中学の同級生・有田正博君のこと  鹿砦社代表 松岡利康

中学校の同級生、有田正博君が11月いっぱいで店を閉め引退するという地元紙・熊本日日新聞の記事を、同紙の元記者のH君が送ってくれた。実際には諸事情で延期、12月15日に閉店した。

店を閉めることは、今年初め同窓会で帰郷した際に本人から聞いていた。その時は10月いっぱいで、ということだった。前出熊本日日新聞で1カ月インタビュー記事を連載するなど地元熊本ではちょっとした有名人だ。

熊本日日新聞2024年11月20日

有田君とは、中学3年の時に転校してきて一緒だった。卒業してからずっと別の人生を送り音信が途絶えていたが、偶然に、こちらは高校の同級生で、ライフワークとして島唄野外ライブ「琉球の風」を始めた東濱弘憲君(故人)の追悼本『島唄よ、風になれ! ── 東濱弘憲と「琉球の風」』(鹿砦社刊)の校正の過程で「有田正博」という名が出て来てピンときて前出H君(当時熊本日日新聞記者)に調べてもらったところ中学の同級生の有田君その人だった。

有田君は一時東濱君のブティックで働いていて、これが閉店するや、その後独立し海外に行ったりしてファッションの勉強をして名を挙げた。一番有名なのは、まだ無名だったPaul Smith(ポール・スミス)と出会い、日本に持ってきたことだろう。Paul Smithは今や世界的ブランドとなった。

熊本日日新聞2016年6月8日

H君の取り計らいで、実に40数年ぶりに再会した。……

その後、有田君の店が私の一族の墓が近くに在るということもあり帰郷するごとに立ち寄って歓談したり食事と共にしてきた。

有田君(左)らと旧交をあたためる

それにしても、中学の同級生と高校の同級生との関係と私との関係など因縁を感じる。

Paul Smithさんは義理堅い男のようで、このライセンスを日本に上陸するや有田君に渡した。このライセンスもあり有田君は一時ビル3つ所有し釣り三昧の日々を送ったという。そんなこともあり妻子から三行半を突きつけられ離婚、ビル3つとPaul Smithのライセンスを潔く渡し、ゼロから出発したという。一時は東京の青山にも店を出したこともあった。

中学校の時にはそんな大それた男とは思わなかったが、引退かあ、本来なら私もその予定だったが、コロナのお蔭でもうひと踏ん張りしないといけなくなった。
時は過ぎ行く ── 人は老いていく。

閉店後電話した。「お疲れ様! よか人生だったね」と言い、「祝 人生勝利!」の文字の刻印を入れたクリスタル置き時計を贈った。

(松岡利康)

冠鷲シリーズ最終戦、勇志が王座戴冠となって今年を締め括る! 堀田春樹

テツジムから6人目のチャンピオン誕生。勇志が鎌田政興を圧倒して王座決定戦を制す。

次なるテツジム期待の雄希はランカーの佐藤勇士を倒す急成長。

蘭賀大介は苦戦の始まりから持ち直しの判定勝利。

◎冠鷲シリーズFINAL(vol.7) / 12月14日(土)後楽園ホール17:30~20:48
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第10試合 第17代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

2位.勇志(テツ/2000.4.28大阪府出身/ 57.05kg)15戦11勝(5KO)2敗2分
          vs
4位.鎌田政興(ケーアクティブ/1990.5.6香川県出身/ 56.8kg)22戦10勝(3KO)10敗2分
勝者:勇志 / 判定3-0
主審:前田仁
副審:鈴木50-45. 高谷50-45. 笹谷50-44

両者は2020年12月に3回戦で対戦し、勇志が初回にノックダウン奪って判定勝利しています。前回10月19日の一人欠場による三名抽選準決勝戦を経て、この日迎えた王座決定戦。

手の内を知る中、初回早々から勇志の突進が凄かった。上下の蹴り、後ろ蹴り、右ストレート、間を置いて飛びヒザ蹴りやバックハンドブローと鎌田政興を倒さんばかりの圧力を掛けた。鎌田は反撃しても巻き返すような勢いは足りない。

勇志が多彩に攻めた中の飛びヒザ蹴りが鎌田政興にヒット

第2ラウンドには勇志が不意を突いた左ハイキックでノックダウンを奪った。攻めの勢いは衰えぬもタフな鎌田に攻め倦む流れに移り、勇志の攻勢は変わらずも後半に入ると疲れも見えて来てノックアウトには至らないだろうという空気が漂う。それでも大差で危なげなく進んだ。鎌田はパンチで逆転狙うが、クリーンヒットせず勇志に躱された。勇志は王座初戴冠。

ノックダウンを奪った勇志の左ハイキック、この後、鎌田政興は後方に倒れた
勇志が多彩に攻める中のローキックで鎌田政興を追い詰める

勇志は試合後、「鎌田はタフでしたね」

後ろ蹴りは何発かボディーヒットもあったが、アゴを狙ったか?の問いに、
「後ろ蹴りは適当です。ちょっと技見せようかなと思ってやったらあんな風になりました。まだまだ出してない技もあります」

圧倒に至った展開について、「スタミナはあったけど後半はちょっとしんどかったです。ノックダウンはあと2回ぐらいあったと思うんですけど、レフェリーがとってくれへんかったですね」

後輩を売り込み、「次、雄希がベルト狙って行きます」と、この日のアンダーカードでランカーの佐藤勇士に圧勝したバンタム級の雄希を称えた。

テツジム大阪のチームワークの勝利でもある

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

NKBライト級2位.乱牙(=蘭賀大介/ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 62.0kg)
10戦7勝(3KO)2敗1分
        vs      
スックワンキントーン・スーパーフェザー級5位.須藤誇太郎
(フジマキックムエタイ/2001.8.12神奈川県出身/ 61.85kg)10戦5勝(1KO)4敗1分
勝者:乱牙 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:加賀見29-28. 高谷29-28. 前田29-28

開始15秒程に須藤誇太郎の投げ落としに近い崩しで乱牙は後頭部を打ったか、脚が覚束ない動きになって劣勢に陥った。須藤誇太郎はチャンスでありながら乱牙を仕留めるに至らず、乱牙はダメージを引き摺りながらも徐々に巻き返しに掛かった。

抱え上げられ落とされた流れの乱牙は後頭部を打った


第2ラウンド終盤には須藤をコーナーに追い詰めパンチ連打で主導権支配する攻勢。第3ラウンドも圧力掛けて出た乱牙がパンチで須藤を追い詰め、倒すに至らずも形勢逆転の判定勝利となった。

盛り返す中の乱牙の連打

乱牙は来年2月22日、棚橋賢二郎とNKBライト級王座決定戦が予定されています。

◆第8試合 ライト級3回戦

NKBライト級3位.山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/ 61.0kg)
20戦7勝(4KO)9敗4分
         vs
利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/ 61.1kg)7戦6勝(2KO)1敗
勝者:利根川仁 / TKO 3ラウンド 1分57秒 /
主審:鈴木義和

初回、パンチを軸にローキックを加えた交錯が続くと、利根川仁の右ストレートヒットし、山本太一がノックダウン。再開後直ぐ、利根川仁が飛びヒザ蹴り、ハイキック、パンチ連打で再びノックダウンを喫する山本太一。

利根川仁が優ったパンチの交錯、山本太一は距離感が狂ったか

第1ラウンドは凌いだが、第2ラウンド早々にも利根川仁の前進からパンチ連打でノックダウンを喫する山本太一。ところがここから山本太一が左ストレートで逆転ノックダウンを奪い反撃に転じた。経験値の差かと思われたが、追い込んでいく中、またも利根川仁の右ストレートがヒットするとゆっくりしたモーションで倒れ込む山本太一。立ち上がるが第2ラウンドは終了。

第3ラウンドも利根川仁が連打でノックダウンを奪い、打ち合いに出る山本太一と一進一退の攻防を続けながらカウンターパンチでこのラウンド2度目のノックダウンを奪うとレフェリーがカウント中の試合をストップし、利根川仁がTKO勝利となった。

劣勢の山本太一が逆転ノックダウンを奪った左ストレートヒット、会場を盛り上げた

竹村哲マッチメイカーは山本太一に対し、「ダメージ貰った中であそこからダウン取り返したことは凄く良かった。“太一やるじゃん”と、あれで会場がワーッと盛り上がった。試合としては凄く良かったよ!」と絶賛。

山本太一は「勝ち上がるには今後もこのスタイルで行くしかない。ステップ使って無難に勝っても、あんまり観衆の印象に残らずダメな試合になっちゃうし、今日は倒しに行こうかなと思ったけど、結果負けちゃったし。気持ちは弱かったです」

竹村氏に戦略的アドバイスを受け、今後も倒しに掛かる試合を見せればタイトル戦やビッグマッチ起用へも可能となって来る山本太一である(興行終了後、たまたま見つけた山本太一にインタビュー)。

