6月9日に、なにかと過激な言動で有名な戸田ひさよし前大阪門真市議から私に対して「弾劾質問状」が届きました。6月7日に戸田さんらが催された、この間やり取りした前田朗教授を招いての「大学習会」について触れた5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」(及び私のFacebook)の戸田さんについての部分に対するものです。期限が6月30日ということですので、期限の昨6月30日回答させていただきました。

「弾劾質問状」の全文は戸田さんのHP
http://www.hige-toda.com/x/c-board/c-board.cgi?cmd=one;no=11376;id=#11376
と、私の6月19日付けFacebook
https://www.facebook.com/toshiyasu.matsuoka.7
で公開されていますので、アクセスしてご覧ください。

戸田さんからの要望で公表・公開でやろうということですので、私の回答と、私から戸田さんへの「ご質問」を以下全文公開いたします。

「デマだ」「中傷だ」とお互い罵り合うのではなく、近未来的に有益になるように前向きな議論ができれば幸いです。

なお、戸田さんは5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」の戸田さんに関する記述の部分について「撤回」と「謝罪」を要求されていますが、現時点においては「ご回答」に述べた通り相当な理由と根拠がありますので、その必要はないものと考えます。

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

戸田ひさよし 様

ご 回 答

                           

2019年6月30日
                           株式会社鹿砦社
                           代表取締役  
                            松岡利康  

はじめに

ここ3年余り、私たちは「カウンター大学院生リンチ事件」の被害者支援と真相究明に関わってきましたが、私たちの取材や質問に多くの方々が真正面から向き合うことなく逃げ回っていることを見るにつけ、反面教師として、「そういう人間にはなりたくないな」と感じることも往々にしてありました。なので、私は戸田さんからの「弾劾質問状」に対して真正面から向き合い、私なりに真摯に回答したく思います。悪意を持った間違いはありませんが、無意識、無知による間違いは潔く訂正いたします。

また、戸田さんから途中経過も公表し公開でやりたい旨の要望もありました。すでに戸田さんのサイトでは「弾劾質問状」全文など公開されていましたが、こそこそやるのは私の性格ではなく、わざわざご連絡いただかなくても、公表・公開は望むところです。くだんの「リンチ事件」をめぐる議論も公表・公開でやりたかったのですが、関係者は逃げまくったり、単に「デマだ」「でっち上げだ」「リンチはなかった」「リンチではない」などと紋切り型の台詞を言うばかりで、きちんとした公開の議論は成立しませんでした。

この反省からも、今回、公表・公開したやり取りになり、問題点が明らかになればいいんじゃないでしょうか。

戸田さんもどこかで引用されていた記憶がありますが、「君の意見には反対だ。しかし、君が意見を言う権利は死守する」というヴォルテールの有名な言葉、議論の原点になる言葉があります。これを踏まえて、今回も前向きにしっかり議論いたしましょう!

もう14年も前になりますが、私が「名誉毀損」容疑で神戸地検特別刑事部に逮捕された際、戸田さんには想定外のご支援を賜りました。勾留理由開示公判で傍聴席の一番前でこぶしを挙げながら大声で裁判官に抗議しておられた戸田さんの姿を思い出します。これについては今でも恩義に感じています。その節はお世話になりました。

また、同年しばらくしたら戸田さんも逮捕されました。ほぼ同時期(私は7月、戸田さんは12月)に権力の弾圧を受け逮捕されたということで親近感もあります。だからこそ、少々の“ヤンチャ”はいいとしても、5年前のことで旧聞に属するとはいえ今回問題とされた「凪論」主宰者・N氏に対する行き過ぎた攻撃は残念であり遺憾です。戸田さんは、そんなに弱い者いじめをするような人ではないと思っていたからです。

戸田さんは先の統一地方選挙で、私も含め大方の予想に反し落選されました。私の高校の先輩は、前回落ち、4年間艱難辛苦を舐め年金で糊口をしのぎながら今回返り咲きました。戸田さんも、これから4年間は収入がなくなるわけで大変だと思いますが、ぜひとも捲土重来を期していただきたいと思います。

私は、個人的には戸田さんのキャラクターは嫌いではありません。むしろ小市民的な議員が多い中で、このキャラクターは議会に喝を入れるためにも必要だと思っています。

神原元弁護士のツイートより

また、「リンチ事件」に私たちが関わっているのを、「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」(加害者側の代理人にして「カウンター/しばき隊」の守護神・神原元弁護士のツイート)にあるように、「私怨」だと言う人たちがいますが、私が直接リンチを受けたわけでもありませんし、李信恵氏ら誰彼への「私怨」からやっているわけではありません。趙博氏には直接裏切られましたので「私怨」がないと言えば嘘になりますが、こと戸田さんについては裏切られたこともなく「私怨」などありません。「凪論」N氏への攻撃という行き過ぎたアクションは批判しますが、戸田さんの人格批判はいたしません。この前提で議論し、わだかまりが解ければ幸いです。

戸田さんが連携されている「連帯労組(連帯ユニオン関生支部)」に対し権力の弾圧が続いています。鹿砦社は連帯労組との関係は希薄ですが、主義・主張を問わず権力からの弾圧には一致して抵抗すべきだ(「救援連絡センター」の当初からの思想でもあります)と思い、ささやかながら私どもが発行している雑誌『紙の爆弾』2019年3月号でも「救援連絡センター」代表の足立昌勝教授に寄稿いただきました。献本送付しておきますのでぜひご一覧ください。

あと、私の思想的なポジションですが、間違っても「ネトウヨ」や「極右」「レイシスト」ではありません。また、逆に「極左」でもありません。「カウンター/しばき隊」界隈の方々は私や鹿砦社を「極左」呼ばわりしますが、不正確です。先に挙げましたが、「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」、これはどういう意味か? 誰が「極左」か? 何が「私怨と妄想」か? 神原弁護士にはとくとご説明いただきたいものです。「ネトウヨ」とか「極右」とか「レイシスト」と呼ばれるよりはマシかもしれませんが、あまりにひどいレッテル貼りであり物言いです。

また私は「リベラル」でも「革新」でも、ましてや戸田さんのように勇ましい「革命的左翼」でもありません。学生時代から「差別・排外主義」と闘うことは私にとって当然のことで、このスタンスは変わりませんが、体質としては、反戦、反原発、反改憲(特に9条と21条)で、ちょっと左がかった頑固な「守旧派」だと自分では思っています。しかし、私も歳を重ね、若い頃と違い、他人の反対意見にも耳を傾け柔軟に対応する度量はあるつもりです。

上記を前置きとして以下思うところを申し述べます。

6・7集会案内

〈1〉本件「弾劾」の発端

戸田さんは、去る6月7日に、ミュージシャンの趙博氏、仲岡しゅん弁護士らと共にヘイトと連帯労組弾圧に抗議する学習会を開かれました。ここに畏敬してきた前田朗教授が講演されるということで、ご恵送いただいた著書へのお礼兼ねて留意されるよう手紙を出しました。手紙は、リンチ事件の被害者支援で、いったんは「共に頑張ろう!」と意志一致していたところ、突然掌を返された趙博氏を主に念頭に置いて書いたものでした。私たちにとって趙氏は突然裏切ったA級戦犯であり到底許せない人間だからです。私たちは直接裏切られたわけですから、実感として身に染みています。前田朗教授が李信恵氏に対し『救援』紙上で、「唾棄すべき低劣さ」と断罪されましたが、趙博氏こそまさに「唾棄すべき低劣」な人間です。

また次いで、被害者M君と昵懇の間柄であったのに、こちらも離反し、たびたびM君や私たちを誹謗してきた仲岡しゅん弁護士がいたことも、私たちには疑問でした。趙氏の裏切りについては『ヘイトと暴力の連鎖』P74~79「『浪速の歌う巨人』趙博の裏切り」、『カウンターと暴力の病理』第7項「われわれを裏切った“浪速の歌うユダ”趙博に気をつけろ!」を、また仲岡しゅん弁護士については『人権と暴力の深層』第8項「M君リンチ事件に、見て見ぬふりを続ける『売り出し中』の二人の偽善者」を参照してください。

『カウンターと暴力の病理』より

『人権と暴力の深層』より

その学習会の案内に戸田さんも共催者(共謀企画者)の一人として名がありました。戸田さん一人で主催されたのなら、私も前田教授に手紙を出すこともなかったと思いますし、前田教授に挨拶するために出向いたかもしれません。戸田さんの過去の“武勇伝”=「凪論」主宰者・N氏攻撃(特に勤務先訪問)を思い出し、いわば“付け足し”として、手紙にも「デジタル鹿砦社通信」にも記載しました。これが今回「弾劾」されているものです。戸田さんについて私が問題にしているのは「凪論」主宰者・N氏への行き過ぎた行為のみです。

先に申しましたが、私が意識したのは主に趙博氏であり、比率で言えばこれが5、次に仲岡しゅん弁護士で比率2、そして戸田さんで比率1、この3人が同席することで比率2という按配です。

趙博氏は、いろんな運動に首を突っ込み、いろいろ軋轢や齟齬を起こし顰蹙を買っているとの情報が少なからずあります。仲岡弁護士も、リンチ被害者M君に手を貸すのではなく、崖から谷底に落とすようなことをやっています。正義感溢れるダイレクトな性格の戸田さんは、こうした人たちと一緒にやらないほうがいいんじゃないか、とアドバイスしておきます。趙博氏から私たちが受けたようなことになるのを懸念します。一度人を裏切った人間はまた裏切ります。くだんの本の中のタイトルに因んで言えば、「趙博に気をつけろ!」です。

その「通信」の後、末尾に記した一覧のように前田教授と私とのやり取りが続きました。

〈2〉リンチ事件と前田教授の勇気ある論評

私たちはここ3年余り、被害者らからの要請を受けて「カウンター大学院生リンチ事件」に関わり、前田教授は2度「反差別運動における暴力」という論評を『救援』紙に発表されました。戸田さんもすでに読まれているものと察しますが、非常に勇気ある、また本質を衝いた論評で、私たちも感激しましたし、おそらく戸田さんもそうでしょう。良識派の人々の間では評価が高かったものです。

