総合格闘技「BFC」──有力選手の「体調不良」引退で多難な人気復活への道

「ヘビー級の体重を維持できなくなってしまった……」

川口雄介選手

9月29日、総合格闘技「BFC」(10月10日 ディファ有明)の対戦カード発表会見で、異例の“しょんぼり”コメントをしたのが無差別級の試合に出る川口雄介。海外強豪相手にやってきたことで戦績は14勝12敗2分とイマイチだが、DEEP初代メガトン級チャンピオンとして、日本の総合格闘技ヘビー級のトップファイターとして戦ってきた有力選手だ。

しかし、36歳という年齢もあり少し前に「あと7試合で引退」を決め、これまで2勝3敗。6試合目が今回の瓜田幸造戦なのだが、会見では「実は引退を決めたのは年齢より体調面なんです」と吐露。

「糖尿で入院したところ体重が90キロをきってしまい、ヘビー級の体重を維持するのが困難になってきたんです。今年1年をなんとか頑張ろうと決意しました」

瓜田幸造選手

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(伊東北斗)

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NJKF DUEL.8とKICK Insist6 ──勇気を持って強豪に立ち向かった二つの興行!

まだ日本の頂点ではない現段階、今後の挑戦が能登龍也の真のチャンピオンロード

NJKF若武者会は、30代~40代の若い世代のNJKF加盟ジム会長で組織される「DUEL」という興行名で昨年の4月から開始し、今回で8回目。ディファ有明は初進出。会場規模もマッチメイクも一層向上してきました。

新日本キックボクシング協会のビクトリージムも年々マッチメイクが向上している「KICK Insist」を開催しています。東日本大震災復興チャリティーイベント として2011年から開催し、11月6日は熊本地震チャリティーとして、15試合中3試合が日本vsタイ国際戦、10試合が他団体かフリージムとの交流戦と、共催ながらビクトリージムならではの興行体制でした。

◎NJKF DUEL.8 /
10月30日(日)ディファ有明16:00~21:00
主催:NJKF若武者会 /
認定:ニュージャパンキックボクシング連盟

元・WBCムエタイ世界スーパーライト級チャンピオンの大和哲也(大和)は昨年5月に敗れた相手へのリベンジマッチの予定でしたが、怪我で欠場となり、後輩の真吾YAMATOが代打で出場。

1996年1月生まれの20歳で、10戦7勝(3KO)2敗1分の戦績で元ムエタイチャンピオンに挑みましたが、第2ラウンドにゴーンサックにパンチで2度ダウンを奪われ、最後は第4ラウンドに左ハイキック一発で倒される、荷が重い内容でしたが、勇敢に向かった試合でした。

ローキックで攻め立てる波賀宙也

波賀宙也はバランスいい元ムエタイチャンプにローキックでたじろがせる圧倒を見せ判定勝利。日本人選手がかつてやられたパターンで、こんな逆転した展開を見せる時代になったことを実感させられる試合でした。

NJKFフライ級王座はパンチでダウン奪った能登が形成逆転、大田のヒジ、ヒザのムエタイ技での優勢は一気に空気が変わり、後半も能登のパンチが活き僅差ながら判定勝利で第10代チャンピオンとなりました。

《主要4試合》

◆64.5kg契約 5回戦

NJKFスーパーライト級2位.真吾YAMATO(大和)
    VS
ゴーンサック・シップンミー(タイ)=元ルンピニー系フェザー級、スーパーフェザー級チャンピオン
勝者:ゴーンサック / TKO 4R 0:48 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審 山根正美

◆56.0kg契約 5回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級チャンピオン.波賀宙也(立川KBA) 

ゴーンサックの左ミドルキックは重かった
左ハイキックで倒された真吾

    VS
クワンペット・ソー・スワンパッディー(タイ)=元ルンピニー系バンタム級チャンピオン
勝者:波賀宙也 / 判定3-0
主審 多賀谷敏朗 / 副審 西村50-47. 竹村50-47. 山根50-47

◆NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

1位.大田拓真(新興ムエタイ)vs2位.能登龍也(VALLELY) 
勝者:能登龍也 / 判定0-2
主審 松田利彦 / 副審 西村48-48. 多賀谷48-49. 山根47-48

◆NJKF女子(ミネルヴァ)アトム級(102LBS)王座決定戦3回戦 

佐藤怜南(team AKATSUKI)
    VS
C-CHAN(T-GYM)
引分け 三者三様(公式記録) / 主審 多賀谷敏朗
副審 竹村30-29(9-10). 西村28-29(9-10). 山根29-29(9-10)
延長戦0-3(三者とも9-10)による“勝者扱い”でC-CHANが新チャンピオン

◎KICK Insist6
11月6日(日) ディファ有明16:00~20:45
主催:ビクトリージム、治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

C-CHANがデビュー1年でチャンピオンへ

やっぱり厚かったムエタイの壁、瀧澤博人は念願の“現役”ムエタイチャンピオンとの対戦も、内容的に大差を付けられる完敗。蹴りもパンチも単発では崩せないが、次に繋げさせないカオタムの距離とバランス。ラウンドが進むにつれ、瀧澤のパターンが読まれると組まれてヒザ蹴りのカオタムのペースに巻き込まれる経験値の差がありました。これで奮起するのが瀧澤博人、次の国内防衛戦を通過点として、またムエタイ第一線級戦士に向かっていくでしょう。

山田航暉は元・タイ東北スラナリースタジアム・ミニフライ級チャンピオンのラチャシーに、ローキックで勝機を掴み、2度目のダウンになるローキック後、崩れ行くところを顔面にキック、そのままノーカウントのレフェリーストップ勝ち。

石原將伍は元・タイ国ムエスポーツ協会ランカーのゴーンポンレックに強打が通じず、戦法読まれて攻め倦む判定負け。

大田原友亮はムエタイ技の基礎が出来ている選手ですが、キックボクシングのリズムが噛み合わず凡戦が多くまたも引分け。

日本ヘビー級チャンピオン初戦の柴田春樹は、総合格闘家の酒井リョウとキックの試合には成り難いリズムが狂った展開でも、ダウンと酒井の反則減点で大差判定勝利。

《主要5試合》

蹴る威力が増し、元ムエタイ地方チャンピオンを圧倒した山田航暉

◆55.6kg契約 5回戦

日本バンタム級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/55.55kg)
VS
タイ国ラジャダムナン系スーパーバンタム級チャンピオン
カオタム・ルークプラパーツ(タイ/55.1kg)
勝者:カオタム・ルークプラパーツ / 判定0-3
主審:椎名利一 / 副審:桜井48-50. 少白竜47-50. 仲47-50

パンチの距離を狂わされた石原將伍

◆51.5kg契約 5回戦

WMC日本スーパーフライ級チャンピオン.山田航暉(キングムエ/51.3kg)
VS
ラチャシー・ギャットアノン(タイ/50.9kg)
勝者:山田航暉 / TKO 3R 1:28 / 主審:仲俊光

◆59.0kg契約 5回戦

日本フェザー級1位.石原將伍(ビクトリー/58.9kg)
VS
ゴーンポンレック・ギャットゴーンプン(タイ/58.3kg)
勝者:ゴーンポンレック・ギャットゴーンプン / 判定0-3
主審:少白竜 / 副審:桜井47-49. 仲47-49. 椎名47-49

アトム山田と大田原友亮はドロー

◆58.0kg契約3回戦

ユウ・ウォーワンチャイ(=大田原友亮/ウォーワンチャイ/57.65kg)
VS
JKIフェザー級1位.アトム山田(武勇会/57.7kg)
引分け 0-1 (29-30. 29-29. 29-29)

◆ヘビー級3回戦

日本ヘビー級チャンピオン.柴田春樹(ビクトリー/92.65kg)
VS
酒井リョウ(バラエストラ松戸)
勝者:柴田春樹 / 判定3-0 (三者とも30-26)

◆取材戦記

蹴り合いは少なかったが、立ち技の経験値で勝利を導いた柴田春樹

NJKF興行では女子の試合は「ミネルヴァ」と表現しています。ローマ神話の女神に名称を由来すると言われおり、カッコいい名称ですが、一般の方が見た場合、何の試合か分かるでしょうか。最近、NJKF関係者に「ミネルヴァと書いてください」と言われたこともありました。しかしそこは「女子キック」と表現しなければ一般の方には分からないでしょう。

