いまだ終息が見通せない新型コロナウイルスの感染拡大。39人の陽性者が確認されている福島県で、多くの人が口にする言葉がある。

「あの時と似ている」

あの時、とは未曽有の大震災と大津波、原発事故が起きた2011年の事だ。誰もが思い出す9年前。しかし、良く話を聴くと相違点も見えてくる。何が似ていて何が似ていないのか。

原発事故で放射性物質が拡散されて来年で10年。福島の保護者たちは、再び〝見えない敵〟からわが子を守らなければならなくなった(福島県立博物館で撮影)

◆原発事故でまき散らされた放射性物質と同じだね……

福島駅近くのラーメン店。日曜の昼下がりだというのに店内は閑散としていた。男性店主は店先で日向ぼっこをしている。周囲の居酒屋やカラオケ店は軒並み、休業中。店主は苦笑いを浮かべながら話した。

「福島は車社会だから、日曜日だからと言っても、もともと決して人通りが多いわけじゃ無い。でも、今はさらに人が歩いていなくてガラガラ。売り上げ? 4分の1に減ってしまったよ。緊急事態宣言が出されてから一気に人通りが減ったね」

男性店主は言う。「目に見えない物への恐ろしさという意味では原発事故でまき散らされた放射性物質と同じだね。でも、今回の方がより恐ろしい気がするなあ。放射線はすぐに健康状態に変化は現れないけれど、コロナは命にかかわるからね。有名人も亡くなったし……」

◆今年の高校1年生たちは、2011年に卒園式や入学式が出来なかった世代

県立高校の入学式が行われた今月8日、中通りのある高校では、新入生の母親が複雑な表情を浮かべていた。

「難しいですよね。今を大事にするべきかどうか……。学校に行かれないのはかわいそうだなという気もするし、通学する事で拡がってしまってはいけないし。もっと単純な事を言えば、娘が家で毎日ぐうたらしているのもどうかという想いもあります」

実は、今年の高校1年生たちは、2011年に卒園式や入学式が出来なかった世代。「だから余計に、高校の入学式くらいは予定通りにさせてあげたかったという想いがあるんですよ」と母親は言った。

「子どもによっては卒園式が無くなってしまったりしましたからね。うちの子は日程をずらしてやってもらいましたけど。まさか9年経ってこういう事になるなんて考えもしませんでした」。

◆「再び選択を迫られている親」のいら立ち

そして、あの時の「選択」に想いを馳せた。表情も口調も、それまでより一段と険しくなった。そこには「再び選択を迫られている親」のいら立ちのようなものが表れていた。

「逃げるのか残るのか。私たちは原発事故後に選択を迫られました。毎日、そればかりを考えながら生活をしていました。それで結果として中通りでの生活を選びました。あの時も様々な情報が流れて、子を持つ親の間でも意見が分かれて。食べ物に関しても、『検査しているのだから大丈夫』と思いたい自分がいる。あの頃のように、また子どもを学校に行かせるかどうかの選択を迫られるのですね。でも、学校はやっているのにうちの子だけ通わせないで家に居させるというのも……」

小学校の入学式では、ほとんどの新入生たちがマスク姿。被曝リスクも感染リスクも〝風評〟や〝大げさ〟では無い。出来る防護を各自がするしか無い(福島市内の小学校で撮影)

◆ウイルスにも放射性物質にも色が付いていたら良いのにね……

福島市内の理髪店で働く女性は「ウイルスにも放射性物質にも色が付いていたら良いのにね。真っ赤に見えるとかさ。そうすれば感染や被曝のリスクから遠ざかる事が出来るのに……」と苦笑した。

別の女性は「放射線は線量計で数値として可視化出来るからまだ良かった。線源から子どもを遠ざける事が出来ました。でも、ウイルスの存在は数値化出来ません。モニタリングポストでも分からない。だから余計に防ぎようが無くて怖いです」と表情を曇らせた。

同じようで違う〝目に見えない物への恐怖〟はいつまで続くのか。放射線防護への意識が高い人ほど新型コロナウイルスへの意識も高く、既に疲弊しているように映る。

◆10年目に繰り返される「子どもをどう守るのか?」

そんな苦悩をよそに、福島県が毎日のように発しているメッセージがある。感染者が新たに判明した際に開かれる記者会見。最近では、もはや早口での棒読みにすらなってしまっている言葉にこそ、内堀県政の方向性が透けて見える。

「県民の皆様にとっては不安や恐れの気持ちがあろうかと思いますが、原発事故による風評に苦しめられている福島県民だからこそ、新型コロナウイルスの陽性となった方やその関係者に対する差別や偏見は、なさらないよう切に願います」

もちろん、感染してしまった人への中傷や攻撃は許されるものでは無い。どれだけ用心していても感染してしまう事もあろう。しかし、それと「原発事故後の風評」とは全く異なる。

福島県の内堀雅雄知事は、〝風評〟の名の下に放射能汚染の現実から目を逸らし続け、「もはや問題無いのに」と避難者切り捨てを着々と進めている。それを混同するあたり、「群馬訴訟」の控訴審で、「低線量被ばくは放射線による健康被害が懸念されるレベルのものではないにもかかわらず、平成24年(2012年)1月以降の時期において居住に適さない危険な区域であるというに等しく、自主的避難等対象区域に居住する住民の心情を害し、ひいては我が国の国土に対する不当な評価となるものであって、容認できない」と避難指示区域外からの避難継続の相当性を否定してみせた国と同じだ。

子どもをどう守るのか。原発事故から10年目に突入した福島は、再びあの頃と同じ課題に直面している。そして、行政が子どもたちを積極的に守ろうとしているように見えないのもまた、あの時と同じだ。

県保健福祉部の幹部は「迅速で正確な情報発信に努めるので、県民の皆さんも正しく理解していただきたい」と話す。福島市保健所の担当者も「過剰に不安を抱かず、正しく恐れていただきたい」と市民に求める。これも、あの時と同じ。県や市町村、そしてアドバイザーと呼ばれる専門家が不安の鎮静化に力を注いでいるのも原発事故後の構図と重なる。そして、高校生たちが求める県立高校の休校は実現していない。

ある県議は「県政は狂ってるよ。内堀知事では県民は守られないと、そろそろ気付いて欲しい」と語気を強めた。「あの頃と同じ」とため息交じりに振り返るのは、これで終わりにしたい。

今なお進行形の放射能汚染。福島ではこれにコロナ禍が新たに加わった(二本松駅前で撮影)

▼鈴木博喜(すずき ひろき)

神奈川県横須賀市生まれ、48歳。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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アルベール・カミュの『ペスト』が全世界で読まれているという(日本でも4月までに100万部の累計販売)。NHK(100分で読む名著)でも『ペスト』が紹介されたように、今回の新型コロナウイルスを機会に、人類と感染症の関係が捉え直されようとしているようだ。

カミュはペストを人間の逃れがたい不条理(運命)と措定したが、そこに人間社会が生き生きと描かれていることに気づかされる。じっさいに天変地異や疫病はつねに人間社会の在りようを浮かび上がらせ、社会システムの変容をもとめる。それは古代・中世においては宗教であり、近代においては戦争と革命。現代においては、社会インフラの変革ではないだろうか。

在宅テレワークはそのひとつであり、サラリーマンにとって慢性的な苦痛だった混雑通勤そのものが、いまや不合理なものとして見直されている。通勤用のスポーツ自転車が売れているという。サイクリストとしては、幹線道路の左端に刻印された自転車走行マークこそ、人類の未来への道であると宣言しておこう。

それはともかく、人類史はたびかさなる感染症との戦い、あるいは共存共栄の歴史であった。日本史に引き付けていえば、本欄「天皇制はどこからやって来たのか」で扱ってきた古代天皇制権力(奈良王朝)こそ、感染症(天然痘)による産物であった。

奈良・東大寺の大仏(盧舎那仏)

◆天然痘がもたらした、古代仏教国家

文献史料では「瘡いでてみまかる者、身焼かれ、打たれ、くだかるるが如し」(日本書紀)が天然痘の初出である。この「瘡いで」は「かさぶたができた」であり、腫物が「あばた」となる意である。死ぬ者には腫物ができて、高熱がその身を焼く。そしてのたうちまわり、最期は身を砕かれるのだ。

