『紙の爆弾』2024年1月号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

パレスチナ・ガザで続くイスラエルの暴虐。11月下旬に一時停戦するも、12月1日にはイスラエル軍の攻撃が再開し、死傷者を増やし続けています。前号(12月号)では「中東戦争」と1993年のオスロ合意、およびイスラエルによる合意無視の経緯を振り返った上で、これが宗教紛争ではないことを指摘しました。そして1月号では、なぜか報じられない、ガザに眠る「利権」の存在を明かしました。これを狙うのはイスラエルだけでなく、大国や多国籍企業も、裏側で争奪戦に関与しています。

こうして“真相”に具体的に迫っていくことこそ、反戦を求めるにあたり重要だと考えています。一刻も早い停戦が求められるロシア・ウクライナ戦争においても、2022年10月にトルコで両国間の停戦に向けた非公開協議が行なわれていたものの、米国の横槍が入り進展を阻止されたこと、また同年9月のロシアの海底パイプライン「ノルドストリーム」爆破事件にウクライナ軍幹部が関与していた可能性など、裏側の事実が次々と明らかになっています。23年2月には、マイダン革命の仕掛人のひとり、ビクトリア・ヌーランド国務次官が「戦争目的はクリミア半島の奪回とロシアのレジーム・チェンジ」と発言。ロ・ウの戦争が米国主導であることを堂々と述べました。ほかにもさまざまな“真実”を、本誌今月号で詳述しています。

12月号で札幌五輪について解説した本間龍氏は、札幌五輪招致断念の背景に東京五輪の失敗を指摘。一方で本間氏は、ジャーナリスト・今井一氏とのユーチューブ「一月万冊」で、大阪・関西万博の開催費用爆上がりの背景に、東京五輪の成功体験があると喝破しています。正しい判断をした札幌五輪と、誤った道を驀進する万博。東京五輪は市民にとって失敗、政治家にとって成功だったということでしょう。万博とカジノが、維新の化けの皮と次々とはがしています。11月27日には、政府が350億円の「大屋根」を含めた2350億円の会場整備費とは別に「日本館」など837億円を国費負担することが明らかに。3度めの上振れで総額3187億円は、まるで金を使わないと損だと言わんばかりです。際限なく予算が増額されるのは、やはり東京五輪の成功体験からです。

11月18日にその死が発表された、池田大作・創価学会名誉会長。実際に死去したのは3日前の15日。創価学会第2代会長・戸田城聖氏のときには12万人の学会員を集めた通夜・告別式後に火葬したのに対し、今回は「家族葬」で、死から3日後の火葬。池田氏の死はかねてから“Xデー”といわれ、死亡説も流れてきただけに、大きな違和感を持たれています。その背景と、池田氏の“罪過”にも、今月号でレポートしています。

2022年の旧統一教会、2023年のジャニーズ・宝塚と、これまで見過ごされてきた重大な問題に焦点が当たることは良いことでも、報道がそれ一色になることへの危惧も、同時に感じています。その裏で、やはり議論がされない重要問題も多数あります。今月号のWHO(世界保健機構)が狙う「パンデミック条約」や日本版DBSの危険性がまさにそれで、本誌として今後も問題提起を続けていきたいと思います。今月号も、ご一読をお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

12月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年1月号

『紙の爆弾』2024年1月号
ガザはなぜ狙われるのか イスラエル暴虐の隠された“真相”
【条文解説】国家の主権を奪うWHOの医療独裁「パンデミック条約」「IHR改定」の危険な中身
なぜ「ただちに火葬」されたのか 創価学会・池田大作という「虚像」を暴く
「大阪・関西万博」予算倍増でも強行 万博・カジノで維新は自滅する
本誌に届いた“告発” ジャニーズとフジテレビの「主従関係」
5派閥に政治資金規正法違反の疑いも “ドミノ崩壊”する岸田政権と自民党
新藤義孝大臣の“買収”疑惑で注目 政界に横行する公金「コンパニオン宴会」
米欧の国際プロパガンダを超克する「クリミア友人会議」
これが「敵基地攻撃能力」の現実だ 米国が迫る「核共有」と自衛隊“核”武装化
ウクライナ戦争を仕掛けたネオコン勢力の正体
“子どもへの性犯罪者”の情報公開「日本版DBS」が暗示する未来
政権と最高裁が圧殺した「もの言う裁判官」岡口基一判事を罷免訴追した「弾劾裁判」の異常
イスラエルという「ナチオニズム国家」
静岡県沼津市「駐車場」「タケノコ」問題の真実を明かす
シリーズ 日本の冤罪45 波崎事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

12月24日大阪「冤罪と司法を考える集い」のお誘い 尾﨑美代子

12月に入り、何かとバタバタしていらっしゃるかと思います。そんな中、しかもクリスマスイブの12月24日、以下のような「集い」を開催致します。なるべく早い時間に終わるような予定になっています。短い時間でも構いません。ご参集頂けると有り難いです。

集いは、死刑反対を訴え、自身のお店「MapCafe」で和歌山カレー事件の冤罪犠牲者である死刑囚林眞須美さんの長男さんのお話会をやっているSwing MASAさんとの共同企画のような形になります。

オープニングでMASAさんらに「Don’t Kill Action」と題した演奏を行っていただきます。その後、拙著『日本の冤罪』に身に余る推薦文を寄せて頂いた井戸謙一弁護士から特別講演を行って頂きます。井戸弁護士は現在、拙著に掲載している鈴鹿殺人事件(三重県)の再審と「湖東記念病院事件」(滋賀県)の国賠訴訟の弁護団長を務められております。

その後、恥ずかしながら、私がインタビューを受ける形でお話しさせていただきます。聞き手は、『日本の冤罪』を月刊『紙の爆弾』でシリーズ化された当時から、一緒に執筆陣に加わり、記事の細かな書き方などを教えて頂き、さらに本書の編集時にも大変お世話になった著述業の鹿野健一さんです。本書で、何を伝えたかったか、本書が出来るまでの裏話などをお話したいと考えております。この間、Amazonのレビューも少しづつ増えて大変ありがたく思っていますが、私としては会場の来られた皆様からぜひ、本書を読んだ感想を聞かせて頂きたいと考えております。

最後に冤罪犠牲者、ご家族、関係者の皆様のお話をお聞きします。ここ一番大事です。

滋賀県の日野町事件の冤罪犠牲者阪原弘さん死亡後に、再審請求人となっている長男阪原弘次さんが来て下さる予定です。「日野町事件」はそれまであまり知られてなく、私は、8月逝去された桜井昌司さんにお聞きして、初めて知った事件でした。本書に掲載しておりますが、弁護団長伊賀弁護士にお話を伺った際、開口一番「この事件は、いつ、どこで殺されたかわからない事件です」と話されたことを覚えています。酒店の女性店主がある日から行方不明になったのですが、確かにいつ、どこで、どう殺されたのかわからないまま、酒店の常連客だった阪原さんが逮捕されました。再審請求審で明らかになった、滋賀県警の悪質極まりない行為の数々……再審請求中、獄中で病気になったまま亡くなってしまった阪原さんの代わり、ご家族が懸命に再審を準備し、ようやく一審に続き、二審でも再審開始決定が決まりましたが、高検が不当な上訴を続けています。3人の貴重な報告、アピールをぜひ多くの皆さんに聞いて頂きたいです。

和歌山カレー事件の冤罪犠牲者林眞須美さんの長男さんも来てくれる予定です。和歌山カレー事件については、本書には入っておりませんが、『紙の爆弾』では夫・健治さん、長男さんにお話をお聞きして記事にさせていただきました。下の写真にありますように、都島の大阪拘置所で、月1回中の眞須美さんへの激励行動を続けている仲間がおりますが、MASAさんもこの行動に3年前から参加しております。なお、24日当日も、午前中に激励行動があり、活動を中心で行っている松尾和子さんがそのあと会場にかけつけ、司会進行を務めて下さります。

