《6月12日、リンチ被害者M君が5名を訴えた上告について、却下の連絡が代理人の大川伸郎弁護士へあった。賠償を命じられた李普鉉氏からは「賠償金を支払いたいので口座を教えてくれ」と代理人から連絡があった。一方金良平からは何の連絡もないので、大川弁護士は金良平の代理人に「賠償金の支払い」を求める旨と、大川弁護士の銀行口座明細を記載したFAXを送付したが、7月2日現在大川弁護士には、金良平の代理人から何の連絡もないという》

上記の文章は本通信に本年8月14日掲載した内容である。その後、「一部40万円余りを払う。残りは分割にしてほしい」と代理人姜永守弁護士を通じて金良平(狼藉が度を超えるので、敬称は用いない)が申し出てきた。身勝手極まりない内容にM君並びに弁護団、支援会は対応を検討したが、金良平の申し出を受け入れ、一部金の支払いを待った。

ところが判決確定から半年たっても、金良平は自身が申し出た「身勝手な」支払い方法すら反故にして、いまだに一円たりともM君に対して支払いを行っていない。この間の経緯についてM君代理人の大川伸郎弁護士に確認したところ、「姜永守弁護士に電話で『支払いはどうなっているのか』と尋ねたところ、申し訳なさそうに『すいません。本人に伝えておきます』と切れ味の悪い回答があっただけです」とのことである。

代理人を通じて「分割払い」を申し出てきたのは繰り返すが、金良平だ。最高裁判所で支払い命令が確定した判決を無視し続ければ、時間を経るにしたがって支払い命令金額に利息が加わり、ますます支払いは困難になろう。

ここへきて、取材班は重大な疑念を抱かざるを得ない。

金良平、ならびに周辺で彼と行動をともにしている関係者は「賠償金を支払う」(金良平に支払わせる)意図がまったくないのではないか。口先ではきれいごとを並べて「人権」だの「反差別」だのといきがっていても、最高裁で確定した判決で命じられた賠償金の支払いすら「無視」しようとしているのではないか。この申し出は姜永守弁護士を通じてM君側に伝えられたのであるから、姜永守弁護士にも責任はある。このような事態を予測して、M君、弁護団、支援会は「姜永守弁護士が連帯保証人に就任する」ことを条件として求めたが、姜永守弁護士はそれを受け入れなかった。

リンチ直後に出された金良平(エル金)[画像左]と李普鉉(凡)氏[画像右]による「謝罪文」(いずれも1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

 

辛淑玉氏による2015年1月27日付け文書「Mさんリンチ事件に関わった友人たちへ」(1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

無責任で済む問題であろうか。M君が被害回復を求めた裁判に際しては、「M君の裁判を支援する会」に多くのかたがたからの支援(カンパ)が寄せられ、M君は裁判を闘い抜くことができた。しかし金良平がこのまま110万円を超える賠償金を踏み倒せば、M君は李普鉉氏から受け取った2万円に満たないお金しか受け取ることができなくなる。

冗談ではない!

彼らの悪質さはこれまでことあるごとに批判してきたが、あれだけの重傷を負わせた被害者に対して「賠償金を踏み倒す」?

これまで取材班は事実を紹介しながら、論評を行ってきたが、金良平と彼の取り巻きが取っている態度は、断じて許されるものではない。判決違反は不法行為と同義であるが「払う金がない」と金良平を逃げ切らせるつもりなのだろう。

こういった非道な行為を前田朗東京造形大学教授はどう評するであろうか?

彼はこの事件につきカメレオン的に、態度を変えた人物であるが、『救援』紙上で公式な見解を開陳した人物である。ことの成り行きについて今どう考えるのかを述べる道義的責任があろう。そして「リンチはなかった」、「あれは喧嘩だった」と散々嘘デタラメを吹聴した中沢けいや、本来関係ないのに横車を入れてきた香山リカ。終始加害者擁護にて徹した安田浩一らは、この事態をどう考えるのだ。

さらに許しがたいのは弁護士神原元の発信だ。この男はこれまで幾度も印象操作や、虚構の発信を続けてきたが、「しばき隊がリンチ事件を起こしたというのは虚偽の風説です」。この書き込みこそ「完全な虚偽の風説流布」ではないか。

神原弁護士のツイッターより

神原は「M君リンチ事件」の刑事記録を見ているだろうが! 罰金が課されたのは李普鉉と金良平の2名ではないか。そこに同席した李信恵に処分はくだらなかったが、上記3名はM君に謝罪文を書いているのはなぜだ? なにも問題がなかったらどうして謝罪文を書く必要があったのだ。

M君リンチ事件の賠償金を払わない金良平

さらに「現在、別途、名誉毀損訴訟が進行中です」との記載は鹿砦社が李信恵を提訴し、勝訴が確定した名誉毀損裁判に対する、反訴が認められず提訴に踏み切った李信恵原告、鹿砦社被告の裁判を示しているのかもしれないが、この係争では、鹿砦社が原告の訴訟で既に鹿砦社勝訴判決が確定していることを(神原がこのような印象操作をまだ続けているので)再度強く強調しておかなければならない。

取材を進める途中から取材班は、この事件の加害者及びその関係者の「悪質性」を認識していた。よって、このような異常事態も「連中」ならやりかねないだろうとも認識する。しかし、司法の判断も「無視」して被害者への賠償を「踏み倒す」連中を座視しているわけにはゆかない。このような行為が横行すれば「司法」の権威は失墜し、被害者は泣き寝入りするしかなくなってしまう。

そういった勢力をわれわれは、放置するつもりはない。


◎[参考動画]日本第一党 第七回神奈川県本部 川崎駅前東口街頭演説活動 2019年10月19日

(鹿砦社特別取材班)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

12月8日、大阪市内の関西電力本店で「老朽原発うごかすな!関電包囲大集会」が開催された。9月末、関電の原発マネー不正還流問題が発覚して以降、はじめての大集会に、16都道府県から1100人が結集、約30人が発言した。福井や女性の方の発言を要約して紹介する。

関西電力本店ビルを、全国から集まった1100人で包囲した

◆関電本店まで延べ150人が14市町を歩いてきた「サヨナラ原発福井ネットワーク」リレーデモ

 

「さよなら原発福井ネットワーク」の若泉さん

関西電力と政府は来年、運転開始から45年超え、44年超え、43年超えの老朽原発・高浜1、2号と美浜3号の再稼働を画策している。これに対して10月1日~11月22日「老朽原発うごかすなキャンペーン」と題して、関西、福井、名古屋などで様々な行動が行われてきた。キャンペーンが明けた11月23日に高浜原発前から始まった200キロに及ぶリレーデモが、12月8日14時前、関電前に到着し、集会が始まった。

福井県の「サヨナラ原発福井ネットワーク」の若泉政人さん。リレーデモのゴールに向け、県内の世論・関心を高めるため、14市町をつなぎながら延べ人数150人で歩いてきた。途中、各自治体に「老朽原発動かすな」などの申し入れを行ってきた。

関電は老朽原発について、新聞で「きちんと対策をとっている」と報告するが、脆化している原発をどう検査しているか全く書いていない。裏金問題では、かつての高浜町助役が関わっていた吉田開発の受注・発注の件で、特に土木部門では全体の半分以上が随意契約。随意契約は今、合理的な理由がなければ簡単には出せないはず。そうした不明な部分も追求しなくてはならない。このように問題だらけのなかで、原発を動かそうとしている関電を、原発から撤退させ、福井を違うやり方で模索する、そのために世論を盛り上げていきたい。

途中、リレーデモで200キロ歩き続けた橋田秀美さんからカンパ要請が行われた。リレーデモの道中、大勢の子どもたちがチラシを受け取ってくれた。こういう子どもを原発から守るのが、私たちの責任だ。この運動は今日が始まりだ!老朽原発を動かそうとする関電を追い詰めていこう。長い闘いが続くので、皆さんの熱い思いをカンパの形で、「私たちはワイロは受けとりませんが、カンパは受け取ります」。


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 若泉政人さん(越前市)

◆東海第二原発の社長は東電、副社長は関電から派遣

 

福島県から「原発いらない福島の女たち」さん

「老朽原発を動かすな!」の各地元から。茨城県の東海第二原発の地元の方から、敦賀、東海第二を所有する日本原電は、電力9社の子会社ということで、東海第二の社長は東電から、副社長の木村は関電から派遣されている。取締役だった岩根(関電社長)は、還流問題発覚で退任した。

