《脱法芸能47》吉松育美VS谷口元一裁判(7)角地山弁護士による反対尋問

吉松さんの反対尋問が続く。

◆まだ実際にはそういった脅迫等のようなことは行われていないんですね(角地山弁護士)

角地山宗行弁護士 甲17号証の5ページ上から2段落目ですね。テイラー(の発言として)「谷口が言っているのは、吉松を出したら、こういうの(スキャンダル)をマスコミに出すっていうわけ?」、松永(の発言で)「いや、そこまでは言ってないと思いますよ」という風に松永さんから先ほどあなたが発言したところによると、松永さんは谷口さんが国際文化協会に対して脅迫のようなことをしているとおっしゃっていますが、ここで松永さんは明確に否定しているんじゃないですか?

吉松育美 このあと、今、弁護士さんが拾った行の一番最後には「まだね」という表現をしていますし、また、他にも「今後、どのようなことが起こるか分からない」と(いう発言があります)、要は「この先、何が起きるか分からない」という恐怖、そして心配というのを、谷口さんが電話していることによって感じているわけです。ここではもちろん否定しています。というのは、私を目の前にしてそういうことを言えるわけがない。でも、国際文化協会としては「そこまでは言っていませんよ、まだね」という、今後、危険な行為が行われる可能性が高い、もしくは私が危険な行為になる、もしくは国際文化協会が運営するミス・インターナショナル大会に影響が出る恐れがあるというのを想定してこういう発言をしているんです。

角地山宗行弁護士 ですが、まだ実際にはそういった脅迫等のようなことは行われていないんですね。

日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

吉松育美 さっきも言いましたように……。

角地山宗行弁護士 いや、行われているか行われていないかを聞きたいんです。

吉松育美 「まだ」というのは……。

角地山宗行弁護士 もう、いいです。

角地山宗行弁護士 乙2号証3ページを示します。3ページの4段落目。「吉松さんの日本代表時点での発言に一部不誠実な対応があったことや(中略)自粛をしていただくことを決めました」という風に記載されています。ここで、あなたが国際文化協会に対して不誠実な対応をしたのではないですか?

吉松育美 ありません。

角地山宗行弁護士 あなたがとっていないと思ったとしても国際文化協会の方が不誠実な対応だと感じるようなことがあったんじゃないですか?

吉松育美 ありません。また、国際文化協会がそういうこ(不誠実な対応があった)と言うのであれば、その時点で私に注意が来るはずです。でも、今まで国際文化協会からは具体的に注意を受けたことはありません。

◆スキャンダルを探す目的というのはあなたの推測ではないですか?(角地山弁護士)

角地山宗行弁護士 次に行きます。あなたはあなたのスキャンダルを探す目的で谷口さんが探偵に調査を行なったと主張されていますね。甲33と34。これはあなたが提出した証拠ですね。あなたはこの証拠を西川先生が裁判所に提出したということをご存じですか? この証拠がテイラー氏に対する動産執行の資料として裁判所に提出されたことはご存じですか?

吉松育美 はい。

角地山宗行弁護士 甲33号証の調査対象には何と記載されていますか?

吉松育美 調査対象、氏名、マット・テイラー氏。

角地山宗行弁護士 次に調査事項のところには何と記載されていますか?

吉松育美 マット・テイラー氏の活動拠点確認。

角地山宗行弁護士 この行動調査報告書によると、調査対象はマット・テイラーとなっていまして、この資料が提出されたのは、動産執行の資料として提出されているんですけども、ということであれば、スキャンダルを探す目的というのはあなたの推測ではないですか?

吉松育美 先程も、おっしゃったように調査対象はあくまでマット・テイラーと書かれています。ですが、谷口さんは本当に純粋な気持ちでマット・テイラー氏だけの活動拠点を知りたいと思うのなら、この報告書の添付されている写真に私だけを写した写真を4枚も撮っています。それは写真の証拠を見ていただければ分かると思うのですが、写真のナンバー12、ナンバー11、そして、36、44番は、マット・テイラー氏だけではなく私だけをターゲットに写真の記録を残しています。また、この報告書の……。

角地山宗行弁護士 あ、もう結構です。

吉松育美 ……3ページ目を見ていただければ分かると思いますが、この探偵はマット・テイラー氏の隣にいる一女性(吉松育美と思われる人物がいる)と書かれています。つまり、その探偵は事前に谷口さんから吉松育美がいるという情報を……。

角地山宗行弁護士 もういいです。結構です。あなたはあなたのスキャンダルを探す目的で動産執行が行われたと主張していますね。

吉松育美 私のスキャンダルを探す目的で動産執行が行われたということではなく、探偵の方が私のスキャンダルを探す目的で……。

角地山宗行弁護士 ブログではそう書いてないですか?

吉松育美 ……。

角地山宗行弁護士 乙10号証(吉松育美オフィシャルブログ記事)を示します。あなたは動産執行について、下から3段落目、「しかし、テイラー氏との問題を理由にあげても不動産執行は法的にも不可能であることを知った彼は、次に動産執行という手を使って執行官に嘘を付き私の自宅を調べたのです」という風に記載されています。

吉松育美 これは事実だけを述べたものであって、決してこの一文が谷口さんが動産執行に動いたのは私のスキャンダル目的でという主張にはならないですね。これは事実をただ私が淡々と述べているだけです。

角地山宗行弁護士 ですが、この内容からすると、谷口さんはマット・テイラーだけでなく、あなたの自宅を調べるために動産執行を行なったように読めるんですけど。

吉松育美 それは読者によっては弁護士さんのようにそういう風な受け取り方をされる方もいるでしょうし、私のようにこれは淡々とまあ事実通り言っただけだと受け取る方もいるでしょうし。

◆被告の社会的評価を低下させようとしてストーカーと呼んだのですか?(角地山弁護士)

角地山宗行弁護士 次に、あなたは「ストーカーゼロ 被害者が守られる社会を」というキャンペーンを立ち上げています。では、ストーカー規制法についても結構、勉強されたのでしょうか?

吉松育美 はい、当時はしました。

角地山宗行弁護士 ストーカー規制法の対象が恋愛感情を充足する目的の行為に限定されることはご存じですか?

吉松育美 はい。警察には同じようなことを言われました。

角地山宗行弁護士 外国人記者クラブで記者会見をする前にあなたは被告がストーカーであるという被害届を警察に出しましたか?

吉松育美 はい、出しました。

角地山宗行弁護士 あなたは谷口氏があなたに対し恋愛感情を抱いていると思いましたか?

日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

吉松育美 それは谷口さん本人に聞いていただかないと。私が抱くことではないので、谷口さんに聞いてください。

角地山宗行弁護士 谷口さんはストーカー規制法のストーカーにあたりますか?

吉松育美 法律では分かりませんが……。

角地山宗行弁護士 そこまで。警察がこの件に関して捜査を開始しましたか?

吉松育美 受理してもらえませんでした。

角地山宗行弁護士 なぜ受理してもらえなかったのですか?

吉松育美 その当時は管轄が違うという別の理由をつけて受理できないと言われました。

角地山宗行弁護士 あなたと被告が恋愛関係にないのでストーカーにはならないというふうに説明されたのでは?

吉松育美 ストーカー規制法にはあたりません。法律にあたらないと言われました。

角地山宗行弁護士 あなたは記者会見で何回ぐらい被告のことをストーカーと呼びましたか?