第二日曜日の11時から11時半まで、都島の大阪拘置所正門前で、和歌山カレー事件の冤罪犠牲者・林眞須美さんへの激励行動を行っている仲間に、3年前から参加しているSwing MASAさん

姫路の花田郵便局強盗事件の冤罪犠牲者ジュリアスさんも来てくれる予定です。ナイジェリア人のジュリアスさんは有罪判決を受け服役してますが、再審で無罪を勝ち取らなくては国外退去となります。長年日本に住み、日本人のパートナーとの間には子どもたちもいるのに、家族がバラバラにされてしまいます。今現在、就労も許されない中、更に地元から移動する際にはいちいち入管の許可をとらなくてはならない中、自身の冤罪事件を知って貰おうと来てくれます。冤罪犠牲者の死刑囚林眞須美さんの長男さんのアピールとともに貴重なアピールとなります。ぜひ、多くの皆さんに聞いて頂きたいです。

ご参集を宜しくお願い致します。

12月24日大阪「冤罪と司法を考える集い」

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』


国際パレスチナ人民連帯デー 今年は原爆ドーム前でジェノサイド犠牲者一人一人を悼む さとうしゅういち

11月29日は国連が定めたパレスチナ人民連帯デーです。 

 

1947年11月29日、国際連盟によるイギリスの委任統治領だったパレスチナをユダヤ人国家とアラブ人国家に分割し、エルサレムは特別な都市とする決議が採択されました。ところが、アラブ人国家パレスチナはつくられず、ユダヤ人を中心とするイスラエルのみが1948年に成立しました。そして、イスラエルは数度の中東戦争でアラブ人地域とされた地域への侵略を繰り返して今日に至っています。

1993年には米国クリントン政権の仲介により、PLOアラファト議長とイスラエルのラビン首相がオスロ合意を締結し、二国家併存を定めました。しかし、イスラエルの政治はラビン首相が95年に極右青年に暗殺されたことを契機に、混迷・右傾化を加速。それでも労働党のバラク首相が和平へ努力していたのですが、2000年に右派リクードのシャロン元首相がエルサレムの聖地訪問を強行。日本に喩えれば、伊勢神宮や法隆寺に外国の首相が「ここは俺のものだ」と乱入してきたような話です。

当然、アラブ側の反発も強まり、交渉は暗礁に乗り上げました。そして、バラクが2001首相選でシャロンに敗れました。勝ったシャロンも一時はイラクやアフガンでの「対テロ戦争」に専念したい米欧の圧力もあって中道政党・カディーマを結党するなど一時柔軟化も、2006年1月に病に倒れて日本の田中角栄がそうだったように影響力を喪失。パレスチナ側では総選挙でハマスが圧勝(ファタハ側のクーデターで政権交代ができなかったが、ご承知の通り、ガザでは現在まで政府を形成している。)。

イスラエル側では右派権威主義的なネタニヤフ被告人が長期政権を築きました。ネタニヤフはオスロ合意に違反してパレスチナが治めるべき土地にユダヤ人入植という侵略を実施。ガザへも何度も武力攻撃を行い、多くのパレスチナ人を虐殺したり罪名もなしに不当逮捕・投獄したりしました。

そうしたなかでハマスが2023年10月7日に行った大規模な「反撃」を契機に、ネタニヤフはガザに侵攻し、14843人とも言われるガザの人々が殺戮されました。当初は総団結してイスラエルを擁護していた米国など日本以外の西側も、ついにネタニヤフをかばいきれなくなりました。

11月24日には戦闘休止が合意され、ハマスはイスラエル人やタイ人の人質を解放し、イスラエルはパレスチナ人の不当逮捕被害者を解放するという作業が行われている中、11月29日を迎えました。

◆パレスチナの若者からのメッセージ=モノローグを交代で読み上げる

広島では、11月26日に翌日からスタートした核兵器禁止条約締約国会議に合わせて、「NO GENOCIDE IN GAZA NO WAR NO NUKES」のキャンドルナイトが行われました。

こちらは「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」が呼びかけて行われたもので、主には被爆者団体の方が中心となって原爆ドーム前に集まりました。(筆者のXより

そしてこの11月29日は、TEARS FOR PALESTINE が開催されました。原爆ドーム前ではジェノサイドが終わるその日まで、広島市立大学の田浪亜央江准教授など、どなたかが17時半くらいからかならず待機し、スタンディングを行うそうです。この29日は12~19時という長時間でどの時間帯でもいいから参加できるよ、という趣旨でも行われたそうです。

筆者は、自分自身が原告である伊方原発広島裁判の第42回の口頭弁論がこの日のメインの活動であり、法廷が昼休みの時間帯に原爆ドーム前まで自転車を飛ばしてかけつけました。

この日は、広島市立大学の学生(留学生含む)らが、12時過ぎに原爆ドーム前に現れ、横断幕や受付、ハンドマイクの準備を開始されました。

そして、ガザ地区の若者が今回の戦争で体験したことをまとめたメッセージ(モノローグ)を、学生らが代読しました。

「世界でもっとも美しい都市になるのに必要なのは安全だけ」

という悲痛な訴え。モスクが爆撃されたり、街が破壊されたり自分たちの身近な友人が遺体となったり。生々しい、ガザの若者の悲痛なメッセージが原爆ドーム前に響きました。

◆岸田文雄様 イスラエルとの防衛協力を停止し、ジェノサイドを止めさせてください!

筆者は主催者に「何かできることはないか?」と声をかけさせていただきました。「はがきを出してほしい」と主催者がおっしゃるので、それではということでハガキを受け取り、「岸田文雄様」宛に、「イスラエルとの防衛協力を停止し、ジェノサイドを止めさせてください!」というメッセージを書き込み、原爆ドームから見て電車通りをはさんで斜め向かい(真向いは旧広島市民球場)の広島中郵便局の窓口に差し出しました。

窓口の局員の年配男性が「63円です」とちょっと緊張した面持ちでおっしゃっていたのが記憶に残っています。

やはり、広島といえば、岸田総理の選挙区です。総理に地元有権者の一人として物申す。当たり前のことです。

日本とイスラエルは残念ながら、安倍政権下で防衛協力を進めています。そのこと自体は憲法違反の疑いが濃厚であり、嘆かわしいのですが、この局面では「ジェノサイドを止めないと防衛協力を止める」ということは外交カードにはなります。日本はかつてときの福田赳夫総理が「人の命は地球より重い」と言った国です。今は、とりあえず、何でもいいからカードを使って虐殺を止めさせる。G7広島サミットでは「ヒロシマ」の名前を西側の核正当化に利用されてしまった岸田総理ですが、ここはひとつ、汚名を返上していただきたいものです。

◆犠牲者一人一人の年齢と名前を読み上げ、赤い涙を模造紙に描く

 
犠牲者の名前を呼びあげるのに合わせて赤い涙を模造紙に描いていく若者ら。門田佳子市議のXより

筆者が原爆ドーム前を去った後、地元・中区の無党派の門田佳子市議らが入れ替わりに来られました。門田市議は2003年のイラク戦争反対運動に筆者とともに無党派の若者として参加。2023年の広島市議選では市長に批判的な保守系会派の所属で5期つとめられた無所属女性市議の後継として見事当選されました。IT化社会における高齢者の生活支援などの課題に取り組まれているほか、松井現広島市長の市政を厳しくチェックする質問もされています。

犠牲者おひとりおひとりのお名前を読み上げ、そのたびに赤い涙を模造紙に描くという作業が行われました。(写真=門田佳子市議のXより) 
 

