プリズム公演「闇をときなす音色」はダンスも演技も熱かった!

5月10日に「プリズム」が製作した舞台公演「心のプリズムvol.Ⅵ~闇をときなす音色~」を観劇した。場所は新宿のシアター・ミラクル。満員だった。

実は、この安奈音々氏がプロディースする劇は、「ダンス」のパフォーマンスが優れているといい意味で評判だったので、気になっていたが、日程が合わず、ようやく5月に観劇できた。

◆実力のある劇団俳優たちの舞台迫力

「演劇」については、もはや実力のある俳優だらけで疑う余地がない。劇団の俳優たちは、厳しい演出家のもと、実に拷問のような訓練を受けている。だからしばしば、劇団の公演のあとにテレビドラマを見ると「こんな学芸会みたいなドラマを本気で流しているのか」と唖然としてしまうことになる。

ちなみに、ストーリーとしては、リーダーが死んで、劇団が存続するか否かの時期に、女優のひとりがガンになるという暗い設定ながら、それを吹き飛ばすがごとく緻密に構成されたミュージカルで、その闇に覆われそうなストーリーの舞台を、音楽や踊りで明転させている。

また、ひとつ見所をあげれば、全員がマイケル・ジャクソンの曲で踊るシーンも、大智そあが社交ダンスを展開するシーンも捨てがたいが、やはり剣舞の迫力だろう。こういってはなんだが、まだ剣舞を楽しめる空間があったのか、というより、「まだ剣舞をしたがる若者がいたのか」というのが正直な感想だ。

千秋楽「プリズム」公演「闇をときなす音色」より

◆劇団には若者たちの熱いエネルギーが満ちている

劇団といえば、「貧しい生活」が代名詞だ。僕は日活芸術学院にいて、シナリオの勉強に明け暮れていた。撮影所の連中とよく一緒に飲食したがとにかく彼ら劇団員は、肉体労働に明け暮れていた。

しかしながら「夢を食べる」がごとく将来に成功するためには、「いつかきっと」ががんばるエネルゲンだ。今もなお劇団員を見るとドキドキする。

劇団員が「果たして…俺はものになるのだろうか」と揺れる心を描いた秀逸な作品は、ドラマでは中村雅俊の『俺たちの祭』で、何回も深夜の再放送で見たが、そう、あれこそが劇団の生活で、飲食すらままならず、友だちの家に転がり込んで「ご飯にしょうゆをかけて食べる」などというのはザラだ。

「若者は我慢が足りない」と言われる。「ゆとり世代」「さとり世代」とも言う。だがこと劇団に限っては、今もなお、若者たちには熱いエネルギーに満ちていると思う。

残念ながら、自分が青春をすごした「日活芸術学院」は、すでに2013年廃校となり、映像コースは城西国際大学に引き継がれることになったようだ。なんと城西大学! 僕は高校が城西大学附属川越高校だから、とても不思議な縁を感じる。

高校時代にも、授業を抜けだして、さまざまな演劇を観にでかけた。そんなことばかりやっているから、成績がいいわけがないのだが、実に楽しい思い出だ。

宇崎竜堂が音楽を担当し、町田義人が歌った「ロックオペラ・サロメ」や坂本龍一が演出した劇も観たが、やはり劇団四季や宝塚は別格で、一度は観てみるべきだと思う。また、実は「オズの魔法使い」も榊原郁恵や早見優や、本田美奈子などが演じてきたが、一度は観るべきだろう。今は宮本亜門が演出しているようだが。

◆筒井康隆や江戸川乱歩の作品は今こそ演劇化すべき

今、昔の演劇の脚本が見直されているという。シェイクスピアや、オスカー・ワイルドや、日本では寺山修二、つかこうへいなども見直されている。「今更なにを言っているんだ、そんなの基礎知識じゃないか」と嘆くなかれ。若者は黒沢明も、小津安二郎も木下恵介も知らない。

今、自分が演劇化すべきと思う作品はたくさんあると思うが、筒井康隆や江戸川乱歩などはどうだろうか。江戸川乱歩などは逝去50年という節目で、タイムリーだ。さまざまなイベントが行われており、旬だと思う。

話をもとに戻せば、どうしてテレビドラマは、演劇のようにリハーサルを重視しないのだろうか。自分もテレビの制作にいたので、ドラマの現場を知っているが、多忙なタレントや歌手も集まっているので簡単に本読みをして、立ち位置を確認して、あとはよろしく、うまく撮ってねというスタイルだ。こんなものが世界に通用していくわけがない。もしも演劇というものを真剣に考えるなら、政府よ! 劇団に補助金を申請させよ。フランスなど優秀な映画監督や舞台監督がいるとなれば「作品に使ってください」と惜しみなく金を投資するではないか。

まあでも、今の若者の演劇を観ていれば、しっかりしているので安心する。自分もいつか、ブロードウェイの芝居を観てみたい。明日の生活すらも保証されない。厳しい競争原理から生まれた演出と演技。そこにはびこるのは日本ならではの「なあなあの芸能界」の風習とかけ離れた、「磨かれた実力」によるスキルが演技に反映された芸術空間にちがいないのだから。

「心のプリズムVOl6.闇をときなす音色」

(小林俊之)

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17日「大阪都構想」住民投票を否決し、姑息なファシスト橋下に退場の鉄槌を!

5月17日、大阪では「都構想」に対する住民投票が実施される。意地でもこれを通そうと橋下は多額の税金を使い「説明会」という名の宣伝活動に没頭している。一方これに反対する勢力は「自民党」・「共産党」の合同街頭演説を敢行するなど文字通り大阪を二分するかのような様相を呈している。

5月10日には自民党と共産党が合同で「大阪都構想」反対の街頭演説を行った

◆「泣きの芝居」を打った橋下を見て野々村竜太郎を思い出す

ここ数日、報道機関の世論調査で不利が伝えられると、とうとう橋下は市民の前で「泣く」芝居まで打ち出した。「維新」を名乗る連中、日頃は糞偉そうにふんぞり返って、「自分たちだけが正義だ!」など聞いているこちらの方が赤面する破廉恥な言葉を平然と使う癖に、状況不利と見るや、相手に対して全く見当違いの罵詈雑言を浴びせたり、質問が聞こえないふりをしたり、終いには泣き出してしまう。

まだご記憶であろう、あの「政務調査費」を不正使用した元兵庫県議の野々村竜太郎の号泣会見。日本語がわからなくても動画の面白さだけで世界中に有名になった彼は「維新」所属ではないけれども、選挙ポスターへ勝手に「維新」と書き入れ当の「維新」からも文句を付けられたそうだが、21世紀に「維新」を錦の御旗にする連中は形勢不利には「泣けば済む」と思い込んでいるらしい。

◆大阪市民は「都構想」を否決し、橋下ファシズムからの脱却を!