吉松育美 覚えていません。

角地山宗行弁護士 覚えてないぐらい多数回言っているということですか? あなたは警察から被告がストーカーにあたらないと認識しながら、被告のことをストーカーと呼んだのですか?

吉松育美 ストーカー規制法には彼の行為は今の日本の法律ではあてはまりませんが、辞書でストーカー行為、ストーカーと見ると、それは他人が恐怖を感じるつきまといと出てきます。まさに彼のやった行為というのはストーカーにあてはまります。ただ、やった行為は今の日本の社会では法律にあてはまらないという弁護士さんと私の認識の違いがあるのかなと思います。

角地山宗行弁護士 警察から被告はストーカーにはあたらないと説明されながら、被告の社会的評価を低下させようとしてストーカーと呼んだのですか?

吉松育美 違います。私がこのようにやっているのは、谷口さん個人に対する怒り、もしくは憎しみからやっているのではありません。もしそのようにやっているのであれば仮処分の時点で私は谷口さんと和解をしています。でも、ここまで裁判所に来て闘っているのは、先程も言いましたように私のように、ストーカー規制法にあてはまらない、そして理不尽な理由で泣き寝入りをせざるを得ない多くの女性、被害者がたくさんいると知ったので私は発言をしたら声を聞いてくれる人たちがいる、その女性、被害者の思いを背負ってここまでやっているのです。(続く)

○吉松育美さん公式サイト=http://ikumiyoshimatsu.com
○吉松育美さんFacebook=https://www.facebook.com/yoshimatsuikumi?ref=hl
○吉松育美さんYouTube=http://www.youtube.com/user/yoshimatsuikumi

◎《脱法芸能41》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(1)
◎《脱法芸能42》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(2)
◎《脱法芸能43》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(3)
◎《脱法芸能44》吉松育美VS谷口元一裁判(4)マット・テイラー氏とは何者か?
◎《脱法芸能45》吉松育美VS谷口元一裁判(5)『週刊新潮』記事と谷口氏の影響力
◎《脱法芸能46》吉松育美VS谷口元一裁判(6)角地山弁護士による反対尋問
◎《脱法芸能47》吉松育美VS谷口元一裁判(7)角地山弁護士による反対尋問

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

芸能界の歪んだ「仕組み」を解き明かす!『芸能人はなぜ干されるのか?』

鹿砦社大忘年会の宴!「前へ!前へ!」と走り続け、どんな議論も引き受ける!!

忘年会たけなわの季節だ。「いやいや1年間あれこれありましたが、ご苦労様でございました」と労い合うこの習慣、強制されるのでなければ私は嫌いではない。

実は鹿砦社も毎年関係者を集め忘年会を開いている。文字通りの「鹿砦社大忘年会」である。今年は12月14日東京、東京編集室近くの水道橋で行われ80余名が結集した。司会進行は例年通り『紙の爆弾』で鈴木邦男の対談をプロデュースしている椎野礼仁さん。松岡社長の挨拶、マッドアマノさんの乾杯の音頭で歓談が始まった。

2015年鹿砦社大忘年会「もっと前へ!前へ!」(揮毫=龍一郎さん)

『紙の爆弾』や『NO NUKES voice』への寄稿者や出版関連の社長さん、編集者、ライターらに交じって「プリズンコンサート」で有名なPaix2(ぺぺ)をはじめ、芸能関係者の姿も。敢えて名を秘すが「サプライズゲスト」の社会派お笑いコンビが登場するや、忘年会は一気にフィーバー! また、脱原発や救援活動など社会運動関係者の姿も多い。

◆『紙の爆弾』創刊10周年、「言論・出版弾圧」から復活10周年だった鹿砦社の2015年

Paix2(ペペ)のお二人からのご挨拶

しかしこの忘年会の特徴は、なんといっても鹿砦社が参加者を無料で招待することだ(今年もご馳走様でした、鹿砦社の皆さま)! こんな太っ腹で大丈夫なのだろうか、と参加者が気を遣っている様子が一向にないのがまた鹿砦社の招待客らしい(何を隠そう私自身もそうだけど)。鹿砦社が10年前の壊滅的打撃から回復の兆しが見えた頃から支援してくれた方々への1年に1度の恩返しの意味でこの「大忘年会は」始まったという。

今年は鹿砦社にとって、月刊『紙の爆弾』創刊10周年。まさに悪夢だった「言論・出版弾圧」から10周年の記念すべき年だった。東京と本社のある甲子園で各10周年の記念イベントが行われ、そこにも鹿砦社の再起を祝う多くの人びとが集まった。
名誉毀損での松岡社長逮捕・勾留という致命傷に近い「弾圧」を受けながら10年後にこの姿で復活どころか、弾圧前を超える勢いで走り続ける鹿砦社の姿を想像できた人は少なかっただろうし、それを実現した松岡社長や中川編集長をはじめとする鹿砦社の皆さんの奮闘は察して余りある。

◆雑誌の原点──様々な立場、意見の人びとを紹介し、議論を喚起する媒体

「前へ!前へ!」と走り続け、どんな議論も引き受ける!!

そんなメモリアルな年にふさわしいというべきか、「ちょっとした事件」が忘年会を前に起こっていた。脱原発雑誌『NO NUKES voice』第6号は「脱原発と反戦・反安保─世代を超えて」を特集したが、そこでは安保法制反対運動を担った方々の生の声に加えて松岡社長自身による8頁に及ぶ「解題 現代の学生運動──私の体験に照らして」が掲載された。「解題」を読んで私はこれは賛否両論の大きな議論に発展するに違いないと直感した。

その予感通り、「解題」を含め『NO NUKES voice』第6号は壮絶な大論議を巻き起こし、特にネット上では相当の議論が交錯した。「雑誌」は本来、様々な立場、意見の人びとを紹介し、議論を喚起するのが社会的に期待される役割だろう。その役割を果たせる雑誌が減少している証左を図らずも証明することとなったのが『NO NUKES voice』第6号が巻き起こした大論議である。初めて買った方が大いに共鳴し、30冊まとめて購入し、仲間に配布したという知らせもあったという。

発行元としては大いに歓迎すべき闊達な議論が沸き起こったのだけれども、かといって雑誌を世に出せば「はい、それでおしまいよ」というほど出版や社会運動の世界は優しい場所ではない。詳細は省くが、この間、友好関係にあった反原連(首都圏反原発連合)から突然の絶縁声明が出されたのだ。

『NO NUKES voice』第6号ではほとんど直接的な反原連批判がなされているわけでもなく、また松岡社長の反原連への入れ込みようは傍で見ていてもハラハラするほどで、資金支援も相当してきたそうだ。なのに……。この過程の中で「老害」「内政干渉」などと詰られ鹿砦社は多少なりとも傷を負ったことも事実ではある。しかし、そんなことは、かの「弾圧」の経験に比べればこれっぽっちのかすり傷ですらない。むしろ前を向かせてくれるエネルギーでしかないと私は思う。

「前を向く」、そして「走り続ける」。どんな議論でも引き受ける。厄介であっても結構。いやむしろ社会の欺瞞を暴き、誰もがそれに口を閉ざすのであれば、敢えて「火中の栗を拾う」のが鹿砦社の使命と言ったら言い過ぎか。「虎穴に入らざれば虎児を得ず」を実践し手に入れた貴重な「虎児」は脱原発だけにとどまらない大議論であり、今日の閉塞した言論状況への挑戦状ですらあったといえよう。

忘年会では長年脱原発に取り組む「たんぽぽ舎」の柳田真さん、またわざわざ仙台から駆けつけてくださった、同誌で連載されているFM放送のプロデューサー・納谷正基さんからのスピーチで前述の議論へのそれぞれの立場からの言及があった。不肖私もご指名を受けたので思うところを偽りなく述べた。皆が同じ意見、感想ではない。それでいいじゃないか。参加者には言論や社会運動における多様性の重要さを再度認識させられる、楽しくも考える場面もある貴重な時間となったのではないだろうか。

◆年に一度の大盤振る舞いの宴は怒涛の二次会へと!

