【近刊のお知らせ!】5月23日発売 森奈津子=編『人権と利権 「多様性」と排他性』 鹿砦社代表 松岡利康   

いわゆる「LGBT理解増進法案」が今国会に上程され審議に入ろうとしています。立場、党派によって求めるものが異なり3種類の法案が提出されました。これに合わせたわけではありませんが、森奈津子=編『人権と利権 「多様性」と排他性』が完成し23日に発売となります。

 
5月23日発売開始 森 奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

「LGBT理解増進法案」、これに賛成し推進するのが「左派」「リベラル」で、反対するのが「保守」という構図として、立憲、共産、社民、れいわなど「左派」「リベラル」といわれる政党はなべて賛成・推進派です。どちらかというと「左派」「リベラル」的な考えを持ち、社会運動に関わったりされている、この通信をご覧になっている方々の多くが賛成・推進派かもしれません。しかし、ちょっと待ってください!「性自認至上主義」(トランスジェンダリズム)の危険性など、本当に判った上で賛成し推進しようとしているのか? このかん私なりに調べていく中で疑問が湧いてきました。

◆「LGBT理解増進法案」に疑問

LGBT、これの「理解増進」を促すという法律とは何か? 「性の多様性」「性的マイノリティの人権」「ジェンダー平等」などと、耳触りの良い言葉で語られるものの実態とは何か? 私(たち)は全く理解していませんでした。おそらく国民全体がそうだろうと思います。

なのに、一部の行政(埼玉県、東京都渋谷区、新宿区など)では条例を策定したり先走り、女性専用トイレを廃止し、いわゆる「ジェンダーレストイレ」が導入され、世の女性・子どもの人権、安心・安全が蔑ろにされつつあります。実際に、ちらほらトラブルが報じられています。一例を挙げれば、東京新宿歌舞伎町に4月に鳴り物入りでオープンした「東急歌舞伎町タワー」2Fのトイレ、オープン初日から混乱し、これを避けるため急遽男女2つに分け、遂に改築になるとのことです。やれやれ、大金を使って何をやってんですか。

どの法案が通るかどうかわかりませんが、どれが通っても今後そのようなトラブルは必至です。

トイレについて付言すれば、世の中に女性トイレは元々なく、ずっと共同便所(ジェンダーレストイレとどう違うのか?)で、戦後、ある小学校で女児が強姦・殺人されたことを契機として生まれたという悲しい経緯がありますが、またまた元の共同便所に戻れということでしょうか。さらに女湯も廃止、男女混浴に。更衣室もジェンダーレスに、今後、介護施設、病院、部活などでトラブルが起きることが懸念されます。

「性の多様性」結構、「性的マイノリティの人権」結構、同性婚もいいでしょう。しかし、国民的な議論、周知、合意もなく、一気に共同便所、男女混浴はいかがなものでしょうか。

「それは誤解だ」と仰る方もおられますが、私たちが「誤解」するほど、まだまだまともに議論されていませんし、国民的な合意がなされているとも言えません。いずれにしろ拙速に事を進めるのだけはやめにしていただきたい。

◆Colabo問題に対し“酷税”に苦しむ中小企業経営者として怒り心頭

また、昨年末あたりから「一般社団法人Colabo(コラボ)」という団体の公金の使い道と利権に不正があるということで、これを暇空茜(ひまそらあかね)という元ゲームクリエーターが問題にし、住民監査請求をしました。住民監査請求とは、市民に与えられた権利で、行政に問題や疑問を覚えたらこれを行使することは当然のことで、公金(この原資は税金!)を特定の団体に「補助金」の名でぽんぽん1千万円単位で出す利権構造に問題はないのでしょうか?