大阪市民に訴える。17日の「都構想」への住民投票には絶対に「反対」を投じてほしい。大阪を覆い尽くす気怠いファシズムを払しょくするために是非とも否決が必要だと私は考える。

その理由を一々開陳していると読者も退屈であろうから、分かりやすい参考例を1つだけ挙げる。このコラムで何度も取り上げてきた中原徹という男がいる。こいつは橋下に抜擢され2010年、大阪府立和泉高校に校長として就任した。民間出身で史上最年少とかなりの注目を浴びたのだが、中原が行ったことは学校行事の際に教師が「君が代」をしっかり歌っているかどうか口元を調査すること(この行為に対して当時の大阪教育長は「そこまでする必要があるのか」と疑問を呈していた)と、「平和教育」の名の下に生徒を自衛隊へ連れて行き、実質上の「体験入隊」まがいのことをしただけだ。

だが、中原のような人間は橋下が牽引する「維新」では重宝されるらしく、中原は和泉高校校長から2013年6月大阪府教育長に抜擢されている。教育現場も生徒も無視した情実人事が良い結果を招くはずはないのは簡単に予想できることだ。私が指弾し続けていた中原は「パワハラ」を行っていたと今年3月認定された。醜くも中原は抗弁するも結果辞職に追い込まれた。

中原徹

◆パワハラ騒動で府教育長を辞職した橋下の手下、中原徹はセガサミー役員に就任

これで中原が表舞台から身を引いてボランティア活動などで「罪償い」をしていれば私も追撃はしなかったのだが、あろうことか中原は5月1日付でセガサミーホールディングス社(以下「セガサミー」)の上席執行役員に就任している。

この会社の名前を聞いても業務内容が俄かに思いつく読者は少ないだろうが、「セガサミー」は主としてパチンコ・パチスロ台やゲームを造っている会社であり、先般決定された大阪でのカジノ運営の主導権争いの渦中の会社である。カジノでは桁違いの金が動くからその主導権争いは海外勢も含めて熾烈を極めている。

しかし、所詮は「ギャンブル」である。府立高校の校長や府教育長をパワハラで辞めた人間が即座に再就職する先としては余りにも不整合ではないか。校長として「皆さんギャンブルをしましょう!」と朝礼で訓示していたのだろうか。

2010年10月28日当時知事だった橋下は「カジノの合法化をめざす国会議員らを招いた『ギャンブリング*ゲーミング学会』(2013年9月よりIR*ゲーミング学会に名称を変更)の大会に出席し、『ギャンブルを遠ざける故、坊ちゃんの国になった。小さい頃からギャンブルをしっかり積み重ね、全国民を勝負師にするためにも、カジノ法案を通してください』と議員らにカジノ合法化を求めた」(2010年10月28日付朝日新聞)ことをご記憶の読者はいるだろうか。

成人にも例外を除き禁じられているギャンブルを「小さいころからギャンブルをしっかり積み重ね」と、常軌を逸した発言をしていたのが橋下なのであるが、当時は橋下の賞賛をすれば雑誌が売れる、テレビの視聴率が上がるという時代だったためか、これを問題視した報道や声はかき消されていたように思う。狂気とはこのような状態を指す。

◆耐え難いほど姑息すぎる橋下、中原の言動・行動・身の振り方

橋下も中原も法律を熟知した弁護士である。しかし彼らは法律を「自分にとって都合のよいように」使う術に長けているだけであり、本物の法律専門家とは言い難い。しかもその人間性の醜さは中原の身の振り方が示している。民間弁護士→府立高校校長→府教育長→ギャンブル会社役員との遍歴はおかしくはないか。

橋下や中原の頭の中にあるのは、その周辺をどんな言葉で言い繕おうとも決して社会正義や長期的な視野に立脚した地方自治体の在り方などではなく、「当座、目の前にある利益の確保」だけである。それが失敗すれば自分の判断間違いではなく、状況や他人に責任を転嫁する。

姑息だ。

耐え難いほど姑息だ。

もうこんな連中に騙されてはいけない。同じ心象を持つ安倍という災いが首相の座に居座る不幸の相似形と言ってしまえばそうなのだが、ここまで剥き出しの悪意にはもう退場してもらわなければならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

橋下の手下=中原徹大阪府教育長のパワハラ騒動から関西ファシズムを撃て!
セガサミー会長宅銃撃事件で囁かれる安倍自民「カジノ利権」日米闇社会抗争
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」

自粛しない、潰されない──月刊『紙の爆弾』!

 

 

《脱法芸能38》音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠

『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社2014年5月13日刊)

拙著『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』(鹿砦社)を出版してから、1年が経つが、今ひとつ私の主張が伝わっていないところもあると思うので、ここで補足説明をしたいと思う。

まず、副題にある「芸能界独占禁止法違反」が理解されていないのではないだろうか。

そもそも独占禁止法は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」という正式名称となっていて、独占禁止法を運用する公正取引委員会のホームページによれば、その目的は「公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです」という。

具体的に簡単に述べると、独占禁止法は、事業者に対し、「私的独占」「不当な取引制限」「不公正な取引方法」を禁じている。

◆プロダクション間でのタレント引き抜きを音事協が禁じているのは独禁法違反

独占禁止法の観点から私が芸能界で問題だと考えているのは、大手芸能プロダクションのほとんどが加盟する業界団体である「日本音楽事業者協会(音事協)」が芸能プロダクション間のタレントの引き抜き(移籍)を禁じていることだ。タレントの引き抜き禁止は、音事協内において現状の固定化を強めることに役だっている。また、対外的には音事協加盟社をより強くすることに繋がる。

というのも、音事協の外では引き抜きは禁じられていないからだ。そのために、音事協加盟の大手プロダクションが音事協非加盟の弱小プロダクションからタレントを引き抜くということがたびたび起きている。音事協費加盟の弱小プロダクションはたとえ有望なタレントを獲得したとしても音事協加盟の大手プロダクションがそのタレントの獲得に動くとなすすべもない。

週刊誌の芸能記者は「音事協に加盟できない弱小プロダクションは、いいタレントを発掘できても音事協に引き抜かれておしまい。日本の芸能界は、音事協の有力事務所が動かしている」と言う。音事協には常に優秀な人材が流入し、利益を上げられる仕組みができているのだ。これはタレントの「私的独占」ではないのだろうか?

◆パチンコ機業界の違法「特許」と酷似する音事協加盟社の「タレント」縛り

今の芸能界に似ていると考えられるのが、かつてパチンコ機製造メーカーが作っていた「パテントプール」と呼ばれる仕組みだ。

有力なパチンコ機製造メーカー10社は、パチンコ機に関わる特許権などを「日本遊技機特許運営連盟(日特連)」という会社に集積していたが、新規参入業者に対してはライセンスの許諾を拒否していた。パチンコ機は多数の技術は多数の特許により成り立っているから、特許の許諾を得られなければ製造、販売はできない。事実上、新規参入は排除されていた。既存の業者は、このパテントプールの仕組みにより、市場競争を制限し、共存共栄を図っていたのである。だが、1997年、これを問題視した公正取引委員会は、パチンコ機メーカー10社と日特連に対して、独占禁止法3条前段(私的独占の禁止)を適用して審決が行われ、制限的なライセンス許諾契約の排除措置が行われた。

公正取引委員会によるこの審決は、「パチンコ機特許プール事件」として知られ、独占禁止法に関わるテキストなどでもたびたび引用される重要な事件となっている。

パチンコ機業界における特許を、音事協加盟社が抱えるタレントと見立てると、両者は実に似ている。パチンコ機の特許と違うのは、タレントが「モノを言う商品」であるということだろう。

◆芸能界とメディアの結託が不合理なビジネスモデルを存続させてきた

タレントは労働者であり、所属事務所に不満があれば文句を言う。不満が解消されなければ、事務所を辞めて独立しようとするかもしれない。だが、それを認めれば、芸能界、音事協のビジネスモデルは崩壊してしまう。だから、独立を画策したタレントは「恩を忘れた」などと理屈をつくって業界を挙げて潰しにかかる。このシステムは、1953年に調印された映画界の五社協定以来、長らく続いてきた。

なぜこのような違法で不合理なシステムが続いてきたのだろうか?

