ノーベル賞科学者がようやくたどり着いたドクター・中松の境地

青色LEDの開発でノーベル物理学賞の受賞が決まった米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村修二氏が文化勲章を受章した会見で次のように発言し、元勤務先の日亜化学工業と仲直りしたい意向を表明したそうだ。

「受章を機に、(社員だった)日亜化学工業と関係の改善を図りたい」(時事通信)
「日亜がLEDで世界をリードしたからこそ、私のノーベル賞につながった。小川英治社長、青色LEDの開発をともにした6人の部下、全社員に感謝したい」(スポーツ報知)

中村氏といえば、2004年、日亜社に発明の対価を求めた特許訴訟の第一審で約200億円の支払い命令を勝ち取って話題になった。これに日亜社側が控訴、翌年、最終的に日亜社が約8億4000円を支払うことで和解が成立した際には、失望感をにじませて不満のコメントを言い連ねたものだった。しかし10年近い年月を経て、かつて身を置いた会社から受けた恩義の大きさに改めて気づいたようだ。

残念ながら日亜社側は中村氏と仲直りする気がまったくないようだが、筆者はこのニュースを聞き、9年近く前に会った、ある人のことを思い出していた。その人の名は中松義郎(86)。「ドクター・中松」の異名でお馴染みの発明家だ。

取材の際にもらった中松氏の2003年9月発行の著書「ドクター・中松の発明伝説」(本体3000+税)

◆商社マンだったドクター・中松氏

中松氏と会ったのは2006年の2月初めのことだった。筆者は当時、ある夕刊紙で著名人に無名時代を振り返ってもらうインタビュー記事を毎週一本書かせてもらっており、その企画の一環として中松氏にも少年時代やサラリーマン時代の話を聞かせてもらったのだ。

国内では中村氏と同等以上に有名な発明家である中松氏だが、東京都知事選に何度も立候補するなど言動が破天荒なため、世間では奇人変人のたぐいと見る向きもある。だが、その経歴は華麗である。

東大の工学部を卒業後、最初に選んだ進路は大手総合商社の三井物産。学生時代から種々の発明に取り組んでおり、卒業後はメーカーで技術者になることも考えたが、「エンジニアではなく、ブン(文)ジニアになるべき」という考えからの選択だったという。

三井物産入社後はヘリコプターを売る部署に。当時は軍用でしかなかったヘリコプターに自ら発明した農薬散布装置や空から安全に電線を張る装置をつけ、農業関連の会社や電力会社に売りまくり、ベストセールスマンになったという。

「東大時代に開発したフロッピーディスクが話題になり、会社の株が1日に14円上がったこともありました。幹部に『中松室』をつくるから発明に専念してくれと言われ、女子社員にもモテモテでした」

そう語る中松氏は当時すでに70代後半だったが、気さくで、暖かみのある人だった。話の受け答えなどから常人離れした頭の良さを感じさせる人でもあった。29歳で三井物産から独立し、実業家兼発明家としての人生を歩んだが、取材の際に訪ねた経営する会社「ドクター中松創研」の建物は大変立派で、思ったより多くの従業員が働いていた。経済的成功を収めていることは間違いなかった。

◆「発明の基本は愛」

では、冒頭の中村氏のニュースに触れ、筆者が中松氏のことを思い出したのはなぜか。それは取材の際、辞めてから半世紀近くも経つ三井物産に対し、「ビジネスの基本を教わった」「自分の重要なヒストリーの一部」と強い愛着を語っていたからだ。中松氏はちょうどこの頃、中村氏ら研究者や技術者が勤務先の会社に対し、発明の対価を求める例が増えていた風潮について、こんな違和感も口にしていた。

「発明は儲けるための道具ではない。発明の基本は愛なんです」

実際、中松氏が麻生中学2年生の時、自ら手続きをして最初に特許をとった「無燃料暖房装置」は、冬の時期に寒い台所で働く母親を楽にさせたいという思いで発明したものだったという。

ノーベル賞を受賞した中村氏と、イグ・ノーベル賞を受賞した中松氏。どちらが発明家として優れているのかは、筆者にはわからない。しかし、今回の中村氏に関するニュースを見る限り、中松氏が子供の頃から自然に「発明の基本は愛」という考え方を身につけていたのに対し、中村氏は人生の終盤になり、ようやく同じ境地にたどり着けたようにも見える。

中松氏は今年6月、前立腺ガンに冒されて2015年末までの命と宣告されたことを告白。現在はガンを直すための発明に励んでいるそうだが、良い結果が出て欲しい。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

本日発売!『紙の爆弾』12月号!公明党「結党50周年」─700万「創価学会票」で自公融合15年など注目記事満載です!

 

《大学異論16》京都大学が公安警察の構内潜入を拒否するのは100%当たり前!

11月4日、京都大学構内に潜入していた川端署の公安警察が学生に発見され、学生が取り押さえ身分確認などを行うという諍いがあり、京都大学当局は警察の行為を(学生の行為ではない)「極めて遺憾」と表明した。学生が潜入した公安警察を取り押さえたのは「極めて当然な行為」である。

「大学の自治」、「学問の自由」などについてはこれまでもこのコラムで触れてきたが、その究極は「大学の国家からの自由」であり、国家の暴力装置たる警察を大学が拒絶するのは、原理的に自明過ぎるほど自明である。

近年、こういった大原則についての不理解や、国家の側からの締め付け、更には痴呆化した大学が自ら警察を学内に招き入れるなどという、自殺行為が何の疑問もなく横行しているので、京大生の今回の行為を正しく理解できなかったり、奇異な目で見る向きもあるようだ。だが、大学と警察の間に本来、親和性はないし、あってはならないのだ。

しかも今回、京大に潜入した公安警察はその数日前に行われたデモで京大生が逮捕されたことに対する抗議集会を探りに来ていたというのだから、学生に拘束されたのは、あまりにも当たり前である。デモにおける京大生逮捕(公務執行妨害)がでっち上げであるにもかかわらず、警察とはかくも陰湿な手を使い学生や大学を監視、弾圧するのである。

小出裕章=京都大学原子炉実験所助教

◆小出裕章=京大助教に見る「筋の通し方」

同じ京都大学に在籍する原子炉実験所の小出裕章助教は先ごろ前首相菅直人の訪問を打診され、それを受けたものの、SPが付いてくると分かったため、大学の構内に入れることをよしとせず、勤務終了後に学外で菅直人と会ったそうだ。これも研究者として、「極めて当然な行為」である。

また、小出助教が暮らす職員宿舎は手狭で老朽化しているために、改築工事を行うとの提案が過去あったそうだ。改築すれば1軒当たりの面積も1.5倍程度に増えるので利用者は喜んだが、からくりがあった。同じ国家公務員ということで、「京大教職員宿舎」にもかかわらず、海上保安庁の職員を入居させたいと大学当局は打診してきたという。これに対し、小出助教は「海上保安庁職員はいわば海の警察官だからそんなものは認めることができない」と発言し、住民達も同意したので結局改築自体が見送られることになった。このような行為や姿が大学としては当たり前なのだ。

◆お隣の同志社は学内に交番を設置した恥ずかしい大学

京都大学の面する「今出川通」を西に1キロ強の位置に同志社大学がある。この大学はあろうことか、昨年からその敷地の一部を交番に提供している。つまり大学の敷地の中に警察を常駐させているのだ、知を探求する大学の姿勢として「最低レベルの大学」と言わねばならない。交番設置にあたり、大学内では教職員組合が大学執行部に質問を行った程度の議論はあったようだが、はっきりとした反対運動もなく「国家権力の暴力装置」を学内に招き入れている。恥ずかしい大学だ。

原発事故後に大学で原発推進の講義を行うエセ学者に抗議をしたために「無期停学」処分を下したり、大学に対する学生の抗議に対して「営業権」という、腰を抜かすような理屈を持ち出したり、学生弾圧専門の体格の良い専門家を用意して平然と暴力を振るったり、学生の抗議を見えづらくするために不要な工事を行ったり、公安警察を平然と学内に招きいれたりする腐りきった大学がそのうちに出てくるであろう。

と、未来形で語れないのがこの時代の悲劇だ。交番を設置したアホな大学として同志社をあげたが、西の横綱が同志社であれば、東の正横綱は「法政大学」である。法政大学の教職員は今すぐ京都大学に出向き、大学の根本を学んでくるべきだ。同志社大学の教職員もお散歩がてら京大へ1日研修に赴いてはどうか。

私は以前、大学職員時代に公安警察と懇意にしていた旨のコラムを書いた(「公安警察と密着する不埒な大学職員だった私」)。それは全て「警察から情報を引き出し、それを学生に与える」のが目的のゲリラ戦法だった。個人のスタンドプレーともいえる。警察(公安)を騙しても、学生を騙すことは金輪際しなかった。私の行為は決して褒められたものではないけれども、大学存立の大原則は踏み外さないよう意識した。

◆卑劣な反動の矢に当局が屈した時に大学の存立意義は終焉する

京大生と京大の「極めて当然な行為」に対して、いずれ反動の矢が飛んでくだろう。

東大ポポロ事件」のように。(※Wikipediaの記事の中には一部正確さを欠く部分があるが大筋はご理解いただける)

そして飛んでくる反動の矢は「ポポロ事件」とは比べ物にならないくらい卑劣で激烈なものだろう。しかしそれに抗することを放棄しては大学の存立意義は終焉する。

私は京大生の行為を「極めて当然な行為」と評価する、褒め称えない(本音を言えば心の中で喝采しているけれども)。何故か。京大には「警察を学内に入れる際には当局と学生の了解がなければならない」とする内規があり、今回の行為はその内規に沿うもので、言わば「ルール通り」の行動だからだ。

京大にこの内規がなければ、目下、学生がやられ放題に弾圧されている法政大学のように京大の学生たちも簡単に警察に売り飛ばされたであろう。京大だって当局がいつ態度を翻すかは油断ならない。京大には内規があるものの、今や良心的な教職員は少数派だからだ。この事件の行方から暫く目が離せない状況だ。

▼田所敏夫(たどころ・としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。

『紙の爆弾』最新号は明日7日発売です!

