてうはその後も若き日の市川房枝らと「婦人と母と子供の権利の擁護」を掲げ「新婦人協会」設立に至る。さらに老いては私たち戦後世代と共にベトナム反戦、反安保の闘いにも身を投じ「おかしい現実」を変革する社会運動家としての生涯を全うする。

当時の女性が晶子のような才女、「男に依存しない」自立した職業婦人になれるのはごく希(まれ)で、ましてや男にはない母性保護という婦人特有の問題もかかえている。らいてうはこうした現実の女性問題を解決しようと社会運動に身を投じた。

らいてうと晶子の違い、それは「現実を見る眼」の有無。

長々とらいてうと晶子のことを述べたが、言いたかったのは「現実を見る眼」を持つことがいかに大切かということだ。

らいてうと晶子のそれと同次元で語れないと思うが、「時代の現実」から目を背け、これに挑戦するものはどうなるか? が今回のテーマだ。

いま「覇権の終焉」という「時代の現実」から目を背ける米国の迷走ぶりが目に余るものになりつつある。そしていまだに「米国についていけば何とかなる」戦後日本の悪しき思考方式から抜け出せず、「時代の現実」に挑戦する米国と運命を共にする「日米同盟新時代」という時代錯誤に同調した日本政治も混乱を極めている。

◆「進むも地獄、退くも地獄」── 決断に迷う米国

この連載の8回目、9月30日号で私は「窮鼠、猫を噛む」と題して米国がゼレンスキー「最後の勝利計画」の要求に応えて「米欧提供の長射程ミサイルのロシア領内攻撃に許可を与える」だろう、それは「ウクライナ惨敗=米覇権秩序瓦解の証明」を恐れての「NATOとロシアの戦争への発展」覚悟の窮余の策、米国の意思表示だと書いたが、それも先行き不透明感が出てきた。

10月11日朝日新聞朝刊に「苦境のウクライナ」と題して次のような記事が出た。

「ドイツで12日開かれる予定だった(ウクライナ)支援国による首脳会談は延期になり、来月の開催をめざしていた(ウクライナ)平和サミットも、現時点では実施が見通せない」

ウクライナ軍“突然の撤退”

9月国連総会出席のゼレンスキー訪米時のバイデン大統領との会談ではバイデンは米供与の地対地ミサイル「ATACMS」のロシア領内攻撃に使用許可をまだ与えず渋った。そして上記の記事のように10月のドイツでの支援国による首脳会談でその結論が出るだろうという予想も崩れた。「ハリケーン被害対応のため」のバイデン欠席が首脳会談延期の理由とされたが、これは眉唾ものだ。

おそらく肝心の米国が「ゴーサイン」の決断に迷っているからだ。

決断に迷う米国、それは「進むも地獄、退くも地獄」の米覇権の窮地ぶりを示すものだ。

「NATOとロシアの戦争」はまさに「窮鼠、猫を噛む」窮余の一手だけに何か勝算があるわけではない、一つの大博打に過ぎない。これにも負ければ「家産のぶっ飛ぶ大損(おおぞん)」、「米覇権時代の終わり」を早めるだけだ。

また「NATOとロシアの戦争」になればマスコミが「極右」と呼ぶ台頭著しい欧州内の自国第一主義勢力の反対にあって戦争遂行すらおぼつかないだけでなく、さらには国民の戦争への不満を背景に彼らが欧州各国の政治を握りかねない。事実、フランスではルペンの国民連合が議会選挙の第一回投票で第一党に躍進し、ドイツではAfDが有力州議会の第一党勢力に伸張、国政選挙でも躍進が予想されている。その危険性の高まる独仏はNATOの基軸国家という点もロシアとの戦争をちゅうちょさせる要素だ。そして当然ながらグローバルサウスなど世界の多数派、非米・脱覇権勢力の猛反対に会うのも覚悟しなければならない。

だからといって、これを恐れて手を拱(こまね)いていては「ウクライナ惨敗=米覇権秩序瓦解」は時間の問題となる。

こうして米国が決断に迷っている間にも「ウクイライナ惨敗」の様相はますます色濃くなっている。

ロシア軍との攻防の基本戦線、ウクライナ東部戦線ではウクライナ軍が「撤退戦」に踏み切る窮地に追い込まれている。

ウグレダルというウクライナ軍「最強の要塞」とされる拠点がロシア軍の包囲殲滅作戦の危機を前に撤退戦を余儀なくされるという事態に陥った。ウグレダルはウクライナ式には「ドネツク州」、ロシア式にはロシア系住民が独立を宣言したドネツク共和国内のウクライナ軍占領下にある重要戦略拠点であり、「ドネツク州」の3分の1ほどの再占領地域に築いた要塞化された拠点だ。ウクライナ軍がウグレダルを撤退すれば「ドネツク州」のもう一つの戦略拠点ボクロフスクも崩壊の危機に瀕するだろう。そうなればドネツク共和国はほぼ完全にロシア軍の制圧下となりウクライナ敗戦は決定的になる。

もう一つの独立を宣言したロシア人地域、ルハンスク共和国はほぼロシア軍の支配下にあり、南部のザポリージャ州、ヘルソン州(クリミアに隣接)もほぼロシア軍が制圧しており、最後の不退転の拠点としてウクライナ軍が主要力量を投入しているのが「ドネツク州」3分の1再占領地域だ。

ゆえに「ドネツク州」の攻防がこの戦争の帰趨を決すると言える。「ドネツク州」からのウクライナ軍の撤退、それは米国の代理戦争であるウクライナ戦争の敗戦=米国の敗戦を意味するだろう。それは米覇権秩序の瓦解を全世界に可視化するものでもある。

まさに「進むも地獄、退くも地獄」、それが米国の現在、直面する窮地だ。優柔不断、迷走は許されないところに来ているが、いまだ米国は決断に迷っている。

この迷走は二転三転する米大統領選にも現れている。

◆「確トラ」から「もしリス」、そして再び「もしトラ」へ ──「溺れる者は藁(わら)をもつかむ」

「白紙ばかりのハリス本がベストセラー」というネット記事が送られてきた。

白紙本“カマラ・ハリスの功績”

そのハリス本とは9月下旬に米国で出版された『カマラ・ハリスの功績(The Achievements of Kamala Harris)』という書籍だが「ハリスの功績」についての「経済政策」「教育」「外交」など各章は白紙ばかりという書籍としては「異例の代物」だった。ところがこの「中味のない本」が異様の売れ行きを見せ、アマゾンでの売り上げ急増もあって10月9日時点でベストセラーのランキングでトップ20に入っており、「政治的ユーモア」部門ではトップという異例の事態になっているという。

要は「ハリスの功績」は「白紙」、何もないということに共感する米国民が多いということだ。

また韓国の「中央日報」にワシントン・ポストからの引用記事として「米大統領選終盤“ハリス危機論”拡散」が掲載された。その要は「バイデンとの差別化失敗」論だ。

最近のABCインタビューで「4年間バイデンとは違って行ったことを教えてほしい」という質問に「思い浮かぶことが一つもない」とハリスは答えた。これは事実上、自ら「バイデンのアバター」であることを認めた言葉だと解釈された。

米大統領選終盤戦にこうした「ハリス危機論」が出てきたのは偶然とは思えない。

いまバイデン民主党政権の米国が「進むも地獄、退くも地獄」に直面して決断を下せない混迷に陥っている。特に外交安保政策ではバイデン路線を踏襲する「無能」ハリスではこの危機に対応できない、こう米覇権支配層が考えても不思議ではない。

