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◆『さらば日大!』和田秀樹医師が暴く日本大学と「医学部」「医師界」の闇
 構成・文責/編集部

 

 

日本最大の学校組織・日本大学で、林真理子理事長から常務理事として招聘を受けながら、同氏によって今年1月に辞任させられた精神科医の和田秀樹氏が7月、『さらば日大!』(ブックマン社)でその真相を明かした。

日大は2018年にアメフト部の悪質タックル問題が勃発。林理事長となった昨年7月にも同部で大麻事件が発覚した。両事件や田中英壽前理事長の問題については『さらば日大!』でも年表とともに詳述されている。これら「日大問題」があれだけ世論を席巻したにもかかわらず、それをまとめた書籍がこれまで出ていなかったこと自体が〝闇?の深さを象徴しており、同書の大きな存在意義だといえる。

医師として「薬漬け医療」をはじめ、日本の医学が抱える数々の問題を追及してきた和田氏に日大と「大学医学部」「医師界」の内実を聞いた。

 あまりに軽い林理事長のクビ宣告

── 日本大学医学部附属板橋病院(東京都)の建て替え計画を巡る背任事件での逮捕を受けて、田中英壽前理事長(今年1月に死去)が辞任したのが2021年末。翌年7月に作家である林氏が理事長に就任しました。まず、林理事長の常務理事招聘で、和田さんに対して求められていたものとは何だったのでしょうか。

和田 林さんとは20年以上の親交があり、「和田さんのような“異星人”に来てほしい」と言われて日大理事を引き受けました。そこから約1年半で大学を去ることになったわけですが、私には成城学園で理事を務め、国際医療福祉大学では教授として医学部(2017年)の新設に関わってきた経験があります。当然、日大では医学部の改革が私の役割だという認識でしたが、今から振り返ると、林さんが、私のこうした能力に期待していたわけではないのかもしれません。「エンジン01文化戦略会議」という文化人団体で、林さんを継いで、現在の幹事長を私が務めています。そうした関係性から、「使いやすい人間」だと思ったのではないでしょうか。

そもそも私を含めた林体制とは、日大にとって、独裁者として知られ暴力団との“黒い交際”まで発覚した田中英壽理事長からの脱却をアピールするのが一番の目的です。就任前から林さんと打ち合わせを重ねて「不正事案洗い出しのための特別調査委員会」の設置を決め、一部の反発を受けながらも新生日大の象徴となっています。にもかかわらず、林さんは後に否定しますが、私をクビにした理由として、「和田さんがいろいろなことを言うことで学部長たちが怒っている」と口にしました。私は、それは気の毒だと思って辞任を受け入れたものの、あまりに軽い一言でしたね。

── 日大医学部や附属病院(現在、医学部附属板橋病院と日本大学病院)が抱えていた問題とは。

和田 まず、常識から考えて、大学病院で赤字なんて絶対におかしい。病院に患者さんが集まり、学生から人気のある医学部は作れると考えました。国際医療福祉大学では、給料は決して高くなくとも、大学教授の肩書きを与えることで医者を集めることに成功しています。医者の愚かさともいえますが、医学部教授の肩書きはそれほど魅力的なわけです。

それを考えれば、日大はブランド力をどぶに捨てている、真逆の経営です。なにしろ、理工学部約240人に対して、医学部にはおよそ40人しか医学部教授がいないのです。近隣の順天堂大学は220人以上の教授を抱えています。私から見ると日大はとても不思議な組織で、改革の余地と可能性があることは明らかでした。

── 林理事長就任からすでに2年半を経過しても、日大が不祥事のイメージから脱却したようには見えません。

和田 林さんは、言うまでもなく直木賞の選考委員長をはじめ、すでに文壇での地位は高かった。そんな作家の仕事を制限されても、社会的信用を失い、ドン底にあった日大を立て直したいと、自ら手を上げたのは事実でしょう。たとえば法政大学では田中優子前総長がイメージを大幅に改善。明治大学も広報戦略で「女子高生が選ぶナンバー1」となった。彼女も作家としての力で日大のイメージを良くし、特に女子学生の比率を上げることは可能だと考えたのだと思います。ただし、そのためにしたことといえば、たとえば当初の彼女が出した案は、社長と昵懇のマガジンハウスと組んで雑誌型のパンフレットを作るといったもの。少し甘いのではないかという印象はありました。

そんな林さんに対して、老獪な旧勢力は、官僚が政治家を手なづけるようにしていたと思います。その結果が表れたのが大麻事件で、林さんが重要な報告を受けていなかったことが事態の展開に大きく影響しました。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n341f706d3e88

◆岸田首相「核なき世界」約束8日後に退陣表明 広島市の妨害を打破した平和式典「反戦集会」
 取材・文◎浅野健一

 

 

1895年の台湾武力併合以降、アジア太平洋諸国を侵略・強制占領した大日本帝国が無条件降伏した「8・15」の前日である8月14日午前10時半、NHKが「岸田文雄首相が総裁選不出馬を党幹部に伝えた」と速報した。

岸田氏は11時半から官邸で記者会見し、「総裁選で自民党が変わる姿を示すことが重要で、最もわかりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」などと表明。会見は30分前に内閣記者会に通告され、正副の官房副長官が同席しない異例の事態だった。

司会は7月1日に就任した小林麻紀内閣広報官。小林氏は外務報道官だった6月26日の会見で、政府と沖縄県警が米兵による少女強姦被告事件(2023年12月24日)を半年間隠蔽していたことについて、「個別具体的な事案の内容に応じて適切に判断して対応している」と居直った外務官僚だ。

幹事社である日経新聞の秋山裕之記者が「日本外交の顔が見えてくるようになった今、総裁選に出馬して政権を維持する選択肢はなかったのか」と質問した。幹事社の質問内容は常勤幹事社19社の総意で決まる。他の記者からも、特筆すべき質問はなかった。司会の内閣広報官が一方的に閉会を告げるいつものパターンで会見は終了。たった20分で、安倍晋三、菅義偉両氏の退陣会見に比べても異常に短い。一方的な会見終了に記者から抗議の声はなかった。

官邸での首相・官房長官の会見は内閣記者会の主催でも、官邸報道室がすべて仕切っている。これは内閣記者会の規約に違反している。1970年代には、佐藤栄作首相の会見をボイコットすることもあった。米ホワイトハウス記者会(キシャクラブではない)も大統領の会見が無内容で宣伝目的だと判断するとボイコットする。第2次安倍政権以降、内閣記者会はまったく権力監視機能を失った。

この会見で岸田氏は、「憲法改正については、緊急事態条項の条文化の作業や、自衛隊の明記の論点整理を進めている。着実に実行してまいりたい」と意欲を示した。1週間前の8月7日、党本部で憲法改正実現本部の全体会合に出席し、緊急事態条項に加え憲法9条への自衛隊明記をテーマとする国民投票の実施を目指す考えを示していた。また岸田氏は会見で「原発再稼働、新型革新炉の設置など、エネルギー政策を転換した」と強調した。

自由と民主主義を蹂躙し、軍国主義化を進める岸田氏に憲法を語る資格はない。憲法第99条で憲法尊重順守義務を課せられている首相が、憲法に口出しするのは不当だ。

 安倍・菅退陣時と同じキシャクラブメディアの自民協力

岸田氏の不出馬表明後、総裁選(9月12日告示・27日投開票)に最初に名乗りを上げたのは、若手が推すとされる極右・靖国派で統一協会=国際勝共連合まみれの小林鷹之前経済安全保障担当相(衆議院千葉2区)だった。それ以来、メディアは小林氏を持ち上げるが、NHKが19日午後2時の定時ニュース枠を延長する形で、小林氏の出馬会見を衆院議員会館から生中継したのには、さすがに驚いた。

NHKは総合テレビでの甲子園の高校野球中継をEテレに切り替え、何の実績もない財務官僚の小林氏の宣伝をした。小林氏は、自分は「普通のサラリーマン家庭」に生まれ、大学生の時に父親の会社が倒産したなどと自己紹介。まるで政見放送のようだった。

スタジオ出演した政治部記者は「派閥がなくなって初めての総裁選」と解説したが、派閥は森山グループ以外、まだ政治資金規正法の「政治団体」としての解散手続きを終えていない。麻生派は解散しないと決めている。小林氏の父親の泰芳氏は財閥系の「大倉商事」の幹部でグループ会社の社長などを歴任。倒産後も老舗建材メーカーでいきなり貿易事業部長を任されて取締役に出世。決して「普通のサラリーマン」ではない。

私が代表を務める千葉県「戦争のない世界を憲法9条で実現しよう!憲法9条世界へ未来へ連絡会」(9条連)が8月17日に開いた定期総会で、宮川伸元衆院議員(立憲民主党・千葉13区)は「2021年の衆院選前と今はそっくりだ。東京五輪が終わり、菅義偉政権の支持率は20%台と低い中、菅総理は降りた。自民党総裁選の2週間、自民党のメディアジャックで、市民の関心が自民党に向く中で解散して選挙に圧勝した。今回は同じ事態を避けなければならない」と強調した。

自民党が電通や博報堂を動員し、メディアを動かしての巧妙な看板替え作戦が進んでいる。自民党は自ら定めた党綱領、運動方針に違反した犯罪者集団組織である。岸田氏らは、党首が変わることで党が原点に戻り再生するというが、問題を起こした団体がリーダーを替えれば組織が新生するなら、山口組も統一協会もオウム真理教もリーダーを一新すればいいということになる。

 メディアが報じない「要望を聞く会」

岸田氏の政権放棄表明が広島・長崎の原爆記念日と敗戦記念日の間に行なわれたことは深刻だ。オバマ米大統領が2016年に広島を訪問して以降、私はほぼ毎年、8月6日に現地を訪れてきた。そのたび最も暑い時に、無差別に市民を大虐殺した米国の核攻撃への憤りを覚える。言語哲学の父といわれる米国のノーム・チョムスキー氏は私との対談で、日米戦争の時代、日本人は「害虫」扱いだったと教えてくれた。極東のアジア人を狙った人種差別の人体実験だった。

その米国の「拡大抑止」戦略の下、対中戦争を見据えた軍事同盟の強化の中で、今年の広島での式典は開催された。7月28日の日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)会合で、自衛隊が来春までに「統合作戦司令部」を設けるのに合わせ、米国が在日米軍を再編し、統合軍司令部を新設する方針が決まった。また同日から、陸自と米海兵隊の実動訓練「レゾリュート・ドラゴン24」が8月7日まで岩国・九州・沖縄を舞台に過去最大規模で行なわれた。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nc1935794d703

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

『紙の爆弾』2024年 10月号

『さらば日大!』和田秀樹医師が暴く日本大学と「医学部」「医師界」の闇
旭川女子中学生凍死事件 再調査委員会が隠した社会の病巣 山田寿彦
安倍・岸田軍拡43兆円の無駄遣い 隠蔽主義の「カルト集団」防衛省・自衛隊 清谷信一
日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威 青柳貞一郎
広島市の妨害を民衆が打破 平和記念式典「反戦集会」 浅野健一
“勝ち目”のあるうちに退いた 岸田文雄首相「退陣表明」の裏側 山田厚俊
僚支配・憲法無視・米国追従 「能動的サイバー防御」とは何か 足立昌勝
国民より先に米国に“退職報告”していた岸田首相 
ウクライナの侵攻を「越境攻撃」と呼ぶ欺瞞 木村三浩
兵庫県知事パワハラ疑惑は「維新的」政治家の成れの果て 吉富有治
大屋根リング・会場周辺で“実測” 灼熱の大阪・関西万博 横田一
米大統領選の隠れた争点 日本製鉄のUSスチール買収計画 浜田和幸
子宮頸がんワクチンを打ってはいけない理由 「ワクチン添加物」という“毒” 神山徹
IOCの体質こそ根本原因 パリ五輪ボクシング“染色体問題”の本質 片岡亮
“性加害”補償進まぬウラで 旧ジャニーズと離脱組「TOBE」の明暗
地獄の黙示録1984+40 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 52 プレサンス元社長事件 尾崎美代子

