《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買

芸能界では昔から「枕営業」と呼ばれる人身売買が行われているとされているが、時に報道などによってそれらが明らかとなるケースがある。

2010年には契約解除をめぐる紛争でタレントの眞鍋かをりが芸能事務所、アヴィラと裁判沙汰になったが、この裁判の準備書面で眞鍋側は「仕事場の楽屋でマネージャーから(中略)『タレント某は社長と性的関係を持ったから、番組に出演出来た』などの低俗な話を聞かされた。実際に話題に上ったタレントの仕事量が増えた」「性的関係を持った女性タレントに小遣いを渡していた」などと主張し、物議を醸した。

◆頻発する犯罪報道で明らかになる「枕営業」強要の実態

2014年12月には「ちょいワルおやじ」という流行語を流行らせ一世を風靡した中年男性向けファッション誌『LEON』を創刊した有名編集者、岸田一郎氏から、『東京ガールズコレクション(TGC)』への出演を引き換え条件に肉体関係を強要されたとして23歳のモデルが『FRIDAY』で告発した。

2015年1月にはオリコンランキングで1位を獲得し人気が急上昇していたアイドルグループ、仮面女子のメンバーらが運営会社社長に日常的に性接待を強要されていたという告発が『週刊文春』で報じられた

こうした報道は最近、特に増えている。

先月は、アイドルグループ、PASSPO☆のメンバーがツイッターで枕営業の実態をほのめかす内容の投稿をし、大騒動となり、また、元芸能プロダクション社長田代オリバーことベレン・オリバー・オリベッティ容疑者がタレント志望の女子中学生に「俺がデビューさせてやる」と持ち掛け、みだらな行為をしたとして、児童福祉法違反の疑い逮捕された。

さらにその数日後にも、東京、原宿でスカウトした女性の着替えの様子を盗撮していた芸能プロ社長ら5人が逮捕される事件も起きた。

叶恭子『トリオリズム』 (2006年小学館)

◆叶姉妹とミス・コンをめぐる1999年『週刊ポスト』スキャンダル報道の衝撃

筆者が調べた範囲では、「枕営業」に関する過去の報道でもっとも衝撃的だったのは、『週刊ポスト』が1999年11月から12月にかけ、5回にわたって報じた叶姉妹とミス・コンテストをめぐるスキャンダルだ。

叶姉妹といえば、97年ごろから高級ファッション誌『25ans』に「スーパー読者」として紹介され、瞬く間に人気を獲得した、叶恭子、叶美香による姉妹ユニットだが、その実態は謎のベールに包まれていた。

『ポスト』の報道には、叶姉妹と密接に公開した資産家令嬢のA子さんが登場し、「絶対にあの姉妹を許せません」として2年間にわたった「レズ奴隷生活」を告発した。

記事によれば、A子さんは数年前に知人宅を訪問したところ、その知人が叶恭子、叶美香を呼び出し、以降、交流が始まったという。

初対面の恭子は、「私のこと、知らない? ミスコンの審査員をしてるの」と切り出し、しきりにミスコンへの出場を誘った。

恭子は毎日のようにA子さんに連絡をし、買い物などに同行させ、仕舞いにはレズ関係を迫られるようになった。恭子は「3人目の妹になりたいなら頑張らないと」といつも言っていたという。

さらには、ある日、美香から「会えば絶対、勉強になる」などとと言われ、コンドームを手渡され、ホテルチェーンを経営している2代目という青年実業家を紹介され、関係を迫られた。

それが終わってから、美香はA子さんにこう言ったという。

「あの人はバカだから(利用するには)ちょうどいいの。あなたは初めてだから、ああいう人がいいのよ。電話番号は教えてないでしょうね」

それから1週間ほどして美香から「この間の人から電話が来たわよ。よかったわね。A子ちゃん。これでしっかりつかんだわ」と連絡があり、再び青年実業家との面会がセッティングされた。再び、面会した青年実業家は「君を紹介してもらうのはとても大変だったんだよ」と話していたという。

A子さんが、この間の経緯を恭子に説明し、抗議すると恭子は、「美香がやったのね。私は関知してないの」と釈明したという。

同様のことはその後も続く。そして、叶姉妹は、A子さんに自分たちが運営側として関係し、世界4大ミスコンテストの1つとされ、フィリピンが主催国の「ミス・アジアパシフィック」の日本代表選考会への出場を強く薦め、「A子ちゃんの頑張り次第で日本代表になれるから」と言った。

◆「ホントにやる気だったら、オレと寝ろ。2年でビッグにしてやるから」

そして、大会が1か月後ぐらいに迫ったある日、美香が「ミスをとったあと、A子ちゃんのために個人事務所をやってくれるという人がいるの。絶対あなたのプラスになる人だから会ってみない」と紹介され、音楽関係のプロデューサーを紹介してもらった。

だが、このプロデューサーは、初めて会ったその日にバーに誘い、「ホントにやる気だったら、オレと寝ろ。(ミスコンの)代表になるには2000万~3000万円かかる。そのカネはオレが出すから最低2年はつきあおう。2年でビッグにしてやるから」と迫ったという。

これを聞いて気が動転したA子さんはその場から席を外し、叶姉妹に電話をかけたが、電話に出た美香は「A子ちゃん次第よ。でも、絶対あなたのためになる人だから……」と説得したという。

叶姉妹に憧れ信用しきっていたA子さんは、代表になるためには仕方がないと重い、いやいやながら部屋に行った。

その後もこのプロデューサーはA子さんにたびたび面会を求め、美香からも「会ってほしい」としつこく要請されたが、A子さんは拒絶した。

結局、A子さんは「ミス・アジアパシフィック」で小さな賞をもらったものの、代表にはなれなかった。

◆メディアが叶姉妹を攻め切れない理由──訴訟代理人・弘中惇一郎という脅威

叶姉妹というと、ネガティブな報道に対してはすぐに訴訟を起こすことで知られる。おまけに訴訟代理人は、「無罪請負人」という異名も持つ剛腕の弘中惇一郎弁護士であり、メディアにとっては脅威だ。

『週刊ポスト』側も叶姉妹からの訴訟に備え、連載開始直後から告発者のA子さんを何ヶ月も各地の温泉に連れ出し、匿っていたという。だが、『ポスト』の記事については叶姉妹サイドの反論として「A子さんは叶姉妹のストーカーだった」という記事が女性週刊誌に出たものの、結局、裁判には至らなかった模様だ。

最近、芸能界のセクハラ事件が相次ぐ事態を受け、ある芸能プロダクションがツイッター上で次のように呼びかけ、話題となった。

「現在、事務所の社長やマネージャーにセクハラされたり、体を要求されてる方がいたらご連絡ください!未成年の方は、保護者の方と一緒にご連絡ください!そういう糞事務所を叩き潰しましょう!」

その意気は買いたいが、芸能界の中枢から末端まであちこちではびこる人身売買は、構造的なものであり、直ちに改まるものではない。権力者が恣意的にキャスティングを歪め、オーディションがまともに機能していないという問題にメスを入れない限り、今後も似たような事件が起こり続けるだろう。

※追記=6月6日の本通信の記事で『裁判にはならなかった』と記述したが、この記事を見た関係者のインサイダー情報として『ポスト』と発行元・小学館関係者が刑事告訴されたことが判明、『ポスト』側が家宅捜索や逮捕を恐れ屈服し極秘に和解したという。具体的な和解内容は不明、現在取材中だが、和解後小学館から叶姉妹の写真集が刊行されている。

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

星野陽平の《脱法芸能》
◎『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎松田聖子──音事協が業界ぐるみで流布させた「性悪女」説
◎爆笑問題──「たけしを育てた」学会員に騙され独立の紆余曲折

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなきノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』

 

「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!