◆第7試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級3位.佐藤勇士(拳心館/1991.8.12新潟県出身/ 53.1kg)
22戦6勝(2KO)13敗3分
        vs
雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/ 53.1kg)7戦5勝(3KO)2敗
勝者:雄希 / KO 2ラウンド 2分30秒 /
主審:高谷秀幸

初回は両者、ローキックで距離感を探る様子見の中、雄希の蹴りの勢いで佐藤勇士にプレッシャーを与える。左ストレートでスリップダウンを奪うが、更に蹴りで誘ってパンチでノックダウンを奪い、攻勢を維持して効果あるヒットを繰り出した。
第2ラウンドも雄希の勢い止まらず、パンチ連打で2度ノックダウンを奪った後、勢い乗ったまま最後はヒザ蹴りをアゴ辺りにヒットさせ、3ノックダウンとなって圧倒のKO勝利。

雄希のヒザ蹴りが佐藤勇士にヒットしノックアウト勝利、ランカー破りの飛躍となった

◆第6試合 バンタム級3回戦

香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身/ 52.5kg)4戦4勝(1KO)
        vs
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/ 53.2kg) 4戦3勝(1KO)1敗
勝者:香村一吹 / 判定3-0
主審:加賀見淳
副審:前田30-29. 鈴木30-28. 高谷30-28

初回早々は涌井大嵩が先手を打って組んでのヒザ蹴りを入れるが、香村一吹は慌てることなく離れて蹴りとサウスポーからの左ストレートで攻勢に転じる。

第2ラウンド、蹴りとパンチの攻防も香村のパンチと蹴りのコンビネーションが冴え、やや優った流れも相手を見てしまう間合いもあり、終了間際にはヒジかパンチかバッティングか、右頭部を斬る負傷をしてしまったが続行可能とされ、第3ラウンドも差は付き難い中、サウスポーからの左ストレートとすぐ蹴りに繋ぐ攻撃力優った香村が圧し切り判定勝利。

流血しながら攻勢を維持した香村一吹、渡邉ジム久々の新星である

◆第5試合 バンタム級3回戦

兵庫志門(テツ/1996.4.14兵庫県出身/ 53.52kg)15戦6勝(1KO)7敗2分
        vs
ベンツ飯田(TEAM Aimhigh/1997.4.17群馬県出身/ 53.25kg)17戦3勝(1KO)11敗3分
勝者:兵庫志門 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:前田30-27. 鈴木30-27. 加賀見30-27

兵庫志門がやや優る攻勢の中、最終第3ラウンドに兵庫志門ハイキックでノックダウンを奪ったが、引退試合のベンツ飯田は踏ん張って終了ゴングまで耐え切った。

◆第4試合 62.5kg契約3回戦

ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/ 62.25kg)
41戦7勝(3KO)30敗4分
        vs
辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/1984.3.13東京都出身/ 62.45kg)6戦2勝(1KO)1敗3分
引分け 三者三様
主審:高谷秀幸
副審:前田30-29. 加賀見29-30. 笹谷30-30

蹴りとパンチの決め手の無い攻防は差が付き難い展開で修了。第2ラウンドが三者三様になった以外は互角の採点だった。

◆第3試合 ウェルター級3回戦

石原尚斗(テツ/1997.9.10岡山県出身/ 66.4kg)2戦1勝(1KO)1分
        vs
マナチャイ・エイムハイ(TEAM Aimhigh/1995.9.14群馬県出身/66.55kg)10戦2勝7敗1分
引分け 0-0 (28-28. 28-28. 28-28)

初回、パンチ連打でノックダウンを奪った石原尚斗だったが、巻き返していくマナチャイ。結果的にポイント追い付いて引分けとなった。

◆第2試合 51.5kg契約3回戦

緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/ 51.4kg)3戦3勝
        vs
真虎(kick life/2002.6.28埼玉県出身/ 51.15kg)16戦1勝13敗2分
勝者:緒方愁次 / 判定3-0 (30-26. 30-27. 29-28)

初回、飛びヒザ蹴りでノックダウン奪った緒方愁次。真虎は劣勢から立ち直り、そこから互角に渡り合うも巻き返すには至らず、緒方愁次の判定勝利。

◆プロ第1試合 ライト級3回戦

龍一(拳心館/1995.11.17新潟県出身/ 60.95kg)10戦9敗1分
        vs
リョウヤ・ハリケーン(テツ/2002.10.20兵庫県出身/ 60.25kg)2戦1勝(1KO)1分
勝者:リョウヤ・ハリケーン / TKO 1ラウンド 35秒

初回早々のパンチのクリーンヒットでノックダウンを奪ったリョウヤが更に連打で龍一を倒すとレフェリーがノーカウントで試合ストップした。

◆3.アマチュア(オヤジキック提供) 81.0kg契約2回戦(90秒制)

天狗ちゃん(テツジム東京/ 80.05kg)
        vs
ナオマサ・ルトタナモンコンスック(D-BLAZE/77.55kg)
勝者:天狗ちゃん / 判定3-0 (20-17. 20-28. 20-17)

◆2.アマチュア(オヤジキック提供) 66.0kg契約2回戦(90秒制)

菅野裕宜(無所属/ 65.1kg)vs 昂介(D-BLAZE/65.8kg)
勝者:昂介 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

◆1.アマチュア(オヤジキック提供) 61.0kg契約2回戦(90秒制)

まさる(Labore spes/ 60.35kg)vs 長友亮二(KING/ 60.2kg)
勝者:まさる / TKO(RSC)2ラウンド 35秒

《取材戦記》


ベストファイトは勇志 vs 鎌田政興と山本太一 vs 利根川仁でしょうか。タイトルマッチの重みで勇志 vs 鎌田政興。一進一退の攻防で盛り上げたのは山本太一 vs 利根川仁でしょう。

勇志のパワフルな攻撃力は見事でしたが、後半バテる様子も窺えました。やはり3回戦制の戦い方で5回戦を戦っているのかもしれません。スタミナが足りない訳ではなく、前半飛ばし過ぎなのでしょう。

山本太一 vs 利根川仁戦の第2ラウンドはノックダウンの応酬となり、山本太一が二度、利根川仁が一度となりました。このラウンドの採点は10-8が一者と10-9が二者で利根川仁を支持でした。この二度対一度のノックダウンの在り方で採点はどう付けられるか。これはプロボクシングに於ける解釈として参考まで。ノックダウンの順は関係無く、両者一度分のノックダウンは相殺され、残る一つのノックダウンが採点されることになり、10-8となるのが基準。キックボクシングに於いても採点基準はプロボクシングに倣うことは重要でしょう。

蘭賀大介は今回からリングネームを“乱牙”と改名。本名で充分カッコいいと思いますが、その変更理由は聞くには至りませんでした。平成以降は姓と名が揃っていないリングネームが多い時代です。

人名はその名字の由来やその人柄を表すものとして、少ない文字で多くの情報が詰められている俳句のようにと言っては語弊があるかもしれませんが、あらゆるスポーツ選手も本名が多く(大相撲は別格)、日本人が使う漢字名はカッコいいものです。

2025年の日本キックボクシング連盟シリーズ名は「爆発シリーズ」です。爆発って過激な響きがあります。これも漢字の力。今年は冠鷲シリーズでした。あまり冠鷲とは関係無かったような気はしますが、毎年のシリーズ名も漢字のインパクトは大きいものです。

興行日程は2月22日(土)、4月26日(土)、6月21日(土)、8月3日(日)大阪175BOX、8月9日(土)新潟・大かま、10月18日(土)、12月13日(土)、8月以外は全て後楽園ホール夜興行です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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COP28 原発をめぐる2つの動き 「原発3倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意〈2〉「グローバル・ストックテイク」という文書に求められた役割 原田弘三

◆「グローバル・ストックテイク」とは

成果文書での原発明記に触れる前に、「グローバル・ストックテイク」という文書の位置づけを簡単に解説しておこう。

パリ協定(2015年採択、2016年発効)では、産業革命後の地球平均気温の上昇幅を2℃を十分下回る水準で維持することを目標とし、さらに1.5℃に抑える努力をすべきとされている(2条1項[a])。

その後、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「1.5℃特別評価報告書」の公表(2018年)をきっかけとして、産業革命後1.5℃の地球平均気温上昇でも、現在よりもかなりの悪影響が予測されること、そして、1.5℃上昇と2℃上昇の場合では、生じる影響に相当程度の違いがあるとの認識が広まり、1.5℃目標実現を目指すべきだとする機運が高まった。

IPCC第6次評価報告書は、1.5℃目標を実現するためには、遅くとも2025年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を減少傾向に転じさせ、2030年までに2019年と比べて約4割の削減を達成し、さらに2050年までにCO2排出量のネットゼロを達成することが必要だとしている。

パリ協定では、長期目標の実現に向けて、世界全体の気候変動対策がどれくらい進んでいるのかを5年ごとに評価することになっている(14条)。これをグローバル・ストックテイクと呼ぶ(ストックテイクは棚卸しという意味)。