この間の前田教授と私とのやり取りで、最後は前田教授が、鹿砦社を「炎上商法」と言われたのが何かのメーリングリストで暴露されたことについては「謝罪」されました。ですが私が項目を設けお尋ねしたことには、答えず逃げられました。残念なことです。上記の2つの論評のあの明晰さは一体何だったのかと落胆いたしました(ここでは戸田さんの「弾劾質問状」とは直接関係がありませんので、これ以上述べません。詳しくは「デジタル鹿砦社通信」か私のFacebookをご覧ください。このやり取りは末尾にリストアップしておきます)。

〈3〉戸田さんによる「凪論」主宰者・N氏攻撃と勤務先訪問、これに関連する地裁判決

戸田さんは、2014年5月頃、「ネトウヨ・ヘイター」「札付きの権力弾圧促進分子」として「凪論」というサイトの主宰者・N氏を攻撃し、さらにこれがエスカレートして遂に勤務先の児童相談所を訪れます。申し入れ書を作成し児童相談所所長にこれを渡し面談しN氏の配置転換を求めるためです。突然のことに衝撃を受け恐れおののき、勤務先に迷惑がかかることを懸念したN氏はサイト閉鎖を決断し、その後再開されていません。戸田さんによれば、「公然非公然の情報戦、個別撃破の電撃戦、『戸田戦略』の勝利!」と意気揚々と述べておられます。「凪論」は、けっこう有名なサイトだったらしく、左右問わず再開を望む声があるようです。

正直なところ私は、戸田さんに指摘されるまでに、この程度の知識はありましたが、もっと深くは調べませんでした。戸田さんのこの行動についての情報を見た私が思ったのは「これはマズイだろう」ということでした。このたび、戸田さんからの「弾劾質問状」で出てきましたので、私なりに調べてみました。結論から先に申し上げれば、「ここまでやる必要はないだろう」ということです。

私が14年前の「名誉毀損」事件で保釈され『紙の爆弾』を復刊しました。ご支援のお礼の意味もあり、一定期間にわたり少なからずの方々に献本送付していましたが、かなり多数の方(500人ほど)に膨れ上がり経費節減のために基本的に全廃し送らなくなり、戸田さんとは活動分野も異なり徐々に疎遠になっていきました。そして、この件(「凪論」N氏の勤務先訪問)が疎遠への決定打となりました。

今回、「弾劾質問状」を受けましたので、私の性格上徹底的に調べてみました。

まず、やはり一般市民に近い下級公務員(戸田さんが指摘される「副主幹」とは幹部でも管理職でもなく、民間で言えば係長クラスだということです)の勤務先を訪れるのはマズイと思います。

戸田さんも繋がりがある「カウンター」界隈の方々は批判者に対し勤務先に一斉電話攻撃を仕掛けたり、内容証明を送ったりするのが常套手段のようです。ある自動車販売会社の経営者には、メーカーの本社や取引銀行などに誹謗中傷の電話したり、戸田さんも交流のある、ある国会議員の選挙カーが自宅近くまで行き(自宅に行き呼び鈴を鳴らし、幸いにも家人が不在だったとの情報もあります)、それを詳細にツイートしたりしています。

さらには、あろうことか、リンチ事件や、これを惹き起こした「カウンター/しばき隊」に批判的な在日コリアンの医者が勤める公立病院にまでやんややんやと電話攻撃したりしています。いくらなんでも、人の生命に関わる問題で、これは誰が見ても非難されるべきです。普通だったら「凪論」N氏のように参ると思いますが、上記の会社社長と医者の2人は図太い神経の持ち主のようで参ることはなく反撃していますが、これは例外でしょう。戸田さんの行動もこうした類いと思っていました。

さらに、戸田さんの行動の前後、これに連繋するかのようにN氏の職場(児童相談所)には相当な数の電話があったそうです。本名や身元は明かさず、一方的に汚い言葉で暴言を吐きN氏を非難していたとのことです。児童相談所がただでさえ人出不足で忙しいことは、昨今の児童虐待に関係する報道でも想像できますが、N氏が勤務する児童相談所がてんやわんやであったことが察せられます。

戸田さんによるN氏の勤務先を訪れた行為は、思想・信条に関係なく、誰もが嫌がることです。相手が仮に「ネトウヨ」であったにしろ、逆に「極左」であっても、これは常識として慎むべきではないでしょうか。N氏は「嫌がらせ」と認識していますが、私もそう思います。

もうずいぶん前(1970年代後半)のことですが、私は大学を出て当時大阪心斎橋に在った小さな会社に勤めていましたが、在学中に学費値上げに反対し逮捕され有罪判決を受けていました。私の勤務先のビルの入口から公安の刑事が電話してきて、「出て来ないと会社に行くぞ」と脅され、やむなく出て行ったことがありました。もし刑事が会社に来て上司や経営者にいろいろ話したら、大変な騒ぎになっていたと思います。零細企業でしたので解雇になったでしょう。これと似ています。戸田さんは刑事ではありませんが、戸田さんが勤務先に来て動転したN氏の気持ちは分かります。

戸田さんは今回の選挙で、前回よりもかなり票を落とし落選となりましたが、選挙民は、見ていないようで見ています。しばらくは地元に足場を置いた運動に専念されたほうがいいのではないでしょうか。

ちょうど偶然にも、戸田さんによるN氏攻撃や勤務先訪問のネット記事を拡散したとして、N氏は「ぱよぱよちーん」こと久保田直己氏を提訴し、一審で勝訴しています(静岡地裁民事第1部平成30年(ワ)第212号。平成31年3月29日判決言渡。賠償金20万円。N氏は本人訴訟で、久保田氏の代理人は神原元弁護士)。N氏は戸田さんに恐怖を抱いているのか直接戸田さんを提訴していませんが、もし戸田さんが提訴されても同じような結果になると思います。直接でないにしろ戸田さんの行動を見る目安にはなるでしょうから、これを援用しつつ記述を進めます。

N氏は、上記久保田氏に対して提訴し勝訴したのみならず、しばき隊のトップ・野間易通氏に対しても提訴し、やはり静岡地裁で勝訴(賠償金20万円)しています。N氏に対する2つの訴訟資料を読むと、N氏への攻撃が凄まじかったこと、これにN氏がかなり参っていたことが判ります。野間氏、久保田氏、そして戸田さんの目論見は、おそらくそこにあったのではないかと推察いたします。

N氏について私はやはり「一般市民で下級公務員」と認識しています。公務員は、キャリアであるかないかで大きく「高級」か「下級」かに分けることができると思います。キャリアでなくとも、今回の児童相談所の所長や局長クラスならまだしも、N氏は「総務担当副主幹」だったそうですが、地位もさほど高くはありません。民間での「係長」クラスだそうで、やはり「下級公務員」で「一般市民」と見なしていいかと思います。公務員だからといって、すべて即公人、準公人というわけではありません。

N氏はなぜかM君の訴訟や鹿砦社が李信恵氏を訴えた訴訟にも数度傍聴に来られ、顔見知りになり簡単な会話をしました。付き合いと言えばそれだけのことで、一緒に飲食を共にしたことなどありません。N氏を、戸田さんは、「『反ザイトク側をもっぱら非難攻撃する』という『ザイトク別働隊・裁判オタク』、つまりは親ザイトク分子で、その上『札付きの権力弾圧促進分子』である凪」として、いわば「ヘイトの先頭に立っていた」人物、「ヘイトスピーチの被害者に思いを馳せたり気の毒に思ったりすることのない人物」「ネトウヨ・ヘイター」「札付きの権力弾圧促進分子」等々と詰(なじ)っておられます。事前にこのイメージがありましたので、もっと理知的でスマートな風貌を持つコワモテな方かと思っていましたが逆でした。彼はどこの組織にも属さず、サイトが閉鎖されるまでは身に付けていた法律知識を表現するブロガーにすぎず、独身で出世欲もなく、落語(傍聴の後に大阪・天満天神繁昌亭に行ってました)とサッカー(ある在日の選手のファンだとのこと)が趣味で、人の好い地方の下級公務員の中年オヤジという感じで、子どもが好きな児童相談所の職員というイメージがピッタリでした。とても「ザイトク別動隊」「ネトウヨ・ヘイター」などとは思えませんでしたし、そうした「ヘイトの先頭に立っていた」人物ということを静岡地裁も否定しています。

戸田さんがN氏の勤務先に来所された日、N氏が担当し面倒を見ていた子どもが相談所を出る日で、労いと激励の声をかけてやりたかったということでしたが、戸田さんが相談所を出られてから、上司に呼ばれ事情を聴かれたり大変だったようで、それができなかったことを悔やんでおられました。戸田さんが仰られる「子どもや社会的弱者に寄り添う気持ちが持てない者」(申し入れ書)とは逆のイメージです。

特段N氏を庇うわけではありませんが、戸田さんはN氏について牽強付会な物言いをされているのではないか、と感じました。

また、「凪論」は在特会などの「行動する保守」らに対しても批判記事を掲載していて、N氏なりにバランスを取っていたのではないか、と思います。

野間氏、久保田氏、そして戸田さんらによるネットでの非難や職場訪問が重なれば、私なら音(ね)を上げていたでしょう。私のみならず多くの方もそうだと思います。

さらに戸田さんは児童相談所を出てからN氏の自宅まで行き、自宅の写真を撮っておられます。このことはサイトでも書かれていますが、サイトに書かれていないことがありますよね? 戸田さんのサイトは複雑なので私が発見できないのかもしれませんが、その写真をN氏宛に配達証明郵便で送られましたよね? これは事実ですか? 事実であれば、これはどういう意図なのでしょうか? 常識的に見たら脅しとしか思えませんよ。実際にN氏は脅しだと感じたそうです。読者の皆様はどうお感じになるでしょうか?