6月3日夜(19時~21時)警視庁東京空港警察署(羽田)で、先月28日に不当逮捕され、現在も同署に勾留されている「火炎瓶テツ」氏への激励行動が行われた。警視庁は都心からわざと通いにくい場所を選定して彼らの勾留を決めたのだろう。だが平日の夜にもかかわらず約70名の人が集まり、次々に激励のメッセージを語ったり、歌で伝えたりした。同様の激励行動は5月30日(日)の日中にも行われていて、その際は100名を超える人が参集したという。激励の場では、警察署内の「火炎瓶テツ」氏から(弁護士経由)のメッセージが読み上げられた。「30日激励行動の声が二度聞こえた」と。

激励行動に参加した複数の人がその模様を中継していた。中継画面を視聴している人数も数百人に上る。「火炎瓶テツ」氏逮捕が如何に注目されているかを示す数字だ。

◆凄まじい拡大解釈による「接見禁止」で被疑者の心を萎えさせる

3日は空港から警察署まで徒歩10分ほどの間に私服制服警官が数人、警察署では20名程の警察官が警備にあたっていた。現在「火炎瓶テツ」氏は「接見禁止」(弁護士以外の面会が許されず外界と完全に遮断される)が付けられている。最近集会やデモで逮捕された人には微罪であっても裁判所はいとも簡単に「接見禁止」を出す。「接見禁止」は証拠隠滅や逃亡の恐れがある被疑者に基本限定されるはずだが、その拡大解釈振りも凄まじい。

逮捕勾留された経験のある人物(西宮市に本社のある出版社社長)によると「接見禁止はきつかった。弁護士も毎日来てくれるわけではないし、こちらから手紙は出せても返事は一切受け取れない。あれが長期間続いたら精神がどうなっていた事やら」とその辛さを語っている。某出版社社長は神戸の不便な場所に勾留され、しかも突然の事件で支援体制も整っていなかったことから外部からの声援などでの応援はなかった。

◆「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」(山田悦子さん)

だが、別の逮捕経験者によると、警察署あるいは拘置所外部からの激励は、時としてとても大きな力になるという。まだ若かったある活動家はデモの際に逮捕勾留され連日の厳しい取り調べの中で「完黙」(完全黙秘、事件についての聴取で何も語らないこと)を貫こうとしたが、精神的に参ってしまい、不覚にも供述を始めてしまった。その時警察署の壁の外から「××君絶対完黙で頑張れよ!」との声が聞こえ、ふと我に返り再び「完黙」を貫き通せたという。

甲山事件で冤罪被害者にされた山田悦子さんは講演の度に「逮捕されたら絶対に黙秘してください、黙秘が最大の武器です」と語っている。

何を言いがかりに逮捕されるか、少し真面目に政治や社会のことを考えて行動している人には全く油断のならない時代だ。運悪く逮捕されても、余程無茶な起訴をされないかぎり23日で勾留は終わる。その間肝要なのは「完黙」を貫くことだ。取調官は時に甘い言葉で、時に脅しを込めてあれこれ誘導してくるが、とにかく逮捕された件については一切話をしないことが、その後の裁判の行方を左右する。

こんな事、「火炎瓶テツ」は先刻ご承知だろうけれども、今外から彼を支援している人の中にまだご存知ない方がいるかもしれないので念のためお伝えする。

◆6月8日東京地裁で行われる「勾留理由開示」公判の重要性

尚、「火炎瓶テツ」は勾留理由開示公判を要求し、時刻は未定も8日月曜日に東京地裁で公判が開かれる。勾留理由開示公判とは被疑者が「なぜ勾留されなければならないか」を裁判所に問いかけ、明らかにするための特別な法廷だ。不当逮捕や弾圧の際には保釈へ向けた意思表示の一助となるし、「接見禁止」が付けられていても、法廷で傍聴人と顔を合わすことが出来るというメリットもある。勾留理由開示公判は勾留に納得しない被疑者が裁判所をいわば追求する場でもあるので、時に荒れる。

傍聴券が出るほどに傍聴人が参集すれば裁判所に対する大きな圧力になる。東京在住でお時間のある方は関係者に時刻ご確認の上8日は東京地裁へお出かけになると貴重な体験が出来るかもしれない(尚、世間の注目が高まったり、勾留理由開示公判を請求すると、微罪の場合その直前に保釈されるケースも多いので念のため)。


◎[参考動画]2015.05.29「不当逮捕への抗議と…仲間への激励行動」警視庁丸の内警察署前【1/2】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

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合法ラディカルな自由メディアの天使「ノエル」少年を権力が恐れる本当の理由

15歳の少年「ノエル」が各所で「ドローン」を駆使した「中継」を行い、それがマスコミで「問題視」され結局逮捕されたのは5月21日であった。迂闊にも彼の活動の詳細について追跡をしてはいなかったので、「ノエル」の活動をここ数日ネット上で確認するまで、その意味と逮捕の不当性についてよく理解できていなかった。

彼は2月頃から全国各所に赴き「配信」を始めている。もっともその前からネット上では様々な議論や発信を行っていたようであるが、「ノエル」の独自性が発揮されるのは何と言っても「自分の顔を映しながら」各所で警察に囲まれるも、それをことごとく「論破」する場面であろう。


◎[参考動画]15歳少年、警察に腕つかまれて連行されそうになるが断固拒否して退散させる

例えば、福島から「配信」された映像では制服警官や補導員が「ちょっと警察所行こうよ」、「これ補導だからね。私補導員だから」と誘導しても「任意なんですか? 任意なんでね。ならお断りします」と至極真っ当な法律の原則に立ち反論する。制服警官は「ノエル」の両腕を掴み強引に(この行為自体「任意同行」を拒否している人間に対しては違法行為だ)引きずり回わし、「名前は何っていうの」、「どこから来たの」と執拗に攻め立てるが「答えません。答える必要がありません」と退ける。補導員と称する女性には「今、補導対象時間外ですよね」と正論をぶつけると「でも、学校に行っていなかったらだめでしょ」と間抜けな応答しかできない。


◎[参考動画]【ノエル】150519 JR有楽町前でドローン撮影をし警察トラブル

有楽町駅前でも同様の光景が展開される。「翼のついていないドローン」を用いて配信を行っていた「ノエル」を何者かが「不審者がいる」と警察に「通報した」と理由を述べ多くの警察官が「ノエル」を囲み「ここは迷惑だから警察署行こうよ」、「危ないから」と誘いをかけるが、「ノエル」はまた「任意ですか?なら応じません」、そして「翼のついていないドローン」を示し「これ飛びませんよね。飛ばないから危険じゃないですよね。何が問題なんですか」と明晰に「配信」視聴者に語り掛ける。正にその通り。翼のない小型ヘリコプター玩具は飛べはしない。プラスチックの固まりに過ぎない。

