5月下旬から先月半ばにかけて、くだんのリンチ問題について私と公開議論を行い、それなりに有益な方向に行けば……と思った矢先、一方的に「終結」を宣言し、「逃亡」した感が否めない前田朗東京造形大学教授が、何を思ったか、「反差別運動における暴力(三)」を『救援』(603号。7月10日発行)紙上に発表されました。

前田朗教授「反差別における暴力(三)」(『救援』603号。2019年7月10日発行)

一読して、先の2つの論評の時ほどのインパクトはなく、むしろ違和感を覚えました。

だいいち、本通信6月4日号(「唾棄すべき低劣」な人間がリーダーの運動はやがて社会的に「唾棄」される!~前田朗教授からの再「返信」について再反論とご質問~)に私が前田教授に行った質問に対しただの一つも答えずに、今回の論評を寄稿された神経が理解できません。

「炎上商法」と鹿砦社を揶揄したことを坊主懺悔して、実質的に議論の打ち切りを行ったのは前田教授です。坊主懺悔されたので、私も大人の分別で、それ以上の追及は控えましたが、この期に及んで『救援』に再び私論を展開するのはどういう神経でしょうか? 学者の「常識」は、私たちにとって「非常識」だと感じました。

私の知人や取材班、支援会などの者たちは、「そもそも松岡さんの質問から『逃亡』した前田教授には、この問題を論じる資格があるのか?」という意見が大勢でした。常識的に見れば、私もそうだろうと思います。

知人の中には、『救援』は、「『言論弾圧法』である『ヘイトスピーチ解消法』の成立に尽力し、その勢力の擁護者であり、かつリンチ事件について無責任な発表を続けてきた前田教授を連載から降ろすべきである」と言う人もいました。

前田教授の周囲には現在、「ヘイトスピーチ解消法」の強化、もしくはもっと厳しい罰則のある新法の制定を唱える人たちが多いようですが、これは、言い方を変えれば「もっと弾圧を厳しくせよ」というものです。今は対象がヘイトスピーチを行うネトウヨ/極右勢力に対するものですが、やがて対象が捻じ曲げられたり拡大解釈され自らにはね返ってきたり、想定していなかった人たちにも行使されるとの危惧は否めません。かつて暴力団を取り締まる目的で出来た凶器準備集合罪が、やがては新左翼を弾圧する根拠となったように。

また、「カウンター」側の人たちの口汚い暴言や罵詈雑言を見るに、これも「ヘイトスピーチ」ではないのかと思うことも往々にしてありますが、解釈を変えれば「カウンター」の言説を「ヘイトスピーチ」と捉えられる可能性は十分にあるのではないでしょうか。そういった基本的な「権力に対する警戒心」が希薄すぎるように思われてなりません。

そうこう考えると、前田教授の主張は、本来の救援連絡センターの活動趣旨に反するものだと思います。少なくともセンターが弾圧を助長するような法律を認めてはいけません。

◆今回の論評中の個々の問題点に対するコメント

それでは、幾つか気になった点を見てみましょう。──

加害者に謝罪を迫るのは当たり前ですが「Mにも非があったのだから」とはどういう意味でしょうか? 判決のどこにそのようなことが書いてあるのでしょうか?

前田教授は「双方が謙虚に謝罪し合うべきである」などと呆れた主張をされていますが、どうして一方的に集団リンチの被害にあった被害者M君が、加害者に謝罪する必要があるのでしょうか? ささいな喧嘩ではないのですよ。一方的に凄惨な集団暴行を受け半殺しの目にあった被害者に「謝罪しろ」などとの物言いは、さらに被害者を痛めつけるものです。そうではないですか? 

被害者M君が加害者に謝罪する必要や道理など、金輪際ないし、一方的被害者に不当な「謝罪」を要求している点で、前田教授の論は加害者に加担するものであることが明らかです。いわば“喧嘩両成敗”を勧め、一見まともに見えますが、問題の本質から外れています。前田教授は本当に事件の内実をご存知なのでしょうか?

M君や鹿砦社の代理人、大川真(ママ。「伸」が正しい)郎弁護士を「筆者が敬愛する弁護士」としていますが、東京在住の前田教授は、大阪弁護士会の大川弁護士の仕事の内容や業績を熟知されているのでしょうか? また大川弁護士と昵懇の仲なのでしょうか?(少なくともそんな話は聞いたことはありませんし、大川弁護士は、いわゆる「人権派」「左派」としての仕事を積極的になさるのではなく、基本的には左右を超えた実務肌の弁護士ではないでしょうか)。

「和解の障害となっているのは鹿砦社、松岡利康社長……李信恵および関係者の間の対立がますます激化していることである」(ん?)

いい加減にしてください! 基本的な事実認識が間違っています。鹿砦社は李信恵氏に散々ツイッターで罵詈雑言、誹謗中傷をされ、「通告書」などで「品性なく事実に反する言いがかりを控えるよう」要請しましたが、一向に収まらず、さらに仲間らも付和雷同しエスカレートする兆しもありましたので、仕方なく出版社としての業務防衛のために提訴せざるを得なかったのであって、好き好んでお金と手間暇を使い訴訟を起こしているわけではありませんよ。この訴訟は一審で鹿砦社が勝訴しましたが(控訴審判決は7月26日)、提訴以降、李信恵氏本人や仲間らも鹿砦社への誹謗中傷を自重しつつあるようです。

一方、李信恵氏はその訴訟の中でほぼ争点が出尽くし、間もなく結審か、というタイミングになり急に「反訴したい」と言い出しました。裁判所は李信恵氏の反訴を認めなかったため、李信恵氏は別の訴訟を起こしました。前田教授の言い分では、あたかも双方が同じレベルで「喧嘩」をしているかのような印象を読者に与えますが、上記のような事情が全く無視されています。意図的にか前田教授の無知かはわかりませんが、このくだりも虚偽を述べている点で非常に悪質でさえあり責任も重いでしょう。

その他、鹿砦社に対して批判する権利を前田教授は有しないと思います。なぜならば冒頭に述べた通り前田教授は私との公開の議論から一方的に「逃亡」しているからです。前田教授が一方的に「逃亡」した事実は、少なからずの人たちが知り、いわば“公知の事実”になっており、先の2つの論評に感激した人たちを落胆させました。前田教授はまず6月4日付けの本通信において投げかけられた質問事項に真摯に答えるべきではないでしょうか? 「今からでも遅くない。背筋を正して事実と責任に向き合うべきである」(反差別運動における暴力一)と前田教授自身が述べておられるではないですか。

 

リンチ直後に出された李信恵氏の「謝罪文」(1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

さらに前田教授は「裁判所の判決に従え」と繰り返し述べておられます。これは、原発訴訟や行政訴訟などで不当判決が下された場合でも、それに従えというようなもので、住民や市民が、心ある弁護士や学者らの力を借りながら不当判決に抗していくことを前田教授はどうお考えなのでしょうか?(とりわけ『救援』紙上でこのような主張は妥当でしょうか?)「弾圧されて、不当判決を出されても従え」──“前田論法”では刑事事件においてはこのような行為を推奨することになります。そんなバカな話はないでしょう。

ア・プリオリに「判決に従え」を繰り返す前田教授の意見には同意しかねますが、仮にその論を認めるとして、裁判所の判決が被告によって「履行」されなければ、どうしろというのでしょうか? 現に加害者の一人、金良平氏は、裁判によって確定した賠償金の支払いを渋っており、金良平氏によるM君の被害は全く回復されていません。この事実に「判決至上主義」の前田教授はどう申し開きなさるのでしょうか? 「判決至上主義」は、明確に破綻していることが示された事実です。

ちなみに、私見を申し上げれば、このリンチ事件は、前田教授もおっしゃるように全員に「道義的責任」があり、リンチの現場に同座した5人全員に連帯責任があると考えますので、和解の前提としては、まずは賠償金を5人全員で負担すべきではないでしょうか? なにしろ「エル金は友だち」だったわけですから──。