《脱法芸能17》ジミ・ヘンドリックスが強いられた「奴隷契約労働」

「芸能界の暴力汚染」は、日本だけに見られる現象ではない。エンターテインメントの本場であるアメリカもかつては暴力が跋扈していた。

フランク・シナトラがイタリア系マフィアとの黒い噂が絶えなかったし、ジミ・ヘンドリックスは暴力に怯えての演奏を余儀なくされた。

Jimi Hendrix "Electric Ladyland"(1968年)

1960年代末、世界でもっとも有名な黒人ミュージシャンとなっていたジミには、人種を理由に多くの団体が関係を持ちたがっていた。その中には黒人民族主義運動を急進的に展開していたブラックパンサーも、マフィアもジミに接触しようとしていた。

ジミは黒人でありながら、ファンのほとんどが白人であり、同胞の黒人社会では今ひとつ受け入れられなかった。また、黒人系の団体から「ジミは黒人社会に借りがある」と主張した。

◆ジミヘンを銃口で脅し演奏させたハーレムのギャング団

1969年夏、ニューヨークの黒人街、ハーレムのギャング団が、ジミを脅迫して演奏をさせようと企て、ジミの承諾も得ないで勝手にコンサートを企画して、そのポスターを街中に貼っていた。

ある時、ジミがこのポスターを街で見かけると、コンサートの主催者のひとりであるギャングが仲間とともに現れ、銃を持ち出し、銃口をジミに突きつけた。

これがきっかけとなり、ジミは黒人仲間から「自分からハーレムでのコンサートに出演しなければ、無理強いされることになる」と説得され、ハーレムでのコンサートへの出演を決めた。このコンサートは入場無料だったため、出演料も出ず、結局、レコード会社が寄付金を出してジミのギャラをまかなうことになった。

翌年の夏のツアーでも、多くの黒人系の過激な政治団体が「暴動を起こされたくなければ売上を引き渡せ」と要求してきた。主催者側は団体に寄付をしたが、結局、何千人もの抗議者たちが入場料を支払わずに会場になだれ込んだ。

◆マネージャー=マイケル・ジェフリーが強いた奴隷契約

ジミを暴力で脅したのは、黒人だけではなかった。

ハーレムでのコンサートからしばらくした後のある晩、ジャムセッションの後で、コカインを調達するため、見ず知らずの人間と店を出たジミは、そのまま誘拐され、マンハッタンのアパートで監禁された。

誘拐犯は、ジミを解放する条件として、マネージャーのマイケル・ジェフリーにジミとの契約を引き渡すことを要求した。ジェフリーは、彼らの要求には応じず、マフィアを雇って犯人を捜させ、事件が起きて2日後に、ニューヨーク州郊外のショーカンのジミの自宅でジミを保護することに成功した。あまりに奇妙な事件だった。

後に、ジミのバンドのメンバーでベーシストを務めていたノエル・レディングは、「ジミが他のマネージャーを捜そうとするのを思いとどまらせるために、ジェフリーは誘拐事件を仕組んだのではないか」と語っている。

その誘拐事件の数週間前には、ジェフリーがジミの自宅にやってきて、ジミと仕事の話をしている間、ジェフリーの運転手が拳銃を取り出し、庭の木に向かって発砲し始めるということがあった。

その時、ジミの家に住んでいたミュージシャンのジュマ・サルタンは「ジェフリーのその訪問は、自分がボスだということをジミに見せつけることが目的だったのではないか」と語っている。

権力を持ったジェフリーはジミを半ば強引に働かせ続けた。70年7月、ジミは取材で次のように話している。

「僕はまるで奴隷だった。仕事ばっかりだ。初めは楽しかったけど、今はまた人生を楽しみたいんだ。僕は引退するよ。これからは娯楽が優先だ。仕事はもううんざりだよ」

その直後、ジミは映画撮影のため、ハワイに行ったが、浜辺で足を怪我し、その治療のために滞在が延び、2週間の休暇を得た。実際の怪我に必要な手当より大袈裟に包帯を巻いて、ジミが重症を負ったことを証明するための写真を撮影し、ジェフリーに見せる必要があったという。ジェフリーはジミを支配していた。

69年10月ジミは、黒人ミュージシャン2人と組んで「バンド・オブ・ジプシーズ」を結成するが、ジェフリーは全員が黒人のバンドに難色を示していた。

70年1月28日には、ニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンでバンド・オブ・ジプシーズとして出演したが、2曲演奏た後、急にジミの体調が悪化し、公演は中止となった。その理由はコンサートを妨害しようとジェフリーがジミに大量のLSDを盛ったからだと、ドラムのバディ・マイルスは主張した。その数日後、ジェフリーはバディを解雇し、バンド・オブ・ジプシーズも解散した。

70年9月18日、ロンドンのホテルに滞在していたジミは、ワインを飲みながら睡眠薬を服用したために中毒状態となり、睡眠中に吐瀉物で窒息し、帰らぬ人となった。デビューからわずか4年、27歳での死だった。

その3年後73年3月5日、ジェフリーはフランスの航空管制室のストライキ中にマジョルカ発ロンドン行きの飛行機で向かう途中、他の飛行機と接触事故に遭った。飛行機はナント市近郊で大破し、乗客は全員死亡したとされるが、レディングは著書の中で、「ジェフリーは実際には飛行機に搭乗しておらず、生存しているのではないか。多数の目撃証言もある」などと主張しているが、真偽は不明だ。

▼星野陽平
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

《芸能界の深層》がまるごとわかる6刷目!『芸能人はなぜ干されるのか?』

 

《大学異論15》北星学園大学を追い詰めた「閾下のファシズム」

先に北星学園大学の英断を讃えエールを送る駄文を書いた(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=4938)。それから1月もたたないうちに残念至極、しかしほの暗いメタファーに満ちた記事を新聞に見つけた。見出しは「北星学園大学 朝日元記者契約『更新しない』」だ。記事によると10月31日同大学の田村信一学長が記者会見を開き、「朝日新聞元記者との契約を更新しない方向で検討をしていることを明らかにした」そうだ。その理由として「学生の不安が大きい上に、警備など多大な危機管理費用の問題もあり「臨戦態勢を続けることは体力的に厳しい」と判断したとされている。最終的には学内手続きを経て理事長と学長が判断するという。北星学園大学のホームページには「本日、一部メディアに報道されたことについて」との表題で大学の見解が示されている。まだ最終決定ではない、との趣旨だ。
http://www.hokusei.ac.jp/images/pdf/20141031.pdf

新聞記事によると10月31日には不審な白い粉が入った封筒が大学に届き、警察が威力業務妨害で調べている最中であるという。10月24日には脅迫犯の一人と思われる男が逮捕されたことを受けて、学長が「本学に対する脅迫電話の容疑者逮捕について」と題した学長見解も示されている。長きにわたる可視、不可視の嫌がらせに北星学園大学が内部でどれほど疲労し尽したことか・・・。
http://www.hokusei.ac.jp/images/pdf/20141024.pdf

◆大学は自由であればあるほど、結束や団結が難しい

先の北星学園大学学長田村氏の英断に賛同し「負けるな北星!の会」なる団体が結成されていたそうで、新聞記事によると「『犯人の要求を呑むことに等しい。北星学園大学だけではなく、みんなが言うことを聞くと思わせてしまう』と反発している」そうだ。この新聞記事の信憑性がどの程度か(地方紙だからおそらく共同通信の配信だろう)を吟味する必要があるが、「反発」という表現には違和感を覚える。「落胆」や「同情」ではないのか。また有名な大学教員なども多数名前を連ねているが、彼らは声明を出す以外に何か具体的な援護射撃をしたのだろうか。

かくのたまう私自身、北星学園大学の英断にエールを送ったものの、大学へ電話をかけ、担当職員に断固支持と尊敬の念を伝えただけで、自身の何かを賭けて支援活動を行ったのかと言われればそうではない。「安全圏」から新聞紙ほどの触感もないパソコン上の記事で賛同の意を示しただけである。

私は自身を含めて安全圏からのみ発言し、何の行動もとらない人間が必至の戦いの末に苦渋の結論を導き出した判断を批判する資格はないと考える。闘ったことのない人間ほど勇ましい言葉を吐く。

大学は自由であればあるほど、結束や団結が難しい。それは多様な価値観を認めることの裏返しでもあるからだ。私は大学職員時代、学外からの攻撃や嫌がらせに対して、大学が「組織」として如何に弱腰であるかを幾度か経験した。だから北星学園大学の苦渋の判断を無碍に批判できない。数か月以上にわたる様々な攻撃嫌がらせ、脅しが続いていれば普通の大学は直ぐにギブアップしていただろう(先の手塚山学院大学のように)。

◆いまは1944年なのか?──「横山健の動画」に感じた眩暈と嘔吐感

しかも時代が時代だ。政府は「日本政府の名誉回復」を年内に行いたいと言っている。名誉回復?何の?答えは「従軍慰安婦報道誤りにより傷つけられた日本国家の名誉」なのだろう。更なる腹の内は、第二次大戦でアジア侵略を行った事実のすべてを消し去るか、あるいは「欧米列強からの解放」と宣言したいのだろう。今何年だった?2014年だ。本当か?1944年じゃないのか?

さらに、「閾下のファシズム」はあなたの住んでいるご町内の隅々まで、既に浸透している。「原発反対」とか「戦争反対」を語る言葉や行動の中にさえ、「ちょっと失礼しますね」とばかりに何食わぬ顔をしてとんでもない因子が上がり込んできてる。例えば以下に紹介する「横山健」という人を私は知らなかった。ある人が(その人は「脱被曝」を掲げて地方選挙で市会議員候補者として出馬予定のミュージシャンを応援している)感動を持って「横山健が日の丸を振るようになった理由」として紹介いていた。映像の長さは13分45秒。やや長いがご覧頂きたい(告白すれば私は眩暈と嘔吐感を押さえられなかった)。

私は「横山健」を批判しない。いや、正しく言えば、怖くて批判などできない。13分45秒の間、胸苦しさとともに私を支配したのは絶望的な恐怖感だ。体が震えていたと思う。本当に怖い。本心もうこの国から逃げ出したい。「被災地支援」と「原発反対」と「日の丸を降られる快感」が「横山健」には等価なのだ。マスコミに強制された「絆」のように押しつけがましくなく、咲きもしない花を歌う「花が咲く」のように嘘くさくもなく、若者が心地よく踊るライブに掲げられる「日の丸」。会場で降られる「日の丸」そしてそんな彼に感動しながら「脱被曝」候補の応援をする「良心的なボランティア」達。これらが表層上何の矛盾もなく横並びに手をつなぐ。

冗談じゃない。

「原発反対」、「被曝反対」の若者が歓喜しながら日の丸を振る姿の裏の心性。幾つかの穏やかな不可逆的変換を経て、北星学園大学にメールや電話で攻撃を仕掛ける行動へと変異する「閾下のファシズム」とそれは無縁であろうか。誰か「絶対そうではない!」という答えを教えてくれないか。

「右も左もない」、「国を愛して何が悪い」、「国旗だから」。反論を封じ込める優しさが根拠となった、あやふやな社会正義。議論の領域を閉ざす感情的な絶対正義。それらが「悪性細胞」として国家に寄り添う実際暴力を支える細胞核をなす。本人たちには悪意などは全くない。それだけに厄介なのだ。だが待て、「悪性細胞」は私の中には皆無だと言い切れるのか。日常生活の一切においてファシズムと完全絶縁状態を保ち得てるだろうか。

北星学園大学事件は私たちひとりひとりに「本当にお前大丈夫なのか?考えていることと行動が乖離していないか?否、本当に充分に考え抜いたのか?調べつくしたのか?」と再質問を投げかける試薬なのだ。

 

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しない問題をフォローし、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心が深い。

 

タブーなき『紙の爆弾』は毎月7日発売です!