お名前が判明している方のみですが、とにかく、殺されたひとりひとりに名前があるのだ、ということを改めて確認していきたいものです。

ハマスのせん滅には市民の犠牲はやむを得ない!と暴走するネタニヤフ被告人の論理に対抗するにはひとりひとりの命の重みを大事にしていくしかありません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由〈4〉一方的に決められた規則で無期限に動き出す老朽原発を止める力があるのは、市民だけである 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

本稿は『季節』2023年夏秋号(2023年9月11日発売号)掲載の「老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

◆設計の古さを問題としているが具体性はない

老朽原発を廃炉に導くはずだった新規制基準の運転年数制限が事実上撤廃されてしまい、これにともない古い原発の70年を超える運転がこれから可能になろうとしている。

設計が古いと建設時の知見も乏しく、地震や津波想定は甘く、さらに材料も悪い。良いことなど一つもない。複雑な構造物である原発では、いくら部品を交換し、耐震補強や防潮堤で繕ってみても土台の悪さを解決することはできない。例えば基礎杭を打ち直すことなどできないし、塩害で損傷している建屋を建て直すわけにもいかない。

規制委の長期管理施設計画では、交換可能な設備、装置を交換するためにサプライチェーンの維持を確保するとしている。それ以外に設計の古さを具体的に対策する方法は書かれていない。規制委は、現在でも「バックフィット」(遡って規制基準を適用すること)により安全性を維持する取り組みをしていることで、新知見に照らして安全上重要な対策を施していない原発は40年超運転を許可していないことから、設計の古さに起因する問題については現在でも規制しているとし、新たな規制基準を設ける必要はないと考えている。

結局、本当は重要だった運転期間の制限が撤廃された結果、老朽化した原発を一定の期限で確実に廃炉にする仕組みがなくなってしまった。

改訂法では、長期管理施設計画が認可されなければ次の10年は動かせなくなる。規制は厳しくなっていると規制委はいう。しかし運転は止まるかもしれないが廃炉にはならず、審査は延々と続けられてしまう。現在の敦賀2のように、見通しがなくても、書類を偽装しても、審査を受けたいと書類を出し続ければ廃炉にできないのだ。こんなところに巨額の電気料金(敦賀2の場合は原電の原発なので、関西、中部、北陸、中国電力の消費者がそれぞれの電気料金から負担している)が湯水のごとく使われているのである。

◆規制する側とされる側で検討する規制案とは何か

新・新規制基準の具体的な審査方法(規則等)を検討する「高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム」という会議体のメンバーに「ATENA」(原子力エネルギー協議会)が入っている。この団体は、電力会社とメーカーの協議体で、いわば原子力ムラそのものである。

規制側と机を並べて検討しているのは原発の安全審査の根幹に関わる「規則」だ。つまり法規制される側とする側が、どんな規制が良いですかと話し合っている。これで厳格な審査体制が作れると本気で思っている人がいるのならば愚かすぎよう。

ATENAは、BWRやABWRは冷却水投入(ECCSの作動など)でも加圧熱衝撃は発生しないので「評価不要」であると主張している。この主張に基づき、すでに試験片を使い果たして本来は圧力容器の健全性を評価できなくなった東海第二の運転継続ができるようになってしまうのである。

震災後に設置された国会事故調の報告書で黒川清委員長が指摘した「規制の虜」。これを打破しない限り、原発再開はあり得ないと指摘した黒川氏。ところが今起きているのは、規制される側が規制する側を取り込み、都合の悪い基準を作らせない目論見だ。

「規制の虜」とは、規制当局が国民の利益を守るために行う規制が、逆に企業など規制される側のものに転換されてしまう現象をいう(黒川清「原発事故から学ばない日本……『規制の虜』を許す社会構造とマインドセット」2021年3月8日付け読売新聞)。

GX法で定められた「新・新規制基準」は、法律が制定されても、それだけでは何もできない。規制の方法や基準を決めなければ実務ができない。新規制基準から、どう繋げていくのかが課題だが、その一つが現在議論されている「長期管理施設計画」だ。これを検討する会議で規制する側が規制される側と詰めの議論をしている。この場に第三者の専門家や、高い知見を持ち批判的な立場の科学者がいるというのならばまだしも(過去の耐震基準を決める会議ではあったし利活用を巡る原子力小委員会にもそういうメンバーは存在した)、この会議体は規制庁と、電力会社やメーカーなどのATENAしかいないのだ。

しかも、知見はほとんどATENA側にあり、規制庁が独自に検証し、実験するなど不可能。せいぜい文献調査くらいしか能力のない規制側が、大勢の技術者と実機を持ち、圧倒的な資金力を有するメーカー側に太刀打ちできるわけがない。対等な議論さえ望めないのである。

このような悲劇的な規制側の現実を国民の多くは知るよしもなく、一方的に決められた規則で事実上無期限に老朽原発が動き出す。それを止める力があるのは、市民だけである。(完)

◎老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由[全4回]
〈1〉脆性遷移温度が危険域に達した関電高浜1号
〈2〉運転実績や想定を超えている原発の「60年超運転」
〈3〉試験片が枯渇し、中性子照射脆化を評価できなくなった原発は直ちに廃炉にすべきである
〈4〉一方的に決められた規則で無期限に動き出す老朽原発を止める力があるのは、市民だけである

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

龍一郎揮毫

吉成名高、華麗なハイキックでTKO勝利、KICK Insist 17! 堀田春樹

ビクトリージムの主役、永澤サムエル聖光は薄氷の引分け。
瀧澤博人は元・世界覇者の牙城崩せず。
睦雅はベテラン健太をヒジ打ちで破る殊勲。

◎KICK Insist 17 / 11月26日(日) 後楽園ホール17:15~21:00
主催:VICTORY SPIRITS、ビクトリージム / 認定:ジャパンキックボクシング協会(JKA) 

◆第13試合 52.5㎏契約 5回戦

名高・エイワスポーツジム(=吉成名高/2001.1.8生/ 52.5kg)58戦52勝(34KO)5敗1分
        VS
ルンサックノーイ・シットニワット(タイ/ 51.7kg)大凡120戦超

名高は現・ラジャダムナンスタジアム・フライ級チャンピオン
ルンサックノーイは元・ムエサヤーム・スーパーフライ級チャンピオン

勝者:名高エイワスポーツジム / TKO 2R 0:25
主審:椎名利一

名高がどんな高度な技を見せるか注目の初回、蹴りの駆引きでのスピーディーな攻防は、名高がやや攻勢を維持。第2ラウンドには互いの左の蹴りが交錯。名高のハイキックがルンサックノーイのアゴにヒットすると、両者がダブルノックダウンのように倒れ込むが、名高はバランスを崩したスリップ。ルンサックノーイは失神状態で後方へ倒れ、マットに後頭部を打ち付け、ノーカウントのレフェリーストップとなった。ほぼ1分程、意識回復まで身体を起こせないダメージだった。

左の蹴り合い、しっかり狙っていた吉成名高のハイキックがヒットする
スリップした名高はすぐ立ち上がり勝利確信。ルンサックノーイは大の字

◆第12試合 61.4㎏契約 3回戦

永澤サムエル聖光(ビクトリー/ 61.4kg) 42戦28勝(12KO)10敗4分
       VS
ボム・ピンサヤーム(タイ/ 61.3kg)34戦27勝(10KO)4敗3分

永澤サムエル聖光は現・WBCムエタイ日本ライト級チャンピオン
ボム・ピンサヤームは元・ルンピニー系スーパーバンタム級チャンピオン

引分け 0-1
主審:少白竜
副審:椎名28-29. 仲29-29. 中山29-29

ローキック中心にパンチを繰り出す永澤サムエル聖光が主導権を奪いつつある中、ベテランのボムは永澤のローキックで効いた様子を見せながらも、BOMスポーツジムでトレーナーを務めるボムは簡単に勝負を捨てるボクサーではなかった。