東海第二は東電と日本原電の共同開発という理由で、発電しなくても東電から維持費が毎年出ている。原発マネーの利権構造の公然たる典型だ。利権は必ず腐敗を生む。今回の件もその一端でしかない。庶民から集めた金をクルクルと自分たちで回しあう、その構造を壊さないといけない。本丸(関電)への闘いも大変だが、私たちは茨城で、その子会社と闘っていく。

◆安全対策費に1兆200億円投入しても「安全とはいえない」高浜原発

 

福井県高浜町議の渡辺さん

福井県から、高浜町議の渡辺孝さん。関電の高浜、大飯の安全対策工事で人身事故が相次いで起きている。いずれも「特重施設」いわゆるテロ対策施設の工事現場。これは関電が安全対策工事や特重施設の完成に焦っている結果ではないか。関電は再稼働のために、安全対策工事、特重施設工事、定期検査と3本の工事を同時に手掛けている。ヒューマンエラーがいつおきても不思議ではない。そうまでして老朽原発を動かす必要はあるのか。高浜4号は、定期検査中に蒸気漏れが起きたが、原因がわからない。美浜の事故のこともあり、とても不気味だ。関電は高浜原発の安全対策費に1兆200億円投入しているが、前・規制委員長・田中俊一氏は「安全審査に合格しても安全とはいえない」と繰り返し言っていた。原発は欠陥商品であり、老朽原発はもちろんすべての原発を動かすのをやめるべきだ。

◆滋賀県からは「福井原発訴訟・滋賀」の井戸謙一弁護士がアピール

滋賀県から「福井原発訴訟・滋賀」の弁護団でもあり、「告発する会」の弁護団でもある井戸謙一弁護士。関電の原発の安全性に対する考え方の問題について、事故前、電力会社は、原発は絶対事故は起こさないと言ってきたが、その言い方が明らかにかわってきた。規制委は、原発に求められるのは絶対的安全性ではなく、相対的安全性で良いに変わり、裁判所もその言い方に乗っかってきている。典型的なのが、先日の東電幹部の刑事裁判の無罪判決だ。大津地裁の裁判でも、私たちの絶対的な安全性を求める主張に対して、関電は「それは失当」と反論した。若狭の原発で事故が起きてもしょうがない。そのときはごめんなさいねという姿勢だ。これを許すかどうかが問われている。許せないという声を広めよう。


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 井戸謙一さん(福井原発訴訟・滋賀)

◆「関電の不正還流を告発する会」の宮下正一さん

「関電の不正還流を告発する会」の宮下正一さん。9月27日の朝、朝刊を見てびっくりした。高浜の吉田開発に入った金が、森山助役に渡り、その後知事などに渡るならわかるが、なんと関電に還流された。1人で1億超の金を受け取った人が2人いて、うち1人が北新地で毎月500万使っていた。滅茶苦茶なことがおきた。絶対許せんと思い、河合弁護士に相談したら、告発運動で日本中から千人の告発人を集めようといわれた。千人は福井の運動からは、考えられない数だった。でも10月24日大阪市内で開催したキックオフ集会を、その後東京、福井でやり、ひと月半で47都道府県から3千人を超す告発人が集まった。13日、大阪地検に告発する(大阪地検前に12時半集合)。検察権力によって、関電の行った行為をきっちり調査し、起訴して処罰させよう。これからが本番です。

 

避難者を代表して「原発賠償関西訴訟」の森松明希子さん

◆避難者を代表して「原発賠償関西訴訟」の原告・森松明希子さん

次に避難者を代表して「原発賠償関西訴訟」の原告・森松明希子さん。今、原発安全神話から放射能安全神話にすりかえられ、「原発に絶対安全基準はいらないんだ」とされている。私たちが原発で手放そうとしているのは、命や健康、生きる権利そのものなのだ。関電はまだ原子力にしがみつこうとしているが、それは私たちの憲法で保障された権利を手ばなすことであり、それを認めるか認めないかの闘いだ。事故から9年経ち、私の0歳だった子どもももう9歳、話がわかる。全国の子どもたちを、私たち大人が責任もって、原発をこの世の中から廃絶させなくてはいけない。核との共存は核兵器だけではない、原発とも共存できない。命を守りましょう。


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 森松明希子さん(原発賠償関西訴訟)

◆グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん

 

グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん

グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん。今、原発の再稼働はずっと押さえつけられている。私たちの闘いは半分勝っている。原発は日本の電気の8%しか作っていない小さな力なのに「エライ」と威張り続けている。2年間ゼロだったのに、「これがなければ日本が成り立たない」みたいなフリを未だにしている。温暖化問題が深刻化しており、世界の専門家は「原発は温暖化対策にはならないどころか、温暖化対策を妨害している」といっている。私たちの脱原発行動は、温暖化対策でもあり、日本を安全にするためでもある。そんななか、関電は金品授受問題を起こしたが、第三者委員会の調査結果が出る前に、高浜4号を動かそうとしていた。そんななか蒸気発生の深刻な問題が起こり、12月から2月に延びた。関電は当初「蒸気の原因はわからないが動かす」と言ったが、いつもは全然ダメな規制委員会が「あかん」と言った。たった1・3ミリの伝熱管が0・5ミリになっていた。それでも関電は動かそうとした。高浜4号機の再稼働には絶対NOといいましょう。

ほか、労働組合などからたくさんのアピールが続き、最後に関電に向けて力強いシュプレヒコールがあげられた。

「老朽原発動かすな!」「危険な原発、今すぐ廃炉!」「ワイロよりハイロ!」「原発なくても電気は足りる!」「原発政策すすめる政権はいらない!」


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 橋本あきさん(郡山市)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。最新刊の『NO NUKES voice』22号では高浜原発現地レポート「関西電力高浜原発マネー還流事件の本質」を寄稿

『NO NUKES voice』Vol.22 新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて

『NO NUKES voice』Vol.22
紙の爆弾2020年1月号増刊
2019年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて
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[グラビア]山本太郎「原発事故の収束の仕方も分からないのに滅茶苦茶だ」(鈴木博喜さん)ほか

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
2020年・世界の正体 何が日本を変えるか

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)+編集部
関西電力高浜原発マネー還流事件の本質

[資料]編集部
《全文公開》関西電力幹部を辞任に追い込んだ「告発文」

[インタビュー]井戸謙一さん(弁護士)
関電・東電・福島原発訴訟の核心

[インタビュー]水戸喜世子さん(子ども脱被ばく裁判共同代表)
刑事告発で関電から原発を取りあげる

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈17〉
東京五輪・崩壊の始まり──IOC「マラソン・競歩札幌移転」の衝撃

[報告]小林蓮実さん(ジャーナリスト/アクティビスト)
山本太郎の脱原発政策は新党結成で変わったか?
「政権交代」が脱原発を可能にする唯一の選択肢

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
福島〈水害〉被災地を歩く
懸念される放射性物質の再浮遊と内部被曝リスク

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈6〉
本気で「防災・減災」に取り組まなければ、被災者は同じ苦痛を繰り返す

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
原発潮流・二〇一九年の回顧と二〇二〇年の展望

[報告]平宮康広さん(元技術者)
経産省とNUMOが共催する説明会での質疑応答

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
天皇の即位に伴う一連の儀式に思うこと

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン第五弾
ケント・ギルバート『天皇という「世界の奇跡」を持つ日本』

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述業)
熟年層の活躍こそ、わたしたちの道しるべだ
かつての革命運動の闘士たちがたどった反原発運動

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈6〉記憶と忘却の功罪(中編)   

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク(全12編)
関西電力「原発マネー」─東京電力「二二〇〇億円援助」─日本原電「東海第二原発」
三つを関連させ、くし刺しにして原発廃止を迫ろう!

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
日本の原発はこのまま「消滅」へ 
日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきたから
田中俊一(原子力規制委員会前委員長)語る(月刊『選択』11月号)

《東北電力》舘脇章宏さん(みやぎ脱原発・風の会)
女川2号機の審査「合格」が目前
東日本大震災でダメージをうけた「被災原発」を動かすな!

《日本原電》玉造順一さん(茨城県議会議員)
東海第二原発を巡って-当初から指摘されてきた日本原電の経理的基礎の無さを露呈
日本原電を含む電力業界 これまで反対運動に対峙してきたノウハウの蓄積もあり、決して侮れない

《東京電力》斉藤二郎さん(たんぽぽ舎)
東電による日本原電支援(二二〇〇億円)に反対する 
「巨額の支援」おかしい、反対意見多い、電気料金が上がる
東海第二原発は事故原発-再稼働はムリだ

《東海第二原発》たんぽぽ舎声明
東海第二原発再稼働への資金支援をするな 日本原子力発電に対する三五〇〇億円
日本原電は廃炉管理専業会社となるべき

《原発マネー》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
関電も東電も原電も徹底追及するぞ! 
原発マネー、二二〇〇億円支援、東海第二原発再稼働を許さない

《市民立法》郷田みほさん(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会=しゃがの会)
次の世代に責任を果たすために、やらなければならないこと

《関電高浜》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
関電不祥事を、原発全廃の好機にしよう!