今回のDUELでは各選手のウェイトが発表されませんでしたが、全選手リミット内であったようです。ウェイト競技たるもの、計量記録も大事な試合の内と思います。前日公開計量のある興行では、選手の調整具合がしっかり読めてくることあるので、こういう機会は増やして欲しいと思います。

次回NJKF興行は11月27日(日)後楽園ホールでの「NJKF 2016.7th」に於いてWBCムエタイ・タイトルマッチ5試合が主要試合として行なわれます。

新日本キックボクシング協会の藤本ジム主催興行は12月11日(日)に後楽園ホールに於いて「SOUL IN THE RING.16」が行なわれます。

過去の敗戦を糧に強くなった瀧澤博人、更なる奮起に期待

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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キックボクシングに人の歴史あり──名選手たちの同窓会のようなトークショー

酒を酌み交わす仲、そこはかつて殴る蹴るの試合で戦った者の集まり。

キックボクシング創設50周年、シュートボクシング創設30周年、これらの競技がここまで永く発展、継続され、名選手が生まれてきた歴史に学ぶことは、今後も完全には廃れることなく、また隆盛も迎えつつ次の世代へ繋がっていくのだろうと考えられます。

◆キックボクシング取材の先駆者、舟木昭太郎さん主催の貴重なトークショー

舟木昭太郎氏(左)、バズーカ岸浪氏(中央)、増沢潔氏(右)。岸浪氏が増沢氏から全日本ウェルター級王座を奪ったのが1972年(昭和47年)1月でした

継続されてきたのは名選手だけではない、興行団体や裏方のスタッフやマスコミの存在もありました。現在は現場に足を運ばれることは少なくなっても、キックボクシングの創生期から隆盛期、低迷期、また復興期からシュートボクシングの創設と発展までしっかり現場を見て来られたのがキックボクシング取材の先駆者、舟木昭太郎さんでした。

舟木さんは「プロレス ボクシング キック」と銘打たれた月刊ゴング誌の編集長を永く務められた、多種プロ格闘技に渡り取材経験豊富な方で、沢村忠も藤原敏男も具志堅用高も前田明にも、その時代のカリスマ的存在に、同時期の第一線級記者として取材した、まだ月刊雑誌が待ち遠しいほど貴重だった時代に取材し、全国のファンに情報を伝えていたというだけでも、我若輩者は圧倒される想いがあります。
こういう人だからこそ参加者が大勢いて出来た、舟木昭太郎さん主催のトークショーが今年10月までに2回開催されています。

左から増沢潔氏、藤原敏男氏、竹下氏、バズーカ岸浪氏、佐藤正信氏
足を骨折していても、この前日もムエタイ観戦していた元気な藤原敏男氏。乾杯の音頭を取るものこの人ならでは
若き頃のやんちゃな話題を語る仙台青葉ジム、瀬戸幸一会長

◆戦った者同士が酒を酌み交わす親交空間

7月30日には「黄金時代を熱く語るキックボクシングデー!」と銘打ったテーマで渋谷区富ヶ谷の台湾料理「麗郷富ヶ谷店」で行われ、10月22日には同所で「シュートボクシング30周年を共に語ろう!」というテーマで行なわれました。

いずれも集まるメンバーに、懐かしい顔が見られ、黄金時代を熱く語るキックボクシングデーでは藤原敏男さん、竹山晴友さんをはじめとするお酒好きの名選手、名チャンピオンが来場されていました。

皆、年輪を重ねた顔を見せつつ、大きい声は出すは、笑い声が元気な元チャンピオン・ランカー達の、かつて戦った者同士が酒を酌み交わしながらの会話は、見ていて羨ましいほどの親交深まる空間がありました。

◆歴代チャンピオンたちの存在感

その中でも藤原敏男さんの存在感はやっぱり偉大で、外国人(日本人)初のラジャダムナンスタジアム認定チャンピオンの英雄と一緒に写真に収まろうとする人々の光景は子供のようでもありました。

仙台青葉ジム会長の瀬戸幸一氏も83歳となられても益々元気に、「空手がいちばん強いと思っていた時代に仙台からわざわざキックの目黒ジムに殴り込みをかけた」と語る血気盛んな裏話や、元・全日本ウェルター級チャンピオンの増沢潔さんが披露してくれたのはNETテレビ(現テレビ朝日)が放映していた昭和45年当時のチャンピオンベルト(全日本キック王座が出来る前)。

わずか1年未満の活動でしたが、振り返れば創生期のキックブームの裏にいろいろなことがあったんだなと再認識させられる話題も多だあり、かつてのキックボクサーが互いに当時の想いを語り合うこの集いに存在意義があるのでした。

シュートボクシング創始者シーザー武志氏、その経緯を語る
元・極真からキック転向し、話題を振り撒いた竹山晴友氏、話題では藤原氏に次ぐ存在

◆「シュートボクシング30周年を共に語ろう!」の主役シーザー武志さん

10月22日の「シュートボクシング30周年を共に語ろう!」ではシーザー武志(本名=村田友文)さんが主役。45年になるお付き合いから「こんな会を開きたいと申し出たら快く受けて頂きました」と語った舟木氏でした。そんな紹介の中、蹴る殴るの格闘技をやるとは思えぬSB女子世界フライ級チャンピオンのRENAさんの存在が光っていましたが、そんな時代の流れを感じる世代を越えた顔ぶれもありました。

シーザー武志氏がキックボクサーとしてデビューした1972年(昭和47年)頃は、「舟木さんのゴング誌に書いて貰うのが夢でした」という素朴な夢や、デビューから3連敗しても負けた悔しさをバネにして4戦目で3戦3勝の相手に勝ったことや、「キック団体がついたり離れたりして纏まらず、選手がかわいそうだった。それだったらキック団体でなく、ひとつの競技を作り上げてしまおう」という発想から、シュートボクシングを創設するに至る経緯を振り返り、UWFを立ち上げた佐山聡氏と知人を通じて知り合い、前田明や高田信彦、山崎一夫といった選手に蹴りを教える縁に繋がり、その後、佐山聡氏がシューティング(現在の修斗)を創設したことから真似て、“シューティングボクシング”を立ち上げようとしましたが、佐山氏に「“ING”が二つ付いたら駄目ですよ」と助言を受け「“シュートボクシング”に定着しました」という設立の裏話もされていました。

NETテレビ時代の貴重なチャンピオンベルトを持つ増沢潔氏
右側が比較的最近の選手といっても8年前まで現役のSB日本スーパーウェルター級チャンピオンの緒方健一氏。かなりふっくらしました

◆RENAさんが切り開いたMIO選手たちの強くて可愛い連鎖の時代

試合用スパッツに関しては、今までに無いものを作り出したい想いと、知人から指摘された“脚の筋肉のラインをキラッと見せる華やかな発想”から作り出した経緯のようでしたが、腹に脂肪があっては逆効果もあり、身体の身だしなみも強制的に躾けられるスパッツであるようです。

昭和のキックボクシングがテレビによって隆盛期を迎え、その後テレビが離れると、定期興行が打てない閑散とした低迷期に突入し、何とか各所で支援者に恵まれたキック業界は復興に至りました。隆盛期から復興期まで時代を跨って活躍した中にはシーザー武志氏もいた訳です。団体を作るより、競技を創設する苦労は、このシュートボクシングを世界に支部を作り定着させなければならない活動が続きました。現在は女子選手が実力を付け、RENA選手がメインイベントを務める時代とまでになりました。強く可愛い連鎖で後輩のMIO選手も力を付けています。

オークションでサイン色紙をゲットしたセントポールズサロン銀座(次回開催地)の森和夫社長がシーザー武志氏とRENAさんに囲まれる

◆11月26日開催のPART3は「藤原敏男の炎のキックボクシング講座」

現役を引退した選手らは、この業界にはわずかしか残れない中でも、赤字を覚悟したジム運営や興行に汗を流す日々となり、そんな業界であっても、かつて戦った者同士の、あの時代を語る集いは、年取った者が懐かしむだけかもしれませんが、今現役の選手も、この時代を取り巻くファンもやがて同じ集いを行ない、現在、喧々囂々やりあっている現役選手も30年もすればこんなテーブルに付くのだろうと想像してしまいます。

以上はパーティーで印象に残った話をマニアックに簡潔に拾ったものを披露したものですが、今の若い記者個人では出来難い、舟木氏のベテラン記者としての人脈がありました。キックボクシングの取材現場には一部を除き、長く務める顔ぶれは少ないものですが、マスコミとしても培っていかねばならない継続力を学ばせて頂いたパーティーでした。

11月26日(土)には中央区銀座の「セントポールズサロン銀座」に於いて13時より舟木昭太郎氏主催のトークショーPART.3として「藤原敏男の炎のキックボクシング講座」が開かれ、藤原氏をメインに現役時代のラジャダムナン戦などの映像を観ながらのトークのようです。現在に繋がる基盤を作り上げた諸先輩方の集いは今後も続いていくことでしょう。

※イベント詳細は舟木昭太郎さんのブログ「日々つれづれ」をご参照ください。

今、最も旬な二人、RENA選手、MIO選手

[撮影・文]堀田春樹

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MAGNUM.42 一心に王道を突き進むのみ、三つのリベンジ戦!