◆大人と日本の嘘が見えてくる──「個」として思考し、行動する少年ノエル

「ノエル」はまた、自身の行動を歪曲報道したフジテレビにも出かける。そこでニュース番組責任者との面会を求め、応対するフジテレビ社員と応酬を繰り広げる。「ノエル」は以前のニュース番組で自分が歪曲報道されたので、その日放送するニュース番組内容を確認させてくれ、と要求するがそれは出来ないと断られる。すると以前の番組で取り上げられた「ノエル」を模した3Dの画面をパソコン上に示し「これ、僕ってわかりますよね。だから責任者の方と話がしたいんです」と証拠を示し「報道被害の防止が目的」である旨を伝える。フジ社員は「事前に番組内容をお知らせすることは出来ません。放送後ご意見があればご意見を伺う窓口にお伝え下さい」と紋切型で切り抜けようとするが「ノエル」は「放送されると取り返しがつかないんですよ。間違いを放送されて、全国の人に勘違いされた後ではどうしようもないんです。だから番組責任者の方と話がしたいんです」と正論を述べる。フジ社員はごちゃごちゃ言い訳を並べるけれども、どちらに論理的な非があるかは明らかだ。

川崎市で起きた少年殺人事件の容疑者宅前にも出かけている。ここでも「不審者」の通報があったとして警察に囲まれる。警察は「個人のお宅を撮ったら迷惑になるでしょ」と言うも「ノエル」は「僕は僕の顔しか撮っていません」と応じるが、その様子を周りで囲んでいた「マスコミ」が一斉に「ノエル」を撮影し出す。背後から「ノエル」のパソコンのディスプレーを堂々と撮影しているテレビカメラもある。警察は大勢の「マスコミ」取材陣には一切お構いなしだ。煌々と目がくらむような照明を向けテレビカメラやマイクを向ける「大勢」と、パソコンを抱えそれに向かって小言で話している一人とどちらが「迷惑」なのかは常識的な想像力を持った人間であれば理解できよう。

「ノエル」は各地の祭りにも出向き、最終的に浅草の三社祭に「行きます」と言った為に同所で逮捕(ドローンを飛ばしていないにもかかわらず)されたようだ。

「ノエル」を各所で「尋問」していた警察官は「君は誰なの」、「中学生だったら危険があるから保護しないと」、「なんでここにいるの」、「どうやってここに来たの」、「カバンの中には何が入っているの」とクドクドどうでも良いことを聞き出そうとしていたが「ノエル」は冷静に「任意なんですね、なら答えません」と一貫して突っぱねていた。でも、若しこの質問者が警察ではなかったらこれらの行為はどう評価されるだろうか。腕を掴んで引き回す行為は「暴行罪」に明確に該当するだろう。私的な事を付きまといながら、答えることを嫌がっている人に聞き続ける行為は「ストーカー行為」そのものだ。

「ノエル」が15歳であることのみに活路を見出した警察は、しきりに「保護」や「安全」、「君が誰かわからないと心配」などと繰り返しているが、それらが本音ではないことも明らかだ。警察(権力)が懸念したのは「ノエル」の独立した意志に立脚した実に多彩な行動に他ならない。Ustreamやツイットキャスティング、その他様々な方法で個人が各所から映像を配信できる技術が確立された。既にそういった配信方法を利用した「ビジネス」を確立している企業があるし、個人もいる。

だが新配信技術の魅力を知った人の中には、あっという間に「配信内容」よりも「儲け」あるいは「アクセス数」が頭の中で先行し、既存マスコミと何変わらぬ思考に陥る人も少なくない。

「ノエル」の頭の中にも「視聴者を広めたい」という欲求はあったろう。しかしそれ以上に彼の興味、関心領域は無限の如き広がりを見せ、数知れぬアクティブな配信へと自身を突き動かしたのだろう。前回記事「火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働」の中でも指摘したが内容の如何を問わず、「個」として思考し行動する者を何より国家は危険視しする。その補完機関たる「大手マスコミ」も同様だ。

◆放送という既得権が「個人」に侵食されることを恐れるマスメディア


◎[参考動画]ミヤネ屋のノエル逮捕報道

「ノエル」逮捕について、救いがたく低劣な思考を恥じぬことで有名な宮根誠司は「ミヤネ屋」の中で「こんな事をやっていること自体がもうね、人として良いのか悪いのかって判断がついていないこと自体が、自分が取れない映像をを撮ってそれを沢山の人が見て、更に現金化できるぞって、だったら何をしても良いっていう。15歳にもなってこういう事をしてしまうのが問題ですよね。大問題ですよね」とまくし立てている。

己達の頭が硬直して15歳の発想と取材力に至らないことへの口惜しさを見当違いの個人攻撃に向ける宮根。何が大問題なものか!「ノエル」が「配信」したことよりはるかに悪辣な「プライバシー蹂躙放送」(例えばこの番組自体)を生業にして飯を食っているのがお前たち「腐れマスコミ」ではないのか! その証拠に川崎市での容疑者宅近くでの警察による「ノエル」包囲の際、大マスコミはハイエナのように「ノエル」の姿、パソコンの表示画面までを「ノエル」の許可もなく撮影していたではないか。

マスコミが「ノエル」を批判するのは奴らの儲けの領域が一個人により浸食されかかった事への危機意識と憎悪の現れである。既得権である「ニュース」と言う名の偏向報道の現場を全く視点が異なる「個人」に侵食されることがマスコミには許しがたいのだ。

私はある程度の年齢に達すれば、人間の思考能力に大差はないと考える。自分の中学生時代を思い返しても友人にはその辺りで「お笑い芸人」と呼ばれている連中より余程感性が優れていて、テレビに出せば確実にプロを凌駕する悪友が沢山いた。逆に年齢を重ねようとも成長しない人間は全く成長しない。しかし実質年齢だけは重ねていくので、一様に年配者はそれなりに「賢明」だという勘違いが世間にはあるが、大いなる間違いである。だから私は「ノエル」の行動と年齢の関係をことさら特異な物とは考えない。

「ノエル」は釈放されたら更に行動に磨きがかかるだろう。

◎[参考資料]粉川哲夫の雑日記─[12]「日本の発展」(2015年5月31日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎公正な社会を求める企業は脱原発に動く──『NO NUKES voice』第4号発売!