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

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立憲民主党代表選挙(9月23日)、そして自民党総裁選挙(9月27日)が終わりました。終わってみれば、立憲民主党は野田佳彦さん、そして自民党は石破茂さんと「旧新進党OB」が二大政党トップとなりました。

石破さんは、自民党では初の他政党所属経験のある首相になります。

◆1993-94年の政治改革でメジャーデビューした石破・高市・野田・枝野氏

野田さんが決選投票で破った枝野幸男さん、石破さんが破った高市早苗さんも含めて、1993年の「政治改革解散」で注目を浴びた「若手・新人」議員です。いずれも現行の小選挙区比例代表並立制を軸とした「政治改革」の元祖・小沢一郎さんが党首だった政党(新進党か旧民主党)に所属経験がある方です。

1993年の状況をおさらいすると、1980年代末から90年代初めの日本の政治を牛耳っていた金丸信(故人)らによる汚職事件が相次ぐ中で政治改革が叫ばれました。

こうした中で「政治に金がかかるのは中選挙区制のせいだ。また、これからは、政策論争中心の政治にしないといけない。そのためには政党本位の選挙制度にしないといけない」という理屈で小選挙区比例代表並立制を、という議論になりました。

さらに、政党交付金制度が導入され、並行して二大政党に所属していないと国会議員に当選するのはおろか立候補も難しい制度設計とされました。1993年6月に政治改革法案の不成立の責任を問うて野党が提出した内閣不信任案に小沢一郎さんやその側近だった石破さんも含む一部自民党議員も賛成し成立。衆院解散総選挙の結果、自民党が過半数を大きく割り込み、細川政権が成立。1994年に上記のような内容の政治改革法案が成立しました。

しかし、今回の二大政党の党首選挙を拝見すると、30年前に行われたこの政治改革自体が制度疲労をおこしているといわざるを得ません。

◆自民党内の多様性可視化される

自民党総裁選挙では、自民党にもいろいろな考えの方がおられるのが可視化されました。このうち、小泉進次郎さんは親父さんの二番煎じの極端な新自由主義&緊縮財政主義です。解雇規制緩和が小泉さんの目玉でしたが、解雇規制が日本は主要国の中で厳しいとは言えない、と高市早苗さんらに反論され「炎上」。失速しました。

実際、米国は別として日本より解雇規制が緩いとされる北欧などはそのかわり行き届いた福祉や教育=大きな政府があるわけです。今の日本でそこまでの大きな政府を実現する土壌はないし、小泉さん自体が財務省寄りで緊縮財政です。労働者を路頭に放り出した挙句、福祉や教育への予算も不十分なら、大混乱になる。高市さんらの反論は当然です。

高市早苗さんは激しく追い上げた。積極財政であることは筆者も注目しました。この点は小泉進次郎さんよりは評価できる。しかし、高市さんが露骨に靖国参拝を掲げたことは、党内選挙とは言え、「韓国、ひいては米国との関係を悪化させ、日本を孤立させかねない」という不安が自民党員の方の中でも広がったのだろうと推測されます。このために、あと一歩、石破さんに及ばなかったのでしょう。

さて、石破さんが金融所得課税などを主張していたために、石破当選で株価が下がったと言われています。ただ、日本の場合、超大金持ちへの課税は米国さえより甘い実態がある。金融所得課税はどこかでやらないといけません。むろん、その場合でも、米国の利下げなどの動向を見ながら、利上げには当面慎重にするなどの手綱さばきは必要でしょう。慌てて利上げを日本がしなくても米国が下げれば金利差は縮小し、過度な円安→これ以上の物価上昇には歯止めがかかると思われます。

また、石破さんの政策では「気象庁の予算拡充」も注目されます。また、鉄道オタクであることから、芸備線を含む地方交通政策についても注目したい。他方で、消費税増税論者でもあり、この点が野田さんに近い。下手をすると大政翼賛会的な消費増税の危険もあります。

一方、立憲民主党代表になった野田佳彦さん。元総理の今も駅前で1人ででも立ってビラを配っておられるのは正直、頭が下がる。ご自身の選挙は強いと思います。
しかし、彼が野党全体への支持を高められるかといえば、疑問が大きいのです。やはり、2012年に当時の野党だった自公と合意した消費税増税と、セットでの緊縮財政のイメージが強すぎるのです。大震災の復興財源のために現場公務員の給料を減らしたり正規公務員数を減らしたりしたのはまずかった。その後相次いだ災害や感染症への対応で現場が苦労することになりましたし、住民サービスの持続性にも暗雲を投げかけています。野田さんには、ご自身がやったことの反省と総括を最低限お願いしたい。

◆切り捨てられる民意・抑圧される党内民主主義

ともかく、現代にはいろいろな政策課題があり、立憲の支持者も自民の支持者も価値観も多様化しています。いまの小選挙区比例代表制度かつ、政党幹部が財布のひもや公認権を事実上独裁的に握る制度での二大政党が本当に人々のニーズに合致するのでしょうか? 事実上大きな影響を持つ政党が二つでは、やはり、切り捨てられてしまう民意が大きくなってしまいます。

また、広島県内でも、河井案里さん失職に伴う参院選広島再選挙2021の立憲の候補者に内定していた楾大樹先生が、はしごを外されるという事件も発生しています(茶番選挙―仁義なき候補者選考)より。その後も、衆院選2021で一回敗けただけの広島都市圏の立憲候補3人が、事実上クビになっています。これは、政党幹部の独裁を可能とする現行の選挙制度の欠陥ではないでしょうか?

さらに、同じ野党の日本共産党でも本やネットで田村智子さん、志位和夫さんと違う意見を言っただけで、除名・除籍される事件が続発しています。最近では「ごはん論法」考案で有名な紙屋高雪さんが、同党から除籍され、福岡市議団スタッフからもいきなりクビになっています。

また、大阪など関西では「維新」の公認や推薦というだけで、候補者個人の政策や人柄があまり吟味されないまま、爆発的に支持されてしまう現象が最近までありました。斉藤元彦・兵庫県知事による数々のご乱行を巡る混乱も招いています。

それなりの数の政党が存在し、なおかつ枠に入りきらないような無所属の候補も当選できるような選挙制度の設計がやはり望ましいと考えます。政策テーマごとに、政党の組み合わせが違ってもいいのです。

◆選管主催でガチバトルの公開討論会実施を

なお、自民党総裁選挙のガチバトルの公開討論会は自民党を支持しない筆者が見てもそれなりに面白かったです。これを国政・地方選挙で選管主催やったらどうかと思います。そうすれば金を持っている人が有利とかそういうこともなくなるでしょう。

というか、「政治改革」の前は、選管主催で合同立会演説会を公会堂とかでやっていました。政治の面白さが後退しているのです。今後、選挙管理委員会の前候補参加の主催討論会を各公民館で実施、ネットでも配信するなどしていけばいいでしょう。都知事選で悪用され、物議をかもしたポスター公営掲示板よりもよほど有権者に判断材料を提供することになるでしょう。

繰り返します。石破茂さん、高市早苗さん、野田佳彦さんらが注目された1993年総選挙後に行われた政治改革1994。裏金も含めて、本当の改革になっていたのか? そのことを与野党ともに検証すべきときではないのか? 30年たって、むしろ政治が劣化しているとすれば、制度を疑うことも必要ではないでしょうか?

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◆大地震を目の当たりにしようと、使用済み核燃料の行き場がなかろうと、核燃料サイクルが破綻しようと、「原発依存社会」に向かって暴走する政府と電力会社

本年元日の能登半島地震は、原発は地震に脆く、地震に伴って過酷事故が起これば、避難も屋内退避も困難を極めることを再認識させました。地震は「いつ、どこで、どの規模で発生するか」予知できません。8月8日の日向灘地震以降、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとされています。地震多発の日本に、原発はあってはなりません。

それでも、「原発依存社会」へ暴走する自公政権は、昨年5月末に成立させた原発推進法(「GX束ね法」)の実態化のために、「原発の最大限活用」を目指す第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに進め、60年超え運転も拡大し、原発建て替え、新設も俎上に上らせようとしています。

一方、老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関電は、原子力規制委員会から高浜3、4号機の20年間運転延長の認可を得ました(本年5月)。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する原発の40年超え運転は初めてです。これで、来年には、関電の稼働可能な原発7基の内の5基が40年超え運転となります。老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。

ところで、原発を動かすと使用済み核燃料が発生しますが、発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが今、満杯になろうとしています。満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

ところが、乾式貯蔵には2つの問題があります。一つは、乾式貯蔵に移すことによって出来た燃料プールの空間に、高放射線、高発熱の新しい使用済み核燃料を入れた場合、その燃料プールが崩壊すれば、大惨事に至ることです。

もう一つは、乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場がないことです。関電や政府は、行き場として青森県の核燃料再処理工場の稼働を願望していましたが、8月23日、日本原燃は27回目の目の再処理工場完成延期を発表しました。再処理工場が完成する見通しはありませんから、使用済み核燃料は行き場を失ったことになります。危険極まりなく、行き場もない使用済み核燃料の発生源・原発は全廃しなければなりません。

◆9.23「老朽原発うごかすな! 高浜全国集会-地震も事故もまったなし-」(以下「高浜全国集会」)にご参加、ご支援を頂き、ありがとうございました

 

2024年9月24日付け日刊県民福井、中日新聞

9月23日、高浜町文化会館で開催された「高浜全国集会」(主催:老朽原発うごかすな!実行委員会)には、関西、福井、石川、富山、愛知、岐阜、首都圏、四国など全国から約360人のご参集を頂き、原発現地で「老朽原発うごかすな!」の大きな声を挙げることができました。拍手の多い、活気溢れる集会でした。 

なお、高浜原発北ゲート前での前段行動には、180人のご参加をいただき、断固としたシュプレヒコールと申し入れによって「老朽原発」にしがみ付く関電を糾弾しました。

皆様のご参加、ご助力に心より感謝申し上げます。「高浜全国集会」は、13時より、小浜市議会議員の世戸玉枝さんの司会により開会しました。

主催者挨拶で中嶌哲演さんは、「今や福井県議会の自民党会派の県議すらも、3基の老朽原発の即時停止を関電に要求している。杜撰なロードマップが破綻したにも拘らず、関電は老朽炉を停止するという約束を履行しないから」と指摘し、「来る総選挙で、原発依存・回帰の保守政権を退場させよう」と結びました。

 

2024年9月24日付け福井新聞

次いで、前日の豪雨を押して珠洲市から駆け付けられた志賀原発廃炉訴訟原告団長の北野進さんが「能登半島地震を教訓に原発全廃を!」と題した講演で、かつての原発建設予定地で国内最大級の内陸地殻内地震が発生し、世界にも例を見ない規模で地盤が隆起したことを指摘し、聞く者をして「地震大国日本に原発はあってはならない」こと、「珠洲原発の建設を阻止した運動が大惨事を回避させた」ことを再認識させました。