ローキックで強く攻める江幡塁の戦略。セーンピチットも必死になる
次第に効いてきたローキック、ブロックも追いつかなくなる
効いてしまうと心折れる訳でなく、麻痺して立てなくなるのがローキック

江幡塁と重森陽太の二人は、5月29日、タイのラジャダムナンスタジアムで現地常連選手に判定負けを喫しています。そのリベンジ戦、江幡塁はバットを圧し折るような左ローキックでセーンピチットを担架で運ばれる事態に追い込む圧勝。

重森陽太は様子見の手数少ない序盤から次第にしなりある蹴りで攻勢に立ち、後半にパンチでラッシュし、試合をコントロールした勢いで判定勝利。

3月13日、石川直樹と王座決定戦で引分け(公式記録)、延長戦での“勝者扱い”で王座奪取となった泰史の初防衛戦は再び石川直樹と対戦。ヒジ打ちで眉間をカット成功した石川直樹は反撃に出る泰史を首相撲からのヒザ蹴り中心に優勢を守り、泰史はドクターチェックを2度受けた後、続行中にレフェリー判断で試合をストップ。石川直樹は王座を?ぎ取るリベンジで第9代日本フライ級チャンピオンとなりました(新日本キック制定)

緑川創は右足の指を骨折する中で苦戦の引分け。ラジャダムナン・ランカー相手に打ち負けない展開は実力を証明した内容。

勝次は元・タイ南部ライト級チャンピオンのトックタックに様子見に時間が掛かるもパンチで前に出て勢いに乗り、KO出来なかったが安定した試合運びで判定勝利。
喜多村誠はジャントーンのパンチに攻め難さがあったが、右ハイキックでダウンを奪い、右ストレートで仕留めるTKO勝利。

◎MAGNUM.42
10月23日 後楽園ホール 17:00~20:50
主催:伊原プロモーション
認定:新日本キックボクシング協会

《主要6試合》

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/56.0kg)
 VS 
セーンピチット・STDトランスポート(タイ55.6kg)
勝者:江幡塁 / TKO 4R 0:51 / カウント中のレフェリーストップ

◆日本フライ級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.泰史(伊原/50.8kg)vs1位.石川直樹(治政館/50.8kg)
勝者:石川直樹 / TKO 4R 1:18 / レフェリーストップ

ヒジで切った後は攻められても冷静に試合をコントロールした石川直樹
レフェリーが傷を見てストップ、石川直樹に苦労の裏返しとなった笑顔が浮かぶ
怪我が多かった今年、それでも負ける訳にはいかない緑川創
油断ならないシップムーンの荒技、バックエルボーの脅威

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(前・日本W級C/藤本/70.0kg)
VS
タイ国ラジャダムナン系ウェルター級2位
シップムーン・シットシェフブーンタム(タイ/69.4kg)
引分け / 三者三様(49-48. 48-49. 49-49)

柔軟な蹴りを持つ重森陽太はターレーグンにリベンジ成功

◆57.5kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.重森陽太(伊原稲城/57.5kg)
 VS
ターレーグン・ポー・アーウタレーバーンサレー(タイ/57.3kg)
勝者:重森陽太 / 判定2-0 (50-48. 49-47. 49-49)

◆63.0kg契約 3回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/63.0kg)
 VS 
トックタック・トップキング(タイ/62.7kg)
勝者:勝次 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

◆70.0kg契約3回戦 

日本ミドル級チャンピオン.喜多村誠(伊原新潟/69.5kg)
 VS
ジャントーン・エスジム(カンボジア/70.0kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 3R 2:18 / カウント中のレフェリーストップ

アンダーカード5試合は割愛します。

《取材戦記》

江幡塁は試合後、25歳となった今年、「今だったら3年前と違います」と、ラジャダムナン王座に挑戦してKOで敗れ去った頃を意識しての発言。来年には再度ラジャダムナン王座に挑戦し、奪取する意気込みを感じられました。

新日本キックボクシング協会所属以外でタイ・ラジャダムナン王座奪取が続く今年、その中の一人、T-98(タクヤ)に3年前、判定勝利したことがある緑川創は、もう一度、この高校野球部時代の先輩と対戦する舞台に立ちたいところでしょう。パンチで倒してTKO勝利した喜多村誠も同じく、T-98に挑戦の意思を示し、チャンスを待つ者の一人です。

喜多村誠のハイキック、ラジャダムナン王座再挑戦へ向けて勢いが増す

日本人選手ではないですが、ラジャダムナン・ミドル級チャンピオンに就いたユセフ・ボーネン(フランス/ベルギー)は5月27日にコムペットレック・ルークプラバート(タイ)との王座決定戦で2ラウンドにユセフが股間へのヒザ蹴りでコムペットレックが悶絶。ユセフの失格負けとなり、コムペットレックが新チャンピオンになり、その初防衛戦が8月31日のユセフとのダイレクト再戦でした。

そしてユセフが第4ラウンドに左ボディブローで倒して王座奪取。意外にもタイの専門誌記者の間では、”外国人ムエタイ選手の中で一番強い”と評価されているようです。

ラジャダムナンスタジアム王座は、スーパーウェルター級チャンピオンがT-98、ミドル級チャンピオンがユセフ・ボーネン、ライト級チャンピオンが梅野源治。タイ側から見れば軽量級境界線のライト級を除き、あまり評価が高くない領域となりますが、昔は重量級でも強いチャンピオンがいたムエタイ王座です。日本人でも挑戦資格を獲れる実力を持った選手が多いので、タイ側を慌てさせるよう掻き回して欲しいものです。

勝次も目指すものが見えている中での勝利

[撮影・文]堀田春樹

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日本キック連盟の巻き返し──天下布武・武士シリーズ!

豪快なKO勝利もあり、存在感大きかった34歳桃井浩

◎武士シリーズ vol.4
10月2日(日)後楽園ホール17:30~21:15
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

《ハイライト》

◎今年2月、ゴンナパーに判定負け、6月、翔センチャイジムに負傷による棄権TKO負けと白星が無い大和知也が中尾満を圧倒し、エース格の面目躍如。

◎高橋一眞に雪辱果たして王座に就いた村田裕俊が複数団体同級チャンピオンの久世に判定勝利。

◎興味深かった高橋三兄弟次男・亮21歳と佐々木雄汰16歳のルーキー対決。互いに持ち味出した戦いで高橋亮が判定勝利。

◎桃井浩が劣勢の判定負けながら力出し切ったラストファイト。

主要6試合

◆64.0kg契約5回戦

NKBライト級チャンピオン.大和知也(SQUARE-UP/63.75kg)
VS
中尾満(エイワスポーツ/63.85kg)
勝者:大和知也 / KO 1R 2:45 / 3ノックダウン

ローキックのけん制からボディへ右ストレート、更にコーナーに詰め連打でダウンを奪い、巻き返しに出てくる中尾と打ち合いの中、連打で2度目のダウンを奪い、効いていない様子の中尾だったが、仕留めに掛かる大和は連打の中、右ストレートで3度目のダウンを奪い久々の圧倒KOでの完勝。

距離を詰めるにも勢いがあった大和知也のボディブロー
他団体チャンピオン下し、更なる上位を目指す村田裕俊

◆58.0kg契約5回戦

NKBフェザー級チャンピオン.村田裕俊(八王子FSG/58.0kg)
VS
WMC日本フェザー級チャンピオン.久世秀樹(レンジャー/57.8kg)
勝者:村田裕俊 / 判定3-0 / 主審 馳大輔
副審 前田49-47. 川上49-48. 佐藤友章49-48