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火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働

5月28日経産省前で3人の市民が逮捕されたという報に接した。「『戦争法案反対国会前集会』を終えた3名が、経済産業省本館の門扉外側のスペースで抗議行動を行っていたところ、警備員の通報を受けた警察官により身柄を拘束されてしまいました」と友人は語っている。経産省の敷地に入った「建造物侵入」が逮捕容疑のようだが、言いがかりであることは明白だ。

◆火炎瓶テツさんと仲間たちの逮捕容疑は明確な意図に基づいた「言論弾圧」

これは明確な意図に基づいた「言論弾圧」である。逮捕された3名の中の1名は、反原発や反戦争など主として経産省前、だが時に応じて文科省前、東電前や米国大使館前などを自在に移動し、「決して逮捕されない」ように細心の配慮を払って活動していた「火炎瓶テツ」さんだ(本名は書かないが事件の性質上彼の「仕事名」は明かした方が良いと考え、顕名とした)。


◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』終了後?火炎瓶テツと仲間たち【10/10】

私は彼を良く知っている。彼の明晰さと行動力、そして人に訴えかけるアジテーション、即興のラップリズムに乗せた風刺のメッセージ。

東京で抗議行動に参加された方の多くは彼の顔や声を聞いたに違いない。「大丈夫?」と聞くと「何やられても絶対逮捕されませんよ」と昨年語っていた彼は、3・11後大勢が官邸前に集まるのを確認しながら、自分の活動拠点を取り敢えず「経産省前」としたようだ。この点「経産省前テント広場」の方々と着眼点の共通点がある。慧眼だ。

彼のバイタリティーには恐れ入っていた。灼熱の夏の日も、極寒の冬の日も週に最低2、3回は「仲間」とともにどこかで抗議活動を繰り広げている。

そう彼には、彼と共に活動を続ける「仲間」がいる。だから抗議行動の名前は常に「××反対!!火炎瓶テツと仲間たち」となっていた。逮捕された時にも多くの仲間がその現場を確認していたことだろう。

◆下地真樹=阪南大准教授「不当逮捕」と共通する「狙い撃ち」

2012年12月大阪で公安に逮捕された阪南大学経済学部准教授、下地真樹氏(「モジモジ先生」下地真樹さんの声明「警察はウソをついて私を逮捕」)のケースとの共通点も見いだせる。それは彼が単なる「抗議活動参加者」ではなく、優れて自分の言葉で問題の中心部を抉り出し、それを行政なり企業なりに直接ぶつける議論に「ひとりで」対抗できる頭脳と行動力の持ち主と言う点だ。

実は権力にとっては10万人の集会よりも、「個を確立した」10人の方が恐ろしいのかもしれない。党派にも属さず、自分の皮膚感覚と経験、そして学習に依拠して毎度毎度異なるテーマ―で悪政の根本を糾弾する「火炎瓶テツ」は、そろそろ「好きにさせておいてはいけない」と判断されたのだろうか。

彼のニックネームはやや「過激」に聞こえるかもしれないけれども、この時代、心の中に「火炎瓶」を持つぐらいの怒りを持たない方がどうかしている。

◆理性のある人間が戦争に反対し、戦争推進の動きに怒るのは当たり前

国会の中で安倍は一体何を語っているのか? 有事関連法制などというが、その実「どのように戦争を執り行うか」(しかもその前提は極めて根拠が曖昧・希薄である)の技術・解釈論だけであり、呆れるほど結果に対する洞察力を欠いている。戦争が起きたらどんなに非常が待ち受けているかを、真剣に想像している方々がどのくらいいるであろうか。残念ながらそういった懸念なしに過ごすことの出来ない日常が今日の姿だ。政府により戦争への明確な準備が目の前で行われている。

いくら嫌がっても残念ながらそれが現実だ。「人殺し」はいけない。どのような理由があろう避けるべきだ。だが戦争は国家が「お墨付き」を与える「合法的殺戮行為」だ。私的な「人殺し」に反対するのであれば「戦争に反対する」のは明々白々じゃないか。日本の憲法がどうであれ、日本の友好国がどうであれ、もっと言えば自分の親戚や身内が賛成しようとも、理性のある人間は戦争に反対し、それを推し進めようとする動きに怒るのは当たり前ではないか。戦争推進に怒ることなくして、一体何に怒れというのか。

◆「個」を持った「まつろわぬ」人たちがどんどん駆られる島国ファシズム第二段階

国家にとって目障りで邪魔なのは「個」を持った発言者・行動者だ。だから今回の逮捕は「火炎瓶テツ」には気の毒ではあるけれども、とうとう「戦争扇動者」安倍により「こいつは野放しに出来ない」と認められた勲章ともいえる。仮に不当な起訴や重刑が語られれば話は別だが、いくらなんでも大した罪状で罪は問えまい。

私は今日もまた「ついに来たか」と感じた。水際はどんどん迫って来る。影響力はないもののある意味「発言者」である私にとって、「火炎瓶テツ」の逮捕は他人事ではない。彼の主張は私の思想に比べれば余程穏便だったのだから。

これから、どんどん駆られるだろう。「個」を持った人間が、「まつろわぬ」人たちが。この島国のファシズムは第二段階に入った。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎公正な社会を求める企業は脱原発に動く──『NO NUKES voice』第4号発売!

世代と地域を繋げる脱原発情報マガジン『NO NUKES voice』Vol.4好評発売中!

 

「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由

そろそろ福岡県警をぶったたくタイミングが来たようだ。僕は福岡県警を叩き、工藤會に味方する。なにしろ福岡県警は強引だからだ。

たとえば5月15日、福岡県内にある指定暴力団工藤會系の組員が広島県内で拳銃を不法所持した疑いが強まったとして、警視庁は5月15日、福岡県中間市と北九州市の組事務所を容疑者不詳のまま銃刀法違反(加重所持)の疑いで家宅捜索したようだ。

◆逮捕の理由が強引すぎる福岡県警

組織犯罪対策5課は、捜索容疑として組員が昨年1月ごろ、広島県内で回転式拳銃1丁と実包6発を密売人から購入し所持したとい点をあげている。朝日新聞によると「工藤會のヒットマンをしている組員が幹部の指示・命令で、拳銃と実包を20万円で購入し、ある事件で使った」との情報が昨年8月に寄せられたことなどから捜索したようだ。

だが、中間市の組事務所には午前9時過ぎ、捜査員約30人が入ったものの、いずれの事務所でも押収物はなかった。5月22日には、福岡県北九州市で起きた歯科医師に対する殺人未遂事件で、実行犯に殺害を指示したとして、警察は、全国で唯一の特定危険指定暴力団・工藤會のトップら4人を再逮捕した。(朝日新聞2015年5月22日

再逮捕されたのは、工藤會総裁の野村悟容疑者(68)やナンバー2の田上不美夫容疑者(58)ら4人。野村容疑者ら4人は去年5月、北九州市小倉北区で歯科医師の男性を殺害するよう配下の組幹部らに指示した疑いが持たれているという。男性は刃物で襲われ重傷を負い、実行役とされる工藤會系組幹部ら4人が逮捕・起訴されていた。

「県警察は、県民の願いである工藤會の壊滅に向け、いささかも手を緩めることはありません」(福岡県警 吉田尚正本部長)

そうこうしているうちにこんな判決も出た。

「工藤会理事長代行・木村被告に懲役3年判決」(読売新聞2015年05月27日)

組長を務める暴力団事務所が入居するビルを脅し取ろうとしたとして、恐喝未遂罪などに問われた特定危険指定暴力団工藤会(本部・北九州市)理事長代行の木村博被告(62)の判決が26日、福岡地裁であった。岡部豪裁判長は「暴力団特有の身勝手で反社会的な犯行」と述べ、懲役3年(求刑・懲役4年)を言い渡した。
岡部裁判長は動機を、ビルを組事務所として使用し続けるためと認定。配下の組員らに脅迫させるだけでなく自らも脅していたとして、「極めて執拗で、被害者に強い恐怖感を与えた」と指摘した。判決によると、木村被告は北九州市八幡西区のビル所有者の親族に対し、2009年6月、「事務所を売れ」と脅迫。昨年7、8月には他の組幹部らとともに、親族らを「あんたの嫁や子供たちと話をするわけにはいかんからな」と脅し、ビルを取得しようとした。(読売新聞2015年05月27日