まず、メディアが芸能界と歩調を合わせてきたことがある。芸能界は音事協を中心として一致団結し、敵対するメディアに対し、タレントの出演拒否などの手段で対応してきた。メディアは次第に芸能界に飼い慣らされ、批判精神を失い、「芸能界の悪しき因習」の担い手として、独立を画策したタレントに猛バッシングを浴びせるようになっていったのである。

もう1つは、タレントに告発させないという仕組みがある。独立を画策したタレントは、メディアから猛バッシングを浴び、芸能界から干されるが、それは一時的なものだ。そのタレントが反省の意思を示し、1年から数年が経てば復帰を許されるのである。タレントとしては、嵐が過ぎるのを大人しく待っていれば再び芸能活動ができるということを知っていれば、芸能界批判をして問題をこじらせるという選択はしないのである。

これまで芸能界で干されたタレントは星の数ほどいるが、私が知る限り芸能界の不合理さを決定的に告発したケースはただの1つもない。

だが、このシステムも最近になってほころびを見せ始めているのではないかと私は考えている。

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

星野陽平の《脱法芸能》
◎森進一──「音事協の天敵」と呼ばれた男
◎松田聖子──音事協が業界ぐるみで流布させた「性悪女」説
◎宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎爆笑問題──「たけしを育てた」学会員に騙され独立の紆余曲折

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなきノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』

 

《脱法芸能37》『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理

『週刊文春』(5月7・14日合併号)の記事「能年玲奈 本誌直撃に悲痛な叫び 『私は仕事がしたい』」が大きな波紋を呼んでいる。NHKで2013年に放送された連続テレビ小説『あまちゃん』で主演を務めた国民的アイドル女優、能年玲奈が芸能界で干されているというのだ。

能年といえば、大ヒットした『あまちゃん』以降の2年間で映画2本、スペシャルドラマ1本の出演しかしておらず、芸能界では「出し惜しみ戦略」「仕事を選んでいる」などと言われていたが、実際には所属事務所、レプロエンタテインメントから「態度が悪い」という理由で干されているという。

記事によれば、『あまちゃん』を撮影していた頃の能年の月給は、わずか5万円。睡眠時間は平均3時間というハードスケジュールだったが、レプロはクルマも満足に用意せず、経験の浅い現場マネージャーが失態を繰り返した。

2013年NHK連続ドラマ小説「あまちゃん」公式HPより

◆レプロ側が断り潰えた映画『進撃の巨人』ミカサ役

そうした状況で能年の身の回りの世話を引き受けたのが、能年が高校1年生の頃から演技指導を担当していた滝沢充子だったが、レプロとしては滝沢と関係を深める能年が面白くない。そして、『あまちゃん』がクランクアップした時に『あまちゃん』の公式ホームページに能年の感謝の言葉が掲載されたが、そこには滝沢の名前が記されていた。これが決定的に能年とレプロの関係を悪化させてしまった。

レプロに呼び出された能年は、チーフマネージャーから「玲奈の態度が悪いから、オファーが来ていない。仕事は入れられないよね。事務所を辞めたとしても、やっていけないと思うけどね」「今後は単発の仕事しか入れられない。長期(連続ドラマなど)は入れられない」「『あまちゃん』は視聴率は高かったから評価していますよ。でもお前は態度が悪いし、マネージャーと衝突するからダメだ。事務所に対する態度を改めろ」などと告げられた。

この時点で能年は干されていた。その後、人気漫画『進撃の巨人』の映画化で能年をヒロインのミカサ役に抜擢したいと製作陣は検討していたが、レプロがこれを断った。

これにショックを受けた能年は、レプロに「事務所を辞めたい」と申し出たが、契約書には「事務所の申し出により一度延長できる」という主旨の記載があり、能年とレプロの契約は2016年6月まで延長されることとなった。だが、今年1月には、能年を代表取締役とする「三毛andカリントウ」という会社が設立され、取締役として滝沢が就任していることが発覚し、独立が現実味を帯びてきた。この頃から「能年が滝沢に洗脳されている」という報道が相次ぐようになる。

『週刊文春』の直撃取材に対し、能年は「私は仕事をしてファンの皆さんに見てほしいです。私は仕事がしたいです」と悲痛な叫びを訴えた。

◆事務所に嫌われたタレントはこれまでも不条理なほど干されてきた

『CUT』(2012年10月号)

『週刊文春』の報道に対し、「ブレイクして事務所にとっても稼ぎ頭のはずのタレントをなぜ干すのか?」といぶかる向きもあるが、所属会社との関係がこじれたタレントが干されたケースはこれまでにいくらでもある。

近年で言えば、研音所属していた水嶋ヒロが同じく研音所属で稼ぎ頭だった綾香と結婚したことで事務所から嫌われ、退社に追い込まれ、現在までほぼ芸能界引退状態となっている。

古いケースで言えば、1957年に映画会社の新東宝に所属していた新人女優の前田通子が監督の演出に楯突いたことで「ニューフェースのくせに生意気だ」とされ、退社に追い込まれ、映画界から追放されるという事件があった。

一般社会では、所属する会社との関係がこじれたら、別の会社に転職したり、独立するという選択肢があるが、芸能界ではそうはゆかない。芸能界にはタレントの引き抜き禁止、独立阻止という鉄の掟(「カルテルとも言う)が存在するからだ。

先に触れた前田通子の事件が起きる4年前の53年9月30日に、松竹、当方、大映、新東宝、東映の映画メジャー5社の間で俳優の引き抜きを禁止する五社協定という申し合わせが調印されている(その後、新東宝を加え、六社協定に)。前田通子の事件は、六社協定が発動された。当時の報道によれば、新東宝の大蔵貢社長は撮影所で「六社間では、前田通子を使わぬよう話合いはついている」と語ったとされている。

◆人気者は作ろうと思って作れるものではない──「育ててもらった恩義」という言葉のまやかし

人気俳優を追放することは、業界にとっても痛手ではないか、と見る向きもあろうが、芸能界ではそうではないらしい。俳優の引き抜きや独立が自由に行われれば、ギャラが高騰し、映画会社の財政を圧迫する。どの映画会社にとっても客を呼べる人気者は喉から手が出るほど欲しいからだ。

芸能界では「育ててもらった恩義」などという言葉が使われるが、これはまやかしである。人気者は作ろうと思って作れるものではないからだ。

1910年代、草創期の映画界で最大のスターだったのは、日活の忍者映画で活躍した尾上松之助だったが、松之助はあまりの人気ぶりに自信を深め、育ての親だった日活の撮影所長で監督だったマキノ省三と真っ向から対立したことがあった。マキノは松之助を牽制しようと、新たなスターを育成しようとしたが、松之助に敵う俳優を発掘することに失敗し、退社に追い込まれ、松之助が後任の撮影所長に就任し、重役スターとなった。

だが、映画会社にとって俳優の増長は経営的に悩ましい。そこで、メジャー映画会社間でカルテルを結び、俳優の引き抜きを禁じ、業界を保護しようという動きが出てきた。戦前は四社連盟というカルテルが結ばれたが、その拘束力は脆弱で、大物俳優たちが独立して配給系統まで持っていた時期がある。

戦後になってできた五社協定は、極めて強い拘束力を持ち、俳優たちの自由な芸能活動を圧迫していった。だが、五社協定は当初から独占禁止法違反の指摘がなされていた。

前述の前田通子は、六社協定により干された後、東京法務局人権擁護部に訴えを起こしたところ、人権侵害が認定された。

また、57年には『異母兄弟』という映画に俳優の南原伸二が所属していた東映に無断で出演したことが問題となり、五社協定違反とされ、映画会社5社が『異母兄弟』上映阻止に動いたことで、公正取引委員会が調査に乗り出したこともある。同委員会は63年に5社が「協定中、違反の疑いのある条項を削除し、その後このような行為を繰り返してお非ず、違反被疑行為は消滅したと認められたので、本件は不問に付した」という決定を下したが、実態としては五社協定は存続し、映画界の衰退を絡めて国会でも議論されたことがある。