序盤は久世がムエタイ技で積極的に出てヒジ打ちで村田の額を切ることに成功。後半は村田がローキック主体にジワジワ巻き返し、久世の勢いが衰えるがまま、村田の判定勝利。

勢いの違いが出始めた後半の高橋亮のミドルキック

◆53.7kg契約5回戦

NKBバンタム級チャンピオン.高橋亮(真門/53.6kg)
VS
WPMF日本スーパーフライ級チャンピオン.佐々木雄汰(尚武会/53.6kg)
勝者:高橋亮 / 判定3-0 / 主審 鈴木義和
副審 前田50-49. 川上49-48. 馳50-48

高橋亮は三兄弟の中で最初に王座に就いたNKBとしても有望な存在。佐々木雄汰は16歳でWPMF日本スーパーフライ級王座に就いたスーパールーキー。ムエタイ技で佐々木が上回り、素早さ、ヒジ打ち、転ばしも上手いが高橋は冷静に様子見。3Rには佐々木を空回りさせるキックスタイルの高橋のパンチで佐々木は鼻血を出す。後半に得意とする戦法を活かした高橋が勢いを増した展開で判定勝利。再戦すればまた向上した面白い戦いになりそう。

キックボクシングスタイルの高橋亮が優ったボディブロー
凡戦となったが、一発の破壊力はKOのチャンスもあった田村と西村

◆NKBミドル級5回戦

1位.田村聖(拳心館/72.15kg)vs6位.西村清吾(TEAM-KOK/72.45kg)
引分け 1-0 / 主審 佐藤友章
副審 川上49-49. 馳49-49. 前田50-49

決定打が少ない中、パンチのクリーンヒットが当たると勢い増すかと見入っても、スタミナ切れのパッとしない中、KOを期待した観る側は長い5ラウンドとなった展開。

劣勢が続くもラストファイトを悔いなく戦った桃井浩

◆ライト3回戦

NKBライト級2位.桃井浩(神武館/61.0kg)vs増倉敦(TRY-EX/61.1kg)
勝者:増倉敦 / 判定0-3 / 主審 鈴木義和
副審 馳28-30. 佐藤友章28-30. 前田28-30

桃井浩のラストマッチは増倉に攻められっぱなし。2Rにはちょっと逆転は無理かと思うほど手数が減り、3Rは踏ん張って反撃もスタミナ切れ。しかしラストマッチとしての力を出し切る意地を見せた感動も残りました。

◆NKBフェザー級3回戦

4位.高橋聖人(真門/57.0kg)vs6位.安田浩昭(SQUARE-UP/57.05kg)
勝者:高橋聖人 / 判定3-0 / 主審 川上伸
副審 前田30-27. 佐藤彰彦30-28. 馳30-27

技が多彩な高橋聖人がしだいに圧倒。安田はパンチで出るしかない劣勢に。やや見過ぎで勢い弱まる高橋も攻勢を維持し判定勝利。

※他、5試合は割愛します。

技の多彩さで安田を圧倒した高橋聖人
他団体チャンピオンを意識したアピールの大和知也

取材戦記

「キックボクシング業界がこれから盛り上がっていきますので、いろんな大会に出れるよう頑張ります。他の団体とか他のチャンピオン倒しますので宜しくお願いします。」(大和知也の勝利者インタビュー)

「NKBの盾になって他団体のチャンピオンをバタバタ倒していくので応援お願いします。」(村田裕俊)

 こうした発言が出てきたのは、NKB自体が「KNOCK OUTイベント」を意識したり、交流戦が出来るようになってきたゆえだと思います。この団体の選手にも新たな目標が出来ることで活気が出て来た証しともいえそうです。

「KNOCK OUT」による波紋は団体によって違った形で出ていると思いますが、NKBにおいてもこのように他の選手にとっても同様の意識があるでしょう。初戦は敗れた高橋一眞も再度出場を狙っていることでしょうし、売り出し中の高橋三兄弟の飛躍に期待が掛かります。

武士シリーズVol.5は12月10日(土)17:30より後楽園ホールにて、NKBフェザー級タイトルマッチ.チャンピオン村田裕俊が同級2位.優介(真門)を迎え初防衛戦を行ないます。他団体交流戦を目指す村田が上昇気流に乗った勢いで初防衛を果たせるか期待のかかる防衛戦です。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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T-98(今村卓也)がタイのラジャダムナンスタジアムでムエタイ王座初防衛の快挙!

ボディブローもダメージを与える有効技

T-98(今村卓也)が10月9日、日本人として初の(外国人として2人目の)現地ラジャダムナンスタジアムで防衛を果たす快挙、更なる証しに挑戦です。

◆タイ国ラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級(154LBS)タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.T-98(今村卓也/クロスポイント吉祥寺)
VS
挑戦者.プーム・アンスクンビット(タイ)

勝者:T-98 / TKO 3R / カウント8でレフェリーストップ

一瞬の隙を突いたヒジ打ちは要注意。やはり上手い現地のランカー
一瞬、危なかったプームのハイキック
ダメージを重ねたT-98の右ローキック

開始からT-98が右ローキックで、圧力かけるように前へ出る展開。足効かせて勝利を導く狙いがあるような流れでした。プームは、ヒジ打ちのタイミングやハイキック、組んで転ばす技はやはり上手で、後半にいくほど厄介さを感じさせます。

T-98のローキックは見た目地味にもコツコツ強く蹴り続け、ボディブローもヒットさせ、ひとつひとつの攻防に絶対劣勢に立たない、ダメージを与えられる打撃は何でも出す圧力を続けました。

力尽きたプームは心折れた表情で立てず

プームが組んでヒザ蹴りで出てきてもT-98は応戦し負けない蹴り合い。コツコツ蹴り続けた右ローキックで、3Rに最後の強烈な一発を食らって限界にきたプームはあっけなく崩れ落ちてしまい、キツさを表情に出してギブアップ状態。レフェリーはカウント途中で止め、T-98のTKO勝利。

T-98は感じていたプレッシャーから開放されたように喜び飛び跳ね、応援に来ていたリングサイドのファンに手を振っていました。

プレッシャーから開放された喜びのT-98

T-98は6月1日に後楽園ホールに於いて、REEBLS興行でのラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級級王座挑戦し、チャンピオン.ナーヴィー・イーグルムエタイ(タイ)に判定勝ちし王座を獲得。日本人5人目となるラジャダムナンスタジアムのチャンピオンとなりました。

今回の防衛戦は前チャンピオンのナーヴィーとのダイレクトマッチが予定されていましたが、直前にプーム・アンスクンビットに変更となりました。

これでT-98は現役ラジャダムナン・スーパーウェルター級チャンピオンとして12月5日の「KNOCK OUT興行」に出場し、長島自演乙雄一郎と対戦することになります。

取材戦記

二大殿堂のラジャダムナンスタジアムに対するルンピニースタジアムでは、過去にムラッド・サリとダミアン・アラモスのフランス人選手2人がスーパーライト級で王座に就いています。

ラジャダムナン王座にタイ人以外の外国人が就いたのは過去、藤原敏男(ライト級)、小笠原仁(スーパーウェルター級)、武田幸三(ウェルター級)、石井宏樹(スーパーライト級)、ジョイシー・イングラムジム(ウェルター級)とT-98で6人目。現地ラジャダムナンスタジアムで防衛に成功したのは、ジョイシー・イングラムジム(ブラジル)に次ぐ2人目でした。ジョイシーが2度目の防衛を果たした時の相手がナーヴィー・イーグルムエタイで、ジョイシーが王座返上後にナーヴィーが王座決定戦で奪取していました。

ムエタイ二大殿堂王座は、その王座を奪取すれば、その階級で頂点に就いたと証しとなりますが、真のチャンピオンに達したと認められるには、賭け屋(ギャンブラー)と言われる観衆の大声援による支持が証しとされます。

現地で日本人チャンピオンの手が挙げられる
現地での堂々の防衛で勝者コールを受ける

タイは民族的に身体が小柄で、ボクシング、ムエタイにおいても軽量級が激戦区で、線引きするなら60kgに満たないクラス(スーパーフェザー級)までを指されます。そこで頂点を極めるのは至難の業で、日本人挑戦者も過去7人が挑戦していずれも撥ね返されており、センスや実力があっても獲れなければ無名のまま。その中には梅野源治も江幡ツインズもいます。