敏達帝(推古女帝の夫)の崩御は、この天然痘が原因だとされている。不比等の子・藤原の四兄弟=藤原武智麻呂(南家開祖)、藤原房前(北家開祖)、藤原宇合(藤原式家開祖)、藤原麻呂(藤原京家開祖)も天然痘に斃れている。この疫病の流行こそが、聖武帝による奈良の大仏(盧舎那仏)および国分寺・国分尼寺の建立へとつながるのだ。したがって古代仏教国家のモチーフは、仏教の修行・勧進による病魔の退散だったといえるだろう。

何度かの流行をかさね、やがて天然痘は誰でもかかる疾病となった。平安時代の女性(紫式部や清少納言)に「あばた」が散見され、源実朝、豊臣秀頼などの歴史上の有名人物の顔に「あばた」があったのは、もはや天然痘が免疫化をともなう国民的な病だったことの証しであろう。

天然痘の被害を伝えるアステカの絵(1585年)

種痘という免疫療法によって、人類が天然痘を克服するのは18世紀に至ってからであった。記憶にあるだろうか? ウイルスを付けたY字型の二又針で上腕を焼かれた記憶は、いまも鮮明だ。日本における根絶は1955年、世界では1977年のソマリア青年の発症記録が最後とされている。人間に感染する感染症で、人類が根絶できた唯一の例である。

いまや、共存するかのごとき各種のインフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、急性呼吸器症候群(SARS-COVID-2)、マラリア、結核、AIDS、デング熱、水痘・帯状疱疹、単純疱疹、手足口病、等々。いずれもウイルスによる、細胞乗っ取り行為である。ウイルス自体は細胞を持たないことから、生物ではないとの医学者の見解もある。生きて(感染細胞を増殖させて)はいるが、生物の要件を充たさないとの否定的な知見であろう。変異細胞から新生物になるという点では、がん細胞も生き物ということになろうか。こちらは人類の変異・進化の要件でもあるという。ウイルスはいずれも、自然の中に生息していたものが、変異と環境変化で人間社会に入ってきたものだとされている。

17世紀欧州でペスト大流行の際、フランスの医師が考案したと言われる「くちばしマスク」と革手袋、長コート着用による感染防御服(1656年)

◆感染症で社会が壊れ、再生される

さて、ウイルス感染が人類の歴史を変えるというのが、じつは本稿の命題である。盗賊まがいの十字軍遠征がペスト(黒死病)をもたらし、教会権力の崩壊とともに宗教改革(マルチン・ルターら)の誘因となったのは史実である。

第一次大戦の終焉はロシア革命によってではなく、スペイン風邪(スペインは中立国であったために、情報統制がなかったので、情報の発信源としてスペイン風邪なる呼称が生まれた)の猛威によるものであった。一説には5000万人の死者、1億人という説もある。アメリカでは、パンデミックの初年に平均寿命が12歳になったという。近年の研究では、スペイン風邪はH1N1亜型インフルエンザウイルスによるものと判明している。

黒死病が宗教改革をもたらし、西欧における印刷技術や火薬の発明(じつは中国が源流)によって近世の扉がひらかれる。スペイン風邪によって戦争が終息し、戦間期革命をもたらす。それでは、今回の未曾有の感染力をもった新型コロナは、われわれにどんな変革をもたらすのであろうか。

さしあたり我々は、通勤をしない在宅ワークを手にしつつある。感染源である電車通勤の代わりに、自転車通勤という方法を手にしている。そして経済のまわし方も、ベーシックインカムという試みを現実のものにするかもしれない。未曾有の疫病パンデミックによって、従来型の資本主義と経済政策が行き詰ったとき、本気で取り組むべきテーマがそこにある。いっしょに考えていきましょう。(この連載は不定期掲載です。次回は疫病と侵略者など)


◎[参考動画]【今から100年前のスイス】2万5千人の死者を出したインフルエンザの大流行(SWI swissinfo.ch)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など。

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3月15日、社会福祉法人ピースクラブ(大阪市内)で「桜井昌司Specialday」を開催した。布川事件の冤罪被害者である桜井さんが29年の刑を終えて千葉刑務所から出所し、普通の生活を取り戻しながら再審を闘う姿を追い続けたドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」(井手洋子監督)の上映会と、桜井さんのトークライブの2部構成。昨年秋にがんを宣告され、現在食事療法を続ける桜井さん。かなり痩せられたが、トークも歌もこれまで以上の迫力。冤罪を無くすため、全国を駆け回る桜井さんにエールを送るつもりで企画したが、逆に「もっと頑張れよ」と背中を押された1日。迫力満点のトークの書き起こしを前編・後編2回に分けて紹介します。(構成=尾崎美代子)
※字数の関係で一部削除したほか、分かりやすく加筆、訂正しています。


◎[参考動画]ショージとタカオ予告編NEWバージョン2

2019年5月27日、東京地裁で「布川国賠」で勝訴判決が下された。入廷する桜井さん

◆神様が俺に新しい苦しみを与えた

去年9月にガンとわかり、10月に医者に言われました。いきなり緩和ケアだと。何で痛くも辛くもないのに、そう言うのか!と。その後、直腸癌のステージ4で肝臓に転移していると言われました。肩から薬剤を2週間に一度入れると言われた。わたしは嫌だから「先生、何もしなかったらどれくらい生きれるの?」と聞いたら「1年だ」と。「薬入れたら何年?」と聞いたら「2年」と言われた。

なんだ変わらないじゃないかと思ってね、「じゃやりません」と言いました。すると先生が「凄いですね」という。「何が?」と聞くと、「桜井さんのように余命1年と言われ、生き生きと活動している人はいませんよ」と。私は「だってダメでもあと1年生きるんでしょ? その間に何があるかわからないじゃないですか」と言いました。

今、swingマサさんの紹介で食事療法をしています。魚、肉、小麦粉、乳製品、卵、化学調味料を一切食べない。これで治った人がいる。私も必ず治ります。いや、治してみせようと思ってね(拍手)。もし治ったら、医者なんかいらないじゃないいですか?(笑)

私は刑務所に29年間入った後、針の穴にラクダを通すくらい難しいという再審で無罪を勝った。美香さんに「桜井さんは私のヒーローです」なんて言って貰え、たくさんの人たちに希望を与えることができた。こんなつまんない男が……。で、今度は国賠裁判にも勝った。間違ったことはダメだと通った。今度がんに勝ったら俺どうなるんですか?(笑)。自分はがんになって辛いと思ってないです。新しいチャレンジを神様が俺に与えてくれた、新しい苦しみを用意してくれたと思って、今ワクワクしながら、毎日過ごしています。(「酒と泪と男と女」を熱唱)

西成の難波屋で毎月14日(矢島祥子さんの月命日)に行われる「夜明けのさっちゃんズ」ライブで歌う桜井さん

この後は、大阪でいつもピアノ伴奏してもらっているキョウちゃんの伴奏で刑務所で作った歌を何曲か歌います。刑務所で「孤独を知る時」という詞を作りました。「人は苦しみによって孤独を知るのであろうか。悲しみの深さが孤独を教えるのだろうか。僕は喜びの時、幸せな想いの時、一人きりの喜びと幸せの、その虚しさに孤独を知った」という詩です。   

千葉刑務所に入っている人は、罪を犯した人も無実でもみんな寂しいし、辛いは同じ。でも私は皆さんに支援してもらって「今日、佐藤さんのコンサートがあって、俺の歌が好評だったって」とか言っても、誰もわからない。「桜井さん頑張って」と言ってくれる人がいて、でもその喜びは誰にもわからない。幸せの時「よかったね」と分かり合える人がいることが、人間の本当の喜び。悲しみや辛さが孤独ではないと私は思いましたね。刑務所の中で、詩人だったでしょ、私(笑)。そんな中で「闇の中で」という歌を作りました。聞いてください。(「闇の中へ」を熱唱)