永澤サムエル聖光の左ストレートがボムの胸元にヒット、いつもの勢いはあった

しぶとくパンチでジワジワ反撃に出て来るボム。第3ラウンドにはボムの右ストレートで永澤は腰砕け的尻餅ダウンしてしまう。プッシュ気味のパンチでダメージは無く、すぐ立ち上がったことでノックダウン裁定とはならず続行。残り時間は少ない中、パンチの交錯で終了。スリップ裁定のダウンはノックダウンとされても仕方無い流れで、レフェリーに救われた感もあった。

ボムの右ストレートで尻餅ついた永澤サムエル聖光、際どいダウン

◆第11試合 57.5㎏契約 3回戦

瀧澤博人(ビクトリー/ 57.4kg) 38戦25勝(13KO)9敗4分
VS
ペットタイランド・モー・ラチャパットスリン(タイ/ 56.9kg)大凡100戦超

瀧澤博人はWMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン
ペットタイランドは元・WBC・IBFムエタイ世界スーパーフライ級チャンピオン

勝者:ペットタイランド / 判定0-2
主審:勝本剛司
副審:椎名29-30. 仲29-29. 少白竜29-30

初回、瀧澤博人はローキック中心にミドルキックとパンチの牽制で様子見。第2ラウンドには蹴りの攻防からペットタイランドの蹴りの勢いが増し、ハイキックが瀧澤を襲う。瀧澤はローキック中心に巻き返していくも、ペットタイランドの圧力に突破口が見い出せない。試合終了時の会場内は、瀧澤の勝利は難しい空気が漂っていた。結果、ペットタイランドの勢いを止められず、ポイント的には僅差判定負け。

負けられない瀧澤博人の右ストレートとペットタイランドの右ミドルキック交錯

◆第10試合 64.0㎏契約 3回戦

JKAライト級チャンピオン.睦雅(ビクトリー/ 63.8kg)19戦13勝(7KO)4敗2分
           VS
健太(元・WBCムエタイ日本ウェルター級Champ/E.S.G/1987.6.26群馬県出身/ 63.8kg)
114戦65勝(21KO)42敗7分
勝者:睦雅 / TKO 2R 1:55
主審:中山宏美

パンチとローキック中心の睦雅。健太の出方を落ち着いて見て、睦雅の左ジャブで健太の前進を止め主導権を譲らず、睦雅の成長と強さが感じられた。

第2ラウンドにはパンチからヒジ打ちで健太の眉間辺りをカットし、飛びヒザ蹴りで圧力を掛ける睦雅。流血激しくなった健太にドクターチェックが入り、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。

いきなり飛ぶからフレームから外れてしまったが、睦雅の飛びヒザ蹴りヒット

◆第9試合 52.0㎏契約 3回戦

JKAフライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/ 51.9kg)19戦11勝(1KO)6敗2分
        VS
同級2位.西原茉生(治政館/ 52.0kg)12戦7勝(2KO)4敗1分  
勝者:西原茉生 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本29-30. 中山29-30. 仲29-30

新鋭・西原茉生は先手を打つ蹴りで細田昇吾に主導権を与えず、互角以上の展開で成長を見せた。

西原茉生の左ハイキックで細田昇吾に圧力を掛ける

◆第8試合 67.0㎏契約 3回戦

JKAウェルター級1位.正哉(誠真/ 66.65kg)9戦6勝(2KO)3敗
        VS
NKBウェルター級5位.Hiromi(拳心館/ 66.75kg)8戦4勝(4KO)4敗 
勝者:正哉 / TKO 1R 0:31 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

正哉は蹴りから打ち合いに入ったところで左フックがヒット、この速攻の攻防でHiromiはノックダウンし、ダメージ深く、カウント中のレフェリーストップ。

これもいきなりのノックダウン。KOの気配はあったが速かった

◆第7試合 ウェルター級 3回戦

JKAウェルター級2位.政斗(治政館/ 66.68kg)31戦17勝(4KO)11敗3分
        VS
同級4位.我謝真人(E.D.O/ 66.6kg)13戦3勝(1KO)9敗1分 
勝者:政斗 / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名30-27. 少白竜30-27. 仲30-27

序盤、我謝真人のパンチ、ヒザ蹴り、ミドルキックでの攻めがあったが、政斗は慌てず手数とヒット数で攻勢を維持した経験値が優った展開でジャッジ三者ともフルマークでの大差判定勝利。

政斗がベテラン技で我謝真人を圧して行った

◆第6試合 ライト級 3回戦

JKAライト級4位.古河拓実(KICK BOX/ 61.05kg)5戦5勝(2KO)
        VS
同級5位.林瑞紀(治政館/ 61.23kg)13戦6勝(1KO)6敗1分
勝者:古河拓実 / KO 2R 2:57
主審:中山宏美

第2ラウンド古河拓実が右ハイキックで林瑞紀からノックダウンを奪い、更にハイキックからパンチ連打で2度目のダウン、パンチ連打で3ノックダウンとなってノックアウト勝利。

古河拓実の前蹴りが林瑞紀にヒット

◆第5試合 56.5㎏契約 3回戦

JKAフェザー級4位.勇成(Formed/ 56.4kg)5戦4勝(3KO)1敗
       VS
石川智崇(KICK BOX/ 56.25kg)4戦2勝1敗1分
勝者:勇成 / TKO 2R 2:20
主審:椎名利一

初回に勇成が左フックで石川智崇からノックダウンを奪い、第2ラウンドにも左フックでダウンを奪い、右ヒジ打ちで頭部にヒットさせると、ダメージを見たレフェリーがノーカウントでストップをかけた。

◆第4試合 フライ級3回戦

花澤一成(市原/ 50.7 kg)6戦1勝(1KO)3敗2分
     VS
阿部温羽(チームタイガーホーク/50.9→50.85→50.8kg)6戦2勝3敗1分
勝者:阿部温羽 / 判定0-3 (29-30. 29-30. 28-30)

◆第3試合 ライト級 3回戦

岡田彬宏(ラジャサクレック/ 61.05kg)7戦4勝(1KO)3敗
     VS
勇(OU-BU/ 61.1kg)8戦3勝(1KO)5敗
勝者:岡田彬宏 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

◆第2試合 ライト級 3回戦

菊地拓人(市原/ 60.9kg)2戦2敗
     VS
隼也JSK(治政館/ 61.1kg)5戦1勝3敗1分
勝者:隼也JSK / 判定0-2 (28-29. 29-30. 29-29)

◆第1試合 ミドル級 3回戦

白井大也(市原/ 72.3kg)2戦1分1NC
     VS
久保英輝(MIYABI/ 71.8kg)2戦1敗1分
引分け 三者三様 (29-29. 29-30. 30-29)

《取材戦記》

吉成名高が1年ぶり2度目のジャパンキックボクシング協会KICK Insist出場。2018年のミニフライ級に続き、今年7月9日にラジャダムナンスタジアム・フライ級王座奪取し、二階級制覇。8月12日には本場スタジアムでKO初防衛。昨年同様に本来の主役、ビクトリージム勢とは違った会場の雰囲気変わるメインイベンターだった。

エイワスポーツジムの中川夏生会長は名高の今後について「三階級制覇は当然なんですけど、名高が行きたい方向へ行かせてやりたいですね。仮に一部で噂されるプロボクシングに行くとしたら、ムエタイに戻って来れなくなると思います。でも名高はあくまでムエタイを突き詰める方向を目指しています。名高が日本でムエタイをメジャーに出来なかったら、日本でムエタイがメジャーになることは100パーセント無いと思います。その名高がムエタイを日本で広める最後のチャンスだと思います。」