60kgを超えると中・重量級であるが故、層が薄いと言われるムエタイ王座ですが、そんな重量級の選手にとって、王座奪取してもより付加価値を付けなければ世間に認めてもらえない厳しさがあります。

T-98がまず目指したのは、「現地で防衛してこそ本物のチャンピオン」と言われる称号で、その第一歩に成功。更には今後、賭け屋の支持を多く受けなければならない難度な道程です。

過去の外国人ラジャダムナンチャンピオン全6人の内、藤原敏男氏は唯一、タイのトップクラスとの現地での激しい試合が賭け屋の支持を多く受けたチャンピオンでした。1977年4月、現地でノンタイトル戦ながら現役チャンピオンに判定勝ちする快挙を果たした後、王座奪取は1978年3月18日の後楽園ホールでしたが、初防衛戦は期間が3ヶ月弱での6月7日、現地ラジャダムナンスタジアム。短い期間で初防衛戦を迎え大声援の中、接戦の判定負けを喫しました。「藤原は勝っていた」という賭け屋の支持も多く、防衛は成りませんでしたが、藤原氏の名声は今も語り継がれるほど、現地のファンも当時のランカーもレフェリーも記憶に残る名選手でした。

藤原敏男氏の知名度には及ばないですが、これに次ぐ実績を残したのが、ブラジルのショイシー・イングラムジム(ジョス・ロドリゲス・メンドーサ)。彼は2013年7月、ラジャダムナン・ウェルター級王座を現地で奪取し、2014年9月、日本で田中秀弥(RIKIX)の挑戦を退け初防衛し、2015年6月、2度目の防衛戦で再び現地でナーヴィー相手に防衛を果たす、現地で獲って現地で防衛する実績を残ました。いずれも技術と駆け引きで優って勝つのは難しいと言われる判定勝ちでした。ノンタイトル戦で緑川創(藤本)も下している、日本でも名を知らしめた選手です。

T-98に懸かる期待は藤原氏とジョイシーの二人を超えること。対戦候補となるジョイシーは現役のトップクラスでいます。前チャンピオン. ナーヴィー・イーグルムエタイも現地での再戦を待っているでしょう。更に日本人同士のラジャダムナンタイトルマッチも計画されているという、日本を含め、外国にも強豪はまだいる重量級です。

チャンピオンベルトという物的証しの上に、一人一人のファンが集まって大群集となるファンの支持力が真のチャンピオンの証しとなり、そこではノンタイトル戦であっても大群衆は注目します。T-98は重量級であっても自身の名声を高める戦いは今後も続き、層が薄いと言われている現状でも、好カードで現地防衛を重ねることが一番価値を残すでしょう。

控室側にある撮影ブースで、応援の旅に付いて来てくれた仲間と記念撮影

《追記》

8月31日(水)、現地でのラジャダムナンスタジアム・ミドル級タイトルマッチで、チャンピオンのコムペットレック・ルークプラバートを4R、ボディブローで倒し、TKO勝利したユセフ・ボーネン(フランス)が、ラジャダムナンスタジアムの外国人7人目のチャンピオンとなっています。

また10月23日(日)、ディファ有明でのREBELS興行で行なわれた、ラジャダムナンスタジアム・ライト級タイトルマッチで、チャンピオンのヨードレックペット・オー・ピティサックを、判定3-0で破った梅野源治(PHOENIX)が、ラジャダムナンスタジアムの外国人8人目のチャンピオンとなっています。

[現地撮影]Mr.Pornchai Udomsomporn (weekly MUAY TU)
[文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
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キックボクシング新イベント「KNOCK OUT」開催に向けた2試合追加発表!

12月5日開催のキックボクシング新イベント「KNOCK OUT」の対戦カードの2試合追加が9月30日の記者会見で発表されました。

リング上に描かれたKNOCK OUTロゴマーク

◆契約ウェイト未定5回戦

宮本啓介(橋本) vs 工藤政英(新宿レフティー)

森井洋介(ゴールデングローブ) vs ヨードワンディー・ニッティサムイ(タイ)

◆9月14日に発表された契約ウェイト未定5回戦2試合

T-98(今村卓也/クロスポイント吉祥寺) vs 長島☆自演乙☆雄一郎

大月晴明 vs スターボーイ・クワイトーンジム(タイ)

初回興行出場の4名、左からT-98、梅野源治、森井洋介、長島☆自演乙☆雄一郎

メインイベント出場予定の梅野源治選手については、10月23日(日)のREBELS興行に於いて行なわれるタイ国ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座挑戦試合の結果を以って発表予定です。

RIKIX代表、小野寺力氏
キックスロード社長、花澤勇佑氏
メインイベント出場の大役を担う梅野源治選手
司会進行とテレビ実況担当の村田晴郎氏

ヨードワンディー・ニッティサムイ選手は6月25日、ローキックで梅野源治選手を苦しめた選手で、スターボーイ・クワイトーンジム選手は3月12日に、梅野源治選手からヒジ打ちでダウンを奪い、それぞれのNO KICK NO LIFE興行で引分けた選手で、梅野源治との絡みで実力が測れるのも、ファンが興味を持ち易い理想的な傾向でしょう。

ヒジ打ち有りルールの試合で今後、地上波テレビで放送されることに、「これで地上波に乗るのかな」という不安もあるという声があり、一般視聴者から見れば今迄と違った(ヒジ打ちの無い競技を見慣れている感覚)危険な見方をされる懸念について、小野寺力氏は「大流血になってもドクターとレフェリーが判断して試合が止められることや、UFCでもヒジ打ちの出血でも全然止めないですし、プロボクシングにおいてもパンチで顔面が切れることがあるので、そこまで心配する事案ではなく、格闘技としてある程度の出血は仕方ないところと思います。」といった回答をされました。

梅野選手も、「ヒジ有りがメジャーになり難いという懸念と、今後大きい舞台でのヒジ有り試合を驚く人もいましたが、ムエタイはヒジ打ち有りだから面白いと言う人も多く、僕もヒジ有りのムエタイの面白さというのは、どうにかして伝えたいなというのは以前から思っていたので、今回KNOCK OUTが始まるということで凄いチャンスと思うので、とにかく自分が激しい試合をしてムエタイの面白さを伝えられたらなと思います。」という内容の回答。

そしてまず梅野選手の、10月23日のラジャダムナン王座挑戦に関して「トレーナーや仲間たちがサポートしてくれて、目標にしていたラジャダムナンタイトルに挑むことができるので、10月23日はしっかり結果を残して、チャンピオンベルト巻いて12月5日に『ムエタイは本当に凄いんだぞ』という試合をしたいと思います。第1回大会ということでメインイベントを務めさせて頂けるということで、みんなの期待に応えられるような激しい試合をしてKNOCK OUTの名前どおり、ノックアウトでキッチリメインの大役を果たしたいと思います。」と抱負を語りました。

宮本啓介 vs 工藤政英戦は、8月のREBELS興行に於いての3回戦で、持ち味を出し切った引分けで、小野寺氏がその場で、両方のジムとプロモーターに交渉して、すぐ決定に至った経緯がありました。この辺は正に若い世代のジム・プロモーターの交渉で弊害が無く、纏まりが早いところです。

森井洋介選手も9月14日の発表会見試合で高橋一眞(真門)を豪快にKOして、初回興行出場を希望し、願い叶って強いタイ人のヨードワンディーと対戦が決定。

また会見に参加していたT-98(タクヤ)選手も、6月に後楽園ホールでラジャダムナンスタジアム王座を奪取した時のチャンピオン、ナーヴィー・イーグルムエタイと10月9日に、ダイレクトマッチで初防衛戦が予定されていましたが、挑戦者がプーム・アンスクンビットに変更となった模様。記者会見時点で「6月に奪取して防衛戦のことだけを考えてきたので、現役ラジャダムナンチャンピオンとして12月5日の出場を約束します。」と宣言していました。

9日のラジャダムナンスタジアムでの結果は、初回から右ローキックで徐々に圧力かけていたT-98(タクヤ)が3Rに右ローキックでプームが崩れるように倒れTKO勝利、日本人として初の現地での防衛に成功。外国人としては昨年の、ウェルター級チャンピオン.ジョイシー・イングラムジム(ブラジル)に次ぐ快挙となります。
これでT-98は晴れてラジャダムナン・スーパーウェルター級現役チャンピオンとして「KNOCK OUT興行」に出場することになりました。