ご存知のように鹿砦社は、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で壊滅的打撃を受けました。しかし多くの皆様方のご支援で再興し、一時はヒット作が続き、かなりの利益が出て税務署に持って行かれそうになり、運動に還元することにしました。この一つに、野間氏らと繋がる「首都圏反原発連合」(反原連)に1年間で「広告代」名目で300万円余り拠出しました(が、反原連からは、感謝の言葉もなく一方的に「絶縁」されました)。反原連や、これに繋がるSEALDs-しばき隊-カウンターに疑問を持った最初のきっかけは、韓国からの京大研修員・鄭玹汀(チョン ヒョンジョン)さんへの凄まじいネットリンチでした(2015年)。母子で異国にやってきて、凄まじいネットリンチを受ければ、正義感の強い戸田さんがこれを見たら、「これはひどい!」と思われるでしょう。外国から来た人に対し、いろいろ親身に世話を焼くのではなく、逆に激しいバッシングをする――私は日本人として恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。 

くだんの静岡地裁判決は、N氏に対する戸田さんの言動について、ほとんど「原告(注:N氏)の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」と判示しています。

特に、いまだに削除していないN氏の本名をフルネーム(最初は名字のみ、後にフルネーム)で表記し勤務先等も公開していることもまた同様の判示をされています。

さらには、「原告がヘイトスピーチを行っていたことやヘイトスピーチを先頭に立って主導していたことを被告が真実であると信じたことについて、相当な理由があるとは認められないというべきである」としています。

そうして、「本件戸田記述の記載内容について、違法性は阻却されず、原告に対する名誉毀損が成立する」と結んでいます。

ちなみに、くだんの箇所は戸田さんのサイトではいまだに掲載されています。久保田氏への訴訟で一審勝訴判決を得たN氏が今後どうするか分かりませんが、もしN氏が一審勝訴判決を基に戸田さんを提訴すれば戸田さんの敗訴は免れないと思われますので、老婆心ながら、今からでも削除されることをお勧めいたします。

〈4〉戸田さんからの具体的質問項目についてお答えします

これまでの記述で、私の回答の概略なり骨格はお分かりになるか、と思います。以下、戸田さんからの個々の具体的質問項目について申し述べます。

Q1.異論はありません。ただ、N氏が職場に居ずらくなるような、勤務先の児童相談所を訪れ、この所長宛に「申し入れ書」を渡し面談を要求する行為は賛成できません。また、戸田さんが仰られるような人に該当する者とは誰がどんな基準で判断するのでしょうか。

Q2.これも異論はありませんが、ここでも、誰がどんな基準で、戸田さんが否定される人物だと判断するのでしょうか。先の静岡地裁判決では、「原告(注:N氏)が人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせていない冷酷な人物であるという印象を閲覧者に与えるから、原告の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」と判示されていますが、この判示は戸田さんのサイトの文章の少なからずの箇所に及んでいます。

Q3.これには異論があります。当事者の静岡市の市議なら、申し入れたり改善を求めるのは理解できますが、戸田さんは大阪門真市の市議でいらしたのですから、他県他市の公務員の人事にまで口を出すのはいかがなものでしょうか。N氏の言動をすべて支持するわけではありませんが、遠隔地から勤務先にまで来られて抗議されるほど悪質であったとは思えません。仮に悪質であったにしろ筋違いでしょう。

Q4.戸田さんがN氏の勤務先を訪れ所長に面談したこと自体が迷惑行為ですし、N氏はおそらく数日仕事が手につかなかったんじゃないでしょうか。気が小さな方のようですし尚更です。戸田さんには、N氏が嫌がるということは分かった上での来所―所長面談だったのではないんですか? 立派な「業務妨害」です。

Q5.N氏とは市民や子どもらに「恐怖」を与えるような人物なのでしょうか。先の静岡地裁の判示で、「原告が人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせていない冷酷な人物であるという印象を閲覧者に与えるから、原告の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」とし、「本件各戸田記述の記載内容について、違法性は阻却されず、原告に対する名誉毀損が成立する」とされています。私はこの判決を支持します。

戸田さんの訪問や数多くの電凸攻撃などあれば、普通の企業なら解雇か、これに近い処分を受けるでしょう。N氏が、あれだけの攻撃を受けながらもいまだに勤務できているのは、「人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせて」いるからではないでしょうか。

Q6.2014年にはしばき隊/カウンター問題にはさほど関心がなく、「ああ、戸田さんがマズイことやったな」ぐらいにしか考えていませんでした。そして、「もうこういう人とは付き合わないでおこう」と思い、連絡などやめました。また、事実関係について戸田さんのサイトでの記述には間違いないだろうと思っていました。なので、戸田さんには特段確認する必要もないと考えていました。逆に事実関係を確認すべきなのはN氏に対してだと思います。

(2)静岡市児童相談所には取材していません。N氏の立場を顧みると、平穏に戻っているところで、再び「寝た子を起こす」ようなことはしたくありませんから。

(3)N氏本人には、取材班メンバーの協力を得て長時間取材し疑問点を幾つかたずねましたが、戸田さんの訪問や野間氏らによるネット攻撃には非常に迷惑し精神的に参ったということを繰り返しておられました。私がN氏の立場だったら同様だと思います。

(4)N氏は、戸田さんらによる攻撃には精神的も参り、戸田さんの勤務先来所を機にサイトを閉じたということです。「逃亡」でもなんでも構いませんが、人ひとりの言論を封じる結果になりました。N氏はたかが地方の一下級公務員ですよ、果たしてここまでやる必要があったのか疑問です。N氏には確かに右翼的言辞も散見されますし、逆に在特会やネトウヨに対する批判的コメントもあります。私は、平たく言って、N氏の言動をかなりの部分で評価できません。支持できる部分は、むしろ少ないです。組織をバックにしているわけでもありませんし、これぐらいは言うに任せたらいいんじゃないでしょうか。

戸田さんともあろう方が、こんな地方の下級公務員をイジメてどうするんですか。弱い者いじめとしか映りませんよ。せっかく直撃するのなら、もっと大きな相手、強者、権力になすべきでしょう。

今回、戸田さんによる「凪論」主宰者・N氏攻撃について、N氏本人への長時間の電話取材や前出の判決文の解読など徹底的に調べました。知らないことがずいぶんと判りました。「デマ中傷」どころではなく、戸田さんがサイトに記述されている以上に、凄まじい事実が出てきました。もうこんなことはやめるべきです。いくら「反差別」「反ヘイト」を旗印にしても、その頃から今に至るまで続く、暴言や電凸攻撃を一斉に行うようなネットリンチ(私刑)、ましてや職場訪問などはやめるべきだと思います。私の言っていることは間違っているでしょうか?

非礼を顧みず忌憚なく申し述べさせていただきましたので不快な点があれば何卒ご容赦ください。

以上、戸田さんの「弾劾質問状」への回答とさせていただきます。

《付 記》

【前田朗教授―鹿砦社・松岡利康の公開書簡】

◎松岡利康 前田朗教授の豹変(=コペルニクス的転換)に苦言を呈す!(2019年5月23日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30689
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(2019年5月26日付け前田朗氏ブログ)http://maeda-akira.blogspot.com/2019/05/blog-post_56.html
◎松岡利康 前田朗教授の誤解に応え、再度私見を申し述べます(2019年5月28日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190528
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(2)(2019年6月1日付け前田朗氏ブログ) http://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post.html
◎松岡利康 「唾棄すべき低劣」な人間がリーダーの運動はやがて社会的に「唾棄」される! 前田朗教授からの再「返信」について再反論とご質問(2019年6月4日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30796
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(3)(2019年6月9日付け前田朗氏ブログ) https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_22.html
◎松岡利康 前田朗先生、私の質問に真正面からお答えください!このリンチ事件をどう本質的に解決、止揚するかが社会運動の未来のために必須です(2019年6月13日付けデジタル鹿砦社通信) http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190613
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへのお詫び(2019年6月13日付け前田朗氏ブログ) https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_13.html
◎松岡利康 前田朗教授が「お詫び」ブログを公開! 私との公開書簡も、私の質問に答えず一方的に「終了」宣言。はたしてこれでいいのでしょうか?(2019年6月17日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=31064

【その他の関連記事】

◎特別取材班 カウンター/しばき隊の理論的支柱・師岡康子弁護士による犯罪的言動を批判する! 前田朗教授に良心があるのなら、師岡のような輩と一緒に行動してはいけない!(2019年5月27日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190527
◎特別取材班 リンチ被害者M君勝訴! 加害者に約115万円の賠償金支払いが確定! 直ちに賠償金を支払え! 「M君敗訴」などという「誹謗中傷は許さない!」(神原弁護士の言)(2019年6月14日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190615
◎横山茂彦 しばき隊リンチ事件をめぐる松岡利康氏と前田朗氏の相論 ── 論点の整理、および事件の解決・和解のために (2019年6月18日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=31121

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

戸田ひさよし様
             

ご 質 問

                           

2019年6月30日
                           株式会社鹿砦社
                           代表取締役  
                            松岡利康  

戸田さんからの「弾劾質問状」には、私なりに真っ正面から取り組み真摯にお答えいたしました。

このたびは、あらためて戸田さんに以下のご質問をさせていただきますので、来る7月21日(日)までにご回答お願い申し上げます。ご回答の期限は、戸田さんからの「弾劾質問状」のご回答期限と同じ3週間とさせてください。

ご質問1: 戸田さんは6月6日付けサイトにおいて、私を「こじれサヨ」と揶揄されていますが、この根拠を具体的に明らかにしてください。

私は、鹿砦社が発行している『NO NUKES voice』で原発反対を謳い、この関係の集会には時々参加することはあっても、こうした反原発運動以外には、社会運動の場にはほとんど登場していません。他に「カウンター大学院生リンチ事件」被害者支援と真相究明活動ぐらいですが、私がどこで何をどのように「こじらせてしまった」のか教えてください。

ご質問2: 先の「ご回答」でも連々申し述べさせていただきましたが、私が悪意を持って、具体的にはどのように戸田さんへ「酷いデマ中傷」(6月6日付け「ちょいマジ掲示板」)を行ったのか明らかにしてください。