五社協定は映画界の衰退とともに自然消滅したが、テレビの世界では五社協定同様のシステムを引き継いだ。五社協定をモデルとした日本音楽事業者協会(音事協)と呼ばれる組織が1963年に設立され、現在まで大手芸能事務所がタレントの引き抜き禁止、独立阻止で団結している。

『キネマ旬報』2014年8月下旬号

◆「悪しき因習」がタレントへの人権侵害を生み、芸能界の衰退を招く

能年が所属するレプロも音事協加盟社であるから、能年が他の音事協加盟の有力事務所に移籍することは基本的にできない。かといって、弱小事務所に移籍したり、独立すれば業界全体からプレッシャーを受け、芸能活動ができなくなってしまう。五社協定の時代は、多くのメディアが五社協定に批判的だったが、今はほとんどのメディアが芸能界に組み込まれており、「芸能界の掟」に反するタレントをバッシングするようになっているから、システムとしての堅牢性は極めて強い。

能年が『あまちゃん』のヒットで国民的アイドル女優となりながら、事務所と対立したことで、飼い殺しとなり、仕事ができなくなってしまうのは、『あまちゃん』で能年と共演した小泉今日子がインタビューで語った言葉を借りれば、そうした「芸能界の悪しき因習」が背景にあるのだ。それは能年に対する人権侵害であるばかりでなく、五社協定と同様に芸能界の衰退を招き、視聴者にとっても大きな不利益をもたらしている。

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

星野陽平の《脱法芸能》
◎松田聖子──音事協が業界ぐるみで流布させた「性悪女」説
◎石川さゆり──ホリプロ独立後の孤立無援を救った演歌の力
◎浅香唯──事務所と和解なしに復帰できない芸能界の掟
◎爆笑問題──「たけしを育てた」学会員に騙され独立の紆余曲折
◎中森明菜──聖子と明暗分けた80年代歌姫の独立悲話(後編)
◎中森明菜──聖子と明暗分けた80年代歌姫の独立悲話(前編)
◎宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなきノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社2014年5月13日刊)

 

 

高まる逆転無罪の期待──上告審も大詰めの広島元アナウンサー冤罪裁判

2009年度は2311件中3件、2010年度は2150件中1件、2011年度は2208件中1件、2012年度は2313件中1件、2013年度は2015件中1件……。これらの数字は最高裁で終局した刑事裁判のうち、有罪判決が破棄されて無罪判決が出た事例がどれほどあったかを司法統計をもとにまとめたものだ。最高裁での逆転無罪判決がきわめて珍しいことが統計によく表れている。

こういう現状ゆえ、筆者は冤罪事件を取材していて、控訴審までに無罪判決が出なければ、被告人の運命は絶望的だと思うのが常である。しかしこの事件ならひょっとして……と期待させられる事件もたまにある。その1つが当欄で何度か紹介した広島の放送局「中国放送」の元アナウンサー、煙石博さん(68)の「銀行置き引き」事件だ。

街頭で無実を訴えた煙石さん

◆わかりやすい冤罪事件

煙石さんと共に雨の日に無実を訴えた多数の支援者

煙石さんは2012年9月、自宅近くの広島銀行大河支店で、先客の女性が記帳台に置き忘れた封筒の中の現金6万6600円を盗んだ容疑で逮捕、起訴された。一貫して無実を訴えているが、第一審、控訴審共に有罪(懲役1年・執行猶予3年)と判断され、現在は最高裁に上告している。

この事件は過去お伝えしたように、冤罪であることが比較的わかりやすい冤罪事件だ。まず何より、「被害女性」が銀行内の記帳台に置き忘れた現金6万6600円が入っていた(はずの)封筒は、「被害女性」が退店後、現金が入っていない状態で記帳台の上にあったのが見つかっている。つまり、仮に煙石さんがクロならば、記帳台の上にあった封筒を手に取ったあと、わざわざ中の現金を抜き取り、自分の指紋がついているかもしれない封筒を記帳台の上に戻したことになるわけだ。これだけでも随分変である。

また、煙石さんは「被害女性」が退店後、たしかに記帳台に近づいたことはあったのだが、封筒から煙石さんの指紋は検出されていない。さらに防犯ビデオの映像を見ると、煙石さんは記帳台に近づいたあと、知人の女性と店内のソファーに座ってのんびりおしゃべりをしており、その行動も犯人とは思い難かった。さらに弁護側は控訴審で、防犯ビデオの映像を解析した鑑定書を証拠提出したのだが、煙石さんが問題の封筒に触れたことを否定する鑑定人の証言は説得力に満ちていた。結論を言うと、要するにこの事件はそもそも問題の封筒に本当にお金が入っていたことすら疑わしい事件なのである。

公正な裁判を求める署名に協力する男性。女性は煙石さんの奥さん

ただ、明白な冤罪事件でも無罪判決などめったに出ないのが刑事裁判だ。げんに煙石さんは第一審、控訴審共に有罪と判断されている。そんな中、筆者がこの事件について、最高裁での逆転無罪を期待している理由は被告人を支える人たちの思いや行動が良い流れをつくりつつあることだ。

◆逆転無罪を期待させる要素

3月3日、広島市中心部の繁華街で、煙石さんや支援者らが行った街頭宣伝。当日はあいにくの雨だったが、マイクで無実を訴えた煙石さんと共に支援者ら42人が配布したチラシは約1000枚に及んだ。4月21日には、支援者らが集めた「上告審の公正な裁判を求める」署名2380筆が最高裁に提出された。署名集めなどは現在も継続されているが、支援活動は今後もさらに広がっていきそうな見通しだ。


◎【参考動画】街頭で無実を訴える煙石博さん(2015年3月3日広島)

支援者の冤罪の説明に聞き入る女性たち

近年、最高裁で逆転無罪の判断が出た事例を見ると、被告人が防衛医科大学の教授だった痴漢事件や、裁判員裁判で初の無罪判決が出ながら控訴審で逆転有罪とされていた千葉のチョコレート缶覚せい剤密輸事件など、何らかの話題性、社会の耳目を集めそうな要素がある事件が目立つ。そういう現実に照らせば、この事件は被告人が元アナウンサーということも逆転無罪への好材料として期待できる。

最高裁は通常、公判を開かずに書面のみで審理を行うが、控訴審までの判決を覆す場合は検察側と弁護側が意見を述べる公判が開かれるのが通例だ。そして最高裁の審理は大体半年以内で終わるから、昨年12月に控訴棄却された煙石さんに対し、そろそろ最高裁が何らかの判断を示してもおかしくない時期となっている。

この裁判の行方や煙石さんの近況は「煙石博さんの無罪を勝ちとる会」のホームページで適時報告されている。少しでも多くの人に注目して欲しい。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。


◎【参考動画】「煙石博さんの無実を勝ちとる会」の総会で事件のことを説明する久保豊年弁護士(2015年1月16日)

◎広島の元アナウンサー窃盗「冤罪」事件の控訴審がスタート(2014年5月30日)
◎広島の元アナウンサー窃盗事件で冤罪判決(2013年12月6日)
◎「冤罪」と評判の広島地方局元アナウンサー窃盗事件(2013年9月20日)

 

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』話題の6月号発売中!

 

5月17日熊本で知名定男プロデュースのライブイベント「琉球の風」2015開催!