10月9日、ラジャダムナンスタジアムで日本人初の防衛を果たしたT-98選手

取材戦記

追加カード発表会見ながら興味を引いたのは、ヒジ打ちに関する世間の意識と時代の流れでした。

昭和40年代にTBSで毎週月曜夜7時から放送されていたキックボクシングはヒジ打ちも頭突きも投げもありました。後楽園ホールでは、昔は後方の固定テレビカメラで南側と東側からだけの撮影で、ハンディカメラが使われるようになったのは昭和50年代に入ってからだったと思いますが、ヒジ打ちがあること自体、当時は放送が懸念される事案では無かったと思います。

現在のような解像力良く鮮明に映すカメラやハイビジョン大型画面とデジタル放送がある上、ラウンド外ではハンディカメラがリング内に入ってまで撮影し、ドクターチェックされる顔面アップまでカメラが追っていることもあり、ヒジ打ちで切れた顔面を捉える機会は多いに有り得ることで、「地上波に乗るのか」という心配が出るのも仕方ないかもしれません。

とはいえ、そこは放送の仕方、映像の捕え方で守れるように思います。ヒジ打ちが懸念材料になることに意外な印象を受けるのは年配者だけかもしれませんが、ヒジ打ちで眼球破裂という事態が起こりうる危険はあります。しかし、キックボクシングやムエタイは元から危険な競技で、ヒジ打ちは必要な技術であることは50年経っても変わらないと思います。キックとムエタイの技の多彩さと躍動感をテレビで伝えられたら喜ばしいことでしょう。

9月30日の記者会見第二弾は(株)ブシロードが入る住友中野坂上ビルの“2階”の予定が、前日に“6階”に変更発表されました。これは取材陣が増えて広いスペースに変更かと思いましたが、取材陣はいつもと変わらない格闘技専門サイト記者中心の10人未満のスペースでした。

マスコミの数というのも今後、どれほど一般誌やスポーツ新聞が関わってくるかも興味を引くところ。これから始まるKNOCK OUT、決して楽観的には見ていられない問題も起こるかもしれませんが、まずは第1回目の「KNOCK OUT」に期待したいと思います。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

 タブーなきスキャンダル・マガジン『紙の爆弾』!
  商業出版の限界を超えた問題作! 全マスコミ黙殺にもかかわらず版を重ねた禁断のベストセラーが大幅増補新版となって発売開始!

一戸総太引退試合 WPMFもムエタイ普及に頑張る5つの王座決定戦!

STRUGGLEジム代表の鈴木秀明氏と並ぶ中向永昌。師匠と弟子のツーショット

◎M-ONE 2016.3 rd
9月25日(日)ディファ有明16:00~21:25
主催:ウィラサクレック・フェアテックス
認定:WPMF日本支局

WPMF傘下に於いて、中向永昌、潘隆成が日本の新チャンピオン。Little Tigerが世界王座返り咲きました。

こちらもWPMF傘下で、日本で2階級制覇、世界でも2階級制覇、タイ国ルンピニー王座は奪取成らずも2度挑戦経験を持つ一戸総太が公式試合の後、引退式。看板選手としてウィラサクレックジムを支えてきた10年間の現役生活に終止符を打ちました。戦績46戦29勝(15KO)10敗7分

主要7試合

◆WPMF日本スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦

3位.中向永昌(STRUGGLE/58.9kg)
VS
5位.津橋雅祥(エス/58.97kg)

勝者:中向永昌 / 判定3-0 / 主審 チャンデー・ソー・パランタレー
副審 ソンマイ 50-48. ナルンチョン 50-48. 北尻 49-48

離れた戦いから組み合う距離へ、中盤、中向永昌がヒジ打ち、ヒザ蹴りがやや優り、後半は組んでばかりが多くなるも判定で中向が勝利を掴み、第4代チャンピオン。

離れた攻防は互角の中での中向永昌のミドルキック
潘隆成が左ハイキックで突破口を開き、勝利に導く
潘隆成が第5代WPMF日本スーパーライト級チャンピオン

◆WPMF日本スーパーライト級王座決定戦 5回戦

6位.潘隆成(クロスポイント吉祥寺/63.3kg)
VS
4位.NOBU BRAVERY(BRAVERY/63.35kg)

勝者:潘隆成 / 判定3-0 / 主審 テーチャカリン・チューワタナ
副審 ソンマイ 49-48. チャンデー 50-47. 北尻 49-48

パンチとローキックで探り合いから、潘隆成がハイキックをヒットさせ、両者手数が増える流れも後半は疲れが出たような動きで判定までもつれ込み、潘隆成が第5代チャンピオン。

◆60.0kg契約3回戦(一戸総太引退試合)  

ポートーン・ソー・ロットリン(タイ/60.0kg)
VS
一戸総太(前WPMF世界Fe級C/WSR・F三ノ輪/59.5kg)

勝者:一戸総太 / 判定0-3 / 主審 ナルンチョン・ギャットニワット
副審 ソンマイ 28-29. チャンデー 28-30. テーチャカリン 28-29

接近戦で得意のパンチ、ヒジを強くヒットさせる公式戦を終えての引退式に臨んだ一戸総太。

器用さで優り離れてハイキック、接近戦でヒジ打ち、何でもこなせた一戸総太

◆WPMF女子世界ピン級(100LBS)王座決定戦 5回戦(2分制)

Little Tiger(元Champ/WSR・F/45.1kg)
VS
COMACHI(WPMF日本同級C/ MSJ/44.45kg)

勝者:Little Tiger / 判定3-0 / 主審 北尻俊介

副審 ナルンチョン 49-48. チャンデー 50-48. テーチャカリン 49-48

2Rまでの公開採点は3者とも20-20。19歳のCOMACHIがやや積極性があるが、33歳のLittle Tigerの組んでのヒザ蹴りがしつこく後半ほど優っていき執念の勝利で王座奪還。

ベテランLittle Tigerは経験値で優る余裕で攻める

◆WPMF世界フェザー級王座決定戦 5回戦

ヨーシラー・フェアテックス(タイ/57.15kg)
VS
ラジャシー・IT2000(タイ/57.15kg)

勝者:ヨーシラー・フェアテックス / TKO 3R 0:35
主審 ソンマイ・ケーウセン

蹴り足を抱えヒジ打ちカウンターで顔面をカットし、ドクター勧告でレフェリーストップ。

右ミドルキックをキャッチ後、右ヒジ打ちをカウンターしたヨーシラー

◆WPMF女子日本スーパーフライ級王座決定戦 5回戦(2分制) 

トモコSP(WSR・F/52.16kg)
VS
佐々木蝶里(尚武会/53.55→53.1kg=失格)

引分け / 1-0 / 主審 北尻俊介
副審 ナルンチョン 49-48. ソンマイ 48-48. テーチャカリン 48-48

17歳の佐々木蝶里はオーバーウェイトで失格。40歳のトモコSP(=スペシャル)が勝った場合のみ王座認定。動きの止まらない激しさはあるものの、差が開かず、結果は引分けで預かり。

◆65.0kg契約3回戦

WPMF世界スーパーライト級チャンピオン
ゴンナパー・ウィラサクレック(タイ/64.8kg)
VS
ギャンペット・ギャットコンペット(タイ/62.25kg)

勝者:ゴンナパー / TKO 2R 1:37
主審 チャンデー・ソー・パランタレー

2Rにゴンナパーがヒザ蹴りで最初のダウンを奪い、パンチとヒザで攻勢を続け、左ミドルキックでダウンを奪ったところでほぼノーカウントストップ。

最初のダウンを奪った膝蹴り連打するゴンナパー

取材戦記

王座返り咲きのLittle Tiger

毎度の会場入りからムエタイ色満載のムードに包まれる興行でした。「他興行にもビッグマッチがある中、何でM-ONEに来たんですか」とある関係者に問われたりもして、明確な回答は難しいものの、強いて言えば、タイトル(王座)の在り方に共感を持てるところでしょうか。たとえ有名選手の出場は無く、ビッグマッチと言うほどでなくても、統一された団体や上層組織がある下で運営されているタイトル(王座)が今後隆盛を誇るか、衰退消滅の道を辿るか、その行方を見ておきたいところです。

WPMF女子日本スーパーフライ級王座決定戦で、引分けにより王座は空位のままという裁定が下りましたが、この裁定は正解でしょう。規定のラウンドを超えての延長は本来、行なわないものです。WPMF管轄下であることで、この辺の仕来りはしっかりしていますね。