これに対し、私たちと長年裁判闘争を繰り広げた神原元弁護士は、暇空氏の請求を不当とし記者会見まで開き「リーガル・ハラスメント」なる言葉で詰り提訴しましたが、なにをかいわんやです。

ところが、おそらくこれで怯むと思っていたのか、暇空氏はネットで支援を訴え7千万円とも8千万円ともいう予想外に巨額のカンパを集め対決姿勢を強め、いまだ一歩も引かず対峙しています。

◆「大学院生リンチ事件」加害者側人脈の者らが絡むことに胡散臭さを感じる

私たちがなぜ、そうしたことに注視していたかというと、これは他の人たちとはいささか異なるところですが、LGBT問題にしろColabo問題にしろ、私たちが2016年以来7年間も血のにじむ想いで被害者支援と真相究明に関わってきた「カウンター大学院性リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)の加害者側人脈(しばき隊、日本共産党含む)が中心になっていることも大きな要因としてあります。リンチ事件で加害者側の弁護を中心になって担った神原元弁護士は、そうした問題でも中心になって動いていますし、リンチに連座し高裁判決で「道義的責任」を判示された李信恵や、彼女の後見人的存在の辛淑玉らも名を連ねています。リンチ事件の加害者側人脈の人たちの動きには、裁判がすべて終わったとはいえ、それなりに注視してきましたが、彼らの言動にはなにか魂胆があり胡散臭いと思っています。

詳しくは文中の「解題」で記述していますが、そうした由々しき問題が罷り通るなら、戦後この国が培ってきた社会規範や常識、倫理、価値観などが崩れかねないという危機感もあり、私たちなりに多少なりとも発言すべくと思い、『人権と利権』の出版企画を立案し、以前にリンチ事件追及第6弾『暴力・暴言型社会運動の終焉』に寄稿いただいた森奈津子さんに編纂していただきました。

ちなみに、森さんは、作家業の傍ら、結婚後すぐにお連れ合いが難病に罹り、この介護、またご本人も乳がんで片方の乳房を切除し再発の懸念の中、口にする人の人格、人間性を疑うような罵詈雑言にも屈せず頑張っておられます。

不思議なことに、「LGBT」「ジェンダー平等」「性の多様性」「性的マイノリティの人権」等々、目新しく耳触りの良い言葉に惑わされ、これを持ち上げる本は少なからずあれど、真っ向から異議を唱えた本はほとんどありませんでした。わずかに芥川賞作家で5年前からLGBT問題に異議を唱え文壇から追放された笙野頼子さんの著作『発禁小説集』(2022年、鳥影社)、『女肉男食――ジェンダーの怖い話』(2023年、同)があるぐらいです。笙野さんは、元々共産党の熱心な支持者でしたが、このことによって離れています。

本書『人権と利権』は、こうした情況に堂々と議論の材料を提供すべき一冊です。

私たちは自分の眼と頭で学び、疑問に感じたことを森さんはじめ5人の方に語っていただきました。反論があれば、まず読んでからにしていただきたい。読みもしないで「差別者」呼ばわりはやめていただきたい。大学院生リンチ事件についての本でも、ケチをつけたり口汚く罵るばかりで、6冊も出してもまともな反論はありませんでした。罵り合いはご法度です。賛否両論、異論反論、甲論乙駁、どんどん出し合い、将来的に益になる前向きな議論を望みたい。私の言っていることは間違っていますか?

『人権と利権』は、いよいよ5月23日発売です。自信を持ってお薦めする一冊です。どうか、今すぐご予約お願いいたします!

(松岡利康)

5月23日発売開始 森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5GCZM7G/

中核派現役区議会議員、洞口朋子氏に聞く「LGBT法案」の問題点〈1〉「性の多様性」の名の下に、これまで女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないか 田所敏夫

本通信ですでにお伝えした通り「LGBT平等法」が国会で審議されている。国政政党の中に明確な「反対」は見当たらず、自民党から共産党までがこの法案に関しては「推進勢力」である。時あたかも「広島G7」。「G7の中でLGBT法がないのは日本だけ」との言説も聞かれるが、果たして「グローバルスタンダード」(?)はこの国のひとびとを幸せにするのだろうか。

ある筋から「中核派がLGBT法に反対しているよ」と教えてもらった。マスコミでは「過激派」と称される中核派であるが、中核派が「LGBT平等法」に反対する理由はどのようなものだろうか。中核派であることを隠すことなく杉並区会議員として2期目の再選を果たしたばかりの洞口朋子さんに電話でお話を伺った。

 
洞口朋子=杉並区議会議員

◆なぜ「LGBT法案」に反対なのか?