「凪論」追及(児童相談所所長への「申し入れ書」、勤務先の児童相談所への訪問など)に対する事実関係については戸田さんのサイトの記事をほぼ100%信じていますので「デマ」ではなく、これに対する私の論評や意見は、静岡地裁の判決に沿ったもので根拠があり「中傷」にはあたらないと考えています。

私たちは、この3年余り、「カウンター大学院生リンチ」事件の被害者支援と真相究明に関わってきましたが、「カウンター/しばき隊」界隈の方々が真っ先に口にするのは「デマ」という言葉です。戸田さんのケースには戸田さんご自身のサイトでの記述を基にしていますので「デマ」ではありません。私の論評が「デマ」であれば、戸田さんの記述も「デマ」ということになってしまいます。

ご質問3: 6月1日の戸田さんのサイトで、「『松岡氏の旧ブント仲間OBからの借金踏み倒し事件』を戸田が信頼する複数の被害関係者から話を聞いて」「『借金事件』は裁判になったけれども、原告(貸した側)が(不当に?)負けた」云々とありますが、この原告の名前、裁判所、事件番号を明らかにしてください。これが明らかにできなければ提訴も可能ですが、戸田さんは間違いなく敗訴しますよ。

私にはここで戸田さんが指摘されるような経験の記憶が全くありません。借金関係でこれまで裁判になったことはありません。戸田さんは、おそらく人の噂や悪口が好きな連中の言葉を簡単に信じられているのではないでしょうか。逆に私は貸し付けて返済しない人に対して法的措置を執り差し押さえたことが最近でもありましたが。

お蔭様で現在の鹿砦社は再起を果たし健全経営で支払いなどの遅れもありません。むしろライターさんなど個人事業主には、支払い期日よりもなるべく早く支払うように努め感謝されています。

ちなみに、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で、ひどい話ですが、銀行や公的機関などからの借り入れもできなくなりましたので、いきおい業績アップに頑張らざるをえなかったのですが。

ご質問4: 「財政厳しき左派メディア」の『救援』『人民新聞』に「大規模連続広告を出し続けて『重要な金主』になっている」、「松岡氏にしたら『オレが左翼を支えてやってるんだ』、という『驕り』が強まっているんじゃないでしょうか?」と書かれていますが、これは一体どういう意味でしょうか? ご説明いただけますか?

『救援』の広告は1回5万円、『人民新聞』は1万円です。これで「オレが左翼を支えてやってるんだ」もないでしょう。ご承知のように、私と鹿砦社は、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で壊滅的打撃を蒙りました。運よく、多くの方々のご支援で再起できました。このお返しの意味も込めて、できるだけ運動に還元しようとしていて、私なりの恩返しのつもり以上の気持ちはありません。この行為のどこがいけないんですか? 人の厚意に対し、真っ直ぐに捉えず、「オレが左翼を~」というように曲解して仰るのはおやめください。

ご質問5: 私(たち)は、この3年余り「カウンター大学院生リンチ事件」の被害者支援と真相究明に関わってきました。この事件について戸田さんはどう思われますか? 正義感の強い戸田さんなら、きっと「許せない!」と思われるはずです。

私たちが心血を注いで作った本5冊を送りましたので、ご一読の上、ぜひともご意見をお寄せください。リンチの加害者らの周辺からは、「デマ」「でっち上げ」「リンチはなかった」「リンチではない」という言葉でしか、“反論にもならない「反論」”があるのみですが、戸田さんならもっと違う反応があるものと信じています。

ご質問6: 前田朗教授は『救援』紙に2度「反差別運動における暴力」という論評を発表されました。最近ではこの論評をみずから否定される言動に接し、私たちや、発表時に前田教授の勇気ある言動に感激し高く評価した多くの人たちは落胆いたしましたが、前田教授の2つの論評と、これをみずから否定されるような前田教授の言動について戸田さんのご意見、ご感想を述べてください。

『救援』(580号。2017年8月10日発行)

『救援』(589号。2018年5月10日発行)

ご質問7: このかんの前田教授と私とのやり取りについて戸田さんのご意見をお述べください。また、最後には私からの設問には答えず、逃げた印象がありますが、これについても戸田さんのご意見をお述べください。

ご質問8: 「リンチ事件」の被害者支援と真相究明の過程で、当初被害者の味方のように私たちの前に現われ、すぐに掌を返した、6月7日の学習会の共催者の趙博氏の行動をどう思われますか?

被害者が趙博氏に渡したリンチ事件関係の貴重な資料は戻って来ていません(結局、この資料の取得と被害者サイドの動きを探ることが目的だったという人もいます)。私から申し上げれば、はっきり言って、簡単に人を裏切り、先の「ご回答」でも述べましたように前田朗教授が李信恵氏に対して『救援』紙上で断罪された「唾棄すべき低劣」な類いの人間で、正義漢で少なくとも人を裏切ることをよしとしない戸田さんが付き合うような人物ではありません。実際に趙博氏に裏切られた私が言うのですから間違いありません。「朱に交われば赤くなる」という諺を想起してください。

ご質問9: その学習会の参加者の仲岡しゅん弁護士の、リンチ事件についての言動についても戸田さんはどう思われますか?

以上、よろしくお願いいたします。

なにが「デマ」だ! なにが「でっち上げ」だ! 徹底した調査・取材によって発行したリンチ関連本!

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

前立腺がんの放射線治療打ち切りを巡り、滋賀医科大学附属病院の医師や治療を望む患者らと、病院側との間で持ち上がった対立に、関係者の証言から迫るドキュメンタリー「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」が6月30日深夜(7月1日午前)0時50分、MBS(大阪市)で放送される。

◎MBSのドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか~」
https://www.mbs.jp/eizou/backno/190630.shtml

 

MBSのドキュメンタリー「映像'19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」6月30日深夜(7月1日午前)0時50分放送

滋賀医大病院をめぐる問題については、本通信でも継続的に取り上げてきたが、いよいよ在阪キー局であるMBSが1時間のドキュメンタリーを今夜放送する。

MBSはTBS系の大阪にある放送局だ。歴史的にTBSへの対抗心が強く、これまでも優れた報道番組を多数生み出してきている。滋賀医大病院問題とは関係ないが、わたしたちが子供のころから現在まで続く「仮面ライダー」シリーズをテレビ化したのも、MBSだった。

「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」のディレクター、橋本佐与子氏が、取材班とともに問題の現場へ登場されたのは、今年の早い時期だったと思う。滋賀医大病院問題については、わたしが関わる前から、朝日新聞が継続的に報じていたが、テレビメディアで継続的な取材・報道を続ける局はなかなか出てこなかった。患者会の皆さんは昨年の秋以降、短期間で2万8千筆の署名を集めた。「岡本医師の治療継続」を求める声は、厚労省、文科省、国会議員へ届けられた。その場面にも橋本ディレクターはじめ、MBS取材陣の姿があった。

しかし、まさか1時間もの長編ドキュメンタリーを放送することになろうとは、わたしも考えなかった。大手メディアとは異なり、小さな影響力しか持たないわたしのようなフリーライターにとっても、橋本ディレクターとMBSのアクションは、うれしい誤算だった。この問題を取材し、話すと「ああよくある医学界の話ね」と反応する方が少なくない。正直な感想なのであろうが、こういう問題が「よくある」ことであってはならない、とわたしは痛切に感じる。

たとえば、現在滋賀医大のHP「病院からのお知らせ」には、6月11日に「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載されているが、その内容は国立がん研究センター発表の報告を、明らかに改ざんしたものだ(この問題については6月28日、本通信で【[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん──岡本メソッドに対する印象操作か?】が黒藪哲哉氏により報告されている)。

こういう明らかな改ざんが、病院長の名前で堂々と行われて問題はないのか?
黒藪氏の報告の中に映像が紹介されている。この映像(https://youtu.be/w3rPzAk9G3E)をぜひご覧いただきたい。

質問をする女性に対して事務職員は、明確に「この資料は国立がん研究センターが作成したものです」と語っている(映像では質問者と回答者の名前も確認することができる。不審に思われる読者諸氏は滋賀医大病院の当該職員に直接確認されたい)。

 

滋賀医大小線源患者会HP

さらに、6月25日にも「病院からのお知らせ」に、一部明らかな虚偽が掲載された。

続発する問題の発生源、滋賀医大病院を橋本ディレクターはじめMBS取材陣はどのように描き出すのか? 視聴可能区域にお住まいの方は、是非ご覧いただきたい。拙宅にはテレビがないので、わたしは既に知人のお宅にお邪魔する準備を整えた。なお、滋賀医大病院にかかわる問題の総体は、以下のサイトに詳しく掲載されている。引き続き正当な「解決」を見届けるまで、この問題は追及したい。

◎滋賀医大小線源患者会HP https://siga-kanjakai.syousengen.net/

◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

◆単に「会った」というだけの外交

帰国した安倍総理が、イラン訪問の「成果」を誇っているという。銀座のステーキ屋で森喜朗元総理らと会食し、「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に会えたのは自分だけだ」と「成果」を誇示したというのだ。

自分の訪問中に日本の企業の船舶が「攻撃」され、帰国後にはアメリカの無人機偵察機が撃墜されるという交戦事態が起きた。これが偶発的なことではない証拠に、アメリカは戦争を準備していたのだ。帰国と入れ替えにアメリカによる「戦争の危機」が迫っていたというのに、この男はそれを「成果」だと言っているのだ。

つまり、国際的な政治危機のなかで、なんら具体的な政策を持たずにイランを訪問してみたものの、アメリカの説によればその訪問国によって自国のタンカーが攻撃され、みずから「同盟国」としているアメリカはイランを攻撃しようとしていたのだ。悪くすれば、アメリカとイランが戦争を始めているなかで、安倍は出国できなくなる可能性すらあったのである。


◎[参考動画]“仲介役”の安倍総理 イラン最高指導者とも会談(ANNnewsCH 2019/6/13公開)