◆「推定無罪」の事件を執拗に掘り起こす裏にある「天下り先作り」

工藤會に対する福岡県警のやり方を見ていると、まずは「暴力団壊滅のモデルケースとするのだ」という福岡県警の意地と、強引さを感じる。たとえば総裁の野村悟が、1998年に同市で起きた漁協の元組合長射殺事件に関与したとして、福岡県警に逮捕された発表した。ナンバー2で会長の田上(たのうえ)不美夫(ふみお)も殺人などの疑いで指名手配された後、逮捕された。

「なぜわざわざ16年前の事件を掘り起こしてまで逮捕したのか。射殺に関して共謀したとされるが、まったく物理的証拠はなく、証言だけだ。こんなものが通ったら、たれ込みがあったら、物理的証拠がなくても誰もが犯人にされちまうぜ」(都内弁護士)

16年前の事件で実行犯らの有罪がすでに確定している。実行犯ですら、総裁や会長たちの関与は語っていない。つまり、98年2月18日に同市小倉北区の路上で起きた脇之浦漁協の元組合長(当時70)射殺事件に関与した疑いがあるというが、限りなく「シロに近い」かもしれないのだ。

今の時点で、この疑惑については「推定無罪」なのだ。にもかからわらず、弁護士によると「身に覚えがない」と否認しているという。暴力団対策センターや反暴力団体などがいくつもでき、警察のOBが講演や勉強会などで飯を食うための措置が何重にもとられているのだ。

「工藤會へのアプローチは警察にとっては、見ばえがいいものかもしれないが、天下りの理由を作っているということも忘れてはいけない」(ヤクザ雑誌ライター)

福岡県警に聞いたところ「平成26年には、16人の暴力団員が『脱組』を希望したが、工藤會かどうか確認していない」という。福岡の暴対センターも声高に「組からの離脱者を増やす」といっているくせに、「昨年の16人が離脱の希望者のうち、工藤會が何人いるかは掌握していない」という。おいおい、ふざけるのもいいかげんにしたらどうだ。じゃあ、警察と連携している暴対センターはどうだろう。

県警も、暴対センターも、工藤會の殲滅をさんざんアピールしておきながら「離脱者のうち、何人が工藤會かわからない」とは、いったいどういう了見だろうか。ふざけるにも限度というものがある。

ゆえに、工藤會を締め付けて「派手にヤクザを締め付けたという印象を全国にアピールしたい」という邪な感覚が署長にはあったといえまいか。

◆工藤會がいまも有する「昔ながらの川筋気質」

工藤會は、昔ながらの川筋気質で「工藤會を取材しましたが、駅についた時点から、客に鞄を持たせない。何台かで組事務所まで送っていただきましたが、きちんと車がスムーズに通るようなフォーメーションもできています。昔ながらの川筋気質で、極道の中でも本格派ですよ。そうした気質があるからこそ、意地でも警察には負けられないのでしょう」(影野臣直・作家)

工藤會の幹事長代行の木村博も、「事務所がはいっているビルを工藤會にただでくれ」と脅したとして逮捕されている。これも否定しているという。要するに、いずれの案件もすべて「推定無罪」なのだ。なのに、工藤會は危険だ、というイメージを植え付けているのが警察連中だ。これは、権力による「蠕動」だといっても言い過ぎではない。

◆「われわれはマグロなどの回遊魚と一緒」(木村工藤會幹事長)

2012年11月末、年末のあわただしい中で鹿砦社の書籍『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(田口宏睦著 岡田基志監修)の取材に応じてくれた木村幹事長(当時・現在は理事長代行)は、気さくにさまざまなことを話してくれた。
「われわれはマグロなどの回遊魚と一緒。動いていないとおぼれて死んでしまう」と語っていた。つまり、警察の締め付けがいくらきついからといって、音をあげていては、ヤクザとしての矜持に関わるというのだ。

「そりゃ、警察がいくら締め付けても、金儲けの知恵を考えて、すり抜けるのがヤクザ。どんなに締め付けても音をあげないと思いますよ」(前出・影野臣直)
僕が警察に対する怒りを感じるのは、福岡県に福岡県警が差し込み、「有害図書」としてコンビニエンス協会から僕と宮崎学で作ったヤクザが主人公の漫画本を撤去させたからだ。宮崎学は怒り心頭となり、福岡県相手に訴訟を起こした。当然のことだ。宮崎学ブログ(http://miyazakimanabu.com/2010/04/01/691/)

僕は作家を守り、出版社は見放した。たったそれだけのことだが、僕は宮崎の側に立ち、裁判に協力した。2014年7月に、この訴訟は宮崎側の負けとなるが、実にこの訴訟は勉強になった。

なにゆえに、福岡県警は、工藤會相手に「おとなげない」ほどにむきになるのだろうか。

人権派弁護士は匿名を条件に「ヤクザへの締め付けがなぜこんなに厳しくなったのか」について語る。

「警察が対ヤクザのNPOや社団法人に天下りしたり、企業に『対暴力団コンサルタント』的に雇ってもらったりするためでしょう」

僕から見て「茶番」に見える警察の工藤會殲滅作戦は、いつまで続くのだろうか。税金をもっと有効的に使っていただきたいものである。

(小林俊之)

◎むやみやたらと強化される「ドローン」規制の余波
◎見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告
◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(2013年2月鹿砦社)

 

 

〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義

関西大学で共通教養科目の中のチャレンジ科目として開講されている『人間の尊厳のために』の非常勤講師、鹿砦社松岡利康社長の2回目の講義が5月29日行われた。先に本コラムでご紹介した通り、講義1回目は松岡社長(鹿砦社)の社会的活動紹介に中心を据えた内容で、とりわけ高校の同級生であった東濱弘憲さんが熊本で始めた「琉球の風」について詳しく紹介された。

前回の講義では「はじめに─〈人〉と〈社会〉との関わりの中で、〈死んだ教条〉ではなく〈生きた現実〉を語れ!」と題したレジュメが配布されたが、言及された「現実」とは音楽活動(琉球の風)や文化・教養活動(西宮ゼミ)が中心であり、出版社として「人」や「社会」と関わってゆく姿勢の、いわば「前向きな活動」紹介だったと言える。

◆10年前の逮捕経験を静かに語り始めると、空気が変わった

29日の講義でも冒頭は10数分「Paix2(ぺぺ)」の活動を紹介するテレビ番組が上映され、参加学生は「このまま講義は進んでいくのだろう」と感じていたのではないか。

しかし、注意深い学生たちは既に気が付いていたはずだ。この日配布されたレジュメやコピーは先週のそれとは全く内容が異なることに。

「次に、たぶん私がこの教壇に立つことになった経験について語らせて頂きます」と切り出すと、松岡社長は配布資料中朝日新聞朝刊1面に掲載された、自身の逮捕を予告する記事を指し、2005年7月12日に起こった神戸地検特別刑事部による自宅包囲、事務所への連行から、自宅、事務所のガサ入れについて、それまで「琉球の風」や「Paix2(ぺぺ)」を語っていた口調と全くトーンを変えずに語り出した。