福井地裁で「原発は地震に耐えられない」として原発を止めた裁判官・樋口英明さんは、原発の本質を、極めて簡潔に、①人が管理し続けないと暴走する、②暴走したときの被害は想像を絶するほど大きい装置であるとし、このような装置は、原発以外にないことを理解することの大切さを強調された。

核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会事務局長の中道雅史さんは、青森からビデオメッセージを寄せられ、むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設が稼働すれば、原発の再稼働、新設につながるとし、使用済み核燃料の青森への搬入を許さない決意を述べられました。

原子力発電に反対する福井県民会議事務局長の石地優さんは、使用済み核燃料乾式貯蔵の問題点を述べ、乾式貯蔵は、県内永久貯蔵、原発延命につながることを指摘しました。

なお、使用済み核燃料問題について、本集会主催者が、後日、高浜町への申し入れを行うことが提案され、承認されました。続いて、原発再稼働の攻撃に曝されている全国の原発現地より寄せられた3件のビデオメッセージが上映されました。女川原発現地からは、さよなら原発みやぎ実行委員会の多々良哲さんが、東日本大震災で被災した原発の再稼働の無謀を訴え、活発な反対運動を紹介しました。

柏崎刈羽原発現地からは、規制庁・規制委員会を監視する新潟の会の桑原三恵さんが、2007年の中越沖地震で被災し、東日本大地震以降、長期停止していた原発、使用済み核燃料を増やし続ける原発のの再稼働阻止を訴えました。

一方、島根原発現地からは島根原発3号機訴訟の会の芦原康江さんが、12月予定の再稼働絶対阻止を訴えました。

老朽原発うごかすな!実行委員会の橋田秀美さんは、カンパのお願いをし、12年間続けた若狭でのチラシの各戸配布(愛称「アメーバデモ」)の中で感じた若狭の人々の反応の変化を紹介しました、参加者の心に響くものでした。

プラカードアクションに続いて、原発住民運動福井・嶺南センター事務局長の山本雅彦さんが「敦賀原発2号機の廃炉を求める」と題する特別報告を行いました。

ふるさとを守る高浜・おおいの会の宮崎宗真さんは、おおい町では「国防婦人会」張りの団体が、原発推進の立場を教育現場にまで持ち込んでいる現状を紹介しました。

大型バスで駆け付けた名古屋からは、老朽原発40年廃炉訴訟市民の会の草地妙子さんが、名古屋地裁で2016年から続け、本年7月に結審した「老朽原発の運転認可取り消しを規制委に求める訴訟」に関して「公正な判決を求めよう!」と訴えました。

若狭の原発から30km圏内にある若狭湾沿岸、京都府北部の住民のみなさんを代表して、国内最古の原発の立地・高浜町の東山幸弘さんは、使用済み核燃料搬出に関して昨年10月に関電が示した「ロードマップ」が破綻した今、「原発を止めて、核のゴミを増やすな!」とし、舞鶴市市会議員の小西洋一さんは、「若狭湾の老朽原発の稼働は、8万舞鶴市民の問題。老朽原発全てを廃炉!」を強調しました。京都地方労働組合総評議会議長の梶川憲さんは、「京都は、原発の電気の消費地でもあるが、被害地にもなる。福井、京都、近畿の働く仲間の団結で、原発を全廃しよう!」の決意を述べられました。

次いで、本集会には全国23の団体、個人から連帯メッセージが寄せられたことが、司会から紹介されました(プログラム・メッセージ冊子として配布)。

最後に、集会宣言(後述)が提案され、満場の拍手で採択されました。

力強いシュプレヒコールによって締めくくられた集会の後、参加者は、約1時間の町内デモに出発しました。あたかもフランスデモの様相を呈した町内デモには、多数の町民からのご声援を頂きました。声援の数は、集会を行うごとに増えています。

高浜原発北ゲートに向かうデモと前段集会9.23高浜全国集会高浜町内デモ

高浜全国集会集会、前段行動、町内デモの詳細は、STOP原子力★関電包囲行動のたぬき御膳さんがYouTubeにUP下さっています。是非ご覧ください。
(集会)https://youtu.be/qZN0W_4cASY?si=sMyLfDGia1FQs-bU
(デモ)https://youtu.be/drAgTAeZBos?si=yoimXvaJK0TtH7F3

※          ※          ※

◆2024年9月26日 老朽原発うごかすな!実行委員会
「老朽原発うごかすな!高浜全国集会-地震も事故もまったなし-」集会宣言

福島第一原発事故の現地は、未だに「原子力緊急事態宣言」下にあり、復旧とは程遠い状況にあります。また、本年元日の能登半島地震は、原発は地震に脆く、地震に伴って過酷事故が起これば、避難も屋内退避も困難を極めることを再認識させました。地震は「いつ、どこで、どの規模で発生するか」予知できません。8月8日の日向灘地震以降、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとされています。南海トラフ巨大地震が起これば、連動して、各地の断層が動くとも考えられます。地震多発の日本に、原発はあってはなりません。

なお、原発を推進してきた原子力規制委員会でさえ、去る8月28日、活断層の真上(まうえ)にたつ敦賀原発2号機の再稼働審査で、「不合格」案を了承しています。

それでも、「原発依存社会」へ暴走する自公政権は、昨年5月末に成立させた原発推進法(「GX束ね法」)の実体化のために、「原発・再エネの最大限活用」を進めるとする第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに拡大し、60年超え運転、原発建替え、新設も俎上に上らせようとしています。

脱原発に向かう世界の流れへの逆行です。

一方、老朽原発依存経営にのめりこむ関西電力(関電)は、本年5月、原子力規制委員会から高浜3、4号機の40年超え運転の認可を得ました。MOX燃料を使用する原発の40年超え運転は初めてです。これで、来年には、関電の稼働可能な原発7基の内の5基が40年超え運転となります。高浜1、2号機、美浜3号機は、もうすぐ50年超えの超老朽原発です。老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。老朽原発運転の暴挙を許してはなりません。

ところで、原発を動かせば、使用済み核燃料が発生しますが、発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが、今、満杯になろうとしています。満杯になれば原発を運転できなくなるため、関電や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

出来た空間に新しい使用済み核燃料を入れた燃料プールが崩壊すれば、大惨事に至ります。

乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場はありません。関電や政府は、使用済み核燃料の搬出先として、青森県の核燃料再処理工場の稼働を願望していますが、日本原燃は、8月23日、27回目の再処理工場の完成延期を発表し、完成の見込みはありません。

関電に、「使用済み核燃料の中間貯蔵地を2023年末までに福井県外に探す。探せなければ老朽原発を停止する」とした2021年の福井県知事との約束の完全履行を求め、老朽原発の即時停止を実行させ、使用済み核燃料の発生源・原発を全廃しましょう!

今、世界は原発縮小、自然エネルギーへ向かっています。自然エネルギーのみを利用すれば、燃料費はほぼゼロですから、コストは原発に比較して圧倒的に安いのは当然で、地球環境の保全にも有効です。また、自然エネルギーは、供給が国際情勢の影響を受け難い自前のエネルギーです。大地震が発生しても過酷事故に至ることもありません。このような視点からも、原発依存の理不尽は明らかです。

本日、高浜町に結集した私たちは、目先の経済的利益のために奔走し、能登半島地震を目の当たりにしても「原発依存社会への暴走」「原発推進経営」を止めようとしない政府や関電を断固として糾弾し、原発全廃の大きなうねりを出現させ、自然エネルギーのみの利用で成り立ち、人が人間らしく生きていける社会の構築に向けて力強く前進することを宣言します。

2024年9月23日
9.23「老朽原発うごかすな!高浜全国集会-地震も事故もまったなし-」参加者一同

※          ※          ※

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは10月号(9月7日刊行)の注目記事2本の一部を紹介します。

◆安倍・岸田軍拡43兆円の無駄遣い 隠蔽主義の「カルト集団」防衛省・自衛隊
 取材・文◎清谷信一

 

 

 整合性なき防衛費倍増

かつて防衛費にはGDP(国内総生産)の1%という枠があったが、故安倍晋三元首相が第2次政権後にGDP2%を目指すとぶち上げて、岸田政権はそれまで5兆円台だった防衛費を5年間で43兆円、1年あたり8.6兆円にする大幅増額に踏み切った。

だが政府与党にも防衛省・自衛隊にも軍事に対する当事者意識と能力が欠陥といえるほどに欠けている。この状態で「大軍拡」を行なうのはむしろ国防を危うくする。

安倍元首相は国債を刷ればいくらでも軍拡が可能だと主張していたが無責任にも程がある。ソビエト連邦は経済力を無視して無謀な軍拡に走って崩壊した。それと同じことになりかねない。

岸田政権は財源が必要との認識を持っている分、まだまともかもしれない。だが、それで建設国債5千億円を防衛費に当てている。これは借金に変わりはない。菅義偉元官房長官が始めたふるさと納税こと「ふるさと脱税」で5千億円以上の税金がダダ漏れしている。防衛費を建設国債で賄うくらいならば、ふるさと納税をやめればいいと思うのだが、筆者が浜田靖一防衛大臣(当時)に質したところ、自民党国防部会では議論にも上らなかったとのことだ。

そもそも安倍元首相の言いだした防衛費GDP2%には何ら軍事的な整合性はない。単にアベノミクスの失敗が明らかになったので、首相の座を菅氏に禅譲し、「強いリーダー」を演出して再び首相の座に返り咲こうとして「国難」を煽っただけだろう。第2次安倍政権時とその後に我が国周辺の緊張が高まった事実はない。

そして防衛費GDP2%への倍増の論拠は薄弱だ。単に米国がNATOに対して要求しているものを「借用」しただけだろう。これを自民党は選挙公約にしたが、防衛費GDP2%の算定をこれまでの我が国の算定方法でいくのか、NATOと同じ算定方法でいくのかすら決めていなかった。両者では当時で約3千億円も違ったのだが、自民党の政治家はそれすら認識していなかったほど「軍事音痴」だった。

防衛省のシンクタンクである防衛研究所の高橋杉雄氏(現防衛研究所・防衛政策研究室長)らが頻繁にメディアに露出して「GDP2%が妥当である」などと言っているが、専門家の発言とは信じられない発言だ。いくら発言は個人の見解だと強弁しても、防衛研究所の見解と読者・視聴者は理解するだろう。自民党は本来政治的な思惑とはニュートラルであるべき防衛研究所を世論操作の道具として使用したのだ。こんなことは以前にはなかった。

この算定基準の問題は筆者が指摘し、その後、財務省の財政制度等審議会の資料でも指摘されて知られるようになったものの、新聞・テレビなどの記者クラブメディアも認識していなかった。大軍拡の「共犯者」は記者クラブだ。彼らは会見やその他の取材機会を独占して、他の媒体やフリーランスを排除し取材を密室化することで利益を得てきた。また単に会社の辞令で配属されるので専門知識はない。

第2次安倍政権では、次年度予算と当年の補正予算を「悪用」し、また概算要求時に金額を入れない「事項要求」を導入することで軍拡が行なわれてきた。たとえば概算要求時、本来5.6兆円の防衛費のうち、3千億円が金額を明記しない「事項要求」であれば発表される金額は5.3兆円となる。これが新聞やテレビのヘッドラインに載るわけで、読者・視聴者は防衛費を過小に認識する。