私は、この連載の前々号に“「確トラ」から「もしリス」へ”(「もしリス」は私の造語、一般には「もしハリ」)というようなことを書いた。

それは老衰懸念のバイデンに代わってハリス が民主党大統領候補になってトランプに肉迫する人気を得ることになった新現象を踏まえ、その背景を考えての推測だった。

その推測は、トランプでなくても「ウクライナ敗戦」で対ロシア戦争はいずれ終結する、その後は「対中国に集中する」が米国の狙いだが、ガザをめぐる中東戦争との二正面作戦を避ける上でイスラエル側に偏(かたよ)るトランプでは終戦は望めない、またトランプはNATO諸国とは折り合いが悪い、対中対決にNATO諸国を引き入れる上でトランプではまずい。このような米覇権支配層の思惑から“「確トラ」から「もしリス」へ”と流れが変わったのだろうと推測を立てた。

ところが上記のように「ハリス危機論」から「もしトラ」へと流れがまた変わりつつある。

以下はあくまで私の推測だ。

バイデンが「進むも地獄、退くも地獄」に陥ったウクライナ戦争終結で「プーチン大統領と話ができる」トランプなら米国にさして損害を与えない「手打ち」交渉も可能だ。

また中東戦争の収拾策でも最近、こんな話も出てきた。「ネタニヤフ首相もトランプの話には耳を傾けるだろう、バイデンやハリスでは話にならない」と。

このようにウクライナ、中東の二正面戦を「無難に」終結した上で「対中対決に集中する」、だからトランプ。

また対中対決でロシアと朝鮮を中国から引き離す上でトランプは使い勝手がある。トランプはプーチン大統領だけでなく金正恩総書記とも話ができる、トランプなら朝米対話も不可能ではない。また「朝露の戦略的パートナーシップ協定締結によって中国と朝鮮が疎遠になった」と日本のマスコミはとらえている。だからトランプ大統領を使ってロシアと朝鮮を米国に引きつけた上で中国を孤立させるという打算が働いてもおかしくはない。

でもこれもあくまで米国の希望的観測、まさに「溺れる者は藁をもつかむ」の類(たぐい)だ。

“「確トラ」から「もしリス」、そして再び「もしトラ」へ”という米大統領選の迷走ぶり、それは米覇権、というより「覇権主義の終焉の時代」という「現実」を受け容れず、この「現実」に背くがゆえの「溺れる者は藁をもつかむ」米国の混乱ぶりを示すものだと思う。

◆石破首相が起こした10月政局の混乱から駒が? 

最後に総選挙に絡む10月の日本の政局の混乱の積極的意味について少し考えてみたい。

この連載の7回目、8月31日号でこう書いた。

うがった見方をすれば次期政権は自民・立民の挙国一致政権、「新政権の課題は9条改憲」、「非核の国是放棄」、これがあながち邪推とは言えない時代が来たと思う。

エマニュエル駐日米大使が岸田国賓訪米時に述べた「一つの時代が終わり、新しい時代が始まる」、すなわち日米同盟新時代が始まる、これを担い推進する挙国一致政権の登場のことを念頭に置いた推論だ。

日米同盟新時代の基本は「日米安保の攻守同盟化」、日本が「国際秩序を護る」戦争、具体的には対中・代理“核”戦争のできる国に変容する、これが米国の要求だ。だから新政権の課題は「9条改憲」(実質改憲含め)、「非核の国是放棄」となる。この難題は国民の理解を得られる政権にしかできない、国民が愛想を尽かした自民党政権では無理、だから与野党連合、「挙国一致政権への変容」でなければならない。

橋下徹「政権変容論」はこの日米同盟新時代を担う「政権変容」を次のように構想した。

「政権の交代というより、野党予備選で候補者の一本化を果たし、本選での与野党逆転を実現した上で、野党側が石破氏など国民的に人気のある自民党有力者を総理に担いで与野党合同とも言える政権への変容を実現する」

この橋下徹の思惑に反していま野党候補の一本化は進まず、総選挙で過半数を占める自公による政権存続の可能性が高いという。でも野田代表の立憲民主党の選挙公約は「外交安保政策は岸田政権のそれを堅持する」だから石破・自公政権にこの点では協力できる、すなわち「日米同盟新時代」の安保外交政策は石破・野田で与野党「挙国一致」体制はできる。当然、維新、国民民主も同調する。これも「政権変容」の一つの形だ。

もし自公過半数割れになってもその逆もまた可能だ。

選挙結果がいずれであっても与野党合同、「政権変容」はできる。

ただここに一つ新たな混乱、波乱要因が加わった。

石破新総裁率いる非安倍派とこの間、政府と党の人事からも選挙の公認からも二階派とともに排除された安倍派との大きく二つに自民党が分裂する可能性が出てきた。

自民総裁選の第一回投票では安倍派の結集軸でもある高市早苗氏が大方の予想を裏切り石破氏を上回る党員票を獲得、石破氏を破って第一位になった。決選投票ではこの事態に慌てた岸田前首相が旧岸田派の議員41票を石破にまわしてかろうじて石破総裁が実現した。この一件で自民党には安倍派を中心にした隠然たる「反石破」勢力の存在の大きいことが浮き彫りになった。党人事や公認を巡る二階派、安倍派の鬱積した不満が相まって「日米同盟新時代」推進の挙国一致政権を揺るがしかねない可能性、不安要素が出てきた。

もう一つは、この間、政権交代「救民内閣」樹立を公言しながら、今、鳴りをひそめている泉房穂さんの存在がある。これも国民的人気を背景にできれば「日米同盟新時代」挙国一致政権をストップさせる侮れない政治勢力になりうる。

安倍派には、国家主義的で対米面従腹背的な側面が多分にある。欧州で台頭する「極右」、自国第一主義勢力のような存在になりうる要素を秘めている。もちろん彼らは「靖国神社参拝」積極派、覇権主義的で「大日本帝国の夢よ再び」の古い軍国主義勢力の側面を持つ。しかし岸田政権が踏み切った「日米同盟新時代」、それは日本が軍事のみならず全ての分野で米国に統合、溶解されること、彼らはこれをよしとしない勢力であることも容易に想像できる。

安倍元首相を使えるだけ使った米国がいまや安倍派を敵視する理由がそこにあると思う。「米国による安倍暗殺」陰謀説さえ語られる所以(ゆえん)だ。

話は少し横道にそれるが、最近、「愛国とロック」という高市早苗礼賛本が出た。デジ鹿連載の「ロックと革命」の剽窃? まさか!? それは冗談として彼女もバンド少女だったのは事実、ロックバンドをやるのはだいたい自己主張人間、何となく高市早苗という人物がわかる本の標題だ。彼女の「愛国」は私のそれとは真逆の方向を向いている。でも彼女の愛国が心からのものなら日本が米国に統合、溶解される「日米同盟新時代」といういまの現実は「愛国とロック」と相容れないはずと私は空想するのだが……

他方、泉房穂氏は岸田国賓訪米時に「いったい誰の顔を見て政治やっとるんや」と批判した人、「日米同盟新時代」をよしとしない政治家だ。

この「救民内閣」樹立の泉氏と高市早苗氏に同調する保守民族派が「日米同盟新時代」推進政権反対で共同歩調をとれないとは誰も断言できないと思う。

いまはあくまで可能性、空想の段階だが、石破首相が引き起こした10月政局の混乱は、その可能性、空想の根拠を与えたのも事実だ。

いまの私たちは吠えることしかできないが、根が楽観主義者だから「ピョンヤンから感じる時代の風」がいつかは必ず日本にも吹くことを信じて引き続き吠えていきたい。

「戦後日本の革命」成就のために!