ムエタイ興行として試合前に毎度、王室唱歌が吹奏されます。タイでは試合や一般の映画館などでも上映前に王室唱歌が全員起立の上、吹奏されます。国歌吹奏とはまた違った趣となりますが、タイ人は慣習的に起立し、日本人観戦者はタイ国歌も王室唱歌もわからないまま起立している人もいるかもしれませんが、律儀に起立する姿は日本人らしくあります。

ワイクルー(試合前の戦いの舞)も録音された市販のテープやCDを使われると思いますが、ワイクルーやラウンド中も生演奏を聴きたいものです。楽器は取り寄せ、演奏者は経費節減も含め、習えばムエタイにのめり込む日本人なら出来るのではと思います。

ゴンナパー・ウィラサクレックの対戦相手は当初、OU・HAOHUI(中国/漢名・呼び名不明)でしたが、19日に他興行出場したゴンナパーの試合を、この日の試合2日前にビデオで観て怖気づき「怖くて戦いたくない、という理由で欠場決定。気持ちの小さい選手でした。」と場内にリングアナウンサーによってアナウンスされる始末。主催者がウィラサクレックさんで、タイ人だけに堂々と発表してしまうので、それはまた違った意味で面白さがありました。代打として緊急出場のギャンペット・ギャットコンペット(タイ)が対戦しております。

タイ人レフェリーの名前で、ニックネームでアナウンスされる場合があります。公式試合たるもの、これは本名か現役時のリングネームで通して欲しいものです。「マット」と呼ばれていたレフェリーの現役時のリングネームは、テーチャカリン・チューワタナ。本名は、ウィティラム・サマートと言う方のようです。

出場した選手の中には、話題のKNOCK OUTイベントのRIKIXジムから新人・加藤有吾選手と藤野伸哉選手が判定勝利。NKBのテツジムから前島マルコス選手がTKO負け。新天地に出向くことで戦いの場は増え、敗れてもNKBは新化しつつあるようです。

次回のM-ONE興行は11月23日(水・祝)に昼の部でアマチュア大会、夜の部でプロ興行が行なわれる予定です。

かつて対戦したライバルと再会、自然と笑顔になるのも戦い分かり合えた者だけの心理

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
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TITANS NEOS 20 本物は強い男を知っている!

江幡ツインズ、今回出場の睦(むつき)は毎度のムエタイテクニシャンとの対戦で一進一退の苦戦する薄氷の勝利も5連勝、そのひとつ前の7月27日にはラジャダムナンスタジアムではTKO勝利し、経験を積み重ね、ムエタイ王座再挑戦を狙っています。

◎TITANS NEOS 20 / 9月18日(日)17:00~20:20
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

江幡睦の攻め続けたミドルキック、怯まなかったホントーンレック

◆54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/53.85kg)
VS
ホントーンレック・チョー・ファープリアンシー(タイ/53.7kg)
勝者:江幡睦 / 3-0 (48-47. 49-47. 49-47)

ホントーンレックは元・タイ国ムエスポーツ協会スーパーフライ級チャンピオンで、2年前に江幡ツインズ弟・塁と対戦し、接戦の判定負けを喫している33歳。侮れないベテラン相手に初回、江幡睦は左フックでダウンを奪うも、その後、一進一退の攻防。危ないヒジやハイキックも貰いかけ、またその逆に仕掛けるヒジや蹴りもあり、勢い衰えぬホントーンレックに手を焼き、互いに主導権を掴めないまま終了。

側転ハイキックで翻弄する作戦も、マットに手を付いては駄目とレフェリーに注意を受けることになるホントーンレック
渡辺の精神力で粘る勝負も小林の積極性に優れず引分けで雪辱成らず

◆69.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.渡辺健司(伊原稲城/68.9kg)
.VS
小林準(RIKIX/69.0kg)
引分け / 0-0 (29-29. 29-29. 29-29)

渡辺は昨年12月に敗れた相手と再戦も、勝ちは拾えず。しぶとさ、粘りは一級品ながら36戦して13回目の引分け。

強い斗吾が見られた一発で仕留めたボディブローで悶絶

◆73.0kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.0kg)
.VS
ペットウボン・ソー・ボーロークラビー(タイ/72.65kg)
勝者:斗吾 / KO 1R 2:36 / カウント中のタオル投入

斗吾がボディブロー一発で悶絶の久々のKO勝利。

90kg超えの戦い、天田ヒロミここにあり。倒すか倒されるか、我慢比べの打ち合いを制す

◆ヘビー級3回戦

天田ヒロミ(天田F&BS/92.5kg)
.VS
マウロ・エレーラ(アルゼンチン/98.5kg)
勝者:天田ヒロミ / 判定2-0 (29-28. 29-29. 30-29)

我慢比べの打ち合いの戦いをスタミナ勝負の僅差で粘り、勝利を導いたのは天田ヒロミ。

◆64.0kg契約3回戦

石井達也(藤本/64.0kg) vs 春樹(横須賀太賀/64.0kg)
勝者:春樹 / TKO 2R 2:03 / ドクター勧告によりレフェリーストップ

怪我で休養が続いていた石井達也が、春樹のバックハンドブローでダウン。足元フラつくダメージと、顔面カットによりドクターチェック、そのままレフェリーストップとなりました。更なる上位を目指していた中での敗戦は痛いところでしょう。春樹は日本タイトル戦線へ再浮上成功。

まさかのダウンを奪って「やった~」という表情の春樹、元チャンピオンを倒す波乱の結末
好戦的で打ち合った中でのHIROYUKIのローキック

◆54.0kg契約3回戦

HIROYUKI(藤本/54.0kg)vsジョッキーレック・ケーウセン(タイ/53.85kg)
勝者:HIROYUKI /判定 3-0 (30-29. 30-28. 30-29)

HIROYUKIは2年前に敗れた相手に雪辱。先手を打って試合をコントロール。反撃されても、たじろがずヒジでカットさせる攻勢も見せて結果は僅差ながら、成長の見えた勝利。

◆ミドル級3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.57kg)vs2位.本田聖典(伊原新潟/72.3kg)
勝者:今野顕彰 / TKO 1R 1:17

今野がヒジで本田の額をカットし、あっけなくドクター勧告によりレフェリーストップ

他、6試合は割愛します。

HIROYUKIの飛び蹴り。リズムに乗れば大胆な技も躊躇なくこなせる図太さを持つ
伊原ジムメイトとは若い絆のチーム

◆江幡ツインズ──本当の伝説の始まり

TITANS NEOSが第20回目を迎え、やがて10年が経つことに時の速さを感じます。2007年9月に江幡ツインズがデビューし、満9周年。2013年3月には睦が先に殿堂ラジャダムナン王座挑戦、9月のTITANS NEOS.16ではツインズでラジャダムナン王座に挑戦。2015年3月には睦が3度目の挑戦。あと一歩までいった試合もありつつ、獲れそうで獲れないのがムエタイ王座。首相撲の技術とポイント重点の置かれ方、そしてタイ選手の本場二大殿堂タイトルが懸かった時は他の試合にはない本気度が増し、勝って得るものの大きさ、負けて失うものの大きさがそこにあります。

他の価値の低い試合ではこれが逆になり、“勝って得るもの無し、負けて失うもの無し”では世界の称号が懸かっていても、計量を大幅にオーバーして来る選手もいるほど真剣度の違いを感じることがあります。と言っても普通に強いのがムエタイボクサー。タイトルが懸かろうと懸かるまいと、元チャンピオンやランカー、地方チャンピオンなど強いタイ選手に挑む江幡ツインズも向上心と集中力は生半可なものではないでしょう。

「新しい伝説を起こします」と、かつてマイクで語った江幡ツインズにとって目指すは再度のラジャダムナンスタジアム王座であり、現状ではこの道しかありません。これを兄弟で獲り、それから先が本当の伝説の始まりでしょう。

石井宏樹が引退して以降は、江幡ツインズが新日本キックのエース格であることは変わりない中、梅野源治が10月23日にディファ有明でのREBELS興行でタイ・ラジャダムナン系ライト級王座挑戦する同じ日に、江幡塁は新日本キックMAGNUM.42で、5月29日にタイ・ラジャダムナンスタジアムで判定で敗れた相手のセーンピチット・STDトランスポートと雪辱戦を行ないます。ノンタイトル戦ですが、日本のエース格争いでは負けられない、密度の濃さの戦いでしょう。