松岡利康=鹿砦社社長

そうしたことなどを松岡社長に聞いてみた──。

「今年は昨年の2倍ほどの皆様にお集まりいただき嬉しかったですね。毎年これに合わせ頑張り、それなりの出費は見込んでいるのですが、今年は50万円余り掛かりました(苦笑)。年に一度の大盤振る舞いで、皆様方に喜んでいただき、また来年頑張っていただけるのであれば安いものです。田所さんも言われるように、今年は内憂外患、ちょっとシンドいことがなかったわけでもありませんが、10年前に逮捕され半年以上も勾留されて、10年前の今頃は神戸・六甲の山の上の”別荘”でのた打ち回っていたことを想起すると全然軽いものです。今年、情況を察して、こんなにお集まりいただいたんじゃないでしょうが、皆様方から叱咤激励賜り、私たちの気持ちを察していただいたことに感謝いたします」

しかし、反原連による絶縁声明については、「脱原発運動のために泥仕合はしたくないので今は敢えて何も語りません。ミサオさんらにも面子や意地があったのでしょうから、恨んだり憎んだりしてはいません」と語るのみだ。

それにしても多彩な業界からの80名の参集は並みでは味わえない「勢い」を感じさせられて余りある。

でもそれだけでは終わらないのが鹿砦社忘年会の恐ろしさだ。場所を四谷に移して、なんと2次会も希望者は無料でご招待! それだけじゃーないぞ。もう終わったから告白するけども、松岡社長の長年の”悪友”たる板坂剛氏が編集し上田治躬氏が撮影を担った「占」(うらな)≪嬢王様の時代≫の主人公である「占」さんが二次会には登場。松岡社長があの噂の「全裸タロット占い」のターゲットとなった。いいのか! 今時こんなことをしていて! 気の小さい私は万が一警察に踏み込まれたら……と気が気でなく会場の鍵を閉めてドアのノブを握り占めていた。

怖いものはないのか?と聞いてみたくなる図太さと怒涛の勢いを見せつけられた「鹿砦社大忘年会」であった。残念ながら読者の皆様へは事後報告しかできないが、来年もまた盛大な忘年会をご報告したい。
恐るべし、限界なしの鹿砦社である。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎2015年再考(1)「シャルリー・エブド」襲撃事件と表現の自由、力学の軋み
◎2015年再考(2)橋下ファシズム台頭の起源──TV×維新×虚言の愚劣な結託
◎笑止千万「軽減税率」!議論すべきは消費税引き上げの「ぼったくり」税制だ!
◎挙句の果ての「1億総活躍」──狂気、矛盾、悪意、恫喝づくしの安倍暴走政権
◎隣のクルド人──「国を持たぬ民」が日本社会で暮らすということ

月刊『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン
「脱原発」×「反戦」の共同戦線総力誌『NO NUKES voice』第6号!

 

NEW JAPAN WARSⅡ──キック界随一のモテ男 、関根“gaia”朝之VS阿羅斗

キックボクシング界業界随一のモテ男が登場したのが、11月15日に後楽園ホールで行われた「NEW JAPAN WARSⅡ」(ニュージャパンキックボクシング連盟主催)だ。この日、登場するやいなや、女性ファンからの山のような紙テープが飛んできたのは、関根“gaia”朝之(OGUNI JIM)。4回戦に登場したNJKFフェザー級4位の関根は、同級1位の阿羅斗(E.S.G)を迎え撃つ。

「関根は、若いころに絶大な人気を集めた俳優、柴田恭兵似。甘くて渋いマスク で、急激に女性ファンを集めている。キック力も魅力だが、礼儀ただしいのも好感がもてますね」(格闘技ライター)

関根“gaia”朝之

両者の戦いは、お互いにパンチは出し合うものの、なかなかキックが出ない。
じ れったい展開に両陣営から「キック出せ、キックを」とリングサイドから激が飛ぶ。
「怖くない怖くない、蹴れ」
関根サイドからも声が飛ぶ。

2ラウンドに、関根は阿羅斗の右フックをよけきれず、鼻から血を流す苦戦だ。
女性 ファンから悲鳴と歓声が入り混じる。

「朝之さぁーん」「関根さん、ファイト」とラウンドが進むごとに、後楽園ホール に黄色い声援が満ちてくる。

試合巧者の阿羅斗は、長い脚を伸ばして的確にミドルを関根のボディにぶちこむ。関根が距離を詰めようとす ると、首相撲に持ち込むかクリンチで逃げられてしまう。阿羅斗はコツン、コツンとストレートを伸ばして関根の横頬を叩きつつも距離をとり、ローキックも確実に当ててポイントを稼いでいく。4ラウンドにてやや焦ったか、関根が大振りのフックをしたとき、カウンター気味に関根に入り、関根がぐらつくのが見えた。

関根VS阿羅斗(右)

「かなり接戦だが、距離がものをいった戦いだったね」(同)
惜しくも関根が判定負け。あらゆる観客の視線とマスコミの視線が喜ぶ阿羅斗を見つめた。

関根はリング上で観客に土下座したあと、観客席まで下りてきて丁寧に頭を下げてゆっくりと言った。
「応援してくださってありがとうございました。つぎも全力でがんばりますので、 応援のほうをよろしくお願いします」

この光景をファンのみならず、キックボクシングに興味がなくとも、たまたま誘 われてきていた客も多くの人が見ていた。
「好感がもてました。一気にファンになりましたよ」(OL)
「こんなに丁寧に選手が御礼を客席まで言いに来るなんて、感動した」(家事手伝い)

かくして、ぶっきらぼうでファンにあいさつすらもしない選手が増えてきた中で、 関根の礼儀正しさと、甘いマスクは多くの女性ファンをとりこむだろう。
まだウェルター級の王座決定戦も、WBCムエタイのインターナショナル王座決定戦もダブルで控えているのに、女性観客たちはとっとと関根の試合が終わると帰って行った。

「負けたとはいえ、関根のファンに対する姿勢は、学ぶものがある。彼を見習って キックの選手たちは謙虚になるべき。それが人気復興のカギとなるでしょう」(同)

果たして、関根はキックボクシングの救世主となるだろうか。その戦績とともに注目したい。

◎関根“gaia”朝之公式ブログ http://ameblo.jp/tomoyukisekine/

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎禁煙ファシズムに抗う劇場版「MOZU」の喫煙シーン
◎愛国的な韓国人や日本のネトウヨが卒倒しそうな韓国艦「テ・ジョヨン」の姿
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化
◎国勢調査の裏で跋扈する名簿屋ビジネス──芸能人の個人情報を高値で売買?

『NO NUKES voice』第6号!スクープ!武黒一郎=元東電フェローを直撃! 大注目の総力特集は「脱原発と反戦・反安保」!
唯一無二の特報記事を同時多発で怒涛のごとく!タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』1月号!