「親孝行したい時に親はなし」と良く言います。私は親父が1991年、お袋が1976年に亡くなりました。刑務所にいたので葬式に出れなかった。そのせいか、今でも2人が生きてる気がちょっとしている。人間って100%はないとそれで教わった。あの時、葬式に行って「亡くなったんだ」とケジメつけたかったができなかった。だから、今でも生きているんだという気持ちが少しあって、それはそれでいいと思ってます。人間どんなことでも100%はない。でもやっぱりもう一度親父とお袋に会いたかった。言いたいことは1つ。「産んでくれてありがとう。本当に幸せな人生だった」と伝えたかった……(涙)。あとは何もない。皆さん、もし親が生きていたら大事にしてくださいね。なんでもいい親孝行は、会いに行くだけでもいいから。(「鼻」を熱唱)

上映会&ライブのあとの親睦会で支援者と談笑する桜井さん

◆人の命ほど大事なものはない

自分は73歳になるとは思わなかった。人生はあっという間ですね。さっきの映画に出ていた杉山と弁護団長さんが亡くなったし、「この人も、この人も」と亡くなった人がいました。人間って本当に生きていればこそ、やり直しができる。人の命ほど大事なものはないと思っています。

善人とか悪人とか関係ない。誰でも一度きりの命だから、どんな悪人でも許して、国家は大事にしないといけない。日本という国がなぜダメかというと、悪い人は殺してもいいという人が沢山いるからです。犯罪者を隔離すればいいという考えは間違っています。覚醒剤で捕まった人を刑務所に入れても何にもならない。あの人達は心を病んでいるんだから。病人を直すところ作るべきなのに、ただ逮捕して刑務所に入れればいいという。昔から、臭いものに蓋すればいいというのが日本なんです。違うじゃないですか。間違った人を大事にする社会だったら……と思います。

残念ながら、才能の違いって世の中ある。頭のいい人も確かにいる。でも安倍さんみたいに頭の悪い人でも首相になれている(大爆笑)。はっきり言って彼は簡単な漢字も読めないでしょ。正直言ってバカが総理になったら駄目です。だから、今、こんな政治なんです。

今のコロナ対策は何ですか? マスクなんてあまりに役に立たない。コロナの菌は風邪のウイルス菌の何百分の1なんですよ。だからマスクを突き抜ける。それなのに学校を一斉に休めと。子供はまだ何でもないのに。親はどうするの? 台湾のように、学級で1人でも出たら学級閉鎖して、2人になったら学校閉鎖するとかしないと駄目。それだと安心して学校にいけるのに。ロクでもないですよ、日本は。

私はやっぱり大事にすべき命があると思っています。釜ヶ崎にいる皆さんだって、ずっとまともに働いてきた人達じゃないですか。たまたま運が悪いだけ、たまたま自分にぴったり合う才能に恵まれなかっただけじゃないですか。もしも優しさが才能だったら、釜ヶ崎の皆さんは、全員金大持ちになっているかもしれません。そうでしょ! 口だけペラペラしゃべる小泉進次郎みたいなのが、顔がいいだけでちやほやされる。本当に日本の人たちはアホが多すぎます(大爆笑)。

何でも他人事だし、何でもワーとみんなで一過性でやって、すぐ忘れる。でもそういう中で目覚めないと、この国は良くならない。やっぱり目覚めた人は声出しましょうよ。ノーと言いましょうよ。世の中を変えましょうよ。私はそう言いたい。余命1年ですけど(笑)。何度も言いますけど、私は命尽きるまで、声を上げ続けます。

◆自分の運命は自分が招く

私は余命1年と告げられて思いました。運というのは誰が決めると思いますか? 天命? そんなのありません。人間は自分の運は自分が招くんです。何かあった時に「これは天命だ」なんて思ってはだめ。何をするか、どう行動するか、自分の考え方なんです。今ここを出て右に行くか、左に行くかは、その人の生き方すべてです。それが自分の運を寄せる。ですから何か悪いことがあったら「これは天命だ」とか「自分の力ではどうにもならない」とか思ってはだめ。大切なのは自分の思考や行動を変えること。私は確信を持っています。なんか凄い話になっちゃたね(「会場から「教祖様みたい」と笑)。なんかそんな気がしてますよ。運を運命にするのは自分だと確信持っています。私はがんになって食事療法を選んだ。これで運を自分で運命にするんだと思ってます。さあ余命1年か10年か、面白いなあ(笑)。

楽しいじゃないですか。わたしの人生観は明るく楽しくです。人生は一度限り、今日は1日限りと思ったら、苦しいこと辛いことは誰にでもあるんですよ。でもどんな中でもいいことはあるんです。だったら、その楽しいこと嬉しいことを、自分で100%だと思えばいいんです。皆さんも辛いことの中から、嬉しいことを見つけてください。嬉しいことをどんどん自分に寄せていけば、きっといい人生があなたに来ますから。(完)

◎布川事件冤罪コンビ「ショージとタカオ」のショージさん、大阪トークライブ──シャバに出てきて23年、「桜井昌司」で本当に良かった!
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=34875
〈後編〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=34881


◎[参考動画]布川事件 桜井昌司氏講演会(なにぬねノンちゃんねる2018/06/02)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

最新刊!月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 菅直人元首相が語る「東電福島第一原発事故から九年の今、伝えたいこと」他

4名の患者及びその遺族が、滋賀医大附属病院泌尿器科の河内明宏科長と成田充弘医師を相手取り、440万円の支払いを求める損害賠償請求を大津地裁に起こした(事件番号平成30わ第381号)事件の判決言い渡しが、14日大津地裁で15時からおこなわれた。

西岡前裁判長の転勤にともない、裁判長となった堀部亮一裁判長は「主文、原告らの請求をいずれも却下する」と飄々と短時間で判決言い渡しを終えた。退廷しようとする裁判官に向かい傍聴席から「ナンセンス!」の声が飛んだ。

この事件の期日には、これまで「患者会」のメンバーが裁判前に集合し、大津駅前で集会を行ったのち傍聴を埋めるのが常であったが、判決日は折からの「新型コロナウイルス」への配慮から、「患者会」は集会や傍聴の呼びかけをおこなわなかった。したがって本来であれば判決を裁判所の外で待ち受けていたであろう、約100名(毎回裁判期日には100人ほどの人が集まっていた)の姿はなく、静かな法廷のなかで冷酷無比な判決言い渡しの声が響いた。

判決言い渡し後、滋賀弁護士会館で記者会見がおこなわれた。当初は16時開始予定であったが、諸事情で開始が16時半過ぎへとずれこんだ。井戸謙一弁護団長が判決を解説した。

この日の判決を解説する井戸謙一弁護団長

「今回の判決は現実に起こった人権侵害を救済しなかった点で、不当な判決であると考えています。判決を30分ほどで読んだばかりで、弁護団としての見解は定まっていませんが、私の評価を申し上げさせていただきます。この事件は説明義務違反を理由とする損害賠償請求事件で、実際に施術しようとした成田医師が小線源治療の経験がなかった。そして同じ病院内で大ベテランである岡本医師の治療をうけることができる、と説明しなかった。説明義務違反が違法であると、その損害の賠償を求めた事件です。一般的に成田医師が小線源治療をしようとした患者に対して、同じ病院内で別のベテラン医師の治療を受けることができる。ということについて説明する義務があるかどうかということについて、裁判所の判断は『すべての患者に対して、一律に他の選択可能な治療として、岡本医師による小線源治療を説明しなければ、説明義務違反になるとはいえない。あくまで患者の意向、症状、適応などを踏まえ、個別に診療計画上の説明義務の存否を判断する』というのが判断です。一律に説明しなくともよい、個別の事情によっては説明する必要がある、そういう判断です。

なぜそういう判断になったのかについては、かなり細かい事実を認定し、かつああでもない、こうでもないといろんなことを検討しています。その中で『一律に他の選択可能な治療として説明の必要がない』を導いた理由としては、成田医師が行おうとした手術方法。これは成田医師と放射線科の河野医師がペアで行います。成田医師は小線源治療の経験がないとしても前立腺癌についてはベテラン医師である。河野医師は放射線医師として多数の症例を持っているということで、この二人が行おうとした治療は『大学病院での小線源治療の医療水準を満たしている』という判断をしています。彼ら行おうとしていた手術が、医療水準を満たしていたのかどうか、という問題提起を(原告は)していなかったのですが、裁判所は『医療水準を満たしている』と判断しています。