元々キックボクシングはヒジ打ち有りだったことを強調され、その原点に戻ってメジャーを目指さねばならないという信念があるでしょう。今後は階級を上げて行く予定という。

本場でムエタイ王座目指す、永澤サムエル聖光と瀧澤博人は主導権奪えず不完全燃焼。

7月16日のKICK Insist.16で「今年は勝負に向けた準備の年」と語っていた瀧澤博人は来年への足掛かりとなる試合だったが、攻めの攻防は互角も、圧倒に至る為の突破口を見い出せず、僅差判定でも負けは負けで出直しの来年となる。

永澤サムエル聖光も7月興行で「ラジャダムナンチャンピオンを倒さないと満足出来ない!」と語っていたが、今回は辛うじて引分け現状維持。来年初戦は仕切り直しのスタートになる。

スリップ裁定のダウンはノックダウンとされても仕方無い流れで、レフェリーに救われた感もあった。仮に、定期的にレフェリーを務める日本人レフェリーの判断だったら8割以上はノックダウン裁定としただろう。しかしタイ人レフェリーだったら逆に8割ぐらいはスリップ裁定としたかもしれない。「昔のリー・チャンゴン氏だったら確実にノックダウン裁定だな」とは思うが、「当たって倒れればノックダウン」と「クリーンヒットしててもダメージが無いなら瞬時に立ち上がればフラッシュダウン。ノックダウンとはしない」という裁定はレフェリーとして瞬時の判断は難しいでしょうね。プロボクシングの場合、いずれも最高権限者のレフェリーが判断したら、その場はその裁定に従うしかありませんが、ラウンド終了後、ジャッジによって審議に入ることは可能です。

睦雅はベテラン114戦目の健太にヒジ打ちでTKO勝利。3月に王座決定戦で内田雅之を破りチャンピオンとなって勢い付いて健太を破った今回。来年も注目株となりそうです。

2024年最初のジャパンキックボクシング協会興行は、3月24日(日)に後楽園ホールに於いてKICK Insist.18が開催予定となっています。今年度は武田幸三氏が抜けたことで、次の新春興行が無いのはやや痛いところか。

5月には日時未定ながら市原臨海体育館での市原ジム興行。

7月28日(日)に後楽園ホール、9月29日(日)に新宿フェイス、11月17日(日)に後楽園ホールで開催。現在のところ年5回の興行が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

官製談合疑惑、身内優遇で不祥事だらけの平川理恵・広島県教育長、それでも居直りのまま、また年越しか? さとうしゅういち

◆不祥事でボロボロも教育長に居座る劣化ウラン面皮

平川理恵・広島県教育長は、数々の不祥事にもかかわらず、教育長に居座ったまま年を越しそうです。

2022年夏に県教委が平川教育長のご親友のNPO法人パンゲアに発注した事業(合計金額2600万円)を巡る官製談合疑惑が『文春砲』で暴かれました。弁護士による外部調査でも地方自治法違反、官製談合防止法違反が指摘されました。さらに、その弁護士への依頼費用約3000万円は全て県民のお金で賄われています。また、2021年度には100万円、2018年度からの4年では700万円のタクシー代を使っていたことが明らかになりました。

これとは別に、大阪の企業で、平川教育長の別のご親友が社長の『キャリアリンク』との取引は『教育長案件』と職員に認識されていたことが、中国新聞の情報公開で明らかになりました。平川教育長自身は、キャリアリンクに発注したのは『自分の指示ではない』と否定していますが、そんな弁解は誰も信用していないような状況です。

また、平川教育長はさらに別のご親友の児童文学評論家の赤木かん子さんに学校図書館のリニューアルを委託し、旅費など646万円を支払いました。おまけに、図書を入れ替える際に、大量に赤木さんの著書を購入させていました。内部調査では法令違反ではないとされました。しかし、頭ごなしのリニューアルは、図書館の自由に関する宣言に反するものです。

2023年2月21日、平川教育長は一連の『事件』当時課長級だった職員一人を戒告処分としたうえで、自分自身は給料の自主返納という「処分にもならない」幕引きを図ろうとしました。

そして、横浜で民間出身校長だった当時の平川教育長を「一本釣り」してきた湯崎知事も教育長を罷免しようとはしていません。

最近では、赤木かん子さんが図書館のリニューアルから外されるなど、平川教育長の権力低下は著しいものがあるそうです。とはいえ、依然として県教育のトップに居座っておられるのは事実です。

鉄面皮、いや、劣化ウラン面皮とでもいうべき平川教育長に、怒りを通り越して、うっかり尊敬の念さえ抱いてしまいそうになるほどです。劣化ウランは鉄よりも硬いので戦車の装甲や砲弾に使われていますが、平川教育長は、その劣化ウラン並みに打たれ強いと言えます。

◆議会の追及は口先だけ⁈

一方、県議会でも追及は続いています。11月24日の広島県議会決算特別委員会では、日本共産党や保守系で湯崎知事に批判的な会派の議員だけでなく、湯崎知事に近い自民党会派出身の議員からも『中途半端な調査報告のために反省もない対応を、議会として認めることはあってはならないと考えています』との批判が噴出する有様です。

他方で、この決算特別委員会では結局、昨年度の県の決算を賛成多数で認定してしまっています。決算というのは認定されなくても実際には混乱は生じないのですから、平川教育長に対してノーを突き付ける意味で、決算認定をしないという手もあったはずです。しかし、それを県議会の多くの議員が選択しなかったということは、やはり、口先だけと言われても仕方がありません。

他の自治体では教育長に対する辞職勧告決議案も出ています。兵庫県太子町では2022年にセクハラ疑惑を起こした教育長に対して辞職勧告決議を町議会が検討。町議会が始まる1週間前の8月22日にこの教育長は辞任を表明しました。議会がその気になれば教育長を打倒することはたやすいことです。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202208/0015576441.shtml

◆不祥事で懲戒免職の教員も「平川教育長名」で処分の笑止

さて県内では一連の『事件』発覚後も、教員による不祥事が相次いでいます。広島市を除き、公立学校の教員の処分は県教委、すなわち平川教育長の名前で行われることになります。

2022年12月21日、県立高校の教諭二人が18歳未満の女性にわいせつな行為をしたとして懲戒免職になりました。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/513384.pdf

当時の広島県教育委員会の松下大海教職員課長は「教育の信頼を損なう事態が発生したことについておわび申し上げます。再発防止に取り組んでいきたい」と話したそうですが、「あなたの上司である教育長が一番教育への信頼を損なっているのでは?」とニュースを報じるテレビ画面に突っ込みを入れてしまったのを覚えています。

2023年3月24日には、コロナ休暇を不正に取得したとして県立学校の主事が停職2か月となりました。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/524711.pdf

直近では10月13日、18歳未満の女性への買春などの被疑事実で逮捕され、70万円の罰金が確定した廿日市市市立中学校教諭の宮本竜太被疑者(当時35)が懲戒免職になっています。

「教育公務員としての職の信用を著しく損なう重大な非違行為であり、信用失墜行為の禁止を定めた地方公務員法第 33 条の規定に違反する。」というのが処分理由です。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/552231.pdf

未成年者とのわいせつ行為や買春はとんでもないことです。それはそれとしても、これらの処分を受けた先生方も平川教育長の名前で処分されたくはないでしょう。平川教育長が居座れば居座るほど、教職員のモラルは崩壊していくのは間違いありません。

◆県外のお友達優遇止め、県内にお金を回すべき

平川教育長は県外のご親友ばかりを優遇してきました。そもそも教員の研修など、県教委に指導主事がいるわけです。その人たちを差し置いて県外に発注するのは、県費の無駄遣いではないでしょうか?

それよりも、例えば、『ホーユー事件』で明らかになったような低すぎる給食の単価を引き上げる。そのために入札制度を改革する。非正規の先生だらけの状況を正規への登用で是正していく。

そうしたことが今、必要なことではないでしょうか?