 

《屁世滑稽新聞14》火山の近所の原発再稼動で「地方早世」……の巻

屁世滑稽新聞(屁世〔へいせい〕26年11月3日)

火山の近所の原発再稼動で「地方早世」……の巻

情報ライブ「ミエネ屋」オープニング
https://www.youtube.com/watch?v=pxCRKPP8FCg

ミエネ 「こんにちワ。情報ライブ“ミエネ屋”です。きょうは冒頭からトンデモない事件がとびこんできました。さっそく藤邑(ふじむら)レポーターから伝えてもらいましょう。藤邑さん、藤邑さん!」
藤邑レポーター 「はい!藤邑です。わたしは今、じつは福岡県庁に設置された“桜島大噴火臨時対策本部”の前におります。けさ午前3時まえに突然おきた桜島の大噴火は、観測史上かつてない規模のものでして、我々は鹿児島の現地に近づくことができません。対策本部もこのように九州北端の福岡県庁に置くしかないという、とてもきびしい状況です」
ミエネ 「……で藤邑さん、鹿児島の現地どうなってるかわかります? いちばん気がかりなのは川内(せんだい)原発でっせ。このあいだ地元の議会やら役場が原発の再稼動を認めて、九州電力も政府も大喜びしたばかりだったやないの。その原発、今朝からの噴火でドナイなってんの?」
藤邑レポーター 「ミエネさん、まず川内原発の様子ですけど、この写真みてください。原発がずっと運転を止めていたんで、その間はこんなふうに、風光明媚でのんびりした景色が広がっていたんですよ」

九州電力が運転休止していた当時の川内原発。
地平線のかなたに桜島がみえる。(薩摩川内市
の川内川河口をのぞむ海上から航空撮影)

ミエネ 「ホンマに絶景やんか! デッカイお便所みたいなもんが、手前の海辺に立っていなければ、美しい海と山にめぐまれた自然の楽園なんやけど、今となっては残念なことしたナア……」
藤邑レポーター 「次にこの写真ですが、これは先日の地元の再稼動容認をとりつけて、浮かれていたときの川内原発の様子です」 

 

再稼動決定を祝う川内原発。右から1号機と2号機。
九州電力では原発に紅白水引幕をたらし、くす玉で
飾り立てて、再稼動の決定を歓迎した。

ミエネ 「なんやの? これ? 河内の盆踊りのやぐらみたいやんか。電力会社や政府にしても、原発を受け入れた地元の自治体にしても、ひょっとして原発を“大仏さん”とか“七福神”みたいに思うてヘンか? なんや科学技術というよりも、ご利益をくださる舶来の神さまみたいに思うてんとチャウ?」
藤邑レポーター 「ミエネさん、私もじつは同じことを感じておりました。大都市から離れた辺鄙(へんぴ)な場所で、地元の政治家とか有力者のホッペタを札束で叩いて飼い慣らして、それでこういう大きな迷惑施設を建てさえすれば、地元も潤(うる)おうからケッコウなことであると……なんだかそういう欲ったかりのスケベ心が、この川内原発にはあからさまに見えるのですよ。在来仏教の権勢だけでなく、その時代時代のパトロンの権勢をも世間に見せせつけるウラ心があって、古来から日本のあちこちに建てられきた大寺院などを、この原発の間の抜けた風体から連想してしまいます……」
ミエネ 「ナア藤邑はん、あんたテレビ本番でそんなこというて大丈夫なんか?」
藤邑レポーター 「ミエネさん。この番組はなんていう題名でしたっけ? ミエネ屋ですよ、みえねヤ! スポンサーとか東京のナベツネに因縁つけられたら『そらスンマヘン、なんも見えね~や(笑)』ってシャレてゴマカしゃいいんですよ」
ミエネ 「藤邑はん、アンタ日本でいちばん勇敢なレポーターやワ。僕が保証したる。……ところで今、川内原発はどないなってんの?」
藤邑レポーター 「我々は現地に近づくことができないので、この目で川内原発の現状をみるのは不可能です。しかしここに、川内原発の被災後の姿を米軍が無人偵察機グローバルホークで高々度から撮影した写真があります。先ほど政府の福岡対策本部で発表されたばかりのものです」

桜島の大噴火で、川内原発も大量の火山灰や火山弾に襲われ、
長年の不安が現実のものとなった。川内原発はたちまち制御
不能におちいり、1号機・2号機ともに爆発炎上を起こした。

ミエネ 「……これはひどい。九州の南部一帯に噴火の被害が及んでいることが、一目みてわかります。……そして藤邑さん、我々が恐れていたことが、ついに起きてしまいましたね」
藤邑レポーター 「……ええ。そのうち大噴火が起きてトンデモないことになるって、みんながあれほど反対したのに。一部のバカ野郎のせいで、国って簡単に亡びていくものなのかもしれませんね」
ミエネ 「フクシマの二の舞になった感があります。今回は原発から噴き出した“死の灰”が、どんなふうに飛散していくかを予測する“緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム”のSPEEDI(スピーディ)が動いていませんから、もうこんな写真みちゃうと絶望的な気分ですね」
藤邑レポーター 「ごらんのように、すでに川内原発は1号機も2号機も爆発炎上を起こしているので、被曝の危険性が高いから人間が操縦する偵察機で接近することはできません。そしてそもそも、桜島から噴出した非常に粒のこまかい火山灰が、大気中に高濃度で漂っているので、航空機が近づくこと自体、非常に危険です。……ですから無人偵察機で、非常にたかい高度から、望遠写真で眺めるしか手がありません」
ミエネ 「そういえば2011年の東日本大震災で福島原発が爆発炎上したときも、米軍のグローバルホークは事故翌日から原発の上空を飛んで監視していました(https://www.youtube.com/watch?v=AC8ORgWDelw )。ところで藤邑さん、対策本部はなんでアメリカ軍の航空写真をあっさり公開したんやろか? 日本政府ってふつうそういうの隠すでしょ?」
藤邑レポーター 「今回は隠しきれないと観念したんじゃないですか?(笑)」
ミエネ 「さよか(笑)。災いが大きすぎて、小手先のウソは通じないと踏んだかな……。で、藤邑さん、福岡の対策本部でほかに発表されてることありますか?」
藤邑レポーター 「鹿児島現地や原発との通信も途絶していますし、避難の状況もまだつかめていません。今回の大噴火は、自然災害が我々の“想定”をやすやすと超えてしまうことを、こんなかたちで教えてくれました。」
ミエネ 「わかりました藤邑さん、また何か動きがあったら教えてください。藤邑さん、くれぐれもからだに気いつけてぇヤ! そして被災者の皆さまのご無事を祈りましょう。……コマーシャルのあとは次のコーナーです」 

★CM(あいさつの魔法、ACジャパンhttps://www.youtube.com/watch?v=zBqekh3glxA
★CM(瀬戸内寂聴 ACジャパンhttps://www.youtube.com/watch?v=0jjlf2KXa1E

 

ミエネ 「では次のコーナーに行きます。ホントは今日なにもなければ、これが冒頭やったんやけど。予期せぬ災害が起きてしまったんで……。スタンバイしてはった餅ヶ瀬(もちがせ)さん、エライ待たせてすまんナァ。どうぞ思う存分レポートたのんますワ!」
餅ヶ瀬レポーター 「ハイ! ミエネさんに過大な期待をかけられてしまいましたが、芸能畑ひとすじのワタクシ餅ヶ瀬が、きょうお伝えするのは永田町のエライ人たちの“知能検査”……ということになってしまいました(笑)」
ミエネ 「餅ヶ瀬チャン、IQテストを持って議員会館へ行ったんか?」
餅ヶ瀬レポーター 「いえいえ、ミエネさん、ちがうんですよ。『ちほうそうせい』が何を意味するのか、安倍政権の大臣たちに単純に聞いてまわっただけなんですが、わたくしの想定外の答えがつぎつぎと返ってきたので、急きょ“お笑い企画”に変更したんです」
ミエネ 「ホンマでっか? それではイントロ映像から行ってミヨっ!」 

 安倍晋三首相は「ちほうそうせい」を行政の柱にすえ、
石破茂を「ちほうそうせい」大臣に据えたが、この2人は
いったいどこまで言葉の意味をわかっているのだろう?