補助参加人として判決を傍聴した岡本圭生医師

一方で岡本医師による岡本メソッドは、『成田医師たちが行おうとしていた治療とは質的に異なる治療である』と述べています。岡本メソッドにについて被告側は、裁判の中でその評価を貶めて、誹謗しようとしてきたわけですが、それについて裁判所は採用していません。河野医師は小線源治療は『放射線医がしっかりしていればいいんだ。泌尿器科医が放射線医の指示通り針を刺すだけでよいので、泌尿器科医の役割は小さなものだ』との趣旨の証言をしましたが、それについても裁判所はその考え方を採用していません。

ただ成田医師が行おうとしていた治療と、岡本医師が実施していた治療は同一病院内の選択可能な治療、という位置づけになっており、ここの理屈がわかりません。『質的に違う』と言っているわけです。

そのあとに4名の原告の方の判断ですが、お二人の方は『岡本医師の治療を受けたい』ということで滋賀医大にかかられたかたです。しかし岡本医師にまわされないで、成田医師が治療をしようとしていたのですが、このお二人については『説明義務はあった』と認めています。ただそれでも請求が棄却されているのは、結果的に岡本医師の治療を受けることができた。これにはいろんな経緯があったわけですけども。結果的に岡本医師の治療を受けることができたのだから、損害はないでしょうという評価のようです。

あとのお二人については『法的な説明義務違反までは認められない』という判断です。ただ『道義的にはともかく』という言葉がついているので、医師の倫理上は説明すべきであったと、暗に裁判所としては言いたいようです。

非常に残念なのは、この判決の『説明義務』のとらえ方が非常に狭いことです。質的に異なる治療方法が同一病院内であるわけですから、説明して患者が選択する機会を与えるべきである。それが患者の自己決定権を保証する医師の責務であると考えます。裁判例でも説明義務の範囲は、どんどん拡張される流れにある中で、説明義務違反の範囲を非常に狭くとらえたのは、大変残念な判決だと思います。

もう一点は、説明義務違反を認めていながら、結果的に岡本医師の治療をうけることができたから、損害はないだろうという判断です。結果的に岡本医師の治療が受けられたといっても、岡本医師の問題提起があったから岡本医師の治療を受けることができた。それがなければ岡本医師の治療を受けることができなかった可能性が高いわけで、原告の精神的・心理的な苦痛が法的保護に値しない、ということです。しかしそれは、精神的損害のとらえ方を非常に狭く評価するものであって、この判断も承服しがたいものがあります。

判決全体としては、被告が一番力を入れていたのは『治療ユニット論』というもので、成田医師が行おうとしていた治療は、岡本医師をリーダーとするチーム医療、医療ユニットとして計画されていたのだから、成田医師が自分が未経験だと説明する義務はなかった。これが一番被告が力を入れていた主張です。しかし、それについて裁判所は、その主張は採用していません。岡本メソッドの評価を低からしめようとした主張にも、裁判所は乗っていません。ですから主な事実認定についてはこちらの主張が取り入れられています。成田医師が『小線源治療をあまりやる気がない』と発言した事実も取り上げられています。いろんなところでこちらの主張は取り上げられているのですが、結論として説明義務違反のとらえ方が狭く、かつ損害のとらえ方が狭い。請求棄却との判断になった。そのことにより中身的にはこちらの主張を取り入れたにしても、患者の人権救済の役割を果たさなかった。極めて残念です。」

ついで、この日法廷で判決を聞いたAさんが感想を述べた。

法廷で判決を聞いたAさん

「意外な判決だと感じました。この裁判で私は3つ課題があり社会に訴えたいと考えております。一つ目は(成田医師が)未経験であって施術しようとしたこと。私が知らないことをいいことに、モルモット扱いしているという点です。こういうことが許されてよいのか。これが説明義務違反です。医師の育て方に問題があるのではないか。二つ目はその事実を私が知ったのは、岡本先生の内部告発によってです。それによって救われました。しかし日本の社会ではまだ人権が守られない。権力の暴走を止められない。三つめは岡本医師が、職を賭して阻止してくれ、23人の手術をしてくれ、(仮処分勝利により)待機患者50数名の命を救ったことです。敬意と感謝の念に堪えません。ありがとうございました」

その後に、補助参加人としてこの日も判決を傍聴した岡本圭生医師からのコメントがあった。

わたしはこの裁判を提訴から判決まですべて傍聴してきた。この原稿も予定稿では原告勝利を前提としたものを準備していた。

14日大津地裁に早めに到着し、裁判長が変更になっている(転勤はあらかじめ告げられてはいたが)担当表を見て、嫌な予感が浮かんだ。法廷で「原告の請求を原告らの請求をいずれも却下する」との裁判長の声をきいたとき、思わず「えっつ!」と声を出してしまった。

井戸弁護士の解説にある通り原告側の主張が、かなり取り入れられているとはいえ、法廷での証言内容や態度を考えると被告たちには、主文にしか注意を向けないだろう。民事の裁判では法律家には理解できても、一般市民感覚では「訳の分からない」文章や判断が横行する。そういった判決や裁判官に当たるたびに、裁判所や司法への信頼は薄れ、司法への期待も希薄になる。そういった意味では、結果ゼロ回答の判決を出した、この裁判の合議体はわたしにとって、「また司法への信頼を限りなく低減した」裁判官たちであった。判決言い渡し後に法廷に響いた傍聴者の声に、私も同意する。

ナンセンス!

◎カテゴリーリンク《滋賀医科大学附属病院問題》

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

最新刊!月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

3月15日、社会福祉法人ピースクラブ(大阪市内)で「桜井昌司Specialday」を開催した。布川事件の冤罪被害者である桜井さんが29年の刑を終えて千葉刑務所から出所し、普通の生活を取り戻しながら再審を闘う姿を追い続けたドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」(井手洋子監督)の上映会と、桜井さんのトークライブの2部構成。昨年秋にがんを宣告され、現在食事療法を続ける桜井さん。かなり痩せられたが、トークも歌もこれまで以上の迫力。冤罪を無くすため、全国を駆け回る桜井さんにエールを送るつもりで企画したが、逆に「もっと頑張れよ」と背中を押された1日。迫力満点のトークの書き起こしを前編・後編2回に分けて紹介します。(構成=尾崎美代子)
※字数の関係で一部削除したほか、分かりやすく加筆、訂正しています。

3月15日大阪市内で開催された「桜井昌司SpecialDay」のポスター

◆どうせ刑務所に行くなら頑張ろうと

皆さん、こんにちは! 映画「ショージとタカオ」、久々に見ました。23年前にシャバに出てきて、ドラマチックな自分の人生を確認したところです。「桜井昌司でよかった。刑務所に行ってよかった」と改めて思っています(笑)。多分ひと様には経験できない人生を確実に歩みましたからね、間違いなく。人生というのは真面目に生きていても、いいことばかりあるわけでもない。でも一生懸命やらなければ何も味わえないと、自分で思いました。29年刑務所に入りましたが31歳で千葉刑務所に行く時、突然パッと「人生は一度限り、今日は一度限りだ」と思ったんです。

刑務所は働くところ、どうせ働くなら一生懸命に働こうと思った。シャバでまともに働いたことなかったから(笑)。毎日真面目に靴を作って、3年目に法務大臣賞を貰いました。音楽クラブに入ってトランペット吹いて、佐藤光政さんに指導して頂き作詞作曲するようになりました。29年の刑務所生活は何も無駄になっていなかったと確信持って言えるようになりました。

刑務所生活は大変ですよ。看守は煩いし、意地の悪い奴もいる。千葉刑務所に入っているのは、人を殺めた人がほとんど。ちょっと肩に触ったりするとニコッとして「肩触んないで。俺、肩触られると殺したくなっちゃうから」なんていう人もいる。怖いですよ。でも自分はそういう人でも仲間だと思って付き合ってました。

そういう日々から考えるとシャバに出てなんでも自由にやれることが素晴らしいと感じた。出てから23年経って私は幸せや楽しさを感じない日はない。毎日が楽しい。刑務所29年入って本当によかったと思っています。

質問あったらどうぞ。なんでも正直に「自白」しますから(笑)


◎[参考動画]ショージとタカオ予告編 NEWバージョン1

質問 自白というのは、「私がやりました」というのですか?