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

◎ロックと革命 in 京都 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=109

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

 

ハンセン病、薬害エイズ被害患者の救済から飯塚事件などの冤罪訴訟まで、常に弱者の立場に立ち、法廷で声なき声を代弁してきた徳田靖之(とくだ・やすゆき)弁護士 ──。「6・5 飯塚事件『不当決定』を許さない」と題された9月14日大阪講演の記録を全6回連載で報告する。(企画・構成=尾﨑美代子)

◆飯塚事件・再審請求事件としての第一の特徴 ── 死刑執行された事件の再審請求

今日来られた皆さんは、多くの冤罪事件、再審事件に関わっておられると思いますが、この飯塚事件は再審請求事件としては非常に特異な特徴があります。

その第一は、死刑執行後の事件の再審請求だということ。死刑執行後に再審請求されたのは「福岡事件」と「飯塚事件」と「菊池事件」の3つしかありません。まもなく判決が言い渡される袴田さんの事件も含め、日本の冤罪史上有名な4つの再審事件(免田事件、財田川事件、島田事件、松山事件)は死刑判決でしたが、執行前に再審無罪となっています。死刑執行される前の再審事件と、死刑執行されたあとの再審事件はどこが違うのかをまず理解していただきたい。

死刑執行前の再審事件を担当する裁判官は、もちろん自分が間違ったら、この死刑囚本人の命を奪ってしまうかもしれないというプレッシャーがかかってしまう。そのため再審請求には慎重に判断しなくてはいけないと考える。

では死刑が執行されたあとに再審請求された事件の場合、裁判官にどういうプレッシャーがかかるのか。自分が再審開始を決めて無罪になったら、日本の裁判所は全く無実の人を殺したことになってしまう、ということになりかねない。つまり、日本の死刑制度の根幹が揺らぐことになってしまう。うかつなことで再審開始ができないというプレッシャーがかかってしまうのです。

今日これからお話する世にも不思議としか言いようがない飯塚事件における再審で、裁判所は非常識極まる判断を、合理的に説明すれば、裁判官たちの立場としては、すでに死刑にしてしまっているがゆえに、再審開始をすることがとんでもないことになるというプレッシャーのまえに、いわば真実に目をつむったという形で、判断に影響したとし考えられないということを、まず頭にいれておいていただきたい。

◆飯塚事件・再審請求事件としての第二の特徴 ── 失われていた物証

飯塚事件の再審請求としての特徴の第2は、唯一の物証は女の子の膣内に残っていた犯人の血痕なんです。科警研がこれで100回以上のDNA型鑑定ができる量を、女の子の遺体を解剖した九州大学から送ってもらっていた。にも関わらず、自分たちは3回しか実験しなかったと言っているのに、試料をほとんど使ってしまいました。

残った試料が石山教授に送られたときには、わずかに綿糸1本しかなかった。これを石山教授が鑑定に使ったために、本件は物証が失われているわけです。足利事件の菅家さんの場合には、試料が残されていたために、新たなDNA型鑑定がおこなわれ、菅家さんとは別人が犯人だということが明らかになった。東電OL事件でも,犯人の精液という物証が残っていて、それをDNA型鑑定することによって、ゴビンダさんは全く犯人ではないと明らかになった。しかし、飯塚事件は、久間さんを再審で犯人でないことを明らかにする術を科警研が奪ってしまっているわけです。

石山教授にいわせると、当初科警研に送られた試料は、私の親指と人差し指の間の大きさの綿花に吸収されていたため、100回以上鑑定が出来たそうです。ところが科警研は3回しかやっていないと主張している。3回しかやっていないというのが事実かどうかわかりませんが、これが事実だとすると、残った試料はどこかに隠されていることになる。

しかし、私たちは実は、科警研は鑑定をやった際に、久間さんの型が何回やってもでてこなかったので、何十回も繰り返し行った結果、やっとそれらしきものが出たというのが真相ではないかと思っています。このように、飯塚事件の特異性は物証を捜査機関がいわば無くしてしまった事件だということをご理解いただきたい。

◆第一次再審請求審で明らかにされた新事実 ── 証拠の改竄

そうしたことを前提に私たちは、再審請求に着手したわけです。そこで第一に明らかになったことは、科警研のDNA型鑑定が改ざんされていたということです。[写真1]が科警研の鑑定が証拠を改ざんしたという証拠です。

[写真1]科警研の鑑定が証拠を改ざんしたという証拠

一番右に映っているのが科警研の鑑定書に添付されていた実験の写真です。真ん中はその時のネガフィルムです。一番左はそのネガフィルムを、私どもがわかりやすくしたものです。まずわかるのは、真ん中のネガフィルムが途中で切られている、カットされていることです。

私らが「どうして切ったのか?」と聞いたところ、台紙に余裕がなかったので切ったと最初に言われた。しかし、台紙に余裕があった。ネガフィルムをみたら、切った上に、バンドという、人の型を示すものが映っている。一番左をみていただきますと、丸で囲んでいるところ、ここに人の型を示すバンドが映っていたのです。これをみせたくなかったので、わざわざフィルムを切ってしまったのではないかと、私たちは考えています。

第一次再審請求で「なんで切ったのか?」と、検察に聞きました。すると検察は「エラーだから切った」といった。私たちは「エラーというなら、確かめたのですか?」と聞いた。すると「実験を繰り返したが、その実験ではバンドがでなかったので、エラーだとわかった」といった。

そこで私たちは「じゃ、そのエラーとわかった写真を出せ」というと、検察は「それはない」といった。「ないとはどういうことだ」と追及すると「鑑定をした技官が退職するときに処分をした」という。

そんなことがありますか。こんな犯人であることを示す部分をカットしておいて、カットした理由がエラーだというなら、エラーであることを示す重要な写真を残さないということはありえないわけです。ところがこういう写真を出しておきながら、エラーであることを証明した写真はないという。これは完全な証拠の改ざんです。犯人と思われる人の型がでている部分を意図的に切ってしまっている。裁判所にこの鑑定書をだして、久間さんの型と犯人の型が一致したとみせかけたわけです。
もうひとつ、一番右の写真をみると真っ黒です。普通ネガフィルムを焼き付けるときに、こんなに黒く焼きつけることはしません。一番左のように焼き付ければ綺麗にでるわけです。なぜそんなことをしたかというと、一番左の写真の左端に、実は被害者の心臓血内からとった試料を流したレーンですが、ここにバンドがあった。久間さんの型と同じバンドがあった。これは完全なエラーです。心臓血ですから、他人の血液、試料がまぎれこむことはないわけです。

そうすると一番左のように焼き付けてしまうと、久間さんと同じ型のバンドが出るということが明らかになる。それで彼らは一番右の写真のように真っ黒に焼き付けてしまった。そうすると、左のレーンにおけるエラー写真がわからなくなるわけです。

こういうことをしたために、久間さんの型はもうひとつの型がどこにあるか見えなくなったので、「ここに久間さんの型がある」とわざわざ赤いマーカーをつけたのです。本来ならば一番左のように明るく焼き付ければわかるのに、暗く焼き付け久間さんの型がわからなくなったので、赤いマーカーで「ここにあります」と示した。

人間のDNA型鑑定というのは、父親から受け継いだ型と母親から受け継いだ型の2つをバンドとして現れるのです。犯人は16-26型だ。久間さんは16-26型だ。そして菅家さんも16-26型だったのですが、その16型のほうは結論から言えばエラーだった。26型のほうは真っ黒にしてよくわからないが、じつは被害者の型とほとんど見分けがつかない。

そういう極めてあいまいな実験だったのに、このようにカットしたり、真っ黒に焼き付けたりすることで、全くいい加減な実験結果があたかも正確に久間さんが犯人であることを示すように偽造した訳です。これが明らかになりました。この結果、一審で福岡地裁は、DNA型鑑定は採用できないとしました。(つづく)

◎徳田靖之弁護士講演会 6月5日飯塚事件「不当決定」を許さない(2024年9月14日 大阪浪速区大国 社会福祉法人ピースクラブにて)

◎《講演》徳田靖之弁護士・声なき声を聞く ── 飯塚事件再審[全6回連載](構成=尾﨑美代子)
〈1〉弁護士として、自ら犯してしまった過ちをいかに一人の人間としてどう償うのか
〈2〉失われていた物証と証拠の改竄