《玄海原発》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会世話人)
水蒸気爆発を起こす過酷事故対策、トリチウムと使用済みMOXの危険性

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
規制委による新たな原発推進体制の構築を止めよう
~「原子力規制委員会設置法」の目的と国会付帯決議を守れ~

《本の紹介》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『原発のない女川へー地域循環型の町づくり』(篠原弘典・半田正樹編著 社会評論社)

《浜岡原発》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
浜岡原発は世界で最も危険な原発-南海トラフの震源域の真上に建つ
JR東海のリニア新幹線を懸念-トンネルで地下水が流出か?

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

「逃げ切れた」。ある与党議員が安倍政権の延命をそのように表現したそうだ。いわずもがな「桜を見る会」スキャンダルについてのコメントだ。菅原経済産業大臣、河井法務大臣の公職選挙法違反疑惑での辞任よりも数倍の衝撃だったはずの「公金による賄賂疑惑事件」でも、もう自民党政権下の首相は責任を取ることはありえない、とまた無残な史実が重ねられてしまった。森友学園問題、加計学園問題いずれも外形的な事件の構造は、一定以上明らかにされ、安倍の関与と責任が明確であるにもかかわらず、首相としての座を安倍は追われることはなかった。


◎[参考動画]【報ステ】『桜を見る会』今国会“最後”の直接対決(ANNnewsCH 2019年12月2日)

近現代国家は、根本思想の違いを除けば、「法律」によって国家が存立し、保たれることが共通理解とされてきた。しかしながら、どうやらこのような「国家」像に対する概念について、実体的な「ポストモダン」時代が到来したようである。少なくともこの国ではそうだろう。

簡略に述べれば以下の通りだ。法の運用は国家構造を維持する行政権力構造に対して、極めてあいまいに運用される反面、政治性の有無にかかわらず「個的な案件」については、神経質なほど微細に適用される。根本法(憲法)が想定していなかった社会情勢の変化(情報速度の超高速化)という背景はあるものの、原理原則とされた公的手続き(行政においては民主主義を前提とした、公文書の厳重確保と保管)の軽視、形骸化により行政権力は、構造的な違法行為を法的に追及されることがない、新たな規範を造り出すことに成功した。その構造は大臣、首相にまで及ぶ。菅原経済産業大臣、河井法務大臣の辞任も、注視してみればそれぞれが所管する業務についての瑕疵や違法行為ではなく、公職選挙法違反、つまり大臣以前に国会議員選挙での不正が問われているのだ。


◎[参考動画]12月2日参院本会議 田村智子議員の代表質問(日本共産党 2019年12月2日)

◆犯罪や違法行為は、規模が大きければ大きいほど免罪されやすくなる

犯罪や違法行為は、規模が大きければ大きいほど免罪されやすくなる。東京五輪招致で不正な支出疑惑を仏で告訴されたJOC会長を辞任した竹田恆和について、批判的な報道は皆無に等しいし、東京電力が福島第一原発2号機からデブリ(メルトダウンで溶け落ちた燃料)を取り出す発表をしても「取り出して、いったいどこにどのように保管するのだ?」という第一に発せられるべき質問が、大きく問われることもない。

真逆に個的な(象徴的には「家族」、「親族」、「知人」間での)いさかいが原因の殺人事件については裁判所から逮捕令状が出される、はるか前から報道機関は警察になり替わり、「取材」という名目で関係性があると思われるひとびとの生活に足を踏み入れる。怪我人がいなくとも夕刻の全国ニュース放映時間に東京の中心地で交通事故が発生すると「スクープ」(!)として全国に放送される。

あげく、家庭内での「体罰」について「子どもが不快と感じればすべて体罰だ」とまで真顔で審議員が議論し、なんの批判もなくそのバカげた家庭内への国家の侵入にも異論が大きく沸き起こることはない。こういった意見表明をすると、必ず「最近急増する家庭内の虐待を放置するのか」と「規制賛成派」から批判をされるが、わたしが指摘しているのは「家庭内に国家の指示が入ってくることをあなたはなんとも思わないのか」という点であり、児童虐待を是認しているわけではまったくない。

こんなにバカげたガイドラインだか何だか知らないけれども、「家庭内の教育(育児)のありかた」のようなものを発せずにはいられない児童虐待の増加は現象面だけをなぞってみても、なんの解決も導かない。従来の「親子関係」、「家族」、「子どもを持った親の未成熟」といった本質的な原因を直視して、その原因がどのようなものであるかを解析し、対応を検討するのが科学的手順ではないのか。

現象だけを「規制法」や「ガイドライン」で抑制しようとしても、その原因に社会的(あるいは政治的)背景があれば、有効な策が採れるだろうか。


◎[参考動画]【報ステ】『桜を見る会』残る疑問・新たな疑惑(ANNnewsCH 2019年12月3日)

◆日本社会の中心を形成する「期待される人物像」で育った世代

もっともそんな面倒くさい作業をしなくとも、分析は簡単である。この国の文科省を中心とする文教行政が目指してきた「期待される人物像」がいよいよ現実の集合体となって、社会の中心を形成するようになり、権力中枢はその「副作用」に驚いたふりをしているだけだとみるのは、うがちすぎであろうか。

文科省を中心とする文教行政は、一貫して「論理的に思考しない、非政治的人物の育成」(もちろんそんな文言は公文書のどこにも登場しはしまい)を目指して、公教育や、中等教育、高等教育への介入を続けてきた。そしてその目論見は見事に結実した。極めて乱暴に決めつければ、もう集合体としての若者には「論理性も政治性」はありはしない。その確認が終わったので在野のどこからも要請がないのに「選挙権の18歳引き下げ」がさっさと実行されたのだ。この乱暴ながら与党にとっては目先利益となりそうで、耳障りが悪くない「選挙権の18歳引き下げ」はしかしながら「民法」の成人に対する定義と大きな軋轢を生む。卑近なところでは、飲酒、喫煙年齢をどうするかである。

今日的な官僚の仕事の仕方の延長線上には「18歳で選挙権を有する成長は確認できるが、飲酒喫煙による健康影響は以前のままであるので、飲酒喫煙については従来通り20歳以上とする」という専門家の意見付きの結論が準備されているはずだ。大学や企業は新入生や新入社員の歓迎会で「えー本日は大変めでたい席ではございますが、法律の定めにより20歳未満のかたはくれぐれもお酒は召し上がらないようにお願いいたします」と、真顔で注意をするだろう。

しかし若者が「べつに構わない」と思うのであれば、わたしは余計な口を挟まない。金魚鉢の中で育った金魚が大河の自由さを想像できないのは、致し方のないことなのだから。


◎[参考動画]「桜を見る会」追及本部が郷原弁護士を招き公開ヒアリング(videonewscom 2019年11月29日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

見よ、このタイトルを。教育利権を暴く総力特集と言って、はばかりないものだ。

 

月刊『紙の爆弾』2020年1月号好評発売中!