リンチ直後に出された金良平(エル金)氏[画像左]と李普鉉(凡)氏[画像右]による「謝罪文」(いずれも1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

 

辛淑玉氏による2015年1月27日付け文書「Mさんリンチ事件に関わった友人たちへ」(1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

今から思い返せば、前田教授は「本書(注;鹿砦社出版のリンチ関連本)が批判する野間易通、辛淑玉、有田芳生、中沢けい、上瀧浩子とは面識があり、いずれも敬愛する運動仲間である」(「反差別運動における暴力」一)と述べておられました。あの論評の論旨は立派ではありましたが、結局全員が何らかの形でM君に対する〈加害者〉となったわけで、そんな連中への「敬愛」を表明していた前田教授。あの時に前田教授が、連中と根本は同根であることを見抜けなかったのは、私(たち)にとって不徳の致すところでした。それどころか、「前田教授の姿にこそ、腹を据えて持論を展開することのできる真の言論人の矜持を見る」(『カウンターと暴力の病理』P82)などと過大評価(誤認?)していました。少なからずの方もそうだったと思うと、前田教授の責任は決して軽くはないのではないでしょうか?

前田教授は論評の中で李信恵氏に対し「唾棄すべき低劣さは反差別の倫理を損なう」(「反差別と~」二)と喝破されましたが、これは今でもそうお考えでしょうか? リンチ被害者M君の人権を顧みず、村八分にし隠蔽に走り闇に葬ろうとした「カウンター」周辺の者らこそ「唾棄すべき低劣」な人種だと断言しますが、そういう人間に「人権」などという崇高な言葉を使って欲しくはありません。

◆「和解」への途はあるのか?

これまで本稿では前田教授に対して厳しい意見を申し述べてきましたが、今回の論評に前田教授の認識と一致するところがないわけでもありません。末尾に、「本件が反差別・反ヘイト運動にもたらしたダメージは計り知れない」から「これ以上、反差別・反ヘイト運動を貶めないように自戒してもらいたいものだ」と記されています。

これには異議がありませんが、「デマだ」「でっち上げだ」「リンチはなかった」「リンチではない」などと異口同音に言うだけで、「自戒」や反省などどこへやら、リンチ事件と真正面から取り組まず隠蔽活動に走った人たち、とりわけ前田教授が共同代表を務める「のりこえねっと」の辛淑玉氏ら他の共同代表の方々に対して、もっと強くおっしゃってほしいものです。

さらに前田教授は、今回殊更に「和解」を勧めておられます。

「和解の条件を整える努力を続けるべきである」
「確定判決を前提に和解の席につくべきである」
「今後の和解に向けた冷静かつ真摯な対応を期待したい」等々

私は従前から自らを和解論者と自認してきました。これまでに出版した5冊の本の端々にもそう記しています。特に第5弾本の木下ちがや・清義明氏との座談会で、木下氏が予想外に物分かりの良い様子だったこともあり、そう申し述べ、賛意を得ました。しかし、「和解」実現のためには、まずは李信恵氏らが一方的に反故にした「謝罪文」に立ち返ることが最低必要条件でしょう。そうではありませんか?

そうして、前田教授が、頑なにM君や私たちを攻撃し続ける加害者らに仲介の労を取られる覚悟があるのであれば、私(たち)も意を決して「和解の席につく」こともやぶさかではありませんし、それが反差別・反ヘイト運動の近未来にとって有益な方向に向かうのならそうします。李信恵氏ら加害者側の人たちはいかがでしょうか?

しかし、前田教授に、「カウンター/しばき隊」周辺からの厳しいバッシングと対峙して「和解」への仲介の労を取る覚悟がないのであれば、簡単に「和解」という言葉を口にしてほしくはありません。

例えは悪いですが、ヤクザの抗争でもどこかで“手打ち”が行われます。ここでも、第三者的立場の大物ヤクザが仲介する場合があります。仲介に立つ大物ヤクザにとって失敗したらヤクザの世界で生きていけなくなったり威信が下がりますし、場合によれば殺されかねませんから命がけです。前田教授は勿論ヤクザではありませんが、それなりに大物ですし発言力は大きいわけですから、“手打ち”の仲介人になっていただければ、このかん荒れに荒れてきた反差別運動界隈に平和が戻ることでしょう。「敬愛」する前田教授へ──。

*【付記】6月7日に前田教授を招いて反ヘイト・反弾圧の「大学習会」を主催した戸田ひさよし前大阪門真市議から「弾劾質問状」が届き、これに期限の6月30日に回答し(7月1日付け本通信参照)、この際、戸田氏に逆質問を行い、この期限を、戸田氏からの質問状の期限と同じ3週間後の7月21日に設定させていただきましたが、戸田氏から「当方で種々の用件が重なってしまっているため、そのご希望にそえず、『できるだけ8月上旬までの見解表明』、『最も遅くとも8月下旬までの見解表明』とさせていただきます」との連絡がありましたので、とりあえずお知らせしておきます。
  

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参院選挙戦もたけなわのいま、『紙の爆弾』8月号が7日に発売され、書店の総合雑誌コーナーで注目を浴びている。政治がらみの記事だけ挙げてみると、目を惹くラインナップだ。

●年金詐欺「2000万円問題」の影響は? 自民党を襲う〝想定外〟の逆風 朝霞唯夫

●統一地方選で「実質敗北」〝集票力低下〟に焦る創価学会・公明党 大山友樹

●丸山「戦争発言」でも負けない理由 「維新」とは何なのか 吉富有治

●イージス・アショア配備という安倍〝米国下僕〟政治 故郷よりも米国優先の菅官房長官 横田 一

●海外メディアが皮肉った国辱接待「外交の安倍」という捏造  浅野健一

●トランプ訪日、イラン訪問の「属国外交」日本の「独立」を阻む「従米ポチ利権」を暴く 木村三浩

●日本史上最低の「安倍ゾンビ体制」への引導 藤原肇

◆「凡庸なる独裁者の手先」菅義偉官房長官を突き動かすのはルサンチマン?

その他の記事も、ことごとく政治権力や財政・経済政策をめぐるもの、外交での安倍政権のチョンボなど、政治と無縁なものはないが、とくにここでは菅義偉官房長官の記事が気になる。

安倍晋三を極右政権とするならば、菅義偉(よしひで)にはアドルフ・アイヒマン的な実務能力における冷徹さがある。アイヒマンといえば、ハンナ・アーレントによる「凡庸なる独裁者の手先」として、つまり凡庸な人物がナチスを支えていたとの評価だが、凡庸な人物に冷酷なユダヤ人迫害ができるわけではない。ある意味での政治的実務への集中が、たとえば沖縄の辺野古基地建設を強引に、あるいは「粛々と」進める冷徹さこそ、菅のような実務派政治家の得意とするところだ。

その菅義偉は、地元秋田県での参院選挙の総決起集会で、イージス・アショア配備について、ひと言も触れなかったという。記事の執筆者である横田一は、地元議員団から菅への要望書が渡される場で質問をこころみたが、スタッフに取り囲まれて室外へと追い出されている。

故郷に錦をかざりながら、地元住民の軍事施設反対の声には、沈黙をつらぬく。安倍総理の陽性の開き直りかたや麻生太郎のべらんめぇ開き直りには、やや人間味すら感じられるが、菅には徹底して実務的な冷たさを感じる。

苦労人は庶民的な人情を知るといわれるが、集団就職をして苦学をしたこの人には微塵も感じられないのは何故か? 高卒とともに捨てた故郷や苦労した時代を、あたかも黒歴史として恨んでいるかのようだ。苦労をした自己史にルサンチマンがあるのだとしたら、それほど怖い政治的動機はないだろう。その菅義偉が、来年の総裁選では「中継ぎ」として有力なのだから恐ろしい。