▼徳田靖之(とくだ・やすゆき)
弁護士。1944年4月大分県別府市生まれ。東京大学法学部卒。1969年弁護士登録。大分県弁護士会所属。「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟西日本弁護団共同代表、ハンセン病市民学会共同代表、薬害エイズ九州訴訟共同代表。飯塚事件弁護団共同代表

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

第50回衆院選は2024年10月27日執行され、自民党(247議席→190議席)と公明党(32議席→24議席)の与党は政権を失った2009年衆院選以来の惨敗を喫しました。野党第一党の立憲民主党(98議席→148議席)は躍進したが第一党まではいかず、国民民主党が4倍増の28議席、れいわ新選組が3倍増の9議席で躍進。参政党(1→3議席)や日本保守党(0→3議席)も議席を確保しました。他方、野党でも維新(44→38議席)と共産党(10→8議席)が議席を減らしました。「多党化」が進みました。
 
◆石破さんブレブレ、「明智光秀の12日天下」最短記録更新へ

石破茂総理は、10月1日総理に就任。9日に衆議院を解散しました。しかし、自民党・公明党両党で過半数を大きく割り込む大惨敗となりました。自公で圧倒的多数を占めてきた政権のスキームはこれで終了しました。今後、水面下でいろいろな形での連立工作が飛び交うことでしょう。

明智光秀は6月2日に信長を討ち取って天下人になりましたが13日に山崎の戦いで秀吉に打倒され、12日天下に終わりました。また、藤原道兼も4月27日関白になって5月8日に病死しました。石破総理は、この二人の最短記録を事実上更新したことになります。

こうなったのは、石破さんがブレたからです。はっきり言って、自民党は圧勝のチャンスでした。すなわち、衆院を解散する前に一定程度、国会で議論をし、自らが批判してきた故安倍晋三さんと正反対のイメージを打ち出せばよかった。ところが、石破さんは9月30日、まだ総理になる前から、10月9日解散を明言してしまった。総理になる前から解散を明言するのは越権行為です。憲法違反です。

また、そもそも、憲法7条があるから解散できるというのは憲法解釈としてはおかしい。憲法69条に基づき、内閣不信任案が可決されるとか、総理の目玉政策が否決される場合に解散するなら分かる。あるいは新たな増税をする前に信を問う意味で解散するなら分かります。いわゆる代表なくして課税なしと言うことです。だが、そういう状況ではない。この時点で、石破さんは大きく無党派層に失望されました。

また、最初からいわゆる裏金議員を厳しく処分し、無党派層を取りに行けばよかった。そうすれば、野党は手も足も出なかったでしょう。ところが何を考えたのか石破さんは、最初は裏金議員を全員公認すると言ってしまった。幅広い国民の反発を受けて慌てて裏金議員を非公認とした。これにより、一時持ち直したかと思われた。

だが、直前の総裁選で健闘した高市早苗さんを支持する自民党支持者が国民民主党や日本保守党に流れる動きがみられた。これに慌てたのか、自民党執行部は裏金議員を取り込もうとしたのか、2000万円を送った。これが発覚し、さらに炎上しました。ブレブレの石破自民党。大敗は当然でした。

◆広島県内小選挙区は与党の4勝2敗、インディー系候補も健闘

広島県内では前回の2021衆院選では与党の6勝1敗でした。今回は、選挙区が人口減少に伴い6議席に減りました。以下、県内でも広島都市圏の1-4区について振り返ります。

広島1区では岸田前総理が圧勝。ただし、前回は約8割の得票率で野党候補に供託金回収も許さない「失神KO勝ち」でしたが、今回は5割強まで得票率を減らしています。また完全無所属のインディー系候補も3.1%と健闘しました(写真、1区で立候補された方々)。

▼広島1区
岸田文雄 自民前 100,740(52.4%)当選
平本 浩一立憲新 46,493(24.2%)
山田 肇 維新新 26,849(14.0%)
中原 剛 共産新 12,225(6.4%)
産原 稔文 無新 5,995(3.1%)

広島2区は前職の平口さんが当選しましたが、得票率は5割を切りました。前回は、自民vs立憲(野党統一)の対決でしたが、比例復活を許さないダブルスコアの圧勝でした。そして、今回は野党が乱立。ところが、急造の国民民主党新人に比例復活を許しています。

▼広島2区
平口 洋 自民前  82,443(45.0%)当選
福田 玄 国民新  61,679(33.6%)比例当選
金城 政孝 維新新 21,846(11.9%)
岡田 博美 共産新 17,354(9.5%)

広島3区は、公明前職の斉藤鉄夫国交大臣が再選されましたが、急造の立憲新人に14000票差まで追い上げられ、比例復活を許しました。また、インディー系候補の玉田憲勲医師が1万票を超える大善戦でした(写真、玉田ドクター(左)と筆者)。

▼広島3区
斉藤 鉄夫 公明前 86,654(47.2%) 当選
東 克哉  立憲新 71,952(39.2%) 比例当選
高見 篤己 共産新 14,128(7.7%)
玉田 憲勲 無所新 10,751(5.9%)

広島4区は、旧広島4区から海田町、府中町、坂町が1区へ、安芸区が3区へ移行した上で、旧5区とほぼ合体した選挙区です。呉市と言う古くからの工業都市と東広島市と言う新しい産業・大学都市があります。

旧4区の東広島市を地盤とする維新の空本誠喜さんが旧5区の呉市が地盤の自民の寺田稔さんを振り切って辛勝しました。前回、4区で比例復活の空本さんは維新色を消して反自民票を一手に引き受ける戦略に徹しました(写真下、維新イメージの緑色ではなく寺田さんの赤に対抗した青ベースのポスターで反自民色を強めた空本さんのポスター)。

それが奏功し、民主党在籍時代に旧4区で2009年に中川秀直さんを打倒して以来の小選挙区当選です。寺田さんも比例復活しました。

▼広島4区
空本 誠喜 維新前 93,707(50.6%)
寺田 稔  自民前 91,653(49.4%)

◆中国ブロックで議席に届かぬも、県内得票倍増近いれいわ新選組

筆者は、今回の衆院選では「広島と政治をあなたに取りもどし、広島とあなたを守る庶民革命」をめざす「無所属・庶民派保守」の立場から、「地方の庶民に優しい」政治勢力として「れいわ新選組」を応援しました。

広島県内の比例代表得票数は以下です。

自民  342,216 31.9% 中国ブロック 5議席
立憲  207,928 19.4% 中国ブロック 3議席
国民  129,471 12.1% 中国ブロック 1議席
公明  127,717 11.9% 中国ブロック 1議席
維新  86,855  8.1%
れいわ 66,166     6.2%
共産  53,521  5.0%
参政  34,987  3.3%
社民  24,834     2.3%

広島県内でもれいわ新選組は日本共産党を上回る得票をしました。正直、日本共産党さんと比べれば県内のれいわ新選組は専従職員もいない素人集団です。だがその素人集団が共産党を上回り、あの公明党や、大手企業労組もついている国民民主党半分以上を得票したのは驚くべきことです。

また、正直、街宣車も人口が多い広島市北部を全く回らないなど、今思えば戦術上の反省点も多くあります。正直、こんなに健闘するならもっと、やり方があったかな、とも思うのですが、致し方ないことです。

小選挙区で候補者を出していれば選挙はがきも出せるし、宣伝効果もあったでしょう。ただ、筆者自身も「中国ブロックは議席獲得が困難。だが参院選2025へ向けて地盤の防衛は絶対必要」という思いでした。同党には次回以降に反省点も踏まえながら県内でもベストを尽くしていただきたいものです。