 

餅ヶ瀬レポーター 「え~、わたくしは安倍政権が売りものしている『ちほ~そうせい』というスローガンが、いったい何を意味しているのか知りたくて、安倍政権の幹部のかたがたに、その意味をたずねて回りました。その結果は、わが目を疑うものでした。まず副総理の麻生太郎さんに聞きました。『麻生副総理!“ちほ~そうせい”ってどういう意味ですか、この色紙に書いていただきたいのですが?』……」
ミエネ 「……で、麻生さん、書いてくれたの?」
餅ヶ瀬レポーター 「ハイ。評判の高い、あの立派な筆づかいで書いてくれたのですが……ガッカリでした……(笑)」

麻生太郎副総理に「ちほうそうせい」と書いて下さいと
頼んだのだが……


ミエネ 「これは重症やナァ。麻生さん、すでにボケてるんとチャウか?」
餅ヶ瀬レポーター 「サア? わたしは医者じゃないので、そこまでの判断はつきません。麻生さん一流のボケかもしれませんし……」
ミエネ 「やっぱりボケやないか(笑)。こんなボケが出せるの、昨今はお笑い芸人でもなかなかオラへんで(笑)」
餅ヶ瀬レポーター 「ミエネさん、つぎは辞任するまえの、経済産業大臣になったばかりの小渕優子さんをたずねました。これがまた大変な結果になったんです。この写真をみて下さい……」


政治資金不正流用スキャンダルが出てくるまえ、経産大臣
(辞任前)の小渕優子氏に「ちほうそうせい」と書いて
下さいと頼んだら、全然関係ないことを書いたから
ビックリした。それを撮ったら心霊写真になってたから
2度ビックリした。

 

ミエネ 「うわぁっ! お父さんの幽霊が写ってるやんか! そうか……小渕恵三さんも、娘さんを案じて成仏できへんのか。優子ちゃんはもっとシッカリせんとアカンな。おトウちゃんが死んでも心配かけてることを、この写真をみて自覚せにゃアカンわ」
餅ヶ瀬レポーター 「しかも誤字ですし……」
ミエネ 「優子ちゃんも、新米の経産大臣で張り切っていたんだとしても『稼動』を『嫁動』なんて書いちゃイカンよなぁ……。だいたい優子ちゃんのところは、前の職場の同僚だったTBSプロデューサーの瀬戸口くんが、小渕家にムコ入りして、夫のほうから苗字を変えたんだから『嫁動』すらしてへんで。早稲田はレベル低いなぁ……」
餅ヶ瀬レポーター 「つぎは政界とは違いますが、たまたま局内で上方漫才の大木こだま・ひびき師匠と出会ったので、『ちほ~そうせい』について聞いてみました」
ミエネ 「餅ヶ瀬さんもムチャしますなぁ(笑)」
餅ヶ瀬レポーター 「でもさすがベテラン芸人さんでした」


ついでに、上方漫才の大木こだま・ひびき両師匠に
「ちほうそうせい」についてコメントをうかがった
ところ、「チッチキチー!」とツッコミを入れられて、
「チー放送せえ!」と迫られた。 

 

ミエネ 「こだま師匠は“チッチキチーシール”をまだ売ってたんかいな?」
餅ヶ瀬レポーター 「大阪なんばグランド花月の地下にある“吉本笑店街”で、売られているという話を聞いたことはありますが、いまも売っているのかどうかは、ごめんなさい、わかりません。……そして最後は“ちほ~そうせい大臣”の石破さんに、『“ちほ~そうせい”ってどういう意味ですか?』って聞いてみたんですが……。散々でした(笑)」

さてどんじりに控えしは、「ちほうそうせい」担当大臣の
石破茂氏であるが、その意味を書いてもらったところ
彼はトンデモない思いちがいをしていることがわかった。 

 

ミエネ 「石破さん、なんかトンデモない誤解をしてへんか? 『早世』って“早死”するという意味なんだけど、石破さんはひょっとして“若くして出世する”ことだと勘違いしてへんか?」
餅ヶ瀬レポーター 「……それなんですけど、石破さん、かなり危ないかもしれません」 

 

藤邑レポーター 「ミエネさん、ミエネさん! 藤邑ですが、いましがた福岡県庁の桜島大噴火臨時対策本部で石破大臣が記者会見をしましたので、その様子をお送りします」


石破「地方早世」大臣、桜島の大噴火に、指を立てて
風向きを見ながら曰く…… 。・゚・(ノД`)・゚・。

 

ミエネ 「藤邑さん、ごくろうさまです。石破大臣は人差し指をたてて、風向きをみて、“人間スピーディ”を演じたわけですね? 器用やナァ、この人(笑)」
藤邑レポーター 「ミエネさん、石破大臣の“人間スピーディ”は親の七光りで東京電力に就職した娘さんから教わったそうです。指一本で“死の灰”が流れていく先を予測できるなら、たしかにスーパーコンピューターなんて必要ないですよね」
ミエネ 「人差し指一本で放射性物質の拡散を予測できる石破さんは、髪の毛をピンとたてて“妖気”を計るゲゲゲの鬼太郎みたいですね」
藤邑レポーター 「水木しげる先生の劇画ですか。石破さんが鬼太郎なら、安倍総理はヒットラーってことになりますね」

水木しげる著『劇画ヒットラー』

ミエネ 「それ言うたら、小泉政権で経済方面の大臣として重用されて、いまも安倍政権のアベノミクスの知恵袋として暗躍している竹中平蔵さんなんか、『墓場の鬼太郎』に出てくる“吸血鬼エリート”やんか」

 

水木しげる著『墓場の鬼太郎』の吸血鬼エリート

藤邑レポーター 「つまり安倍政権は百鬼夜行の化け物集団だってことですか……」
ミエネ 「藤邑くん、この企画は真夏にやっておきたかったよナァ。“安倍政権は人の生き血を吸う妖怪集団”だってことでゴッツおもろい企画になっただろうに。タイミングはずしたワ(笑)」
藤邑レポーター 「ミエネさん、諦(あき)めるのはまだ早いですよ。これからまた消費税の増税が行なわれて、やつら国民の生き血をチューチュー吸いよるからね」
ミエネ 「それ行こっ! 納涼企画で行くでぇ!……って、増税がきまるの真冬やんか! どこまでも人でなしの政権やなぁ……」
藤邑レポーター 「吸血鬼ですから、そりゃ“人でなし”ですよ(笑)」
ミエネ 「スタジオの外じゃ火山が大噴火して原発も爆発してるのに、エエんかいな、こんなことしていて?……」

(ここでCMが入る。以下略のまま終了)

 

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5279》と明記して下さい。)

《紫煙革命07》あまりにも多すぎる香料添加物(2)──開示されない添加物の実態

こんにちは。デジタル鹿砦社通信をご覧の皆様、パープルヘイズレヴォリューションのコーナーでございます。司会の原田卓馬です。

本連載では「お前、またか!」というぐらい毎度おなじみのJTコールセンターに電話してみたわけだが、そろそろ私、要注意人物としてJTの部署内で「例のあの人」になっていることだろう。某カード会社のコールセンターに長いこと勤務していた私、だいたい想像つきますよ。

セヴンスター7mmの空き箱と使いやすいBICライター

◆あなたの吸っているタバコの添加物がわかる!かもしれない…

銘柄別主要添加物リストではJTの各銘柄のタバコ葉に使用されている主要添加物を掲載しているというのだが、読者の皆さんのうち、具体例としてあげているセヴンスターの添加物リストの燃焼部分の項目のうち、パッと見て「はい、なるほどね」と納得できる方はいるだろうか。特にわけのわからない『グリセリン』、『糖類』、『プロピレングリコール』、『セルロース』、『その他たばこ添加物』について取材してみた。

── こんにちは、原田です。タバコ葉の添加物のことを教えてください。あれとこれとそれ(上記の具体的な添加物)の使用目的と原料を知りたいです。

JTの人「はい、では、あれと、これと、それと、むにゃむにゃに関して、上席から折り返しご連絡します」

── はい、お願いします。

私は別にメーカーに文句が言いたいわけではないのだが、この表示でユーザーに納得しろというのが無理難題なわけである。ただ、私は事実を知りたいだけなのだ。意味のわからない専門用語を羅列しただけで「お客様の安心」のための情報公開なんて、片腹痛いわ。がっはっはっは。

おそらく、こういった問い合わせがない前提で経営しているのでしょう。JT製品の広告は巷に溢れていますが、「○○県産、無農薬たばこ葉100%使用」なんていうような掲示は見た事がありません。無いものを有ると言えば嘘になりますが、有るものについて言わないのは嘘にはなりません。

食品添加物の表示については、農林水産省の指導に基づいてパッケージへの記載が各食品メーカーに義務づけられています。(食品表示もたいしてあてにならないですけどね)

まあとにかく、喫煙者もとい消費者のみなさんに伝えたいことは、「どうせユーザーは馬鹿だからいちいち細かいことには気付かないだろう」という姿勢の企業がもの凄く多いということです。「騙されるな」とか「なんでもかんでも疑え」とか言いたいわけじゃありません。信頼するに足るかを自分で判断して欲しいんです。これは、原発の問題と同じです。私は3.11の原発事故の一番の責任は国民にあると考えています。環境に優しいエネルギーと喧伝された原子力による電気を購入し続けた国民は馬鹿です。消費者はわがままでいいんです。欲しいものがないなら買わなけりゃいいんですけど、日本では電気とタバコを選ぶのがなかなか難しい。独占企業の高イビキを叩き起こすのはやはり消費者の購買意欲にかかわると思います。

◆うやむやなタバコ添加物の出身地

3時間経ってもJTからの折り返し連絡はないので待ち時間でああじゃこうじゃしていた。JTコールセンターの終業時間である夕方5時を過ぎてようやく、電話がかかってきた。うんじゃかんじゃと遅くなったことに関する謝罪を挟んでこう言った。

JTの人「タバコの添加物に関しては、内外の文献や外部の専門家からの指導で安全なものを使用していますのでご安心ください」

いきなりびっくりである。なんだそりゃ。何を根拠に安心できるのか。内容も明かさずに安心しろとは、馬鹿にしてるのか?冷静を装って質問を再開する。

セヴンスターの主要添加物リストより引用】

JTの人「グリセリンは保湿剤で、アルコール類です。糖類は香料で、果汁などをもとにした水溶性の糖類です。セルロースは紙巻きタバコ(シガレット)の形や構造を維持するための植物繊維です。プロピレングリコールは有機化合物の一種でアルコールの仲間ですが、保湿剤として添加しています。以上でよろしいですか?」

ちょっと待て、今の説明でわかった方は優秀な科学者か、タバコ博士か、JTの研究者だけじゃないのか?一応説明しておくと、グリセリンは無添加として販売されているタバコでもほとんどのものに使用されている添加物である。タバコ製造各社の考え方によって量の多少は変わるようだ。糖類はシガレット黎明期から使用されている一般的な香料兼保湿剤のようだが、糖類の内訳は「コーンシロップ(液糖)」、「デキストリン」、「フルクトース」、「ブドウ糖」、「コーンシロップ(高果糖液糖)」、「ショ糖」である。なんのこっちゃわからないが、産地や原料についての説明はできないという。プロピレングリコールは市販の「麺類」や「おにぎり」にも添加されている防カビ性のある保湿剤ということだ。

── 全然わかりませんけど、それぞれの原料と産地を教えて下さい。たとえばセルロースは何からできているんですか?

JTの人「セルロースは植物の繊維です。タバコの添加物に関しては、内外の文献や外部の専門家からの指導で安全なものを使用していますのでご安心ください。それ以上のことはこちらでは……」

── 何も情報開示されていないのに安心も納得もできるわけないですよ。

JTの人「機密事項になりますので詳しいことは申し上げられませんが、添加物に関しては内外の文献や……」

── トレーサビリティー(生産や流通過程の情報開示)ってわかりますよね? そういうの、消費生活していれば考えるのは当然だと思いますけど、言ってる意味わかりますか? どこで何から作られてるのか知りたいだけなんですけど。

JTの人「JTで使用するタバコ葉のうち6割が外国産、4割が日本産です。国内は30都道府県で生産を行っています。」

── それは具体的に何県ですか?