◆自民補完勢力の動向──「ネオ自民党」維新の会はなぜ大阪で強いのか? 異例の総決起集会を開催した公明党の危機意識

吉富有治は維新の会の強さの秘密を、軍隊的な組織の在り方だと読み解いている。自民党の一派閥、ネオ自民党というとらえ方も秀逸だが、その維新がなぜ大阪でのみ強いのか。おそらく反中央、反自民という大阪人のメンタリティに訴えるものがあるはずだ。今後はそのあたりの民意をさぐって欲しいところだ。

〝集票力低下〟に焦る創価学会・公明党にも興味を惹かれた。大山友樹によれば、6月5日に公明党は東京ドームに10万人を集めて「公明フォーラム2019」を開催したという。いうまでもなく、参院選挙にむけての総決起集会だが、異例のことである。公明党は全国7つの選挙区で候補を立て、そのうち東京と大阪をのぞく5選挙区(兵庫・埼玉・神奈川・愛知・福岡)での苦戦が予想されている。

というのも、05年の小泉郵政選挙のときに898万票だったものが、17年の衆院選挙では697万票に落ち込み、今年の統一地方選でも減少傾向は続いているというのだ。しかるに、自民党を連立与党として支えながら、党勢は先細りという現実に、創価学会員からも疑問の声が上がっているのだ。選挙結果が注目される。

◆アベノミクスに代わる経済政策を

オピニオンとしては、林克明の「『人の幸福』のための実現可能な経済政策」が積極的なものを突き出している。宇都宮健児(弁護士・元東京都知事候補)のインタビューと山本太郎の経済政策を紹介しながら、消費税ゼロ、奨学金徳政令、最低賃金1500円で、消費の活性化を生み出すというものだ。

これはMMT(現代貨幣理論)でも提唱されているリフレ論である。山本太郎が参院調査情報担当室に試算させたところ、消費税を廃止すると6年後に1人あたりの賃金が44万円も増加するという。時給1500円で、年収は288万円となり、現在の派遣労働者・アルバイトの年収200万円弱から大幅に可処分所得が増える。つまり消費によって経済が活性化するのだ。いまやアベノミックスの失敗は明らかで、アベノミクスが果たせなかった更なるリフレ、人のための財政を行わなければならない。

ほかに、「政権すり寄り」吉本興業が恐れる信用失墜、田中恆清・石清水八幡宮宮司「総長四選」不可解な内幕、森友事件「値引き根拠ゴミ」を偽装した国交省、「テロ対策」を口実に進む警察権力強化、「海を渡るリサイクル品」から見える日本、日本ボクシング界諸悪の根源、など多彩な記事で満載だ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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日本政府による韓国向け半導体素材の事実上の禁輸措置は、韓国における日本製品のボイコットにつながった。ソウル市内の日本車ディーラーや小売店の前では抗議行動が行われ、日本への旅行中止を訴える請願が、青瓦台(大統領府)のウェブサイトに3万人以上の署名が行われた(7月8日)という。

日本政府は、表向きは「徴用工問題(被告企業の資産没収)への報復ではない」としているが、韓国政府およびその国民は、従軍慰安婦問題と徴用工問題など、歴史認識に関する報復と受け止めている。

韓国経済に打撃を与えることで、歴史認識に関する攻防を経済戦争に持ち込んだと国際的な世論も認識しているところだ。じっさい、韓国経済はこの数日で株価が総額で5兆円も低減するなど、大きな打撃を受けている。文大統領も報復措置を採ることを明らかにし、まさに日韓貿易戦争の様相を呈してきた。


◎[参考動画]「偏狭な排外主義」輸出規制に抗議 ソウルで元徴用工訴訟支援団体(毎日新聞 2019/7/5公開)

◆安全保障上の「不適切な事案」とは何か?

さて、それでは日本政府が「(歴史認識問題への)報復ではない」とする論拠はいったい何なのだろうか。事実上、反日運動を引き起こしている以上の怖ろしい計画が進行しつつあることに、われわれは驚愕せざるをえない。日本が韓国および北朝鮮を「仮想敵国」にしようとしている形跡があるのだ。いや、安倍晋三総理および菅義偉が公言している「(韓国側による)不適切な事案」というものである。この「不適切な事案」とは何なのか?

「個別のことについて申し上げるのは差し控える」(7日のNHKでのテレビ討論会)と明言は避けているものの、この「不適切な事実」が半導体素材の北朝鮮への流出を指しているのは明らかだ。つまり韓国が北朝鮮に、日本からの素材を提供しているというのだ。これは事実なのだろうか? 

韓国大統領府は、国連安保理事会決議にもとづく対北朝鮮制裁を「国際社会との協力のもと、それを忠実に履行している」「日本が明確にどの部分に疑惑があるのか示さず、われわれが明らかにするというのは順序に合わない」と、日本政府を批判している。これでは藪の中である。

観測筋によると、韓国がWTO(世界貿易機関)に提訴した段階で、日本側がその「証拠」を提出するのではないかと言われているが、これも推測でしかない。


◎[参考動画]【報ステ】文大統領「撤回求める」輸出規制で初言及(ANNnewsCH 2019/7/9公開)

◆観艦式からも韓国海軍を排除

事実上の禁輸措置は、韓国がホワイト(友好)国ではなくなった基準によるものだが、安倍政権は「安全保障上の措置」を前面に押し出して、その正当性を主張しているのだ。かなり周到な、韓国文政権への「揺さぶり」である。それは次のような措置にも顕われている。防衛省は自衛隊の観艦式に、韓国海軍を呼ばないことを決定したと言うのだ。

すなわち、韓国への「安全保障上の措置」として、韓国海軍駆逐艦が昨年12月に海上自衛隊P1哨戒機に火器管制用レーダーを照射した事件を受け、今年10月に開く海上自衛隊の観艦式に、韓国海軍を招待しない方針を固めたのである。もはや友好国や同盟軍とはいえないようだ。

今年の観艦式は10月14日、相模湾で行われる。イージス護衛艦や潜水艦、掃海母艦など多数の艦船や航空機が参加し、安倍総理は海自最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(空母に改装予定)に乗艦する予定だ。米国やオーストラリア、インドといった友好国の海軍のほか、中国海軍も「祝賀航行部隊」として加わる方向で調整している。


◎[参考動画]輸出規制「撤回しない」韓国・文大統領の要求に政府(ANNnewsCH 2019/7/9公開)

◆政権を替えようとしている

基幹産業であるIT産業の素材供給を断つことで、韓国経済の屋台骨を折る。韓国が自由貿易をもとめてWTOに提訴すれば、安全保障上の問題であると切り返す。もはや韓国文政権への「揺さぶり」あるいは政権を倒す工作とも思える、安倍政権の処断である。何を狙っているのだろうか?