桜井 そうです。出てきたとき「なんでやったと言ったの? やってないと言えば、警察が調べるじゃん」と良く言われた。でもそれは警察を知らない人。警察という職業は、捜査はするが真実を見抜くという職業ではない。あの人たち、一人一人は皆、真面目と思います。中にはどうしようもない警官もいるが。真面目な警官が、なぜ無実の人を犯人にしてしまうかというと、彼らはいつも人を疑うからです。警官が交番などで立ってますよね。何考えてるかというと、「何か悪いことしている奴はいないか」なんです。いつもいつも人を悪く見ている人間に、人の真実を見極める力はない。コイツは絶対やっているとしか思ってない。私が「やってない」というと「お前の言っていることは嘘だ」と必ずいう。そんな警察に朝から夜中まで「お前だ、お前だ」と言われる。

結婚している方、夫婦喧嘩したら、最後どう解決します?その喧嘩が解決せずにずっと続くようなもの。イジメにあっている方、そのいじめが毎日毎日続くと思ったらいいです。それを狭い部屋の中でやられると耐えられなくなってくる。人は信じてくれるから、本当のことが言える。「やってない」と言っても「いや、お前だ」「見た人がいる」とずっと言われる。そのいつ終わるかもしれない痛みに人間は負けてしまう。これは経験のない方にはわからないと思います。

警官たちは一旦疑いを持ったらなんでもやる。日本の警察組織は犯罪組織ですから。これは本当ですよ。一人一人はいい人かもしれないが……。経験しないとわからないこともあるが、本当に警察は悪いと思わないとダメです。

質問 無罪を勝ち取ったあと警察、検察、裁判官は桜井さんに謝りましたか?

桜井 僕たちが再審無罪になった時、検察は「無罪になったが、あれは裁判長が間違った」と記者会見で言いましたよ。映画で杉山(一緒に逮捕された杉山卓男さん。2015年死去)が「国賠は勝てない」と言ってましたね。日本の権力は間違いを認めない。だから杉山は国賠をやらないといったが、私はそう思わなかった。だって酷すぎるでしょ。無実の証拠を隠しておいて謝罪もなく「あいつの最初の自白が正しい」なんてダメでしょう。それで私は国賠やって、昨年勝ちました(大拍手)。

3月31日に再審無罪判決を勝ちとった西山美香さんもかけつけてくれた

税金で食ってる警察や検察が証拠を隠したりしたらダメです。でも私は警察、検察、裁判所も恨んでない。ただ、証拠を隠していたことが認められるようだと、今日会場にきている西山美香さん(湖東記念病院事件の冤罪被害者、3月31日日再審無罪判決を受けた)みたいに、やってないのに犯人にされてしまう人がまたでてくるから。検察が無実の証拠を隠したら、その責任を取らないとダメ。

真面目な警官が冤罪をいいとは思っているとは思わない。なぜ警官が嘘を言うかというと、嘘を言わないと警官でいられなくなるからです。組織として冤罪を作ったら、組織として有罪にしないとおかしいとなるから、嘘の証拠も作るし、裁判にで堂々と嘘が言える。もしそれが許されるとなったら、真面目な警官は嫌でしょう。私は真面目な警官を助けるためにも、嘘をついた警官は責任を問うべきと思います。証拠を隠したり、捏造した警官は責任取るという法律を作ってあげたい。

映画を久々に見て、23年前は私も本当に若かったですね。今、私は73歳になりました。私、年の取り方がわからなくて困っていたんですよ。29年も刑務所に入ってましたから(笑)。どうやってジジイになったらいいんだろうと。実は去年秋に癌が見つかり、食事療法で12キロくらい痩せました。それで今は「ああ、年寄りっぽくなったな」と思っています(笑)。

今日はまず「夜明けのさっちゃんズ」という、毎月西成の難波屋で14日前後にライブをやっていて、私も少し歌わせてもらっている皆さんの演奏で、2曲ほど歌わせてもらいます。

私、子供の頃から美空ひばりさんが好きでした。今日はシャバに出てきて初めて美空ひばりさんの「りんご追分」を歌います。「刑務所バージョン」で歌います。(「りんご追分」熱唱)

「夜明けのさっちゃんズ」の伴奏で歌う桜井さん

ピアノ(きゅうちゃん)とサックス(swing masaさん)の伴奏で歌う桜井さん

◆苦しみ、いつでも来い!

本当にお袋を思い出すとダメですね。親父の時はそうでもなかったが。お袋が死んだ時、悲しくて体の中を風が吹いて行きましたね。帰る故郷を失ってしまった。お袋が死んだ時、春風が吹いていたんです。「なんでお袋が死んだのに、春風が吹くんだって」。それが「記念日」という詩になりました。

刑務所の中で、私、詩人だったんですよ。刑務所の中では、例えば、寒さが見えるんです。寒い時、自分の体温と外から寒さが押し合いするのが見える。辛いですね。暑い時は暑いと眠りながら感じる。でも本当に辛いのは人の心です。看守の意地悪さとか仲間同士の諍い、それが本当に辛くって。でもそんな中で、私は国民救援会から「頑張りなさい」と支援していただいた。その人たちの心の優しさが嬉しい。辛い中で嬉しい。それで詩を作りました。

今はなかなか詩が作れない。奥さんは優しいし美人だし(笑)。いつも仲間たちと支えあって、好きな時に風呂入れて、好きなもの食べれて。そういう中で詩はわかない。だから私はいつもいうのです。「苦しみ、いつでも来い」と。幸せなんか価値がない、いや、幸せも大事だが、それだけでは詩とかは生み出さない。辛いことがあったら、それを乗り越えるから、人間はいろんな思いが出るのです。

もしも今、辛いことがある人は喜んでほしい。何かがあなたの中で生まれるでしょう。苦しいことに出会ったらラッキーと思ったらいいです。乗り越えたら、人生の中に絶対いいことがあると思ってます。でもなかなかそうこないです、苦しみって。わたしは23年間シャバで生きていて、苦しいことがなかなかない。でも毎日幸せだったら、つまんないでしょ? こんな人生。だから今、癌になって嬉しいんです。だってこれを乗り越えたら、なんかいいことあるじゃないですか。(後半に続く)


◎[参考動画]【アンコール上映】ドキュメンタリー映画『ショージとタカオ』予告編

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 菅直人元首相が語る「東電福島第一原発事故から九年の今、伝えたいこと」他

◆中小企業支援・生活給付金は6.3兆円と予算総額108兆円の0.58%に過ぎない!

「戦後最大の経済危機」に対して「かつてない、世界的にも最大級の経済対策をとりまとめ」と豪語、いや「やっているフリ」をくり返す安倍政権の、新型コロナウイルス不況への経済対策の全貌が明らかになりつつある。やはり「やっているフリ」のようだ。


◎[参考動画]現金給付が柱 過去最大108兆円の緊急経済対策(ANNnewsCH 2020/04/08)

もともと通常予算(昨年末に決定)であるのに加えて、総額108兆円の内訳は税金(固定資産税や社会保険料)の支払い猶予分の26兆円のほか、新型コロナ対策では、収束後の観光振興などの一般財政なのである。

そもそも、真水の支援金はどのくらいなのだろう。いわゆる直接給付である。個人事業主に最大100万円、中小企業(資本金10億円以下)に最大200万円(決算書で5%以上の減収)の支援金が2兆3176億円。そして、当初は一律10万円とされていた個人給付は、住民税免除の低所得世帯にかぎり30万円。予算総額で、わずか4兆206億円となりそうだ(児童一人にたいして1万円をふくむ)。安倍の言う108兆円の経済支援は、まったくの嘘だったのである。国民を直接支援するのは、下限で4兆円、上限で6.3兆円なのだ。

その世帯給付金も1月以前の月収比の半減が条件であって、生活保護世帯よりも低収入でなければ支給されない。具体的に住民税免除世帯の数字を挙げておこう。収入が低ければ住民税が免除される、従来からの仕組みである。

[表]世帯構成別住民税免除世帯の年収と月収

月収8万円以下の単身者、21万余円で4人家族がふつうに生活できるとは思えないが、今回の世帯給付はわずか30万円なのである。これではそもそも、生活保護世帯に向けた支援ではないか。しかも2月~6月のいずれかで、それまでの月収から50%に減っていなければ要件を充たさないというのだ。

◆現実性のない1000万世帯給付

菅義偉官房長官は「5000世帯のうち、1000世帯を想定している」というが、絶対にありえない想定だ。不定期のアルバイト(フリーター)で、たとえば筆者の友人にもいるが、料理店の皿洗い(時給1000円)で月収16万円(8時間労働×20日)のケースのみ、これに該当するかもしれない。そんな世帯が1000万世帯もあるとは到底思えない。しかも自己申告制なのである。不正受給がないように申請を審議する、そんな煩雑な作業がこの外出禁止要請のなかで行なえるというのだろうか。給付は具体的にいつなのか。けっきょく、われわれ納税者が手にできるのは、安倍総理の肝いりの2枚の布製マスクということになりそうだ。

すくなくとも我が家では、4月末納付の固定資産税の支払い延期を決めた。外出禁止(要請)で仕事が動かない日々、この欄の読者諸賢におかれても、税金の不払いを検討されたい。法律用語でいえば、“同時不履行の抗弁権”(相手が支払うべき義務を履行しない=給付金を寄こさない。なので、その原資たる税金の支払いを拒否する)である。

◆内部留保460兆円を抱える大企業に、不況対策支援?