 

ボクサー転向物語(2)キックボクシングからボクシングに転向した名選手たち

島三雄(目白=キック)は藤原敏男と並ぶ目白ジムの看板でしたが、長江国政(東洋パブリック→協同)とライバル的に全日本フェザー級王座を獲ったり獲られたりの後、1978年(昭和53年)にボクシングに転向しました。キックで100戦あまりの戦績でセンスあったものの、元々視力が弱く、長くは続けられませんでした。

1983.3.19 1.タイガー大久保vs丹代進

1983年(昭和58年)のキックが最も低迷した時期に活躍の場を求めてボクシング転向したのが、タイガー大久保(大久保貴史/目黒→北東京キング)。世間には情報が届きにくい時期のキックボクシングの画期的イベントの、前年に行われた1000万円争奪オープントーナメント52kg級に出場。勝者扱いを含む5戦を勝ち抜き優勝。その後、別ブロックの準決勝で去った松田利彦(士道館)にKOで敗れる波乱を起こすも、翌年、21歳でプロボクシング転向。ロイヤル川上ジムからデビューしましたが、キックで身についたアップライトスタイルからチェンジ出来ず大成はせず、単身アメリカへも渡りましたが、不利な条件が多く夢破れました。

2000.3.22.土屋ジョー

土屋ジョー(谷山→大橋)は1994年(平成6年)11月、21歳でデビューし、早くも1996年に全日本バンタム級王座奪取。数々のタイトルを獲得しつつ、2000年8月に大橋ジムからプロテストを受け、群を抜く経験値でプロテストは合格。伸び悩んだキックでの環境を変える転向でした。ボクシングでは4戦して2勝2敗。格闘技経験者の観戦によると、4戦目の敗戦は「アップライトスタイルで待ち構えているところにフットワークの速い相手にいきなり入られてストレートを打たれた感じで仰向けに倒れた」というキックスタイルでの癖は取れない感じのようでした。わずか1年あまりでボクシングを止め、キック復帰を果たし、2003年4月に再起戦を飾りました。

松田利彦(士道館)はキックで1978年(昭和53年)に18歳でデビュー。9連勝と活躍し、デビュー前からライバル視していたWKA世界フライ級チャンピオン.高橋宏(東金)に連勝を止められるも通算3戦して2勝1敗と差を離した後、一時的ボクシング転向という形でした。所属する士道館がIBF日本に加盟し、導かれるように1985年にボクシング転向、JBC管轄下ではない組織でしたが、1986年8月のデビュー戦で、IBF日本フライ級王座決定戦に出場、内田幹朗(大阪島田)をKOし王座奪取。1987年7月5日、韓国で崔漱煥の持つIBF世界ジュニアフライ級王座に挑戦するも4ラウンドKO負け。4戦目というキャリアの浅さが露呈されました。その後、キックに復帰し、第4代MA日本フライ級チャンピオンに就いています。キックとボクシング両方で日本チャンピオンになったという点では松田利彦が初、ただしIBF日本王座。JBC管轄下の日本王座とキックの日本チャンピオンになったという点では田中信一が初、ただし1996年以降のキック界はそれまでより一層乱立が進み、国内王座の価値も1995年以前とは違いました。

1983.2.5 松田利彦vs丹代進

最近の新しいところでは、2012年(平成24年)9月に元・NJKFフライ級チャンピオンの久保賢司(立川KBA→角海老宝石)のキックからボクシング転向がありました。23歳でB級プロテストに合格後、同年11月9日のデビュー戦で、同年4月、亀田興毅に挑戦したノルディ・マナカネ(インドネシア)に判定勝ちを収める話題を作りましたが、今年8月に判定負けし、8戦4勝(2KO)3敗1分の戦績を残し、戦前から語っていた引退を表明しています。

2007.5.13 久保賢司 デビュー第5戦目の頃

先週掲載の稲毛忠治選手は笹崎ジムからデビューし、6戦ほどやりましたが、視力が弱くライセンス更新ができなかった模様で、キックボクシング転向、千葉(=センバ)ジムからデビューしました。

ボクシングへの転向はプロライセンスを取得するところから始まり、B級またはC級スタートとなります。キックへの転向はプロモーター主体の団体によっては出世の早い場合もありますが、それぞれが新天地での一から再スタートとなり、限られた選手寿命の中で、大成するとは限らない危険な懸けに出る決心になると思われます。下手すれば回り道になり、再起の道も経たれる場合もあります。新人のうちに転向するケースは稲毛忠治(笹崎→千葉)のように開花する可能性がありますが、円熟期を迎えてからの転向は癖付いたスタイルや、“間合い”といった距離感の違いも修正は難しいのかもしれません。転向してよかったか悪かったかは、ファンや関係者が絶賛批判するより、本人に悔いが残らなければ良い人生経験になったのかもしれません。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

◎ボクサー転向物語(1)ボクシングからキックボクシングに転向した名選手たち
◎強くなるためにタイへ行く!日本キックボクサー「ムエタイ修行」今昔物語
◎大塚隼人が引退し、ムエタイ王者がリングに上がった11.15「Kick Insist 5」
◎キック新時代を牽引するRIKIXジムの「NO KICK NO LIFE」
◎ルール変更の紆余曲折から辿る日本キックボクシング界の栄枯盛衰クロニクル

『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン!

《脱法芸能46》吉松育美VS谷口元一裁判(6)角地山弁護士による反対尋問

吉松さんの反対尋問(谷口氏側弁護士からの質問)が始まった。
質問に立つのは、ひと頃、過払い金の返還請求訴訟で有名だったITJ法律事務所の角地山宗行弁護士、池田尚弘弁護士、戸田泉弁護士の3名だ。

◆あなたが思っている根拠はお父様のお話だけですか?(角地山弁護士)

日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

角地山宗行弁護士 角地山から質問します。あなたは先程、西川先生からの質問で久光製薬との破談になった件について、谷口氏が久光製薬の関係者に対して悪い噂を流したとおっしゃいましたね。実際に谷口氏が久光製薬の誰に対して言ったのですか?

吉松育美 谷口氏と私の父親の電話の録音記録を聞いてもらえれば分かると思いますが、テイラー氏の悪い噂が会長のもとに入っていますよと言っていますので、私の認識では、久光製薬の中冨会長、また、代理店からも連絡があったと谷口さんは私の父親に対して話していたので、もちろん電通にも流していると思います。

角地山宗行弁護士 久光製薬、電通、もしくは広告代理店の方からそのような話を聞いたことがありますか?

吉松育美 聞いたことはありません。

角地山宗行弁護士 では、その谷口氏が中冨会長とかに悪い噂を流したと、あなたが思っている根拠はお父様のお話だけですか?