JTの人「詳しい事は申し上げ……」

── 外国産というのはどこですか?

JTの人「マラウィ、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンなどです」

── 主にこの4カ国なんですね?

JTの人「いいえ、JTで使用しているかどうかは別として、日本でのタバコ葉原料の輸入先を申し上げているだけです。他には、トルコ、ギリシャ、ブルガリア、イタリアなどが、あくまで一般論ですが、輸入先の国の一部となります。」

── 日本ではJTさん以外にタバコの製造販売はできないはずですけど、あくまで一般論だというんですか?

JTの人「はいあくまで一般論です。詳しいことは……」

── どこで採れたタバコを吸っているのかぐらい知りたいんですけど。

JTの人「放射能の問題ということですね? お気持ちはわかります。」

◆タバコと放射能

ん? 私は別に放射能なんてひとことも言ってないぞ。

JTの人「国内生産のタバコ葉については3.11以降に定めた自社基準値の100ベクレル/1kgを超えたタバコ葉に関しては農家からの買い取りを行っていないので、安全性を確認しておりますからご安心ください」

── その基準値はどうやって算出したんですか?

JTの人「外部の専門家の意見を……」

だめだこりゃ。

安全かどうかはここで話してもしょうがないからいいですけど、基準値オーバーのタバコ葉はどうしてるんですか?

JTの人「農家さんの方で処分してもらっています。」

── それじゃ、農家さんが潰れちゃうじゃないですか。具体的に何県のタバコ農家が基準値を超えたんですか?

JTの人「そういったことに関しては……」

── 話はかわりますけど、その他の添加物って香料のことですか?

JTの人「はい、香料については当社の重要な機密事項になりますので……」

とにかくJTという会社はユーザーに対して製品の安全性の根拠を説明することよりも、企業としての機密保持に務める姿勢らしい。かつてに専売公社時代の名残をひきづったまま国営企業時代から続く独占市場でふんぞり返っているようだ。資本主義なんて仕組みはちっともに好きではないが、競争のない独占企業の殿様商売には「そんな笑えないジョークをよく思いつくね」と、飽きれるを通り越して感心してしまう

JTの人「他のお客様の窓口にもなりますし、営業時間外なのでもういいですか?」

話にならない上に、営業時間を過ぎて連絡してくるのだからもうなんだかわけがわからない。

次回は触れてもつっついても全貌が把握できないタバコ香料と香料メーカーのお話でございます。

(原田卓馬)

タブーなき『紙の爆弾』話題の11月号!

 

《屁世滑稽新聞13》腐ったトカゲの尻尾を切ったら、腐った尻尾が生えてきたの巻

屁世滑稽新聞(屁世〔へいせい〕26年11月1日)

腐ったトカゲの尻尾を切ったら、

腐った尻尾が生えてきた……の巻


全国の大きなお友だちのかたがた、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

きょうは、とっても珍しい動物のお話しをしましょうね。
特別ゲストとして、「ミツゴロウ先生」として皆さんおなじみの、
動物研究家の旗又憲(はたまたのり)さんをお招きしました。

ミツゴロウ先生と花子先生の珍獣談義

花子先生 「ミツゴロウ先生、ごぶさたおりました」
ミツゴロウ先生 「おや? 花子先生、ぼくは初対面だとばかり思っていたけどね……」
花子先生 「いえいえ。先生がかつて北海道で“ミツゴロウの動物王国”をおやりになっていた時に、夏休みにお世話になったことがあったんですの」
ミツゴロウ先生 「おおっ! そうでしたか! 北海道の動物王国には、東京あたりからもずいぶん若者がやってきたからねぇ……。そういえば20年ほど前に『月刊ザ・天命』というグラビア雑誌を出して、ワイセツだとか文句を付けられて官憲に逮捕された写真家の可能天命クンも、若いころ動物王国のメンバーだったんじゃよ」
花子先生 「テンメイさんとは、あそこで他人以上の関係でしたから、彼のことは何からナニまで存じておりますわ」
ミツゴロウ先生 「おお!そうか! テンメイくんは、ぼくの“ナチュラリストの思想”を一番よく理解して自分のやりかたで実践してきた立派なヤツだよ。彼とイイ仲になってよかったじゃないか!」
花子先生 「まあ! お誉めいただいて恐縮ですわ。でも大昔のことですけどね(笑)」
ミツゴロウ先生 「ミノムシや、ヤドカリみたいに、例外的なものもあるけれど、ほとんどすべての動物はすっぱだかのまま生きている。個体どうしが、ハダカとハダカの、なんの隠し立てもない姿で、堂々と生きているんだ! ぼくも動物と面と向かうときは“心の着物”をぜんぶ脱ぎ捨てて、心がすっぱだかの状態で、真剣に動物に語りかけるんだ。そうしないと動物たちは心を開いてくれないからね」
花子先生 「おっしゃるとおりですわ」
ミツゴロウ先生 「テンメイくんは全裸専門の写真家になったが、それは動物王国で“はだかの大切さ”を学んだからなんだ!」
花子先生 「……ということになると、私も彼の教師だった……ということになるかも」
ミツゴロウ先生 「花子先生? デズモンド・モリスっていう動物行動学者をご存じか? 彼は、1973年にノーベル賞を受けた動物行動学の革命児ニコ・ティンバーゲンのもとで、動物の行動をどう考えるかについて学んだ。西洋じゃキリスト教の悪しき伝統のせいで、昔から『心をもつのは人間だけで、動物に心なんてあるワケない。動物は目の前の刺激に単純に反応しているだけの“機械人形”なんだから、人間みたいに思考をするとか社会をつくるなんてあるワケがない!』と頑固に信じてきたんじゃよ。だけどニコさんは、人間だけでなくチンパンジーにも犬や猫にも、さらには鳥にだって、それなりに“心”はあるし、ちゃんと社会生活をしている、と考えて、観察を通してそれを実証した。だから動物行動学の革命児だし、ノーベル賞ももらえたワケじゃよ」
花子先生 「先生……、デズモンド・モリスって『裸のサル』っていう本を書いた人ですよね?』
ミツゴロウ先生 「ご名答! ニコ・ティンバーゲンのもとで動物行動学を学んだのち、最初はロンドン動物園で鳥の行動を研究していた。それから犬や猫やチンパンジーにも人間のような感情や心や社会生活があることを見いだして、世間に啓蒙したんじゃ。『動物に心なんてあるハズない』と信じていた西洋人をビックリさせたんじゃ」
花子先生 「だけど……わたしは『裸のサル』を読んだときは腰が抜けましたワ。だって下手なポルノよりもずっとポルノチックでしたもの」
ミツゴロウ先生 「モリスさんは、身のまわりの動物たちの“人間的”な真実の姿を解明して世間に伝えたのち、こんどは人間の“動物的”な真実の究明に乗り出した。オッパイやお尻はなぜセクシーなのか? なぜ人間だけオッパイがデカいのか? 性器のまわりに毛が生えているのは何故なのか? ……そうしたことは進化論とか動物行動学の視点で、それまで真剣に検討されたことはなかった。なにせ人間のセックスを扱うのは、それまでは学者世界のタブーだったからね。ご存じのとおり『裸のサル』とは、全身の体毛をほとんど失うかたちで進化をとげた我々人類のことだけど、その人類の動物としての真実の姿、人間のからだや社会にかかわるセクシーな森羅万象を、具体的な写真つきで解説した本だったんで、半世紀ほどまえに出版されたときは大センセーションを巻き起こしたんだよ。愚昧(ぐまい)な連中がショックを受けたのは当然だったわけだけれども」
花子先生 「なるほど……。人間を“ハダカのサル”ととらえて、ヒトと他の動物とを、同じ次元で理解しようとしたわけですね。それはヒトとそれ以外の生物との間に迷信的な壁を築いてきたキリスト教二千年の伝統をぶちこわす試みなわけで、まったく革命的だったわけですわね」
ミツゴロウ先生 「さよう。そしてモリスさんはそれ以後も、人間のもっとも大切な感情である“愛”の正体を、動物行動学の視点から解明しつづけている。『ふれあい:愛のコミュニケーション』とか『赤ん坊はなぜかわいい?:ベイビー・ウォッチング12か月』とか、きわめつけは『セックスウォッチング:男と女の自然史』とかね」
花子先生 「なんだか先生のお話を聞いただけで、わたし胸がドキドキしてきたわ」
ミツゴロウ先生 「アハハ! ぼくは“しゃべる媚薬”ですからね」

★          ★          ★

花子先生 「あらまあ! 高尚な猥談だけで番組が終わってしまうところでしたわ(笑) ……本題に参りましょう。珍獣談義(笑)」
ミツゴロウ先生 「おっとそうでしたね(笑) きょうは、きわめて珍しいトカゲの話をしましょう」
花子先生 「あら! わたし爬虫類とか両生類って、ちょっと苦手なんですが」
ミツゴロウ先生 「いやいや、それは嫌いだという先入観があるせいですよ。きょうはコモドオオトカゲの話ですが、ゾウガメでもコモドオオトカゲでも、あのノンビリした顔をみていると可愛くてカワイくて……。なんで~こん~な~に♪ カワイイの~かよ~♪ トカゲという名の~たからもの~♪(https://www.youtube.com/watch?v=Is5r1DPLX8s)」
花子先生 「先生、そこはトカゲでなく馬子ですわよ。馬子にも衣装で、着るものしだいで可愛くもなりますわ」
ミツゴロウ先生 「ちゃう!ちゃう! アンタま~だ着るものに執着もってるだろ。とかく人間は煩悩やら“こだわり”やらに毒されて、心がガチガチになりがちだ。スッポンポンの素っ裸になって、毛なんかも全部剃って、そういう装いへのこだわりを捨てないと解放されないよ!」
花子先生 「先生、そんなことお坊さんだって無理ですわ(笑)」