台風6号が沖縄から九州へ接近しそうだ。強い台風なので被害が出ないことを願うばかりだが、台風6号が通り過ぎたあとには、沖縄から熊本へ素敵な「風」がやってくる。

7回目を迎える「琉球の風」が今月17日(日)「フードパル熊本」(熊本市北区)で行われる。昨年の実施が延期となり1年おいての「琉球の風」となるが、沖縄音楽ファンには一足早い「夏」の訪れとなろう。

5月17日熊本「琉球の風」2015

◆宇崎竜童、宮沢和史、ネーネーズなど強力多彩な出演者

大御所、知名定男がプロデュースする「琉球の風」には50代以上の方なら誰でも御記憶であろう「あんた、あの娘のなんなのさ」の歌詞が印象的だった「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で一世を風靡した宇崎竜童が友情出演、元THE BOOMの宮沢和史、新良幸人withサンデー、大島保克、下地勇、かりゆし58、金城安紀、AFEE、ネーネーズ、川畑さおり、SHY with 古見健二、國吉大介というそうそうたる顔ぶれが登場する。琉球國祭り太鼓九州支部の演奏も楽しみだ。


◎[参考動画]熊本に流れる「琉球の風」(2012年NHKニュース)Published on Sep 26, 2012 TOSHIRO Kikuchi

◆沖縄の唄と踊りと指笛と泡盛の香りが溢れる日

琉球(沖縄)音楽は日本のポップス界に限らず世界の音楽へも影響を与える独自文化であり、特に「平和」や「命」、「幸せ」を歌い上げる歌詞やメロディーが人々の心に響く。「歌謡曲」というジャンルが実質消滅した日本の音楽シーンで、量産される所謂「J-POP」は一時ヒットチャートの頂に立っても、そのほとんどは数年もすれば忘れ去られる。他方琉球発の楽曲は色あせることなく残り続け、若者だけでなく、幅広い年齢層の心を掴む。

距離的にも近い台湾でも琉球出身歌手は大人気でコンサートが開かれる時は大通りに日本語そのままの幟(のぼり)が何千本もはためく。

「琉球の風2015実行委員会」主催のフェスティバルには全国からファンが駆けつける。今年も熊本に南からの「風」と泡盛の香り、そして指笛と踊りがあふれることだろう。

五月晴れの空の下で「琉球の風」に吹かれ聴きなれたあの曲や、初めて耳にする新鮮さにオリオンビールを飲めば、日常のごちゃごちゃから離れウチナーに旅行した気分に浸れることは間違いない。まだ、若干だがチケットが残っているそうだ。チケットぴあ(セブンイレブン/サークルKサンクス≪Pコード:257-279≫、ローソンチケット≪Lコード:84197≫などで入手できる。お問い合わせは琉球の風2015実行委員会「島風(Shimakaji)」http://www.felicia.co.jp/shimakaji/まで。

そうそう言い忘れてはいけない。鹿砦社は「琉球の風」を協賛し応援している。鹿砦社本社の窓から見える甲子園では今季だらしなく見る影もない阪神タイガース。甲子園では「六甲おろし」が聞かれないが、熊本では「琉球の風」を吹かすのに一役買っている(笑)。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

『島唄よ、風になれ! 「琉球の風」と東濱弘憲 特別限定保存版』

◆5.17「琉球の風」2015強力多彩な出演ミュージシャンyoutube動画リスト[順不同]


◎知名定男「ジントヨーワルツ」


◎宇崎竜童「沖縄ベイブルース」


◎宮沢和史(THE BOOM)「島唄」20周年記念 ver PV


◎新良幸人withサンデー「パピル節」


◎大島保克「流星」


◎下地 勇「民衆の躍動」


◎かりゆし58「アンマー」


◎金城安紀 ヒヤミカチ節~カリーの唄 by 金城安紀&ありあり娘


◎ネーネーズ「黄金の花」


◎川畑さおり「永遠の碧 (あお)」 2011 奄美紅白歌合戦より


◎SHY with 古見健二
SHY「 君にファンキーミュージック 君とファンキータイム」


◎國吉大介「どうぞよろしくございます!」


◎玉城満[司会]出演作=映画「ウンタマギルー」でのワタブーショー

岩清水愛[司会](エフエム熊本パーソナリティ)

「防犯」は錦の御旗──野放図に進む「監視国家」化から自由をどう守るか?

あなたは監視されている。誰に? 警察、行政、ショッピングモール、そして携帯電話会社やパソコンのプロバイダーに。

スピード違反を取り締まる目的ではないのに幹線道路上にやたらカメラが設置されていて、それが年々増加していることにはお気づきの方も多いだろう。駅や繁華街にも様々な角度からカメラがあなたを狙っている。

「顔認証システム」というソフトも既に開発されている。多数の人々が映ったカメラ映像の中から顔の特徴をとらえてコンピューターが個体認識が出来る機能だ。

夥しい数の監視カメラに「顔認識システム」が完備されれば、ちょっと街中に出かけたあなたの行動はほぼすべて「誰か」によって追跡されることが、技術的には既に可能になっているのだ。そしてこの「顔認識システム」は日本でも既に首都圏を中心に導入が進んでいる。まだ未確認だが誰もが知っている東京に隣接した大規模なレジャー施設でもこのシステムを既に導入しているとの噂がある。

◆「防犯」の名の下で野放図に進む警察「監視システム」

このような「監視システム」導入の根拠としては、必ず「防犯」があげられる。でも根拠とされる「防犯」は一見理に適っているようだが、一方でプライバシーや一般市民の虞犯性(犯罪を犯す可能性)を根拠としたものであり、本音は「監視」であることが明らかだ。

最大の問題点は私達が知らないうちに何者かによって行動のかなりの部分を「勝手」に撮影されているということだ。これは肖像権の侵害にはあたらないのか。

更に商店で何を購入したのか、どこで誰に会ったのか、その人とどこへ行き、どのくらいの時間をそこで過ごしたのかなどまでが「誰か」によって掌握されるのはまっぴら御免だ。

◆「GPSで犯罪捜査」で国民が払うべき代償は大きすぎる

だが、その「監視」をより正確に警察が行おうとの動きがある。4月17日の朝日新聞は、

「携帯電話のGPS(全地球測位システム)情報を犯罪捜査に使いやすくするため、総務省が通信業界向けの指針(ガイドライン)を見直す方針を固めた。振り込め詐欺といった携帯電話を悪用した犯罪の摘発にいかしたい警察庁などの意向をうけた措置だ。ただ、プライバシーの侵害を心配する意見もある」

と報じている。さらに、

「捜査機関が、裁判官の令状にもとづき、GPS情報を取得できる規定がガイドラインに盛り込まれたのは2011年11月。誘拐犯や指名手配犯の居場所の把握に有効と考えられた。ただ、プライバシーへの配慮から、取得を本人に知らせる「条件」つきだった。だが、被疑者に知られると証拠を隠されたり、逃げられたりする恐れがある。誘拐犯なら被害者に危害がおよぶケースもありうる。こ のため、GPS情報は『捜査には使えなかった』(警察庁)。総務省はこの条件を削除する方針だ」

そうだ。つまり我々「誰もの居場所を携帯電話から警察がいつでも知りうることになる」ということだ。警察はここで「振り込め詐欺」等の防止を理由に挙げているが、そんなものは全くの嘘である。以前本コラム(「迷惑メール詐欺を通報しても警察はまともに対応しないことが判明」)で取り上げたが、私自身が詐欺被害に巻き込まれそうになり、警察に証拠のメールと電話会話の提供を申し出たが、警察は「詐欺かどうかは分からない」、「民事は警察の管轄外なので」(詐欺は民事ではない明確な刑事案件だ)と全く取り合う姿勢が無かった。