◆訪問が戦争への「最後通牒」になっていた可能性も

そもそも今回のイラン訪問の最大の目的は、アメリカとイランの「対話」を仲介することだった。そしてそれは、ハメネイ師によって明確に否定されたのだ。「アメリカは体制転覆を狙う意図を持っていない」というトランプ大統領のメッセージが、安倍首相を通じてイラン側に伝達された。これに対してハメネイ師は「アメリカは体制転覆の意図を持っていないのではなく、体制転覆を引き起こす能力を持っていないだけだ」と喝破したという。

「トランプはメッセージをやりとりするには、ふさわしい相手ではない」(ハメネイ師)と言うのを、黙って聞いているしかなかった安倍総理が「日本外交の成果」などと言えたものか。もしも20日のイラン攻撃が中止(10分前にトランプがビビった)されていなかったら、安倍総理は「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に最後通牒を伝えたのは自分だ」ということになっていたはずだ。植民地国のかいらい政権よろしく、アメリカの「特使」のような立場でイラン訪問をしていたことになる。

アメリカは10年に一度は戦争をしないと成り立たない、軍産複合体(産業関係者は家族をふくめると3000万人で、人口の11.5%にあたる)を、その社会に抱えている国家だ。戦争が産業であり、戦争をやめてしまうと失業者が出る戦争国家なのだ。したがってその外交は平和を維持するためにものではなく、戦争を生じさせるために緊張感を高める役割をもっている。今回、安倍総理はアメリカの戦争のためにイランを訪問した。その本質をあますことなく暴露するものとなった。

◆歓迎されてあたりまえの日本とイランの関係

イランは親米だったパーレビ国王を倒したイスラム革命(「アメリカに祖国を売るシャーに死を!」)から40年である。反米思想は社会の隅々にまで浸透している。中東諸国では初等教育時から広島・長崎の原爆投下の残虐性が教育されているという。トルコやイランなど、中東諸国が日本に友好的なのは、ロシアの脅威を日露戦争が取り除いたことに始まり、イランにおいては日章丸事件での日本の原油輸入によるものだ。

すこし解説しておくと、1953年当時イギリスが支配権を継続していたイランの原油を、出光石油の日章丸が海上封鎖をくぐりぬけて日本にもたらしたもので、イギリスの植民地支配を最終的に終わらせる結果となった。いわばイラン独立を日本が支援したといえるのだ。

こうした両国の歴史から、安倍総理が歓待されるのは当たり前のことなのである。出光佐三および出光計助ら当時は中小企業にすぎなかった出光石油の功績によるものなのだ。イランをよく知るジャーナリストによると、1991年湾岸戦争直後に、イラン領内に逃れたクルド難民支援をしているNGOに携わるボランティアとしてであったが、「日本は、次はいつアメリカと戦うんだ、次回は事前にイランにも教えてくれよ」と事あるごとにイラン人に言われるのに閉口したという。

そんな反米思想をもっているイランに、こともあろうか安倍総理はアメリカの手先として訪問したのである。トランプが離脱した核合意など、もっぱらアメリカへのおもんぱかりで、日本のイランからの原油輸入はかつての30%近くから一桁にまで減っている。その分、サウジなど価格の高い国から買わざるをえない、国の損益を招いてきた。安倍外交は、まさに国益を損ずることにのみつながりそうだ。

日本の貿易会社がチャーターしたタンカーが攻撃をうけても、ソマリアに派遣されている自衛隊護衛艦あさぎりは動かなかった。アメリカが派遣している空母打撃団がイランに攻撃されたら、どう動くのだろうか?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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最近は外国からの移住者が増え、教育の現場でも外国にルーツを持つ児童が増えてきたし、地域によっては横浜のいちょう団地のように住民の4分の1が外国籍というところも出てきた。ここまで来ると、日本語だけわかればよいという状況ではもはや対応できない。

日本では言語教育については、ほとんど英語と日本語の2つだけについてしか論じられない。「グローバル化の急速な進展に伴い英語は必須」「国語力がしっかりしないとどっちもつかずになる」といった賛否両論がある。私にはこれらの類の議論には、メディアリテラシーを高めるためだという観点が決定的に欠けているように思えてならない。


◎[参考動画]10ヵ国の児童が学ぶ 驚きの多国籍小学校(SUMIYA Spa & Hotel 2019/1/13公開)

日本語で「韓国人 ムスリム」と検索した様子

◆言語とメディアリテラシー

そもそもなぜ外国語を学ぶのかというと、海外との接点を持ちそこから情報を集め、視野を広めるためである。英語はあくまでそのためのツールにすぎず、より本質を突き詰めると「他の言語を使いこなしそれによって多角的に物事を俯瞰できる」能力が重要になる。

言語が異なると同じテーマであっても、発信情報はかなり異なってくる。韓国について日本語で検索するとネガティブな内容が多い。例えば、Googleで「韓国人 ムスリム」と検索すると韓国人によるムスリムへの差別的な行為などがヒットする。韓国は悪い国だと言いたい内容が多い。

しかし、英語で「korean muslim」と検索すると韓国人の改宗者の話などがヒットする。中立的な立場から韓国におけるムスリムの状況が書かれている。同じことでも言葉が異なると、検索結果も異なるのである。これが日本語や英語だけではなく、中国語やフランス語などの検索結果なども含めると様々な視点を得ることができよう。

英語で「korean muslim」と検索した様子

(余談だが、日本人が想像している以上に韓国の国際的な評価は高いと思われる。あるチュニジア人女性と話した時に韓国について聞くと、アラブ世界では韓国は「礼儀正しい国」「イノベーションの国」と認知されているという。また韓国ドラマも多数アラビア語に翻訳され、チュニジアでも放送されているとのことであった。私たちはアラブ世界やヨーロッパといった第三者の観点から韓国を見ることが重要なのかもしれない)

日本語は日常生活から高度な学問用語まで網羅しており、日本で暮らすにあたっては日本語しか理解できなくてもビルの清掃員やバーテンダー、プログラマーや大学教授、ペットショップの従業員に至るまで様々な職に就くことが可能である。しかしメディアリテラシーの観点から考えると、日本語しかわからないということは極めて致命的なことである。

そもそも日本語を公用語している国は日本だけである。そのため、日本語で発信された情報の圧倒的多数は日本発になる。それは日本一国からの視点に偏りがちになる。英語ならば公用語とする国は米英の他にシンガポール、ケニア、フィジーと数多く、よって英語で発信された情報は様々な国からの視点を持つ。スペイン語にしても公用語とする国は、メキシコ、アルゼンチン、赤道ギニアなど数多く、やはりスペイン語で発信された情報も多くの視点を備えている。多くの日本人は日本語しか理解できないため、ネットで情報収集する時も日本語で検索しがちである。その結果、日本的視点でフィルタリングされた情報ばかりを取得することになる。

過去に話したことのあるシンガポールからの帰国学生の意見によると、日本政府は「日本人が海外の情報を閲覧しないように英語能力をあえて低くしているのではないか」とのことであった。真偽はともかく、これは政府にとっては極めて都合がよいことである。日本語しか理解できないゆえに国民が「自発的」に日本から発信された情報しか見ないとすれば、中国のようなファシズム大国のようにわざわざ高度な検閲システムを構築しなくてもすむからである。(つづく)

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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厚生労働省は、給与のある高齢者にたいする「在職老齢年金制度」の廃止・縮小を検討する方針を決めた。給与を得ている年金対象者が、年金を減額されることから、働かなくなるのを防止するための措置である。

具体的に、現状の制度をみてゆこう。60歳以降で給与と年金の合計が28万円を超えると、超過分の半額を年金から差し引くことになる。たとえば給与が20万円で年金が14万円の人の場合、34万円-28万円=6万円÷2=3万円。つまり3万円が年金から差し引かれ、手取りは28万円+3万円で、収入31万円ということになる。だったら、給与を17万円に抑えようということになるかもしれないが、この程度なら気にすることもないはずだ。

給与が35万円、年金が25万円の場合はどうだろう? 35万円+25万円で60万円の収入がある人は、60万円-28万円=32万円÷2=16万円で、収入が44万円ということになるはすだが、そうではない。現行制度では60歳以上で47万円を超える場合は、超過分の全額が差し引かれるので、60万円-47万円=13万円(超過分)で、60万円-13万円となり、収入47万円ということになる。60万円が47万円になるのだから、35万円も稼がずに22万円でいいや、となるかもしれないのだ。ちなみに、65歳以上は47万円から半分減額である。減額されるのなら、仕事を辞めようと思うかもしれない。

◆5人に1人の「減税」措置

そこで減額制度の廃止・縮小をとなってきたわけだが、これは実態をかけ離れているのではないだろうか。60歳以上64歳までで現行制度の対象になっているのは約88万人、65歳以上では36万人である。人口比では、ほぼ五分の一と考えていいだろう。つまり5人に1人のための減税措置なのだ。思わず減税措置と書いてしまったが、年金を減額しないということは年金拠出の増加である。その年金が税収から捻出せざるをえない将来を考えると、これは明らかに高額所得層への「特定減税」であろう。そしてこの年金減額分の見直しでは、1兆円の拠出が見込まれているという。将来世代の年金の食いつぶしである。

考えてもみてほしい。ふつうのサラリーマンは定年後、企業に嘱託として残る道しかない。現役時代に額面40万円だった給与は20万前後に減額され、諸手当も出なくなる。いや、いまどき額面40万円というのは大手企業、および大手の傘下にある中堅企業であろう。中小零細のサラリーマン・労働者は年収300万すなわち25万前後の給与がふつうではないか。いや、40歳代のロストジェネレーション世代においては、時給1000円すなわち年収200万弱、月額給与15万円がいいところではないだろうか。つまり年金改革は社会のうわずみの人々を対象にしたものにすぎないのだ。

◆年金制度は国が補償せよ

現行の年金制度では、定年後2000万円が別途に必要になると政府は言う。国は面倒をみきれないから、若いころから投資運用などで蓄財をはかれというのだ。失敗つづきの年金基金の株式運用を真似ろというのだろうか。蓄財をはかれという方針自体、消費の低下をうながす経済政策にほかならない。物価は徐々に上がっている。しかるに給与は企業の内部留保(400兆円)によって抑えられたままだ。これで景気が良くなるはずはないのだ。