補正予算は本来、予算編成時に予期できなかった突発的な事態に対処するために組まれる予算である。たとえば大規模な震災や水害で自衛隊が出動して、損耗した装備等を手当する、あるいは急な円安やエネルギー価格の高騰で燃料費が足りなくなって、それを手当するというものだ。ところが第2次安倍政権では輸送機や装甲車、隊舎の建て替えなどといった補正予算の本来の目的を外れた使い方をした。これらはれっきとした違法行為であり、事項要求の例と同様、政府予算の防衛費をそれだけ過小に見せることができる。これは露骨な世論操作だが、それに新聞やテレビ、通信社は加担してきたということだ。

 組織延命のための「トカゲの頭切り」

7月に海自幕僚長が引責辞任したように、防衛省・自衛隊は近年、多くの処罰者を出しているが、これは氷山の一角にすぎない。それは彼らが過度な秘密主義・隠蔽主義によって、国民に対し自分たちが何をやっているのか隠すのが恒常化しているからだ。外部の目が届かないので犯罪行為すら「組織の利益」になれば許されるという歪んだ文化が形成されている。

これはオウム真理教などのカルト集団と大変似ている。自分たちの教義は絶対であり、それを批判する外部の人間は法敵である。また組織内でも組織のやり方に疑問を挟む者は異端として排除される。

筆者は7月9日、木原稔防衛大臣に定例会見で明確なエビデンスを示し、公開情報をあたかも軍事機密のように国民に隠す体質を指摘し、質した。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n57e7cf341f39

◆大屋根リング・会場周辺で〝実測〞 灼熱の大阪・関西万博
 取材・文◎横田 一

 

 

 真夏の「子ども無料招待」

日本維新の会の馬場伸幸代表は8月5日、遠藤敬国会対策委員長ら約100人の維新議員とともに大阪・関西万博の会場を視察した。直射日光が照りつける大屋根リングの上で博覧会協会の石毛博行事務総長からパビリオン建設の進捗状況などについて説明を聞いた後、集合写真を撮影。馬場代表は「情報の発信が機運の醸成につながる」と強調。参加議員に視察の様子を発信するよう呼びかける一方、自身も家族や親戚にチケット購入を呼びかけることも明らかにした。

当初想定から約2倍の最大2850億円となる会場建設費上振れで維新批判が強まった中、万博開催の意義を発信して反転攻勢につなげたい狙いが透けてみえた。そんな馬場代表を大屋根リング上で直撃、熱中症対策について聞いてみた。

まず実測していた熱中症(暑さ)指数の結果について「危険指数31を超えている」と伝えると、馬場代表は「ほー」と驚いてみせた後、「33を上回ったら非常に危険」とつぶやいた。熱中症指数の意味を把握してはいたようだ。気温や湿度、日射・輻射から割り出される「熱中症指数(WBGT)」は、日本気象学会が策定した熱中症予防指針だ。熱中症指数を「危険(31以上)」「厳重警戒(28~31)」「警戒(25~28)」「注意(25未満)」の4段階に区分し、注意喚起をしている。たとえば「危険(31以上)」レベルでは「高齢者においては安静状態でも熱中症が発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動」と呼びかけている。なお環境省は全国各地の熱中症指数と気温と湿度の実測値をネット上で公開している。

そこで私は、熱中症指数が算出可能なデジタル温湿度計を2台用意し、大屋根リング上で実測した。そして結果が危険レベルにあることを馬場代表に伝えたのだ。

続いて私は「危険レベルは31以上。環境省は『31を超えたら外出を控えるように』と呼びかけている。(大阪府市が無料招待する)子どもたちが危ないのではないか」と聞いてみた。高齢者と同じように子どもたちも熱中症に対して弱いためだが、馬場代表は次のようにいくつかの熱中症対策を列挙して事足りるとしたのだ。

「それは、始まる時には、暑さ対策、ミストとか、いろいろなことがあるし、水をまいたり、(千葉の)ディズニーランドも(大阪の)ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)も同じ条件でやっている。閉園していないでしょう」

「そこ(熱中症指数が危険レベルであること)は注意喚起をしたりとか、暑さ対策を(来年4月の)開園までにやらないといけない」

馬場代表は結局、万博会場と同じ大阪湾岸にあるUSJを引き合いに出しながら、子どもたちの入場制限の必要性を否定した。

大屋根リング上で熱中症指数を実測して馬場代表に突きつけたのは、“維新ツートップ”の危機感の乏しさを目の当たりにしていたためだ。大阪府市は万博に子どもたちを無料招待する事業を進めているのに、維新共同代表の吉村洋文・大阪府知事も大阪維新幹事長の横山英幸・大阪市長(両人とも万博協会副会長)も、子どもたちのリスクを真剣に考えているようにみえなかった。「夏季(6月~8月)は無料招待事業を実施しない」とか「熱中症指数が危険レベルになったら子どもと高齢者の入場制限をする」といった具体的対策を打ち出す様子もなかったのだ。

7月10日の記者会見で吉村知事に対して「(大阪府は)熱中症対策として『特別警戒アラートが出たときは不要不急の外出を控える』と言っている。同じ基準を万博についても当てはめるのか。何度以上になったら不要不急の外出に当たるとして(万博会場への)入場制限をするのか」と質問した。

吉村知事は、「そこについては(万博)協会で判断することになるだろうと思う」と回答。府の基準と違っても、万博協会任せの姿勢が露わになった。

 バス駐車場から会場まで800メートル往復

続いて私は、子どもたちが万博会場にバスで行った場合の熱中症リスクについても聞いてみた。「駐車場から会場まで800メートルもあり、かなりの時間を歩く。ここでも『熱中症リスクがあるのではないか』という指摘があるが、専門家の検証は経ているか。すでに検証しているのであれば、『何度以下だったら大丈夫だ』というガイドラインはあるのか」。

対して、吉村知事はこう答えた。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n8df0cca7519c

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

『紙の爆弾』2024年 10月号

『さらば日大!』和田秀樹医師が暴く日本大学と「医学部」「医師界」の闇
旭川女子中学生凍死事件 再調査委員会が隠した社会の病巣 山田寿彦
安倍・岸田軍拡43兆円の無駄遣い 隠蔽主義の「カルト集団」防衛省・自衛隊 清谷信一
日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威 青柳貞一郎
広島市の妨害を民衆が打破 平和記念式典「反戦集会」 浅野健一
“勝ち目”のあるうちに退いた 岸田文雄首相「退陣表明」の裏側 山田厚俊
僚支配・憲法無視・米国追従 「能動的サイバー防御」とは何か 足立昌勝
国民より先に米国に“退職報告”していた岸田首相 
ウクライナの侵攻を「越境攻撃」と呼ぶ欺瞞 木村三浩
兵庫県知事パワハラ疑惑は「維新的」政治家の成れの果て 吉富有治
大屋根リング・会場周辺で“実測” 灼熱の大阪・関西万博 横田一
米大統領選の隠れた争点 日本製鉄のUSスチール買収計画 浜田和幸
子宮頸がんワクチンを打ってはいけない理由 「ワクチン添加物」という“毒” 神山徹
IOCの体質こそ根本原因 パリ五輪ボクシング“染色体問題”の本質 片岡亮
“性加害”補償進まぬウラで 旧ジャニーズと離脱組「TOBE」の明暗
地獄の黙示録1984+40 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 52 プレサンス元社長事件 尾崎美代子

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp//dp/B0CHDYBYK2/

《10月のことば》絆 あなたとここにいることが なによりすばらしい(鹿砦社カレンダー2024より。龍一郎揮毫)

ようやく暑さも和らいで来ました。
もうすぐ秋風が吹き木枯しの季節となるのでしょうか ──

もうこの仕事に本格的に関わり始めて40年になります。
大学を出て10年、出版とは全く関係のないサラリーマンをやりました。
毎日、大阪御堂筋のビルの7階から四季の移ろいを眺めながら過ごしました。

会社を整理するというので、それまでに同人誌のようなものや資料集を出したりはしていましたが、他に仕事を探すこともなく、わずかな退職金を元手に出版を生業にすることにしました。

若かったな。すでに子どももいたし、今だったら踏み止まっていたでしょうね。
他人より10年遅れて出発しましたが、これまで多くの方々に迷惑をかけたり助けてもらったりして〈絆〉をこしらえてきました。
大学関係の先輩・後輩、多かれ少なかれ学生運動や社会運動に関わった人たちなどが多いです。

決して一人でやって来れたわけではありませんでした。むしろ助けてくれる方がいたからこそ、生来鈍愚な私でもここまでやって来れたと思っています。

自分で望んだわけではありませんでしたが、これまで他人よりは起伏のある人生でした。

特に2005年、『紙の爆弾』創刊直後の「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧は「人質司法」による長期勾留を強いられ正直きつかったです。

これまでこの通信でも何度も述べているので繰り返しませんが、これを皆様方との〈絆〉で乗り越えれたことは大きいです。誰もが「松岡も鹿砦社も終わりだろう」とささやいでいたということですが、人の運命というのはわからないものです。その前の阪神大震災でも、「松岡も鹿砦社も終わりだろう」と東京ではささやかれたそうですが、自分で言うのも僭越ですが、我ながらしぶといです。

その後、奇跡ともいうべき復活を遂げることができ、これでこのまま後の世代にバトンタッチをしようと思っていたところ新型コロナ来襲で、またペシャンコにされようとしました。

ところが、ここでも皆様方との〈絆〉で生き残っています。思い返せば、20年、30年、40年と、付き合いの長い方が多いです。これで知らず知らず〈絆〉が出来たのだと思っています。

そう、「あなたとここにいることがすばらしい」ということです。

これからもいつまでも「あなたとここにいること」、そしてもっともっと強い〈絆〉で『紙の爆弾』『季節』を継続させ鹿砦社を継続させていければと願っています。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、トランスジェンダー論争、巨大利権の行方』女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著

◆秋が大好きだった京都青春時代、そしていまは……

季節はもう秋。

9月に入っても今年の日本はいまだ残暑厳しいようだが、ピョンヤンの9月は涼気を感じる日々の始まりを告げる。9月初旬の日中は30度を上回ったが朝夕は涼しく中旬からはもうすっかり秋の色が濃い。

周辺の協同農場ではトウモロコシの刈り入れが終わり、田圃はたわわに実った稲穂の黄金色に染まり秋風が稲穂を優しく撫でていく、それは稲穂が風の接吻を受けているかのよう。

まさに「ロックと革命in京都」に託したラブソング、Stingの“Fields of Gold”の世界。

きっと君は僕を想う
風が大麦をなでるとき
嫉妬する空の太陽に言うんだ
黄金の世界を歩んだと
輝く世界に生きたと
二人の黄金の世界

「京都青春記」時代の私は季節といえば秋が大好きだった。それも紅葉も終わり落葉の晩秋から初冬の風情、枯れ葉をカサコソ踏みしめながら落葉後の枯れ木立の森を歩く……誰かと語り合いながら、ならもっと様になる。それが私の好きだった「枯れ葉と枯れ木立」の秋のイメージ。

それは枯山水とか「侘び、寂びの世界」とはちょっとちがう。たぶん「飾り立てるのがファッションかもしれないが、人の目を欺いてはいけない」、“悠久の黒”ファッションの山本耀司の感覚に近い。