伝説を起こすという点ではプロモーターとして、小野寺力氏のKNOCK OUTイベント発表がありました。新しい道を切り開き、そこではテレビ放映での毎週レギュラー放送がある中で、契約選手らのメインイベント争奪戦が巻き起こりそうですが、新日本キックでの江幡ツインズとして新しい伝説を起こすことは、ラジャダムナン王座奪取、現地での防衛、2階級制覇、ルンピニー王座との統一、本物の強い男がファンの期待に応える道は、ここまで挑めれば一般マスメディアも注目することでしょう。また江幡ツインズだけではない若い世代も育ってきているので気を抜けない、次なる新日本キックのエース格争いも話題になってきます。

新日本キックボクシング協会次回興行は10月23日(日)後楽園ホール夜の部(17:00~)に於いてMAGNUM.42の開催で、ムエタイ王座を目指す江幡塁、重森陽太、緑川創、勝次らが出場。その中、緑川創は現役ラジャダムナン系ウェルター級2位と対戦。続いて、11月6日(日)ディファ有明(16:00~)に於いてKICK Insist6が開催され、瀧澤博人がノンタイトル戦ながら、現役ラジャダムナン系スーパーバンタム級チャンピオンを迎える大一番となります。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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梅野源治、NJKFに再来!

リングに登場するとムードが変わる梅野源治の存在感は格別

9月14日のKNOCK OUT記者会見で、試合を3日後に控えたキツい減量中の中、公開ミット蹴りを行なった梅野源治が9月17日、WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王座防衛戦を行ないました。これを前哨戦として10月23日(日)にREBELS興行でタイ・ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座挑戦が決定しており、更に12月5日のKNOCK OUT設立興行へ、予想されるビッグマッチが続きます。

過去、梅野のムエタイ最高峰王座挑戦は、2015年4月19日にREBELS興行でルンピニースタジアム認定スーパーフェザー級王座に挑戦し、チャンピオン.ペットモラコット・ウォー・サンプラパイ(タイ)に逆転の判定負けでした。今度の最高峰王座はこれに続く2度目の挑戦となります。

WBCムエタイ世界スーパーフェザー級王座は2014年11月15日にNJKF興行でジョムピチット・チューワタナ(タイ)との王座決定戦で判定勝利し、王座奪取しています。

◎NJKF 2016.6th / 9月17日(土)後楽園ホール17:00~21:15
主催:NJKF / 認定:WBCムエタイ・タイ国実行本部、NJKF

ローキックの鋭さだけで技量の差が現れた初回

◆WBCムエタイ世界スーパーフェザー級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.梅野源治(PHOENIX/58.97kg)
.VS
キース・マクラクマン(イギリス/59.6→58.42kg)
勝者:梅野源治 / TKO 2R 0:36
カウント中のレフェリーストップ / 主審 篠原弘樹

挑戦者キース・マクラクマンはWBCムエタイ・インターナショナル同級チャンピオンで、前日計量で630グラムのオーバーから落として再計量でパス。梅野はこの階級で減量がかなり苦しくなってきたと言われるもリミット一杯のパス。梅野は、楽勝と予想されたとおり、1Rの様子見でキース・マクラクマンの技量を見極めると攻撃力で差を付け、ロープ際でのパンチ、ヒザ蹴り、ヒジ打ちなど連打しスタンディングダウンを奪い、カウント中そのままストップされ、防衛に成功。

ロープ際で滅多打ち、ダメージを与え、戦意も喪失させた梅野源治
マッチョな勝利ポーズは毎度のアピール

◆66.5kg契約 5回戦

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(ESG/66.45kg)
.VS
アローン・ゴンザレス(カンボジア/66.05kg)
勝者:健太 / 判定3-0
(主審 山根正美 / 副審 小林 30-28. 篠原 30-28. 和田 29-28)

梅野源治以上に試合頻度が高い健太は、昨年9月27日から10戦9勝(2KO)1分と引分けを挟んで9連勝中。WBCムエタイを頂点に活動が続くニュージャパンキックボクシング連盟の中で、11月27日(日)にインターナショナル・ウェルター級王座挑戦を予定しています。来年にはWBCムエタイ世界王座を視野に入れている様子の健太が、その前哨戦で攻撃力だけはゴンザレスの派手さが目立つも、ヒジ打ちと乱打戦の強さを見せアローン・ゴンザレスに判定勝利。

健太はベテランの落ち着いた攻めで勝機を見出す
傷だらけになっても攻め返して勝利に導いた鈴木翔也

◆60.0kg契約5回戦

NJKFスーパーフェザー級チャンピオン.鈴木翔也(OGUNI/60.0kg)
,VS
J-NETWORK同級チャンピオン.鷲尾亮次(レグルス池袋/60.0kg)
勝者:鈴木翔也 / 判定2-1
(主審 宮本和俊 / 副審 小林 49-48. 篠原 49-48. 山根 48-49)

WBCムエタイ日本スーパーフェザー級挑戦者決定戦と謳われた契約ウェイトの5回戦。チャンピオン.悠矢(大和)にノンタイトルで対戦予定が、悠矢の負傷欠場により、鈴木翔也との挑戦者決定戦となりました。2月に互いが各団体の同級チャンピオンになり、5月に互いが対戦し、ヒジによるTKOで鷲尾亮次が勝利していますが、今回は僅差で鈴木翔也が勝利、挑戦権を掴みました。

大和侑也が最初のダウンを奪った相打ち気味の左フック

◆67.0kg契約3回戦

大和侑也(大和/66.82kg)vs山崎遼太(OGUNI/67.7kg)
勝者:大和侑也 / TKO 3R 0:42
カウント中のレフェリーストップ / 主審 和田良覚

700グラムオーバーの山崎でしたが、第2Rに大和侑也が相打ち気味の左フックを当てダウンを奪った後、前蹴り気味の蹴りがボディにヒットし2度のダウンを奪い、第3Rにはボディへ左フックを決めウェイト差に問題なく悶絶のノックアウト。

◆NJKF女子(MINERVA)スーパーバンタム級王座決定戦3回戦

小田巻洋子(WSR池袋/55.13kg)vs杉貴美子(Ten clover/55.23kg)
勝者:杉貴美子 / 判定0-3
(主審 篠原弘樹 / 副審 宮本 28-30. 小林 28-30. 和田 28-30)

杉貴美子が接近戦でパンチをコツコツ当てペースを掴み、小田巻の蹴りの距離を潰し判定勝利して王座奪取。階級をひとつ下げ、バンタム級も狙いたいとアピール。
※他、6試合(割愛します)

接近戦でパンチをヒットさせ小田リズムを狂わせた杉貴美子

◆梅野源治はキックボクシングを新たな進化に導く第一人者となる?

NJKF興行ながら、WBCムエタイ世界チャンピオンとして出場している梅野源治の存在が注目されるこの秋から来年にかけてのイベントです。梅野源治の強さの魅力は、所属ジムがフリー(特定の団体に加盟しない)であるが為、昔と違い、同様のフリーのジム・プロモーションも多く、日本のトップクラスやタイのランカーとも交流が盛んで実力が測れ、タイでのトップクラスにもマークされるなど、存在感が証明がされてます。

来月のラジャダムナン王座挑戦も、昨年12月現地でヨードレックペット・ソー・ピティサックにヒジによるKOで敗れている相手ですが、今度の勝算はやや高いように思います。ただ、二大殿堂タイトルが懸かると本気モードになるタイ選手の底力は、過去にもあるように、勝ちに徹するしぶとさが倍返しとなってくるので要注意でしょう。

梅野の昨年は7戦4勝(2KO)3敗、今年はこれで5戦3勝(2KO)2分。8月のヤスユキ戦では偶然のバッティングによる顔面の負傷をしつつ、驚異的回復で今回の試合をこなし、あと2戦は予定されるので、怪我やタイトルマッチがあってもかなり速いペースです。12月から始まるKNOCK OUT興行でのテレビ放映でも梅野源治がエース格として登場の可能性高く、昭和のキックのテレビ全盛期には及びませんが、マイナーイメージのキックボクシングから新たな進化に導く第一人者となりそうです。

NJKF次回興行は10月30日(日)、ディファ有明で、若手会長の若武者会主催のDUELが開催。NJKF 2016 7thは、11月27日(日)後楽園ホールで行なわれます。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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