★          ★          ★

花子先生 「……で先生、コドモドラゴンのお話しでしたわね」
ミツゴロウ先生 「おっとそうそう、また忘れるところだった(笑)。だけど花子さん、“コドモ”ドラゴンじゃないよ。“コモド”ドラゴンじゃよ。インドネシアのコモド島に生息しているから“コモド”ドラゴンなんです」
花子先生 「それで先生、きょうはどんなお話しを?」
ミツゴロウ先生 「人の顔をしたオオトカゲの話です」
花子先生 「まあっ! それって化け物じゃないですか」
ミツゴロウ先生 「自然界には、ごくたまに、そういう神様のイタズラとしか思えない化け物が生じることもあるんですナ、これが……」
花子先生 「それで、その人面トカゲって、どんなものですの?」
ミツゴロウ先生 「コモド島で、珍獣ハンターのイモトアヤコさんが発見した、日本人の顔をしたケダモノです。これがその写真なのですが……」

 

タレントの「珍獣ハンター・イモト」さんがインドネシアの
コモド島でロケ中に、コモドオオトカゲ(通称・コモド
ドラゴン)の突然変異種を発見しました。この変異個体は
研究と観察のため日本の国会動物園で飼育され「コモド
オオトカゲ・アベ変種」という学名が付けられました。


花子先生 「あらまあ! そういえば、むかし昭和時代にこんな顔をした政治家がいたような……」
ミツゴロウ先生 「さよう。人面トカゲなんて珍獣中の珍獣ですから、特別な計らいを得て日本の国会動物園に運んで、飼育していたのですよ。そして、そっくりな顔の政治家さんにちなんだ学名が付けられました、『コモドオオトカゲ・アベ変種』とね」
花子先生 「そうそう、それだわ! 総理大臣になれずじまいで終わった安倍晋太郎さんよね、この顔はどうみても……。だけど私はこの写真をみた瞬間に、十年くらい前にインターネットの世界でみんなに愛されていた“文字絵”を連想しましたワ」

コモドオオトカゲ・アベ変種は、よくみると、ネット掲示板
「2ちゃんねる」でかつて人気だった「シラネーヨ」という
絵文字とよく似ていますね。


ミツゴロウ先生 「なるほど(笑) 偶然の一致でしょうな」
花子先生 「それにしても、どうして人面トカゲなんて生まれたのかしら?」
ミツゴロウ先生 「神のみぞ知る……でしょうが、19世紀の末にイギリスの作家ジョージ・ウェルズが書いた『モロー博士の島』みたいに、ひょっとするとコモド島あたりにケシカラン科学者がひっそりと住んでいて、遺伝子操作かなにかでこういう化け物を作ったのかも知れませんな」
花子先生 「まあ、こわい! 楳図かずおさんの恐怖漫画にそういうのがありましたわね、題名わすれたけど」
ミツゴロウ先生 「……あるいは、ひょっとすると成仏できずに南方の島をさまよっていた安倍晋太郎さんの怨霊が、現地のオオトカゲに何らかの作用をして、それでこんな突然変異が起きたのかもしれない……」
花子先生 「それはもっとこわいわ! やっぱりそんな話も楳図かずおさんの漫画にあったような気がするけど……題名わすれたけど」
ミツゴロウ先生 「もし後者のような事情でこんな化け物が生じたのだとすると、南方で戦死した英霊たちの遺骨をちゃんと回収もせずに、上っ面ばかりの“愛国もどき”のスタンドプレイを続けている不肖の息子に対する、なんらかの怒りのメッセージかも知れませんナ。霊界からの……」
花子先生 「手厳しいご指摘ですが、当たっているかもしれませんわネ。死んでしまった英霊たちを弔うポーズばかりで、南方の遺骨収集は民間まかせ。厚労省や外務省はむしろ民間の遺骨収集活動の足さえ引っぱってきた、と聞いておりますわ」
ミツゴロウ先生 「ならばなおさらのことですが、外務大臣で終わった安倍晋太郎さんは、南方で絶命し、そのまま放置されている英霊たちの怒りを受けたという可能性も考えられる。国のために命を捧げた人たちをねんごろに弔わずして“愛国”なんぞと叫ぶのは嘘っぱちですからね」
花子先生 「ミツゴロウ先生、お怒りですね」
ミツゴロウ先生 「そりゃ偽善者や嘘つきは、 ぼくは大嫌いだからね。かつて徹夜マージャンの雀卓を囲んでいた自民党の幹部が、ぼくに向かってこんな冗談を言ったんですよ。『おい又憲(またのり)クン、おまえの憲って文字、それ変えちまえ、改憲だ改憲!』ってね」
花子先生 「まあ! 乱暴な話ね。冗談にしても不粋すぎるわ」
ミツゴロウ先生 「だからその場でぶん殴りましたけどね、『ふざけんな!』と言って、そいつを(笑)」

★          ★          ★

花子先生 「安倍晋太郎さんにそっくりの人面トカゲは、その後どうなったのですか?」
ミツゴロウ先生 「国会動物園のなかで、動物なりにいろいろとストレスがあったのでしょうな。残念ながら病気で死んでしまったのですよ」
花子先生 「まあ! それは残念! 後にも先にも、この世にたった一匹しか現れないような、世界で最もめずらしい珍獣だったのでしょうに……」
ミツゴロウ先生 「ところが驚くべきことに、奇跡は繰り返されたのです」
花子先生 「……とおっしゃると?」
ミツゴロウ先生 「ある朝、飼育員がオリのなかでコモドオオトカゲ・アベ変種が事切れているのを見つけたのですが、その遺体を持ち上げたら、下に小さなイモリみたいなものがへばりついていて、よく見たらそれも人面トカゲだった……」
花子先生 「アベ変種がこどもを産んで事切れた、ということですか?」
ミツゴロウ先生 「産んでいるところを誰も見ていないのだから、何とも言えないんですが、DNA鑑定をしたら遺伝的な血縁関係があることが判明した。だから一応、アベ変種の子供だと考えてよい」
花子先生 「そのイモリみたいな人面トカゲ2世は、順調に育ったのですか?」
ミツゴロウ先生 「ええ。急速に巨大化しましたよ。ところが最近、いきなり尻尾に奇妙な腫瘍がたくさん現れたのです。……それがこの写真です」


イモトさんがコモド島で発見したアベ変種は、国会動物園に収容中に
子供を作りましたが、これがまたトンデもない突然変異種だったことが、
のちに判明しました。本来はコモドドラゴンは、小さなトカゲみたいに
自分で尻尾を切ることはありません。しかしこの「コドモオオトカゲ・
アベッチ変異種」は、なんと腐った尻尾を自分で切断したのです。
それにしてもアベッチ変異種の尻尾が腐り果てて、オブチ人面瘡や
ミドリ人面瘡やワインの瓶やウチワに似た腫瘍が出来て真っ赤に腫れて
おり、いかにも痛そうです。


花子先生 「うわぁっ! なんてグロテスクな動物なの! 地球のものとは思えない。『惑星からの物体X』に出てくる、あらゆる生き物が溶け合わさって出来た宇宙生物みたい……」
ミツゴロウ先生 「顔は安倍晋太郎の息子によく似ているでしょ? でも花子先生が正しくご指摘されたように、これはもはやコモドオオトカゲとは言えません。別種の珍生物というしかない」
花子先生 「なぜですの?」
ミツゴロウ先生 「ごらんのように尻尾が真っ赤に腫れ上がっていますが、よく見ると人面瘡というべき巨大な腫れ物が2個出来ている。尻尾のつけねの腫瘍は先日やめた経産大臣のようでもあり、先っぽの腫瘍は同じ日にやめた法務大臣のようでもある。それに興味ぶかいことですが、赤ワインのビンと、団扇(うちわ)にそっくりの腫瘍も出来ている」
花子先生 「ひょっとして『惑星からの物体X』の宇宙生物みたいに、本当にビンとか団扇をとりこんでしまったのでは?」
ミツゴロウ先生 「何とも言えませんな。……まあ、しかし病巣が腫れて、このトカゲは本当に苦しそうだ」
花子先生 「……で、これが新型生物だとおっしゃる理由は何ですの?」
ミツゴロウ先生 「小さなトカゲとか、カナヘビのような動物は、敵に襲われそうになると自分で尻尾を切って逃走する場合があります。敵の動物が、そのちぎれたシッポをミミズか何かと勘違いして捕食しようとしているスキに、逃げてしまうわけです。これが、いわゆる“トカゲの尻尾切り”ですが、専門用語では“自切(じせつ)”と言います。自切ができる動物は、尻尾がちぎれやすい構造になっていて、ちぎれても血管がすぐに閉じて出血も少ないし、外見上は自切する前のものとよく似た“尻尾”がまた生えてきます。いっぽう、図体の大きなコモドオオトカゲは、自切が行なえません」
花子先生 「トカゲやヘビはすべて“尻尾切り”で逃げられる動物だと思っていましたが、ちがうんですね」
ミツゴロウ先生 「ところが、この安倍ジュニアに顔が似ている“子供トカゲ”の場合は、自切をやらかして、腐った尻尾を自分で切ってしまいました」
花子先生 「じゃあコモドオオトカゲとは別種の動物だってことね?」
ミツゴロウ先生 「けれども、すでに知られている動物のなかにはこういう奇妙なものはないので、国立科学博物館が新しい学名を付けたんです」
花子先生 「なんていう名前?」
ミツゴロウ先生 「“コドモオオトカゲ・アベッチ変異種”に決まりました」
花子先生 「……で、トカゲの種類そのものが“コモド”から“コドモ”に変わったわけですね」
ミツゴロウ先生 「名前は似ていても全然別種です」
花子先生 「それで自分で尻尾を切ったはイイけど、新しいのは生えてきたのですか?」
ミツゴロウ先生 「新しい尻尾が生えたことは生えたんですが……。これをごらんなさい」

コドモオオトカゲ・アベッチ変異種は、腫瘍だらけで真っ赤に腐った
尻尾を自分で切り捨てました。通常のコモドドラゴンは尻尾が再生
することはないのですが、アベッチ変異種の場合はすぐに新しい尻尾
が生えてきました。ところが新しい尻尾は、腐った状態で生えてきた
のです。カワカミヨ~コ人面種のそばには呪いの文字が、まるで
“耳なし芳一”の経文のように浮き出ていますが、それは「全国
サラ金政治連盟パー券ご購入35万円也」と読めますね。おそろしい
悪業の因果が現れたのですわ。尻尾の末端にはミヤザワ人面種が
現れていますが、口からSM調教プレイの鞭のような真っ黒い舌が
おどり出ていますわ。ミヤザワ人面種の首のつけねに「Clubマザン」
という看板のような瘢痕が浮き出ていて、そのうえにはSMプレイで
責められているM字開脚女性のような腫瘍まで出来ているわよ。
……因果というのは恐ろしいものですわ。アベッチ変異種が背負った
悪業の毒のせいで、こうした腐った尻尾が生えてきたのでしょうね。
瀕死の表情のコドモドラゴンが不憫(ふびん)でしかたがありません。