韓国は「大統領を逮捕する国」と呼ばれている。金泳三、金大中以外は殺されるか投獄、あるいは自死でその生涯を終えている。いや、金大中も軍事政権下で死刑を宣告され、暗殺未遂事件で股関節に障害を負っている。国是が「反共」「反日」である以上、たとえば朴槿恵のような親日派ですら、韓日首脳会談も開けなかったほどだ。いま文政権は反日に舵をきり、新北路線をひた走っている。この文政権を倒し、強力な反共政権、したがって親日政権を打ち立てるのが、安倍極右政権のめざすところなのではないだろうか。

尊敬する祖父・岸信介が政界に影響力を持っていた時期、韓国は反共親日の朴正煕軍事独裁政権だった。朝鮮半島に火種があり、米ロもしくは米中が政治的緊張感をもって対峙することこそ、安倍のような極右政権にとっては最も都合の良い情勢なのだ。


◎[参考動画]韓国KBS放送不可「朴正煕―岸信介の親書」ニュース打破(Changjong Kang 2015/11/14公開)

《関連記事》横山茂彦 半導体素材「禁輸措置」という国家的ヘイトクライムを強行した安倍政権こそが世界経済を混乱させ、国民経済を破壊させる!(2019年7月5日付けデジタル鹿砦社通信)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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2019年7月6日付け共同通信

「共同通信社は第25回参院選について4、5両日、全国の有権者3万人以上を対象に電話世論調査を実施し、公示直後の序盤情勢を探った。取材も加味すると、自民、公明両党は改選124議席の過半数63を超え、改選前の77議席前後に上る勢い。安倍政権下での憲法改正に前向きな「改憲勢力」は、国会発議に必要な3分の2以上の議席維持をうかがう。野党は立憲民主党が改選9議席からの倍増を視野に入れるものの、全体では伸び悩む。」(2019年7月6日付け共同通信)

「21日投開票の参院選について、朝日新聞社は4、5の両日、全国の有権者を対象にした電話による情勢調査を実施した。取材で得た情報を合わせて分析すると、自民、公明の与党は改選議席(124)の半数を大きく上回る勢い。自民、公明と憲法改正に前向きな日本維新の会などの「改憲勢力」が非改選議席を合わせて、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席を維持するかは微妙な情勢だ。」(2019年7月5日付け朝日新聞)

このような、選挙告示直後に大新聞や、通信社が「与党有利」の情報を流布する問題は、ここ数年「公平な選挙」を阻害する要因として問題が指摘されている。

◆誰が「思想調査」とたがわない、電話での世論調査に応じるのか?

2019年7月5日付け朝日新聞

誰が「思想調査」とたがわない、電話での世論調査に応じるのか、と思っていたら、ここ数年、コンピューター音声の「世論調査」が拙宅にも何度もかかってくるようになった。あれは固定電話だけに向け、かけているのであろうか。携帯電話も対象か。正直なところこういった社会的なメディアに文章を書くのであれば、それくらいは自力で調べてからご報告すべきである。と読者諸氏に申し訳ない気持ちに満たされながらも、「馬鹿げた芝居」の裏側まで調べる気力がわかない。

正直な方には失礼だが、電話での「世論調査」に本気で答える人など、いるのだろうか? あんな気持ち悪い、かつ一方的な「思想調査」はない。一方的な質問。しかもコンピューター音声による「取り調べ」まがいの調査に、答える義務など当然ない。わたしは無機質なコンピューター音声の質問がはじまると、受話器を電話に叩き付ける。

でも、穏やかな方々はそうはしないのだろう。「あなたの支持政党をお答えください。自民党は1、立件民主党は2、国民民主党は3……」あれを押し間違えたらどうなるのか知らないけれども、新聞に毎月掲載される「世論調査」と名乗った「世論誘導」は非常に巧妙に、世論誘導を行う悪しきく習慣だ。あんなものに信憑性はまったくない。

◆告示直後のこの時期に、どうして投票行動をかなり断言調の見出しで記事にできるのか?

告示直後のこの時期に、どうして投票行動をかなり断言調の見出しで記事にできるのだ。してもいいと勘違いしているのか! わたしは選挙に対して興味はない。しかしこの島国の住民がどのように「騙され」、「誘導されていくのか」は嫌というほど見てきた。その様子が気持ち悪い。

言いにくいけれども、自民党はもちろん、どの政党に投票しようがこの国の未来は2030年に果てるだろうというのがわたしの見立てである。その点、国政に興味のない者、関心を失ったものは、選挙についてあれこれ発言するのはいかがかと思う気持ちもないではない。しかし「もう少しフェアーにやれよ」と感じずにはいられない。選挙に熱心な方々は余計にそうだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号

創刊5周年〈原発なき社会〉を目指して 『NO NUKES voice』20号【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

7月6日掲載の前編に引き続き、鈴鹿殺人事件の冤罪被害者・加藤映次さんの母親である由紀さんのインタビュー後編を公開する。

3月2日「冤罪犠牲者の会」結成総会に参加したご両親

── 殺害後、Tさんの離れにあった2つのキーホルダーから部屋の鍵を抜いて施錠したとされていますが、そのキーホルダーとはたくさん鍵が付けれるタイプのものですよね。そこからTさんの離れの鍵を探して引き抜いたと?

加藤 そうです。キーチェーン・フォルダーはジャラジャラ鍵が沢山つけられるもので、手袋をつけて外すのは無理、素手なら指紋も血もつくはずです。しかもその後、映次の車から見つかった鍵と、証拠として保管された鍵がすり替わった可能性も出てきています。

── 映次さんがTさん宅を出たあとに、Tさんが生存していた可能性がいくつか出ていますね。1つは「あ」メール。映次さんがTさん宅を出たのちに、Tさんの携帯に「あ」と誤送信した人がいて、それが「既読」になっている。つまりTさんか第三者かわからないが、だれか生きた人間が携帯を操作したことになりますね。

加藤 滞在時間は鈴鹿ICを通過した記録があるので確かです。その後に「あ」が既読になっている。裁判では現場を捜査した警官が誤って操作したとなりました。ならば、裁判でその警官が誰か、なぜ重要な証拠を触ったかなどの説明がなければおかしいと思います。

── 凶器も発見されていないそうですね?

加藤 凶器はモンキレンチと特定されていますが、発見されていません。映次はTさんに頼まれ、前日モンキレンチを買って届けています。そのレシートは会社の経費として落とすために、会社の経理に届けてあり、証拠として押収されている。凶器を買ったレシートをわざわざ経理に届けるでしょうか? しかしこのレシートから凶器はモンキレンチとなったのではないでしょうか? 検察側の鑑定は凶器はモンキレンチと限定しているが、弁護側の鑑定医はモンキレンチ以外の傷跡もあると1審で証言しています。

── 現場は相当悲惨な状況だったようですが、映次さんが犯人なら、とうぜん映次さんの服、身体などにも返り血がつくわけですよね?

加藤 映次の車からは血痕も血液反応も出ていません。着ていたスーツはTさん宅を出た あとも着ています。夕方それを着て採用面接をしています。そのあと会ったMさんも気づくはず。彼女は血などには気づかなかったと証言しています。しかしMさんが映次のスーツを捨てたという事にされ、彼女も逮捕されました。そうしないとつじつまがあわないからです。しかし彼女は家族のことなどいわれ、自己保身のために警察のストーリーに沿う供述をして「服を捨てた」と言ったようです。

チラシ

── 映次さんは最初から一貫して否認して裁判員裁判が始まりました。裁判を傍聴したご両親の感想はどうでしょうか?

加藤 裁判員裁判ってこんなものかと思いました。一審の弁護団は、映次の会社関係の弁護士でつくったので、刑事事件に慣れてないこともありますが、「弁護過誤」ではないかという支援者もいました。

その時の思いを映次は手紙で次のように書いてきました。
『帰ることが出来ずごめんなさい!これまでの支援に応えられず本当に申し訳ない思いです。そして、ただ無念です……あまりに酷い判決内容でした。裁判所には幻滅しました。一体どこが公正中立なのでしょうか? 茶番としかいいようがない、有罪の結論ありきの審議だったのは明らかで、検察に迎合した完全な検察救済判決の内容でした。稚拙な独自理論に想像と推認ばかり。空想で無実の人間に犯罪を背負わせるのが、裁判所の仕事なのか? 支離滅裂な検察主張を、更に支離滅裂な裁判所の想像が加わり、完全に荒唐無稽な判決になっている……本当に悔しくて、皆に申し訳なくて戻ってきてから涙が止まりません。何を反省しろと言うのか?反省すべきは冤罪被告を新たに生んだ裁判所だ! 冤罪は最大の罪です。。。』
── 1審で懲役17年、2審は、映次さんのアリバイを示す「“あ”メール」問題が中心的な争点となりながら、判決ではまったく触れられないという異常な事態がおきました。上告審もほとんど審理されずに終わり、刑が確定してしまいましたね?