配布資料は朝日新聞1面だけでなく、逮捕に批判的な識者談話や有罪判決時の新聞記事、週刊金曜日に何度も掲載された山口正紀氏のメディア批判、さらには裁判の支援呼びかけ人に名を連ねた人々談話などA4両面印刷で4枚、8ページに及ぶ。松岡社長が自身の経験談を語り始める前から熱心にこの資料をめくる学生の姿も散見された。

そして「逮捕されると、全身裸にされて、こんな格好で(実際に命じられた姿勢を体現して)体を調べられるんです。女性も同様だそうです。『裁判所は人権の砦』などと言われますが、有罪も決まっていない逮捕段階で全身裸にされる。これは『被疑者を委縮させる』ためのやり口であり『人間の尊厳』も『人権』もあったものではありません。そして私の場合は『接見禁止』が付きました。弁護士を除く外部の人間と一切の連絡を絶たれたわけです。これは非常に精神的に堪えました。半年余りの拘禁生活で鬱に近い状態になりました。あの状態がもっと続いていればさらに厳しい精神状態になったでしょう」

目の前で講義している人物が、10年前に名誉棄損で逮捕拘留、接見禁止までを食らった人物であることを全学生が認知した瞬間だった。140名ほどが受講する講義だから数名寝ている学生はいるが、私語は一切ない。教室の空気も松岡社長が意識して作り出したわけではないだろうが、それまでとは一変し、緊張が支配する。

◆「輝き」と正反対の「闇」を語ること

さらに、保釈後直ぐに行われたサンテレビによるインタビュー映像が流される。穏やかな表情で、レジュメを目で追いながら、どちらかと言えば小声で話をしている講師はインタビューの冒頭「今のお気持ちを」と問われると「何が何だかわかりませんよ!」と憤然と答えている。インタビュアーに怒っているのではないことは容易に見て取れる。裁判を「自分だけのものではなく闘っていく」との宣言もある。

自身の経験を語るにあたり松岡社長は何度も「生き恥を晒すようですが」と繰り返した。そんなことないじゃないか、司法の暴走被害者が「恥じ入る」必要なんてない、と私は感じたが、彼が語り掛けているのは目前「学生達」だ。主として1年生が受講していることへの配慮もあってか、逮捕拘留から有罪への「生き恥」(松岡流)披露であったが、本来であれば語りたかった(語られるべき)であろう事件の背景や周囲で暗躍した人間たちへの批判は皆無だった。

2回の講義で松岡社長が伝達しようとしたことは「生きた現実」に尽きよう。その「輝き」と、正反対の「闇」。人生論と換言も可能な彼自身の豊穣かつ激烈な経験だったように思う。

◆学生の中で「何か」が確実に動いた

「ちょっと踏み込んだことをすると私のように逮捕されるのがこの世界です。そういう覚悟のない人は踏み込むべきではないし、踏み込むからにはその覚悟を持ってほしい」

口調は相変わらず穏やかである。あくまでも穏やか。それだけにこれほど「ドスの効いた」言葉はない。文字通り「生きた」直撃弾だ。松岡社長が講義中、展開した持論の1つは「安全地帯から何もせずに『表現の自由』だの『言論・出版の自由』というのは簡単で耳触りもいいけども、身を持って実践していくのは並大抵のことではありません」である。

正しく聞こえても実践を伴わない美辞麗句は「空論」に過ぎない。「そんなものは何の価値も迫力もないよ」と彼は繰り返し言外に語っていたように思う。

講義終盤、彼の話は穏やかながら熱を帯びる。静かな熱。あくまで穏やかな語り口。そして「それではこれで私の講義を終わりにしたいと思います」と語ると、教室中から拍手が起こった。

学生の中で何かが確実に動いた瞬間だった。

◎[参考資料]松岡利康=鹿砦社社長によるフェイスブックでの講義報告(2015年5月30日)
https://www.facebook.com/toshiyasu.matsuoka.7/posts/876422795751113

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎関西大学の教壇で鹿砦社の松岡社長が〈生きた現実〉を語る!
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◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
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「THE OUTSIDER 第35戦」観戦記──朝倉海の強さと佐野哲也の安定感に注目

5月17日、ディファ有明で行われた「THE OUTSIDER 第35戦」に行って見た。冒頭、前田日明代表は「本日はお忙しい中、たくさんのご来場ありがとうございます。これからもOUTSIDERの選手、いろんなところでプロとの試合、他流試合を続けていって実力を発揮してもらいたいと思います。今OUTSIDERにいる選手は本当に…OUTSIDERはじめて8年目になりますが、ちょっと今までと違った可能性を持った選手が多いように思えます。どうぞ皆さんこれからも変わらぬご支援よろしくお願いします」と挨拶。(http://battle-news.com/?p=9066

伝えられるところでは、会場の「ディファ有明」を使用するのに、地元の自治会が違法駐車やタバコの投げ捨て、車の騒音などを問題し、会場使用が危ぶまれたが、しっかりと警備をして違法駐車は限りなくゼロ、周辺にも気を遣う運営となった。

◆7年目のアウトサイダー──朝倉海を筆頭に世界に打って出て勝負している選手たちが出て来た

まあ、ボクシングやキック、プロレスリング、空手、シュートなどプロの格闘技を山ほど見てきた僕にとっては、もはやアウトサイダーに敵がいなくなった朝倉海は、プロの格闘技ライターとしては、センスがあふれる選手ゆえに凝視の対象だ(ほかの選手がダメと言っているわけではない)。それほどに、朝倉のキックやパンチなどの攻撃のコンビネーションと防御は冴えている。この日は、蹴りで相手が場外に飛び出すほどだったが、「これだけ相手が守りに入っている中でよくぞ、崩した」とプロ格闘技の記者たちをうならせた。

アウトサイダーは7年目だが「不良どうしのケンカで金をとってどうする」と揶揄された。だが、今では、選手たちが世界に打って出て勝負している。これは非常にいいことだ。

朝倉(右)と前田代表

◆格闘技を続けるために警察学校をやめた佐野哲也の安定感

実は、もうひとり注目しているのが、プロの総合格闘技家の佐野哲也だ。佐野は、埼玉大学教養学部卒の秀才で、格闘技を続けるために警察学校をやめたという異色の経歴。実は「格闘技ブログ」のライターでもあり、「書く側」と「書かれる側」でもあるのだ。 佐野は33歳とやや全盛期をすぎたきらいはあるが、やはりバウンド(寝技)でよし、打撃もよし、打ち合いもよしと三拍子そろっていて安定感がある。

次戦は7月19日に、「70-75王者」のランボルギーニ・ヨシノリとタイトルマッチを行う。

はっきりいって年齢ゆえにきついだろうが、がんばっていただきたい。

このほかにも今後は、見所がある選手がたくさん出てくるだろう。だが今の時点で、プロの格闘技ライターたる僕が注目しているのは、この2人だけだ。僕に注目されたかったら、選手よ、いい試合をやってみせよ。