田所 杉並区議会議員に2期目の当選をされた洞口さんにお伺いいたします。今の国会に「LGBT平等法」を成立させようとの動きが、野党、与党双方からあります。洞口さんは「LGBT法案」に反対の立場を明らかにされたと伺いました。その理由を教えて頂けますか。

洞口 杉並区議会においても今年の春の議会でひとつの焦点になりました。杉並区ではこの4月から「杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」通称「性の多様性条例」が施行されました。それには私の所属する「都政を革新する会」、「中核派」も反対です。

この条例の問題点は様々ありますが、「多様性」との表現はいかようにも取れる、ということです。多くの女性が訴えていることでもありますが、女性が歴史的に勝ち取ってきた部分と衝突しうる。今の社会の中で厳然として存在している「女性差別」の問題を度外視している。性的少数者の方たちの権利を私たちはもちろん守らなければいけない、という立場ですが、それと「女性の権利」、「女性の安全」が衝突してしまうという問題が大きいと思います。歴史的に見ても「男女雇用機会均等法」や「労働者派遣法」とセットで「男女平等」をうたいながら女性労働者を安価な労働現場に送っている。

また「男女平等」や「多様性」は一貫していまの政府にとって都合の良いものとして使われてきたと思います。女性が勝ち取ってきた「保護規定」などが女性が家庭から引っ張り出されることにより、労働者全体の雇用が破壊され、結局女性に「賃金労働」と「家内労働」の両方が押し付けられる。この構造とまったく同じです。

「LGBT法」は女性差別を固定化してゆくものにしかならないし、性的マイノリティーのみなさんが生きやすい社会を作ることになるとは思えない。「女性差別を無視してはいけない」という立場です。

田所 性的マイノリティーの問題を無視するわけではないけれども、それ以前に「女性差別」が度外視される問題の立て方はおかしいのではないか、とお考えであるということでしょうか。

洞口 そうですね。一言で言えば資本主義社会において、「多様性」や「男女平等」は欺瞞である、と。

田所 ちょっと、洞口さんそのお話は次にお伺いしますので。ごめんなさい。

洞口 はい、ごめんなさい。

◆杉並区の「性の多様性条例」は女性差別や女性被害の歴史を踏まえていない

田所 先ほどお伺いした杉並区の通称「性の多様性条例」に「多様性」の名でこれまで女性が勝ち取ってきた様々な権利が無視されている、これが反対をなさる根拠の一つでしょうか。

洞口 はい、そうです。

田所 私は「LGBT」法案について日本共産党にお尋ねしましたが、お答えは曖昧でした。「LGBT」との言葉は耳にしますが、「性の多様性」というときに固定的な概念で括れる人たちばかりではないのではないか、と疑問を持ちます。日本においては性の問題と「家制度」、「家父長制」は不可分であると感じますが、いかがでしょうか。

洞口 私もまったく同じ問題意識があります。杉並区議会でも「パートナーシップ制度」の創設を求める陳情が出されました。「事実婚を認めるべきだ」、「同性婚を認めるべきだ」との内容です。これは私も大賛成、重要だと思います。

「性の多様性条例」と「パートナーシップ制度」がかなり混乱して語られていることに問題があると思います。「パートナーシップ制度」と「多様性条例」が同じであるかのように「洞口は反対した!」と結構、雑な言われ方をします。

「性の多様性」条例の核心的は問題は、私有財産制度や今の社会の政治、経済的な基盤である「家族制度」で、女性が産む性であるがゆえに「子産み道具」や「家内奴隷」という言い方もされますが抑圧されている、実際に社会の中で性暴力や差別を受けているのが99%以上女性だとの歴史と現実をまったく踏まえていない。「性の多様性条例」を作れば問題が解決するかのように、ある意味幻想を煽っている。女性差別や女性被害の歴史を踏まえていないことが問題だと考えています。

田所 実態と乖離しているといことでしょうか。

洞口 そうですね。それどころか差別が固定化されてしまう、と考えています。

◆LGBTすべての人たちが「性自認至上主義」を望んでいるかと言えば必ずしもそうではない

田所 「マイノリティー」という言葉は日本でも定着しているように感じます。少数者に対する懐の深い考え方である一方、「マイノリティー」を名乗れば「保護の対象とされてしかるべきだ」と議論を飛ばして結果に行き着く傾向がありはしないかと感じます。