吉松育美 父親の話だけではなく、それは本人(谷口氏)が私の父親に対して説明していることです。

角地山宗行弁護士 しかし、谷口さんが久光製薬の関係者に対して悪い噂を流しているといったようなことを自ら認めたといった事実はないんです。

吉松育美 私はそのように確認したことはございませんが、ミーティングの中で「谷口元一さんの妨害が怖い」、破談になった一番の原因は、谷口元一さんである、ということを久光製薬、あるいは電通の方から聞きました。

◆実際に妨害があったとは言ってなくて、妨害が怖いと言っているだけということですね(角地山弁護士)

日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

角地山宗行弁護士 電通の方は、妨害が怖いと言っているだけで、実際に妨害があったといったようなことは言ってないんですね。

吉松育美 時系列を簡単に言いますと、2012年10月……。

角地山宗行弁護士 質問に答えてください。久光製薬の方は、実際に妨害があったとは言ってなくて、妨害が怖いと言っているだけということですね。

吉松育美 私が久光製薬さんから言われてことは、谷口さんの妨害が今後あるかもわからないので、吉松さんとの契約はできないと言われました。ですが、久光製薬の会長がじきじきにお願いされて、また、あそこの形まで契約書が完成してハンコ待ちの状態になって、90%はゴーサインが出ている。
しかし、谷口さんが父親に電話をして、そのようなことがあるといったように聞いています。ちょうど同じようなタイミングで谷口さんが動いたのか分かりませんが、偶然の一致で話が伸びに伸びて、会長とお会いして10ヶ月も後になって、契約が破談になったのはそれは容易に想像できると思います。

角地山宗行弁護士 谷口さんがトラブルを起こすかもしれないということ以外にこの契約が破談になる理由の説明はありましたか?
(甲13号証に)「……新商品の遅れがあるとか、インターネット上での風評とか、吉松さんとの活動方針が違う……」とありますが、こういったことが総合的に理由があって、久光製薬の契約が破談になったということではありませんか?

吉松育美 違います。

角地山宗行弁護士 なぜそう思いますか?

吉松育美 先ほどの資料を見せていただいていいでしょうか? 当時、私が電通の方に情報をいろいろ流せないというのは、谷口さんからの妨害行為が家族にも以前から積み重なってきた時期でもあるので、そういった私がどこにいる、どういう風に何をしているのかという情報を流してしまうと、私の身に危険が生じるのではないかと思い、私は自らエージェントでありますテイラーにお願いして私の行動というのをあまり流さないでほしいと。そして電通さんはそれも理解した上で話は進んでいました。また、ネットにはもちろん噂、嘘、本当、あると思います。ですが、久光製薬さんはいろいろな有名なタレントさんを扱っています。なので、そういったことを崩していくと、最終的に電通さんの口から言ったことは、やっぱり一番気になるのは、谷口さんからの妨害行為になります、というところで、話し合いは終わった。

角地山宗行弁護士 いくつかの理由があるというのも事実ですね?

吉松育美 それは広告代理店が必死に他の理由で私に降りてもらおうとしたことが原因だと思います。

◆(平山さんは)明確に谷口さんからあなたの世界大会の出場自粛を求められたことはないとおっしゃってますけども(角地山弁護士)

日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

角地山宗行弁護士 ミス・インターナショナルの世界大会の実情についてお聞きします。国際文化協会の平山さんという方は、谷口さんと会ったことがあるけれども、松永さんという方は谷口さんとは会ったことがない、ということはご存じですか?

吉松育美 はい。

角地山宗行弁護士 ミス・インターナショナルの主催者である国際文化協会も平山さん、直接谷口さんとやり取りをした方ですけど、その方は陳述書の中で明確に谷口さんからあなたの世界大会の出場自粛を求められたことはないとおっしゃってますけども、あなたは国際文化協会の平山さんに対して谷口さんからこういった情勢があるということを確認したことはありますか?

吉松育美 ありません。ですが、松永さんのミーティングの中で松永さんは谷口さん本人から電話がかかっている、その電話は平山さんにかかってきて、本人曰く、私のスキャンダルがある、場合によっては、それを出してくるみたいな話が起こっているのでこちらとしては国際文化協会としては非常に心配しているよ、ということを伝えられました。芸能界では谷口元一さんもしくは谷口さんの会社であるケイダッシュというのは、反社会組織と深い関わりがあると言われています。なので、もちろん、松永さんが言った、心配している、スキャンダルが出てしまう、妨害される、何されるか分からないという風に一般の方に恐怖を与えてしまうというのは、簡単に想像ができるんですが、谷口さんというのは一般の男性が普通に電話をかけるのとはわけが違う。なので、平山さんが直接そのようなことを言っていなくても、ミス・インターナショナル、国際文化協会側としては谷口さんからの電話、そしてケイダッシュが動いているということになると、どうなるか怖いので自粛してくださいと、私は言われました。(続く)


◎[参考動画]日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(日本外国特派員協会=FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

○吉松育美さん公式サイト=http://ikumiyoshimatsu.com
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▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

◎《脱法芸能41》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(1)
◎《脱法芸能42》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(2)
◎《脱法芸能43》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(3)
◎《脱法芸能44》吉松育美VS谷口元一裁判(4)マット・テイラー氏とは何者か?
◎《脱法芸能45》吉松育美VS谷口元一裁判(5)『週刊新潮』記事と谷口氏の影響力
◎《脱法芸能46》吉松育美VS谷口元一裁判(6)角地山弁護士による反対尋問

◎《脱法芸能36》宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎《脱法芸能37》『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎《脱法芸能38》音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買
◎《脱法芸能40》安室奈美恵「移籍劇」は芸能界決壊への「パンドラの箱」を開いたか?

芸能界の歪んだ「仕組み」を解き明かす!『芸能人はなぜ干されるのか?』

笑止千万「軽減税率」!議論すべきは消費税引き上げの「ぼったくり」税制だ!

与党間で合意されている来年の消費税10%への引き上げに際して、「軽減税率」が生鮮食料品や加工食品に適応される方向で調整がまとまりつつある。

「軽減税率」と聞くとあたかも「消費税が安くなる」かの如き誤解も抱かされるが、与党の意図する「軽減税率」は、あくまでも「消費税を8%に維持する」ことのみを意味するのであって、現在よりも税率が下がることではない。

外食は「軽減税率」の適応外だ、テークアウトは適応だなどと些末な議論がかしましいけれども、そもそも消費税が10%に引き上げられる不当性についての議論はあまり見当たらない。

◆「社会福祉目的税」という騙し文句で導入された1989年の消費税

上がる上がる、どんどん上がる。賃金や社会保障費と逆にいったいどこまで引き上げれば気が済むのだろうか、庶民の敵=消費税。現在のところ見え隠れする最終目標値は経団連が示唆する19%だそうだ。

「社会福祉目的税」つまり社会保障以外には使いませんよ、との騙し文句で導入されたのが消費税だった。そんなものは嘘っぱちに決まっている、と少しでも大蔵省(当時)の恒常的欺瞞性を知っている人は、導入された1989年から危惧はしていた。消費税がそのまま社会保障費に充填されるなら、5%から8%に税率が引き上げられた際の増収分、社会保障費は増えていないと理屈に合わないが、第二次安倍政権発足後だけで、社会保障費は3900億円減額されている。

さらに馬鹿げた議論は「軽減税率」を導入するとそれを埋め合わせる「財源が不足する」という世論誘導である。各新聞がそろって報じる「財源不足」論。これから行う「増税」に対して財源が不足するというのは初歩的な論理破綻であって、それほどまでに「消費税の引き上げ」は社会的承認を得た「不可避の選択」だと言わんばかりだ。

新聞が「軽減税率」とその適応範囲の報道のみに熱を上げ、「消費税増税の不当性・逆進性」への議論が皆無と言ってよいほどに封じられているのには理由がある。民主党政権時代に日本新聞協会は政権と消費税引き上げの際(本当は5%から8%へ引き上げられたタイミング)で「軽減税率」の恩恵を受ける、との「密約」があったからだ。