大阪の企業を振興したいなら、それこそ、広島県教育長などさっさとお辞めになって、今春の大阪府知事選挙にでも立候補されれば良かったのです。

◆地方衰退への危機感の勢い余って食い荒らす自称『新しい血』……平川問題の教訓

平川教育長については、マスコミが天まで持ち上げていたことは忘れてはなりません。もともと、広島は保守的な土地柄で、『年配男性中心』の意思決定が根強くありました。そうした中で、全国と比べても様々な面での遅れが目立っていたのは事実で、広島県庁在職中の筆者もそのことは痛感していました。

そうした中で、文科省官僚や教員上がりといった『既存型人材』、あるいは年配男性を中心とした地元の旧来型政治家への不信感、不安感も広がった。そこに、平川教育長は巧妙につけ込んだとも言えます。

そして『旧来型政治家』が多数を占める議会も、結局、平川教育長へのチェック機能は十分に果たしていません。

今後も、衰退する地方ほど、これまでの古臭さへの「焦り」から『女性』とか『若い』というだけで、平川教育長のような人に権力を与えてしまい、却ってドカ貧を招く、という恐れは十分にあります。
 
「年配男性」「天下り官僚」「地元旧来型政治家」といった『旧来型権力者』に対してだけでなく、平川教育長的な「外部の新しい血」を標榜する権力者に対しても、市民・県民が舐められないよう、きちんとチェックしていくべき。このことは大きな教訓です。

筆者と広島瀬戸内新聞では『湯崎知事や平川教育長らから広島を取り戻し、広島とあなたを守るヒロシマ庶民革命』『総理や知事や教育長になめられない広島県民をつくるヒロシマ庶民革命』を呼び掛けています。

2025年11月の広島県知事選挙へ向け、湯崎英彦現知事の打倒と庶民派知事・庶民派県議の誕生を目指しています。

◆住民訴訟、本格化

こうした中、平川教育長による疑惑幕引きを是としない頼もしい県民がおられます。8月29日、平川教育長に対して、県にパンゲアとの取引で生じた2645万円、弁護士費用3000万円、2021年度分のタクシー代100万円の計5745万円を返すようもとめる住民訴訟が広島地裁に提起されました。

第二回口頭弁論は以下の予定です。

県教委「官製談合」をただす住民訴訟
第2回口頭弁論は12月5日(火)13:30~
弁護団は県教委の「答弁書」に反論、詳述する書面を提出予定

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

《12月のことば》良心の充満したる丈夫となれ 鹿砦社代表 松岡利康

《12月のことば》良心の充満したる丈夫(ますらお)となれ(鹿砦社カレンダー2023より。龍一郎揮毫)

本年のカレンダーもあと1枚となりました。

1年経つのは本当に速いものです。

新型コロナ襲撃でのた打ち回り、読者やライター、取引先の方々の力をお借りし、無我夢中で頑張ってきました。

コロナ以前には左団扇状態で蓄えも少なからずありましたが、一気に変わりました。

潰れもせずにやって来れたのは、ひとえに皆様方のご支援のお蔭、あらためて感謝申し上げます。

今月の言葉は、龍一郎や私の母校の校祖の言葉から採っています。

果たして私たちは「良心」に恥じない生き方をしてきたであろうか? 今の世の中に「良心」というものがあるだろうか? 良心があれば、ウクライナやパレスチナ問題は起きないでしょう。あらためて想う。

来年のカレンダーが出来上がってきました。

毎年楽しみに待っておられる方々が多くおられます。

まずは『紙の爆弾』『季節』定期購読者の皆様には新たな号と一緒に送りますので今しばらくお待ちください。

本年一年、どうもありがとうございました。

(松岡利康)

尾崎美代子『日本の冤罪』
鹿砦社編集部編『ジャニーズ帝国 60年の興亡』
山下教介著『[復刻新版]ドキュメント タカラヅカいじめ裁判 ── 乙女の花園の今』
 

ピョンヤンから感じる時代の風〈35〉NTT法廃止問題から見えてくるもの 魚本公博

この間、貴誌には日米統合問題について何回か寄稿させて頂いた。この11月にも見逃せない問題が起きている。すなわちNTT法廃止問題である。今回はこの問題を考えてみたい。

◆NTT法廃止問題

11月8日の読売新聞に「NTT法見直し 白熱」の記事があった。今、自民党内でNTT法廃止議論が白熱しているという。

この論議は、6月頃、前幹事長の甘利氏が増大する防衛費をどう解決するかの問題で、NTT株を売却して、これに当てるという案を提起したことに端を発する。

甘利氏は、自民党内にこれを討議するプロジェクトチーム(PT)を作り、議論を牽引している。その案では、時価評価で5兆円になるNTT株を20年間、毎年2500億円で売却して、それを軍事費に当てるとしている。これに軍事費倍増のための増税で不評を買う、岸田首相が飛びついた。

しかしNTT法では「NTT株の3分の1以上を国が保有する」となっており、この条項をなくさなければ売却できない。だからNTT法を廃止するということである。

NTT法廃止論者の狙いは、それに止まらない。読売新聞は、甘利PTが重要なポイントと見ているのが、NTTに対する「総務省の関与度合いの縮小」だと指摘する。

甘利氏は「監督官庁による規制は日本の競争力への規制に他ならない」と述べ、荻生田政調会長も「NTTが海外と勝負できる会社に成長する可能性を阻害したのがNTT法だ」とし、その旨、衆院予算委員会で質問し、岸田首相は「規制を抜本的に見直す必要がある」と答弁している。

NTT法は、84年に「日本電信電話公社」が民営化され「日本電信電話株式会社」(NTTはその略称)になった時、その公共性を保障するための規制を定めたものである。

そのために3条で、会社の使命として、①固定電話をユニバーサルサービスとして全国一律に提供する。②電話通信技術の普及を通じて公共の福祉に資する研究開発を行い、その成果を公表する、としており、NTTが公共性を守り、営業本位に走らないように、「取り締まり役の選任」や「事業計画」で総務相の認可を義務付けるなどの規定が明記されており、その中には「外資規制」もある。

NTT法廃止については情報誌『選択』(11月号)が「NTT法廃止という亡国」という記事を出している。それは「杜撰なロジック、大義のない議論」だとして、その亡国性を突いたものである。

また、この議論の過程で、甘利PTがNTTや携帯電話業者のKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社の意見を聞く場を設けたが、廃止を主張するNTTに対し、他の3社が廃止はNTTの巨大化許し「公正な競争」を阻害すると反対し、議論が「公正な競争」を論議になったことも「巧妙な『論点外し』」と指摘する。

ただ、『選択』誌は、「NTT法廃止には外資規制の重要問題もあるが、紙幅も尽きた」として、これが米国外資への売却という点を述べようとせず、結論も「将来、ユニバーサルサービスが失われ、しかも通信インフラが中国資本に握られる・・・」などとと、中国が日本の情報インフラを握る危険性があるかのようになっている。

「米国隠し」は、日本マスコミの宿命とは言え、残念なことである。

◆米国への日本の統合を見てこそ浮き彫りになる問題の本質

『選択』誌が指摘するように、NTT法廃止議論は、「杜撰なロジック」「巧妙な『論点外し』で、物事の本質が見えにくい。しかし、この問題も米国が米中新冷戦での最前線に日本を立てるために、日本の全てを米国に統合するという政策との関係で見れば、その狙いと問題の重要性が浮き彫りになる。

それは米国が日本統合のために通信インフラまで掌握しようとしているということであり、甘利やそのPTメンバー、荻生田政調会長、岸田首相など自民党中枢は、それに応じてNTT法を廃止して、その株式を米国外資に売却しようとしているということである。