「戦後日本はおかしい」── 敗戦でアメリカには頭を下げたがアジアには頭を下げなかった戦後日本、「アメリカに追いつけ追い越せ」の「飾り立てた」昼間の日本に違和感を持っていたのが京都時代の私、だから春や夏のように華やいだ季節はどこか肌に合わなかったのだろう。

世間的には「ひねくれ者」、屈折した青春というのかもしれない。でも本人はそんなことは意識もしなかった。当時はそれが私の自然体だと思っていたから。

“裸のラリーズ”水谷孝が夜の世界を歌い、「漆黒の闇にこそ真実と創造がある」というようなことを語っていたが、それと似ている心情世界だった思う。

そんな世界から心機一新、「革命家になる」! と「よど号」で朝鮮に飛んで来てからは四季折々の風情を楽しめるようになった。それだけ前向きになったということだろう。

ちょっとイントロダクションが長くなったが、今年の秋は風情を楽しむといった心境にはなれないというのが本題。

9月に入って不穏な空気を感じる事態が世界で起きている。

◆ゼレンスキー「最後の勝利のための4つの提案」に漂う不穏な空気

「ウクライナ『露に戦争終結を強制』」(2024年8月29日付け読売新聞)

8月27日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「4つの最後の勝利計画」を発表、これを9月末の国連総会に合わせた訪米時にバイデン米大統領に伝えるとした。

その勝利計画の第一はロシア領内のクルスク州への侵攻、第二は米欧供与の長射程ミサイルのロシア領内への攻撃使用許可を得ること、第三はロシアに外交的に戦争を終わらせるようにすること、第四はロシアに経済的圧力をかけることとした。

目的は「ロシアに戦争終結を強制すること」だそうだ。これをプーチン大統領が聞いたら、それこそ「へそが茶を沸かす」、ちゃんちゃらおかしい「悪い冗談」と言うだろう。

だが最近の米国の動きを見ていると、それが「悪い冗談」と笑い飛ばせないものがある、いや「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」の譬(たと)えにあるように「窮鼠」が何をやるかわかったものではない危険な空気を感じさせる。

ゼレンスキーの「最後の勝利計画」の核心は、第二の「ロシア領内攻撃への米欧供与の長射程ミサイル使用許可」を得ることにある。ゼレンスキーは「成否の鍵は彼(バイデン大統領)にかかっている」と米国の決意を促す強気を見せた。この強気は単なる「強がり」ではない根拠のある強気のように思える現実が生まれつつある。

これまで一貫して米欧はこの「使用許可」を与えなかった。ロシアとNATOとの全面戦争に発展することを恐れたからだ。事実、このゼレンスキー発言を受けてプーチン大統領は「もし米欧供与の長射程ミサイルがロシア領内攻撃に使用されたなら、この戦争は新しい次元に入る」、すなわち「ウクライナとの戦争からNATOとの戦争の段階に入る」と強い警告を発した。

にもかかわらず米欧は慎重姿勢を変え「使用許可」にゴーサインをする空気がいま生まれている。

9月13日、バイデン米大統領とスタイマー英首相がホワイトハウスで会談、この問題を協議した。会談冒頭でバイデン大統領は「プーチンは勝利しない。ウクライナが勝利する」と述べたそうだが、会談内容については「支援は必要な限り継続する」とのみ公表された。

この米英首脳会談を伝えたニューヨークタイムス紙は、「英仏が供与した長射程ミサイルでの攻撃を認める見込みだ」と報じた。ただし米供与の地対地ミサイル「ATACMS」使用容認については依然、慎重だと付け加えたが……。

これは米欧が「一線を越えた」ことを意味する。プーチン大統領の言う「新しい次元の戦争、ロシアとNATOとの戦争」に入ることも辞さない挙に出たとも言えるだろう。

この連載で私は米国は敗北確定のウクライナは諦めて「対中対決に集中する」だろうと述べてきた。だがどうも風向きが変わってきたのではないかと思う。

いまやウクライナの敗北は確定的と世界の誰もが見ている。ロシア領内侵攻という「鳴り物入り」のクルスク州一部地域占領も雲行きが怪しくなってきている。ロシア軍がゆっくりと攻勢をかけ始めた。「熊のお尻を蚊が刺した」程度と言われる「侵攻」だから急ぐ必要がないのだろう。でもロシアの発表では空挺部隊と海兵隊とで10部落を解放した。侵攻したウクライナ軍は援軍もなく挟撃の危険にもさらされているという。

昨年5月以来のウクライナ軍の「反転攻勢」は挫折して久しいどころかロシア軍の逆攻勢で後退に次ぐ後退を強いられている。東部の独立を宣言したロシア人居住地域、ドネツク州など、または南部の州もロシア軍が完全掌握するのは時間の問題だろう。兵器も慢性不足、かつ新たな徴兵令も「刑免除取引」に応じた刑務所囚人が応じたのがせいぜいの兵員不足に悩むウクライナ軍にこれを押し返す力はない。政権内の不協和音は拡大、国民の政権支持率も下落一途、徴兵逃れに必死の国民に戦う気力は期待できない。

このままでは「ウクイライナは惨敗必至」とウクライナ擁護の「識者」まで言い始めている。誰の目にもそうとしか映らない事態にまでウクライナは追いつめられている。

ウクライナのゼレンスキー大統領(wikipedia)

しかしながら9月に生じた新しい空気の変化は、米国がこの明確な「ウクライナ惨敗」のままで終わることをよしとしない決意を示したかに見える。なぜなら「ウクライナ惨敗」=「米覇権秩序の崩壊」不可避を意味する、そうなれば「対中対決に集中する」どころの事態ではなくなる、ゆえに敢えて「ロシアとNATOの戦争になる」危険を冒してでも「ロシアに惨敗」という現局面を変える、ここに米覇権死活の活路を求めた、そう見るべきではないのか。

しかしながら「ウクライナ支援」は、米欧日「G7」諸国以外の世界の諸国、特に絶対多数を占めるグローバルサウス諸国の反発を呼んで久しい。そのうえ「ロシアとNATOの戦争」ともなれば世界からの猛反対に合い、さらに国際的孤立を深めるのは火を見るより明らかだ。でもそれを押してでも「一線を越えざるをえない」ところまで「G7」の生命線「米覇権秩序」は窮状に追い込まれている。

まさに「窮鼠」! それが米国を中心とする「G7」グループ、いまや時代の遺物になった旧帝国主義列強諸国の現在位置だと言える。

また空気の変化を示すもう一つの根拠は、「私が大統領になればウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる」、そして「対中対決に集中する」と言っていたトランプが大統領選で急に失速していることだ。9月の大統領選TV討論会でトランプは日頃の鋭気も冴えもなくハリスにいいようにやられた。かつての「いまトラ」「確トラ」から「いまリス(ハリス)」へと急変の事態もどう見ても異常だ。ハリスはバイデン路線の継承者、「ウクライナ支援は継続」論者だ。「確トラ」から「いまリス」への急変も「ウクライナ惨敗」で終わらせてはならない、そのためには「戦争が新しい次元に入る」ことがあろうとも米覇権の命運をここに賭けざるを得なくなった窮余の米国の「決心」の反映と見るべきではないだろうか。

だとすれば、ウクライナのロシア領内攻撃への米欧供与の長射程ミサイル使用を引き金に「ロシアとNATOの戦争」になる。それがどういう形になるかいまはわからない。

例えば、ロシア軍占領の東部、南部への「反転攻勢」にNATO軍が加勢する、少なくとも英仏独軍、在欧米軍が劣勢挽回のための軍事的支援、新鋭航空機と飛行士、新鋭ミサイルを扱える部隊を送るくらいはやらねばならないだろう。これに対してロシアはどう対抗措置をとるか? 英仏独の軍事基地や在欧米軍基地への攻撃だってありえないことではなくなる。

米国がどこまで勝算があってやるのか? おそらくそんなものはないだろう。文字通り「窮鼠、猫を噛む」だからかえって危ない。

この9月に生まれた不穏な空気が果たしてどうなるのか? 

その一つの指標は9月24日の国連総会出席で訪米するゼンレンスキーに米欧がどう回答を出すかだろう。すでに米国は国連総会出席の欧州関係国首脳らと「ロシア領内への米欧供与の長射程ミサイル使用許可」問題を協議するとしている。この結果を注視する必要があるだろう。

◆日豪「準軍事同盟国」化の意味

ウクライナをめぐる対ロ戦争に集中するとはいっても、それは窮余の策ということで「対中対決に集中」は一時棚上げしただけで「中国征伐戦争」を放棄するわけでも放置するわけでもない。米国の覇権秩序瓦解からの回復戦略でその主敵はあくまで中国だということに変わりはない。だからその最前線を担うことになる日本への「国際秩序を護る」戦争国化、対中代理“核”戦争国化要求は強化されることはあっても弱化することはありえない。

9月5日、メルボルンで日豪の外務・防衛担当閣僚会合「2プラス2」が持たれた。

日本は豪州を米国に次ぐ「準同盟国」と位置づけているが、今回は対中対決の「準軍事同盟国」化に大きく一歩を踏みだした。

「『敵基地攻撃』豪と協力 艦艇受注も目指す」(2024年9月6日付け朝日新聞)

その一つは「敵基地攻撃能力」での両国間の協力深化を確認したことだ。

具体的には「敵基地攻撃能力」の核心である敵の射程圏外から攻撃可能なスタンドオフ・ミサイル(中距離ミサイル)活用面での協力、豪州の広大な領土での陸自新設のスタンドオフ・ミサイル部隊の試射を行うことなどに合意した。

また一つは、自衛隊に新設が決まった統合作戦司令部稼働に向けて、11月には現在の自衛隊統合幕僚監部から豪軍の統合作戦本部に連絡官の派遣を合意した。対中戦争時の作戦指揮での連携体制確立によって、在日米軍に新設の統合軍司令部の指揮下で日豪軍が有事作戦行動をとれる体制を築いたということだ。

これは日豪間には日米安保同盟のような軍事同盟関係はないが、実質的には「準軍事同盟」関係に入ったことを意味するものだ。もちろん対中戦争を念頭に置いた「準軍事同盟」だ。

こうした日豪政府の動きの背景には米国の同盟関係転換政策、“ハブ&スポーク状”同盟から“格子状”同盟への転換がある。これについてはこの連載⑥で触れた重要なことだが、とてもわかりにくい概念なので重複を恐れず少し説明させていただく。

“ハブ&スポーク状”同盟とは、自転車の車輪の中心部のハブ、そのハブにつながる無数のスポークが車輪を支える構造に譬(たと)えた同盟構造を指す。ハブとなる中心に米国があってその中心から伸びるスポーク(同盟)で各国がつながる、つまり米国が各国個別に同盟を結び、各国が軍事大国、米一国に依存する同盟関係を指す。

“格子状”同盟とはインド太平洋地域の日韓、日比、日豪が格子状に重なるような同盟構造への取組を行うことだ。もちろん各国は米国と同盟関係にある、だが「米国だけに頼るな」ということ、この地域各国が相互に「独自の同盟関係」を結びアジアでの米覇権秩序を守れということだ。米国の要求は日本が基軸になって各国と「独自の同盟関係」を結ぶことだ。もちろんこの各同盟への指揮権は米軍が握る、そしてこの同盟の矛先は中国だ。