活字離れ、部数減という厳しい環境は全国紙、地方紙共通の課題であり、この上消費税が上がれば定期購読者の減少は明らかだった。だから民主党政権が続いていれば新聞には既に「軽減税率」が適応されていたはずであったが、ご承知の通り政権は自公へ移ってしまったので「密約」も反故にされた。

◆自公政権とマスコミが世論誘導するウソまやかし

公明党HPより

「今こそ軽減税率を」と公明党のポスターが全国の街角に溢れる。なにが「今こそ」だと、山口那津男代表の顔に聞き返してやりたいけれども、創価学会を中心とする全国800万の基礎票を維持するためには池田大作先生の「人間革命」と「聖教新聞」で連日「勝利!勝利!」と連呼しているだけではやはり心許なく、与党内にあって自民との違いを何か演出しなければ危うい。実際に「平和」を標榜する(彼らの言う「平和」がどのようなものかの議論はともかく)公明党としては、「戦争推進法案」強行採決にあたって、ついに国会前をはじめ、全国で創価学会員が「反党」活動を行い出したことを軽視はできないはずだ。

だからお得意の「与党内にあって」何かを演出することが公明党にとっては来年の参議院選挙を控え絶対的に必要な行動となる。

しかし、これらの議論は全てまやかしであり、論外だ。「直関税率の是正」や「福祉目的税」という欺瞞が完全に破綻を来たしている消費税の存置自体の議論が何故湧きあがらないのか。所得税の累進税率を下げ、法人税も連続的に引き下げ、ほぼあらゆる商品、サービスに課税される消費税を上げれば確実に低所得者の生活が苦しくなる。

そのことは自公政権も認めざるを得なく、非課税世帯に対して昨年度は1万円、今年度は6000円の給付を行っている。だがそんな一時金で低所得層の継続的困窮が救済される道理はないし、非課税世帯以外の低所得層は、要するにボッたくられっぱなしである。

◆今こそ消費税の廃止を議論せよ!

野党時代に首相に就任する前にスウェーデンを視察した菅直人氏が「素晴らしい社会保障システムだった」と発言したのに対して、時の政権与党自民党の幹部は「一面だけを見てモノを言っている。スウェーデンは『高負担高福祉』と呼ぶのが正しい」と揶揄したことがある。消費税は3%の時代だ。

消費税が8%に上昇しても「社会保障」は後退しかしないことを我々はすでに経験している。10%に上がってもさらに屁理屈を並べて年金や、生活保護、健康保険などが削られてゆくだろう。この島国ではいくら消費税が上がろうとも「高負担高福祉」社会が実現することなどない。

消費税などなくとも、国債を40兆円も乱発しなくとも財政の運営が過去可能だったのだ。「状況の変化」などを政治が言い訳にするのならそれは為政者の財政運営能力低下を意味するだけだ。ごちゃごちゃ細かい「騙し」の議論「軽減税率」などではなく、「今こそ消費税の廃止」を私は主張する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎2015年再考(2)橋下ファシズム台頭の起源──TV×維新×虚言の愚劣な結託
◎2015年再考(1)「シャルリー・エブド」襲撃事件と表現の自由、力学の軋み
◎挙句の果ての「1億総活躍」──狂気、矛盾、悪意、恫喝づくしの安倍暴走政権
◎隣のクルド人──「国を持たぬ民」が日本社会で暮らすということ

「脱原発」×「反戦」の共同戦線総力誌『NO NUKES voice』第6号!
『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン

コカイン所持で逮捕された高部あいが狙っている「韓国での再デビュー」

都内のマンションでコカインを所持していたとして、麻薬取締法違反(所持)で逮捕された女優でグラビアアイドルの高部あいが「韓国での再デビュー」を狙っているという。

「実は影で動いているのは、AV界や格闘技に顔が利く元写真集のコーディネーターA氏です。一時期、韓国の芸能界でモデルプロダクションを経営補佐し、韓国映画業界にも顔が利く人物。高部を整形させて名前を変えて、韓国映画のオーディションを受けさせるというウルトラCの方向でひそかに動いています。国内ではもう、再デビューの目はありませんからね」(芸能ジャーナリスト)

高部あい主演『女子高生ゾンビ』(2010年GPミュージアム)

すでに高部あいは、大手事務所を解雇され、タレント活動ができない状態だが、引退の話はいっこうに出ていない。
「やはりあのキュートなルックスと、記者の質問にもすぐに頭を回転させてこたえる賢さは捨てがたく、“海外なら成功する”と確信したA氏が、顔面整形後、高部あいのプロフィールと動画をもって、コネクションがある韓国芸能界に持ち込む予定です。前もって有力者に話をしたら、感触はかなりいいそうです。すでに別の芸名をどうするか検討中のようです」(同)

高部周辺に聞いてみると、もはや本人は日本に未練はないようだ。
「逮捕直後に、ありもしないSEX流出画像がネット上にアップされていたり、まったく根も葉もない男関係のニュースが流れたので、本人はもはやうんざりしているようです。はっきりいって日本にはなにも残すことはないようですね」(同)

高部がコカインを入手したルートは、「六本木ルート」とも呼ばれ、あたかも「芸能界を汚染するドラッグ」の全容が判明するかのような報道も見られた。
「そんな単純に解明できるルートじゃありませんよ。まあ警察に、ルートを吐露してしまって、闇社会から追われて海外への脱出を狙っている、とみるのが自然かもしれませんね」

いずれにせよ、高部あいの逮捕で、再び警察内部では、芸能人の取締りを強化しているという。
「このところ、歌手のディナーショーなんかは私服警官が内偵で来ているという話ですからね。もしかしたら、もうすでに、大物芸能人を数人マークしているという話もあります」(同)

さて、「海外高飛び」を狙う高部が残した「芸能人への薬物疑惑」はしばらく続きそうだ。(鈴木雅久)

◎福山雅治はマスコミを煙にまくのが天才的に上手かった!
◎川島なお美の死に群がる自称「写真集コーディネーター」たちの醜態
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◎付録つきファッション雑誌の覇者、宝島社のビジネスにかげり?
◎「テロの危機」煽れば増える「警備利権」と警察天下り

『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン

《脱法芸能45》吉松育美VS谷口元一裁判(5)『週刊新潮』記事と谷口氏の影響力

吉松育美写真集「Hollywood Debut」より(2013年IY GLOBAL, LLC)

吉松育美対谷口元一裁判の証人尋問の様子を続ける。吉松さんの訴訟代理人である西川紀男弁護士による吉松さんへの質問が続く。

西川紀男弁護士 『週刊新潮』についてお聞きしたい。『週刊新潮』があなたの佐賀のテレビとか、妨害したということはありましたか?

吉松育美 ありました。

西川紀男弁護士 『週刊新潮』による妨害は、谷口さんの影響があったといえるのでしょうか?