このグローバル・ストックテイクの成果を受けて、各国は次の期の排出削減目標を立てることになる。

パリ協定には第1回グローバル・ストックテイクを2023年に行うと書かれており、これが今回のCOPの最大の注目ポイントであった。パリ協定では、各国の中期目標の達成が義務とはされておらず、どれだけ高い目標を設定するかは各国の意思に委ねられている。このため、各国が次期目標(2035年目標)を設定する際に、各国のより高い削減目標を設定する意欲をかき立てる、とういのがこのグローバル・ストックテイクという文書に求められる役割である。

◆成果文書での原発明記

そうした経緯でCOP28の最終日に合意されたのが第1回グローバル・ストックテイクの成果文書であり、その中に以下の文言が盛り込まれた。

「28……締約国に対し、……以下の世界的な努力に貢献することを求める。
(e)特に、再生可能エネルギー、原子力、特に削減が困難な分野における炭素の回収・利用・貯留などの削減・除去技術、ならびに低炭素水素製造を含む、ゼロ排出及び低排出技術を加速すること。」

この成果文書における原発の記述は、先に見た「原発3倍化宣言」に増して重大な問題を孕んでいる。

なぜなら前者が全加盟国に比べれば少数の22か国による宣言であったのに対し、こちらは全加盟国の合意であり、COPが原発を気候危機対策の有効な手段として公式に認め、「気候変動対策のための原発推進」が世界的な合意となったことを意味するからである。(つづく)

◎原田弘三 COP28 原発をめぐる2つの動き 「原発3倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意
1〉「原発3倍化宣言」という暴挙
2〉「グローバル・ストックテイク」という文書に求められた役割

◎本稿は『季節』2024年夏秋合併号掲載(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

▼原田弘三(はらだ こうぞう)
翻訳者。学生時代から環境問題に関心を持ち、環境・人権についての市民運動に参加し活動している。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年冬号

参院選2025広島、現職2名の立憲は〈ネオリベ知事べったり〉の男性に候補一本化 ── 女性は〈政策が分からなくても良い〉捨てゴマか?! さとうしゅういち

2025年の参院選広島県選挙区=改選数2名で立憲民主党広島県連は森本しんじ参院議員の公認を本部に申請しました。もうひとりの宮口治子議員は立候補せず、本部に処遇を委任するということですが、参議院議員を辞めるということには変わりありません。

参院は任期が6年で3年ごとに半数改選です。2019年当選─2025年改選のサイクルの議員は2名とも立憲民主党です。一人は2019年に本選挙で当選した森本真治さん。もう一人は2021年の河井案里さんの当選無効に伴う再選挙で当選した宮口治子さんです。立憲広島は自民党に闘わずしてむざむざ1議席を渡すことになりました。

正直、今の自民党に勢いは全くなく、自民党が二人立ててくることも考えにくい。立憲民主党が共倒れと言うことも考えにくいのにもったいないことです。

◆女性は政策が分からなくても良い捨てゴマ扱い?!

もう一つの角度で申し上げれば、結局、女性は捨てゴマ扱いか、と言う疑念です。なぜこんなことを申し上げるのは以下のことがあるからです。宮口さんが当選した2021年の再選挙では私・さとうしゅういちも立候補しました。

わたしは、あの時、4月8日の告示直前まで、野党系候補の一本化をという広島3区市民連合幹部の要望を受けて『伊方原発を含む原発即時ゼロ』を条件として一本化する(私がおりる)ことを宮口陣営にメールで打診した。

すると、立憲広島の県議からお電話をいただきました。立憲広島の県議は『宮口さんは具体的な政策が分かる人ではないから』とおっしゃった。結局、交渉を断念し、わたしも立候補することになり、20,848票をいただきました。

宮口さんが政策を分かる人かどうかは私には何とも言えません。問題は『立憲広島自身が『政策が分かる人じゃない』と認識している人を担いでいる』ことです。有権者をバカにしているし、女性をバカにしています。

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◆立憲に政治を良くする気があるなら森本議員こそ衆院か知事に挑むべき

そして、今回、男性で事実上、立憲広島に君臨されている森本真治さんで一本化したのです。

もし、立憲広島に広島の政治をよくする気があるのであれば、それこそ、森本参院議員を衆院選の時に小選挙区で与党を打倒するように擁立したでしょう。

あるいは、広島県知事選挙で湯崎英彦知事を打倒し、日本一ザルの産廃行政はじめ、疑問だらけになった広島県政の抜本的改革をめざすというのでもわかります。

だが、そういうことはあり得ない。森本議員もまさか参院選2019で応援してもらった湯崎知事に弓を引くことはないからです。そもそも、立憲広島自体が、県政レベルでは、自民党以上に湯崎知事ベッタリだから無理な相談です。

◆筆者を脅す電話で宮口さんの名前を間違える立憲民主党員

ちなみに、立憲広島のある党員の方は、2021年4月3日ごろ、告示直前、わたしに電話を下さり『立候補するならお前とは縁を切る。俺の地域に出入りするな』と脅してこられた。その方は宮口さんの名前を何度も〈平口さん〉と間違えておられた。ご自身も名前も不確かな人の当選を図る目的で筆者を脅してこられたのです。失笑ものです。

ちなみのその方の地域が選挙後に大洪水になりましたが、筆者はボランティアに駆け付けました。立憲民主党は、党員の教育をきちんとしないと、却ってアンチを増やすばかりではないでしょうか?

◆「仁義なき候補者選考」、立共両党に暗い影

一方、立憲広島は実は、上記参院選再選挙で、2020年段階で〈檻の中のライオン〉で有名な弁護士の楾大樹先生を候補者と内定していたのです。ところが、2021年に入ってから、楾先生のはしごを外した。すなわち、選対委員長だった森本議員の秘書の妻である宮口さんに候補者を差し替えた経緯があります。(茶番選挙 仁義なき候補者選考 著者・編者:楾大樹より)

そして、あれから3年半。今度は宮口さんを使い捨てにしたわけです。こういうことが、同党がいまひとつ、伸びない背景にあるのではないでしょうか?

立憲広島は野党第一党であることに胡坐をかいて人を舐めていないか?もうちょっと人を大事にされたらいかがでしょうか?

また、野党統一候補者の選考に当たっては予備選挙や公開討論会を開くなどすべきではないのか? それすらなかったのが参院選広島再選挙2021でした。また、あの時、宮口さんを推してしまった日本共産党さんも党勢を大きく落としています。同党は2021年の衆院選まで、立憲と言うだけで、自民党よりも酷い権威主義者、新自由主義者を推薦・支持しまくっていました。そのことの矛盾も噴出しているのではないか? 立憲、共産の皆様に申し上げたい。〈自民党だけでなく、あなたがた野党も〈庶民革命〉により県民に政治を取り戻される対象物なのですよ〉と。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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「香害、すなわち化学物質過敏症」の誤り、1月に2つの判決、横浜副流煙事件 黒薮哲哉

来年2025年の1月に、横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が下される。詳細は次の通りである。

■作田学医師らに対する「反スラップ」裁判

判決の日時:2025年1月14日(火)13時10分
法廷:横浜地裁609号法廷
原告:藤井敦子、藤井将登(代理人弁護士・古川健三弁護士)
被告:作田学、A夫(係争中に死去したために、現在は請求対象にはなっていない)、A妻、A娘

■作田学医師に対する名誉毀損裁判

判決の日時:2025年1月22日(水)13時10分
法廷:東京地裁806号法廷
原告:藤井敦子、酒井久男(山下幸夫弁護士)
被告:作田学

これら2つの裁判の経緯は、2016年まで遡って、別稿で詳しく説明しているので、参考にしてほしい。事件の全容をコンパクトにまとめている。
[別稿]事件の概要 

◆香害=化学物資過敏症という従来の考え方の誤り

この事件で中心的な位置を占めている藤井将登さんが、隣人家族から、「煙草の副流煙により健康を害した」として、約4500万円を請求する裁判を起こされたのは、2017年の11月だった。筆者がこの事件にかかわるようになったのは、その1年後である。マイニュースジャパンから記事化を依頼されて、取材したのが最初である。

事件の取材を通じてわたしが得た最も大きな成果は、化学物資過敏症についての見解が変化したことである。軌道を修正した。

元々わたしは、香害=化学物資過敏症という考え方に立っていた。おそらく市民運動と距離が近い週刊金曜日の影響ではないかと思う。確かに両者が結びつく場合はあるが、公害を訴える層の中に一定割合で、精神疾患に罹患している人々が含まれている点を見落としていた。化学物資過敏症の外来を受診する患者の8割が、精神疾患の可能性があると指摘する専門医の証言もある。

横浜副流煙事件の取材を通じで、香害=化学物資過敏症の考え方の未熟さに気づいたのである。一定割合で精神疾患の患者が含まれているというのが客観的な事実である。

実際、化学物質過敏症を自認している人々の中には、第三者からみると、異常な行動をするひともいる。攻撃的な性格で、SNS上で名誉毀損などのトラブルを起こしているひとも少なくない。

横浜副流煙事件も同じ類型の行動様式が引き起こした事件にほかならない。化学物資過敏症の複雑さが根底にある。

事情を複雑にしているのは、香害を訴えに患者の中に、真正の化学物質過敏症患者も含まれている点である。両者の境界線を引くのが、難しく、両者が重複することもある。

こうした状況の下で、化学物質過敏症に取り組む市民団体の多くが、単純に香害=化学物質過敏症という立場を明確にして、運動を展開してきた。一部の医師もそれに協力してきた。香害を訴える患者を、安易に化学物質過敏症と診断してきた。

その結果、客観的な事実を軽視した香害の解釈が社会に浸透したのである。その弊害が典型的に現れたのが、横浜副流煙事件である。化学物質過敏症についての浅はかな見解を前提に、一個人に対して4500万円を請求するに到ったのである。

※本稿は『メディア黒書』(2024年12月13日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

ドンファン事件に「無罪」判決! 「疑わしきは罰せず」が貫徹された判決だった! 尾﨑美代子

◆確かにセンセーショナルな事件だった!