洞口 性的マイノリティー当事者の声を聞くことがあります。身体的な性差よりも性自認を上位に置いてしまうと、結局犯罪に繋がる。それをしてしまうとLGBTと言われますが、様々あるわけです。LGBTすべての人たちが「性自認至上主義」を望んでいるかと言えば必ずしもそうではない。いまの社会の抑圧構造、この社会の現実について声を上げるべき相手を見誤るような動き、本来であれば性的マイノリティーの人たちも、女性も「家制度」や「家族イデオロギー」にそぐわないということで、ともに声を上げていく人たちが対立させられている状況があると思います。

「性の多様性条例」も誰が差別者、非差別者と認定するのか。条例全体で曖昧なので非常に危機感を持っています。実際女性スペースに身体男性が「心は女性なんだ」と、いまオールジェンダーレストイレとかありますが、女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないかとの危惧があります。(つづく)

◎中核派現役区議会議員、洞口朋子氏に聞く「LGBT法案」の問題点
〈1〉「性の多様性」の名の下に、これまで女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないか
〈2〉絶えざる差別・抑圧を産み出す今の社会を表層的に変えれば良くなるとのものの見方は、甘いのではないか

◎洞口朋子(ほらぐち ともこ) 1988年宮城県生まれ。法政大学経済学部除籍。革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)幹部。都政を革新する会(旧:杉並革新連盟)メンバー。2019年より杉並区議会議員(2期目)。公式HP https://horaguchitomoko.jp/

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)
『一九七〇年 端境期の時代』

日本共産党ジェンダー平等委員会に直撃電話一問一答 LGBT平等法は大丈夫か?〈後編〉 田所敏夫

近年、不思議な国際社会が牽引して日本でも「LGBT」なる言葉が流布している。それに関する立法も急速に進んでいるようだ。弱者の権利擁護はよいだろう。だが、それは戦争に向けた軍事費倍増や原発延命・新設のように明日にでも命にかかわる問題であろうか。あるいは文化や歴史に照らして無理はないものか。

この問題についての最先頭と思われる日本共産党に素直な質問を投げかけた。回答してくださった方は誠実ではあったが、こちらが腰を抜かすほど問題の本質に対して鈍感(あるいは無知)であった。以下、前編に引き続き、わたしと「日本共産党ジェンダー平等委員会」の方とのやり取りの後編である。

◆「B(バイセクシャル)のことは考えたことがない」!

田所 一番象徴的な疑問は、バイセクシャルの方がヘテロと比べてデメリットを被るということが私は論理的に理解できないのです。

共産党 バイセクシャルまでなんで認めなくてはいけないのか?

田所 いえ。認めなくてはいけないのではなく、いいんですよ。でもバイセクシャルの方々がヘテロの人と比べてどういうデメリットを受けていて法律で守られなければいけないのかがわからない。

共産党 法律で守るというより今当事者の皆さんが求めているのは、自分たちの性的指向もね、要は異性愛の人たちと存在としては対等なわけですよね。

田所 対等というより、対等以上に異性愛と同性両方できるわけでしょこれ彼ら彼女ならは。

共産党 そうですね。

田所 だから優越してるんじゃないかと思うんですけど。

共産党 まあ、その具体的ないろんな場面で、例えば学校の中でね非常に異性愛だけが恋愛のあり方なんだ、みたいなことを言われたときに、まあバイセクシャルということは同性を愛する時もあるわけですから……。

田所 ですからその人たちはそれで非常に自由なわけでしょ。同性愛の人が肩身の狭い思いをするのはよく理解できます。でもバイセクシャルの人は異性愛もできるし同性愛もできる。ならば異性愛が基本となって法律で認められる社会において異性愛者より何かデメリットを被るでしょうか。

共産党 まあね。純粋にね。ちょっと私も当事者の方にもっと話を聞いてみなければいけない、と思うんですけれども。

田所 私も若干は自分でお尋ねしたり調べているのですが、皆さんバイセクシャルの問題になると歯切れが悪いんです。私はレズビアン、ゲイとバイセクシャルの方を並列して「性的マイノリティ」という形でくくるのは間違ってるんじゃないかと思うんです。だから、教えていただいてるセクシャリティの専門の方でも、私がバイセクシャルのことをお尋ねするとちょっと歯切れが悪くなるのではないかと思うんです。