吉松育美 まず、『週刊新潮』の記事を見てみると、谷口さんが依頼した探偵の報告書がそのまま出ています。

西川紀男弁護士 先ほどの甲34号証の写真を見ますと、11枚の写真に世界核兵器解体基金という募金箱があるという内容を『週刊新潮』が全部、使っているんですね。それから、谷口さんが1ヶ月ぐらい前に週刊誌の記事の内容を知っていたということもあったとおっしゃいましたね。

(ここで、谷口氏の代理人より、「異議、本人はそのようなことを言っていません」という申し立てがあった)

――(国際文化協会の)平山さんの陳述書の中で2013年10月2日に会ったと言ってますね。その時に「(吉松さんのスキャンダルが)マスコミに出るよ」という話がありますが、その記事というのはいつごろ出たんですか。

吉松育美 11月14日発売の『週刊新潮』で出ました。

西川紀男弁護士 今、育美さんがおっしゃった『週刊新潮』の記事というのは、甲第14号証ということですね? これが133ページの11月14日発売の『週刊新潮』の記事。

吉松育美 これをもってどうして谷口さんが裏で動いた『週刊新潮』が出たのかといいますと、先ほどのミス・インターナショナル、国際文化協会の平山さんの陳述書の中で、谷口氏は11月14日発売の『週刊新潮』が出る1ヶ月も前、10月2日に面会をしています。面会の内容は谷口さんが、マスコミに私と谷口さんとマット・テイラーの事件を取り扱う上で、もしかしたら国際文化協会や吉松育美さんの名前が出るかもしれません、ご迷惑をおかけしますという内容で平山さんに接触しています。
つまり、谷口さんが(『週刊新潮』の記事の内容を)把握していたということ、谷口さんが話していた内容の記事、そのものが『週刊新潮』に1ヶ月後に出たので、その時点で『週刊新潮』の記事を把握していたということになります。しかし、谷口さんは週刊誌の人間でもなければ、まったく関係のない外部の人間であり、そこまでの情報を把握できるということは、つまり週刊誌の記者、または週刊誌ととても身近な存在である、影響を与えることができる存在であるということが容易に想像できます。

西川紀男弁護士 IYグローバル、つまり、あなたの会社に対する谷口さんのももろもろの行為、あるいは近所における探偵と称する者の行為については陳述書であなたがおっしゃっているとおりということですね。

吉松育美 異議ありません。

(これより、弁護士が西川洋司弁護士に交代して、いくつか補足質問を始めたが、その中から1つだけ抜粋する)

西川洋司弁護士 ミスジャパン時代に中国からの帰国が遅れたということですが、この点は文化協会は納得されていましたか?

吉松育美 はい。もともとこのアクシデントというのは、私が世界一になった後のことではなく、ミスジャパン時代のことです。また、ミスではないんですが、台風の影響で日本に帰国できなかった大変申し訳ありませんでしたということを当時の私が所属していた事務所の社長、仕事に関わったスポンサーの会長、じきじきに国際文化協会の会長にお会いして報告書も出して、話は丸く収まっているんです。なので、陳述書で(国際文化協会の)松永さんが主張しているような私の意思で仕事をやりたくないからといって、キャンセルしたという事実は一切ありません。

西川洋司弁護士 もし、文化協会が納得していなければ、世界大会に出場というのはどうなっていましたか?

吉松育美 本当に問題であれば、世界大会への出場すらできなかったと思います。

2015年11月20日付吉松育美さんFacebookより

以上で吉松さんへの主尋問(吉松さん側弁護士からの質問)は終了となった。次回より、反対尋問(谷口氏側弁護士からの質問)の様子を伝える。(続く)

○吉松育美さん公式サイト=http://ikumiyoshimatsu.com
○吉松育美さんFacebook=https://www.facebook.com/yoshimatsuikumi?ref=hl
○吉松育美さんYouTube=http://www.youtube.com/user/yoshimatsuikumi

◎《脱法芸能41》「美の女王」吉松育美VSケイダッシュ谷口元一裁判(1)
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▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

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◎《脱法芸能38》音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買
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芸能界の歪んだ「仕組み」を解き明かす!『芸能人はなぜ干されるのか?』

 

2015年再考(2)橋下ファシズム台頭の起源──TV×維新×虚言の愚劣な結託

-橋下徹公式HPより-

今年もこの男のはしゃぎ振りは相変わらずだった。おおさか維新の会の暫定代表を12月12日に辞任した橋下徹である。

今週18日の大阪市長任期満了と共に政界引退を表明している橋下が注目を浴び出したのはいつの頃からだろうかと振り返ってみと、おそらく日本テレビ系列の「行列のできる法律相談所」に出演し始めた2003年からであろう。それ以前にも関西ローカルのラジオ・テレビへの出演歴はあったが、島田紳助が司会の「行列のできる法律相談所」への出演が橋下勘違いの大きな転機になったと想像される。

◆やしきたかじん「そこまで言って委員会」の罪

さらに同年、「たかじんのそこまで言って委員会」にもレギュラーとして橋下は出演を始める。首都圏では放送されない「そこまで言って委員会」は「そこまで言ってはいけない」暴論が毎週飛び交う自民党・右翼翼賛番組だが、ここで更に橋下は「暴走」が許容されるメディア状況と「極論・暴論」がむしろ歓迎される時代背景に気が付く(「笑っていいとも」、「スーパーモーニング」など全国ネットでの番組にも曜日限定レギュラーで出演していたし、関西圏ではそれ以外にも多数のテレビ番組に出演していた)。故人ではあるが「やしきたかじん」が「関西ファシズム」伸長に果たした役割は計り知れないと言わなければならない。関西弁で庶民風の語り口をすれば、一見「反中央」、「反権威」と思わせる雰囲気を醸し出しながら、総体として現体制の補完、否更なる強化へと導引した罪は重い。政治などに口を出さずに歌を歌っていればよかったのだ。立派な歌い手だったのだから。


◎[参考動画]2008年放送「そこまで言って委員会」 脇博2015年11月22日に公開

これらテレビ出演目白押しであった「タレント弁護士」橋下の狙いは最初から政界進出にあったのだろう。質が悪いのは橋下が衆目を引き付ける「タレント」としてのスキルと法知識の専門家である「弁護士」資格を保持していたことだ。お気軽にテレビを眺める庶民にとっては、金髪で語りが滑らか、笑いも適度に誘う橋下があたかも身近な存在のように感じられたのか。橋下の腹にはテレビ出演が目白押しになった頃から「視聴者(庶民)はこの話法で騙せる」と確信めいたものが湧いていたに違ない。


◎[参考動画]橋下徹出演番組で水道橋博士が生送中にキレて番組降板? Ho AlexiaBelle 2013年06月21日に公開

「(府知事選出馬は)2万パーセントでも何パーセントでもありえない」と断言していた橋下はテレビで習得した鋭敏な感覚(自分のキャラクターであれば嘘を発言しても批判されない、むしろ驚きを持って共感を得ることが出来る)をまず実践する。

大阪を覆う橋下ファシズムの不幸な幕開けだ。

◆「維新」という名の復古主義

「維新」という古臭く復古主義者が好む名詞を自身の政治団体に冠したのは、橋下自身が復古主義者的性格を帯びている証だ。その橋下の政治的道具として使用便利なある本音が明かされたのが大阪府知事時代の過去の発言である。

「出生主義か、血統主義かをいろいろ考えるに当たっては、やはり天皇制が一番重要なポイントになってくると思います。日本国憲法の第一章のところ、一番最初のところに、国民の権利義務の前のところに天皇制というものをきちんと置いて、我々は天皇制をいただいているということは、やはりこれは血統主義なんだと、日本の国柄というものは血統主義なんだということを前提に我々の国家、日本というものは成り立っているんではないかというふうに考えます」(2010年2月26日大阪府議会での発言より)