今回、有権者の反応はどうだったか? 筆者の感触では、安佐南区では2023年4月の筆者自身がれいわ新選組推薦で立候補した県議選の2倍くらい、チラシの受け取りは良かったです。実際、安佐南区ではれいわ新選組の得票が6000票を超え、筆者の県議選での得票の2673票の2倍以上となりました。

投票率も県議選の34.16%から今回衆院選は45.71%ともちろん上がっているのですが、得票率自体も、筆者の4.04%から今回のれいわ新選組の6.9%へと上昇しています。しかも筆者の得票には自民党や維新の支持層の方の得票も相当加わっていたことも加味すれば政党としての得票率上昇度合いはそれ以上とも言えます

自民 25127 (28.5%)
立民 17374 (19.7%)
国民 12482 (14.2%)
公明 10584 (12.0%)
維新  6892 (7.8%)
れいわ 6066 (6.9%)
共産  4772 (5.4%)
参政  3206 (3.6%)
社民  1653 (1.9%)

◆与党自滅型選挙 ── 投票率が下がって与党惨敗

今回の衆院選の特徴は投票率が下がって与党惨敗、ということです。よく、「与党を倒すためには投票率を上げよう」という意見をうかがうことがあります。ただ、「投票率が高ければ与党不利」というのは、「常に真」なのか?筆者は疑問に思ってきました。「与党支持者が投票に行かない結果として、野党が勝つ」ケースもあるのではないか?ということです。今回はまさにそのパターンでした。

もちろん、野党に行った方もおられる。ただ、その野党でも、比例代表では国民民主党、れいわ新選組、参政党、保守党と言った少数政党に行った方が多いのではないか?一方で小選挙区では、仕方なく立憲民主党という方も多かったというところでしょう。

◆難しい立憲・国民のかじ取り

立憲民主党は今回、あくまで「敵失」での躍進であることを肝に銘じるべきです。そこを間違えて有頂天に乗れば、またまた旧民主党政権の二の舞になりかねない。
国民民主党の場合は「積極財政」かつ「右派より」と言うスタンスがとくに高市早苗さんを支持していたような層にウケました。ただ、安易に緊縮財政寄りともみられる石破総理や、旧民主党時代に大増税を決めて「悪夢の民主党政権」と自民党に攻撃される材料を造った野田さん率いる立憲と安易に連立を組めば、失望に変わるでしょう。れいわ新選組も山本太郎個人商店からの脱却が求められます。

◆れいわ新選組 山本太郎個人商店型からの脱却

れいわ新選組も躍進はしましたが、反省点はあります。終盤には、山本太郎が大石あきこ共同代表を応援する動画がネット上で批判されるなどの問題は起きました。
山本太郎が公示前と開票直後にぶっ倒れる事件も起きた。山本太郎の負担が過重になり、手が回らないことが多くなっている。そういう状況もあります。今後、増えた議員で山本太郎の仕事を分担し、組織だって仕事をしていく体制づくりが肝要でしょう。

◆日本共産党 スターリン主義の脱却なくして党再生なし

日本共産党は、裏金問題を「赤旗」で暴くなどの功績はあった。しかし、終わってみれば議席を減らし、国民民主党、れいわ新選組にも抜かれる惨敗です。

同党は、2016年から2021年までの野党共闘で立憲に忖度して、オリジナリティを失っていたようにも見えます。そして、今度は、その反動のように、志位和夫議長・田村智子委員長が気に入らない者はすぐ除名・除籍されるなどの「粛清の嵐」となっています。こんな政党に若者が入ろうとするでしょうか?答えは否、です。平和運動や労働運動では共産党員の真面目な方もたくさん存じています。同党の没落の道連れで平和運動や労働運動が衰退することは避けなければならない。いわゆる共産党系と世間では言われる全労連系の労組の幹部もさせていただいっている筆者はそう考えています。

◆多党化、小選挙区比例代表並立制=政治改革1993の限界露呈

現代日本では人々の価値観も課題も多様化しています。その傾向は加速することはあれ、止まることはない。そうした中で、二大政党制を目指すという小選挙区比例代表並立制はもはや時代に適合しないのではないでしょうか?

そもそも、この小選挙区比例代表並立制は1993年-94年に政治腐敗をなくすという趣旨の政治改革で導入されたものです。その政治改革によってできた制度の下で「裏金」事件が起きているわけです。

当初の目的を全く果たしていない「政治改革」。石破総理も野田立憲代表もそのとき「政治改革」を進めた新党で活躍された方です。潔く、あなた方が導入した仕組みの機能不全を認めていただきたい。

政治腐敗をなくすとともに、多様な民意を反映する選挙制度・政治資金制度に。「政治改革1993-94」から30周年の今、真の政治改革を求めたい。これは党派を超えて取り組むべきことです。

筆者はすでにノルウェー式比例代表制度を軸とした選挙の衆院への導入と、政策活動費の廃止、企業団体献金の禁止などを提案しています。また、今回激戦となった東京15区など一部の選挙区で市民有志により実施された選挙期間中の公開討論会を昔のように選管主催で行うことも提案しています。
 
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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10月23日、名古屋高裁金沢支部は、福井女子中学生殺人事件の第二次再審請求審で再審開始の決定をだした。検察が控訴する可能性もあるが、弁護団は本当に頑張ってここまで闘ってこれたと驚く。というのも、桜井昌司さんや青木恵子さんから聞いたのだが、再審請求人の前川さんは弁護団と折り合いがあまり良くないと聞いていたからだ。しかし、ここにきてこれまでのいろんな対立感情も少しおさまればと願っている(事件の詳細は弁護団への取材後に報告したい)


◎[参考動画]【速報】福井女子中学生殺人事件 再審認める決定 名古屋高裁金沢支部(日テレNEWS 2024年10月23日)

 

入廷行動前に裁判所前で行われた集会で発言する再審請求人の前川さん(全写真提供=青木恵子さん)

38年前、福井市の女子中学生が卒業式の日の夜、自宅で非常に惨殺な殺され方をした。被害者は地元の不良たちとトラブルを抱えていたこともあり、リンチされたのではないかと思われた。しかし、犯人逮捕のめどがつかない。そんななか前川さんが逮捕されてしまう。

そこに至るいきさつは複雑だ。別件で逮捕されていた地元のワルで暴力団組員Yが警察官に「犯人をしらないか」と聞かれ、犯人がわかれば、自身の刑が軽くなるのではと考え、知人に「犯人知らないか?」などと手紙していた。つまりYは犯人を知らないのだ。しかし、どうにか刑を軽くしたいYは、同じく当時シンナーを吸ってたりした後輩の前川さんに犯人役を押し付けようと企む。犯人は被害者がその時間1人でいたことを知っていた可能性があるため面識がある人物と思われてきた。しかし前川さんその被害者と面識がなかったのだ。

犯人逮捕に至らず、世間の非難を浴びる警察も、なんとか前川さんを犯人にしたてようとYの嘘の供述から、次々と関係者の嘘の供述をとっていく。

途中例えば「そうだCはあの喫茶店の場所をしらないんだ。ならば、Oを引っ張りこもう」と関係者がどんどん増えていく。警察に呼ばれた連中の多くは薬に手を染めたり、恐喝したりとスネに傷持つ者だから、警察に逆らえず、どんどんYと警察の作ったストーリーに沿った供述を行っていく。

ただし再審開始の決定書では、主に6人の関係者の供述などに絞っていく。 当日、犯行現場に前川さんを車で送ったというTは、車に戻ってきた前川さんの右手に血がついていたうえ、犯行をほのめかされたと供述。Iは事件当夜、Yに呼び出された先で、胸のあたりに血をつけていた前川さんを見たと供述。決定的な証拠がないなか、前川さんには一審て無罪判決が下されたが、検察が控訴し、二審では他を含む6人の供述が概ね一致しているとして懲役7年の実刑判決がくだされ、前川さんは服役してきた。

Iは、当初検察側証人として確定判決に沿う証言をした。事件当日はy田(Yとは別人)の家で「夜のヒットスタジオ」を見ていたが、アンルイスが歌う後ろで吉川晃司が腰を振るいやらしい場面(「本件場面」)があり、2人で「いやらしいな」と感想を言い合っていた。その後Yから電話があり、呼ばれた場所に行くと胸のあたりに血がついている前川さんを見たと証言。その後、Iの証言は事件当夜はm男とうどん屋に行き喧嘩をみた。そのあと、本件事件の検問を受けたと証言した。さて、どちらが正しいのか?