元々、甘利は、TPP(環太平洋貿易協定)交渉でデータ主権放棄を米国に約束した人物であり、TPP交渉の過程で「国境をまたぐデータの自由な流通の確保、国内でのデータ保存要求の禁止という原則」を受け入れている。そして2020年1月に、安倍政権は、それを「日米デジタル貿易協定」として締結し、自らデータ主権を放棄している。当時、トランプ大統領は、この締結について「4兆ドル相当の日本のデジタル市場を開放させた」と自身の成果を誇っている。

NTT法廃止問題は、データ主権放棄の更なる深化である。

今、データに関しては、これを集約利用するクラウドが重要になっている。それ故、岸田政権は6月の骨太方針で「国産クラウド」育成の方針を打ち出した。それはデータを米国に握られる危険性を承知している日本経済界の要望を入れたものだろう。今、日本のクラウド市場では米国3社が60-70%のシェアを占める。その危険性は日本の大企業も充分承知しており、日本製のプラットフォームやシステムを採用している企業や地方自治体も多い。

「国産クラウド」が言われた時点では、マスコミなども、「日本勢の健闘が期待される」などと言っていた。そこで期待されたのは、NEC、富士通、そしてNTTであった。その中でも、かつて公社であり、NTTドコモなど高い技術力を持つNTTであった。

まさにNTT法廃止は、このNTTの経営権を米国に売ることで、「国産クラウド」の芽を潰し、日本のデータを日本勢が管理する道を阻害するものになるということである。

それだけに止まらない、NTTは日本の通信インフラ(固定電話回線、光ファイバー回線、電柱、管轄、局庁舎など)を握っており、米国は、それまで掌握しようとしているということなのだ。通信インフラ自体を握れば、徹底して日本の情報(データ)を握ることができるし、今後起こりうる「反逆」も潰すことができる。

今、米国覇権は崩壊の度を増している。ガザでのイスラエルの虐殺蛮行を容認する米国への非難の声が世界的に高まり、日本が米中新冷戦の最前線に立たされ「新たな戦前」が言われる中で、米国一辺倒、米国覇権をあてにした生き方が本当に日本のためになるのか、それで日本はやっていけるのかという声が高まっている。

「これを何としても阻止し、反逆は許さない」、NTT法を廃止して、社会のデジタル化の基礎である通信インフラを掌握しようとする米国の意図はそこにある。

NTT法を廃止して、NTT株を米国外資に売るということは、それだけの重大性を持っている。そこに「亡国」の本質がある。

◆「公共性」を守り、国民の財産を守る

NTT法廃止問題は、公共性を維持保障するための規制を廃止するかどうかの問題である。

84年制定のNTT法は公共性に基づいている。電信電話という情報インフラは公共のものであり、それは国民の財産であり、国として守らなければならないという考え方である。

NTT法が、「固定電話によるユニバーサルサービス」や「研究開発」を義務づけたのもそのためである。

これに対し、NTTの現経営陣は、固定電話によるユニバーサルサービスが加入者の減少によって赤字になっていることや研究開発義務が外国企業との共同研究の足かせになっていると主張する。

それは、まさに日本の通信をGAFAMに委ね、日本独自の研究を止めて米国との共同開発を進めるという米国の下への日本の通信の統合のためのものだ。

彼らは、それを「NTT法は40年前の時代遅れの規定」として正当化する。

40年前、「JAPAN AS NO.1」と言われた日本の競争力を削ぐため、米国は、日本の国営企業を問題視し、3公社(日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社)の民営化を要求してきた。

日本政府はその要求に応じて、日本電信電話公社を民営化したが、民営化されたNTTが営業本位に走り、公共性を放棄しないように、NTT法を制定したのであり、当時は、そうした考え方が健在であったのであり、「外資規制」も米国外資がNTTを買収する危険性を防止するためのものであったと見ることができよう。

NTTが所有管理している電柱、管轄、局舎などは加入者の使用料や国民の税金で作られたものであり、国民の財産である。

KDDI幹部の「民営化前に15兆円、現時価で40兆円の国民の資産を継承している責任は重い」、「許せば、NTTは過疎地や離島での固定電話サービスを止める」の指摘はもっともなことである。

これと関連して、イーロン・マスクが進めているグローバルな衛星通信網「スターリンク」との関係で、固定電話によるユニバーサルサービスなど時代遅れだとの論説が流れた際、総務省幹部が「馬鹿な わが国の緊急通報をイーロンマスクに委ねろというのか、スターリンクに低廉な料金やサービス維持の仕組みはない。明日やめるとマスクが言えば万事休すだ」と反論しているが、まったくその通りであろう。

 
魚本公博さん

公共とは皆のものということであり、NTTは国民皆のものである。それを米国外資に売却するなど許してはならないと思う。

岸田政権は、甘利PTの提案を受け、来年8月の国会に法案を提出したいとしている。

事は国民の財産を守るのか、米国に売り渡すのかの問題であり、甘利PTのような自民党内の狭い議論ではなく、国民的な議論にしなければならない。こうした議論の中で、「亡国」のNTT法廃止の法案を廃案にさせなければならないと切に思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』
『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

被害が深刻なほど被害者不利の不条理! 父親の娘への性虐待、「除斥期間」理由に慰謝料請求却下の不当判決 広島高裁 さとうしゅういち

子ども時代(保育園から中学2年生まで)の父親からの性的虐待により、大人になった現在、PTSDに苦しんでいるとして、広島市の40代女性が父親に慰謝料など3700万円を請求している「性虐待PTSDひろしま裁判」の控訴審判決が11月22日、広島高裁であり、原告=被害者女性の訴えを棄却する不当判決となりました


◎父親から性的虐待、女性が損害賠償求めた裁判 広島高裁が訴え退ける「請求権は消滅」女性は上告の方針(広島ニュースTSS 2023/11/23)

◆「人倫にもとる」と父親を断ずるも「除斥期間」を理由に却下

広島高裁の脇由紀裁判長は被告=加害者=父親による性的虐待行為は「人倫にもとるもの」認定しました。しかし、女性が10代後半にはPTSDの症状を発しており、不法行為から「除斥期間」である20年がたってからは請求する権利はない、として一審判決同様、女性の訴えを退けました。原告の女性は、この判決にあきらめずにただちに上告することにしました。

原告は、2020年に提訴。しかし、広島地裁は2022年10月に父親による性的虐待の事実や女性の被害を認定しましたが、「10代後半には精神的苦痛を受けていた」ので、「遅くとも20歳になったときから20年が経過した提訴前の時点で、賠償請求できる権利が消滅した」と判断して原告の訴えを棄却。原告が控訴していました。

◆苦しむ期間が長いほど不利になる理不尽な理屈

たしかに本件の性虐待自体は20年以上前ですが、被害者はそれによって大人になった後もPTSDに悩まされています。父親による被害が現在進行形で続いています。裁判長は、PTSDが10代後半で既に発症していたことも理由に、そこを起点に除斥期間を設定してしまっています。これは苦しむ期間が長いほど、被害者が不利になるという理不尽な理屈です。

そもそも時効とは法的安定性の確保のために「権利の上に眠る者は保護せず」というのが趣旨です。権利があるのに怠慢で権利行使を怠ってきた者にはもう権利行使は認めないのが民法の思想です。例えば、友人に貸したお金の返済を長い間催促しなかったとか、大家さんが借主に未払いの家賃を催促しなかったとか、そういう場合を想定しています。今回適用された法理は旧民法で定められていた除斥期間であり、不法行為の債権が20年で消滅するというものです。モノを壊された被害者が20年間損害賠償を請求しなかったとか、そういう類のものです。