紀州のドンファンとよばれた男性が覚醒剤中毒て死亡した件で、逮捕された元妻の女性の裁判員裁判で、女性に無罪判決がでた。孫ほど歳下の女性との結婚で話題になったうえ、最後は覚せい剤で死亡したということで、メディアはさんざん騒いできた。

これが有罪ならば、「やっぱりね。あの女、怪しかったもんね」と騒ぎ続けただろう。しかし、結果は無罪。何故かそれ以降、メディアは全体トーンダウンしたと思うが、そう思うのは私だけか? 結構深堀りする番組もあるが、羽鳥慎一モーニングショーなんか「はい、あの事件で無罪判決がでました」と事実に触れた程度、「〇〇動物園のカピバラのお風呂に、昨日ゆずがプレゼントされました」と似たような扱いだった。

確かにセンセーショナルな事件だった。裁判は長期に渡り、28人もの証人が証言した。中には覚醒剤の売人もいた。男は「職業」を聞かれ、「(覚せい剤の)売人」と答えたという。

そんなことあんのか? 無職か、別の職業をあげ、その後「被告を知ってるか?」と問われ、「以前覚醒剤の売人をやっていた頃、その女性と接触したことがあります」と答えるのが普通ではないか? 男性の姿は衝立などで遮られ、顔など分からない方法で行われたのだろうが、それにしても法廷で「売人です」と堂々と証言し、証人の顔をみることができた裁判員らは、さぞかし驚いただろう?

◆「疑わしきは罰せず」が貫徹された判決だった!

この判決、「疑わしきは罰せず」という、刑事裁判の基本中の基本をズバリと見せてくれただけでも見ていてスカッとした。基本中の基本とはいえ、あまりに守られていない鉄則だったからね。

でも、ここで花開いたのだぞ。福島恵子裁判長がバシッと「ほら見ろよ」と出してくれたんだぞ。モーニングショーの羽鳥さん、玉川さんなんかにコメントさせてよ。玉川さんはしゃべりたいことがやまほどあったはず。しかし、それすらしなかった。局でよほどこの件に関しては何気なくスルーしようと決まっていたと思うほど。 

◆TVメディアは男性中心過ぎないか?

これまでいろんな冤罪事件をみているが、とりわけ女性が犯人とされた場合、男性中心のメディアは、こんな扱いだということがよくわかったね。のちに事件ではなかったことが判明した青木恵子さんの東住吉事件、西山美香さんの湖東記念病院事件もそうだった。「同居男性が娘に性的虐待!被告女性との三角関係か?」「警察官に恋した被告女性とは?」とおもしろおかしく書き立ててたね。そこじゃないやろ! 

それはさておき、判決後、裁判員の一人だった20代の男性が、被告の女性は裁判に非常に真摯に向き合っていたと思うとか、メディアで言われる内容と実際の裁判はまったく違っていたとか話していた。私もその通りだと思う。

今回の彼女にしても、たまたまおじいさんほど年上のお金持ちの男性に好かれ、「お金もらえるなら」と結婚に応じた。遺産相続、完全犯罪など怪しい検索履歴が話題となったが、それがどうしたといいたい。

◆福島恵子裁判長もカッコよかった!

しかも、今どきの若い女性は日々のニュースなど見ていて、警察が消去した検索履歴でも復活させることができることを知っていただろう。私が宝くじで当選したら、まずは「億ション」とか「海外旅行」とか検索するだろう。そのうち、調子こいて「高齢者の婚活」とか、さらに調子こいて「全身美容整形」とか検索するだろう。

彼女が何かよからぬことを企み、それらを検索していたとしても、それを実行にうつせてはいないことが今回分かったのだ。致死量の大量の覚せい剤をドンファンに飲ませることができなかったのだ。そこが重要。

「うちの旦那、憎たらしいな」「不慮の事故で死ねばいいな」と毎日毎日思っていても、それを実行にうつしてなければ、ある意味、問題ないのだ。女性は、一生、旦那を殺したいほど憎んで終わるんだな、とある意味辛くなるが……。

福島恵子裁判長もカッコよかった。裁判官らがあの黒い服の下を着ているかは知らないが、あの福島恵子裁判長は、(テレビで見る限り)正直ごく普通のカジュアルな服だった。それは例えば、私が玉出スーパーに大根をを買いに行くときのような服装だった。そんな福島裁判長が、きっぱりと「疑わしきは罰せず」をやってくれたのだ。弁護団がいうように「グレーをいくら重ねても黒にはならないのだ」。

◆腐った検察どもは、なんでもやりかねない!

検察はもちろんこのままではいないだろう。必ず控訴するだろう。しかし、どうやって大量の覚せい剤を飲ませたか、そこが解明されなければ、有罪にはできないだろう。

あるいはもうひとつ、覚せい剤の売人の一人が「女性に売ったのは氷砂糖」と証言した件だ。和田アキ子まで参戦して、「覚せい剤と氷砂糖は全く違う」とか言ってたらしい。ここで新たな展開として、「氷砂糖を売った」という証人について、控訴審で元締めが出てきて「あいつは売人として嘘をついた。うちの組織は彼を破門にした」などと言い、破門状や下手すりゃ男がけじめをつけた証拠として切断された小指などを証拠提出するかもしれない。

腐った検察どもは、なんでもやりかねないからね。今後も注目していきたい。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

「防衛増税」の前提にされた「台湾有事」を21世紀の「白村江の戦い」にするな! 九州王朝倭国の亡国史に学ぶ さとうしゅういち

12月11日、防衛財源を確保するための増税について、政府・与党は、法人税は2026年4月から、所得税は2027年1月から実施するなどとした案をもとに、検討を進めるとの報道がされました。検討案では、それぞれ「防衛特別法人税」、「防衛特別所得税」という名称となっています。

だが、そもそも、防衛増税の前提となる事実についてきちんとした議論が行われているのでしょうか?

とくに「台湾有事」については、日本が巻き込まれる前提で、「それを防ぐために中華人民共和国を攻撃できる武器が必要」という話になっています。それは妥当な議論なのでしょうか?そのこともなしに、増税を前提とした議論が進むことに危惧をおぼえます。筆者は大まかに以下のように考えています。

・防衛増税の前提は「台湾有事」

・しかし、そもそも日米両政府とも中華人民共和国を唯一の中国を代表する政府とみなしている。

・ゆえに日本が台湾問題に軍事介入するのは国際法の根拠がない。

・もちろん、戦闘になれば国際人道法に反する状態が起きるのは必定。中華人民共和国が欲しい半導体工場も壊れてしまう。日中双方にいいことはない。

・かつて、日本は倭国だった時、九州北部に首都があり、旧地である朝鮮半島南部奪還を狙っていた。

・百済滅亡のどさくさに紛れて、斉明帝(実際は皇極帝重祚ではなく、間人皇女即位ではないか?) 百済王を助けると称して白村江の戦をやったが百済王が逃亡し、倭国は大敗した。

・旧領土を取り戻そうという下心が判断を狂わせたのではないか?