確定判決は、Iの最初の供述の信用性を認めた。理由のなかで「夜のヒットスタジオ」が事件当日夜に放送された事実を認定していた。警察の捜査報告書には「夜のヒットスタジオ」が、事件のあった3月19日に放送されたと記載されていた。なお、テレビ局への照会は、検察が前川さんを起訴した後、補充捜査の一環として警察に指示しておこなっていたのだった。

 

全身白い服装で応援に駆け付けた冤罪被害者の青木恵子さんと前川さん

今回の再審請求審で、弁護団が新たに検察に開示させた証拠のなかにその報告書があった。そしてテレビ局に対する照会結果などによれば、その放送は3月19日ではなかったことが発覚した。どういうことや?

一方、y田は夜のヒットスタジオでいやらしい振り付けのアンルイス、吉川の共演を一緒に見たのが誰だったか、最初は思い出せていないことがわかった。しかも一緒に番組を見ていたIとはそれほど親しい関係でなかったことも……。しかし、いやらしい「本件場面」を見たあとに、Yから呼び出されたことから、それほど仲の良くない2人が一緒にいやらしい「本件場面」をみていたことにされていたのだ。

Iは取り調べの初期段階で、当夜はツレのm男とうどん屋に行き、そこで喧嘩をみた。そのあとに、殺人事件関連の検問をうけたと供述したのに、M警察官は「m男はうどん屋で喧嘩を見たのは別の日だと言ってるぞ」とその供述を受けつけてくれなかった。新証拠によって、例の「本件場面」が放送されたのは別の日だと判明したことから、Iらが警察官の誘導で、ありもしない体験を述べる供述が作成されていたことが判明した。

実はIは、一審で前川さんが無罪になったあと、再びM警察官に呼ばれ、Iの覚せい剤事件を見逃すことを条件に、再度血のついた前川さんを見たとの証言を行わされた。Iは今回の再審請求審では弁護側の証人となり、その事実を証言した。M警察官の車に乗り出廷した控訴審の証人尋問のあと、M警察官に食事やスナックを奢られたうえ、結婚する際には祝儀をもらったとも証言、M警察官の名前が入った祝儀袋を証拠提出した。 

 

「日野町事件」の再審請求人・阪原弘次さん(弘務元被告の長男)と前川さん

それにしても、148頁にも及ぶ再審開始決定書のなかで、これだけ頻繁に「夜のヒットスタジオ」「アンルイス」「吉川晃司」が引用されるのは珍しいことだ。一方で、これもまた分厚い2年前の再審請求書には、「夜のヒットスタジオ」云々は全く触れられていない。なぜかというと、画定審では、その後前川さんの着衣などに血がついていることを目撃したIは、一緒にいたy田とアンルイスと吉川のいやらしい共演を見たあとに、Yに呼び出され、そこで血のついた前川さんを見たとなっていたが、いやらしい場面(本件場面)が放送されたのが3月19日と明確になったことも大きな理由として、主要関係者の供述や証言は嘘でないとされたのだった。そして前川さんは有罪とされていた。

しかし、当時のテレビ番組を知っている人はご存じだろうが、「夜のヒットスタジオ」は当時流行った曲を歌う歌手が登場する。だから当時ヒット曲を出していたアンルイスも吉川もたびたび登場していたのではないか。ただし、アンルイスが「六本木心中」を歌いだし、2番目を歌いだした際、吉川を呼びつけ、例のいやらしい振り付けで競演するというパフォーマンスは、3月19日の放送ではなく、翌週3月26日の放送だったのだ。しかも19日、「夜のヒットスタジオ」でアンルイスが歌ったのは「六本木心中」ではなく「あぁ無情」だったし、この日吉川も出演しているが、アンルイスとは共演していない。テレビの番組表だけをみれば、出演者欄に「アンルイス、吉川晃司」と書いてある。

私は知らなかったが、あのアンルイスと吉川のいやらしいパフォーマンスは当時テレビを見ていた人の中ではかなり刺激的で強烈に記憶に残っていたようだ。今でもxなどで検索すればでてくる。


◎[参考動画]伝説のデュエット【六本木心中】

それにしても、警察、検察も酷いことをするもんだ。冤罪を作り続ける現場の連中も、部下に性的暴行をはたらく上のやつらも……。そしてこんな私のところには冤罪犠牲者の方々から連絡がくる。拘置所、刑務所から手紙がきたり、人を介して連絡がきたり。先週も北海道の拘置所から手紙をくれた方がいた。多くの人は「私も冤罪です。取材してください」だが、彼は「『日本の冤罪』を読んで感動しました。私も冤罪で現在控訴中です。冤罪関係のどんな本を読むのがお勧めですか」だった。

冤罪は、大きいも小さいも関係なく、その人や家族、関係者の人生を大きく変えてしまう。連絡下さったすべての方々のお話を聞きたい。一生かけて聞いていかなくてはならない。冤罪を晴らしていかなくてはならない。


◎[参考動画]38年前の事件で7年服役 前川彰司さん(59)裁判所が再審認める判断 目撃証言の男性「うその証言をした」などの証拠 福井・中3女子殺害事件(TBS 2024年10月23日)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
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尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

鎌田政興が決勝戦進出。その経過は!?
勇志が決勝戦進出。その結果は!?
貴方ならどうする三つの選択肢!

◎冠鷲シリーズ vol.6 / 10月19日(土)後楽園ホール17:30~20:29
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第11試合 第17代NKBフェザー級王座決定4人トーナメント準決勝 5回戦

2位.勇志(テツ/2000.4.28大阪府出身/ 57.05kg)14戦10勝(3KO)2敗2分                 
3位.矢吹翔太(team BRAVE FIST/1986.8.2沖縄県出身/ 56.5kg)17戦10勝4敗3分
4位.鎌田政興(Kアクティブ/1990.5.6香川県出身/56.75kg)前戦迄20戦9勝(3KO)9敗2分         
5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身)前戦迄31戦11勝(4KO)15敗5分

対戦相手は当日の第3試合後のリング上で、4名の出場選手から抽選で1名に準決勝戦の対戦相手指名権を与え、残り2名によるもう一方の準決勝戦となる……という予定だったが、半澤信也が脱水症状による体調不良で欠場。

他3名による抽選と成り、中が見えない袋の中の番号が書かれたボールを取り、更に竹村哲氏が持つ封筒に入った番号の紙と一致する選手に指名権が与えられるシステムで行なわれ、鎌田政興が指名権を得た。

対戦者は勇志か矢吹翔太か、不戦勝かを選択。その結果、鎌田は不戦勝を選択し決勝戦進出。これによって勇志vs矢吹翔太による準決勝戦が決定。

勝者:勇志 / TKO 4ラウンド 16秒 /
敗者:矢吹翔太
主審:前田仁

初回から組み合って来る矢吹翔太と離れて戦いたい勇志はバッティングも起こり、勇志のドクターチェックが入ったが続行。矢吹はヒザ蹴りや崩して上になって倒れ込む優位に立ちたい戦法。勇志はローキックやパンチ、ミドルキックで攻めるが矢吹に距離を詰められやり難い展開。