そのいっぽうで、政府は新型コロナの影響を受けた大企業に対し、日本政策投資銀行の「特定投資業務」を活用する形で1000億円程度の出資する案を検討しているというのだ。

思い起こしてほしい。わが国の大企業は安倍政権の法人減税や円安政策によって、460兆円もの内部留保(過去最高)を抱えているのだ。月収8万円の単身者(フリーター)が日々の生活に苦しみ、月収21万円余の4人家族がおそらく教育において子供の貧困にあえいでいるいっぽうで、大企業には惜しみなく投資するというのだ。資本家と株主など富める者を富ませ(株価の高騰を誇る)、フリーターなど貧しい者は生活苦を舐めさせる(雇用率を誇る)、これこそ安倍政権の経済政策が達成したものにほかならない。いままた、危機に際して貧富の格差を拡大させようというのだ。

ドイツではフリーランス(英語教師)が、申請後2日で60万円(5000ユーロ)の支援金が得られたという記事を目にする。ドイツでは従業員5人までの小企業、個人事業主に対して105万円、10人までの小企業で175万円を3カ月間支援している。もともと国民が支払ってきた税金の使い方なのだから、ある意味では当然の支援といえる。おそらくドイツ経済は、感染病収束とともに復活するであろう。

大企業が内部留保を持っているから、経済は好況なのではない。国庫にカネがあるから国が豊かなのでもない。経済の好況とは現実に消費が行なわれ、おカネが市場を回るかどうかなのだ。個人消費が経済全体の60~70%を占める、現代消費社会の経済原理をいまだに理解できない財務官僚および安倍政権の経済政策において、日本経済は泥沼に足を踏み入れようとしている。


◎[参考動画]【緊急事態宣言前夜】政府対策108兆円のカラクリ れいわ新選組代表 山本太郎(れいわ新選組2020年4月6日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

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感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。安倍晋三首相は4月7日、特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令したが、「首相の決断の遅れが感染を拡大させた」と批判する意見は少なくない。緊急事態宣言の発令に伴う「補償」も不明確なままだ。

そのため、新型コロナに関する安倍首相の責任を問う声があちこちから噴出しているが……よくよく考えれば、新型コロナをめぐる現在のパニックはむしろ安倍政権にとって「神風」になっているのではないか。新型コロナに国民の関心が集中して以降、安倍政権のそれ以外の問題が目立たなくなっているからだ。


◎[参考動画]安倍総理会見「1カ月でこの緊急事態宣言を脱出することが可能となる」(ANNnewsCH)

◆赤木氏の手記と妻の提訴は凄まじい反響だったが……

まず、安倍首相の妻・昭恵夫人との関係が取り沙汰されてきた森友問題の公文書改ざん事件をめぐり、自殺した財務省の元職員・赤木俊夫氏(享年54)の妻が国と同省の元理財局長・佐川宣寿氏を提訴した一件。週刊文春の報道により、赤木氏が手記などで「文書の改ざんは佐川氏の指示だった」と告発していたことが判明、凄まじい反響を呼んだのは3月中旬だから、つい最近だ。
(※『週刊文春』2020年3月26日号 ※文春オンラインで全文公開中)


◎[参考動画]森友「再調査せず」に遺族抗議(テレ東NEWS)

だが、その後に新型コロナの感染が爆発的に広がった中、この件はあまり話題にならなくなった。昭恵夫人が新型コロナの感染拡大リスクがある花見をしていたことが明るみに出て、そちらのほうに国民の関心が集まった感すらあるほどだ。

また、赤木氏の件が報道される少し前には、東京高検の黒川弘務検事長の前代未聞の定年延長が閣議決定され、「政権寄りの人物を検事総長にするための違法の措置だ」との批判が渦巻いていた。だが、新型コロナの感染が拡大する中、この件もほとんど話題にならなくなっている。

緊急事態宣言発令の前日である6日、日本弁護士連合会の荒中(あらただし)会長が「定年延長の撤回」を求める声明を出したが、このことに気づかなかった人も多いのではないか。


◎[参考動画]【暫定字幕表示】山添拓(日本共産党)VS森まさこ法務大臣 (Makabe Takashi)

◆河井議員夫婦の事件もとんでもない事態になっているが……

そして、もう1つは、自民党の河井案里参議院議員の陣営による選挙違反事件だ。この件では、すでに案里議員の秘書が公職選挙法違反の罪で起訴されたほか、同議員の夫である河井克行前法務大臣の秘書も同罪で起訴されている。

さらに最近になり、安芸太田町の小坂真治町長が案里氏が自民党候補として公認された後、克行氏から現金20万円を受け取っていたことが判明し、辞職。ほかにも複数の広島県議が克行氏から各30万円の現金を受け取っていたことや、三原市や大竹市、廿日市市の市長が地検の任意聴取を受けていたことが報じられている。


◎[参考動画]河井案里参院議員の秘書ら2人を起訴 公選法違反(ANNnewsCH)

だが、かくもとんでもない事態になっている河井議員夫婦の問題も地元メディア以外ではさほど大きく報道されていない印象だ。法務大臣まで務めた有力現職議員とその妻の現職議員の大問題であるうえ、2人の疑惑は自民党本部が出した1億5千万円の選挙資金にも及んでいるにも関わらず……。

仮に新型コロナの問題が存在せず、以上のようなことが連日、大きく報道されていたら、さすがに今度こそ「政権交代」の機運が高まっていただろう。そう考えてみると、新型コロナに関する安倍首相の対応への批判が高まるほど、実は安倍首相としては、その他の問題が国民の記憶から薄れ、むしろ助かるのかもしれない。


◎[参考動画]「緊急事態宣言」を発令 安倍総理が会見【ノーカット】(テレ東NEWS)

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(同)も発売中。

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「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

〝復興五輪〟と銘打たれた東京五輪の「延期」が正式に決まった。新型コロナウイルスの世界的感染拡大が理由だが、そもそも五輪と「原発事故からの復興」を結び付け、「原発事故から立ち直った福島の姿」を国内外に発信する場として利用する事には批判の声が多かった。

しかも、2013年9月の招致プレゼンで安倍晋三首相が「フクシマについて、お案じの向きには私から保証をいたします。状況は統御(アンダーコントロール)されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも及ぼすことはありません」と言い放って、原発事故被害者の怒りを買った。五輪延期を機に改めて3年前の講演を振り返り、「アンダーコントロール発言」の意味するところを考えたい。

「アンダーコントロール発言」を解説したのは、アメリカ生まれの詩人アーサー・ビナードさん(52)。2017年7月30日に福島市内で行われた「全国作文教育研究大会 福島大会」の中で講演した。講演の終盤、アーサーさんはこう切り出した。

2017年7月、福島市内で行われた講演会で「アンダーコントールなのは国民だ」と語ったアーサーさん

2017年7月、福島での講演会の様子

「時局はいつでもあるんです。今、僕らも時局の中にいる。安倍政権が崩壊するのか続くのか。稲田朋美防衛大臣(当時)がどういうところに再就職するのか。時局は動いているんです。この『時局』は、僕らが最近、体験した事の中にも出てきます。実は今、日本の政治家は本当に大きなごまかしをやりたいときには英語でしゃべります。覚えていますか? ブエノスアイレスで大事な会議(IOC総会)が開かれて、滝川クリステルさんが『おもてなし』って言ったんだよね。あの時に一番輝いていたのが安倍総理大臣で、たぶん2週間くらい英語の特訓をしたんだと思いますよ」

「その時に安倍総理は、大量に漏れている放射性物質を含んだ水の事に微妙に触れるふりをして、それで Let me assure you. the situation is under control と言った。私は皆さんに保証します。約束します。間違いないんですよ、皆さん大丈夫なんですよと」

首相官邸のホームページによると、安倍首相の発言はこうだった。

Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you,the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.