加藤 控訴審の時に出てきた「“あ”メール」問題は、裁判官はスマホやSNSなどの知識が全くないのだと思いました。チンプンカンプンだから審理のしようがない。一方、控訴審から全員入れ替わった新しい弁護団は、スマホを何台も購入して検証するなどしてくれました。映次自身が専門家ですから、弁護団にアドバイスできることも多かったですが、何しろ身柄を拘禁され、パソコンにもさわれず、自分で何もできないことが本当に悔しい思いだったと思います。

5月24日、支援者らと行った現地調査と学習会

── 裁判全体を通じて考えたことなどありますか?

加藤 日本の司法は中世以下と正直思いました。国民の税金を無駄遣いしているとしか言いようがない。裁判所にいたっては、ほんの一握りの良識のある裁判官が当たり前の判決を出したら、左遷させられるという、本当に異常な世界です。最高裁長官は司法を目指して一生懸命勉強していた初心に戻れよ!と言いたいです。

── ほかにも不可解な点が多々ありますが、紙面の関係上、またの機会にさせていただきます。「加藤映次さんを守る会」が仕事の関係者、親戚、ご近所さんらで作られていて、これを見ても映次さんがどれだけ大勢の人たちに慕われていたかがわかります。ご両親は現在、月に1回、長野刑務所に面会に行くそうですが。

加藤 長野刑務所は長野県北部の須坂市にあります。経済的な問題もあり、車で早朝出発してトンボ帰りです。主に安否確認と家族の近況報告、あと裁判に向けての事務連絡、差入れなどをしてきます。経済的に厳しいのを本人も知っているので現金の差入れは時々しかしません。できるだけ我慢してもらっています。それでも本などはAmazonなどで中古本を探して差入れています。

刑が確定するまではずっと独房でしたが、今は、刑務作業や運動、そして同室の皆と雑談もできるので精神的にはストレスは溜まっていないようです。が、やはり犯していない罪で罰せられている訳なので、外にいる私達がなかなか思い通りに動いてくれないことに不安や不満は持っているかと思います。食事はやはり満足できるものではなく激ヤセしています。でもいつも明るい照れくさそうな笑顔で面会室に入ってきますので、私達もできるだけ明るい話をするようにしています。

映次さんが収監される長野刑務所

映次さんが収監される長野刑務所には毎回車で通っている

── 3月には東京の「冤罪犠牲者の会」の設立総会で、昨日(6月16日)は大阪でアピールしていただきました。これからもこの冤罪事件に関心が広まればと考えています。最後に訴えたいことを?

加藤 この冤罪事件は、幸いなことに息子の無実を信じて多くの方に支援していただいています。ただ報道の温度差で鈴鹿の地元三重県では事件の事も裁判員裁判の事も報道されましたが、他の地域ではほとんど報道されていません。今後「再審請求」をしていくのですが、やはり再審は世論を味方につけ注目を集めないと、いくら犯人じゃない証拠を提出しても裁判官は見てもくれないと思います。文明国家を自負しているこの日本の裁判制度は中世以下です。多くの冤罪犠牲者が地獄の苦しみを味わっています。冤罪犠牲者の会・再審法改正をめざす市民の会等冤罪を支援する組織も立ち上がっています。多くの方に冤罪の恐ろしさを知っていただき、この事件に興味を持って注視していただきたいと思います。

── 今日はどうもありがとうございました。[了]

3月2日「冤罪犠牲者の会」結成総会

《連絡先》〒496-0862 愛知県津島市城山町1-15
◎鈴鹿殺人事件・加藤映次さんを守る会 加藤元博 http://enzai.main.jp/
◎拘置所ブログ 加藤映次、冤罪と闘ってます、刑務所日記 NOW ! http://eiji-enzai.blog.jp/

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

創業50周年!タブーなき言論を! 7日発売!月刊『紙の爆弾』8月号

創刊5周年!〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』20号 尾崎美代子さん渾身の現地報告「原子力ムラに牛耳られた村・飯舘村の「復興」がめざすもの」掲載

6月16日、大阪市大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」で、まもなく再審が始まる滋賀県湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんと、主任弁護士の井戸謙一さんをお招きし、講演会を開催した。井戸弁護士の解説、西山美香さんへのインタビュー、質疑応答ののち会場にかけつけた3組4名のかたにアピールしていただいた。

3月に結成された「冤罪犠牲者の会」の共同代表・青木恵子さん、予定を変更し急きょ駆けつけてくださった桜井昌司さん、そして鈴鹿殺人事件の冤罪被害者・加藤映次さんのご両親・加藤元博さん、由紀さんのお二人である。

冤罪・鈴鹿殺人事件を私は、青木さんから聞いて知った。当日講演会場でチラシなど配布するので送ってほしいとご両親に連絡したところ、「直接大阪のみなさんに支援をお願いしに行きたい」ということで、当日愛知県から車で駆けつけていただいた。講演会場とその後の親睦会で、涙ぐみながら支援を訴えていた映次さんの母・由紀さんに、翌日インタビューし、事件の全貌、再審に向けた決意などをうかがった。

6月16日「湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんを囲んで」で発言する加藤元博さんと由紀さん

── 遠いところお疲れ様です。鈴鹿殺人事件の冤罪被害者・加藤映次さんのご両親にお話を伺います。2012年11月13日、鈴鹿市山本町で会社役員のTさん(当時38歳)さんが何者かに後頭部を殴打され殺害された事件で、加藤さんの息子さんの映次さんが殺人容疑で逮捕されました。事件の話をお伺いする前に、映次さんは一人息子さんということで、どんな息子さんですか?

加藤 優しい子です。自分の子供に対しても怒ったり、手をあげたりしたことは一度もないです。じっくりと相手の言う事を聞くタイプです。一見スキンヘッドで怖そうと言われますが、小さい頃から円形脱毛症なんです。免疫の異常で毛髪の組織が攻撃されて起こる“自己免疫疾患”だそうで、元プロ野球選手の森本稀哲(ひちょり)さんと同じです。ひちょりさんも小学1年の時に円形脱毛症になり、ほぼすべての毛髪を失ったそうです。悩んでいた子供時代から、プロ野球で人気を博した元気なキャラクターを確立したとあります。映次も同じようにポジティブな思考、明るい性格です。

現在、長野刑務所に収監されている加藤映次さん

── Tさんと映次さんは、会社の共同経営者と報じられていますが、どういう関係だったのでしょうか?

加藤 Tさんはもともとティールというインターネット通販会社を、映次はワンダーラインというネットワークサービス会社をそれぞれ別個に経営していました。当初はティールがワンダーラインの顧客としてつきあいが始まりました。後にTさんがワンダーラインに共同経営者として加わることになり、Tさんが会長、映次が社長に就任しました。ワンダーラインは名古屋駅前に本社事務所を、愛西市に事務所兼倉庫を持っていました。Tさんは山本町の実家の離れを改装して自宅兼事務所としていました。

── その離れが殺害現場となったのですね。事件当日、映次さんがTさん宅を訪ねたことで映次さんが疑われたのですね?

加藤 映次は、Tさんに高級時計を買うお金を400万円ほど用立てており、それを返してもらうためにです。朝、電話で返してもらえると確認していたそうですが、実際は返してもらえなかった。10時28分頃から10分間ほど滞在しています。流れとしては、Tさん宅へ着いて離れのチャイムを鳴らす、「ちょっと待って」と言われ、しばらく外で待つ、鍵をあけてもらい部屋に入る、Tさんに頼まれ2杯分のコーヒーを淹れる、金を返す返さないで揉める、といっても胸ぐらをつかまれたので映次が振り払った程度です。鈴鹿ICを11時5分に通っていますが、警察・検察が主張するように滞在時間を24分だとしても、果たしてその間に殺人をして、痕跡を消すなど後始末をして、2つのキーチェーンからTさんの離れの鍵を抜き取り、鍵を閉めて・・・とそれだけのことが出来るのか?離れには水設備はないので返り血などの始末が出来るのかと疑問が山ほど残ります。

── 離れには水回りがないので、Tさんはトイレ、シャワーを使う際には母屋に行っていたが、夕方5時過ぎ、トイレなどにきた形跡がないことから、両親が心配し、Tさんの部屋の鍵をあけて入ったら殺害されたTさんを発見したということですね? 離れにはいつも鍵をかけていたのですか?