花子先生 「うわっ! まさに『惑星からの物体X』じゃないの! グロテスクな写真ですねえ」
ミツゴロウ先生 「新しく生えてきた尻尾は、最初から腐っていたのですよ。よくみると尻尾のつけねには、先日クビがすげ替わったばかりの法務大臣とよく似た大きな人面瘡……というか固形腫瘍がぶらさがってます。そのすぐ上には、黄色い文字のようなオデキが浮き上がってますね。『全国サラ金政治連盟パー券ご購入35万円也』って、領収書みたいな文言に読める」
花子先生 「こんな文様がからだに浮かび上がってくるなんて、なんとも不気味ですねえ。呪われているとしか思えない……」
ミツゴロウ先生 「それだけじゃないですぞ。領収書みたいな文様のとなりには、『Club マザン』と読めるバーの看板みたいな文様まで浮かんでいる」
花子先生 「その上に乗ってるのは、オタクのお兄さんたちが大好きなエッチなお人形かしら?」
ミツゴロウ先生 「半裸でSM緊縛されてM字開脚している若い女性にも、見えないではない。なんとも業の深いオデキですな(笑)」
花子先生 「尻尾の先っぽに大きな人頭形の固形腫瘍ができていますね。その口先みたいなところから真っ黒いエクトプラズムみたいなものが出ていて気味が悪いわ!」
ミツゴロウ先生 「ザトウグモの足のようにも見えるけど、SMプレイの責め具のムチのようでもある。あまりにも業が深い病巣ですな」
花子先生 「こんなややこしいオデキで尻尾が腐っていては、このトカゲさんも苦しいでしょうに……。今も生きているんですか、このトカゲは?」
ミツゴロウ先生 「なんとか生きてますよ、尻尾が腐ったままで。……だけど、もはや顔からも生気が失せていて、まともじゃないことがわかるでしょ?」
花子先生 「ええ……昇天しちゃったような顔ですものね。みるからに断末魔で、哀れになってなってきますわ。からだの色だって、あちこちが赤銅色とか青銅色とかに変色してしまっているし……。ねえ先生、この体表の病的なテカり具合ですけど、これはトカゲにありがちな保護色なのですか?」
ミツゴロウ先生 「いいえ。親の七光りです」
花子先生 「まあ! さすがはコドモドラゴンね」

 
*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*

 

きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

 

 

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5264)から引用》
と明記して下さい)

 

もうひとつの憲法読本!

 

《脱法芸能16》安西マリア失踪事件(2)──背中のイレズミがモノを言う世界

1978年7月13日に安西マリア事件の公判がスタートし、関係者の新証言に注目が集まった。8月7日の第2回公判では、安西が証言台に立ったが、2月3日に竹野が衣籏を殴った後で、安西と母親を呼び出した際、竹野の言い放った脅し文句について検事の質問に答えて次のように詳細の説明した。

「ワシは前科24犯だ、人を殺すことなどなんとも思わん。警察もこわくはない。背中のイレズミをなんだと思ってるか、これを使ってホリプロとのもめごとと解決すしたんだって。こなると広島から若いものを連れてこなくちゃならんな、などといわれて、私は泣き出してしまいました」

安西は竹野エージェンシーに所属する前、ホリプロ傘下のプロダクションにいたが、安西をスカウトした人間が800万円の借金をつくった。それが移籍の際、問題となり、違約金として請求されたが、竹野は背中のイレズミを見せることでチャラにしたのだった。

つまり、大手芸能プロダクションであるホリプロからタレントを奪うのに背中のイレズミがモノを言ったというのだ。

「あなたに敗けそう」(1975年3月20日東芝EMI 作詞=なかにし礼 作曲=井上忠夫)

◆「社長と寝た方がいい」

これまで何度も述べている通り、芸能界には多くの大手芸能事務所が加盟する日本音楽事業者協会という業界団体があり、タレントの引き抜きを禁じ、独立阻止で一致団結している。だが、この芸能界の秩序は、暴力によって時にねじ曲がるというのである。

これは、なぜ暴力団関係者が芸能事務所を経営しているのかということに1つの答えが見出されると思う。暴力は芸能事務所の経営に役立つツールなのだ。

さらに、安西の証言は続く。安西は検事から「竹野社長が、前科24犯とか、広島から若い者を呼ぶといったのはまちがいありませんね」と訊かれ、「はい。ワシを裏切ったらどうなるかわかっとるのか。殺すことなんかなんでもないし、おまえと寝ようと思えば寝られるんだって……」と答え、嗚咽を漏らした。

そして、安西は、新しい契約書にサインをしてから、新曲の作詞家から「社長と仲が悪いのはまずい、社長と寝た方がいいんじゃないか」などと言われたという。これを聞いた安西は「竹野社長は私と関係しようとしていると感じました」という。

4月8日、安西は失踪したが、その理由は「社長に、コンクリートづめにして海に沈めなければわからないなどといわれたので、逃げ出してしまいました」と説明している。

◆加害者社長はほどなく復帰、被害者マリアは引退へ

年が明けた79年1月19日、東京地裁で竹野に懲役10ヶ月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。だが、当時の週刊誌は、「私はマリアに脅迫、強要をした事実はありません。私が期待していた判決ではありません」「私も許されるならば、芸能界の仕事をしたいのですが……」といった竹野のコメントを紹介し、擁護し、にこやかに笑う竹野の写真も掲載している。そして、判決が出た1年後の80年に竹野は奥村チヨの所属事務所としてフェニックス・ミュージックを設立し、芸能界に復帰した。

一方、事務所に謀反を起こし、芸能界の暗部を告発した安西の方は、引退を余儀なくされた。長らく日本を逃げるようにしてハワイに移住していたが、失踪事件から22年後の2000年に芸能界に復帰した。なお、所属事務所は、バーニング系と言われる10-POINTだった。
安西は復帰後しばらく芸能活動をしたが、テレビ番組で2013年に鬱病を告白し、2014年3月15日、急性心筋梗塞で他界した。

▼星野陽平(ほしの・ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』絶賛発売中!

 

《大学異論14》学園祭のトラブルは大学職員が身体を張って収束させる

20代前半血気盛んな若者たちが「祭り」で酒を飲めば、乱痴気騒ぎは避けられない。昼間から飲み始め何時間も飲んでいれば、酩酊したり、軽度の急性アルコール中毒になる学生が出るのも毎回のことだった。学園祭を運営する学生組織は、もめごとや軽度のアルコール中毒学生のケアーも手が回る限り対応にあたっていたが、普段見たこともないような大勢の人波にあふれるトラブルの全てをコントロールすることはやはり学生には無理がある。

◆学園祭の危機管理に不可欠だった「ガムテープ」

学生が手におえないような状態が発生した時「待機」している教職員に助っ人を求めてくる。一番多いのが酩酊者の扱いだ。悪酔いして暴れだしたり、喧嘩を始めて血まみれになって気を失っていたり、程度の酷い酩酊者を相手にするのはこちら側にもそれなりの体力と工夫がいる。

元気のいい学生が暴れだしたら、私が一人で取り押さえるのは危険だった。一人で何とかなるだろうと過信して取り押さえようとしたものの、顔を蹴られるは、投げ飛ばされそうになるわ、散々痛い目を食らった経験があった。その時に先輩の職員から、「なんでガムテープ持っていかへんかったん?」と秘訣を授けられた。

酩酊者に限らないが、乱暴者を取り押さえるのに「ガムテープ」はとても使いやすい「武器」なのだ(布製のガムテープは粘着力が強過ぎて皮膚を傷つける恐れがあるので、紙製のガムテープを使用していた)。

3人程で2本のガムテープを準備して「酩酊学生鎮圧」にかかるわけだが、要領はこうだ。まず一人が頭を抱えるようにして上半身を押さえつけながら地面に倒す(頭を押さえるのは怪我をさせないためである)。もう一人が足の動きを押さえにかかり動きを止める。この状態で酩酊学生は二人に取り押さえられているが、当然抵抗を止めず、バタついている。こういう状態の人間はたいてい大声を出しながら暴れるので、少々乱暴だが3人目はまず口にガムテープを張る。声を出せなくなると不思議だが体の抵抗が少し収まるのだ。次に膝を手早くガムテープでグルグル巻きにする。膝を固定するともう大暴れは出来ない。膝から足先までを順次巻き上げていき、下半身を完全に封じ込む。最後に手首を押さえつけて両手を固定すれば、一応完了だ。

その後酩酊学生を3人で抱えて保健室のベッドへ搬送(?)する。ミノムシのように簀巻きにされ、さぞや不本意なのであろう体をくねらせて抵抗するが、ガムテープの粘着力には余程体力のある学生でも太刀打ちできない。保健室に連れて行き、口に張ったガムテープをはがし、一人が給水と見張りで付き添い残りの二人は引き上げる。最初暴れようとして大声を出したり、体を動かそうとしていても、相当な体力を使ったためと、アルコールにより、しばらくすれば大抵眠りにつく。

◆学内での集団乱闘をどう収束したか?