これはいわば「アジア版NATO」に向けた取組と言えるだろう。言葉を換えればアジアにおける対中代理戦争体制だと言えるだろう。余談だが自民党総裁有力候補の石破茂氏は「アジア版NATO」を自己の基本政策課題に挙げている。

今年7月には日本は豪州に続きフィリッピンを「準同盟国」級に格上げし、共同軍事演習への道も開いた。ゆくゆくは日比軍事同盟化が米国の要求だ。しかし日韓、日比、日豪間で軍事同盟を結ぶに当たっては日本の憲法9条がネックになる。有事の際に「戦争のできない日本」、自分と一緒に戦ってくれない日本とは韓国もフィリッピンも豪州も安保軍事同盟を結んでくれはしない。ゆえにこの格子状同盟形成面からも「9条改憲」(実質改憲も含め)が日本に迫られる。これについてはここでは触れない。

何が言いたいかといえば、対ロ戦争に集中するであろう米国だが、アジアにおける対中戦争準備は着々と推進される。

それは4月の岸田訪米以降の日米同盟新時代、「国際秩序を護る」戦争に「最も近い同盟国」日本がアジアで中心的役割を果たすこと、言葉を換えれば「東のウクライナ」の役割を果たすことを迫られることには何の変化もないということだ。

9月の日豪「準軍事同盟国」化に進んだ事実がそのことを証明している。

◆結びとして一言 

今回のテーマは“9月に感じる世界の不穏な空気「窮鼠、猫を噛む」、「国際秩序を護る」戦争”だが、アジアで「国際秩序を護る」戦争の最前線に立たされるのがわが日本だということを強調しておきたい。

いま秋の政局の季節、9月の自民党総裁選、立憲民主党代表選から10~11月に予想される解散、総選挙がある。しかしいまだ岸田首相国賓訪米に始まる日米同盟新時代が迫るわが国の「国際秩序を護る」戦争国化、対中・代理“核”戦争国化が政治争点になることはない。しかし国民の目に見えない形で、あるいは「専守防衛の範囲内」と国民を欺く手法でそれは着々と確実に進められている。

石破茂氏が「アジア版NATO」に触れるとか、高市早苗氏が「核持ち込み容認論」を唱えるとかはあるが、それは断片的な個人的見解の域を出ず、核心をついた議論は避けられている。自民にせよ立民にせよ総裁や代表をめざす政治家なら日米同盟新時代の要求が何かを知らないはずがない。そういう意味で私には既存の与野党政治家は国民を欺いているとしか思えない。

「国際秩序を護る」戦争国になるなど国民が認めるはずがない、ましてやそのための9条改憲や非核の放棄など言えば、国民的反対にあって対中・代理“核”戦争国化などいっぺんに吹っ飛んでしまう。だから政治家はわかっていても正面から国民には問わないで政治家同士で事を決めてしまう。

石破茂氏のTV討論での発言はその典型だ。「9条第二項・交戦権否認、戦力不保持の削除」改憲は必要だが、改憲を問う国民投票にかけるには長い時間がかかるから安全保障基本法でそれに代える(実質改憲をやるということ)、それを国会で審議、採択すればよい」-つまり日米基軸で一致する議会内の政治家同士の談合で決める、国民は適当な説明で欺けるといういまの政治家心理の露骨な表現だと思う。

泉房穂さん式に言えば「いったい誰の顔見て政治やっとるんや」だが、アメリカの顔を見て国民の顔は見ない、それが「日米基軸は不変」が口癖の既存政党の政治家たちだ。もちろん既存の政党(自民も含め)にも良心的な人たちもいるだろうが、その人たちの声は聞こえてこない。「支持政党なし」、無党派層が絶対多数という現実にあって国民の顔を見てアメリカに堂々と「ダメなものダメ」と言える政治家が出る時、いや出なければならない時だと思う。

そんな政治家が各選挙区に出れば、既存の政党、政治家に愛想を尽かした国民、特に無党派層はまちがいなくその人に投票するだろう。政権交代だって夢じゃない。

瓦解に向かう米覇権秩序、それと運命を共にする「国際秩序を護る」戦争とわかればそれに賛成する日本人はいないだろう。

「言うは易し行うは難し」だが、それを国民に明らかにし正面から問う、そして正しい日本の進路を示す、そんな政治家が必ず出てくると信じたい。

「またピョンヤンからの遠吠えか」と言われそうだが、もっと心に刺さる「遠吠え」を私も心がける決意で、これからも吠えつづけていきたいと思う。

客観的には米覇権秩序瓦解の時代、「米国についていけばなんとかなる時代」は終わったのだから、「戦後日本の革命」はすぐ近くまで来ている! このことを確信するから……

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

◎ロックと革命 in 京都 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=109

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

 

 

◆「押し紙」の実態

兵庫県で毎日新聞販売店を経営してきたA氏を原告とする1億3823万円の支払いを求める押し紙裁判を大阪地裁に提訴しました。

請求金額の内訳は、預託金返還請求金が623万円、販売店経営譲渡代金が1033万円、押し紙仕入れ代金が1億2167万円です。

この事案の特徴は、Aさんが廃業後の生活に予定していた預託金623万円と販売店譲渡代金1033万円の計1656万円を受け取れないまま、無一文の状態で廃業に追い込まれた点にあります。

これまで、銀行負債を抱えたまま廃業せざるを得なくなった販売店は多数見聞きしてきましたが、信認金(預託金)や販売店譲渡代金を一円も受け取れないまま廃業に追い込まれたケースは初めてです。

販売店経営者は、廃業せざるを得なくなった場合でも、信認金や販売店の譲渡代金があれば、当面の生活費に充てたり、自己破産の弁護士費用に充てることができていました。しかし、Aさんの場合は、蓄えもなく銀行負債を抱えたままで経営が続けられなくされたうえに、信認金や販売店譲渡代金も新聞の仕入代金に充当され、翌日の生活費も残らない状態で廃業させられました。

幸い、Aさんは単身者だったため、経営者仲間の協力でアルバイトをしながら生活を維持することが出来ています。今年の熱い夏、毎日汗水を流しながら新聞配達とオリコミ広告のポスティングをしているAさんには頭が下がります。

しかし、Aさんに奥さんや子供さんがいたとしたら、その生活はどうなっていたでしょうか。考えるだけで恐ろしくなります。

◆新聞社のモラル崩壊

月刊誌『ZAITEN』の5月号に、廃業を申し出た読売新聞の販売店主が本社から廃業を再三慰留されてやむなく経営を続けていたところ、大雪に見舞われ欠配しないように店に泊り込みしたことから体調を崩し、数日、店を休み電話にもでなかったところ、販売店継続意思の放棄であるとして読売から販売店契約を強制解除され、販売店譲渡代金が支払われなくなった記事が掲載されていました。

また、私共が担当した広島県福山市の濱中さんに対しても、読売は補助金の不正受給を理由として大阪高裁が1000万円を超える損害賠償を認めた判決に基づき、浜中さんの預金を差し押さえる状況が生まれています。

共存共栄をうたい文句に販売店経営者に莫大な押し紙仕入代金の支払いを続けさせておきながら、廃業した途端、販売店主に残されたわずかな生活資金まで取り上げてしまう新聞社の非道な仕打ちには言葉も出ません。新聞社のモラル崩壊もついにここに極まれりという感じがしています。

大手新聞社ですら、販売店経営者の最後の命綱ともいうべき営業保証金や販売店経営譲渡金まであてにしなければならないほど危機的な経営状況にあることを示しているのかもしれません。

ABC部数の減少がこのままのペースで進むと、新聞社の経営は10年も持たないのではないかと危惧するむきもあります。

そうなれば、新聞の消滅と共に押し紙もいずれなくなります。長い間、「押し紙」は新聞業界の最大のタブーとして国民の目から隠し続けられてきましたが、ネットの普及によって「押し紙」を検索すればおびただしい情報があふれており、もはやタブーでもなんでもありません。失われた30年を経た現在、日本の現状をみると新聞社のモラルの崩壊がシロアリが巣食うように全国津々浦々にまで及んでおり、もはや日本人の美徳であったモラルの取り戻しは絶望的なようにも感じております。

最後のよりどころというべき裁判所が、この問題にどのような姿勢をしめすのか、これからも押し紙裁判の行方に関心を寄せて頂くようお願いして、毎日新聞押し紙訴訟提起の報告と致します。

*福岡地裁の西日本新聞の2件の押し紙訴訟の内1件は、来る10月1日に結審予定です。最終準備書面を提出しますので、その内容は次に報告させて頂くことにします。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長。綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2024年09月21日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

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兵庫県知事で筆者の同一大学同一学部の後輩の斎藤元彦君。パワハラやおねだりなど数々のご乱行。そしてそれらについての告発を「嘘八百」と決めつけたことが、渡瀬元県民局長、そして阪神・オリックス優勝パレード担当課長の命が失われるという、取り返しのつかない事態を招きました。8月30日、9月6日には百条委員会でご本人が尋問を受けるという事態になりました。

◆出直し知事選挙「やる気満々」の斎藤君に腰を抜かす

9月19日、兵庫県議会により、前代未聞の全会一致での不信任案可決を受けました。そして、26日、斎藤君は記者会見し、県議会は解散せずに失職し、出直し知事選挙に立候補すると表明しました。筆者はこれにはびっくりしました。筆者はてっきり「斎藤君は、議会を解散し、延命を図る」のかと思いこんでいました。筆者の知り合いの兵庫県議も、解散の可能性が高いとして、選挙に備える覚悟を決めていました。

斎藤君は知事選挙になればほぼ、勝ち目はないと、いうのが客観的な見方でしょう。例えば2021年の横浜市長選挙では、与党(当時の菅総理)からも、野党からも見放された林文子・横浜市長が、当選した野党共闘候補や自民推薦候補、さらには落下傘の田中康夫さんをも下回る得票で大惨敗したくらいの結果が予想されます。

そうであるならば、議会を解し、40日以内に行われる県議選のあと、不信任案再可決(今度は過半数で可決)となるまでは知事に居座る。冬のボーナスや退職金もまんまと頂く。合理的に考えるとこのシナリオしかありえません。

すこし、奇策を混ぜるなら、議会を解散した上で、自分も辞職し、斎藤君自身が県議選に殴り込むのです。定数が多い選挙区なら可能性はある。そうすれば、県議として、斎藤君は「安定した身分」をしばらくは享受することになるのではないか?
ところが、斎藤君の出した答えは「失職・知事選再出馬」でした。なお、不信任案可決との場合は失職と辞職、両方選べます。辞職の場合は、斎藤君が当選した場合は残りの任期、すなわち一年足らずと言うことになります。これは、自己都合で退職、という意味合いもあるのでしょう。失職は「県民によりクビになった」ということで、斎藤君が当選した場合は四年の任期が与えられます。雇用保険の失業給付で会社都合退職の方が労働者に有利になるのに似てなくもありません。

実際には、辞職を選ぶ場合はそのまま引退と言うケースが多いです。例えば安藤忠恕・宮崎県知事(故人)は官製談合事件で不信任案可決となり、2006年12月4日辞職。その4日後、逮捕され有罪判決を受け、上告中の2010年に亡くなられました。安藤さんの場合は、現実問題、逮捕が迫っていることを自覚し、逮捕で選挙運動どころではないことを見越してお辞めになったのでしょう。

◆大義も勝機もないはずの出直し選挙

失職を選んだということは、出直し知事選挙で当選する可能性が高いと踏んでいるということです。

それでは斎藤君に「勝機」はあるのか?