しかもそれは一度限りの事ではない。私はこれまで4度同様の情報提供を警察に行おうとしたが、そのうち3回は同様の「門前払い」を食らった。まともに取り扱われてことは1度きりだ。

◆グーグル、アップル、ソニー、アマゾン──「警察国家」構築で結託する要注意企業群

警察の本音は「全国民を常時監視したい」のだ。このような社会を「警察国家」と呼ぶ。そして「警察国家」完成には要注意企業が密接に関連している。

前述の「顔認証システム」を開発したのは「Google」、「Apple」、「ソニー」の3社だ。これに「Amazon」が加わったらどうなるだろうか。

Googleは驚異的なスピードで世界中の情報の集積を行っている。「Street View」などに膨大な資金を投じ、全米図書館所蔵のあらゆる書籍の電子化(著作権の放棄)まで画策したほどだこの思惑はさすがに米国出版社協会の反発を買い和解に至ったが(日本では明石昇二郎氏が孤軍奮闘した。詳細は「Googleに異議あり」2010年集英社 http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0537-b/ に詳しい)。それでも2009年時点で既に200か国で700万冊以上のデジタル化を終えているという。

「アマゾン」利用経験のある読者も少なくないだろう。自宅に早く届くし確かに便利ではある。しかしこれは「Amazon」に限らないがネットで買い物を続けるとその業者に購入者の嗜好が伝わり、これまた個人情報が蓄積されてゆく。仮に「Amazon」と「Google」が業務提携をしたらどうなるだろうか。

あなたが外出するなり「今日はAショップでB(あなたの嗜好品)が3割引き!お得ですよ! ここからの道順はナビが案内します。渋滞が無ければ現地までの凡その所要時間は10分です」という案内を始めはしないだろうか。

「始めはしないだろうか」、ではなくもう既に一部でこのようなサービスは実施されている。GPSによりあなたの行動パターンは携帯電話会社が掌握済みだから、的外れな案内ではなくその日、その時間に足を向けられるような案内がなされればあなたが「3割」お得な買い物に向かっても不思議ではない。

だが、そんな生活は余りにも気持ち悪くはないか。そしてそのような「サービス」は便利かも知れないが「必要なもの」ではない。さらに言えば「サービス」という言葉はふさわしくない。これは「誘導」だ。

◆少し前までしていた生活と同じことを復活させるだけで自由は守れる

私は「誘導」されるのは嫌だ。

そこで考えた。テクノロジーとソフトウエァの無限界な開発に翻弄されない生活を送るためにはどうすればいいのか。

出来るかどうか自信はないが答えは簡単だ。

携帯電話(特にスマートフォン)を使わなければいいのだ。「Amazon」も利用しなければいい。少々時間がかかっても欲しい書籍は近所の書店で注文すればいずれは手に入る。

全然難しいことではない。少し前まで私達がしていた生活と同じことを復活させるだけの事だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎就職難の弁護士を貸付金強要で飼い殺すボス弁事務所「悪のからくり」

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テレビが嘘を垂れ流す──AKB48を使って虚偽を流布しても「訂正せず」のNHK

私がテレビを見ない理由はいくつかあるが、その中のひとつは「テレビは嘘をつく」ことだ。

やや古い話になるが、2012年1月28日たまたま友人の家に遊びに行っていたら、テレビでNHKの初心者向けニュース解説番組(同番組ブログによる)「麻里子さまのおりこうさま」という番組が、「デモ」を取り上げていた。この番組は昨年すでに終了しているが、腰を抜かしそうな大誤報に直面したので経緯をご紹介する。

◆AKB48のタレントを使い虚偽を流布したNHK

同番組は、篠田麻里子(恥ずかしながら彼女がAKB48のタレントだとは友人に教えられるまで知らなかった)、が視聴者からの投稿を紹介する形で進める番組らしい。しかし初心者向けニュース解説番組とはいえ、AKB48のタレントを使うか、と半ばあきれながら画面を眺めていた。

視聴者からの投稿が取り上げられたのだがその内容は、

「デモとは、デモンストレーションの略であり、ある特定の意思・主張をもった人々が集まり、集団でそれらの意思や主張を他に示す行為です。デモは誰でも起こすことができますが、公務員の仕事をしている人はデモをしてはいけないと法律で決まっているんですよ」というものだった。

篠田は「そうなんですね、公務員以外の方ならだれでもデモができると、確かにこう主張の自由というところが認められている気がしますよね(後略)」などと言っていたが、その時画面には≪公務員の政治行為は国家公務員法102条で禁止されている≫とのスーパーが表示された。「公務員の政治行為」が禁止されているなら公務員は選挙に投票できないじゃないか。そんなあほな話あるかい!と、AKB48のタレントを使い虚偽を流布するNHKは許しがたい!やっぱりテレビはこれだわと呆れ返った。しかしこれは公務員に対する重大な人権侵害だしNHKによるデモ弾圧だ。座視はできない。

しかもタレントを使ったこの手の番組を見ているのは篠田のファンか若年層だろう。私のようなひねくれ者は少ないはずだから視聴者は「公務員はデモ禁止」と信じきったに違いない。

私は「これ大嘘やで、こんな法律解釈完全に間違ってるわ」と少し声を上げたが、その番組を見た私の周囲の人間(高校生を含む成人5名)は「へー公務員はデモに参加したらいけないのか」と一様に反応していた。テレビ恐ろしやである。

◆NHKから届いた公式見解メール

私はこの放送は完全に法律を誤解している上に公務員の権利を堂々と否定しているので、同日夕刻NHKの窓口に電話をかけ、「公務員がデモに参加してはいけないというのは間違っているのではないか」と担当者に告げた。担当者からは「ここで意見を聞いたが、更に述べたいことがあれば番組ホームページから投稿できるのでそちらを利用してほしい」と言われた。糞生意気な態度だが、取り敢えず担当者の案内に従い番組ホームページから上記の疑問を送った(文字数400字の制限あり)。

30日になってもメールの回答がなかったため、再度電話窓口に問い合わせたところ、電話に出た女性がスーパーバイザーに電話を繋いだ。氏は「番組は見ていない」としながらも「公務員がデモに参加してはいけないということはないと思う。私自身昔自治労の人たちとデモをした経験がある。そもそもデモへの参加は憲法で認められている表現の自由だ。公務員の政治活動禁止というならメーデーなどはできない」と語った。「そうだその通りだ。だが放送で真逆のことを流しているから私は間違いを指摘している」と伝えると、「今番組制作関係者の間で公式見解をまとめている。31日には判明するので再度電話してほしい」と語った。

31日、NHKよりメールが届いた。以下がその内容。

田所 敏夫 様

いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。
(※田所注:うちにはテレビがないからいつもは見ていない。たまたま見ただけだ)

お問い合わせの件についてご連絡いたします。

今回のテーマ『デモ』は昨年相次いだ中東、ニューヨークでのデモや日本国内での反原発デモなど国内外で『デモ』に関する報道が多く伝えられていたことから、番組で取り上げることにしました。この為、「政治活動に該当するデモ行為」という前提で番組を構成しています。ご指摘のあった『公務員によるデモ行為』に関しては、投稿及び番組MCの発言を補足する為に、同時に表示したテロップの表記で、公務員の政治活動が禁止されると法律に基づく正しい情報を表示しています。

番組としては、全体を総合的に見れば、政治活動に該当するようなデモが国家公務員法で禁止されていることを伝えているものと考えます。その意味では放送した番組内容に誤りがあるとまでは考えておりません。ただし、ご指摘のように、内容に誤りがあるという感想を持たれた方がいることは事実であり、今後はより一層誤解の無いような番組制作を心がけていきたいと考えております。