加藤 Tさんは以前、ヤクザの人たちと関係していたようです。何があったかわかりませんが、非常に用心深く、いつも鍵をかけていたようです。

── 2日後、映次さんが容疑者として取り調べを受けていますが、ほかに取り調べを受けた人はいないのですか?

加藤 ほかに容疑者がいたかどうかは証拠が全面開示されていないのでわかりません。映次はその日深夜遅くに帰宅し、翌朝、鈴鹿署で任意の取り調べを受けています。知人が殺されたので、取り調べにはちゃんと応じようと警察署に行ったのに、最初から犯人扱いだったそうです。着ていた服、下着、持ち物などすべて着替えさせられ押収され、〇の中に官と書かれたトレーナーを着て帰宅しました。映次は、自分が犯人でないことは自分が一番よく知っているから、この状況はありえないと話していました。腹が減ったといい、冷凍のあんかけラーメンと味噌おでんを食べていました。殺人を犯していたら、そんなに風に平気で食べれるでしょうか?

逮捕の約1年前に新築した家の前で家族と写した写真

── Tさん宅を出てからの映次さんの行動を教えてください。

加藤 事件当日、映次はTさん宅を出てから、当時不倫関係にあったMさんと会い、買い物をしたりしたあと、夕方には名古屋本社で採用面接もしている。その後またMさんとドライブなどして過ごしています。そのままホテルに泊まり、帰宅しなかったことも疑われた理由の1つのようです。

── 突然逮捕され、ご両親、映次さんのご家族はどんな様子でしたか?

加藤 私たちは映次が犯人じゃないことは、警察から帰ってきたときの様子やその後の映次の話で確信していました。嫁は14日朝、「今警察が来て映次が連れていかれた!」と泣きながら電話してきましたが、「犯人じゃないから、大丈夫。子供の為にもしっかりしなさい!」と言うのが精一杯でした。私も足がガクガクしていました。

── 映次さんが犯人とされた決め手は何だったのですか?

加藤 いろいろ言われていますが、実際には物証は何も出ていません。殺害現場のTさんの離れに鍵がかけられていたとのことですが、その離れの鍵が映次の車から出てきたことが証拠の一つとされていますが、そもそも鍵がかかっていたのかどうかさえ、両親の証言以外に証明するものはありません。逮捕された日、警察が映次の自宅に来て、敷地内で車の外観や車内を撮影した写真があります。その車が押収されて中から鍵が発見されたそうですが、そのとき映次は鈴鹿署にいたのです。にもかかわらず、車の検証に本人の立ち合いをさせなかったことなど、鍵発見の経緯には腑に落ちないことがいくつもあります。映次は刑事から後で「Tの離れの鍵がお前の車から発見されたぞ」というような事を聞かされ、『ハメラレタ!』と思ったと言っていました。[つづく]

控訴審を闘った名古屋高裁の前で、支援者の皆さんと

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◎鈴鹿殺人事件・加藤映次さんを守る会 加藤元博 http://enzai.main.jp/
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▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
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創業50周年!タブーなき言論を! 7日発売!月刊『紙の爆弾』8月号

創刊5周年!〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』20号 尾崎美代子さん渾身の現地報告「原子力ムラに牛耳られた村・飯舘村の「復興」がめざすもの」掲載

◆危険な政策

日本政府は7月4日、韓国への輸出規制を発動した。半導体などの素材3品目を対象に輸出許可の手続きを厳密化し、事実上の禁輸措置を実行したのだ。スマートフォンやテレビなどの画面に使うフッ化ポリイミド、半導体基板に塗る感光材のレジスト、半導体洗浄に使うフッ化水素の三品目である。いずれも世界全体に占める日本の生産シェアが高い素材だ。

これによって、韓国のメーカーが材料不足で半導体などを作れなくなれば、韓国に部品をたよる家電メーカーのスマートフォンなどの製造も滞り、日本経済に深刻な影響が出るのは必至だ。IT機器を生産するサムソンなど、韓国の基幹産業ともいえる半導体事業が打撃を受けるのみならず、世界経済への影響も危惧されるところだ。あたかも、太平洋戦争におけるアメリカの対日石油禁輸のように、禁輸による経済的な打撃で、政治的に追い詰める。政治危機をつくることで「戦争か従属か?」という政治的な変化をあおる、危険な政策であるのは言うまでもない。

当初、韓国大統領府当局者は、日本政府の輸出規制についてこう語っていた。「(徴用工問題が原因だという見方は)メディアの解釈と理解している。あたかも日本政府の公式的立場のように仮定して話すのは適切ではない」と記者団に述べ、断定を避けていた(7月2日)。本当に実行するとは思っていなかった節がみられる。


◎[参考動画]【報ステ】韓国への輸出規制「世界的な産業に影響」(ANNnewsCH 2019/7/3公開)

いっぽう、成允模・産業通商資源相が7月1日の声明で、日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた韓国最高裁判決を理由とした「経済的報復措置だ」と述べ、深い遺憾を表明していた。これに対して、大統領府は徴用工問題との関連付けに慎重な立場を示した格好で、事態の悪化を避けたい思惑があったようだ。

その後、日本政府の思惑が徴用工問題の報復にあることが明白となると、韓国政府も対応策を出さざるを得なくなった。すなわち、材料を国産化するための巨額投資を発表したのである。韓国大統領府と政府は、半導体素材・部品・装備の開発に、毎年1兆ウォン(およそ920億円)を集中投資する方針を明らかにしたのである(3日)。日本が輸出管理を強化した素材の国産化を進めることで、日本の圧力には屈しない姿勢を見せたかたちだ。

◆落胆と先行きへの懸念

以上は政府レベルでの反応だが、経済界はどうなのだろうか。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は2日の定例会見で、日本政府が韓国に対し、半導体材料の輸出管理を強化する方針を発表したことについて「世界貿易機関(WTO)違反ではなく、政府のメッセージを韓国側が真摯(しんし)に受け止め、早期の2国間関係正常化につながることを期待している」と述べ、日本政府の対応に理解を示した。

今後、報復合戦になった場合の日本経済への影響については「仮定の話」と前置きした上で、「(半導体材料など)日本から韓国向けの輸出に対し、韓国からの輸出は少なく、日本企業への影響は大きな問題にはならない」と話し、軽微と分析していた。

日本商工会議所の三村明夫会頭も1日、「政府の措置は日韓関係を悪化させるためではなく、膠着状態を動かしたいという、ひとつの提案」と話した。その上で「課題解決に動こうとしない韓国側に大きな問題がある」とも指摘した。その背景に、徴用工問題・従軍慰安婦補償問題(謝罪問題)があり、日本政府のショック療法(禁輸措置)に理解をしめしたかたちだ。

しかし財界首脳の政府に配慮した発言はともかく、業界団体は深刻な声をあげている。大手の東京応化工業は「サプライチェーンへの影響を心配していたファーウェイ(中国通信機器最大手の)に対する制裁が今回緩和されただけに、落胆は大きい」(広報)と先行きに懸念を示した。

半導体基板上で回路形成に不要な部分を溶かすフッ化水素の大手、森田化学工業(大阪市)は「事前の書類提出などに手間がかかることが予想されるが、輸出を継続したい」(担当部署)との姿勢を示した。業界関係者は「オープンな自由貿易を求めてきただけに、規制の強化は残念だ」と一様に不安をのぞかせている。