◎[参考動画]安倍晋三総理大臣のプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)

この時のメディアも含めた反応をアーサーさんは「違う」という。

「これを日本のマスコミとかはunder controlに注目して『under controlじゃ無いだろう』と批判的に取り上げた。だって汚染水は漏れてるじゃないかと。コントロール下に置かれているっておかしいじゃないかって皆言ったんだよね。それは僕も理解は出来るけれど、読解力の全く無い、文脈を理解していない奴の批判だと思う。『アベコベ語』をちゃんと学んでからでないと、あの発言は理解出来ない。これ『アベコベ語』だからね」

アーサー・ビナードさん

そして、話は太平洋戦争の敗戦を告げた玉音放送にさかのぼった。

「あの発言は、ちゃんと8月15日の玉音放送の流れを汲んでるんだ。これは『時局ヲ収拾セムト欲シ』という玉音放送からの直接の引用なんだよ。『時局』って何?玉音放送の時の『時局』って何かというと、東京都千代田区0番地の人たちが処分される事無く再就職出来るための『国体護持』ですよ。革命とか暴動が起きないように収拾するための放送だったんです。世界の情勢とかでは無くて、日本の特権階級の再就職が保証される事。安倍晋三がおじいちゃんの後を継ぐ事が保証される事。吉田茂の孫も総理になれるのが保証される事が『時局ヲ収拾セム』という事だったんだ」

アーサーさんの言いたい事は「コントロール下に置かれている国民」だった。

「じゃあ、安倍総理は何を言ってるかというと『汚染水』じゃ無いんです。福島の問題じゃ無いんです。福島はもう放置。彼の知ったこっちゃありません。the situation つまり『時局』なんです。分かりやすく翻訳すると、日本国民が福島第一原発の1号機、2号機、3号機がメルトダウンしてメルトスルーして手がつけられない人類最悪の袋小路に入ったとしても立ち上がりませんから。どんなに被曝させられても、どんなに馬鹿にされても、どんなに共謀罪で脅かされても日本国民は抵抗しませんから。つまり、日本国民はコントロール下に置かれてますから大丈夫です。だからオリンピックちょうだいって。で、オリンピックを使えば日本国民はより操作しやすいから、ぜひお願いしますって。まあ、僕の翻訳が100%正しいかどうか分かりませんけど。時局ってそれくらいの物を含むんですよ」

騙されてはいけないよ、とアーサーさんは警告する。

「the situationはいろんな場面でまやかしの言葉として見事に使われます。オリンピックが日本にやって来るのは福島第一原発でメルトダウンが起きた時に既に決まっていたんです。なぜかというと、原発事故は100年、1000年の問題。決して明るい話題じゃ無い。そこで明るい話題を用意して、皆をだまくらかさなきゃならないから。広島の中国新聞には先週、『夢の祭典まで3年』って載ってたよ。良かったね、夢の祭典。夢の祭典が新聞の1面だよ。広島の新聞だよ。いやーこれは深刻です。時局があまりにも収拾されちゃって、コントロール下に置かれているのです」

浪江町を視察し、小女子を食べる安倍晋三首相。こうやって被災地の食べ物を口にするのも、民をコントロール下に置く手段の1つなのだろうか

そして、まるで今回の延期を〝予言〟するかのように、こうも語っていた。

「皆、東京オリンピックを語る時に1964年の事を言いますね。あの時はいろいろなまやかしがまかり通って成立しました。でも今回のオリンピックは、僕は1964年じゃなくて1940年のオリンピック(日中戦争などの影響で日本が開催権を返上)に似ていると思います。ヒトラーの鶴の一声もあったという話ですけど、東京でやるやると言って、とうとうキャンセルになった。やるやる詐欺。1938年の夏にやめた。その代わりに何をやったかというと、奈良県の橿原神宮で1万人の集団体操をやった。ラジオ体操の前身です。直前まで英語でも世界中にやるやるとメッセージを発していて、それで最終的にやらなかった。運動会すら開催できない組織が、その3年後にパールハーバーを攻撃したんです。僕らは先人たちの体験から矛盾を見抜く力を身に付けなければいけません。その視点を大事にしていけば見抜けます。でも、夢の祭典にいつまでも注目しているとコントロール下に置かれます。大事な視点は僕らの周りにたくさんあるんですよ」

今回も、日本政府は五輪を「やるやる」と強気の姿勢を見せ続けていたが、すでに「延期」は決定された。私たちは一度、頭を冷やして〝復興五輪〟について再考するべき時に来ているのだろう。為政者のコントロール下に置かれないためにも。


◎[参考動画]「オリンピックのつくりかた」アーサー・ビナード Radio Bhim!:02 前編(歌島舎 2019/11/28)

▼鈴木博喜(すずき ひろき)

神奈川県横須賀市生まれ、48歳。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

感染が拡大する一方の新型コロナウイルスにより、世の中はだんだん殺伐とした雰囲気になってきた。そんな中、この騒動とのリンクのすごさに驚かされる映画がある。2016年に公開された韓国映画で、世界的に大ヒットした『新感染 ファイナル・エクスプレス』だ。

「新感染」公式HPより

◆コロナ騒動同様、感染が疑われる者を非感染者が拒絶

同作は、時速300キロ超で走る釜山行きの高速電車内でゾンビが大量に発生するパニック映画。ゾンビに襲われた客たちが次々にゾンビ化する中、幼い娘と一緒に電車に乗ったファンドマネージャーの男(コン・ユ)らが生き残るために奮闘する姿を描く。

この作品の原題は『釜山行』で、『新感染』は邦題だ。この邦題をつけた人は「新幹線」から着想したのは明らかだが、このダジャレのようなタイトルが「新感染症」とぴたりと重なっている。そこに、まず驚かされてしまう。

そんな映画は作中でもゾンビに襲われ、ゾンビ化することを「感染する」と表現しているのだが、感染が疑われる人間に対する非感染者の接し方も実によく現在のコロナ騒動とリンクしている。それは、主人公たちがゾンビ化した人たちが群れる車両を必死の思いで突破し、非感染者たちが避難している安全な車両に逃げ込もうとした時のことだ。

「こいつらも感染しているかもしれない!」

安全な車両に避難している非感染者がそう言い、主人公たちが入ってこないように車両のドアをロックしてしまうのだ。これは現在、感染の危険がある国や地域からの帰還者や訪問者を拒絶する世間のムードと酷似している。


◎[参考動画]『新感染 ファイナル・エクスプレス』予告編(2017/06/30)

◆夏には、続編が公開されるというが……

思うに、新型コロナウイルスは、人々の身体に与えるダメージの深刻さもさることながら、人々の心を蝕む力こそが驚異的だ。まだ発症していない感染者からの感染例も多く報告されているため、街中で誰を見ても、感染者に見えてしまう。そのため、人間同士で疑心暗鬼が広がっている。

新型コロナウイルスの感染を広めないための行動が求められるのは当然としても、感染した人が病状を心配されることなく感染したことを批判されるとか、感染した著名人やその関係者が謝罪しなければならないとか、この現在の空気は異常である。

とまあ、現在のコロナ騒動と実によくリンクする映画『新感染』だが、なんとこの夏、続編となる作品『半島』が韓国と世界各国で公開されるという。『半島』は、前作の4年後の廃墟となった地で生き残った人々が死闘を繰り広げる物語だそうだが……。