われわれ国民は、破綻に瀕している年金制度を「保証」せよとはもう言わない。国民の生活を年金で「補償」しろと言っているのだ。なぜならば、政府はそれ自体、そもそも国民の税金で成り立っているのだ。政治家はもとより、省庁の官僚・職員・自治体職員は、国民への公共サービス産業の従業員なのである。税収が途絶えれば、即座に食い扶持をうしなう公共サービスの役人・政治家たちが高給を取りながら、働き手である国民の年金の増減を操る構造こそ、おかしなものではないか。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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秋篠宮が会見をひらいた。27日からの海外公式訪問(ポーランド・フィンランド)を前に会見されたわけだが、注目されたのは、もちろん小室圭さんと眞子内親王の婚約問題についてである。「結婚の件については、わたしは娘から何も聞いていません」というものだった。昨年の「それ相応の対応をしなければ」「国民に理解されない状態では納采の儀もみとめられない」から比べると、いくぶん穏やかな雰囲気だった。しかし、何も聞いていないというのは、ふつうの家庭では考えられないことだ。皇族の中でも自由な家庭を築こうとしてきた秋篠宮家において、親子の会話がないことが端無くも露呈したかたちだ。


◎[参考動画]秋篠宮ご夫妻が会見 代替わり後初の外国訪問を前に眞子さま結婚見通し語る(テレ東NEWS 2019/6/21公開)

◆天皇家と秋篠宮家を両天秤にかけるメディア

秋篠宮家をめぐる報道は、小室さん婚約問題にかぎらない。悠仁親王が通うお茶の水大学付属中で起きた「刃物事件」が、秋篠宮家の自由主義的な教育方針による結果で、学習院に通わせていれば事件は起きなかった。佳子内親王のダンス好き、あるいは眞子内親王の恋愛が本人の希望通りにと発言したことへの批判などというかたちで、バッシングに近いものとなってきていた。婚約問題、教育問題にかぎらず、秋篠宮家の「公私」の厳格な分け方に、宮内庁の関係者も戸惑うことが多いという。ぎゃくにいえば、ふつうの家庭を築こうとする宮家に、それは許さないという宮内庁関係者の思惑が、メディアを通じて圧力をかけているとも考えられる。

そしてこの秋篠宮家批判は、天皇陛下と雅子皇后を称賛する報道、とくに雅子皇后の外交力(トランプ夫妻歓待での英語での接待など)を称賛し、返す刀で対照的に秋篠宮家を批判するというパターンで繰り返されてきたのだ。これはこれで、即位まではどちらかといえば雅子皇后(当時は皇太子妃)が適応障害で仕事を果たせず、なんとなし天皇(当時は皇太子)に批判的な論評が多かった反動で、こんどは天皇皇后夫妻を評価する半面、何かと自由な発言をする秋篠宮家を叩くという、メディアの話題づくりによるものだ。

◆恋愛の自由、教育の自由が天皇制を崩壊させる

とはいえ、小室さん問題が象徴天皇のアイドル的な側面において、きわめて注目にあたいするテーマであるのは確かで、国民的な興味の的というわけである。本欄では、皇室の民主化・天皇制の民主化(自由恋愛・自由教育)が、それを徹底することで政治権力と天皇家、国事行為と私的行為の矛盾が拡大すること。したがって、天皇家の文化的な性格を政治から分離し、非政治化することが不可能ではない。そしてその過程で天皇家が首都をはなれて本来の御所である京都を住まいとし、あるいは政治(政府と国会)が天皇家を必要としなくなる可能性。つまり天皇制が廃止されることまで展望できると考えてきた。

皇室の民主化とは、たとえば新天皇による剣璽等継承の儀に、女性閣僚(片山さつき地方創生担当相)は参列したのに、皇室の伝統は女性皇族を参列させなかった。つまり国民感覚とはかけな離れた旧皇室典範によって、信じられない光景が現出したのだ。これは眞子内親王の自由恋愛問題と同根である。ふつうに恋愛をしようとしたら、相手の母親に「借金」があるから許されないというのだ。ふつうの自由主義を貫こうとしたら、かならず天皇および天皇制の枠組みに触れてしまう。そこから天皇制が崩壊する可能性がある。口先だけで、天皇制廃絶などとくり返すよりも、天皇および天皇家を徹底的に民主化する、憲法上の矛盾すらも民主化することによって、それは大いに可能なのだ。

◆兄弟の確執が背後に?

さて、今回の会見で秋篠宮は、宮家の当主としてよりも皇位継承権第一位(皇嗣)の立場から、無難にこなしたというのが実際のところだ。それはとりもなおさず、秋篠宮家バッシングとでもいうべきメディアの攻撃を避けつつ、眞子内親王への批判を緩和し、悠仁親王の皇位後継者としての資格に曇りがないように配慮したとみるべきであろう。

秋以降、安倍政権は女性皇族の扱い、とりわけ女性宮家の可否について国民的な議論をしなければならないと提唱している。それは当然のことながら、女性天皇という最大の案件をけん制してのものである。今後、愛子内親王を皇位継承者とするのか、それとも悠仁親王を継承者とするのかについても、国民的な議論をへなければ立ち行かない皇室の事情がある。この議論の背景に、天皇と秋篠宮の隠然たる確執があるからだ。

◎[参考記事]
秋篠宮さまの注目会見、即位に関し意思表示した場合の波紋(2019年6月17日付け女性セブン)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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6月16日、大阪市大国町の社会福祉法人ピースクラブで、3月に再審開始が決定した「湖東記念病院事件」の冤罪被害者・西山美香さんと、主任弁護士の井戸謙一さんを招いて講演会を開催した。最初に井戸弁護士より事件の経緯と問題点を解説してもらった。

6月16日(日)大阪で開催された「湖東記念病院事件」冤罪被害者・西山美香さんを囲む会

2003年5月22日明け方、湖東記念病院に入院中の男性患者(74歳、半年間植物状態、呼吸器で命を長らえていた)が意識不明で発見され、その後死亡が確認された。当初「業務上過失致死容疑」で開始された捜査は、1年後の7月2日西山美香さん(当時23才)が任意の取り調べで「(呼吸器の)管を抜いた」と自白したことから「殺人事件」に切り替わり、滋賀県警をざわつかせた。7月6日「殺人罪」で逮捕された美香さんは、その後起訴され、懲役12年の実刑判決が下された。美香さんは何故ウソの自白をしたのか? 井戸弁護士の解説から、当時美香さんを取り調べた滋賀県警の山本刑事と美香さんの関係に言及された箇所に焦点を絞り、検証してみる。

◆「業務上過失致死容疑」が「殺人容疑」に! 舞い上がる滋賀県警!

男性の死亡後、滋賀県警・愛知川(えちがわ)署は、人工呼吸器の管が外れ、アラームが鳴っていたのを見過ごし、窒息死させたとする「業務上過失致死罪容疑」で、当夜当直だった看護師A、Bと看護助手美香さんを取り調べた。その際A看護師が「管が外れていた」とウソをついてしまう。男性患者の痰の吸引を2時間ごとにする義務があったが、1回行っていないことから、怠慢を問われると案じ、咄嗟についてしまったウソだ。しかし管が外れている場合鳴るはずのアラーム音を聞いた者は誰もおらず、「呼吸器の不具合」との病院側の主張も、鑑定で「問題ない」となった。

1年後、前任に代わり美香さんを担当したのが滋賀県警から派遣された若い山本誠刑事だった。密室の取調室で山本は、死亡患者の写真を置いた机をバーンと叩き、椅子を蹴りあげ、美香さんに尻もちをつかせるなど威嚇しながら「アラームが鳴っていただろう」と迫った。怖くなった美香さんは「アラームは鳴った」とウソの供述してしまう。そのとたん山本は急に優しくなったという。

◆精神科に通うまでに美香さんを追い詰めた滋賀県警!

一方でA看護師はアラーム音を認めてなく、美香さんの供述との食い違いを迫られノイローゼになっていた。そのことを知った美香さんは「A看護師はシングルマザーで、逮捕されたら生活できない。自分は正看護師でもないし、親と暮らしている」と、一旦認めた「アラーム音を聞いた」の供述を撤回した。しかし山本刑事は受け入れない。6月23日深夜2時30分、美香さんは一人で愛知川署を訪れ、当直に山本刑事への手紙を託した。撤回させようと必死だったが、撤回は叶わなかった。

7月2日、美香さんは午前中、精神科を受診している。カルテはあるが、美香さんにはその記憶がないという。それほどまでに追い詰められていた。その足で警察署を訪れた美香さんは「故意に管を抜いた」と供述してしまう。7月6日美香さんは「殺人罪」で逮捕。「えっ? 私、逮捕されるの? なぜ、誰も殺してないよ?」。美香さんはパニック状態に陥った。「管を抜いた」が「殺害した」になるとは夢にも思っていなかったからだ。

3月に設立した「冤罪犠牲者の会」共同代表の青木恵子さん(東住吉事件)。右後ろに並んで座っている冤罪被害者・西山美香さん(後ろ右)と主任弁護士の井戸謙一さん(後ろ左)

◆滋賀県警に組織的に追い詰められ、自白してしまった美香さん

長い取り調べの間、山本刑事は美香さんの話を親身に聞き、相談に乗ったりもした。時には自分の私生活を話すこともあったという。幼い頃から友達を作るのが苦手で、当時つきあう男性もいなかった美香さんは次第に山本刑事に惹かれていく。携帯電話の番号も交換しあった。美香さんの警察への出頭日数は、5月は6回、6月は17回、うち6回は呼び出しもないのに自主的に出頭している。警察への出頭や捜査への協力が、山本刑事に会いたい一心からきていることがよくわかる。

逮捕後も滋賀県警と山本刑事は組織的に美香さんを包囲し、追い詰めていく。家族に会えない美香さんに「上司が毎日両親に会いにいっているから心配するな」とウソをつき、その上司のもとに美香さんを連れていき、上司に「山本の言うことだけ信じていればいい」と言わせた。「弁護士は信用できない」などと言われた美香さんはますます「山本刑事しか信じられない」と洗脳されていく。なお逮捕から起訴まで留置された大津署で美香さんは、山本刑事が持ち込んだマクドナルドのハンバーガー、ケーキー、ミスタードーナッツのドーナッツを食べている。飲み物は3回ともQOOのオレンジ。若く、社会性もまだ乏しい美香さんを、滋賀県警は組織的にあの手この手を使い洗脳したのだ。

何故、美香さんはウソの供述をしたのか? それについて井戸弁護士は、美香さんのシングルマザーのA看護師に対する罪悪感や、アラーム音についての供述を撤回させて貰えないことから、仕方なく供述してしまったのではないかという。さらに山本刑事を好きになったが、当時A看護師の「アラーム音を聞いてない」と、美香さんの「聞いた」が矛盾することから、捜査は膠着し、呼び出されなくなっていたため、新しいことを言えば、山本刑事が自分に関心を持ってくれるのでは、と考えたからではないかとも述べている。

◆アラーム音を出さずに窒息死させる方法を美香さんに教えた滋賀県警・山本刑事!