◆韓国で懸念される国民レベルでの排日運動激化

経済評論家のあいだでは日本経済はもとより、世界経済にあたえる深刻な影響が危惧されている。すなわち、サムスン電子とSKハイニクス半導体メモリのトップシェアメーカーであることから、スマートフォン、PC、データセンター用のサーバー、各種のデジタル家電など、きわめて広範なエレクトロニクス機器の生産が打撃を受けるとしている。したがって、世界中のデジタル機器生産が部品供給の不足に陥り、世界経済におよぼす影響は計り知れないという。

いっぽう、韓国大統領府のウェブサイトには、自動車をはじめとする日本製品の不買や日本への旅行中止を国民に呼びかけ、さらに政府には、日本への関税報復を求める請願が寄せられた。すでに5,000人近くの賛同者が集まっていて、日本への反発が強まっている。ことは半導体にとどまらない、国民レベルでの排日運動も懸念される。

そもそも、徴用工問題は韓国の司法権の問題であり、日本政府が口出しをできるようなものではない。たとえば日本の裁判所が下した判断に、韓国政府が政治的な介入をもとめてきたら、日本政府は裁判所に「指揮権発動」でもするというのだろうか? 今回の措置はしたがって、あけすけにいえば日本には三権分立があるが、韓国にはないから素材の禁輸という経済制裁で「言うことをきかせる」というものなのだ。もはや国家のメンツを通りこした、国家的な「ヘイトクライム」にほかならない。

いずれにしても、自由貿易の原則をみずから掘り崩すことで、安倍政権は国民経済の破壊、ひいては世界経済の混乱をひきおこし始めたのである。経済が国際的な生産のつながりと流通で成り立っていることを理解できず、政治的なメンツを優先した結果、最悪の事態にむかって進もうとしている安倍政権を、これ以上のさばり続けさせるわけにはいかない。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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◆習近平先導警察車両が阪神高速道路上で横転の体たらく

どうせ「ろくなものにはならない」ことが、わかりすぎていたので、言及することすら避けてきたが、大阪で行われたG20が、「波乱だらけ」で幕を閉じた。

2019年6月27日付NHK 関西NEWS WEB

まず驚いたのは、一般向けには閉鎖されていた阪神高速で6月27日、習近平を先導していた警察の車が、操作を誤り阪神高速道路上で横転したことだ。

阪神高速、とくに環状線はカーブが多く、走行車両も浪花流運転で、地方から来た運転者は戸惑うことも多い。なかなか難易度の高い高速道路ではある。しかし、事故当時は一般車両は走行しておらず、この警備車両は「運転者の技術」により勝手に横転したのだ。

あるいは大阪府警に潜り込んだ、どこかの反政府組織によるゲリラ攻撃か? といっときだけ、時代錯誤の想像を試みたが、そんなドラマはなかった。要人警備車両が勝手に横転しただけのことだ。このような低レベルの自損事故を要人警備車両が引き起こすのは、権力側からすれば「遺憾」ということになるのだろうが、ひたすら「恥ずかしい」行為である。

◆伊丹空港隣接ビルのトイレに拳銃を置き忘れた20代巡査

さらに28日には、G20サミット警備のため島根県警から派遣された20代の男性巡査が伊丹空港に隣接するビルで、トイレに拳銃を置き忘れた。直後に管理会社の従業員が見つけ、届け出を受けた同僚が回収しており、使用された形跡はなかったらしい。

警察官は誰もかれも当たり前のように、拳銃を携帯しているが、あれは効用よりも弊害のほうが大きいのではないだろうか。滋賀県で発生した巡査の上司銃撃事件や、警察官から拳銃が奪われて大騒ぎするニュースに接するたびに、「警察官が拳銃を持っていなければこんなことにはならないのに」との思いを強くする。

建前は「凶悪犯」に対する威嚇や、犯罪防止なのだろうが、もう何十年も「拳銃があって犯罪が防止された」とのニュースを頻繁に聞くことがない。前述したとおり、逆に拳銃を保持しているが故に、当の警察官に危害が及んだり、犯罪に利用されるケースのほうが多いのではないかとの印象がある。

古いところでは朴正煕暗殺を試みた文世光が使用した拳銃は大阪府警のものだった。警察学校を出れば19、20歳でも拳銃を保持できる制度は、本当に治安に安定に寄与するだろうか。「警察官の拳銃保持の是非」について、日弁連などは議論を提起すべきではないだろうか。


◎[参考動画]“過去最大”警備3万人 G20大阪で通行止めに検問(ANNnewsCH 2019/6/27公開)

◆これほど迷惑な「ショーもない」!

G20の中で何が話しあわれたのか、には正直興味がない。あれはセレモニーに過ぎないのだ。20か国の首脳がいる場所で個別の議題について、具体的な議論が進むと思っている人は、あまり世間をご存じない方だ。議論の素案は事務方が長時間かけて調整し、会議ではもっともらしい発言を、とくに安倍などはもっぱら用意されたペーパーを見ながら読み上げているだけだ。つまり「ショー」なのだ。

しかしこれほど迷惑な「ショー」もない(「しょーもない」に偶然似てしまった)。大阪では幹線道路がほぼすべて閉鎖され、関西地域の物流が不安定になった。大阪城は閉鎖され、せっかく外国や地方から「大阪城のエレベーターに乗ろう」と楽しみにやってきた観光客は追い返されることになってしまった。そのうえ安倍晋三は「大阪城にエレベーターを作ったのはミスだった」と、誰かが冗談で書いたとしか思えない原稿を読み上げてしまい、世界中から大顰蹙と「差別じゃろ」と指弾されてしまった。

◆安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶり

警察の体たらくも相当であるが、安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶりもかなり進行している。安倍は原稿を読まずに真っ当な内容の話を10分以上できない。だから国会でも国際会議でもオリンピック招致演説でも、安倍の読み上げた原稿は「誰か」が書いたものだ。

ちなみに演説以上に安倍は作文が苦手だと言われている。読書経験も極めて少ないので古典からの引用などはできない。今回安倍の「エレベーター設置間違い演説」も、必ず本番前に複数の人間が原稿を確認しているはずだ。しかしその連中も演説案を「問題なし」と見逃してしまった。

安倍の信者の方は、あれこれ弁明をなさるが、これは言い訳のできない「大差別」であることに間違いはない。自民党から出馬予定で、派手すぎる女性問題が暴露され、出馬取り消しとなった乙武洋匡から痛烈に批判されているのは象徴的だろう。「冗談のつもりだった」と鹿砦社を「炎上商法」と例えた、前田朗氏は坊主懺悔して逃亡したが、安倍のこの発言、むしろその原稿が問題なく安倍に手渡される安倍周辺の知的レベルの低さは、醜悪の域に入っている。

◆韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらい

裏では早期から情報があったが、予定通りトランプは日本から韓国へ飛び、板門店で金正恩と会った。わたしごときにもさる情報筋から「板門店会談」の報はあったのに、日本のマスコミの多くはどうやら、まったくその情報をもっていなかったようだ。これには驚いた。そしてG20開催中から相も変らぬ韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらいの態度は、本当に情けなく恥ずかしい。

わたしが本通信で何度も主張している通り「ロシアは北方領土を1つも返さない」ことがあらためて明言された。それでも「平和条約協定に向けて努力する」政府は言う。やめとけ。「平和条約締結に向けての努力」とは「経済協力」と名乗る「持参金」のさらなる無駄な出費だ。

そういえば、かつては韓国同様・中国に対する敵視も過剰だったが、いつのころからか、政府は中国敵視を変更したようだ。来年には習近平を国賓として招くという。この変化は政府の「一貫しない姿勢」を示しているのではない。「強気に傅き、弱気に威張る」一貫した姿勢の表れと理解すべきである。米国同様ついに中国も「かなわない相手」と政府は見解を変えたのだろう。もちろんロシアもである。