①「アベ友政治の食い物にされる教育行政」(横田一)
②「『幸福の科学大学』に萩生田文科相と癒着の構造」(藤倉善郎)
③「萩生田光一文科相が利権化目論む民間資格検定試験の実態」(三川和成)

内容を解説していくと、①が記述式導入(安西祐一郎=元慶応塾長・中央教育審議会会長のメモ)、英語民間試験導入(吉田研作上智特任教授)、そしてベネッセ人脈(シンクタンクの所長と理事)、東進ハイスクールの安河内哲也講師、ベネッセ関連団体の鈴木寛代表(元経産官僚・元参院議員)らの下村博文元文科相の人脈だ。派手な見出しキャッチを付けるとすれば、「民間試験導入に動いた闇の人脈とその利権――教育利権のネタにされた入試改革」とでもなるだろうか。

今後の取材の方向性としては、やはり教育産業とベッタリの下村博文元文科相の言動およびその裏にある利権構造の深さであろう。極右政治家でありながら開明派を気取り、文科官僚に強引な利益誘導を強いる(東大に民間試験導入をさせよと指示)手法は、とうてい看過できるものではない。

政治資金の闇(事実上の政治団体・博文会への反社資金)や「マルクス・レーニン主義の公教育を変えたい」という安易で的外れな言動(文部行政への参画時)など、この男の政治生命を早急に断つことこそ、反権力ジャーナリズムのテーマといえよう。

 

大川隆法『下村博文守護霊インタビュー』

その下村博文をすら守護霊インタビューし、その罵詈雑言や国家主義的教育観、岡田光玉(崇教真光の教祖で故人)との関係(幸福の科学大学の認可妨害)を批判していた幸福の科学教団が、萩生田文科相と癒着関係にあると指摘するのが②である。そもそも幸福の科学大学は、大川隆法の「霊言」を全学部共通科目にするなど、普通に考えて認可が認められるはずがないものだった。

にもかかわらず、幸福の科学は千葉県長生村に「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)を開設しているのだ。教団傘下の高校のみならず、早稲田大学や慶応大学に合格していた受験生(信者)も、この無認可のHSUに「入学」させたという。そしてじつは、下村博文元文科相および萩生田現文科相が、HSUの学長人事をめぐって教団と交渉をしていた事実があったこと。「守護霊本」の刊行をめぐる取り引きやアドバイスをしていたことが、記事のなかで暴かれている。

それにしても、トンデモ教団のトンデモ大学である。教団の「幸福の科学大学シリーズ」89冊のうち、「霊言」というワードが1280件も検索ヒットするというのだ。あるいは「守護霊」「悪魔」「宇宙人」「UFO」なども多数ヒットする、およそ学問とは呼べない教育内容のどこに、文科省が指導する余地があるのか。この教団の大学認可策動から目を離すことはできない。

さらに、やはり萩-生田光一文科相の民間資格検定試験への関与を暴くのが③である。

「身の丈発言」で結果的に、英語民間入試の問題点を暴露した萩生田文科相だが、じつはそれを称賛する背後に、文教族のリーダーが森喜朗から萩生田に移りつつある反映ではないかと、記事は指摘する。すなわちベネッセと下村博文の抜き差しならぬ関係である。ところが、問題はベネッセだけではないと記事は暴いてゆく。

◆「桜を見る会」を刑事告発とある夫婦の悲哀

浅野健一の「安倍晋三『桜を見る会』買収疑獄」は、安倍晋三の税金私物化を容共地検に告発した実録である。浅野によれば、公金を使った飲食接待(随伴文化人や御用メディア相手)は「桜を見る会」だけではないという。これらの行為は「業務妨害罪」「贈収賄罪」にあたるとの見解(高山佳奈子京大教授・刑法)もある(記事中)。評者は思うのだが、数百人・数千人単位での集団民事訴訟を提起してもいいのではないだろうか。使われているのは、われわれの「血税」なのだから。

いっぽうで、安倍総理夫妻に切られた人々の悲哀は、読むに堪えないほどのものがある。「【森友事件】籠池刑事裁判 これは“首相反逆罪”か『夫婦共7年求刑』の無法」(青木泰)だ。たしかに補助金の不正受給があったのは事実で、籠池夫婦も認めているものだ。不正受給額の約2000万円は全額返済している。

にもかかわらず、詐欺罪で7年もの求刑が行われたのだ。あれほど肩入れしておきながら、不正受給や巨額の「不正」国有地払い下げがマスコミの餌食になるや、手のひらを返したように「わたしたち夫婦は無関係」(安倍総理)とばかりに切り捨てる。そして信義違反を告発するや、総理の意を汲んだ検察は、このレベルの事件では「極刑」に近い求刑を行なう。すでに文書改ざんで下級官僚が自死し、臭いものにはフタという流れの中でのスケープゴートである。

今回も自分の好み(政局・疑獄好き)で選んだ書評となったが、読んでお徳の600円(税込み)である。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他

国会が閉幕し、安倍総理の「桜を見る会」疑惑は逃げ切った感があるものの、本質的に「お友だち」「上級国民」「反社との結託」「官邸による官僚統制=忖度」という政権を成り立たせている構造があるかぎり、政権の腐敗はくり返し暴露されるであろう。

◆自らが出席した会議で決まった「反社会的勢力の定義」を「一義的に定まっているわけではない」と言い放った菅義偉官房長官の厚顔

本連載「『反社会勢力』という虚構」をお読みになっている方には、別に愕くようなことではないかもしれないが、じつに安倍政権らしさも明るみに出た。安倍政権が支援者や仲間うち(本来の目的は功績があった人たち)を招待した「桜を見る会」に、反社会勢力とおぼしき人々が参加していたという一件だ。

しかも、その疑惑を指摘された菅義偉官房長官は、しれっとした表情でこう言い放ったのだ。

いわく「『反社会的勢力』は様々な場面で使われ、定義は一義的に定まっているわけではないと承知しています」

「えっ……?」

この「反社会的勢力」の「定義」は、じつは安倍政権において定められたものなのだ。第1次安倍政権下の2007年6月、「犯罪対策閣僚会議」が決定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」のなかで「反社会的勢力」は、以下のように定義されている。

「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」

ちなみに菅義偉官房長官は、当時総務大臣としてこの閣僚会議に参加している。みずから出席した会議で「定義」した反社会的勢力が、「定義は一義的に定まっているわけではないと承知している」と言うのだ。もはやこの人の言葉はまともに聴いても仕方がないというべきであろう。


◎[参考動画]反社会的勢力入っていた/菅官房長官 定例会見 【2019年11月26日午後】(テレ東NEWS)

「やや日刊桜を見る会新聞」と題する怪文書

[写真A]

ではなぜ、こんな無定見きわまりない答弁に追い込まれたのであろうか。[写真A]「やや日刊桜を見る会新聞」など、ネットで流布しているものだ。「週刊新潮」(12月12日号)によると、有名な反グレAの企業舎弟と言われる人物だという。犯罪歴は住宅ローン名目で金融機関から4600万円の詐欺で逮捕、知人の頭をビール瓶で殴る暴行罪で逮捕、牛を殺して「畜場法違反」で逮捕と多彩である。代紋を持って一家を構えたヤクザではないものの、それゆえに組織的な歯止めがきかない「準暴力団」としての野放図で危険な人物というべきであろう。

菅官房長官が「出席は把握していなかったが、結果的には入ったのだろう」と定例会見で述べている以上、菅氏自身がその正体を知っているのは明らかだ。というよりも、見た目で危なさが分かったはずではないか。ヤクザも反グレも「わたしたちは危険です」と堅気に知らせるためにこそ、派手な服を着たり茶髪に染めたりするのだ。そういう人物とツーショットに納まるとは、いかにも警戒心がなさすぎる。いや、そもそも近づいてくる人間を排除しないのが自民党政治なのである。そして安倍総理だ。

◆自民党政治は反社との結託で成立している

[写真B]はテロップのとおり、奈良県高取町の新澤良文町会議員(52歳)である。そしてその新澤氏が[写真C]上段において、派手なジェスチュアでスリーショットを喜んでいるのは、言うまでもなくわが安倍総理だ。新澤氏は五代目山口組山健組系の臥龍会に所属していた、れっきとした元暴力団組員である。週刊誌の取材によると、新澤氏は率直にその事実をみとめ、こう語ったという

[写真B]

[写真C]

「入れ墨も入っており、逮捕歴があるのも間違いありません。抜けたのは30歳のころ。組が代替わりして、冷や飯を食わされるようになったのがきっかけです。これはキチンと言わせていただきたいんですが、いまはカタギとして真面目にやっています」

立派な態度ではないか。すでに組織を離脱してから20年近くが経っているばかりか、FBを見るかぎり地元での熱心な議員活動も感じられる。過去記事(日本タイムス)によれば、警察関係者は新澤氏のことを「今も山健組の幹部と交流があります。服役は3回あり、殺人未遂で7年、暴行では1年入っています。全身入れ墨、左小指が欠損しています」という。絶縁されたわけではないようなので、現役の組員と親交があることも想像に難くない。これをもって、安倍総理と新澤議員の親交をとがめだてようとは思わない。むしろ反社の「定義は一義的に定まっているわけではない」ことを安倍政権において、正々堂々と閣議決定して言動の一貫性を保つべきではないか。

われわれ国民は「行政文書たる参加者名簿は破棄し、サーバーに残っている電子データは一般職員が使えないから、行政文書ではない」などという子供じみた屁理屈と同様に、「反社は定義がない」などと、薄っぺらな言い訳に辟易しているのだ。そして安倍総理や菅官房長官に反社につけ入られる「スキ」があるのではない。理念や政策によらない、人脈(誰でもよい)と金脈(利権配分)で成り立っている自民党政治がそもそも、反社といわれる人々と分かちがたい関係にあるからだ。