そもそもアラームは鳴っていない。管も外れていない。では美香さんの「故意に管を抜いた」(窒息死させた)との自白は、どう維持できたのか? 逮捕後、コロコロ変わる美香さんの自白から、滋賀県警や山本刑事が見立てたストーリーに合わせ、美香さんの自白が作文されていた可能性が出てきた。書いたのはもちろん山本刑事だ。

7月2日の供述では「(管を)外して病室を出た。アラームは10分鳴り続け、A看護士が消した。動機はA看護師が寝ていたので腹が立って、偶発的にやった」だったが、A看護師が「アラームは絶対鳴っていない」「居眠りしていない」と供述、さらに子供の付き添いの親が「10数回ナースコールをしたが、アラームは鳴っていない」と供述するや、7月10日には「アラームは鳴っていない。私が消音ボタンを押し続けた」に変わった。同じ日、滋賀県警は「アラームを鳴らさずに窒息死させることはできるのか」と、人口呼吸器の実況見分を行っている。

その結果から編み出されたのが「消音ボタンを1回押せば1分間(60秒)アラーム音が消える。1分直前に再度ボタンを押し、アラーム音が消えた状態を継続させる。それを3回続け、患者を窒息させた」という供述だ。しかも偶発的ではない、ほかの患者も殺そうとした計画的犯行だとした。しかし看護師ですら知らない、消音時間が正確に60秒であることや消音状態継続機能を、資格も専門知識もない、看護助手の美香さんが知り、かつ確実に実行できると、ふつう考えるだろうか?

冤罪・鈴鹿殺人事件の加藤映次さん(長野刑務所に収監中)のご両親

◆盛りすぎた供述調書で、ウソが暴露された滋賀県警・山本刑事!

美香さんの最終的な自白内容は、「動機は病院に対する恨みを晴らすことであり、出勤前から犯行を計画していた、(ナースステーションから様子がうかがえる患者のベットの)カーテンも閉めず、枕灯もついたまま、素手で患者の人工呼吸器の管を抜いた、アラームがピッと鳴ったのでボタンを押して音を消した。頭で数を数え、1分たつ前にまた押した。患者はハグハグと苦しそうにしていた。2~3回で死んだのでチューブをつなぎ、点灯ランプを消し、ナースステーションに戻った」となっている。

しかしこの自白には、なぜ美香さんが消音状態継続機能を知っていたかの説明がない。また正確に60秒を数えるために、美香さんが腕に巻いた時計を利用してないこと、カーテンを閉めない、枕灯を消さない、(殺害を実行する際に)指紋がつくことを気にしないことなどについて多くの疑問が残されている。

有罪認定された判決は、美香さんの自白について「現場にいた人でなければ語れない迫真性に富む」としている。「口をハグハグ」「目をギョロギョロ」の箇所だ。しかし亡くなった患者は大脳が壊死しており、苦しみを感じないから、そもそも「口をハグハグ」や「「目をギョロギョロ」することは、医学的にありえないと弁護側は反論する。では、この「口をハグハグ」「目がギョロギョロ」という供述調書は、誰が作文したのか? 山本刑事だ。

6月16日、井戸弁護士が山本刑事が作成した調書の一部を紹介した。「壁の方には、追いやった呼吸器の消音ボタン横の赤色のランプが、チカチカチカチカとせわしなく点滅しているのが判りました。あれが、Tさんの心臓の鼓動を表す最後の灯だったのかも知れません」。何とも劇画チックな表現だ。彼の調書は全編このような感じだという。「私は~」からと一人称で始まる調書は、あくまでも容疑者が話したことを、刑事が文章にまとめたものだ。果たして美香さんがそのようなことを話すだろうか?

予定を変更し、急きょかけつけてくれた桜井昌司さん(布川事件冤罪被害者)

再審決定の骨子は「入院患者は自然死の可能性がある」「捜査段階の自白は誘導や迎合による虚偽の疑いがある」「西山さんが犯人とする合理的な疑いが残る」としている。検察は再審裁判で有罪主張すると宣言していたが、先の三者協議では「弁護団の主張を見てから判断する」などと筋違いなことを言ったという。いい加減にしろ!メンツのために長々と裁判を引き伸ばすようなことをせず、正々堂々と公判で有罪を主張してみればいい!自ずと美香さんの無罪は明らかになるはずだ。

なお、井戸弁護士のお話のあと、西山美香さんへのインタビュー、冤罪・鈴鹿殺人事件の加藤映次さんのご両親のアピール、3月に結成された「冤罪犠牲者の会」の共同代表・青木恵子さん、サプライズでかけつけた桜井昌司さんのアピールが続いた。美香さんのインタビューと、冤罪・鈴鹿殺人事件については、後日、改めて寄稿したい。

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』20号 尾崎美代子さん渾身の現地報告「原子力ムラに牛耳られた村・飯舘村の「復興」がめざすもの」、井戸謙一弁護士インタビュー「『子ども脱被ばく裁判』は被ばく問題の根源を問う」を掲載!

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号

以下は6月17日正午現在、滋賀医大附属病院のホームページである。
http://www.shiga-med.ac.jp/hospital/index.html

「病院からのお知らせ」の冒頭に6月11日付けで、「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載された。この日は通称「モルモット事件」の第5回口頭弁論が行われた日である。

滋賀医大附属病院のホームページより

「前立腺がん治療に関する情報提供」をクリックすると、

滋賀医大附属病院のホームページより

と、病院長名での文章が現れ、「詳しくはこちらをご覧ください」の「こちら」をクリックすると、

滋賀医大附属病院のホームページより

滋賀医大附属病院のホームページより

滋賀医大附属病院のホームページより

が表示される。冒頭に、

滋賀医大附属病院のホームページより

と、注意書きのようなものがあるが、これだけではどの部分が「国立がん研究センター」による発表であるのか、また引用はどの箇所かが判然としない。そこで17日国立がんセンターの広報担当に「このような記載が滋賀医大病院のHPにあるが、国立がんセンターのHPを探しても、一部を除いて同じ記述を見つけることができない。このような発表はあったのでしょうか」と質問をした。17日夕刻同センターから、

《お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、
そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。》

との回答が返ってきた。え!この文章には1/3、2/3、3/3とページが付されている。「普通の感覚」で読めば、一連の文章と理解しても無理はなかろう。しかも各病院ごとの治療成績なども「国立がん研究センター」が作成した図表だと思う人が多いのではないか。実際に複数の現職医師(脳外科医、診療所勤務医)に読んでもらったところ二人とも「がん研究センター、不思議な資料を作るね」と、やはり誤解していた。現職の医師でも誤解するのだから、一般人はなおのことであろう。

この文章掲示が、ただちに法的な問題だ、というつもりはまったくないが、少なくともまぎらわしく、誤解を与えやすい体裁であることは間違いないだろう。それにしても、どうして滋賀医大病院院長松末氏は、専門が整形外科にもかかわらず、「前立腺がん」にこのようにこだわるのだろうか。同病院には多数の診察科があるのに、「病院からのお知らせ」10件のうち、4件が岡本医師関係の記載とは、不自然ではないだろうか。読者諸氏にも是非ご覧いただきたい。わたしの感覚がおかしいのだろうか? 

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

この間、公開書簡の形でやり取りをしている前田朗教授が「お詫び」ブログ
https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_13.html
を公開されました。

前田教授の『救援』紙に公表された2つの論評は、教授の良心が現われている名文です。前田教授にはリンチの情報が伝わっておらず蚊帳の外に置かれていたようですが、これを私たちが作った本で知られ、教授の懸念と警告が、はたして加害者とこの周囲、神原元、上瀧浩子、師岡康子弁護士らに伝わったか疑問です。

少なくとも前田教授が、くだんの『救援』の2つの論評を書かれた際には、このリンチ事件に対して怒りと運動への懸念があったことは事実でしょう。

『救援』(580号。2017年8月10日発行)

『救援』(589号。2018年5月10日発行)

ならば、私(たち)からの質問には真正面から答えていただきたかったと思うと残念です。6月13日の通信でも述べていますが、私の一連の通信は前田教授と論争し教授を論破しようということを目的としたものではありません。「お詫び」なんて要りません。真正面から〈対話〉し、このままでは社会運動や市民運動への悪影響は否めませんから、なんとかこれを回避したいと思ったのです。前田教授の見識や立場からすれば、教授が意欲的にリンチ事件の本質的解決・止揚の作業に取り組まれれば、社会運動や市民運動への悪影響を阻止できると考えていました。

今回で、私とのやり取りも「終了」ということですが、読者の皆様方は、どう思われますか? 私の個人的意見としては、「お詫び」なんていらない、私からの質問にお答えいただくことを望むばかりです。そうでなく「終了」すれば、回答に窮し逃げたとの印象を読者の皆様方に与えかねないので、ヘイト研究の第一人者の前田教授にとってもマズイと思うのですが……。

◆リンチ事件訴訟、加害者に約115万円の賠償金支払い確定のM君勝訴!