「もっとも幸いな場合でも『国家』とは災いである」

と言い放った賢人の至言が身に染みる。それにしてもはた迷惑で、不格好すぎたG20であった。


◎[参考動画]G20首脳らが夕食会(KyodoNews 2019/6/29公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年 タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号

創刊5周年〈原発なき社会〉を目指して 『NO NUKES voice』20号【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

6月12日、リンチ被害者M君が5名を訴えた上告について、却下の連絡が代理人の大川伸郎弁護士へあった。賠償を命じられた李普鉉氏からは「賠償金を支払いたいので口座を教えてくれ」と代理人から連絡があった。一方金良平氏からは何の連絡もないので、大川弁護士は金良平氏の代理人に「賠償金の支払い」を求める旨と、大川弁護士の銀行口座明細を記載したFAXを送付したが、7月2日現在大川弁護士には、金良平氏の代理人から何の連絡もないという。

確定判決で約114万円(プラス利息)の支払いが命じられた金良平氏。大阪地裁の法廷でも尋問の際は、M君に向かい一応「謝罪」の態度をとっていたが、それは心からのものであるとは到底感じられなかった。まさか、ではあるが金良平氏がM君に対して賠償金の支払いを行わなければ、M君の被害は永遠にあがなわれないこととなる。金良平氏はエルネスト金 @erukimnenのハンドルネームで、最高裁却下が伝えられた6月12日の前日まで、実に多くの書き込みを行っていた。しかしそれ以降は意見の表明などは一切控えているようだ。

これほど頻繁にツイッターをする時間があったら、M君の弁済に充てるお金を準備するのに、どうして働かないのだろうか。相変わらず居丈高な発信が目立つが、金良平氏に「反省」の気持ちはあるのだろうか。そして、仮に自分で賠償金が準備できなくとも、知人(彼には少なくともM君リンチ現場に臨んだ4名の友人がいる)などに、用立てしてもらい、M君への賠償金を支払う気持ちと準備があるのだろうか。

もし、現在金良平氏がM君への賠償金支払いの算段で、忙殺され連絡が取れていないのであれば、取材班は上記懸念を取り消し、金良平氏にお詫びする。しかし、判決確定後「賠償金支払い」がM君の代理人から伝えられて約半月が経過する。「支払う気があるのか」、「すぐには支払えないのであれば、どのように弁済するのか」くらいは連絡があってよかろう。

「祝勝会」と称し浮かれる加害者と神原弁護士(2018年3月19日付け神原弁護士のツイッターより)

そのようなことは、断じてあり得ないと信じるが、まさか金良平氏は裁判所の判決を「踏み倒そう」と考えてはいまいか。そのことに「悪知恵」を貸している金良平氏の「悪友」はいまいか。金良平氏に告ぐ。あなたのそばで、もしそのような「友人」を装った人間がいれば、その人はあなたを永遠に「社会的存在」ではなくそうと企図する、あなたの本質的な敵である。金良平氏は裁判所の判決通りの金員をM君に支払えば、民事的な責任は果たしたことになる(道義的責任はともかく)。しかし、もし金良平氏が策を弄してM君への賠償金支払いを行わなければ、永遠に「裁判判決不履行者」の負い目をおわなればならない。

我々は知っている。しばき隊の連中は「用済み」になった、あるいは「お荷物」になった人間をいかに冷酷に切り捨てるか。その結果最悪の事態に陥った人間もいるではないか。

もし金良平氏にM君への賠償金支払いの財力がなければ、「人権」、「差別」を口にする「友達」のために、「M君リンチ現場」に居合わせた4名は、金良平氏の人生を縛る永遠の十字架から彼を解放するために、金良平氏に資金援助をすべきである。それこそが、冷酷な法によるものではなく、真に人間的な問題解決と金良平氏の人生を助ける道ではないのか。

取材班は被告諸君と、その代理人弁護士の方々へ金良平氏の将来を案じて、あえて提案するものである。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)


◎[参考音声]M君リンチ事件の音声記録(『カウンターと暴力の病理』特別付録CDより)

(鹿砦社特別取材班)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

◆前回のあらすじ

今日の日本における、英語教育に関する議論にはメディアリテラシーについての観点が欠けているように思われる。重要なのは英語をはじめとする他言語から情報を得て、多角的な観点を持つことである。多くの国の公用語である英語やスペイン語などとは異なり、日本語は日本一国でしか使用されない。日本語の情報の多くは日本から発信された情報であるため、日本的フィルタリングがかかってしまう。メディアリテラシーを高めるためにも、いくつも言語を理解できることは極めて重要である。 ※前回リンク

◆相対的に弱まる英語=西欧文明の覇権 諸文明の台頭と多言語化

さて、今後の状況を見ると外国語として英語だけ学ぶというのでは不十分かもしれない。近年、アメリカやヨーロッパの西欧文明が弱体化し中華文明・イスラーム文明・東方教会(ロシア)文明などが自身の論理を主張、「民主主義」「人権」といった西欧文明の理念を否定し、自分たちが望む体制の構築に取り組み始めた。西欧文明の英語だけではもはや不十分であり、中華文明の中国語やイスラーム文明のアラビア語といった各々の文明圏で有効な言語を学ぶことも重要になるのではないだろうか。

◆日本の学校のずさんな「英語教育」と外国人学校という選択肢

『平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果』

しかし誠に残念ではあるが今の日本の教育現場で多言語教育を期待するのはほぼ不可能であろう。英語をまともに話せて教えられるような教員はほとんどおらず、ひどい例では自称「英語教師」が駅前の英会話学校に通っている様である。

さらに文科省の2016年の調査によると、英検準1級・TOEIC730点以上の英語力のある「英語教師」は、中学教員で全体のわずか33.6%、高校教員でも65.4%しかいないことが分かっている。もっとひどい例では、2016年に京都市を除く中学校の英語科教員でTOEICを受験した74人中、730点以上を獲得したのは16人で、約2割にすぎなかった。最低点は280点で、500点未満が14人もいたという。京都府教育委員会は「英語科教員の資質が問われかねない厳しい状況だ」としている。

※参考URL
『京都府 中学英語教員、TOEIC「合格」わずか 疑問も』
『平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果』 

こんな状況で日本の学校(特に公立)で英語に加え、さらに第二言語として中国語や韓国朝鮮語などを学ぼうとするのは絶望的に不可能である。一部、まともな外国語教育をしている学校もあるがそれは例外である。私は日頃から「学校」という洗脳機関には、嫌悪感を抱かざるを得ない。教育委員会が生徒間のいじめ(という犯罪)による自殺事件の調査や事前防止をないがしろにしたこと、部活の顧問による生徒への体罰、そしてあまりにもずさんな「英語教育」の現状……。

本当に「センセー」方には生徒を教えようとする意志があるのだろうか。とりわけ公立学校の教員というのは公務員だから少しぐらい適当にしても、解雇されないと安心しているのではないだろうか。一体、これほど英語能力が低いのになぜ彼らはかつて英語教師を目指そうとし今は「英語教師」として私たちの税金で生活しているのか全く疑問である。

今のところ、一般的な日本人が多言語教育を期待できるのは外国人学校ぐらいしかないのかもしれない。日本の各地には台湾や韓国朝鮮、ブラジルやインドなどの様々な外国人学校がある。これらの学校なら、日本の学校よりもずっとまともな多言語教育が期待できるだろう。また一般的な日本人がこのような外国人学校に入ることで自らの社会における立ち位置を相対化できやすくなるのも長所と言える。

時代はまさに多言語化である。「日本語しかわからなくても生活できる」という意見は論外であるし、さらに「外国語は英語だけでよい」という意見も不十分である。私たちは様々な言語を身に付け、多角的な視野を養う必要がある。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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