単独学生の酩酊ならば、このように対応可能なのだが、騒ぎが100人の単位を超えると事態の深刻さは比べものではなくなる。

ある日、学園祭の終了時間間近になって事務室に学生が飛び込んできた。

「大変です。メインステージ前で大乱闘になってます。すぐ来てください!」

急を告げに来た学生は学園祭を運営している顔見知りの学生だ。彼らは責任感から、学園祭が終了するまでは一切の飲酒を自主規制しているのでデマではない。取り急ぎ事務室に待機していた職員数人とメインステージに向かう。怒号が飛び交い角材を振り回している者もいる。学生同士であればこれほど大規模な混乱は起こらない。学園祭を運営する不文律は個人の酩酊者を出すことはあっても集団での乱闘を阻止するように学生の間に浸透していた。

事情が呑み込めない。近くで模擬店をやっている学生に何がどうなったのかを聞く。

「暴れているのは学生じゃなくて外部の人間で、怪我した学生は校舎の中に運び込まれているんです」

よく見ると確かに乱暴している連中は似たような衣装を着ており、学生ではない。
私は、「うちの学生!絶対手を出すなよ!」とあらん限りの大声を出す。
「うちの学生はその場に座れ!」

ざっと見渡して200人ほどはひしめいている混雑の中で暴力を振るっている学外者を特定しないと対処ができない。私の指示は徐々に伝達されてゆき、やがて6、7人の人間を残してその場の学生は皆しゃがんだ姿勢となった。

その時、門衛さんが息を切らして走って来た。
「警察が入れろ言うてます!20人くらい来とるんです。どうしましょうか。今は止めてますねんけど」

暴力沙汰にびびった学生が110番をしたのだろう、しかし、この状態では絶対に警察を入れてはいけない。双方怪我人がいることは確実だろうから警察は事情聴取で何人も引っ張るだろう。それにかこつけて模擬店の学生や学内の捜査を行うに決まっている。私ともう一人の職員をその場に残して他の教職員は校門へ向かってもらう。20人の警察官ということは、たぶん機動隊も何人か来ていると想像される。絶対に何があっても警察を学内に入れないように説得にあたってもらう。

こちらは乱闘騒ぎの収拾を図らなければならない。
「何人ぐらい怪我させられたんや」と顔見知りの学生に聞くと、

「10人位かな。校舎の中に運び込んで中から鍵かけてます。ビール瓶で頭割られたり、角材でボコボコにされて出血ひどい先輩もいるから、救急車呼ばないと・・・」

「あほ!救急車呼んだら、また警察来るやないか!今既に20人位校門に来とんねんぞ!お前ら110番したんちゃうやろな」

「俺たちちゃうけど、見てた女の子が何人か110番してました」

「しゃあないなぁ」

事情は分かったので派手な服装の学外者へ声をかける。
「この大学の職員です、喧嘩になったと聞きましたのでうちの学生がご迷惑をかけたのであればお詫びしなければなりません。会議室へお越し頂けませんでしょうか」

「おっさん!どないしてくれんねん!お!このジャケット10万したんやで!破れてもうてもう着られへんやないか!お?」

「ですから、学生に非があればその分大学として補償さえて頂きます」

「弁償してくれるんかい?」

「学生に非があれば大学が補償いたします」

「おい、このおっさん弁償してくれるんやて。ほんなら話にいこうやないか。ごっつい損失やもんな!」

しめしめ、これで学生と乱暴者を引き離せる。と安心した時、静かに座っていた学生の中から大声が上がった。

「なんでそんな奴らに頭下げなあかんねん!」

そう声を上げたのは顔見知りの卒業生だった。勿論酔っている。こいつがほかの学生に火を付けたら収まるものも収まらない。

「何ぬかしとんじゃ!どあほ!」
そう怒鳴ると私はその卒業生に張り手をかました。

「田所さん、興奮せんといといてください!」

後輩の職員が止めに入る。

「演技や演技。学生が怒り出してまた乱闘になったらもう手が打てないやろ。ここには学生200人はおるんやで。勢いで鎮圧しないと、こっつち2人しかいないんやで。全然興奮なんかしてへん」と小声で伝える。彼には学外者を事務棟の会議室へ引率してくれるように頼み、私は怪我人の様子を見に校舎へ向かう。見慣れた連中がへたり込んでいる。

「なんで、こんなことになったん?」

「昨日、あいつらの一人が来てて大道具を壊しよったから、Aがどついたんです。そしたら今日仲間連れてきて・・・」

「お礼参りか。だいぶ怪我ひどそうやな」

「俺はビール瓶で頭二回やられました」

「ほとんど一方的か?」

「反撃しようにも、あいつら慣れてますよ。喧嘩」

「たぶん顔の折れてるで、君。今から車で病院に運ぶし。病院では学生同士で喧嘩した、っていうとき、あとで見舞い行くから」

怪我と程度から見れば学生が一方的に暴力を振るわれたことは明らかだ。学外からの乱入者をうまく聴取して「お灸」をすえるしかない。

いかにも喧嘩慣れした連中が片側に座る会議室に到着すると、

「今回は誠に申し訳ございませんでした。学生に事情を聞きましたがこちら側にも問題があるようですので、詳細をお聞きしたいと思います」
と腰を低くへつらい口調で会話を始める。

「補償をさせて頂くにあたり、皆さんのお名前、ご住所、被害内容が必要ですので、順番にお願いいたします」

これは暴行傷害立件のためにこちらが必要とする人定なのだが、「金」に注意が向っている学外者は脇があまりにも甘かった。

「俺か?名前は○○○○、住所○○○○、電話は○○○○。被害やけどなグアムで買うたロレックス壊されたわ。160万や。あとジャケットやパンツ合わせて200万位や」
「はい、次の方」
「名前は・・・・」
と同様のやり取りが続く。学外加害者の被害申告はどう見ても嘘だ。こちらが弱気になっていると思い、過剰に申告してくる。一応の聴取を終え、
「大学として総合的に調査し至急ご連絡を差し上げます。今日は混乱もありましたからこれでお引き取り下さい」と伝えると彼らも抵抗の素振りなく帰路についた。

暴行を受けた学生の見舞いに私は出向けない。それは他の職員に任せて早速「通告文書」の作成にかかる。

「○○様 過日、本学の学園祭で本学学生より、物質的な被害を受けたとお話を伺いましたが、その後の調査で貴殿らは本学学生に対して極めて悪質な暴行傷害を行っておられたことが判明しました。被害学生には顔面を複雑骨折したものもいます。本学としては貴殿のこのような暴力行為に対してこれ以上不当な補償要求を続けられるのであれば、誠に残念ではありますが警察当局の捜査に委ねるしかないと考えております」

翌日、学長の了承を得てこの文章を学外の加害者全員に送付した。効果はてきめんだった。時を於かず暴行に関わった学外者の親から「今回は勘弁して欲しい」との懇願の電話がかかってきた。学生の治療費などをこちらが請求できる状況だったが、その時は大学の判断としてそれは見送り「以後このような事が決してないように」要請するに留めた。

学園祭にトラブルはつきものだ。その時、被害者は怪我をさせられた学生たちだったが治療費は保険でカバーされ、校門前で一時は30人近くに膨れ上がった警察の入校も防ぐことができた。

これは10年近く前の話であるが、学園祭での飲酒自体がほぼ禁止となっている今日、紹介したような乱暴な景色はもうほとんどないだろう。

(田所敏夫)

タブーなき『紙の爆弾』 話題の11月号!

 

私が二度とタカラヅカを観にいかなくなった理由

これまでに一度だけ、思い立って宝塚の舞台見に行った経験がある。2001年のことだ。

何の予備知識もないままにヅカファンだった友人に連れられて見たのは、たまたま上演していた雪組轟悠主演『猛き黄金の国』。三菱の創始者、岩崎弥太郎の生涯を描いた作品である。始まる前に友人は、この舞台はイマイチで、初めて見るなら違うものが良かったんだけど・・・と、少し顔を曇らせた。そう思いながらも彼女が足を運んだ理由は、共演の紺野まひるを応援するためだった。

確かに『猛き黄金の国』はそれまでテレビで見たことがあったものに比べると冴えなかった。その最大の理由は、台本が、つまらないというわけではないが地味で、主人公の役柄に全く華がなく、宝塚の持ち味を生かしきれないことにあった。

当時、宝塚は男性ファンを獲得しようと思考錯誤し、男性の興味を引きそうな歴史ジャンルにも題材を求めていたようだ。しかし、歴史上の人物にしても、もっと宝塚にマッチした華と人気のあるヒーローはいくらでもいる。それなのに、何故岩崎弥太郎なのか?

誰でもピンとくるのは、阪急と三菱の間に何かあるのだろう、ということだ。そして、案の定、当時の阪急電鉄社長小林公平は、三菱系の三村家から、小林家に婿養子に来ている関係だ。つまり、『猛き黄金の国』は社長にゆかりの三菱グループへのはなむけであり、ファンを喜ばせるための作品ではなかった。そういうものを平気で金を取って見せるのは、いかにも殿様商売に思われ、なめられているような気がして不愉快だった。生の舞台の魅力はわからなくはなかったが、それ以上に宝塚に対する大きな違和感が刻まれ、二度と舞台を見に行くことはなかった。

◆読んでわかった違和感の構造

こういった伏線をふまえて『タカラヅカスキャンダルの中の百周年』を読むと、当時の違和感の理由がいろいろと納得できる。

本書によれば、『猛き黄金の国』の主演だった轟悠は、歌劇団やプロデューサーに大金を貢ぎ、資産家の実家の経済力でトップスターの地位を手に入れた女優だった。どおりで実力もそれなりのはず。もし仮にまっとうに選ばれたトップスターが演じたならば、もう少し惹きつけられるものがあり、ヅカファンまではいかなくてもリピーターにはなっていたかもしれない。

現在、轟悠は歌劇団に残り、ジェンヌ出身としては珍らしい幹部になっているという。企業の事情がにおう舞台の主役としては、実にふさわしい配役ではあったのだ。

歌劇団が殿様商売をしているという印象も、間違ったものではなかった。本書に詳述されている、ファンがマネージャーの役割を肩代わりした上、歌劇団に上納金まで納めているという、ファンクラブの奇妙なあり方を見ると、一体客はどちらなのかわからなくなってくる。このように長い間ファンに甘え、利用するのが当たり前という慣習にどっぷりつかってきたのであれば、ファンのため、観客のためという発想が欠落するのも当然だろう。
本書を通じて強く感じられるのは、歌劇団組織の腐敗のようなものである。掲載されているジェンヌの不祥事は、上納金を始めとした、ジェンヌに負担を強いる歌劇団のシステムのしわ寄せから生じたものが多い。歌劇団がそれを知らないはずはないのだが見て見ぬフリで、事が起こればジェンヌを切り捨て終わりにする。そういうことをずっと続けてきたのだ。

◆歌劇団に刃向かった者は芸能界で干される

2008年のいじめ事件も、音楽学校職員のダメっぷりがいかんなく表われていた。いじめはひどいものだが相手はまだ未成年の少女であり、学校側の権限をもってきちんと対応すれば、ことの真偽を見極め、被害者を救うことはできたように思う。しかし職員は事件に対して全く真剣に向き合わず、てっとり早く被害者を切り捨てて幕引きをはかろうとする。そこには、被害者生徒のことはもとより、宝塚歌劇団の将来を考える気持ちもみじんもない。そして、順調に育てば歌劇団にも大きな利益をもたらしたであろう類まれな資質の逸材を、あっさりとつぶしてしまうのである。なんとももったいない話である。

この事件はたまたま被害者が訴訟という勇気ある行動に出て明るみになったが、同じようなことはほかにも起こっているように思えてならない。

被害者Sさんは、残念ながら、今後もう芸能界での活躍は難しいように思われる。せっかくの勇気ある行動が、歌劇団に刃向かった者は芸能界で干される、という前例を生んでしまったとしたら、本当に残念なことである。

(遠藤サト)