失職したケースで出直し選挙に挑んで勝った人としては田中康夫・長野県知事がいます。田中知事の場合は確かに既成政党の多くを敵に回したものの、当時、長野県では結構大きな勢力を誇っていた日本共産党が支援に回ったこと。マスコミも田中県政を評価する論調だったことなどがあり、大差での再選となりました。

その時とはあまりにも状況が違います。田中知事の時は「脱ダム」などの争点となりましたが、今回の場合は、斎藤知事や片山副知事らによる一連の「ご乱行」が問われます。阪神・オリックス優勝パレード担当課長、そして渡瀬・西播磨県民局長が自死に追い込まれたという結果は取り返しがつくものではありません。

渡瀬さんの告発文書で告発されたことについて十分な調査もせずに「嘘八百」と決めつけてしまい、さらに、利害関係者である藤原弁護士(百条委員会で証人尋問された)による内部調査だけをうのみにして懲戒処分としてしまった。まさに、公益通報者保護法違反です。

また、斎藤知事の腹心(俗にいう牛タン倶楽部)の片山副知事(当時、7月31日付で「退職」)や小橋理事(当時、現在は降格)は、警察でもないのに「がさ入れ」を強行。片山副知事は必要な決裁も取らずに渡瀬さんの退職願を受理しない、とその場で本人に申し渡してしまいました。

また、「維新」の掘井けんじ代議士(近畿比例、地盤は加古川市など)は街頭演説で渡瀬さんの個人情報を有権者にべらべらしゃべってしまうという事件を起こしました。個人情報を斎藤知事、片山副知事、小橋理事(いずれも当時)ら誰かが漏らさなければ起きえない事態で、これも重大な犯罪です。

こんな中で斎藤君の立候補に大義もなければ勝機もない。通常で考えればそうなります。

◆「孤軍奮闘」イメージと「既成政党自滅」で若年層中心に善戦も

しかし、筆者は一抹の不安を感じています。

斎藤君は26日の会見の中で「一人で選挙をやる」ということを繰り返していました。これがウケる可能性はあるかもしれません。既成政党への不信感も強い中で、現職であっても一人で闘う姿に心を打たれる人は出るかもしれない。斎藤知事が嘘をついていなければという前提はありますが、高校生から激励の手紙を受け取ったという。これは、石丸伸二さんが東京都知事選挙で、主にインテリの若い男性に特にバカ受けしたのに似ているようにも思えます。 

いま、地方選挙では政策などが全くいい加減な人でも無所属・無党派と言うだけで結構な票を取る現象が結構起きています。この傾向は政党が自己反省し体質を改善しない限り続くでしょう。

出直し選挙に向けては、自民が独自候補を模索し、公明、立憲が自民に同調の構えだそうです。

共産は無所属新人の医師を推薦。維新も独自候補を模索。

そういう中で、反斎藤票が割れ、政党への反感の受け皿に斎藤君がなるかもしれないのです。

おりしも、9月25日、神戸地裁で民商による共産党県議候補だった東郷ゆう子さんが不当解雇された事実が認定されるという労働裁判の判決が出ました

筆者は労働者が救済されることは大歓迎します。他の全労連系の労働組合幹部の多くの仲間とは違い、筆者は日本共産党を支持しておりませんので、堂々と、判決を歓迎すると言明しています。ただ、これは兵庫県内においては間違いなく、反斎藤側に打撃になるでしょう。党内で年配者が若手にハラスメントする有様は、斎藤知事と瓜二つではないか? だから筆者は常々、「立憲や共産と言った野党はスターリン主義をやめて人を大事にすべき、と口を諫言してきたのですが言わぬことはない、です。

もちろん、おそらく自民党が出す候補が最有力にはなるでしょうが、自民党自体は決して評判は芳しくありません。維新は維新で斎藤知事の製造物責任があります。独自候補を出すことで余計に批判を浴びることも予想されます。

そういう中で、斎藤君が結果として一位になる、ということは既成政党側が油断すればあり得るのではないか? 東京都知事選挙で石丸伸二さんがバカ受けした現象を軽視すべきではありません。

ただ、石丸伸二さんが兵庫県知事選挙に突如殴り込めば、また状況は変わるでしょう。反既成政党票が割れて斎藤君に不利な展開になるでしょう。まさかの石丸知事誕生まではいかないまでも、アンチ既成政党票を石丸さんに食われると斎藤君の苦戦は免れないでしょう。

◆「斎藤事件再発防止」こそが争点だ

ともかく、斎藤君には、反省がない。内部告発に対する対処を決定的に誤った、公益通報つぶし、さらには維新のほりいけんじ代議士への情報漏洩などは刑事事件ものです。阪神・オリックス優勝パレードへの公金流用も信金関係者の証言も出てきて全容が明らかになってきた。これも解明されれば刑事責任は免れない。

斎藤君は次の任期で、県立大学無償化などの「若者への投資をやりたい」と会見で繰り返していました。

だが、くどいようですが、問題になっているのは政策ではなく斎藤知事とそのお仲間のコンプライアンスです。

どうしたら、人が二人も亡くなるような事件の再発が防げるか?それが大きな争点であるべきです。兵庫県内各政党は斎藤君の土俵=政策に乗ってはいけません。「若者への投資」も、新しい知事の下で、知事や小橋理事らの「独裁」ではなく、きちんと県民ニーズを踏まえて推進すべきです。

同時に、公益通報つぶしを許さない体制の整備は、県警の裏金問題の隠ぺいが起きているわが広島県、鹿児島県警本部長の不祥事隠しが起きている鹿児島県など全国の自治体です。そして公益通報者保護法の改正は国政の大きな課題ではないでしょうか? 来るべき衆院選の争点の一つにしても良いと思うくらいです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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昨年LGBT法成立直後に発行された『人権と利権』、本年8月に刊行された、博覧強記、語学堪能、そして医学の知識を駆使し斉藤佳苗医師が一気に書き綴った大部の書『LGBT思想を考える』に続く『LGBT異論』が9月28日発行の運びとなりました。

 

かつてオウムによって殺されようとしつつもカルトと果敢に闘ってきた滝本太郎弁護士、現代フランス文学のレジェンド堀茂樹慶応大学名誉教授、フェミニズム界で孤立しつつも、その腐敗と復活のために闘う千田有紀武蔵大学教授らを中心として多くの方々に執筆、寄稿をいただきました。

内容は多様でぎっしりながら、定価990円(税込み)とお買い求めやすい価格でもあり、ぜひご購読ください。

以下のように緊急事態発生のため、ここでは、本書『LGBT異論』の詳しい内容は省きますが、寄稿者の一人、森奈津子さんは、昨年『人権と利権』を編纂し当社より発行、大きな話題となりました。またここ数年、いわゆる「しばき隊大学院生リンチ事件」について被害者支援、真相究明、加害者糾弾について「別個に進んで共に撃つ」形で共闘してきました。

そして、このたび、9月20日に本書の内容を情報公開した直後、森奈津子さんに対して理不尽な攻撃が勃発したのです。あろうことか森さんが講師を引き受けた、「千葉県人権啓発指導者養成講座」の「女性に関する人権」のテーマの講座に対し、これに不満を持つ徒輩が、森さんを勝手に「差別者」認定し講師を解任するように千葉県に迫ったのです。

特に、本年3月、共同代表による性加害で逮捕者を出した「TransgenderJapan」など、わざわざ要望書を千葉県に持参し直接申し入れています。そんなに森さんの発言に困ることがあるのでしょうか?

くだんの「TransgenderJapan」はみずからの団体の幹部が逮捕されたことをどう反省したのか? それを対外的に真摯に明らかにするのが先決で、それなくして他人の講座にちょっかいを出す資格などありません。

[左]「TransgenderJapan」はわざわざ千葉県庁に要請書を持って申し入れに行っている/[右]「TransgenderJapan」共同代表(当時)逮捕のネット記事

森さんは昨年、LGBT法案の委員会審議で滝本太郎弁護士と共に参考人として呼ばれ発言するほど、当事者としてLGBT問題、女性の人権について発言する知見と資格があります。

出版社としては著者を防衛することは当然であり、この件に対しては断固連携して闘います。

こういうことで、日頃は綺麗ごとばかりを宣う「LGBT法連合会」や、これを支持する政党、立憲、日共、社民、れいわは、どう動くのか? ことは一人の有能な知識人の「言論の自由」を潰しかねない重大な問題なのだ、わかっているのか!?

◆「しばき隊大学院生リンチ事件」の加害者側人脈の蠢動を許すな!

私たちの物事を見る指標に、くだんの「しばき隊リンチ事件」があります。ここで加害者側に立った徒輩(またこれにつながる者)らが森さん攻撃に与していることは決して偶然ではありません。今回の犬笛を吹いたのも、しばき隊のボス野間易通です。

LGBT問題にしろ、今回の問題にしろ、野間易通はじめ、リンチ事件加害者側につながる、いわゆる「しばき隊」(~系)の人物が蠢いているのは偶然でしょうか?

野間易通がリークし、リンチ加害者と昵懇の者が拡散

リンチ事件について私たちは真相究明として6冊もの本を出しました。毎回リンチ直後の凄惨な顔写真を付け、リンチの最中の阿鼻叫喚の音声データを付けたものもあります。このリンチ事件は、将来ある大学院生(当時某国立大学大学院博士課程在学)の人生を狂わせました。被害者はいまだにリンチのPTSDに苦しんでいます。不憫です。

いまだに「リンチはなかった」などと吹聴している者がいますが、まさに「偽造するスターリン学派」(トロツキー)です。

今また、LGBT当事者として長年活動してきた森さんの、ささやかな言論の場さえ奪おうとするLGBT活動家やしばき隊(~系)活動家らによる理不尽な攻撃には、少々の意見や考え方の違いを越え一致して反撃しなくてはなりません。ことは憲法21条「表現の自由」に関わる深刻な問題なのです。

◆しばき隊(~系)活動家やLGBT活動家は「左翼」でも「極左」でもない!

 

森さんへの不当な県知事の発言に抗議する千田有紀教授。「ぽんたCafe」は千田教授のアカウント

ついでながら、森さんには常々申し上げているのですが、しばき隊(~系)活動家やLGBT活動家は「左翼」でも「極左」でもありません。単なるゴロツキ暴力集団にすぎません。昔風に言えば「反革命」「修正主義」ということでしょうか(古い!笑)。

「左翼」「極左」とはまず権力に対して闘うことが基本ですが、彼らが権力と闘っていることなど見たことが在りません。かつては「警察のみなさん、ありがとう」などと中核派や新左翼系ノンセクトグループを暴力的に弾圧する機動隊に「ありがとう」などとエールを送っているのです。こんな「左翼」「極左」はありえません。

学生時代、少なからず「左翼」「極左」の活動に関わった私や滝本太郎弁護士としては、彼らを「左翼」、さらには「極左」などと呼ぶのはおこがましいです。まだ曲りなりに権力と闘っている中核派を「極左」というならわかりますが(ちなみに中核派の杉並区女性議員は区のLGBT条例に反対しました)。

森さんや読者のみなさん、これからは彼らを「ゴロツキ暴力集団」と呼びましょう! 決して「左翼」とか「極左」と呼ばないように!