・現代においてもその愚を繰り返してはならない。

・台湾は確かに80年前までは日本領だった。だけど、未練は捨てるべき。

・日本自身の経済再建と東アジアの緊張緩和に注力すべき。

◆防衛増税の前提は「台湾有事」

防衛増税の是非の前に議論しておかなければいけない事があります。いわゆる「台湾有事」が、岸田総理以来の軍拡の大義名分になっています。「中華人民共和国が台湾に侵攻する際に米軍が台湾防衛に動き、それを防ぐために中華人民共和国が日本も攻撃してくる。それを抑止するために日本も中華人民共和国本土を攻撃してミサイルを破壊する力を持たないといけない。」おおざっぱに言えば、こうした理屈で防衛増税を正当化するわけです。

◆日米とも「中華人民共和国」が中国を代表する政府と認めている

そもそも、日本国政府も米国政府も、公式には中華人民共和国が中国を代表する唯一の政府だと認めています。従って、「中華人民共和国が台湾へ侵攻」と言う言い方も実は正確ではない。

例えば、1970年、当時、日本を代表する作家であった三島由紀夫が防衛庁に侵入・人質を取って籠城してクーデターを自衛隊員に呼びかけた上、切腹自殺するという事件がありました。極論すれば、中華人民共和国が台湾を軍事力で実効支配しようという行動は、三島事件の時に日本の警察が防衛庁に突入して三島を取り押さえるのと極論すれば法的には大差がないともいえるのです。

百歩譲って日本国が軍事介入するにしても、中華人民共和国への国家承認を取り消して中華民国(台湾を実効支配している勢力)を承認する手続きをしてからです。そうしないと筋が通りません。

なお、米国もいわゆる台湾関係法で台湾支援をするはず、という議論はありますが、あくまで、中華人民共和国への牽制球と言う側面が強いのではないか?特にトランプ次期大統領が本気で台湾を軍事支援するとも思えません。

◆習近平主席にとってもリスクが大きすぎる「武力による台湾実効支配確保」

ただ、大規模な武力行使になった場合には、当然、多大な犠牲が民間人に出ることは必然です。この点について、あくまで国際人道法、人権の観点から、そういうことがあってはいけない、したがって、平和的に問題を中国内部の話し合いとして解決してください、というのがせいぜい、日本が含む外国が取れる態度です。

国際人道法違反を犯せば、ICCによって習近平国家主席に逮捕状が発行され、随分中国の外交は制約される可能性も高い。これはプーチン大統領やネタニヤフ首相に逮捕状が出たことからも明らかです。さらに、戦闘が行われれば中国が欲しい半導体工場も壊れてしまいます。台湾との貿易(国際法上は国内の商取引)にもそれなりに依存している中華人民共和国がそう安易に武力行使すると言うことは考えにくいのです。

◆50年間の台湾領有で「取り戻したい」というバイアスが日本にないか?

もう一点、申し上げたいのは、1895年から50年間、日本は台湾を植民地としていました。そのことが、台湾有事に日本が介入すべし、的な議論のバックにあるのではないでしょうか?かつて、植民地だったからこそ、どこかに介入したい的なバイアスがかかってはいないでしょうか?

◆白村江の戦い ── 旧領回復狙って大惨敗

歴史は繰り返すと申します。日本は7世紀に大きな過ちを犯しています。それは白村江の戦いです。わたしたちが学校で習った日本史では以下の通りです。

倭国の大和朝廷が朝鮮半島に4~6世紀に進出し、百済と結びつつ任那を支配していたが、任那の日本府滅亡で追い出された。そして、百済が唐と新羅に滅ぼされると中大兄皇子=天智帝はこれに対して百済王子余豊璋を支援して出兵するも663年、白村江で大敗した。この原因の一つが、百済王の余豊璋がパワハラ男で、さらに決戦を前に逃げ出したということもあったのです。ともかく、慌てた中大兄皇子は飛鳥から近江の大津に遷都した。そして律令国家の建設を急いだ。

◆実際は九州本拠の倭国

だが、筆者は実際には白村江の戦い時点では、倭国を代表する政権の首都は九州北部にあったと考えています。というのも、敗戦後に「飛鳥から大津に都を移転して脅威に備えた」というのは地理的に見て、合点が行かないのです。

日本書紀にもあくまで「倭京」から「大津」に遷都したとしか書いていない。実際には、九州北部の「倭の都=倭京」にあった政権の一部が、大敗に慌てて現在の滋賀県大津市に逃げたとみるべきでしょう。

既に近畿地方は大海人皇子をトップとする地方政権の支配が確立していたのではないか。大海人皇子の勢力圏に間借りする形で、一応当時は日本列島を代表していた倭国の大友皇子こと大友帝が実は敵前逃亡していた百済王の藤原鎌足とともに執務を取っていたのではないか、と筆者は考えています。

なお、近畿を本拠の中大兄皇子の天智天皇という存在は実在が疑わしいとみています。というのも天智天皇の伝説はむしろ九州地方に多くあるからです。

◆斉明帝が戦死?! 高市帝が捕虜?! になる大惨敗

この白村江の戦いでは、斉明帝が自ら出向くも急死したことになっています。筆者は、実は斉明帝が流れ矢に当たって戦死した可能性を考えています。もうひとつは、斉明帝自体は、敗戦後しばらくして、不満を持った臣下に暗殺された。

他方で、実際に政務をとっていた男性=実質的な王が捕虜になり、政府が機能しなくなった可能性を考えています。その男性は、高市皇子=実際には後年、帝に即位していた=だったと筆者はみています。

その根拠は、柿本人麻呂が高市帝に送った挽歌です。人麻呂が送った挽歌としては最長です。壬申の乱で活躍したことへの挽歌とされるが、悲惨な印象を受ける。悲惨な戦いと言えば白村江の戦いです。

◆壬申の乱から長屋王の変へ 九州王朝倭国完全打倒への道開いた白村江の戦い

その高市皇子が、唐によって解放された。その理由は、近江の大友帝の政権が唐に反抗的だったので、それを転覆する目的だったのではないか? それが壬申の乱ではないか? 

実際、大津を占領し、近江政権の関係者の処罰をしたのは高市皇子でした。実は現役の帝の大友も含めて処断する権限があったのは高市が九州本拠の倭国の内部闘争に勝ったということではないかと推測しています。ただ、これにより、大きく倭国の権威は低下し、大海人皇子率いる日本国が後に倭国から政権を完全に奪う前段階ができたのでしょう。

ちなみに、完全に倭国から政権を奪ったのは文武帝ではないか? 根拠は諡号に〈武〉がついているということです。すなわち、前王朝を打倒したということです。

ちなみに筆者は、高市帝は暗殺され、首を抜かれて首は蘇我入鹿首塚に、胴体は高松塚古墳に埋葬されたと推測しています。高松塚古墳の被葬者は不明ですが、高市が帝だったとすれば、高市帝の可能性が高い。そして高市帝暗殺事件を、蘇我入鹿が暗殺されたいわゆる大化の改新にすり替えたのではないか? 大化の改新で導入されたとされる「郡」と言う表記も実は、高市帝の時代=新益京=藤原京で出土した木簡では「評」でした(大昔の東大入試にも登場)。

その文武帝も〈文〉がついていることから暗殺された可能性は高い。例えば、文徳帝は暗殺されたから、文が入っているのではないか。〈安〉とか〈文〉とか〈徳〉とか〈仁〉とかついている帝はたいてい、非業の最期を遂げています。文武帝を暗殺したのは母親の元明帝と藤原不比等の可能性も強い。

そして、聖武帝の時、高市帝の息子の長屋親王(歴史の教科書では長屋王とされているが、安倍晋三さん暗殺現場の近くの屋敷から発掘された木簡は長屋親王であり、天皇しか食べることが許されていなかったアイスを食べていたことから一定の権力を残していたとみられる)を打倒し、九州倭国を完全打倒したので、〈武〉がついているのだと推測しています。

ただ、その直後に「奈良時代の新型コロナウイルス」ともいえる天然痘で藤原氏の大物が全滅。恐れた光明皇后が過去に自分たちが滅ぼした権力者を聖徳太子と言う形でひとまとめにして、鎮魂の目的で法隆寺をリニューアルしたのではないか? と筆者は考えています。

さらに言えば、桓武というのも百済系の桓武帝が天武系の前王朝を倒した証拠で、いったんおとなしくなったはずの? 東北で反乱がおきたのは実際には全国各地で王朝交代による動揺があった証拠ではないでしょうか?

◆失地回復戦の白村江

とにかく、白村江の戦は、実は失地回復戦として行われたのです。どさくさに紛れて、本拠地の九州北部と目の鼻の先でついこの間まで一部は領土だった朝鮮半島南部を取り戻してやろうと。それで出兵したとみるのが自然な流れです。唐とまともに戦って勝てるわけない。失地回復を目指すバイアスが当時の斉明帝の判断を狂わせたのではないか?そして、戦の直前、百済王は姿をくらましました。

なお、白村江の戦の前には蘇我倉山田石川麻呂討伐事件、有馬皇子誅殺事件、孝徳帝が難波に置き去りにされて亡くったとされる事件なども起きています。これは、朝鮮半島の失地回復をめざす勢力が、朝鮮半島ではなく、東方への勢力拡大を図る孝徳帝らを暗殺したクーデターと筆者はみています。このころの難波は、倭国の東方拡大用のもう一つの都だったと思われます。

白村江の戦いの直前、斉明帝が亡くなると、中大兄皇子や大海人皇子は飛鳥に帰った、というのが学校で習った歴史ですが、これは、もともと、斉明=実際には間人皇女=が九州の政権の帝だったという事だと筆者は解釈しています。そして、飛鳥以東に勢力を持っていた人たちは九州北部の帝の斉明帝の命令で九州に来ていたが、途中で勝ち目がないのでサボタージュしたということではないのか?こうした中、斉明帝自体が無茶な戦に反対する部下に暗殺された可能性すらあるとみています。また、逃げ出した百済王とは大津に逃げ延びた藤原鎌足ではないかとも思っています。

さて、白村江の戦自体は倭国が惨敗。このことをきっかけに、九州北部から近畿へ日本の中心が移っていった。 日本列島の為政者は朝鮮半島の失地回復ではなく、関東や東北の支配を固めていく方向に転換したのではないでしょうか?