これは橋下が「国民」をどう考えるかについて見解を述べたものだ。憲法第一章で天皇に関する言及がなされていることは間違いなく、それが現行憲法の最大の問題だと私は考える。だが、憲法第一章は天皇の位置づけや権限を述べているが、たとえば第一章「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」は、文言通りに解釈すれば「国民の総意」がなければ「天皇は国民統合の象徴」足りえないとの解釈余地もある。それ以前に憲法前文が掲げる平和主義、国民主権との乖離が著しいのが第一章だ。

私如き素人が法律論を展開しようとしているのではない。確かに憲法第一章には天皇への言及は存在する。だが国民を定義するにあたり「出生主義」か「血統主義」かの二分法に議論を閉じ込め、その中で強引に天皇制の存在を根拠に「血統主義」だと結論付ける橋下の思考には「差別」に直結する短絡が垣間見られる。


◎[参考動画]橋下徹市長の街頭演説 橋下徹ちゃんねる激怒・論破 2015年4月12日に公開

◆橋下思想の基層──「差別を温存する優越意識」と「嘘を語ることは武器になる」という確信

『週刊朝日』2012年10月26日号

橋下の出自などから人物像を浮かび上がらせようとした佐野眞一は「週刊朝日」連載の中で、決定的なミスを犯した。出生に立ち返り、橋下像を浮かび上がらせようとの意図は伺えたが、被差別者への配慮が重大に欠落していたことは否めない。橋下がそれを見逃すはずはなく、結果朝日新聞出版の社長が辞任する事態にまで追い込まれた。

しかし、ここで読者諸氏に注視を促したいのは、橋下が紹介した通り「国民」の定義を述べるにあたり天皇制を引き合いに「血統主義」だと語っていることだ。国民の定義議論だけではなく、天皇制を根拠とする「血統主義」は天皇家、皇室と相反する「被差別」の立場におかれる人々の「血統」をも確定し、それが社会的選別の尺度になると懸念はないだろうか。橋下は「日本の国柄というものは血統主義なんだ」とまで踏み込んで発言している。これが橋下の本音であり根本なのだろうけれども、この解釈は民族だけでなく出自によるあらゆる差別温存を弁解する論法に与するものではないか。差別そのものではないのか。

私はこれまで何度も橋下の愚劣さ、虚構について言及してきた。そして今回橋下の根本には「差別を温存する優越意識」と「嘘を語ることは武器になる」との思考が常時備わっていることを再度指摘しておきたい。


◎[参考動画]田原総一朗『橋下さんの言っていることがサッパリわからない!』 n Yasu 2014年02月12日に公開

◆「現状打破」してくれる超人を求めることで台頭するファシズム

大阪府知事選挙を前に、
「(府知事選挙出馬は)2万パーセントでも何パーセントでもありえない」
と語った橋下。

大阪都構想の住民投票を前にした5月9日に、
「だって、住民の皆さんの考え方とか、住民の皆さんの気持ちをくむのが政治家の仕事なわけだから、ここまで5年間精力かけてやってきたことが、大阪市民の皆さんに否定されるということは、政治家としてまったく能力がないということ。早々とそんなら政治家辞めないと、危なくてしょうがない。運転能力のない者がハンドル握るようなもんでね、早く辞めなきゃダメですよ」
と住民投票が否決されれば政界引退を明言した橋下。

「引退するはず」だった橋下、「運転能力のない者がハンドル握る」状態が続く「大阪維新の会」に再度信任を与えてしまった大阪府民と市民(もっとも大阪知事、市長選挙は「安倍か橋下か」という不幸極まる選択を押し付けられた選挙だった)。

どこかに、「現状打破」してくれる超人がいないだろうか、と英雄や強い指導者の出現を待ち望む深層心理が相変わらず有権者にはありはしないだろうか。

現代の政界における「英雄待望論」はそっくりファシズムの足固めだ。「立派な」「強い」指導者など要らないし、いるはずがない。変えられるとしたらまず自分自身の内面を凝視しなおす事からだろう。反面教師橋下先生をもう一度しっかり見つめながら。


◎[参考動画]橋下徹市長vs 在特会・桜井誠会長 橋下徹ちゃんねる激怒・論破 2014年10月20日に公開

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎2015年再考(1)「シャルリー・エブド」襲撃事件と表現の自由、力学の軋み
◎大阪ダブル選挙──「安倍と橋下どっちを選ぶ?」の選択肢しかなかった不幸
◎挙句の果ての「1億総活躍」──狂気、矛盾、悪意、恫喝づくしの安倍暴走政権
◎隣のクルド人──「国を持たぬ民」が日本社会で暮らすということ

「脱原発」×「反戦」の共同戦線総力誌『NO NUKES voice』第6号!
『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン

100人集まらなければ即、解散!──「わけありブラザーズ」の捨て身ライブ

炎上商法、大成功。2014年4月にデビューした「ワーケ」「アーリ」の二人組「わけありブラザーズ」が1STシングル「笑い飛ばせ」をひっさげて11月18日にインディーズデビューが決定した。11月15日は、先行して行うワンマンライブ(目黒ライブステーション)で大胆にも「100人集まらなければ即、解散」と捨て鉢な条件での船出を敢行。
「これは、かつて『モーニング娘。』の初期につんくが仕掛けた『サドンデス商法』の再現です。デビューシングルが○枚売れなければ即、解散などと『ASAYAN』(テレビ東京)でさんざん、『モーニング娘。』のメンバーたちが追い込まれた様子をリアルに視聴者に見せて同情票をかき集めた手法です」(芸能ジャーナリスト)

目黒の会場には、開場1時間前からファンがならび、見事に122名の来客を数えて、解散を回避した。会場から人がこぼれそうな熱気がステージに伝わる。喜びの中、レパートリーの『口内炎と知覚過敏』から演奏を開始、歌詞を「やめたくねえ」と言い換えたりして爆笑をとった。


◎2015.11.15「わけありブラザーズ」インディーズデビュー告知

しかし、「何がなんだからわからないのに誘われて来た」という客も大量にいたのは確か。ライブ終了後、観客数の122名が発表されると、割れんばかりの歓声が上がった。

ファンの男性に「ちょっと買い物に目黒へ行こう」と誘われて、ついでに彼女をライブ会場に強引に連れてきたというA氏は「楽曲がすばらしいし、MCもおもしろい二人組です。やめてほしくないのに彼女を引きずりこみました」と笑う。また、「ラグビー観戦に行こう」と誘われたが来てみたら「わけありブラザーズ」のライブで、そんなあけすけなウソで連れて来られた大学生の男性は「まるでどこかのカルト団体のような強引さです。まあ、楽しいライブだったからいいですけど」と苦笑いだ。 まさに演奏するほうが「わけあり」なら観客も「わけあり」だ。

音楽関係の人気ブロガーも招待されていたという。
「このバンドは、日常の矛盾や生活上の不満を音楽にのせるのが上手だ。ドラマの主題歌に決まったりすれば一気にブレイクするだろう」(音楽評論ブロガー)と音楽性の評判は上々だ。

さあ、『わけありブラザーズ』希代の道化師か、それとも時代を席巻するバンドなのか。とりあえず、熱狂的なファンは「音楽的にしっかりしているので、武道館や後楽園ドームのライブも狙える実力派です」(最前列にいた女性)と語る。
しかし同時に、人数合わせで呼ばれたのか、「一応、アリバイ的に見に来たよ」とばかりに、開始してすぐに5人が帰ったのもまた事実。大挙した観客のうち、何人が純粋なファンなのかは、おそらく2回目のライブにはっきりするだろう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

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