何度でも確認しよう。自民党政治は本質的に反社勢力との結託で成立してきたし、これからもそれは変わらない。伝統的な代紋の代わりに、一般企業を装ったり業界団体名を名乗ったりと形を変えても、基本的に利権誘導党派であるかぎり反社的な人物と結びついてしまうのだ。

そして独自の権益で反社を追い落とし、みずからがその利権を独占しようとする警察庁官僚がその関係を排撃するにつれて、反社の資金と集票力に依拠する自民党政治は股裂きに遭うのだ。

◎【横山茂彦の不定期連載】「反社会勢力」という虚構 

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

本日発売!月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

12月3日午後パソコンで作業をしていると、ニュースサイトに「中村医師撃たれる」のニュースが掲載された。

TV朝日「アフガンに水と食糧を 洪水と闘う日本人 中村医師」より

当初は「命に別状はない」との記載に安堵したのもつかの間、数時間後には中村医師ご逝去の報道がなされた。

◆ペシャワール会と書家・龍一郎さん

鹿砦社は今日に至るまで微力ながらペシャワール会を継続的に支援してきた。鹿砦社に中村哲医師と直接お会いしたスタッフはいない。

しかし11月10日同志社大学で開催された同志社学友会倶楽部主催の、書家・龍一郎(本名:井上龍一郎)さんの講演会『教育のあり方を問いかけた ゲルニカ事件から30年の想い』の演者、龍一郎さんはペシャワール会の事務局スタッフであり、講演の中でペシャワール会の紹介を予定されていた。

TV朝日「アフガンに水と食糧を 洪水と闘う日本人 中村医師」より

講演に熱がこもったため、講演内でのペシャワール会の紹介時間はなかったが、その後開かれた懇親会の席で、龍一郎さんは熱心にペシャワール会への支援を呼びかけ、チラシを配布された。

龍一郎さんご自身もアフガニスタン出向かれたことがあるそうで、現地のお話を個人的に伺い大変興味深く「一度中村医師に取材させていただけませんかね」と問うたところ「無理やと思うわ。現地に張り付いとるからね。日本医師会に頼まれた講演も現地の事情でキャンセルしたことがあったしね」とのお答えに、「お話を聞くにはアフガニスタンまで伺う必要があるな」と中村医師の迫力を間接的ながら感じさせられた。

龍一郎さんが配布されていたペシャワール会の紹介チラシ

龍一郎さんが配布されていたペシャワール会の紹介チラシ


◎[参考動画]「アフガンに”水と食糧”を 洪水と闘う日本人 中村医師」TV朝日「ニュースステーション」より(LunaticEclipsAfghan3 2011年2月18日)

TV朝日「アフガンに水と食糧を 洪水と闘う日本人 中村医師」より

米国を中心とする多国籍軍が、アフガニスタンに不当な侵略戦争・爆撃を続けた時期であったと記憶する。中村医師がどこかのメディアで「殺しながら支援をするということがありうるだろうか」と、静かながら怒りを秘めて発言された姿が忘れられない。

あの時、首相小泉(=日本)は米国を中心とする多国籍軍の侵略戦争へ全面的に加担し、アフガニスタンの市民虐殺に手を貸した。「タリバン政権」が狂気の独裁政権のように報じられる中にあって、中村医師は「現地に居ると日本の報道とずいぶん感じ方が違うんです」と淡々と、善悪2元論でしか実態を報道できない日本のマスメディアに、根底的な問いかけと批判を展開されていた。静かな言葉と頑固と表現してもよいほどの断固たる意志をもった行動。医療から灌漑事業まで手を広げた中村医師は10月に外国人として初の「アフガニスタン名誉国民」に任命されるほど、アフガニスタンでの尊敬が厚かった。

◆日本が世界に誇れるものなどほとんどなくなったこの時代に……

TV朝日「アフガンに水と食糧を 洪水と闘う日本人 中村医師」より

そして、龍一郎さんのお話によれば、現地の状況は、いまだに簡単な構図ではないようだ。報道ではひたすら「タリバン」、「IS」ばかりが登場するが、歴史的部族社会のアフガニスタン国内の力学は、それほど単純なものではなく、その中での長年の継続的支援活動は超人的ともいえよう。

日本が世界に誇れるものなどほとんどなくなったこの時代に、ひたすら現地の人に寄り添って生涯を終わられた中村医師に、軽率な言葉はかけられない。ただし中村医師の生きざまと行動を現在のわれわれを自己点検する「かがみ」として捉えることは許されるだろう。「集団的自衛権」、「改憲」、「武器輸出解禁」、「アジアへの侮蔑」……。中村医師がアフガニスタンから日本を語ったらどんな言葉が返って来ただろうか。

合掌


◎[参考動画]誤爆続くアフガンで中村医師 密着「緑の村と学校を作る」02(LunaticEclipsAfghan3 2010年3月16日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

月刊『紙の爆弾』2019年12月号

◆消費不況が引き起こす新たなデフレスパイラル

消費税の価格転嫁による便乗値上げは、少なくとも小売り市場では起きなかった。原油価格と原材料の高騰、あるいは気候変動による不作によって、今春いらいの物価高騰が、ぎゃくにキャッシュレス値引きや軽減税率に「便乗した」値引き競争で、むしろデフレ不況の再燃を生じさせているのだ。とくに、キャッシュレスで差異が生じるスーパーマーケットとコンビニにおいて、値引き競争が激化している。

にもかかわらず、買い控えによる消費不況が新たなデフレスパイラルを引き起こしかねないという観測がもっぱらだ。財布のチャックが硬くなったのは、筆者も実感するところだ。その意味では、この国の経済にとって消費増税は積極的なものではないと断じることができる。

◆麻生太郎と安倍晋三の対立

もともと消費増税は、財務省を中心とした伝統的な緊縮派(主流派経済学)による、財源優先の経済政策によるものだ。ご本人たちにはどこまで事の本質への理解、あるいは意識があるかは知らないが、麻生太郎と安倍晋三の対立なのである。麻生太郎をかつぐ財務省官僚(元大蔵官僚派)と、安倍総理のブレーン(旧通産・経済企画庁官僚)との対立のなかで、緊縮財政(消費税)とアベノミクス(リフレーション)とが確執してきたのが、安倍政権の経済・財政政策なのである。

旧経済企画庁系の官僚がケインジアンであるのは、霞が関ではよく知られるところで、第二次安倍政権はまさにリフレ派のブレーンによって構成されてきた。ところが安倍政権は、その政権発足の経緯(消費増税の三党合意)から、反リフレ派の足かせを嵌められていた。もとより、大企業優先のアベノミクスで消費の拡大は画餅と化し、スケジュールどおりに旧大蔵官僚の思惑が実現したわけだ。

◆なぜ、アベノミクスが失敗したか

問題はなぜ、アベノミクスが失敗したかということだ。

賛否両論ある、というよりも、ほとんどまともに理解されていないMMT(現代貨幣理論)において、アベノミクスは異次元の金融緩和を行ないながらも、消費市場におカネを流通させることができなかったのだ。ひたすら大企業への融資を拡大させ、そのいっぽうで大企業への優遇税制および輸出還付金などの優遇政策を行なってきた。

たとえば、わが国の基幹産業ともいえる自動車では、トヨタ自動車への還付金は3231億円、日産・マツダなども併せて8311億円の還付金を受けているという。これらは自動車メーカーが納めるべき法人税に匹敵するから、税金を納めていないのと同じことになる。

まもなく昨年度末段階の財務省の法人企業統計が発表されるはずだが、去年(2017年分)は企業の内部留保は446兆4844億円だった。2018年よりも40兆2496億円(9.9%)増である。安倍総理が「悪夢のような民主党政権」「経済は、わが党が政権を担うことによって、良くなったんです」と力説するのは、小泉政権いらいの労働市場の自由化(派遣労働者の増加)とともに、この大企業の内部留保を可能にした経常利益の増大にほかならない。数字を挙げておこう。

昨年発表の経常利益は、前年度比11.4%増の83兆5543億円。8年連続の増益で、比較が可能な1960年度以降で最大である。国内の設備投資額も同5.8%増の45兆4475億円と、リーマン・ショック直前の2007年度の水準を上回り、2001年度以降では過去最大となった。日本経済はGDPの低迷にもかかわらず実質的に成長をつづけ、そのいっぽうでは大企業が内部留保することで、いびつな分配構造をつくってしまったのだ。とくに若い世代の購買力の低下、自動車やマイホーム購入、あるいは趣味や遊びにおカネを使わない。いや、使えない現実があると指摘しておこう。このような不公平な分配のもとで導入された消費増税は、まさに国難規模の愚策というほかない。税政の専門家によれば、ふつうに大企業から徴税すれば、年間23兆円の税収増が可能だという(『消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制』)。