今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
お便りありがとうございました。

「麻里子さまのおりこうさま!」担当
NHKふれあいセンター

相変わらず完全に間違っている。これがNHKの公式見解だというから恐れ入る。「政治活動に該当するようなデモが国家公務員法で禁止されている」などと平気でのたまっているがこれは完全に国家公務員法の解釈を誤っている。が、いくら私が説明しても埒が明かない。NHKは聞く耳を持たないのだから。

◆人事院審査課に国家公務員法102条の意味の詳細を確認してみると……

仕方なく2月1日に国の解釈を確認すべく人事院審査課に電話をして、国家公務員法102条の意味の詳細を尋ねた。審査課の担当者は「102条には人事院規則14-7があり、そこで細かい政治行為と政治目的を定めている」と解説してくれた上で「公務員が参加者としてデモに参加することは全く問題ないですよ。デモの際に暴力行為を働いたりすれば別の法律で罰せられますけどね」と教えてくれた。

「つまり公務員がデモに参加すること自体を法律で禁止はしていないのですね」との確認の問いに「そうです。私も偶然あの番組を見ていたんですがNHKさんは誤解をしているなと感じました」と正しい解釈を教えてくれた。

◆人事院の見解を基にNHKに再度確認を求めてみると……

さすがに人事院の見解に異を唱えることはできないだろうと、NHKに4度目の電話をかけデスクと話した「人事院に確認したところ、先にお送り頂いた文章の法解釈は完全に間違っている。公務員の人権侵害に該当するから訂正放送をする等しっかりとした措置を取るべきだ。どのような措置を取るか決まったら連絡してほしい」と伝えた。

「麻里子さまのおりこうさま」は当時ホームページ持っていて、過去の放送内容などを掲載していたが、問題の「デモ」を掲載した画面に2月1日午前中には記載のなかったコメントが午後になって付け加えられていた。

その内容は、

☆公務員のデモ行為は法律で制限されていますが、すべてが禁止されている訳ではありません。禁止されているのは、国家公務員法102条等で規定されている「政治的行為」に該当する行為です。番組でお伝えしたのも、そのような趣旨です。

というものだ。また間違っている!

この記述では「公務員は限定的にデモへの参加が認められる」としか読めない。人事院の言う「参加は問題ない」と大きくニュアンスが異なるし、テレビを見ていた人間の誤解を解くことは出来ない。再度NHK窓口に電話をかけスーパーバイザーと話をする。

「そういうご意見があったことは上司に伝えておく、こちらからかけ直すことは制度上できない」と言うので、「そもそもこの問題点を指摘したのは私であり、公式見解として受け取ったメールに間違いがあることの指摘をしたのも私の方だ。常に電話代を負担し、NHKの間違いを正すようにアドバイスをしているのであり、自分の意見を述べているのではない。人事院に調査を行ったのも私でそれによってホームページを訂正しているではないか。今から1時間以内に携帯に電話をかけてほしい。そうでなければこの経緯を各メディアに発表する。法律解釈を誤った私へのメールも公表する」と告げた。

後刻番組担当者氏より電話があり、「HPの文章、田所さんに送った文章とも訂正はしない、番組の中その他の訂正もしない」と回答があった。NHKの最終見解である。氏は「(私に)送ったメールは出来れば公開してほしくない」と述べたが、公式見解と言っておきながら公開を望まないのというのは自信のなさの現われだろう。

かように、家にテレビがなく友人宅でたまたま目にした番組が大嘘を垂れ流しているのだ。普通の方のように毎日テレビを見ていれば一体どれほどの誤報に遭遇するだろうか。

個人の好みだから差し出がましいことは言わないが、

「テレビを信用してはいけませんよ」

とだけはお伝えしておく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎就職難の弁護士を貸付金強要で飼い殺すボス弁事務所「悪のからくり」

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アイドル撮影会は「先物買い」──1対1の激写体験で「至福の境地」!

なにごとも体験と思うが、多忙でなかなか体験できなかったひとつに「アイドル撮影会」がある。4月18日、かねてより「腰高」「美脚」のアイドル、大智そあちゃんの撮影会に行ってみた。

「撮影会」は、1時間近くもアイドルを独占でき、今や大盛況となっている。今は、アイドルとのつきあいかたとして重要なのが、「アイドルの、自分だけの表情を撮影してアルバムを作る」というスタイルであり、デビューしたばかりの新人とて、「ファンミーティング」ないしは「撮影会」にて、少しずつ、ファンを増やしていけるのだ。

◆元バレリーナの大智そあちゃんは「今、タンゴにはまっています」

とりわけ、ダンサーとしての大智さんは、体が柔らかく、元バレリーナの特性を生かして、片足をあげたバレエポーズや、鍛えた体幹を利してのポーズなど、さまざまな要求にこたえてくれた。

アイドルライターは語る。

「僕はアイドル養成スクールも取材しますが、長時間、体をカメラマンの要求にこたえることができる体力づくりがものすごい重要なテーマになっています。スポーツジムと契約しているアイドルたちもいますよ」

大智さんもスレンダーなボディを維持しているが、「今、タンゴにはまっています」と言う。

そういえば、筆者は池袋の某スポーツジムに某有名アイドルグループを見たが、こっそり仲がいいジムのスタッフに「あれはアイドルグループの××か?」と聞くと、こっそりと「見たことは口外しないでくださいね」と釘をさされた。

まあ、今のアイドルは踊って歌って、長時間の撮影にも耐えないとならないので、体力が必要なのだろうな、と思う。

感じたのは、「長い間、撮影していないと、カメラを扱うのに勘が狂ってくる」という点だ。今時のカメラの性能はかなり高くなっており、まちがっても露出オーバーやアンダー、もしくは、シンクロしていなく、ピンぼけしたりはしない。だが、好みのモデルと会っていて心臓がドキドキしていたりすると、なんともうまくショットが決まらないのだ。

現実として、今は秋葉原のソフマップや、スタジオでは、アイドルたちの撮影会はもはや百花繚乱。スタジオを運営している戸高光男氏は語る。

「ありがたいことに、アイドルの撮影会で、今年の7月末まで予定は埋まっていますよ。逆に、箱(スタジオ)はもう都内で抑えるのが難しくなってきているのではないでしょうか。料金もどんどん格安になっていきますし、これからはかなり競争が激しくなっていくでしょうね」

◆アイドルと1対1になり、好みのポーズが撮影できる至福の時間

さて、50分におよぶ撮影は、汗だくになったが、なんとか終えてさまざまなポーズの「お気に入りショット」を撮影することができた。

こうして自分で体験してみると、「アイドルと1対1になり、なおかつ好みのポーズが撮ってもらえる」というにはなかなかに至福の時間だろう。

今、ロリータアイドルの撮影会で、「抱っこ撮影」が問題となっているようだが、そんなのは論外だ。一部のルールを守らない人たちのおかげで、全体が批判されては困る。

かつて、90年代に何度めかのレースクィーンが出てきたときに、筆者はライターとして鈴鹿サーキットや筑波サーキットに乗り込み、鈴木史華や須之内美帆などのスターをリアルタイムで撮影&インタビューした。

基本的に気が合うスタッフたちと一緒だったので、楽しいロケツアーだったが、外でレースクィーンを撮影していると、私たちスタッフの横から、後ろから、あるいは私たちの前をさえぎるようにして、一般のファンが撮影を始めるので「すみません、目線が動くのでどいていただけますか」と、ファンに叫ばなくてはならなかった。もちろん、ファンだから撮影するなとは言えない。