◆経済の再建と緊張緩和こそ現代日本の進むべき王道

さて、現代日本のあるべき失地回復とは何か?それは経済をきちんと立て直すことです。

ところが、台湾と言う旧領土を取り戻そうという下心が、日本国の為政者の判断を狂わせているのではないか?と心配です。それは、朝鮮半島という旧領土を取り戻すという、663年当時の斉明帝の判断の狂いと似ているのではないか? ちなみに、善光寺には皇極帝が地獄で鬼に追い立てられていたという伝説が残っています。
https://www.culture.nagano.jp/special/7329/

「娑婆(しゃば=人間の生きる世界)へ帰ることを許可された善佐は、その途中、鬼に追い立てられて疲れ切っていた女帝・皇極天皇と出会い、善光寺如来に自分ではなく天皇を助けてほしいと懇願します」

実際には白村江の戦のA級戦犯である斉明帝が地獄に落ちた(おそらく暗殺か戦死などの悲劇的末路だった)と言うことではないかと筆者は推測しています。

ただ、不幸中の幸いは、白村江後に唐と新羅が内ゲバを始めたことでした。また当時はミサイルもありませんでした。しかし、現代は違います。それこそ、日本による台湾有事介入は中華人民共和国に対して「日本による侵略に対する反撃」と称した日本攻撃の口実を与え、日本を滅ぼしかねません。

何にせよ、今、日本政府がやるべきことは、ことさらに台湾有事を煽るのを止めることです。もちろん、日本国政府はパスポート代として邦人保護費用を徴収しています。従って、万が一に備えて、危機管理として日本人退避などをシュミレーションするのは当然です。ただ、それはどの国についても同じことです。お隣の韓国でさえ、大統領のユンソンニョル被疑者によるクーデター騒ぎがありましたし、米国だってこれからはわかりません。

筆者が申し上げたいのは、変に「台湾独立」を叫ぶ人を勇気づけ、問題をこじらせることを日本の為政者はすべきではない、ということです。確かに台湾の人たちは親日的と言われてはいる。他方で、台湾を支配する政府も尖閣諸島の領有を主張しています。こうしたことをきちんと正面から議論すべきではないでしょうか?それもなしに雰囲気だけで、防衛増税?冗談ではありません。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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COP28 原発をめぐる2つの動き 「原発3倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意〈1〉「原発3倍化宣言」という暴挙  原田弘三

2023年11月30日から12月13日までUAE(アラブ首長国連邦)ドバイで開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)では、原発をめぐって2つの大きな動きがあった。

1つはアメリカが提案した「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言案に、日本を含む21か国が賛同したことである。

もう1つは、最終日の12月13日、参加国約200か国が「第1回グローバル・ストックテイクの成果文書」を採択し、その中でCOP史上初めて、CO2排出量を削減するための重要なアプローチの1つとして原発が明記されたことである。

◆「原発3倍化宣言」

「原発3倍化宣言」は、COP28のサイドイベントで米国が提案し、21か国が賛同した「2050年までに世界の原発設備容量を3倍にする」という宣言である。参加国は米国、ブルガリア、カナダ、チェコ、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、日本、韓国、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、ウクライナ、UAE、英国である(当初、宣言国は上記22か国であったが、アルメニア、ジャマイカ、クロアチアが追加で参加し、3月1日現在25か国となっている)。

これらの国々のうち、提案国の米国、および西欧諸国は自国内では原発容量を増やす見込みは少ない。この宣言では原発設備容量を3倍にするための環境整備として、現在は原発関連プロジェクトを融資対象としていない世界銀行やその他の金融機関に対して、原発を融資対象とするよう働きかけるとしている。

原発はその本質的な危険性から、導入国の社会・経済が安定していることが求められる。そして財政基盤が弱い国での原発導入には、巨額の債務発生の危険が伴う。そこで、財務基盤の弱い国々への原発導入を図るために、世銀などが比較的低利で融資するよう圧力をかける、というのが今回の宣言の狙いと思われる。

つまりこの宣言は、宣言国のうちの原子力産業を擁する国々が自国の原子力産業を利するために、コスト高で危険な原発を財務基盤が弱く環境規制も緩い国々に売り込もうとしているのである。かつて盛んに行われた「公害輸出」の原発版を世界規模で押し進めようというのがこの宣言の本質であろう。

日本政府のこの宣言への賛同が許し難い暴挙であることは言うまでもない。(つづく)

◎本稿は『季節』2024年夏秋合併号掲載(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

▼原田弘三(はらだ こうぞう)
翻訳者。学生時代から環境問題に関心を持ち、環境・人権についての市民運動に参加し活動している。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年冬号

DUELから駆け上がるチャンピオンへの道! 堀田春樹

計量は前日の昼12時よりVALLELYジムにて、カード変更はありましたが、出場者は体調万全で全員が計量をクリアーしました。

メインイベントと位置付けられた赤平大治vs大岩竜世戦は大岩が辛うじて勝利。
悠vs明夢も期待される中の勝利を導けない厚い壁。

女子としてのメイン位置、齋藤千種が祥子JSKを破り王座獲得。

◎DUEL.32 / 12月8日(日)GENスポーツパレス18:00~20:50
主催:VALLELYジム / 認定:NJKF

戦績はプログラムを参照し、この日の結果を加えています。

◆第11試合 56.5kg契約3回戦

NJKFフェザー級7位.赤平大治(VERTEX/ 56.3kg)8戦5勝(3KO)2敗1分
        VS
大岩竜世(KANALOA/ 56.4kg)6戦4勝2敗
勝者:大岩竜世 / 判定1-2
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ)
副審:松田29-30. 中山30-29. 多賀谷29-30

初回、両者のローキックとパンチ中心の牽制で様子見。赤平大治がパンチをややヒットすると、大岩竜世も返していく。第2ラウンドも両者、パンチと蹴りで激しくなるが怯まぬ前進で、どちらも主導権支配には至らない展開。第3ラウンドには首相撲も加わった攻防。多彩にアグレッシブな展開は続くが差は付き難く、ジャッジ三者揃ったラウンドは無い僅差だった。

リング上のコメントでは「僅差だったんですけど、勝つことが出来て良かったです。来年もっと勝ち進んで行って王者に近付けるよう頑張る年にします。」とマイクで語った。

リングを下りてから「本当僅差で勝ったとは思わんかったですけど、結果勝ちで次に繋がって良かったです。赤平選手はパンチで来ると思って警戒していたんですけど、やっぱり貰っちゃいました。蹴りで返した感じで、結果は勝てたんですけど反省しています。」と語り、リング上で語ったとおり、来年も勝ち進んで王座に迫ることを宣言した。

攻勢を導きたい両者、大岩竜世がローキックで攻める

パンチの見映え良かったのは赤平大治だが攻勢を維持出来ず

◆第10試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級7位.悠(=吉仲悠/VALLELY/ 50.8kg)11戦4勝(2KO)5敗2分
        VS
NJKFフライ級10位.明夢(新興ムエタイ/ 50.45kg)13戦4勝(1KO)6敗3分
引分け 三者三様
主審:椎名利一
副審:松田29-29. マット30-29. 多賀谷29-30

パンチと蹴り、やや前進は悠。明夢も蹴り返し、一進一退の差が付かない攻防。第2ラウンドもパンチ、ローキックとアグレッシブな展開。明夢が悠をコーナーに追い詰め、ヒザ蹴りが効果的で、第3ラウンドも首相撲は明夢が攻勢も悠のパンチで前進も効果的。初回はジャッジ三者とも互角。第2ラウンドは2-1に分かれる採点、第3ラウンドには悠に付けるジャッジは一人。採点では難しい見極めだった様子。

明夢陣営坂上顕二会長は「作戦どおりだったんですけど、勝ったかなという印象もドローも仕方ないところですね。」という声。

悠陣営米田貴志会長は「前回勝ってる相手だったんですけど、悠の悪いところが出て、ちょっと躊躇したり、ブチ切れて行く気迫が足りなかったかな。相手を飲み込むような力強さがあれば勝てたでしょう。」と精神的な部分を語られました。