◆永遠に財政破綻しない政府

アベノミクスとの照応で、MMTに懐疑的な向きが少なくない。2%のインフレターゲットは、マイナス金利に踏み切っても達成できなかった。この失敗はしかし、上記のとおり消費市場にカネを出まわらせず、ひたすら大企業の内部留保に貯めこまれてしまったからだ。給料が上がらず、物価が上がっているうえに消費増税をやってしまったのだから、インフレに転じるはずがない。

MMTに関する無理解はおそらく、実体経済と名目経済の概念を知らないからだ。国の借金を財源にするかぎり、かぎりなく借金が増えることで財政が破綻すると。いわく、財政破綻のすえに、ハイパーインフレーションが到来すると。そうではない。

歴史的に、わが国もハイパーインフレを経験したことがある。それは戦前(1915年~)と戦後1950年代の戦争景気インフレではなく、敗戦による物資不足によるものだった。ドイツの戦間期不況も消費財とくに食料の不足であって、基幹産業であるドイツ鉄鋼資本はインフレ時には微動だにしなかった。

その結果が、国民は賠償金で飢えているけれども、ユダヤ資本や鉄鋼貴族は稼いでいるという、下からのファシズムの動因となったのである。いまの日本で、災害いがいの物資不足が心配されるとは思えない。むしろ過剰生産によるデフレに陥っているのだから。

それではMMT反対論者が云う、デフォルト(財政破綻による債務不履行)の危惧はどうだろうか。2000年にアルゼンチンがデフォルト(債務不履行)を宣言している。これはアルゼンチンがアメリカから、ドル建てで借りていた債務(公的対外債務)が支払い不可能に陥ったために、デフォルトを宣言する事態になったものだ。

 

『情況』2019年7月号

国家が債務不履行に陥るのは、上記のアルゼンチンの他にも1998年のロシア、2012年のギリシャ(ユーロ建て国債)のように、外国から外国通貨建て(共通通貨建てを含む)で借金している場合だ。つまり、外国からの借金・債務は逃れがたい。ぎゃくにいえば、中央銀行のオペ買いでお札を刷っている場合には、名目経済で借金増大するものの、実質的に借金は自分で自分から借金をしているに過ぎないのである。

簡単にいえば、政府が通貨発行権を持つ自国通貨建てである限り、そして政府に返済の意思がある限り、いくら発行しても債務不履行になることはあり得ない。永遠に財政破綻しない政府であれば、債務を完全に返済し切る必要もなく、国債の償還の財源が税金である必要もない。国債の償還期限が来たら、新規に国債を発行して、それで同額の国債の償還を行う借り換えを永久に続ければいいのだ。

問題なのは、リフレーション政策にともなう分配方法なのである。手前味噌で申し訳ないが、わたしが編集した『情況』(7月発売号)のMMT特集では、賛否両論を掲載しているので、お暇なおりに参照されたい。その先にある財政と消費をめぐる議論は、AIを駆使した配分方法、ベーシックインカムなどの新しい経済システムであろう。それを新たな社会主義思想と呼ぶべきかどうかは、またの機会に論じたいと思う。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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◆二度目の不当弾圧を許すな!

11月26日、大阪府警・西成警察署は、「あいりん総合福祉センター」(以下センター)北西角の監視カメラに対する威力業務容疑で、計4名5ケ所で家宅捜索を行った。11月6日の4名逮捕に続く二回目の弾圧だ。

「あいりん総合福祉センター」の監視カメラ

先の逮捕容疑は、5ケ月前の5月31日、前出の監視カメラに軍手を被せたというものだ。釜ケ崎では、4月1日「センター閉めるな」と訴える人たちが、閉鎖を断念させ、その後自主管理が行ってきた。4月24日大阪府警と国、府が暴力的に排除してきたが、それ以降も団結小屋を拠点に活動が続いている。

問題の監視カメラは、もとは西成労働福祉センターの業者用駐車場に向けられていたが、その後労働者や支援者が多数出入りする団結小屋に向きを変えていた。周辺には野宿する者も多数いるのに。労働者と支援者らは、「プライバシーの侵害、団結権の侵害だ。向きを変えろ」と申し入れてきたが、向きを変えることなく、逆にカメラに軍手を被せただけで逮捕となった。

反弾圧を闘う大勢の仲間の力で、4名は2泊3日で全員釈放された。検事が裁判所に勾留を求め、裁判所が認めなかった決定書には、「同種事案の中では軽微な部類に属する」と書かれてあった。確かに、軍手を被せただけで、カメラを棄損したり、向きを勝手に変えてはいない。今回の弾圧は、5月31日後、再度監視カメラにスーパーのレジ袋を被せたことへの弾圧だというが、前回、長期勾留の嫌がらせに失敗した警察は、さすがに逮捕は出来なかった。

◆警察・行政一体で進む「まちづくり」で、だれが排除されてきたか?

釜ケ崎での一連の不当弾圧は、この間、国と大阪府・大阪市、そして大阪府警が一体になって進める「西成特区構想」を進める過程でおきている。じつはこうした動きは、2011年4月5日、7名が逮捕された釜ヶ崎大弾圧から始まっている。その後4名が「威力業務妨害」で起訴され、裁判で全員に有罪判決が下された。逮捕容疑は、前年2010年7月11日、萩之茶屋小学校で行われた参議院選挙の投票会場で、投票業務に従事している市職員らの業務を妨害したというものだった。

これら夢のような構想はどこへいったのか?

さらにさかのぼる2007年3月、大阪市は、釜ヶ崎地域合同労組が入る「釜ヶ崎解放会館」に置かれていた約2000名余りの住民票を、職権で削除するという暴挙を行った。釜ヶ崎にはドヤや飯場を行き来するため、住民票を置く場所がない者も多く、住民票がなければ、健康保険や免許証が取れない、仕事に必要な携帯電話も購入できないと、困った労働者らが行政に相談したところ、「解放会館へ(住民票を)置けばいい」と指導され、そのやり方が30年以上も常態化していた。

そうしたなか、突然住民票が奪われたのだ。4月の統一地方選挙で投票できないことを危惧した組合や支援者らが、2010年7月11日にも、参議院選挙が行われた萩之茶屋小学校前に出向き、選挙権をはく奪された野宿者の選挙権回復を求めると共に、検挙権を回復する可能性のある人たちに対して、投票業務に従事している市職員らが適正に対応するか監視する活動を行ったのだ。こうした全く正当な行為が、「威力業務妨害」とされ、弾圧されたのであった。

じつは同じ時期、センター周辺と西成警察署裏の屋台が相次いで強制撤去されている。センター周辺の屋台については、年に数回、市の職員と屋台関係者が共同し、屋台周辺の消毒作業をやることで、容認されてきたし、警察署裏の屋台についても、関西電力が屋台毎に正式に契約しメーターをつけるなどしており、営業は事実上容認されてきた。それがいきなりの強制撤去である。屋台で何十年も生計をたてていたおばちゃんらは、「暮れにいきなり閉めろなんて、正月も越せない。せめて次の準備をする時間をくれ」と交渉し、数ヶ月延ばしてもらった。

こうして野宿者と屋台、露店商、そしてヤクザが次々と排除されてきた。この間、ヤクザ、暴力団を反社会的勢力と呼ぶようだが、私はそれには反対だ。「反社会的」の意味が恣意的に拡大され、弾圧の対象範囲をも拡大する危険性を伴うからだ。

釜ヶ崎では長年にわたり、ヤクザと警察はズブズブの間柄だった。当時、三角公園の周辺にずらりと並ぶノミ屋(違法賭博場)の前には、シケハリと呼ばれる見張り番が立っていたが、軽らの警察官が回ってくると、一斉に「ごくろうさまです」と挨拶していた。違法賭博場であることは周知の事実だが、取り締まらず、なかには笑顔で答える警官もいた。1990年には、西成警察署の署員が、暴力団から賄賂を貰ったことが発覚したことに端を発する暴動もおこっているほどだ。こうしてヤクザを利用したり、違法でも放置してきたくせに、「コンプライアンス」云々が叫ばれたり、不必要、邪魔となったら、いきなり首をきる、「ケチって火炎瓶」として話題になった安倍晋三とヤクザの関係と同じではないか。

西成警察主導の「あいりんクリーンキャンペーン」。後ろで手を組む警察官が並ばせた労働者を怒鳴り付けていた

◆次々に弾圧されるのは、大阪維新の進める「まちづくり」に邪魔な人たちだ!