しかし、本件では、被害者は権利を漫然と行使せずにきたのではなく、10代後半以降、ずっと苦しんでおられたが、父親の性暴力による被害であることさえ意識できなかった。そして最近、やっと被害を言い出すことができたという事情があります。この点が、一般の損害賠償請求訴訟とは異なります。さらに、その被害は今も継続しているのです。被害者が直面した事態は、除斥期間を旧民法に導入した立法者が想定していない事態です。旧民法の時代には、そもそも家父長制のもと、父親の権威は絶対です。それと連動して刑法には戦後も維持された尊属殺人という規定がありました。父親の虐待に耐えかねて父親を殺した娘にあわや死刑適用かという場面もありました。この時は尊属殺人の規定は違憲だという判断が示されました。この時は「裁判官が仕事をした」と言えます。

だが、脇裁判長は、尊属殺人の規定があった時代の考えをひきずって今回の判決を出した、すなわち「仕事をしなかった」とも言えます。

◆伊方原発広島裁判仮処分却下に続き期待を裏切った脇裁判長

今回の裁判長は女性の脇由紀裁判官であったことから、ひょっとしたら、原告勝訴の判決もあるかもしれない、と筆者も期待しました。しかし、その期待はもろくも打ち砕かれました。冷静に考えると、脇裁判長は、筆者も原告である伊方原発広島裁判において、筆者ら原告側が求めていた運転差し止めの仮処分申し立てを却下した裁判官でもあります。要は、従来の判例から踏み込んだ判断をされるような裁判官ではなかったということです。

不当判決を上告した原告を徹底的に支援するとともに、一方で、裁判官の質によって被害者の救済が左右されないよう、今回のような事案に対応した法改正も必要と感じます。

◆フラワーデモ「勇気をもって訴えた原告に感謝」

広島高裁による不当判決を受け、「フラワーデモ」が夕方17時から広島市中区の本通り電停前で行われました。フラワーデモは2019年3月に、性暴力で起訴された男性が相次ぎ無罪となったことを受けて、それに抗議するために2019年4月11日に東京駅前で始まりました。それにより性暴力の厳罰化など、一定の法改正が進んだのは皆様もご承知の通りです。

広島高裁による不当判決を受け、広島市行われた「フラワーデモ」

この日は11日ではありませんが、今日の判決日にあわせて被害者勝訴であろうが、不当判決であろうが、開催されることになっていました。広島市での開催は大都会の割に少なく、7回目です。それだけ広島が特に岸田総理の選挙区である中心部ほど保守的ということはあるのですが、そんな状況で開催されている皆様には敬意を表します。

フラワーデモでは、まず、寺西環江弁護士から本件判決についての報告が行われました。

また、夫婦同姓を義務付けた民法の規定は「法の下の平等」を定めた憲法に違反するとして、国を訴えていることでも有名な恩地いずみ医師は「勇気をもって提訴した原告に感謝する」と原告の勇気を称えました。

また、主催者を代表して岡原美智子さんからはフラワーデモの歴史などについて紹介。その上で「同じ広島県内で、男性塾講師から10年以上も洗脳の上、性暴力被害を受け続けた20代女性が、フラワーデモのニュースを見て勇気を得て、弁護士に相談。提訴をし、事実上勝利となる和解を勝ち取った」ことが紹介されました。

広島県内では、このほかにも、呉の海上自衛隊でセクハラ被害者の女性隊員が望まないのに、加害者に直接謝罪させ、女性隊員が退職に追い込まれる一方で、加害者や上司は停職処分で済まされるという理不尽な事件が起きています。

全国的に見れば、例えばジャニーズにおける性加害問題は、長年、鹿砦社を除いてほとんど追及されてきませんでした。

性暴力を許さない社会へ、今回のように声を上げた被害者を支援することで声を上げやすくするとともに、裁判官の質によって被害者の救済が左右されないような必要な法改正が引き続き求められます。

[追記]広島高裁による不当判決を受け、広島市で行われた「フラワーデモ」は、毎月11日に首都圏で行われているフラワーデモとは直接、組織的な関係はなく、今回の原告の支援者が不当判決に抗議して行った街宣です。(筆者)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年12月号

老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由〈3〉 試験片が枯渇し、中性子照射脆化を評価できなくなった原発は、直ちに廃炉にすべきである 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

本稿は『季節』2023年夏秋号(2023年9月11日発売号)掲載の「老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

◆東海第二の現状

先の論文では運転期間は60年(定格出力運転相当年数・定格出力で連続運転したと仮定して計算した年数で48年)までしか解析されていない。東海第二は今のままでは72年近く運転する可能性がある。運転期間としても50年を大きく超えるだろう。また、材料の具体的な評価については記述がないため、どんな不純物が含まれているかわからない。

一般に、中性子照射脆化は材料に含まれる元素の種類や量で大きく変化する。そのため同じ材料(母材、溶接材)で試験片を作らないと意味がないが、たった5㎜では同じ材質の試験片になっているとは考えにくい。

東海第二と同型のBWRである敦賀1号(すでに廃炉)では加速試験(炉心内で炉壁よりも燃料体に近い場所に試験片を置くことで中性子照射量を多くして、寿命末期の状態を模擬して行う評価)を行ってきたところ、実際の炉壁の状態を模擬できなかった(少ない影響しかないように評価された)例もある。

東海第二も加速照射なので、これまで取り出した試験片が実際の炉壁の状態を正しく評価できるデータが取れているか疑問だ。

そういう状態であるにもかかわらず、中性子照射脆化と加圧熱衝撃の評価をしないなどというのは、都合が悪いから逃げているに過ぎない。しかし事故からは逃げられないということは知るべきだ。

試験片が枯渇し中性子照射脆化を評価できなくなった原発は直ちに廃炉にするべきである。

◆規制委は危険な原発を止められるのか

西村康稔経産大臣は国会で、原発の安全規制に懸念を持つ議員から、危険な老朽原発を事故前に的確に停止することが可能なのかを問われた。大臣は規制委が厳格な審査を行い、不合格になれば原発の運転ができなくなるのだから問題ないと繰り返し答弁した。

改訂前の炉規法では40(+20)年で廃炉となった。今後は事実上、制限がなくなる。老朽原発は規制委が危険性を未然に見つけて許可しないとの判断をしない限り、廃炉にすることができなくなる。

もともと炉規法に年数制限を入れたのは、古い設計で安全上不安のある原発の自主退場を促すことも目的だった。

改正前の炉規法では、よほどのことがない限り運転中の原発に運転停止を命ずることができなかった。しかし新規制基準ができたことで地震や津波、過酷事故対策に加え、特定重大事故対処等施設の建設と、大規模な設備投資が必須となった。

このような工事は100万キロワット級原発と50万キロワット級原発で、費用が倍も違わない。安全対策工事にかかる金額は、柏崎刈羽全部で1兆2000億円、東海第二で3000億円など、原発が1基建ってしまうほどの費用がかかる。同じ投資をするのならば、運転可能年数も長く、設計も建設も新しい原発に集中した方が経済性も良いことは常識である。

そのこともあって、今まで伊方1、2号機、美浜1、2号機など比較的小型で老朽化が進んだ原発が廃炉になった。震災後、東電福島第一と第二を除けば、11基が廃炉になっている。

しかし、ここにきて廃炉の波は止まっている。柏崎刈羽1~5や志賀1などは、新規制基準適合性審査を受けていないが、廃炉にもしていない原発がある。

「新・新規制基準」では、これら原発は動かないのに運転可能年数だけは無意味に伸びていく。老朽化が進んだ原発の退場を促すどころか、いつまでも「動くかもしれない」と、廃炉にもせず、再稼働準備と称して対策工事を延々と続け、経営を圧迫し地域を不安に追い込む。そんな原発が8基もある(柏崎刈羽1~5、志賀1、女川3、浜岡5)。(つづく)

◎老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由[全4回]
〈1〉脆性遷移温度が危険域に達した関電高浜1号
〈2〉運転実績や想定を超えている原発の「60年超運転」
〈3〉試験片が枯渇し、中性子照射脆化を評価できなくなった原発は直ちに廃炉にすべきである

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年秋号

龍一郎揮毫