共産党 あんまりバイセクシャルだけを取り出して考えたことは、言われてみればなかったと気づきます。

田所 明らかに違うでしょ。だってバイセクシャルの方は今の性的概念とか法的概念の中で生きることもできるし、それプラスアルファ違う感覚も持っている。同性愛の人たちは今の法的概念の中からは、逸脱とまでは言わないけれども法律的には包含されないところにいる。立場が全然違う。

共産党 まあね、なぜLGBTというふうになってきたのかがね。もうちょっとよく調べなければいけないのかもしれませませんね。

田所 私はちょっと不自然だなと思います。

共産党 そういうご意見はすいません、初めて伺いました。

田所 ああ、そうですか。初めてですか。はあ。性の平等や自由を実現していただくのは私は大いに結構だと思うのですが、そこでちょっと問題の混在がないかなということは懸念しますね。

共産党 バイセクシャルの方がどういう悩みを持っているか……?

[画像左]東京レインボープライドでは、しばき隊界隈文化人・香山リカ氏と共産党・池内さおり氏がツーショット! [画像右]東京レインボープライドにTOKYO NO HATEのフロートで参加する池内さおり氏

◆多様性に例外があるのか?

田所 いや、バイセクシャルと同性愛者を並列に並べるのであれば、たとえば先ほど対象にならないよとおっしゃった一対多の関係というケース。男性であれ女性であれですよ。それが不承認によって行われている場合、不承認というのはその単一の人とその対象の多数の人の間での関係性、あるいはパートナーとの関係性が不承認、あるいは納得がいかない関係性であれば自由の範囲を逸脱する関係だということは言えると思うんです。けれども、仮にそれが関係者全員の承認のもとに行われているのであれば、それは多様性の中に入りませんか。

共産党 そういう議論もできますよね。

田所 議論ができるという話ではなく、今の社会観念からはたぶん褒められたことではありませんけれども、そういう人たちはもうずいぶん前からいるわけです。

共産党 そうですね。

田所 閉じられた世界でサークルを作ったりしている人たち。社会的に見ればちょっとへんてこな人ですけれども実際いるわけです。バイセクシャルの人たちは救済の対象と言うとおかしいですけれども、法的保護の範疇に入って、1対多数とういう指向を持っている人たちは「性的指向の自由」の範囲には入れてもらえないという線の明確な引き方が果たしてできるのかどうか。

共産党 バイセクシャルという場合、私のこれまでのイメージは、ずっとそれまで異性と付き合ったこともあるし結婚したこともあるし、だけどふと気づいたら女性を愛したいということで、女性と再婚する方っていらっしゃいますよね。

田所 結婚は社会制度の話であって、性についての指向、感覚は内面的な部分も多分あるのでやや異なるのではないでしょうか。例えば中学生とか高校生の時に恋愛感情とは違うけれども、同性の先輩に憧れると。恋愛というところまで行かないけれども憧憬の念を抱くことは別段珍しいことではない。中には性的な感覚に近い人もいるかも分からないですよね。男女の結婚生活を送ることに直結しないレベルで言ったら、多くの人は両性具有のメンタリティーを抱えてるかもわからないですよね。けどそれは一生懸命法律で何とかしなければいけないような問題なんでしょうか。

◆LGBTは分かりやすい略称なのか?

共産党 LGBTというのが性的マイノリティの分かりやすい略称としてね、使われているのでLGBT平等法とか……。

田所 私には分かりやすくないですね。私には混乱をきたす略称です。

共産党 えええ。まあ歴史的な経過でそうなってきたというのもあるんだけど。

田所 でも今私にお答えいただいている方もバイセクシャルについては、私がお尋ねすると「そこまで考えたことはなかった」とおっしゃっていただきましたでしょ。

共産党 それだけを取り出して、Lはこうだ、Bはこうだみたいに分けて考えたことはなかったです。大きくは性自認と性的指向ということで。LGBとT。LGBはひとまとまりっというか。そんな自覚でいましたので。

田所 そんなに明確なものかどうなのか、と思いますね。明確というかそんな簡単に既成の分け方があるからそれで分けられるというものなのか。どうしてこれを尋ねしたかというと最近共産党の街に掲げてあるポスターに頻繁にその文字が書かれてるんですね。

共産党 共産党は日本国憲法を全面的に実現する世の中を目指しているんですよね。その中にある両性の平等、個人の尊厳これを考えたときに、性的少数者の皆さんが声をあげて運動していらっしゃる、その声はきちっと受け止められる政治にしてゆく必要があると思って、10年くらい前ですかね、共産党はこの問題を掲げ始めているんですけど。運動によって私たちが気付かされて、私たちが取り組まなきゃいけないということで掲げているんです。

◆共産党がどうして「資本主義の矛盾」より「性の問題」を重視するのか?