◆「総合格闘技を通じて人生を正しく素晴らしいものに出来る」(前田日明代表)

さて、アウトサイダーのもうひとつの魅力は、「スペシャル・バウンサー」として、格闘家の村上和成と2ショットが撮れたり、握手したりもできるという点だ。村上の魅力をひとことで表現するもの難しいが、「PRIDE.1」時代やや佐竹と死闘を繰り広げた試合、そしてプロレス結社魔界倶楽部を知る人にとっては、「レジェンド」である。さらに、ラウンドガール(アウトサイダーではDIVAと呼ぶらしい)のレベルもかなり高いといえる。

話を試合に戻すと、表彰式が終わった後に、前田代表が「長い間のご観戦、本当にありがとうございます。冒頭にも述べましたようにですね、新選手がいろいろな地方の大会、海外の大会……まぁ勝手に出た選手もいるんですけど(苦笑)、結果良ければすべてヨシってことで。まあ知らない間にですね、どんどんOUTSIDERのリング上も実力伯仲みたいで、これからもどんどん新しい、いろいろな交流をさせていきたいなと思います。ただ世間から見たらOUTSIDERは何か不良の危険な大会って思っているようですけど、そうじゃなくてですね。本当に総合格闘技を通じて人生を正しく素晴らしいものに出来る、そういう大会にしていきたいと思います。これからも選手たちを温かく見守ってくれるよう、よろしくお願いします」と挨拶した。

また、女性選手が声援を集めたことに触れて「盛り上がったね(笑)。試合自体はなんてことない試合なんだけど、女の子のほう募集がいまいち伸びないんですよね、なかなか。一番最初女子を企画した時女の子ですごいレベルが高いジム集団みたいのがあって、そこが事務所同士で試合したくないって組めなくて、その子達が出てきたらそれはそれであるなと。でもその子達ジム生同士試合しないんで、相手になる子達がちょっとね、レベルっていうとちょっとどうなんかなって。女の子の選手の層がどれぐらいあるかってイマイチ掴めない、情報がない」と話した。(http://battle-news.com/?p=9066

今度の大会では、千両役者の吉永啓之輔も帰ってくる予定だ。

さて、夏の大会では誰がヒーローとなるだろうか。

○リングス公式サイトhttp://www.rings.co.jp/
○[youtube]The Outsider Promotion
○[facbook]株式会社リングス

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」(http://genron1.blog.fc2.com)の管理人。

不良達の登竜門「THE OUTSIDER」は凄まじ過ぎる興奮
川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化
売り子に視界を遮られ、肝心なプレイを見逃す東京ドームのキャバクラ化
アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

「史上最高の二塁手」広島菊池涼介の捕殺が実は激減中!意外な事実とその原因

プロ野球(NPB)広島の二塁手、菊池涼介の守備力の凄さはすでにあちこちで語り尽くされているから、ここで多くを語る必要はないだろう。守備範囲の広さの目安の1つとされる捕殺数で、二塁手のNPBシーズン最高記録は昨季の菊池の535個だが、歴代2位の528個もその前年に菊池が記録したものだ。大学からプロ入りして4年目で、早くも「NPB史上最高の二塁手」と評する声も聞かれるようになったが、それは決して大げさな評価ではない。

◆新たにクローズアップされる田中の守備力

そんな菊池のいる広島で、守備力が注目されるようになった選手がもう一人いる。今季、遊撃手のレギュラーに定着した田中広輔だ。プロ入り2年目だが、大学卒業後に社会人野球を2年経験しており、菊池とは同い年である。先日、この田中の守備力に光を当てたスポーツライター小中翔太氏の以下のような記事がヤフーで配信され、話題になった。

「田中の守備は菊池以上?広島鉄壁の二遊間の守備力はNPB史上最高」

筆者も広島在住のカープファンだから、広島の試合のテレビ中継はよく観ていて、以前から田中の守備力も凄いのではないかと感じてはいた。センターに抜けそうな打球を好捕したり、内野安打になりそうな難しい打球を素早く処理してアウトにしたりという田中の好プレーを目にする機会は非常に多いからだ。

とはいえ、小中氏の記事には、田中はそこまで凄かったのかと改めて驚かされた。何でも記事によると、田中は今季、半世紀以上破られていない遊撃手のNPBシーズン捕殺記録を大幅に更新する勢いで捕殺数を伸ばしているという。田中が遊撃手のシーズン捕殺数のNPB記録保持者になれば、菊池と田中の二遊間の守備力はたしかに「NPB史上最高」と評価されていいかもしれない。ところが……。

田中がそこまで凄いなら、今季の菊池はどうなのかと調べてみると、意外な事実がわかった。なんと今季の菊池の捕殺数が「激減」しているのである。

◆菊池の捕殺数はリーグ4位に低迷?

菊池の捕殺数は5月21日時点で、42試合で128個。これは仮に今季が昨季までと同じように144試合制だとしても(※実際には今季は143試合)、シーズンの捕殺数が前年比約100個減の439個程度にしかならないペースだ。さらにこの時点でのセ・リーグ各球団の二塁手の捕殺数を比較してみると……。

1位:石川雄洋(横浜)   146(44試合) 1試合平均3.32(1位)
2位:山田哲人(ヤクルト) 142(44試合) 1試合平均3.23(3位)
3位:上本博記(阪神)   141(43試合) 1試合平均3.28(2位)
4位:菊池涼介(広島)   128(42試合) 1試合平均3.05(4位)
5位:片岡治大(巨人)   106(40試合) 1試合平均2.65(6位)
6位:亀澤恭平(中日)    80(30試合) 1試合平均2.67(5位)
※このランキングは、日本野球機構オフィシャルサイトで公表された5月21日時点の記録をもとに筆者が作成

2年続けてNPB記録を更新した菊池の捕殺数が今季はここまでセの二塁手で4位にとどまっている。各選手の出場試合数は違うが、1試合平均の捕殺数を見てもやはり4位なのは変わらない。一体どういうことなのか?

『広島アスリートマガジン』2015年5月号(サンフィールド)表紙を飾った広島「史上最高の二塁手」菊池涼介選手

◆梵は引いてくれていたが……

菊池の捕殺数が激減している原因については、可能性の1つとして、菊池が実は今年不調で、守備範囲が狭くなったことも考えてみるべきだろう。しかし、それは「ない」と断言できる。テレビ中継を観ていても、菊池の守備はNPBの捕殺記録を更新した過去2年と比べても、むしろ凄みをましている。それは決して筆者だけが感じる印象ではないはずだ。

となると、菊池の捕殺数激減の真相は……、と色々調べたところ、その答えが示されているように思える資料が見つかった。広島地方のスポーツ誌「広島アスリートマガジン」(サンフィールド)の今年5月号で、菊池本人がインタビューで次のように語っている部分である。

* * * * 以下、引用 * * * *

――現状二遊間を組む相手が固定されていませんが、動きが変わるものですか?
変わりますね。梵(英心)さんの場合は「お前がいけるところはお前がいけ」と言っていただいているので、僕は梵さんの位置を確かめずに打球にいっています。僕が打球にパっといっていれば、梵さんは引いてくれているので僕はガムシャラに守るだけという感じです。広輔(田中)は僕目線でいうと肩が少し弱いので少し前にいたり、いろんなポジショニングをしています。広輔とは距離間というか、どこまで広輔が打球に来られるかが100%把握できていないので、僕の守り方も変わってきますね。(広島アスリートマガジン2015年5月号16ページより)