先週12日、リンチ被害者M君が加害者5人を訴えた訴訟の上告が棄却されたとの報せがありました(正式決定日は11日)。直接の加害者の2人に約115万円ほどの賠償金支払いが確定しました。賠償金も、一審の80万円から増額になっています。当初の願望が大きかったこともあり不満が残る内容ではありますが、M君の勝訴です。もっとレベルアップした内容を求めて上告しましたが、これが棄却されたということです。不満が残る内容があるとはいえ、勝訴は勝訴です。私は長年多くの訴訟を経験しましたが、裁判とはこういうものです。完全勝訴など、ほんの一部です。M君や弁護士の先生、支援していただいた皆様――マスコミも完全無視するなど圧倒的少数派の中で頑張りました。彼らがよく使う言葉〈マジョリティ―マイノリティ〉の力学では、M君や私たちのほうが圧倒的にマイノリティで、マスコミや多くの知識人らを味方にした李信恵氏らのほうが圧倒的にマジョリティでした。

しかし、M君勝訴をかき消そうとしているかのように、加害者側代理人・神原弁護士や李信恵氏らはリンチ事件を「でっち上げ」と言い狂喜乱舞しています。当の加害者側の李信恵氏や野間易通氏らは大学院生M君の実名を出して攻撃しています。M君はまだ学生、日頃「人権」という言葉を口にしているのなら、いささか配慮がないんじゃないでしょうか。敗訴して狂喜する神経も理解できませんが、はたしてこのリンチ事件は「でっち上げ」なのでしょうか? 被害者M君が何の目的で「でっち上げ」ないといけないのでしょうか? リンチ事件(加害者らはリンチという言葉を殊更嫌うようですので集団暴行事件と言ってもいいでしょう)があったことは、私たちの綿密な調査・取材によって明らかになっています。フェイクではありません。これを私たちは5冊の本にまとめ世に問いました。これに対する加害者側からの反論本などは一切出ていません。「デマだ」「でっち上げだ」と鸚鵡返しにツイートするばかりです。

リンチ(集団暴行)があったことは裁判所も認定しており、激しい暴行は李信恵氏がM君の胸倉を掴んだことが口火になったことも認定されています。李信恵氏は決して清廉潔白ではなく、リンチの最中も、悠然とワインをたしなみ、これをインスタグラムで配信するという神経、さらには瀕死の重傷を負ったM君を師走の寒空の下に放置して立ち去ったという非人間性――到底理解できるものではありません。さらには、いったんM君に渡した「謝罪文」を一方的に反故にし活動再開したことも、人間としていかがなものでしょうか?

◆私たちがリンチ問題に関わった3年余り前を想起する──

2014年12月以来1年以上も経った2016年2月末に、私はこの事件を知りました。被害者M君は村八分にされ、一部の方(一般には無名の普通の市民)のサポート以外には孤立していました。「いくらなんでも、それはないやろ」という素朴な義憤から、まずは被害者救済/支援のために、M君の話をしっかり聞き資料を精査しようということで、最後までご尽力いただいた当社顧問の大川伸郎弁護士と共に面談しました。2016年3月はじめのことです。慎重な性格の大川弁護士は当初難色を示されましたが、鹿砦社の顧問弁護士でもあり、私が押し切る形で受任いただきました。大川弁護士は、ある事件で国選弁護士に就き、それが敗訴し容疑者が実刑になった際に、「自分の力不足で実刑になり申し訳ありませんでした」と容疑者に土下座して謝ったということを、その容疑者本人から聞き驚きましたが、大川弁護士への信頼は、この事例に基づいています。

◆鄭玹汀さんの本質を衝いたコメント

折りに触れて私のFBにコメントを下さる鄭玹汀さんは今回も次のようにコメントされています。──

「以下の記事(引用者注:6月14日、本通信に先立って公開された私のFBの記事)で取り上げられている問題は、今後の日本社会の人権運動において非常に重要です。しかし、関連記事や本を読まない限り、この投稿だけでは理解するのが難しいと思います。
 特に、ヘイト問題研究の第一人者の前田朗氏がこれまで、リンチ事件の主犯について批判してきたのに、その態度を急に変えて、むしろこれまで複合差別と闘ってきた人だと弁護するようになったのは、決して看過することのできない問題だと考えています。
 私はこの問題について、周りに関心を呼びかけても、ほとんどの方々が自分には関係ないことだと見做していたので、内心驚きました。
 これは日本社会を覆う暗雲といっても決して言い過ぎではありません。」

こうした方がおられるのにはとても勇気づけられます。鄭玹汀さんのような方は現在少数派ですが、こうした方の声が徐々に拡がっていくことを望んでいます。

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B07CXC368T/
鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

M君が上告をしていた対5人裁判で6月12日、上告棄却が代理人に伝えられた(正式決定日は6月11日)。これで大阪高裁の判決が確定することとなり、被告2名に合計114万7,640円(プラス利息)の支払い命令が確定した。

2019年6月12日神原元弁護士の発信

この判決確定までには、かなりの時間がかかったので、あるいは最高裁で弁論が開かれるか、との観測もあったが、大阪高裁判決が確定することになった。「M君リンチ事件」法廷編は、内容的に不充分ながら「M君のほぼ全面勝利」で幕を閉じることになった。

ところが相も変わらず、虚偽発信の印象操作に忙しい人々がいる。判決内容を知らない知人から、「神原元弁護士のツイッターを見たんだけどM君は負けたの?」と問い合わせがあった。

「とんでもない! 負けてないよ。2人に114万円余りの賠償命令が出て『負け』なわけはないでしょ」と回答しておいたが、右記神原弁護士の発信を見れば、勘違いする方々がいても不思議ではないだろう。

参考までに2018年3月19日大阪地裁判決直後の神原弁護士の発信。これを見たら「被告勝訴か」と勘違いする方がいても不思議ではないだろう

神原弁護士は地裁判決後にも「祝勝会」を開く様子を発信し、一部に混乱をもたらしたが、弁護士として、事実と異なる内容を発信するのは問題行為ではないか。しかも、ことは自分が代理人を受任している裁判の判決である。

ネット中毒で何件も裁判で負けている野間易通氏も、C.R.A.C.(何回目にしても、これが「反差別」を標榜する団体の名前とされていることへの違和感は消えない)アカウントから凝りもせずM君(及び鹿砦社)誹謗中傷を発信している。この手の低レベルな人間にはいちいち付き合わないが、問題は数年かけてM君が勝ち取った勝訴を、無きものにしてしまうような悪意と数の力である。

われわれはネット上での連帯や、グループ組織を一切持たない。この期に及んだので明らかにするが、裁判闘争に入る前に、取材班と鹿砦社、支援会の間の議論で申し合わせを行った。それは「M君支援を運動化しないこと」であった。

運動化するとどうしても構成員の中で民主的な意見調整を行わなければならず、それに割く時間と労力、費用は最小限に収めるべきだ、という点で合意を見た。また口頭弁論期日のあとに報告集会を開くべきではないか、との意見もあったが、同様の理由でそれも行わないこととした。

ツイッターへの書き込みでM君から提訴され、11万円の損害賠償判決を受け、M君に賠償金を差し押さえられた野間易通氏の書き込み。嘘満載

例外的に地裁判決、高裁判決後には報告集会を小さな規模で行った。貴重なカンパによって行われる裁判であるから、支援会、鹿砦社は襟をただし、浮かれた気分は微塵もなく最高裁まで闘うことができた。M君からはこの間お世話になった方々への語りつくせない謝辞が伝えられている。取材班、鹿砦社もこれまでご支援頂いた皆様にM君になり替わり、深く御礼と感謝を申し上げる。

皆様、ご協力本当にありがとうございました。

と、きれいに文章を終わりたいのであるが、やはり未だにM君攻撃を止めない中心人物の行動だけは、明らかにしておく必要があろう。仮にこの連中の行動が、日本の法律に抵触しなくとも、連中の行動は重大な「人道上の罪」である。成文法だけで人間は生きているわけではない。法に触れなければいいんでしょ、との言い訳は虞犯者の口にする言葉だ。下記(1)から(8)がリツイートしている人物(団体)、と誰の書き込みをリツイートしているかの一覧である。 

李信恵氏による神原氏・野間氏リツイート

これらのセカンド、サード「ネットリンチ」に手を染めている連中を、読者には是非ご記憶頂きたい。

(1)のりこえねっと=神原氏・野間氏リツイート
(2)ミサオレッドウルフ氏=神原氏リツイート
(3)影書房=野間氏リツイート
(5)香山リカ氏=神原氏・野間氏リツイート
(6)中沢けい氏=神原氏リツイート
(7)有田芳生氏=野間氏リツイート
(8)李信恵氏=神原・野間氏リツイート

いずれもリンチ事件隠ぺいや、事件後のM君攻撃に熱心だった御仁ばかりだ。その他のしばき隊平(ひら)戦闘員も多数、神原氏や野間氏の書き込みをリツイートしている。今回のリツイートで取材班は「のりこえねっと」を「集団リンチ肯定団体」と認定する。

「集団リンチ肯定団体」に「反差別」などを口にする資格はない。大阪地裁で鹿砦社に敗訴した李信恵氏は現在も鹿砦社と係争関係にあるが、M君の対5人裁判の法廷での反省の弁や、「謝罪文」はまったくの出まかせで、まったく反省していないということだろう。あとはいずれ劣らぬしばき隊幹部の面々である。

最後に、普通の日本語理解能力のある方には蛇足ではあるが、再度強調しておく。6月12日、上告棄却、大阪高裁の判決確定により、被告側2名が114万円余りをM君に支払う命令が決定された。どなたにも理解いただけようが、この裁判は「M君勝訴」で幕を閉じた。

(鹿砦社特別取材班)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

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