 
ANTIFAのTシャツを着用する共産党・池内さおり氏と吉良よし子氏

田所 私は性の問題が課題ではないと言っているのではないです。共産党はもともと社会主義とか共産主義の社会作ろうというところから出発されたと思うんですけど、現在その問題はますます可視的に拡大してるんではないかと思うんですね。階級格差です。はっきり言えば、金持ちと貧乏人の差が私たちの毎日の生活の中では拡大してるのではないかと思います。それを資本主義の方法で果たして解決できるかということが1つは世界的な問題ではないかと思うのです。確かに性の問題も重要ですけれども、他の政党で資本主義の根本矛盾を問題視している政党は残念ながらないですね。

共産党 そ、そうですね。

田所 資本主義の根本的な矛盾、搾取の構造というようなことを考えてる政党が残念ながらないわけで、だから共産党こそがですね100年ぐらい歴史があるんでしたっけ。

共産党 ちょうど今年で100年です。 

田所 100年ですか、100年前に比べても今もっと資本主義の悪弊と末期症状は進行しているのではないかと私は思うのですけれども。

共産党 そういうのは共産党掲げ続けていますし、それとジェンダー平等を掲げることはね矛盾するどころか……。

田所 そうです。私は性的な問題を取り上げるなと言っているのではありません。丁寧に教えていただいたので考えていらっしゃることないは分かりました。けれどもせっかくお時間いただいてお相手いただきましたので性の問題に取り組まれるのも結構ですが、今こんな時代で他の野党も頼りないところばかりです。出発点に帰ってしっかり傾注していただくほうが応援しやすいですね。ご丁寧に対応いただきましてありがとうございます。

共産党 私もBのことはもう少し自分で勉強して、そういう疑問に答えられるように。

※        ※        ※        ※

日本共産党が革命を指向する政党だとは思わないけれども、政党名からはそれが良いか悪いかは別にしても、社会主義、共産主義をイメージさせられる。その日本共産党が、どうして格差、階級が拡大し転落の一途が明らかである今日の日本社会で、ここまで熱心に性の問題に力を入れるのか、共産党の方のお話をうかがっても、依然としてわたしには理解ができない。社会制度としての婚姻などに不合理・差別があれば制度を変更し、同性婚は認めればよいとわたしは考える。しかし、婚姻(社会制度)と性指向は似ているようであって、本質的には区別すべきテーマではないか。性指向は内面の問題であり、極めてでデリケートであるがゆえに、簡便な分類などは困難ではないか。

「人に迷惑」をかけなければどんな性指向だって、当事者が納得すればいいだろう。けれどもそのような内面にかかわることに、法律を持ち出すべきであろうか。

繰返すが、制度的差別に苦しむひとがいるのであれば、制度が救済すべきだ。しかし、内面に関する法律や規則は、可能な限り少ないに越したことはない、とわたしは考える。

その理由?不思議なことにLGBT平等法は共産党だけではなく、他の野党もこぞって賛成であり、さらには、与党自民党、公明党までもが意欲を見せている不可思議な様相に、不健全な意図を感じるからである。

この議論、わたしの視点に偏りはあるであろうか。

◎日本共産党ジェンダー平等委員会に直撃電話一問一答 LGBT平等法は大丈夫か?
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46514
〈後編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46519

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年6月号

日本共産党ジェンダー平等委員会に直撃電話一問一答 LGBT平等法は大丈夫か?〈前編〉 田所敏夫

ロシアのウクライナ侵攻により発生した長期にわたる戦争を視野に入れながら、たった12年前に現実であった、東日本壊滅の危機を忘却しそうな日本国。いま最優先に目を向けるべき課題は何なのか。日々の報道は情報の垂れ流しに過ぎず、議会制民主主義の中には「現状へ異議あり」の選択肢は見当たらない。