明夢のミドルキックが悠にヒットも怯まぬ攻防戦が続いた

明夢のミドルキックにパンチを合わせる悠

◆第9試合 女子ミネルヴァ・ピン級(100LBS)王座決定戦3回戦 (撫子王座返上による)

1位.斎藤千種(白山道場/1985.10.25新潟県出身/ 45.4→45.35kg)10戦6勝4敗
        VS
2位.祥子JSK(治政館/1983.12.3埼玉県出身/ 44.9 kg)28戦8勝19敗1分
勝者:斎藤千種(新チャンピオン) / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:松田30-28. マット30-29. 椎名30-28

蹴りとパンチの様子見からサウスポーの斎藤千種の左ストレートがヒット。斎藤千種が自分の距離を掴んだ流れで、祥子は蹴りたくても蹴れない、蹴ってもクリーンヒットし難い距離感があった。斎藤はこの自分の距離感で左ストレートを多発。しっかりダメージを与えるには至らずも、攻勢を維持して判定勝利。王座獲得となった。

敗れた祥子は「ちょっと距離感が遠かったですね。もっとガンガン来られると思っていたので、相手がパンチで来るところに蹴りを合わせる練習をして来たので、こっちが出るのを待ってる感じで警戒してたので、ちょっと駆引きし過ぎちゃったかなと思います」

距離の掴み方は斎藤千種の方が上手かった流れについて、「その辺が敗因という中でも手数で行かなきゃいけないのに、それが出来なかったという反省はありますね」と語られました。

全試合後のインタビューで、齋藤千種選手は見付けられずでした。

祥子が蹴れば齋藤千種のパンチが襲って来る

祥子の蹴りに合わせて齋藤千種の距離感掴んだ左ストレートヒット

ピン級王座獲得した齋藤千種、感動の言葉とファンへ感謝を述べる

◆第8試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級8位.大久保貴宏(京都野口/ 50.8kg)6戦4勝2敗
        VS
渡部蕾(クロスポイント大泉/ 50.5kg)2戦2勝
勝者:渡部蕾 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:中山28-30. マット28-29. 椎名28-30

◆第7試合 スーパーバンタム級3回戦

古山和樹(エス/ 54.7kg)4戦2勝2敗
     VS
ミツル(AX/ 54.8kg)1戦1敗
勝者:古山和樹 / 判定2-0
主審:松田利彦
副審:中山29-28. 多賀谷29-29. 椎名29-28

◆第6試合 フェザー級3回戦

伊達(GRABS/ 56.35kg)2戦2勝(1KO)
      VS
山本龍平(拳粋会宮越道場/ 56.75kg)2戦2敗
勝者:伊達(赤コーナー) / TKO 3ラウンド 2分56秒
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ)

アグレッシブな攻防も伊達が圧し気味に主導権を支配。第3ラウンドには更にパンチとローキック中心に攻勢を強めてカウンターの左フックでノックダウンを奪うとレフェリーがノーカウントで試合をヅトップ。伊達がTKO勝利。

伊達がパンチでKOのタイミングを掴んで行く(KOシーンはレフェリーが被り)

◆第5試合 フライ級3回戦

植田琥斗(E.S.G/ 49.75kg)2戦1勝1敗
      VS
煌(KANALOA/ 50.65kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:煌(青コーナー) / TKO 2ラウンド 2分16秒
主審:椎名利一

初回に煌の右ローキックで植田琥斗が軽いノックダウン。まだ動ける左脚ではあったが、すでに弱点を晒したか、徐々に攻められ第2ラウンドにも煌の右ローキックでノックダウンを喫した植田琥斗。明らかにダメージある左脚を狙われ、ローキックでノックダウンするとレフェリーがノーカウントで試合をストップした。

煌が初回からローキックで植田琥斗にダメージを与えて行きTKOに繋げた

◆第4試合 女子ミネルヴァ 45.0kg契約3回戦(2分制)

金子杏奈(ウエストスポーツ/ 44.5kg/代打) 友菜(Team ImmortaL)怪我により欠場
VS
港町なぎさ(ワイルドシーサー前橋元総社/ 43.15kg)1戦1勝
勝者:港町なぎさ / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:マット27-30. 椎名28-29. 松田29-30

◆第3試合 女子ミネルヴァ47.5kg契約3回戦(2分制)

KANA(Bombo Freely/ 46.65kg)2戦2勝
        VS
DJナックルハンマーyokko(team Almerrick/ 47.3kg)5戦5敗
勝者:KANA / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:マット30-26. 椎名30-26. 松田30-26

◆第2試合 女子ミネルヴァ56.0kg契約3回戦(2分制)

MIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 55.7kg)5戦5敗
        VS
妃芽奈(ワイルドシーサー高崎/ 54.9kg)1戦1勝
勝者:妃芽奈 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:マット27-30. 椎名26-30. 中山27-30

◆第1試合 49.0kg契約3回戦

赤土剛琉(D-BLAZE/ 48.75kg)2戦2敗
       VS
庄司翔依斗(拳之会/ 47.0kg)1戦1勝
勝者:庄司翔依斗 / 判定0-3
主審:松田利彦
副審:多賀谷28-29. 椎名28-29. 中山28-29

赤土剛琉はややスロースターターか、攻めの勢いは庄司翔依斗。初回は庄司がリード。第2ラウンドは赤土が蹴りと組み合ってもやや優勢気味でリード。第3ラウンドには庄司もパンチと蹴りで巻き返して僅差で判定勝利。各ラウンド、ジャッジ三者とも揃っていた。

赤土剛琉と庄司翔依斗の攻防、圧して出た庄司がわずかに優った

《取材戦記》

元・全日本フライ級、バンタム級チャンピオン、赤土公彦さんの御子息、次男の剛琉くんがプロ2戦目を行ないました。デビュー戦は9月に別興行で行われている模様です。この日は手数で圧され判定負けでしたが、父親そっくりの風貌と攻めのスタイルも似たところがありました。タイで試合も重ねて経験を積んでおり、10月5日にはタイ国ラジャダムナンスタジアムで1ラウンドKO勝利し、現地戦績は3戦2勝(1KO)1敗。

この日相手の庄司翔依斗はアマチュア経験を経てのデビュー戦のようでしたが、剛琉にとってタイでの経験は自信を持ち過ぎると、帰国後の試合でのリズムが噛み合わなくなるパターンも多く、過去の名チャンピオンも陥るスランプだったりします。今後、壁を打ち破る浮上が期待されます。

赤土氏の御子息、長男は公亮。2023年3月26日プロデビューで国内3戦2勝1分。タイ現地試合は2戦1勝1敗。兄弟ともデビュー当時の目付き鋭い公彦父さんソックリである。過去、親子二代チャンピオンは何組か誕生しているが、向山鉄也前キングジム会長に続いて赤土公彦氏も狙っている快挙は実現に至るか。

庄司翔依斗はNJKFスーパーバンタム級6位、庄司理玖斗の弟で、こちらも兄弟でチャンピオンを目指す関西期待の星。キックボクシングに限らず、兄弟選手が多い時代です。

第1試合の話だけになってしまいましたが、メインイベント、セミファイナルの僅差の結果ながら、赤平大治、大岩竜世、悠、明夢らも2025年にどこまで駆け上がるか期待されます。

NJKFの2025年関東エリア本興行は現在、

2月2日(日)後楽園ホール、4月27日(日)後楽園ホール、5月11日(日)PITジム興行、

6月8日(日)後楽園ホール、9月28日(日)後楽園ホール、11月30日(日)後楽園ホールが予定されています。他、2月9日(日)DUEL興行、3月16日(日)女子ミネルヴァ興行

関西で3月16日(日)誠至会興行、4月20日(日)拳之会興行、7月20日(日)誠至会興行の興行予定が入っています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

12.8「とめよう! 原発依存社会への暴走 関電包囲大集会」に約700人が結集 木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会) 

◆「原発依存社会」に向かって暴走する政府と電力会社

原発は、現在科学技術で制御できる装置ではありません。原発は、冷却水を失えば暴走し、過酷事故に至ります。過酷事故の被害は甚大で、長期におよびます。人の命と生業を脅かします。

また、原発は、地震に脆弱で、大地震と過酷事故が重なれば、避難も屋内退避も困難を極めることを、能登半島地震が再認識させました。地震多発の日本に、原発はあってはなりません。

それでも、政府、電力会社は「原発依存社会」に向かって暴走しています。人の命と尊厳を蔑ろにした暴走です。

自公政権は、原発推進法(いわゆる「GX束ね法」)の実態化のために、「原発の最大限活用」を謳う第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに進め、60年超え運転も拡大し、原発建て替え、新設も俎上に上らせようとしています。

一方、電力会社と政府は、加圧水型原発に続いて、沸騰水型原発・女川2号機(東北電力)、島根2号機(中国電力)まで再稼働させました(それぞれ、10月29日、12月7日)。

その中で、政府の尖兵・関西電力は、危険度急増の老朽原発への依存経営にのめり込んでいます。

老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。老朽原発には、建設時には適切とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あります。

関電の稼働可能な原発7基の内の5基が、来年、40年超えの老朽原発となります。11月14日に運転開始後50年となった高浜1号機およびもうすぐ50年超えとなる高浜2号機、美浜3号機は、超老朽原発です。

いま、各地の原発では、危険極まりなく、行き場のない使用済み核燃料が溜り続けています。

発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。出来た空間に、膨大な放射線と熱を発する新しい使用済み核燃料を入れたプールが崩壊すれば、大惨事に至ります。

電力会社は、使用済み核燃料の搬出先として再処理工場の稼働を願望していましたが、8月23日、日本原燃は27回目の再処理工場の完成延期を発表しました。乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場はありません。

ところで、先の衆院選での自公の大幅後退、立憲民主、国民民主、れいわの躍進を受けて、政治は、混沌化、流動化しています。

原発関係でも、自公政権が、原発推進政党を抱き込んで、「原発推進」に暴走する可能性は大です。とくに、労使協調の電力総連に依拠する国民民主は、自公政権との「部分連合」を通して、原発推進を先導すると危惧されます。

◆自然エネルギーに全面切り替えを!