森さんの問題、今現在、まだ流動的ですが、注視していきましょう! 講座の予定は来週10月2日、この週末から週明けにかけて大きな動きがあるものと予想されます。もし理不尽な処置がなされたならば断固一致して抗議しましょう!

(松岡利康)

【続報!】先にご報告した、森奈津子さん女性の人権講座解任問題ですが、昨日9月26日夕刻、中止が決定、千葉県のHPで公表されました。

※令和6年10月2日(水曜日)に全日警ホールで開催を予定しておりました千葉県人権啓発指導者養成講座 1「被差別部落出身者に関する人権」「女性に関する人権」については諸般の事情により中止となりました。

とのことですが、詳しい説明はありません。「諸般の事情」って何?

また、昨日、滝本弁護士らが千葉県庁を訪れ上申書を提出したとのことですが、一顧だにされず、あっというまの決定でした。

滝本弁護士の側近の方によれば、

知事には会えず、担当部署の人が対応したそうです。(逃げたか?)
画像を送ります。
いつものことといえばいつものことですが、こんな適当な部屋で。
県の担当者からは、その場で中止が確定していると告げられました。
「今回の中止は知事がxで発信する直前の20日頃から、
担当に苦情がたくさん入ったため、安全に出来ないので中止」と、
「安全面の考慮」という逃げの常套句での説明でした。

 

憲法問題にも抵触する問題ですから、本件に対しては断固弾劾しなくてはなりません。

さらに展開あれば継続的にご報告いたします。

※               ※               ※

 

『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、トランスジェンダー論争、巨大利権の行方』
女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著 

A5判 164ページ(本文160ページ+カラーグラビア4ページ) 
   定価990円(税込み)  
   紙の爆弾10月号増刊 9月28日発売

【内容】
1: [対談] 堀茂樹×滝本太郎 世界を席捲する新たなカルト=「性自認」思想の現在
2: 千田有紀 フェミニズムの再生を求めて
3: 井上恵子 東京大学三浦俊彦教授の記事に対する東京大学関係教員有志声明の批判──その問題点
4: 杉島幸生 『トランスジェンダーになりたい少女たち』から考える
5: キャロライン・ノーマ オーストラリアにおけるジェンダーイデオロギーから子供たちを救おうとする私の妹の闘い
6: 滝本太郎 LGBT理解増進法について
7: 滝本太郎 前提として知っておきたいこと
8: 滝本太郎 2つの考え方の図
9: 三浦俊彦 LGBT支援のための前提条件
10: 森奈津子 男性器つき女性を誕生させたい政治家たち
11: 滝本太郎 性自認主義の進展──特例法について司法の状況
12: 玉置祐道 女性スペースの管理と法律の現状と問題点
13: 益田早苗 LGBTQ当事者の子育て:子どもの安定した生活と最善の利益を守る
14: 郡司真子 学校で危ない性教育?
15: 滝本太郎 性自認至上主義は、カルト的な思想運動である
16: 斉藤佳苗 『LGBT問題を考える』を出版して

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DHGBQC8X/
◎楽天 https://books.rakuten.co.jp/rb/18009428/
◎紀伊國屋書店 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-04-4910027201044
◎ヨドバシ https://www.yodobashi.com/product/100000009003917973/
◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000752

今年も9月1日がやってきた。私にとってこの日は防災の日としてというより、関東大震災で6千人もの人々が朝鮮人であることを理由に虐殺された日として脳裏に刻まれている。このとき約700人の中国人と日本人では大杉夫妻と甥の3名と10名の社会主義者、労働運動活動家も殺されている。私がこの事件を知ったのは高校1年生の時だった。民青同盟に加盟した私はまずその初代委員長がこのときに虐殺されたことを知り驚いた。

関東大震災の朝鮮人虐殺からすでに101年になる。事件当時、朝鮮人かどうかを判断したのは「十五円五十銭」を発音させることだったという。当時大学生だった詩人壷井繁治は、そのことを記している。壷井が友人の安否を尋ねてゆく途中で軍人などに「十五円五十銭いってみろ!」と糾された、その殺伐した光景について、後に詩「十五円五十銭」に発表している。

その男が、「朝鮮人だったら/『チュウコエンコチッセン』と発音したならば/彼はその場からすぐ引きたてられていったであろう/国を奪われ/言葉を奪われ/最後に生命まで奪われた朝鮮の犠牲者よ/僕はその数をかぞえることはできぬ」

しかし、今だ事件の全容が明らかにされていない。犠牲者の氏名、どこで誰が殺害したのか事件を起こした経緯などなど。殺害された多くの人々の霊魂が彷徨っている。

被害者の家族がその事実を知っていれば、従軍慰安婦や徴用工のように損害賠償を求めて訴えることができよう。しかし、いつどのように誰が殺されたのか分からないために、そうした訴訟も起こせないでいる。

23年松野官房長官は記者会見で「政府として調査したかぎり、事実関係を把握できる記録が見当たらない」と発言し、東京都では小池知事が震災被害者と朝鮮人虐殺被害者をひとまとめにし慰霊しているとし、朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文送付すら拒否したままだ。いや、真実を知っているからこそ、それに向きたくないからこそ、目を背けているというのが、日本政府や東京都の姿ではないだろうか。

なぜ、震災時に起きた朝鮮人虐殺事件がなかったようにされるのか? それは根本的には朝鮮、中国をはじめアジア諸国を侵略してきたことに対する反省をしていないからだと思う。

日本は英米の国際秩序に逆らったから敗北したとし、だから英米に逆らってはだめだという教訓だった。英米の国際秩序は覇権の秩序で不正義の秩序だ。日本がめざした大東亜共栄圏も日本の覇権の秩序であり、不正義の秩序だ。しかし、朝鮮、中国をはじめとするアジア諸国の民族解放闘争は正義の戦いだった。正義が不正義に勝つのは必然だ。日本はアジア諸国の民族解放闘争に敗北し、日本はそのために滅びたということを教訓にすべきだった。弱かった日本が強い英米に負けたというのでは本質的に何も反省していないし、教訓化していない。

だから、アジア諸国に侵略したことをできるだけ隠そうとし向き合うことができないでいる。しかし、いくら隠そうとしても歴史的事実を否定できない。

関東大震災の朝鮮人虐殺も年をおって追及する動きが強まっている。昨年、100周年を迎えさまざまな行事が取り組まれたのにひきつづき、今年も犠牲者が多かったという横網町公園(墨田区)での追悼式典が開かれた。今年の追悼式は日朝協会東京都連会長・宮川泰彦さんの開式のことば、浄土真宗本願寺派僧侶・小山弘泉師の読経、韓国伝統舞踊家・金順子(キム・スンジャ)さんによる「鎮魂の舞」と続き、最後に4人の人が代表して献花した。もっとも凄惨な虐殺現場の一つと言われる墨田区荒川の近くでも慰霊祭が行われた。高麗博物館での展示のほか、在日の若者らによる美術展の開催、埼玉県本庄市と熊谷市上里町では犠牲になった朝鮮人を追悼する式典が長年続いている。

「記録なし」という政府の答弁と裏腹に、朝鮮人虐殺の記録が埼玉県熊谷連隊区司令部が作成した「関東地方震災関係職務詳報」に朝鮮人40数人が殺されたという記録が今年発見された。また、神奈川県で県知事による内務省警保局長あての報告書で県内で殺された朝鮮人14人の名前が記載さているのが昨年秋、新たに発見された。


◎[参考動画]関東大震災から101年 都内で朝鮮人犠牲者追悼式典(毎日新聞 2024年9月1日)

韓国でも8月15日、ドキュメンタリー映画「1923関東大虐殺」(キム・テヨン、チェ・ギュソク監督)が公開され、その前に5月、日本・参議院議員会館で試写会が行われた。在日の呉充功監督は、「隠された爪跡」(1983年)、「払い下げられた朝鮮人」(1986年)、「1923ジェノサイド、93年間の沈黙」(2017年)などの作品で関東大震災での朝鮮人虐殺に光を当て、現在、ドキュメンタリー「名前のない墓碑」の編集に取り組んでいる。

9月1日福田康夫元首相は在東京駐日韓国文化院で開かれた「第101周年関東大震災韓国人殉難者追念式」に出席した。そこで福田氏は関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺は「歴史的な事実」としながら「日韓共同調査」が必要だと明らかにし、「日本の人々は、残念なことに(関東大震災朝鮮人虐殺に対して)実際のところよく知らない」と述べた。自民党出身の元首相が関東大震災朝鮮人犠牲者追念式に出席したのは今回が初めてだ。福田氏は「事実このような(追悼式への出席)機会がなかった」とし「過去ことを考えると胸が痛い。だが、このような痛みをこれから考えていかなくてはならない」と強調した。

一方、横網町公園での追悼式典の幕で隔てた横で朝鮮人虐殺の犠牲者数を疑問視するネトウヨの団体「日本女性の会 そよ風」が「真実の慰霊祭」の開催を事前告知していた。会場の数十メートル先で男女十数人が集まり「群馬の次は横網町だ」と書いた幕や「6000人虐殺はうそ」「根拠を示せ」というプラカードを掲げた。式典終了後、そよ風側が幕越しに会場に近づき、大震災当時の東京市長だった永田秀次郎の句碑に向けて「6000人虐殺のうそを暴きます」と叫んだ。

 

赤木志郎(あかぎ・しろう)さん

日本における朝鮮人虐殺事件は、日朝間の問題でもある。この問題を曖昧にして日本と朝鮮や韓国との相互理解や友好などありえない。岸田首相が8月に韓国を訪れ「未来志向の日韓関係」を口にしたが、アメリカの圧力のもとでユン大統領は日本政府が10億円で解決する形で徴用工問題などすべて韓国内で処理し対日賠償をおこなわせない姿勢であり、岸田首相はそれをもって日韓関係の正常化だとしている。先の呉監督は、「関東大震災虐殺に対して一貫して知らぬ存ぜぬの態度である日本政府に対して、韓国政府はまともな抗議文でも送ったことはあるのか」と怒りを抑えることができないでいる。関東大震災での朝鮮人虐殺の真相解明を要求する声は圧殺されたままだ。

関東大震災での朝鮮人虐殺をめぐる日韓の動きの背景にはアメリカがある。現在、アメリカは対中包囲網を強化するために日米韓同盟に障害を与える問題を「政治的対立物」としてはならない」という圧力を加えている。そのなかに関東大震災での朝鮮人虐殺問題も含まれている。そのため日本政府・東京都の「われ関知せず」という姿勢、韓国政府の「無視」という結果になっている。つまり、日米同盟新時代の米覇権の要求として、今日の「朝鮮人虐殺」否定があるといえる。

それゆえ、対中代理戦争国家化阻止のためにも、朝鮮人虐殺をはじめ一連の植民地支配にたいする真摯な反省を追求していくことが必要だと思う。その作業は、単なる歴史修正主義と闘い、歴史認識を正しくおこなうためだではなく、今日のアメリカの覇権主義、日米同盟新時代との闘いの重要な一環としてある。


◎[参考動画]関東大震災 朝鮮人犠牲者追悼式「虐殺を記憶し繰り返さない」(毎日新聞 2024年9月7日)

▼赤木志郎(あかぎ・しろう)さん
大阪市立大学法学部中退。高校生の時は民青、大学生のときに社学同。70年赤軍派としてハイジャックで朝鮮に渡る。以来、平壌市に滞在。現在、「アジアの内の日本の会」会員

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

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