近年、不思議な国際社会が牽引して日本でも「LGBT」なる言葉が流布している。それに関する立法も急速に進んでいるようだ。弱者の権利擁護はよいだろう。だが、それは戦争に向けた軍事費倍増や原発延命・新設のように明日にでも命にかかわる問題であろうか。あるいは文化や歴史に照らして無理はないものか。

この問題についての最先頭と思われる日本共産党に素直な質問を投げかけた。回答してくださった方は誠実ではあったが、こちらが腰を抜かすほど問題の本質に対して鈍感(あるいは無知)であった。以下わたしと「日本共産党ジェンダー平等委員会」の方とのやり取りである。

大学院生リンチ事件加害者人脈にしてColabo熱烈賛同者で共産党支持者の自称フェミニスト・北原みのり

◆LGBTありきの議論への疑問

田所 ジェンダー平等委員会の方に教えていただきたいのですが、共産党が最近重要テーマに掲げていらっしゃるLGBTについて教えていただきたく電話を差し上げました。

共産党 はい。

田所 今LGBT法の制定を目指していらっしゃるということですね。

共産党 LGBT平等法ですね。

田所 LGBTという概念はあらゆるセクシャリティーを認めるということでしょうか。

共産党 性自認とか性指向によって差別されない。

田所 あらゆる性指向によって差別されない。そこなんですが、性的指向というのは、とてもデリケートな問題ではないかと思うんですね。人に告げるようなこともありますが、人に言えないような事柄もあるのではないかと思います。それを含めてすべての性的指向の自由を保証すると。

共産党 性的指向は趣味で選ぶもんじゃない、ということなんですよね。

田所 性的指向は趣味、勝手で選ぶものではない?

共産党 「しこう」というのがたぶん違っているんではないでしょうか。指という字に向かうという字を書くんです。今マジョリティーは異性愛が前提で、世の中が動いていますよね。

田所 はい。

共産党 カップルは男と女だと。だけども中には同性に対して性愛を感じる人たちもいますし、両性に対する場合もありますし。あるいはどこにも向かわないという方々もいると。特に今、性的指向で問題になっているのは同性愛の皆さんです。

同性愛がおかしい、異常だとみなされてばかにされたり差別されたりということが続いてきたわけですよ。そういうのを差別しないで欲しいと。そういう性的指向もあるんだと認めてほしいという声が上がってきて、また制度という点では日本の結婚・婚姻制度が異性婚しか認めていないと。それは憲法に違反するんじゃないか。

個人の尊厳を侵害するということで、裁判が戦われてます。だから性的指向は個人の尊厳の問題としてきちんと尊重する。そういう社会にしてゆこうと目指して今LBGT平等法を進めているのです。

田所 だから異性婚しか認められていない世の中で、同性婚を含めて認めて、というようなことが一番の大きな問題と理解したらいいんですか。

共産党 現実問題として一番差し迫った所ではそうだと思います。

◆「戸籍制度」を残したままの「家族形態の多様化」?

田所 同性婚を認めさせるとことを私も理解できるんですね。同性婚を認めている国はいっぱいあることも知っているのでわかるのですが、それは家族形態の問題にも関わってくることではないでしょうか。

例えば男同士が結婚しても子供が作れませんよね。女性同士でもそうです。子供が欲しい場合はいわゆる養子というかどこかからお子さんをもらってくるという形をとるわけですよね。生物学的に残念ながら男と男、女と女で子供はできないわけですから。

共産党 はい。

田所 同性婚で子供を持った家族形態を求めるのであればそういう方法しかないですよね。少し話はそれますがヘテロのカップルの中でも妊娠ができないとかしにくい方々が「代理母」と言って他の女性に結合卵子を預けて出産をするということもあります。

多分ご存知だと思うんですけれども。性的指向を実現するとそこから家族形態が多様化していくということも、現に同性婚を認めている国では、発展的と捉えればそうですし新たな課題と捉えればそうなのかもしれないんですけれども、たくさん報告はあることはご存知だと思います。そこまで考えると、日本の場合もちろん婚姻制度もそうなんですが「戸籍制度」の方がむしろ大きな弊害で個人を縛っていないかなとも思うのですが共産党の方はどうお考えでしょうか。