このタイミングで続編が出るというのも凄いが、夏ごろまでに映画館で普通に映画が鑑賞できるほどコロナ騒動が沈静化しているとは思い難い。一体、どうなるのだろうか。


◎[参考動画]『新感染 ファイナル・エクスプレス』続編 映画『Peninsula (原題)』米予告編(2020/04/02)

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(同)も発売中。

7日発売!月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

◆あとを絶たない野宿者襲撃事件

3月25日深夜、岐阜市内の伊自良川の河川敷で野宿する81歳の男性が、何者かに石をぶつけられたり、暴行されたりして亡くなった。「知人が数人の男に蹴られた」と110番通報した女性は、男性と20年前から野宿生活を共にしていた。このような痛ましい襲撃事件があとを絶たないのは、なぜだろうか。

1983年、横浜市の公園などで次々と起こった襲撃事件で逮捕された少年らは、取り調べで「町を綺麗にするため、ゴミ掃除しただけ」などと供述した。

大阪では、2012年年10月1日、JR大阪駅近くの高架下で、野宿していた男性(当時67歳)が襲撃され、死亡する事件が起きたが、2014年大阪地裁で始まった裁判で、少年の1人は、「家を出てバイトに明け暮れていたため、たまに会う遊び仲間と憂さ晴らししようと襲撃を計画した」などと証言した。

◆釜ヶ崎の「安全・安心なまちづくり」は、誰を守るのか?

釜ヶ崎では、元大阪市長の橋下徹氏がぶち上げた「西成特区構想」のもと、「安心・安全なまちづくり」が進められている。2014年から始まった「まちづくり検討会議」の座長を務めた学習院大学教授・鈴木亘氏は、当時の釜ヶ崎についてインタビューで「どん底でしたね。ホームレスが溢れ、不法投棄ゴミが散乱し、昼から酒飲んで立ち小便している。町全体が臭気のドームでした。すべての社会問題を放り込んで、フタしてグツグツ煮えたまま放置されてる、まさに闇鍋状態。衰退しきったスラムでした」と憎悪と非難を露わにしていた

その後、「覚せい剤撲滅」「不法投棄の防止と啓発」「迷惑駐輪の防止と啓発」などを目的とした「5ケ年計画」で、警察官の増員や監視カメラの増設が実施され、西成警察主導の「あいりんクリーンロードキャンペーン」が始まった。驚くのは、パレードで訴える「町をきれいにしよう」「ゴミをなくそう」のスローガンが、野宿者を襲撃した少年らが口にした言葉と同じことだ。

パレードのあと参加者に飲み物や下着が配られる。後ろに手を組む作業服姿の警察官が、労働者を怒鳴る場面も

3月28日「センター開けろ!」と訴える集会とデモには約80名が参加した

◆2度目の不当逮捕

「安心・安全なまちづくり」を進める「まちづくり会議」では、一方で「あいりん総合センター」(以下センター)を解体した広大な跡地をどう使うかの話が進められている。昨年12月末、センターに入っていた「西成労働福祉センター」と「あいりん職安」(現在は、隣接する南海電鉄高架下に仮移転中)などの労働施設を、跡地の南側に作ることが決まった。便利で使い勝手の良い北側には、屋台村構想や、タクシー、観光バスの駐車場を作るなどの意見が上がっているという。

問題なのは、南側に建てられる労働施設の青写真に、もとのセンター内にあったシャワー室、娯楽室、足洗い場、洗濯場、昼間ごろりと横になって休息できる場所など、生活困窮者や野宿者のセーフティーネットとなる機能が一切備えられてないことだ。つまり野宿者、生活困窮者はいっそう過酷な状況に追い込まれることになる。

そうしたセンターの解体に反対し、「センター閉めるな!」「シャッター開けろ!」と訴えている仲間4名が、3月4日逮捕された。昨年11月、5月30日に監視カメラに手袋を被せ、撮影不能にしたという「威力業務妨害罪」での逮捕と同様だ。今回は昨年11月、逮捕された4名のうちの2名と、6月4日の件で逮捕された2名を加えての4名逮捕である。昨年は、逮捕後すぐに釈放されたが、その後検察の任意聴取や出頭要請に応じなかったことが、今回の逮捕の理由だ。4人はそのため大阪地検に直接逮捕され、地検で取り調べられたのち、大阪拘置所に移送され、翌日起訴されたのち、前回同様、検察の勾留請求、準抗告がいずれも棄却され、釈放された。

大阪地検は、なぜ2度も同じ失態を繰り返すのか?そもそも監視カメラにレジ袋や手袋を被せたことが「威力業務妨害罪」にあたるのか?昨年の逮捕後、勾留請求、準抗告を繰り返す検察に「こんな微罪で起訴なんて」と呆れた裁判官もいたと聞いたが、同じ容疑で、なぜ今回起訴できたのか?

監視カメラの増設に使われた費用は約1億2700万円

◆監視カメラと不当逮捕の狙いは?

逮捕された1人、釜ヶ崎地域合同労組の稲垣浩氏は、2015年、組合が入る解放会館前に設置された監視カメラを違法と訴えた裁判で勝利し、撤去させている。裁判を担当した大川一夫弁護士は「監視カメラの監視はプライバシー権を侵害するので一定の要件を満たしたときしか許されない。しかしある監視カメラはこの要件を満たしていないから違法であるとして撤去を命じたのである」と解説する。

また2016年7月の参院選前後に大分県別府警察署が、野党の支援団体が入る私有地に無断に監視カメラを設置した捜査方法を違法だとして抗議する、日弁連の会長声明の中でも、こう説明されている。「殊に、宗教施設や政治団体の施設等、個人の思想・信条の自由を推知し得る施設に向けた無差別撮影・録画は、原則的に違法である。このことは、労働運動等の拠点となっている建物に向けた撮影・録画を前提とせずに単なるモニタリング(目視による監視)の目的で設置されただけの大阪府警の監視カメラの撤去を命じた大阪地裁平成6年4月27日判決(その後、最高裁で確定)からも明らかである」。

朝、「特掃」の輪番を待つ人達でごった返す西成労働福祉センターの仮庁舎内。高齢者が多い

今回逮捕のきっかけとなった監視カメラは、もとは南海電鉄高架下のセンター仮庁舎の東側の道路と駐車場に向けて設置されていた。現場は、早朝から多くの労働者が仕事を求めて集まるが、「特掃」(高齢者特別清掃事業)の輪番紹介が始める8時過ぎには高齢者も含めてごったがえす場所だ。しかも、約200メートルの道路には信号機もなく、警備員が「車来るぞ!」と声をかけあうだけ。そうした危険な場所を監視し、事故など起きた場合に備えて設置された監視カメラが、ある日「センター開けろ」と訴える人たちの団結小屋に向きを変えられた。

それについて釜合労や釜ケ崎公民権運動が抗議し、説明を求めたが、大阪府は「センターを管理するため」というだけだった。しかし、センターのシャッター前で野宿する人たちが何者かに襲撃されたり、テントに火をつけられても、犯人は一向に逮捕されてはいない。あれだけ鮮明な画像を証拠に仲間を逮捕したくせに、ほかの犯人は分からないというのか。こうしたことからも、監視カメラが狙うのは「センター閉めるな」「シャッター開けろ」と訴える人たちを監視し、威圧するためのものであることは明らかだ。

しかも新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今、気密性が高く換気が悪い上、狭い場所に大勢の人たちを詰め込むシェルターなどではなく、広々として通気性の良いセンターなどを、早急に開放することが必要だ。

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための自粛要請の影響で、今後仕事をなくし路頭に迷う人たちが、リーマンショック後より遥かに多いと予測されるが、そうした生活困窮者が最後の拠り所として集まってくるのが、釜ヶ崎だ。そのような釜ヶ崎で、「町をきれいにしよう」「ゴミをなくそう」と訴える「安心・安全のまちづくり」キャンペーンにより、野宿する人たちが、ふたたび少年らに襲撃されてしまうようなことが起こってはならない。

JR大阪駅の高架下で野宿者を襲撃した少年の1人は、 野宿者を「俺たちと全く違う世界の人間と思っていた」と証言したが、それは違う!「野宿者も私たちと同じ人間。差別や排除してはいけない」。そう教えていくのが、私たち大人の責任だ。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 菅直人元首相が語る「東電福島第一原発事故から九年の今、伝えたいこと」他

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