今回の一連の弾圧の背景には、大阪維新の「西成特区構想」で進められる「まちづくり」が大きく関係している。大阪維新は、釜ヶ崎の労働者の唯一の「寄り場」であるセンターをつぶし、広大な更地を確保し、ひと儲けしようと企んでいる。「耐震性に問題がある」として、労働者の「寄り場」は無理やり閉鎖されたが、その上の医療センターは未だに通常営業し、多くの患者が入院している。「危険なセンターにおっちゃんを閉じ込めていいの?」などと言いながら、患者はどうなってもいいのか? しかも「耐震性に問題がある」とセンターをつぶす一方で、耐震性に問題のない第二市営住宅までつぶすという。それも税金を使ってだ。それもこれも使い勝手のいい、きれいな「台形」の更地が欲しいからにほかならない。

かつてゆっくり横になれたスペースはもう作られない

有識者や地域の「代表」らが集まって、その台形に、どんな町をつくろうかという様々な会議が、長年税金を使って行われてきた。10月28日開催された「第45回労働施設検討会議」の議事録(案)によれば、今のところ、その台形の更地に作られる予定であるのは、南海電鉄高架下の仮庁舎に移された国の管理する「あいりん職安」と、大阪府が管理する「西成労働福祉センター」だけのようだ。面積はほぼ、仮庁舎と同じ、つまりもとのセンター内にあった、ゆっくり横になれるスペースや水飲み場、シャワー室、洗濯場、足洗い場、娯楽室などはないようだ。

一方、新今宮駅前の「地価が高い」北側は、広大な駐車場になるようで、ここにも労働者の居場所はない。かつて道路やビルを作り、日本経済を下支えしてきた労働者が、あるいは生活に困窮した人たちが最後の最後にたどり着き、どうにか命を永らえさせてきた釜ヶ崎は、もう必要ないということなのか? 誰も切り捨てない、排除しない町、差別しない町、それが釜ヶ崎ではなかったのか?

「ジェントリフィケーションにならないように」とまちづくり会議の識者らは言うが、前述したように、すでに排除と弾圧は山ほどやられている。いま狙われているのは「センターつぶすな」と主張する、私たち「邪魔者たち」だ。関西生コンへの不当な弾圧など、あらゆる権力の弾圧と闘う皆さん! ぜひ釜ヶ崎の闘いにご注目いただきたい。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。最新刊の『NO NUKES voice』21号では「住民や労働者に被ばくを強いる『復興五輪』被害の実態」を寄稿

月刊『紙の爆弾』12月号

季刊『NO NUKES voice』21号 創刊5周年記念特集 死者たちの福島第一原発事故訴訟

「SNSで助けを求めていた子を助けてあげた。正しいことをした」

共同通信の報道によると、大阪市の小6女児誘拐事件の容疑者・伊藤仁士(35)が、逮捕前の調べでそのような趣旨の供述をしていたという。これをうけ、ネットでは、伊藤が自分の犯罪を正当化している可能性や、刑事責任能力が無いと装って罪を免れようとしている可能性を疑う声が飛び交っている。

しかし、伊藤が取り調べでそのような異常な供述をしているのが事実なら、本当に精神障害を患っている可能性が高いとみるのが妥当だ。過去の同種事件でも、犯人が精神障害に陥っており、取り調べや法廷で異常な供述をした例が複数あるからだ。

◆精神障害でも有罪とされた2人の女児監禁犯

1人目は、埼玉県朝霞市の中1女児監禁事件の寺内樺風(27)。2016年に逮捕された当時、千葉大学の学生だった寺内は、被害女児を自宅で2年余り監禁していた間、アサガオの種で合成麻薬のようなものを作り、少女の食事に混ぜて食べさせていたとされる。これだけでも相当異常だが、さいたま地裁での公判でも裁判長に職業を聞かれ、「森の妖精」と答えたのをはじめ、「私は日本語がわからない」「ここはトイレです」などと意味不明な言葉を次々に発し、世間を騒がせた。

そして2人目は、2012年に広島市で小6の女児をカバンに入れ、タクシーで連れ去ろうとした小玉智裕(27)。小玉は当時、成城大学の学生だったが、事件を起こした時は運転免許を取得するために広島市に滞在していた。逮捕された時は小玉を取り押さえたタクシー運転手や社会人野球選手のお手柄が話題になったが、広島地裁の裁判では、「自分の手足になる人間をつくろうと思った」「植物工場を作って、研究者や労働者にしようと思った」などと特異な犯行動機を語った。

そんな2人はいずれも裁判で完全責任能力を認められ、寺内は懲役12年、小玉は懲役3年の判決がそれぞれ確定している。だが、寺内については、精神鑑定で発達障害の一種である自閉スペクトラム症の傾向があったと判定されており、小玉も精神鑑定で「広汎性発達障害を基盤とする空想癖」があり、それが犯行に影響した判定されていた。社会の注目を集めた重大事件では、被告人が犯行時、明らかに重篤な精神障害に陥っていた場合も裁判で完全責任能力を有していたと認定されるのが常だが、この2人もそうなったわけである。

◆伊藤が異常発言をしているのが事実なら・・・

翻って、今回の大阪女児誘拐事件の伊藤については、現時点でまだ責任能力について深く考察しうるに足る情報は報道されていない。しかし、寺内や小玉に続き、女児を誘拐したり、監禁したりしようとした犯人がまたしても精神障害を疑わせる発言をしている事実だけでも重要だ。

精神障害者の犯行というと、刃物を振り回して無差別に人を刺し殺すような事件のイメージが根強いが、女児を誘拐したり、監禁したりする犯行も精神障害者にありがちな犯行なのではないだろうか。伊藤が報道されているような異常発言をしているのが事実なら、少なくともその可能性が浮上していると言える。

重大事件で犯人が精神障害に陥っている可能性が論点になると、犯人が責任能力を否定されて罪を免れたり、刑が軽くなったりすることを想像し、冷静な思考ができなくなる人は少なくない。しかし、同種犯罪の再発防止のためには、まずは冷静に事実関係を見極める必要がある。

伊藤が身柄を拘束されている大阪府警察本部

▼片岡健(かたおか けん)

全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(笠倉出版社)も発売中。

月刊『紙の爆弾』2019年12月号

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

11月21日大津地裁で滋賀医大病院の患者であった4名が、同病院泌尿器科の河内明宏、成田充弘両医師を相手取った「説明義務による損害賠償請求訴訟」の証人調べが行われ、この日は岡本圭生医師が証人として証言台に立った。

2週間ほど前に、大津地裁はこの日の法廷の傍聴を抽選とすることを、HPで発表していた。抽選で傍聴席に入ることのできる数は38名だ。患者会を中心の38を大きく上回る人数の方々が抽選を受けた。

岡本圭生医師

◆証言台に立った岡本圭生医師

10時30分、開廷の法廷では、この裁判で初めて記者席が設けられ、開廷前にはMBSによる法廷撮影も行われた。原告側は原告のお二人を含め弁護団など総数9名が着席、岡本圭生医師も着席し2分間の法廷撮影が行われた。法廷撮影の際、被告側代理人はなぜか入廷せず、不思議な印象を受けたが、その原因は閉廷後明らかになる。

ほぼ定刻通りに開廷が宣言され、原告、被告、補佐人(岡本医師)3者から書証の提出があり、弁論及び確認されたのち、岡本医師が宣誓を行い。証言に入った。原告側から岡本医師の質問を担当したのは、古山力弁護士だ。質問は岡本メソッドの特徴や、放射線医との連携の方法などを確認することからはじまり、標準的小線源治療と岡本メソッド違いを具体的な例を挙げながら明らかにしていった。

そして古山弁護士が「シード挿入のための穿刺(せんし)の技術について、被告らは『前立腺の“生検”(前立腺にがんがあるかないかを細胞を取り出し調べる検査)ができれば可能であると主張していますが、そうなんでしょうか」との質問を発すると、岡本医師は「私のやっている施術は、被膜ギリギリに穿刺をする、理想的な針の配置をするものです。ポジショニングからシードを置いていくのは、ミリ単位の精度を要する技術です。単純に前立腺の組織を針を刺して取ってくるのとはまったく異なる、まったく違うものです」と「生検ができれば小線源治療ができる」との被告側の認識の誤りを、明確に否定した。

質問はさらに滋賀医大内の「医療安全委員会」で岡本医師に対する合併症の指摘がなされたことに移ったが、この件については、偶然にも期日の4日前に「朝日新聞デジタル」が「患者の同意なくカルテを外部に示す 滋賀医大、外部の医師に」との記事で問題が取り上げられており、滋賀医大ぐるみで岡本医師を陥れるための工作が展開されたとして、滋賀医大の行為は個人情報保護法違反の疑いがあると指摘されていた。「説明義務による損害賠償請求訴訟」と直接の関係はないものの、滋賀医大に巣くう「法律軽視・無視」体質が露呈した事件であり、ここでも岡本医師への誹謗中傷を狙った攻撃であることから、「医療安全委員会」についての質問がなされたのであろう。

続いて、被告成田医師と岡本医師がどのような関係にあったのか、成田医師がひとりで小線源治療施術可能だったのか、被告が主張する「チーム医療」体制があったのかどうかを明らかにする質問が発せられた。

◆岡本医師の印鑑が勝手に使われ、偽造文書が被告側から裁判所に「証拠」提出されていた!