共産党 戸籍制度については、そういう見地から将来的に検討がなされる必要があるんじゃないかという見解を、党としては持っているんですけれども……。

田所 「戸籍制度」はまだ将来的な課題? これまで戸籍制度が焦点化されて問題とされたことはなかったですか。

共産党 戸籍制度ですか? まあ選択的夫婦別姓制などが議論されている中では……。

田所 いえいえ「戸籍制度」というのは中国と韓国と日本にしか世界中でない制度です。いわゆる封建的な家制度を守るための制度ということではないのでしょうか。昔の共産党の中で議論になったことはないのでしょうか。

共産党 封建制を支える制度?

田所 日本の封建制度や家制度を支える一つの法的根拠として、律令制と同様に導入されたのが戸籍制度であるという分析があります。共産党的な考え方でなくても、社会学、歴史学の中でも議論がありますが、戸籍制度の問題についてはあまり問題を感じていらっしゃらないということでしょうか。

共産党 共産党がジェンダー平等を掲げたことで、日本の法律に残るジェンダー不平等、家制度の名残を無くしてゆこうという大きな方向性は掲げていますのでね。そういうものの一つに戸籍制度も含まれてくるだろうと。

田所 戸籍制度については将来的に考えられるということですね?

共産党 今すぐ戸籍制度を無くしましょうということを掲げているとかそういう状態ではないということです。

◆「一夫一妻婚」を基本とした「多様な性の指向」?

田所 私が感覚的にわからないので論理的にお尋ねできるかどうかわからないのですけれども、「多様な性の指向」を認めるということですね。

共産党 認めるというより、それは現にあるものですからね。

田所 そこの線引きが私は難しいのではないかと個人的に思っているのです。「多様な性の指向」というのは文字通り多様であって、LGBTというところで示されるものは説明可能でわかる範囲の性指向なんですけれども、性指向の感覚は頭の中と体感の問題ですから、可能性はとても広いと思います。私たちが想像してあまり口にしたくないような指向を持っていらっしゃる方も現にいるのを私は知ってるんですけど、そのような指向も含めて全てを許容するということでしょうか。

共産党 例えば私も質問を受けたことがあるのは、一度に複数の人に恋愛を感じると、それも認めるのか。あるいは小児性愛のようなもの含まれるのかと聞かれたことがありますが、この二つに関してはそれを認めると、それによって著しく人権を侵害したり、尊厳を冒されることが起きてしまうので、いくら「個人の性愛は色々ある」としても、それまで含めて全部認めなければいけないという話ではないですよと。

田所 小児性愛は合意の上ではないですからね。合意の上でないのでなければ明らかに排除しなきゃいけなければいけない。犯罪かもしれません。

共産党 犯罪ですよ。何があろうとこれまでも性的指向の名の下に受け入れよう、などということは絶対に受け入れられない。複数のもね、それは男性一人に対して奥さん2人、3人とか言った場合に女性の側が、不倫というんですか、そういうことで苦しむ人が出てくる話なんで。

田所 だから男の人が浮気をするというイメージのことですかね。

共産党 そうですね。逆でもいいですけど。とりあえず私たちが目指しているのは「一夫一婦婚」というのですかね、そういう制度の中での話です。

田所 そこなんですよ。一夫多妻制はよく聞きますね。でも一妻多夫制も世界にあるわけです。少なくはなりましたが特にアジアにはあるんですね。それは「多様性」の中からは排除しなければいけない概念ですか。

共産党 多様性の中から排除する? だからねー、うーんと。

田所 一夫多妻制の封建性は広く西洋社会でもありますし日本でもあったことです。その封建性が排除されるべきだとお考えなのはわかるのですが、母系家族とか一妻多夫制という社会も世界にはある。それはどう考えお考えでしょうか。

共産党 まあそれは、私は何というかな、日本共産党がこうあるべきだと言える話ではないと思いますのでね。そういう価値判断というのか、歴史の中でね、そこは変わったり発展したりということはあり得るはなしなので。そこまで価値判断をいま、するっていうことはしないですね。懸念されているのはそういう話ですか? (つづく)

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◎日本共産党ジェンダー平等委員会に直撃電話一問一答 LGBT平等法は大丈夫か?
〈前編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46514
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46519

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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