* * * * 以上、引用 * * * *

このインタビューは開幕当初、田中がまだ遊撃手のレギュラーに定着しておらず、前レギュラーのベテラン梵や木村昇吾と併用されていたため、こういう話題になったのだと思われる。菊池が当時、田中とはまだ梵ほどには息が合わないように感じていたことが読み取れるが、筆者が何より注目したのは「僕が打球にパっといっていれば、梵さんは引いてくれているので……」というくだりだ。

これは裏返せば、「菊池が打球にパっといっても、田中は梵のように引いてくれていない」ということではないだろうか。つまり、昨年まで梵と二遊間を組んでいた時なら菊池が処理していたであろう「二塁手と遊撃手のどちらでも処理できる打球」を今年は田中が処理する場面が増えているのではないか。そう考えれば、田中が遊撃手のNPBシーズン記録更新をしそうな勢いで捕殺数を伸ばしていることとも辻褄が合う。

いずれにせよ、二遊間に飛んだゴロを菊池が処理しようが、田中が処理しようが、アウトになればいいわけだが、広島の試合はこの球界を代表する存在になりつつある二遊間コンビの守備の微妙な距離間に注目して観戦するのも面白いかもしれない。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

◎発生から15年、語られてこなかった関東連合「トーヨーボール事件」凄惨な全容
◎献花が絶えない川崎中1殺害事件と対照的すぎる西新宿未解決殺人事件の現場
◎高まる逆転無罪の期待──上告審も大詰めの広島元アナウンサー冤罪裁判
◎3月に引退した和歌山カレー被害者支援の元刑事、「美談」の裏の疑惑

「普通の人」こそ脱原発!──『NO NUKES voice』第4号5月25日発売!

 

ファシズム日本の予言書──辺見庸「抵抗3部作」がどれも絶版になっていた!

3・11後に日本社会の不条理を初めて考え出した若い知人に「最近の社会問題がわかりやすくて役に立つ本はないか」とかなり前に問われたので、10冊ほどを推薦したが、その中に辺見庸の『永遠の不服従のために』、『いま抗暴のときに』、『抵抗論』(いずれも単行本は毎日新聞社、文庫本は講談社)を入れておいた。

彼の人は私に意見を求めておきながら、なかなか腰が重かったようでつい最近になって連絡があった。「教えてもらった3冊とも、もう絶版になっていて、本屋に売っていませんでした」とのことだった。先般の船戸与一の逝去についで、また「え!」とメールを見ながら声を上げてしまった。

この3冊は21世紀に入っていきなりの9・11から米国のアフガニスタン侵攻、イラク殲滅の時代に対する辺見のエッセーや取材が収められているものだが、文庫の初版は2005年だった。今日的な国家主義、ファシズム急加速の序章を詳述した10年ほど前のこの3冊は、今読んでも(否、まだ未読の方々には今の時代にこそ)示唆と警告に満ちているのだが、あろうことか絶版だそうだ。

単行本ならばともかく、文庫でも買い求める人がいなくなったということなのだろうか。この事実、私にはかなりショックである。

いつのまにか絶版本になっていた辺見庸「抵抗3部作」(『永遠の不服従のために』、 『いま、抗暴のときに』、『抵抗論』いずれも講談社文庫)

◆辺見の「悪い予感」を上回って加速する日本の終末状況

絶版になっているの知ったので、まことに大雑把な種明かしをしておこう。「抵抗3部作」とも呼ばれたこの物々しいタイトルの3冊は辺見による「戦後民主主義終了、国家主義ファシズム完成、そして戦争へ」との警鐘が綴られたものだ。往時の米国大統領はブッシュで、日本の総理は小泉純一郎。前述の通り9・11、NYでは貿易センタービルに航空機が突っ込み2つの高層ビルが崩壊、ワシントンではペンタゴン(国防総省)へも同様の航空機突入など米国史上初めて本国に甚大な攻撃を受けた事件(これに絡んでは米国の謀略説も根強いが)を引き金に、猛獣と化した米国は戦争に猛進する。小泉もあろうことか憲法前文を「解釈抽出」して実質的海外派兵を行った。

「改革の本丸は郵政民営化」とのわかったようなわからないようなワンフレーズを多用する総理は、不幸にも絶大な人気を得、共産党支持者の中でも70%が支持をした。

また小泉は朝鮮を訪問し拉致被害者の一部が帰国を果たす(当時の官房副長官は現首相安倍)が、それにより在日韓国朝鮮人への差別が一層激化した時代でもあった。排外主義の激化があからさまになりだした。

一連の出来事は主として13-14年前で、この「抵抗3部作」が文庫化されたのが10年前である。

辺見の悪い予感を上回る第一次安倍内閣誕生から、いっときの民主党政権、そして3・11を経て自民党政権回帰へと、語られるべきテーマや登場人物は明らかに悪化の一途を猛進する。戦後最悪、否新たな戦争を運命付けられた「戦前」とも言うべき時代を迎えている。

2003年頃にいわば「終末」宣言を出していた辺見にすれば、もうこの期に及んで紡ぐ言葉などない、というのが本音なのだろうか、ここ数年の辺見の文章は「最後のアジテーション」とでも表現すべき「抵抗3部作」の激情的ともいう文体ではなく、総じて詩的である。

だからこそ「抵抗3部作」は戦後民主主義の死滅がいかなるものであったかを個々が総括するために、今日的終末状況が21世紀に入りどのように加速化したかを再確認するために(この書群では当然それ以前の状況への言及も豊かだが)是非ともこの時代に読まれるべき価値があると思う。

これからさらに暴虐の時代に突入することは間違いない。その心構えはあなたにあるだろうか。

◆辺見庸「抵抗3部作」絶版は単に「売れなくなった」ことだけが理由だろうか?

戦争の時代がやってくる。どうやらそれは辺見や私が懸念していたよりも到来の時期は大幅に早まるようだ。辺見は相当な危機感とそれまでの小説やエッセーで見せたことのない(たぶん辺見自身が忌み嫌う)直接的な表現をあえて多用し危機の深刻さと重大さを吼えまくっていたのだけれども、今読み返せば辺見の咆哮はそれでもまだ足らなかったのだ。

「抵抗3部作」絶版は単に「売れなくなった」ことだけが理由だろうか、などと意味もない詮索をしてしまう自分の未練たらっしさもみっともないけれども、げに、恐ろしい時代に生きているのだと痛感する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎5月17日熊本で知名定男プロデュースのライブイベント「琉球の風」2015開催!
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?

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《ウィークリー理央眼001》150回目の首相官邸前抗議

毎週金曜日、総理大臣官邸~国会周辺で行われている原発に反対する抗議行動、通称「官邸前抗議」が5月22日で150回目を迎えた。
2011年に福島原発事故があり、その翌年の3月に第1回目の抗議が始まり、ほぼ毎週抗議が続けられ3年2ヶ月が経った。
その間に首相が代わり、政権も変わったが、人々の反原発の気持ちは変わっていない。

[2015年5月22日(金)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

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