そしてこの日、最大の驚愕の事実が明らかになる。古山弁護士が「乙C10の3枚目を示します。これは泌尿器科講座の教授である河内教授と小線源講座特任教授である岡本先生の連名で作成され、成田准教授を小線源講座の兼務を学長に求めるものです。これは被告らから裁判所に証拠提出されています。証拠提出される前にこの書面の存在を知っていましたか」の問いに対し岡本医師は「知りません」と回答、古山弁護士が「見たこともありませんか」と確認すると「岡本医師は見たこともありません」と明確に答えた。さらに古山弁護士が「右上に岡本先生の名前がありますね。そのに「岡本」の印が押されたものですが。印を押しましたか」と聞くと岡本医師は「押したことはありません」と回答。

大変な事態が明らかになった。岡本医師の印鑑が勝手に利用され、文書が偽造され、こともあろうにその偽造文書が裁判所に被告側から「証拠」として裁判所に提出されていたのだ。つづく質疑で岡本医師は「この件については大津警察に刑事告発をして、現在捜査中だと伺っています」と事件は民事から刑事へと広がりを見せていることを明らかにした。

ついで、被告側代理人からの反対尋問に移ったが、取り立てて報告すべき内容はないのですべて割愛する。

偽造された有印公文書

岡本圭生医師(中央)

◆「被告側の反対尋問は枝葉末節…主尋問の根幹は全く崩せないで終わった」(井戸謙一弁護団長)

裁判終了後、弁護士会館で記者会見が行われた。

井戸謙一弁護団長が冒頭「今日は傍聴席を埋め尽くしていただきエールを送って頂きあがとうございました。皆さんもお分かりになったと思いますが、岡本先生は40分でぴったりと素晴らしい証言をして下しました。被告側の反対尋問は枝葉末節なところをちくちくと突くというもので主尋問の根幹はまったく崩せないで終わったと思います。争いの中心に至るものではありませんでした。次回以降は病院側の関係者の証人尋問になります。こちらが反対尋問をする立場になりますので、充分準備して臨みたいと思いますので引き続き支援をお願いいたします」と総括した。井戸弁護士は次の予定があるためにここで退出した。

◆「標準的小線源治療もやったことのない成田医師が岡本メソッドをできるのか…」(古山力弁護士)

引き続き尋問を担当した古山弁護士が期日の概略を報告した。

「本訴訟の中心はあくまでも原告の方々ですが、岡本先生がどのように関わっておられたか、そして岡本メッソドとはどのようなものであるか、特殊なものであるので陳述書には書かれていますが、口頭で説明頂くのが良いと判断しました。時系列ではなくピンポイントで質問をしました。重要なことを申し上げますと、被告らは岡本医師が指導医での成田医師の治療を計画していました。『本当にそんなことができるのですか』、ということをまず岡本先生から説明してもらいました。成田医師をやったことはない。これは争いのないことです。では標準的小線源治療もやったことのない成田医師が、本当に岡本メソッドをできるのかと。そもそも小線源治療とはどういうものなのか岡本メッソドとはどういうものなのかを説明していただき、未経験のものがやるとどれくらい危険なことかを主に話していただきました。その絡みで今回の原告の皆さんにはどんな不適切なことがあったのかを説明していただきました。後半は成田准教授について偽造文書が出ていたこと、成田准教授をどのように止めたかなどを聞きました」との報告があった。

◆「権力に任せて不正を横行させる連鎖は断ち切らないといけません」(岡本圭生医師)

次いで岡本医師の話があった。

「まず弁護団の先生にお礼を申し上げます。ようやくこの日を迎えられ私の仕事ができました。また今日もたくさんの患者さんたちが来ていただき、これが私にとっての心の支えです。わたしの願望は今も待っている前立腺がんの患者さんを一刻も早く今まで通りに助けられるようになりたい。どうしたらいいか皆さんの力やお知恵をお願いしたいと思います。今回の問題は故意の『説明義務違反』です。成田医師に経験があろうがなかろうが、最初から最後まで患者さんを騙さないといけないことをやろうとする。それがばれそうになったら隠蔽して逃げ切ろうと考えている。こんな国立大学病院を許してはならないということです。私と大学の闘いではもちろんないわけです。ここにおられる待機患者さんを含めてこれは一つの革命だと思います。医療を医学村=一部の権力者の私有物に留めるのか、患者・市民が取り戻すのかその闘いだと思います。人は死んでいませんが極めて事件性の高い問題なのでジャーナリストの方もしっかりと記事を書いていただいて、大いに『医療は誰のためにあるか』を真剣に議論していただきたいと思います。
 相手側の弁護士の質問には特にいうことはありません。最初の質問で『相手にならないな』と思いました。滋賀医大は一度リセットしなければ仕方ないでしょう。声を挙げようにも上げられない病院、学生。こんなファシズムのような大学は一度リセットしないとだめです。来週以降管理者たち、自分達のメンツを守るために、皆さんの命を犠牲にしようとした連中が出てきます。陳述書は配布した通りですが、今回分かったことは滋賀医科大学は司法の場にも常に、捏造したものを出してくることです。19日に朝日新聞が私のインシデントについて勝手に外部に出している。あるいは「事例報告委員会」なるものが、開かれてもいないのに議事録をでっちあげてインシデントをでっちあげている。あるいは、病院のホームページで私の小線源治療が、大したことはないと貶めるような捏造を掲載し、大阪高裁における仮処分の抗告にまで出している。
 極めつけがこれです。きょうも争点になりましたが『成田准教授を併任准教授にする』という文書。私が成田准教授は併任準教授にふさわしいとしている。これは裁判に初めて出てきて、こんなものがあったと知ったわけです。明かな有印文書偽造・行使です。この件は大津警察で告発が受理されています(告発人は岡本圭生医師、被告発人は河内明宏医師、告発日は2019年7月2日)。受理されているということは捜査中ということです。この点どうなっているのかをジャーナリストの方々は大津警察に是非追及していただきたいと思います。こういうものを司法の場に次々に出してくる。どうしようもないと思いますよ。これでは滋賀医科大学は公益法人として成り立たない。来週以降も管理者や脅されて寝返ってしまった放射線科の河野医師も出てきます。こんな風潮が漂っている限り、患者さんは安心して受診できないし、学生さんは安心して勉強できません。
 私に突きつけられた状況はヤクザの舎弟になるのか、正義を果たしたらお前は打ち首だということです。もし河内医師の要求通りに騙して、ここにおられる原告の方に対処していたら、私はとうに自死していますよ。そういうことを要求されたのが若手であれば逃れられません。権力に任せて不正を横行させる連鎖は断ち切らないといけません。市民と医学村の闘いとしてとらえる必要がある。ここで変わらなかったら変わらないと思いますのでよろしくお願いいたします」
と思いを一気に吐き出すように語った。

有印公文書を示す岡本圭生医師

有印公文書偽造。ここまでの暴走が過去例にあるのだろうか。記者からの質疑で「弁護団の皆さんには、過去公的機関が裁判に偽造有印文書出してきた経験があるか」の質問に対して、いずれの弁護士も「経験がない」と回答していた。

来週末の11月29日(金)には河野医師、塩田学長、松末院長の証人尋問が行われる。闇はどこまで暴かれるのだろうか。

さて冒頭法廷撮影の際に、被告側代理人の姿がなかったことを紹介した。これまでの期日では代理人は2人だったがこの日はこれまで見たことのない、人物が新たに加わり3名となっていた。わたしはてっきり新たな弁護士が追加で選任されたのであろうと考えていたが、裁判後「あれが成田医師ですよ」とある患者さんから伝えられた。被告成田医師はテレビに映るのを避けた。そうも想像できる。引き続きこの事件の展開は注目してゆく。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
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滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年12月号

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

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