このような状況の中で、今、世界は原発縮小、自然エネルギーへと向かっています。

自然エネルギーのみを利用すれば、燃料費はほぼゼロですから、コストは原発に比較して圧倒的に安いのは当然で、地球環境の保全にも有効です。大地震が発生しても過酷事故に至ることもありません。

そもそも、人類のエネルギーに対する欲望のために、原子核に閉じ込められた膨大なエネルギー(化学反応エネルギーの数百万倍)を解放しようとするから、原発過酷事故が起こり、危険極まりない使用済み核燃料が発生するのです。また、地球が数億年かけて地中に蓄えた化石燃料を100年程度で枯渇する勢いで使うから、炭酸ガスが増えるのです。

現在の焦眉の課題・気候問題は、太陽から現在届いているエネルギー(自然エネルギー)のみを利用し、化石燃料や核燃料に閉じ込められたエネルギーを解放しない社会の実現を求めています。

目に見え、耳に聞こえる市民の行動によって、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を展望しましょう!

◆12.8「とめよう!原発依存社会への暴走関電包囲大集会」の成果を、原発全廃の突破口に!

12月8日に開催された「とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会」(主催:老朽原発うごかすな!実行委員会)には、寒風にも拘わらず、関西、福井、首都圏、四国、愛知、青森など、全国から700人近いご参加をいただき、原発推進に暴走する石破政権や電力会社に「NO!」の熱い決意を突き付けることができました。(司会は京都ユニオンの服部恭子さん)

冒頭、主催者を代表して、中嶌哲演さんは、ゼニ金まみれで建設された若狭の原発」「農村部に危険を押し付け、後世代に負の遺産を残す原発の全廃を達成したドイツ」「いまや核のゴミ銀座へと変貌しつつある若狭」について述べ、原発運転の理不尽を訴えられました。

先の米原市長・平尾道雄さんは、戒厳令を止めた韓国の市民の行動に賛辞を呈し、能登半島地震が教えた「原発稼働の無謀」に触れ、「現場が動けば変えていける。被曝前提の利権にまみれた原子力行政を変えよう」と、力強く結ばれました。

老朽原発うごかすな!実行委員会を代表して木原壯林は、原発をめぐる政府と電力会社の動向・情勢を述べ、「目に見え耳に聞こえる大衆の運動を高揚させ、原発を全廃しよう!」と訴えました。

青森から駆けつけた中道雅史さんは、27回目の完成延期が発表された再処理工場、9月に柏崎刈羽から使用済み核燃料が運び込まれた「中間貯蔵地」について話し、石破首相の「原発維持は、核の潜在的抑止力」という発言を上げ、反戦反核の闘いは一体であることを強調しました。

井戸謙一弁護士は「2006年に金沢地裁で判決を出したとき、能登の活断層は分かっておらず、4m隆起するなど誰も想定していなかった。このように、地震学の進歩は心もとない」と述べ、地震多発地域・日本の原発の早期全廃を訴えられました。

敦賀市民の山本雅彦さんは、過去13年間全く発電せず、原子力規制委員会(規制委)が運転不認可を決定した敦賀原発2号機を抱える日本原電は、今も各電力会社の徴取した電気料金で生き延びている事実を告発し、欠陥工事、不祥事続きで、原
発を運転する資格がないと断じました。

原発に反対する5政党(社会民主党、新社会党、日本共産党、緑の党グリーンズジャパン、れいわ新撰組)からは、各3分の「地震に脆弱な原発の全廃、自然エネルギーへの移行」を目指すアピールを頂きました。

名古屋地裁で老朽原発運転延長許認可の取り消しを求める裁判(来年3月14日判決予定)を闘う老朽原発40年廃炉訴訟市民の会の草地妙子さんは、規制委審査のいい加減さを明らかにしました。

原発賠償京都訴訟原告団の川崎安弥子さんは、国と東電の加害責任を明らかにし、避難の権利を認めさせ、損害賠償を求める控訴審(大阪高裁、12月18日判決予定)の論点を簡潔に紹介されました。3労働団体(平和フォーラム関西ブロック、全労連近畿ブロック、大阪ユニオンネットワーク)からは、労働組合の力で「原発依存社会」に向かって暴走する政府と電力会社に「NO」を突き付ける決意が述べられました。

最後に、老朽原発うごかすな!実行委員会の山下一美さんが「集会アピール」(下記参照)を高々と読み上げ、満場の拍手で採択されました。

なお、本集会には、全国で、反原発、反核燃料施設を闘う24の団体からメッセージが寄せられ、プログラムとともに冊子として配布されました。

集会後、参加者は西梅田公園から大阪駅までの約1時間のデモ行進に移りました。途中、手を振り、声をかけて下さる市民や飛び入りのご参加もあり、大いに励まされました。

本集会の詳細は、STOP原子力★関電包囲行動のたぬき御膳さんがYouTubeにUP下さっています。是非ご覧ください。

◎[参考動画][ツイキャス] とめよう原発依存社会への暴走 関電包囲大集会 / たぬき御膳のたぬキャス(2024.12.08)

12.8「とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会」にご支援、ご参加
頂きました皆さん、ありがとうございました。

2024年12月11日 
老朽原発うごかすな!実行委員会

◆集会アピール

原発は、地震や津波などの自然災害に脆弱で、現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後13年半を経た東電福島第一原発事故および本年元日の能登半島地震が、大きな犠牲の上に教えています。原発が、過酷事故を起こせば、人の生業(なりわい)を奪い、避難の苦汁を強い、関連死する方も多数におよびます。

巨大地震の発生が危惧される今、原発の早急な全廃が求められます。それでも、自公政権は、数を頼んで成立させた原発推進法(いわゆる「GX束ね法」)の実態化のために、「原発の最大限活用」を謳う第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。

一方、原発依存経営にのめり込む電力会社は、加圧水型原発だけでなく、沸騰水型原発である女川2号機を10月29日に、島根2号機を昨・12月7日に再稼働させました。

人の命と尊厳を蔑ろ(ないがしろ)にした「原発依存社会」への暴走です。

とくに、関電では、来年、稼働可能な原発7基の内の5基が運転開始後40年を超える老朽原発となります。すでに50年を迎えた高浜1号機およびもうすぐ50年超えの高浜2号機、美浜3号機は超老朽原発です。

老朽原発では、圧力容器が脆化し、配管や送電ケーブルの損傷も進んでいます。危険度急増の老朽原発の即時廃炉を求めましょう。

ところで、原発を運転すれば使用済み核燃料が発生します。その使用済み核燃料を保管するプールが満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。しかし、使用済み核燃料の行き場として、原発推進勢力が稼働を願望していた青森県の再処理工場の完成は、8月23日、27回目の延期となり、使用済み核燃料は行き場を失いました。

今、世界は原発縮小、自然エネルギーへと向かっています。自然エネルギーは、燃料費がほぼゼロですから、コストが安いのは当然で、地球環境の保全にも有効です。国際情勢の影響を受け難い自前のエネルギーです。過酷事故に至ることもありません。

「目に見え、耳に聞こえる市民の行動」の高揚によって、人類の手におえず、行き場のない使用済み燃料を発生させる原発と決別し、自然エネルギーのみで成り立ち、人や環境が大切にされる社会を構築しましょう!

2024年12月8日
「とめよう!原発依存社会への暴走関電包囲大集会」
参加者一同

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2024年冬号(NO NUKES voice 改題 通巻41号) 紙の爆弾 2025年1月号増刊 A5判 132ページ(巻頭カラー4ページ+本文128ページ)  定価770円(税込み) 2024年12月11日発売

◎Yodobashi.com https://www.yodobashi.com/product/100000009004001320/

◎Rakuten books https://books.rakuten.co.jp/rb/18082281/