勇志の軽く飛んだヒザ蹴り。蹴り技では勇志が攻勢を保つ

第2ラウンド以降も同じ展開も、勇志はローキックを繰り出し、距離感を掴んで行き、第3ラウンドも同様ながらパンチを打ち込むタイミングも掴んできた勇志。
第4ラウンドには組み合う間もなくパンチの距離で進んだ勇志が連打から右ストレートをクリーンヒットさせると矢吹は仰向けにノックダウン。そのままカウント中にレフェリーストップとなった。

ノックアウト(TKO)となった勇志の相打ち気味の右ストレートヒット

ノックダウン奪った勇志と失神状態の矢吹翔太、このままレフェリーストップとなった

勇志は「内容的には全然ダメでした」と一言。作戦は無く、パンチや蹴りでのヒットした感覚は無く、流れを引き寄せるにはやはり難しかった様子。

鎌田の不戦勝選択については「予想外でしたね。バンテージ(鎌田が)巻いとったんでやるかなと思ってました」と語った。

リング上で勇志と対峙した鎌田政興は「一度、勇志選手には負けているので、今回やれて本当に嬉しいです。決勝戦はバチバチやりましょう」

対する勇志は「今日は勝てて良かったです。タイトルマッチには勇志軍団連れて乗り込みます!」と意気込みを語った。

◆第10試合 ライト級 3回戦

利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/ 61.05kg)6戦5勝(1KO)1敗
        VS
中山航輔(テツ/2002.10.13香川県出身/ 60.95kg)4戦4勝
勝者:中山航輔 / 判定0-3
主審:鈴木義和
副審:前田29-30. 笹谷29-30. 高谷29-30

初回、蹴りの距離。中山航輔が利根川仁をロープに追い詰めたところで右ストレートヒット。更に中山の右ハイキックからパンチ連打で利根川仁をロープに追い詰める。利根川仁のバックハンドブローに合わせて中山の右フックもヒット。

第2ラウンドも中山が前進は多いが、利根川仁も蹴りパンチで出て互角には渡り合う。

第3ラウンドも蹴りの距離で激しく主導権争いに徹した攻防が続くも、ジャッジ三者が揃ったラウンドは無い中の中山航輔が僅差判定勝利。

差は付き難い展開ながら中山航輔がやや攻め優った

勝者は中山航輔、珍しい横並び。後ろ姿はガルーダ・テツ会長、右は片島聡志氏

◆第9試合 当初予定 61.3kg契約 3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/ 60.95kg)vsKEIGO(BIG MOOSE)

KEIGOが練習中の眼窩帝骨折の為、欠場により中止(主催者発表は棚橋の不戦勝)。

◆代行エキシビジョンマッチ2回戦(2分制)

棚橋賢二郎(拳心館)EX蒔田亮(Tokyo Kick Works)

顔面ヒザ蹴り禁止。ヒジ打ちは有効という条件で公式戦のような激しさを見せた両者。
蒔田亮のパンチから蹴りの積極性が目立った。棚橋賢二郎も打ち返し蹴り返していく互角の展開で終了。

エキシビジョンマッチながら激しく打ち合った蒔田亮と棚橋賢二郎

◆第8試合 ライト級 3回戦

NKBライト級5位.山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/ 61.05kg)
19戦7勝(4KO)8敗4分
        VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/ 60.75kg)10戦6勝(4KO)4敗1分
勝者:山本太一
主審:加賀見淳     
副審:高谷30-28. 前田30-29. 鈴木30-29

山本太一が先手を打ってパンチ蹴りで出ていく。スピード優る山本。鈴木ゲンは遅れがちだが攻め返す技量を見せる。第2ラウンド以降も山本が追って鈴木をコーナーに追い詰めるも倒すには至らないまま試合終了し、山本太一が判定勝利。

鈴木ゲンは1995年2月デビューで7戦6勝(4KO)1分まで進んで引退したという中、「やり残したことがある」と昨年復帰。そこから3連敗したが、勘が戻って来ているというトレーナーの話ではあったが、今日も勝利には届かなかった。

山本太一の左ストレートが現役完全燃焼目指す51歳の鈴木ゲンにヒット

◆第7試合 65.2kg契約 3回戦

大月慎也(TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/ 64.95kg)24戦10勝(5KO)10敗4分
        VS
魔娑屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/ 65.15kg)6戦2勝(2KO)4敗
勝者:大月慎也 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:鈴木28-26. 前田28-26. 加賀見28-26

初回、蹴りの様子見から魔娑屋の首相撲からのヒザ蹴り、パンチの交錯から左ストレートで大月慎也からノックダウンを奪い、更に打って出ると大月はグロッギー状態。

大月慎也が逆転のスタンディングダウンを奪った右ストレートヒット

第2ラウンドも魔裟屋が蹴りで攻勢を掛けるが、大月もスピードは無いが蹴り返し、徐々にダメージから回復。更に魔裟屋を追い始め逆にグロッギー状態に陥った魔裟屋。

第3ラウンド、大月が完全に息を吹き返し、大月が左ハイキックヒットで魔裟屋はグラつき形勢逆転し大月の猛攻が始まった。大月の左ストレートヒットから連打でスタンディングダウンを奪った。

更に打ち合いになるも大月が優る気力で打ち勝つと再びスタンディングダウンを奪い、フラついて倒れそうになる魔裟屋はカウント中に試合終了ゴングが鳴り、カウントは続くのかゴングに救われるのか曖昧な間があったが第3ラウンド終了として判定に委ねられ、大月の逆転判定勝利となった。

魔裟屋は第1ラウンドの一気に打って出れば倒せたかもしれないところから、大月に巻き返されてしまった。

大月慎也の圧倒、逆転KOは必死も時間切れ

◆第6試合 57.5kg契約 3回戦

堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 57.25kg)6戦3勝2敗1分
        VS
安河内秀哉(RIKIX/2003.10.7東京都出身/ 57.35kg10戦7勝(2KO)3敗
勝者:安河内秀哉 / 判定0-3
主審:高谷秀幸
副審:前田28-29. 加賀見28-30. 笹谷27-30

初回は蹴り中心の様子見からパンチの距離へ移っていく。差の無い攻防から徐々に安河内秀哉の的確差が優って行った。最終ラウンド終盤には安河内がパンチ中心のラッシュをかけて堀井を追い詰めるも決定打は無く倒すに至らず。

◆第5試合 バンタム級 3回戦

荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/ 53.3kg)6戦2勝2敗2分
        VS
山本藍斗(GET OVER/2005.5.27愛知県出身/ 52.95kg) 6戦2勝2敗2分
引分け 1-0 (30-28. 29-29. 30-30)

初回、蹴り合いから首相撲に移ってヒザ蹴りの攻防も続くが、第2ラウンドには山本藍斗がローキックのしつこさで攻め、荒谷壮太は組んでのヒザ蹴りで対抗する。再び離れての蹴り合いも続き、差が出難い展開となった。

◆第4試合 58.0kg契約 3回戦

樋口雄生(ケーアクティブ/1995.4.14東京都出身/ 57.3kg)3戦1勝2敗
        VS
西湧輝(市原/1997.6.4福岡県出身/ 57.9kg)2戦2敗
勝者:樋口雄生(赤コーナー) / KO 2ラウンド2分18秒 / 3ノックダウン     

◆第3試合 52.0kg契約 3回戦

真虎(Kick Life/2002.6.28埼玉県出身/ 51.8kg)14戦1勝11敗2分
        VS
齋藤龍鬼(ワンサイド/2004.7.23長野県出身/ 51.7kg)2戦2勝(1KO)
勝者:齋藤龍鬼(青コーナー) / 判定1-2 (29-28. 29-30. 28-29)

激しく蹴り合う両者。飛びヒザ蹴りも多発した両者。

◆第2試合 58.0kg契約 3回戦

橋本悠正(KATANA/1997.4.21福島県出身/ 57.75kg)5戦1勝(1KO)3敗1分
        VS
ジャッカル鈴木(BIG MOOSE/1989.2.15千葉県出身/ 57.6kg)3戦2勝1敗
勝者:ジャッカル鈴木(青コーナー) / 判定0-3 (29-30. 28-30. 29-30)