そうしてファンは「撮影したがるもの」なのだ、ということがいやというほどわかってきた。

◆アイドル撮影会は「先物買い」感覚

アイドル撮影会を始めた人たちは、そんなファン心理をよくわかっていたと思う。ソフマップでよくアイドルがDVDや写真集の発売に引っかけて、撮影会を行うが、常に人であふれかえっている。

撮影会の様子をニコニコ動画などで中継したほうがいいと思うが、そうなるとハプニングが起きたときに困るから、難しいだろうなと思う。

いずれにせよ、ファンとアイドルが近くなる、という点で撮影会はとても有益だ。筆者は、「AKB48」の初期を知っているが、撮影会でなかなか人が集まらずに、大島優子や前田敦子が自ら秋葉原の街頭に出て、チラシを配っていたのを覚えている。つまり、現時点で、スターの卵で初々しいかもしれないが、将来的に「大スター」になるかもしれない、という点で、アイドル撮影会は「先物買い」をしている感覚になるのである。

好みのモデルがいたら、ぜひ撮影会に出かけてみていただきたい。その至福の時間に、あなたは幸福を感じるにちがいない。

(小林俊之)

 

大智そあちゃん(ピンキーガール撮影会より)

大智そあちゃんは、新宿シアターミラクルで5月8日から10日まで
「Anna Produce心のプリズム vol.6 闇をときなす音色」
という舞台に出演予定だ。(企画・制作 プリズム)

◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告
◎「書籍のPDF化」を拒み、本作りを殺す──経産省の「電子書籍化」国策利権

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』目下話題の6月号発売中!

 

見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告

5月3日、横浜の「みなとみらい公園」で3万人を集めて行われた「5・3憲法集会」に行ってきた。公園内にブースが出ており、反原発で知られる活動団体「たんぽぽ舎」の横で、僭越ながら、鹿砦社の反原発マガジン「NO NUKES voice」や月刊「紙の爆弾」などの販売のお手伝いを微力ながらさせていただいた。

したがって、耳に入ってくる大江健三郎や落合恵子、香山リカなどのスピーチは断片的にしか聞こえず、残念だったが、それでもなお、「平和」と「命の尊厳」を基本に、日本国憲法を守り、活かすということ。そして、集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対する、というスタンスは、賛同すべきものだ。

もちろん、ひとりのジャーナリストとして、改憲を含めて憲法について踏み込んだ答えを今、出すのは早計だと考えている。鹿砦社において、憲法について語る有能で知己をもつ先輩はたくさんいるし、ここで僕が叫んでも若さゆえに誰も聞く耳をもたないと思うので、声高に「憲法を守れ」と一席ぶつもりはない。ただ、僕は僕の経験の中で憲法を語ろう。

5月3日、横浜「みなとみらい公園」での「5・3憲法集会」にはおよそ3万人の人々が集まった

◆天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負ふ(憲法第99条)

まず、小学校3年生のときに、わりとリベラルな担任の教師のS氏は「日本には憲法九条があるから、戦争を絶対にしないのである」と何度も繰り返し言っていたのを強く覚えている。その説明は、もはや叫びに近かった。

もちろん、憲法は国の、政府のものであり、国民は基本的には追従する立場だ。どんな法律の入門書にも、たとえば行政書士の受験参考書にもそう書いてある。

憲法99条の条文はこうだ。

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

つまり99条には、大臣や国会議員や裁判官に対して「憲法を尊重せよ」という義務が定められているのだ。ここで留意すべきは、国民にはこの義務を課していないということになる。つまり99条は国民ではなく、国家権力の担い手に「憲法を尊重し、 擁護せよ」と命令しているのだ。だから憲法の基本原理である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つを遵守すべきは、一次的には国家権力だ。

だから「原発推進」は、たとえば僕に言わせれば「国民主権」に反している。大間原発ひとつとってみても、あれだけ反対者がいるのに建設が始まろうとしている。そう、誰か登壇者がいみじくも語ったが、私たちは実は「憲法」を使いこなしていない。

それなのに現政府は、改憲だと言い出しているから目も当てられない。今、憲法は戦後最大の危機にあると言ってもいいすぎではない。もはやうだるような5月の暑さの中で、たくさんの人がこの集会に集まった背景には、「私たちの憲法が危ない」という危機感が現前としてあるように思う。

多くの人は脱原発社会で、平等な社会をめざし、貧困・格差の是正を求めている。もちろん僕もそうだ。それなのに、私たちの声は、たとえば国会の議場には届かない。

◆見直すべきは「選挙制度」であり、憲法ではないと思う

4月の地方統一地方選挙で、全国規模で考えれば「無投票当選」が300人以上出たという。だれしもが政治家になりたがらないのだ。民主主義が崩壊の危機にある。

このままでは「5人も殺しましたが、悔い改めてこれから政治の世界でがんばります」「ヤクザですが、市民のために頑張ります」という御仁が出てきても、理論的にはおかしくはない。基本的には、禁治産者でない限り、年齢さえクリアしていれば選挙には誰でも出れる。もちろん日本国籍があって供託金を払えればの話だ。

「このままでは、三権が少なくとも崩壊するね。まあ日本を動かしているのは行政府でも司法府、立法府でもなく、官僚なんだけどさ」と、全国紙の記者がつぶやいた。その通りだと思う。

自民党はごらんのとおりのていたらく。野党ももう機能しない。

たとえば民主党は、東京の千代田区の選挙で区議の定数が25もありながら、ひとりしか出せないていたらくだ。 そのひとりの候補者でさえ、連日のように海江田元代表がそこかしこに応援に来ていた。過保護にもほどがあるし、民主党も地に堕ちた。

さて見直すべきは「選挙制度」であり、憲法ではないと思う。政府は完全にはきちがえている。

たとえば私が住むさいたま市北区も無投票で候補者は全員が当選だ。ところが人口は1万4000人を超えている。1万4000人の行政を、たとえば無投票の候補者に全面的にゆだねてしまっていいのだろうか。

話を「5.3憲法集会」に戻せば、実に多くの方が鹿砦社やたんぽぽ舎の書籍を買い上げてくださった。心より御礼したい。

脱原発社会の実現を目指す市民ネットワーク「たんぽぽ舎」のブース

◆安倍政権の人権感覚は「オウム真理教」以下

閑話休題。なぜ「みなとみらい公園」でこの憲法集会は行われたのだろうか。聞けば毎年、いくつかの団体がバラバラに行っていたのが、今年は「政府が憲法改正などと言い出したから」、合同で行ったのだという。

問題の根っこは、みんなつながっている。米軍基地の普天間基地から辺野古への移設に反対している人たちが船上で海保に暴力に遭っている。 これも日本政府の傲慢だ。

僕はオウム真理教が大嫌いだ。歴史から抹殺したくなるような事件をいくつも起こしてきた連中だ。だが麻原という男は、ひとつだけ的を得ることをあるセミナーで言った。

「数が多いほうが正しい。こんなバカな話はない」

そう思う。

麻原でさえ、到達した事実に、安倍某という首相は気がついていない。

現在の政権の人権感覚のなさ、盲目ぶりは、僕に言わせれば「オウム真理教」以下のしろものである。なぜ「憲法集会」は、みなとみらい公園で行われたのだろうか。横浜は世界へと通じる船の玄関口だ。戦争も原発も、貧困も、差別の問題も、もはやグローバルに論じるべきだ。だからこそ、みなとみらい公園で憲法集会が開催されたのではないか。そんな気がするのだが考えすぎであろうか。

(小林俊之)

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