◆第1試合 ライト級 3回戦

リョウヤ・ハリケーン(テツ/2002.10.20兵庫県出身/ 60.1kg)1戦1分
        VS
大塲浩史(Blaze/1986.7.8山口県出身/ 60.9kg) 1戦1分
引分け 1-0 (30-29. 29-29. 29-29)

 

12月14日に王座決定戦で対戦する鎌田政興と勇志が健闘を誓う

《取材戦記》

今回の王座決定トーナメントは本来、競技的には2位.勇志vs3位.矢吹翔太で王座決定戦を行ない、4位.鎌田政興 vs 5位.半澤信也で次期挑戦者決定戦を行なうか、4名によるトーナメントカードは契約時点で決定しておくべきと思いますが、話題性で盛り上げたい演出は、試合当日の抽選という流れとなりました。

ただ、タイトルマッチに準ずる試合というところではリミット超えの契約ウェイトとかではなく、正規リミット内で正規5回戦で行ない、ワンデートーナメントではない、次回興行での王座決定戦は公正な競技として正しいやり方と思います。

王座決定トーナメントの対戦相手指名権を得た選手の三つの選択肢は、この日試合を行なうことによって試合勘、リズムを維持して王座決定戦に挑む考え方と、戦わずに無傷で王座決定戦に進む考え方も、その分の実戦から遠ざかる勘や緊張感の鈍りも考えられるが、ここで負ければ元も子もない訳で、無傷でこのままコンデションを更に上げて行く選択が妥当でしょう。

会場に残っていたあるジムの会長に、「仮に御自身が指名権を得たら」という質問には「俺だったら不戦勝なんて怖くて言えないですよ。どちらか対戦相手選ばないとマズイかなと試合するかもね!」という回答もありました。興行には選手のチケット捌きが絡むので、応援に来るファンの存在を無視出来ません。もし地方から大型バスで100名以上の応援団が観戦に来るとしたら不戦勝を選べるか。試合を観せられない選択も難しいところでしょう。

当初4名のトーナメント出場者にどれだけ応援団が居たかは分かりませんが、勇志はKO勝利で応援者の居る北側にガッツポーズしており、各選手の思惑や配慮も何かとあったかもしれません。

ツイキャスによる放送の解説者の一人、木村充利氏に興行のベストバウトを尋ねると、「ベストバウトは大月慎也vs魔裟屋で、初回から魔裟屋が先手で打って出たパンチでノックダウンを奪っても、そこで倒し切れなかったのが勝敗の行方を分けたところでしたね。そのまま最終第3ラウンドまで引き摺って、大月がベテランの底力を見せました。魔裟屋は経験不足でしたね」

「もう一つは勇志 vs 矢吹翔太で、矢吹が首相撲に導き、勇志はペースを乱されましたが、第3ラウンドには首相撲から離れてパンチが出始めてリズムに乗って、第4ラウンドに右ストレート打ったのが勝因でしたね」と語ってくれました。

「2試合が流れる形になるのは試合の面白さが半減しますね」といった意見も聞かれた会場内。そこを盛り上げてくれた勇志vs矢吹翔太戦と大月慎也vs魔裟屋戦はベストバウトと言う意見は多いことでしょう。

日本キックボクシング連盟冠鷲シリーズvol.7は12月14日(土)に後楽園ホールに於いて開催されます。準決勝に勝利し決勝戦進出した勇志と鎌田政興のフェザー級王座決定戦が行われます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年11月号

◆〔4〕本審査結果……『この原発が今後適合することはない』の恒久性について
 さらに審査を求める行為を拒否することも審査書に明記すべき

規制委員会はK断層は後期更新世以降の活動が否定できないこと及びK断層は2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できないことから、設置許可基準規則第3条第3項に適合しているとは認められないと判断した。

したがって、本申請は、原子炉等規制法第43条の3の8第2項において準用する原子炉等規制法第43条の3の6第1項第4号に適合しているものとは認められないとの結論である。

上記結論に達した以上、『この原発が今後適合することはない』と考えるべきだ。
巨額の投資をしているからとか、新たな知見が見つかったなどとして審査を求めることは、大きな費用を追加投入することになるので厳しく批判されなければならない。

敦賀原発2号機については、この状況においてはさらに審査を求める行為を拒否することも合わせて審査書に明記すべきである。

◆〔5〕経理的基礎の不存在について
 敦賀2号機の再稼働を前提とした維持管理費を電力3社(関西、中部、北陸)から調達できない

原電については、既に東海第二原発の再稼働を巡り「経理的基礎」についての審査が一度行われている。

その中で、原電に経理的基礎がある根拠としているのは原電が建設している(審査段階では建設予定である)のは2014年5月20日付けの原電による申請に対する審査で、安全対策工事のうち防潮堤に関しての資金である1740億円についてのみである。

この安全対策工事にかかる資金を原電が調達できる見込みがあるかどうかを確認しているにすぎない。

これは、それ以外の経営上必要な費用については、東海第二と敦賀2号機の「維持管理費用」として調達できるからであり、これが土台になっていることが前提だった。
 
ところが今回、審査結果として敦賀2号機の運転が不可能となることで、この土台が失われることが確定的になった。

現時点では日本原電は、依然として敦賀2号機の再稼働を前提とした維持管理費を電力3社(関西、中部、北陸)から調達できるかの前提で経理的基礎はあると主張するのだろうが、それは虚飾と言うほかはなく、三電力の株主及び消費者にとっては、無駄な資金提供を原電に続けることとなる。

このような不当な状況を回避するために、再び経理的基礎を有するかの審査が必要だ。

◆〔6〕東海第二原発の欠陥防潮堤
 日本原電の会社としての運営が危機的状況になっている

これに加えて、原電は現在、東海第二の防潮堤工事を進めているところだが、この工事に重大な欠陥があり防潮堤が完成できない状況にある。そのため1740億円をはるかに超える費用がかかることは間違いなく、先の経理的基礎が失われていると考えられる。

敦賀2号機の運転ができない状況となったことから、将来的には東海第二の再稼働どころか、日本原電の会社としての運営が危機的状況になっている。

そのことは東海第二の安全対策工事にも影響を及ぼすこととなるので、規制委は改めて東海第二の安全対策工事や防潮堤工事について、本当に竣工可能なのか、経理的基礎を改めて審査するべきだ。

◆〔7〕日本原電の電気料金収入の問題
 使えない設備の維持のために強制的に費用を負担させるのは不当であり、不正である

経理的基礎の喪失と同時に、原電の収入には大きな問題がある。

2011年度以降2023年度までの電力収入は累計1兆5658億490万円に達している。これは発電など全くしていない2基の原発のために5電力会社が支出した金額だ。

この資金は全て電力会社の電気代つまり消費者から集めた資金である。この資金は、原電の2基の原発を再稼働することでまかなうはずだった。

そのうち敦賀原発2号機の再稼働ができなくなったことについて、原電はいかなる責任を負うのか、規制庁はヒアリングを行い、こうした問題について解明するべきである。

特に、敦賀原発2号機の審査を更に継続しようとする計画であることを原電自らが主張し、さらに電力3社や経団連がそれを支援するなどとしているが、そのために更に巨額の維持管理費用を各電力会社の顧客は負担しなければならない。

原発に拘泥し、使えない設備の維持のために強制的に費用を負担させるのは不当であり、不正であることを規制委は明確にするべきである。(了)

◎山崎久隆 日本原電敦賀原発2号機 新規制基準「不合格」をめぐる7つの問題点
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=51517
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=51523

◎初出:「月刊たんぽぽニュース」2024年10月号

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

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