2月13日13時10分から大阪地裁1010号法廷において、鹿砦社が李信恵氏に対して提起した、損害賠償事件(取材班注:この訴訟から派生し別訴となった訴訟があるため、便宜的に本件訴訟を「第1訴訟」とし、別訴を「第2訴訟」とする)第1訴訟の判決言い渡しがあった。

末永雅之裁判長は、「被告に10万円の賠償を命じる」と主文を読み上げた。

鹿砦社への損害賠償額は少額ではあるが、われわれの間違いのない勝利であり、判決自体は素直に歓迎する。 12日の本通信で松岡が指摘していた通り、この訴訟も「報告事件」とされている疑義がぬぐえず、この日判決を耳にして判決文を目にするまで、油断はならなかった。この訴訟に限れば裁判所は常識的な判断を下したと評価できよう。

松岡(左)と代理人の大川伸郎弁護士(右)。2019年2月13日大阪地裁にて

ただし、ご存知の通り裁判は3審制であるから、被告側(李信恵氏)側が控訴する可能性はある。われわれは主張の主たる部分が認められれば、いたずらに係争を長引かせるつもりはないので(判決文を精査したのちにではあるが)、今後の態度を速やかに明らかに表明する。

しかしながら、李信恵氏との間では、李信恵氏が原告となり鹿砦社を被告とした、いわゆる「第2訴訟」も同時に大阪地裁に進行中であり、こちらは「準備手続」のため、傍聴はいただけないが2月21日に次回期日が迫っている。この日の判決は一応妥当なものであると評価できるものの、「第2訴訟」の今後のゆくえ、あるいは「第1訴訟」の控訴審があれば、まだまだ気を許すことはできない。勝訴判決を受けて、どこかの誰かのように「祝勝会」を挙げ虚勢を張ることなく、気を緩めずに引き続き法廷闘争に臨む所存である。

現在「準備手続」で進められている「第2訴訟」でも、われわれは証人調べの申請を行う予定である。証人調べは公開法廷で行われるのでぜひ引き続きご注目いただきたい。きょう法廷に足を運んでいただいた傍聴支援者の方にお礼を申し上げるとともに、鹿砦社を支援いただいている本通信の読者の皆さんに深く御礼を申し上げる次第である。しかし、繰り返しになるがまだ「闘い」は続く。われわれは最後まで気を抜くことなく、全力で対李信恵氏裁判闘争全面勝利を目指し闘争を継続することを、あらためて宣言する。

この闘争は、たんに鹿砦社の名誉のためだけではなく、日本における「反差別運動」の将来を憂い、その問題点を指摘する裁判でもある。われわれは原則的に「あらゆる差別」に反対するがゆえに、対李信恵氏闘争を、正面から戦う必要を感じているのであり、それは本質的な意味において「社会的正義」を希求する闘いであると認識する。

(鹿砦社特別取材班)

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昨年9月の自民党総裁選挙では、石破茂が大半の予想をくつがえして地方票の45%を獲得する善戦をみせた。議員投票をあわせると、わずか20名の石破派が254票を獲得し、他の5派にささえられた安倍晋三を脅かした。

 

自民党総裁選挙2018HPより

総得票率でいえば、安倍晋三553、石破254と、31%の党員・国会議員が石破を支持したことになる。かさねて言うが、404名中、石破派はわずか20名である。安倍総理の出身母体である細田派が99名、麻生派56名、竹下派56名、岸田派48名、二階派44名、石原派12名、谷垣グループ16名、無派閥が55名である。その意味では、前々回の総裁選で地方票では多数派を占めた石破茂氏は、ポスト安倍の筆頭という言い方もできないではない。

◆石破派を排除するメッセージか?

 

自民党総裁選挙2018HPより

ところで、石破派をのぞく6派閥の事務総長が総理公邸に集まったと報じられた。それも5カ月前の総裁選の祝勝会だというのだ。この時期に「祝勝会」とは、何とも意味ありげではないか。この会合で何が話し合われたのかは定かではないが、わざわざ公邸の裏口から入ることでマスコミのチェックを避けている。つまり秘密会合だったのだが、総理官邸・公邸での秘密会合とはすなわち「コソコソと政治工作をしているぞ」という政局を印象づけることにほかならない。マスコミが嗅ぎつけることを想定したうえ、わざと秘密めいたことをしたぞと、耳目を集めるのである。

ここで安倍総理周辺が流したかったのは、参院選および同時に行なわれるかもしれない総選挙において、石破派を排除するというメッセージにほかならない。いささか当方の深読みながら、このメッセージは「党中央に逆らう者は徹底的に排除する」というものであろう。思い出してほしい。自民党内では女性総理候補ナンバーワンと言われる野田聖子の総裁選出馬(推薦人20人が必要)を封じたのも官邸だった。

こうした政治手法は、旧来の自民党にはないものだった。自民党はもともと政治理念ではなく、権力の利権をつうじた利害結合体だが、親分子分の絆によって求心力を維持してきた。そのことは派閥をこえた寛容な体質が、戦後保守政治をある意味では文化として体現されてきた。総裁選が終われば、ラグビーのノーサイドのような雰囲気で、なおかつ清濁併せ呑む気風に支配されてきた。ところが、安倍政権になっていらい、その自由闊達な気風は排除されてきた。

◆政敵を徹底的にイジメる、ファシスト的な手法

ヒトラーが金融独占資本およびドイツ鉄鋼資本との蜜月を深め、国防軍を掌握するさいに、内部の政敵を排除したことを想起してみるといい。ヒトラーはナチス突撃隊のレームを「長いナイフの夜」によって粛清し、党の支配権を確立するとともに、国防軍と突撃隊の対立を暴力的に止揚したのである。銃剣によるものではないが、そんな粛清劇が自民党で行なわれる可能性があるのだ。

小選挙区(擁立者1人)への党公認という伝家の宝刀を使いまくることで、他派閥を従属させ、批判をゆるさない安倍晋三の政治手法は、まさにヒトラーの独裁方法に近いものがある。そしてヒトラーよりもいっそう陰湿な感じがする。

女房役の菅官房長官もまた、官邸記者クラブに望月衣塑子記者(東京新聞)の排除を申し入れるなど、陰湿な独裁者としての素顔を剥き出しにしている。独裁(ヘゲモニー)とは、圧倒的な被支配者の指示によって成立する(アントニオ・グラムシ)政体である。いまやわれわれは自民党の党内政治、政局にも警鐘を鳴らす必要がある。


◎[参考動画]【自民党総裁選】投開票ならびに両院議員総会(2018.9.20)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

◆鹿砦社への誹謗中傷が過熱化しつつある中で、これを抑止し会社を守るために提訴しました

明日2月13日は、相次ぐ「鹿砦社はクソ」発言に対して鹿砦社が原告となり、「反差別」運動の旗手とされる李信恵氏を被告として訴えた民事訴訟(大阪地裁第13民事部)の一審判決です。(注・この訴訟から派生し別訴となった訴訟がありますので、便宜的に本件訴訟を「第1訴訟」とし、別訴を「第2訴訟」とします)

鹿砦社が李信恵氏を訴えたのは、とても「反差別」や「人権」を語る者とは思えない汚い言葉を使った李信恵氏による鹿砦社に対する誹謗ツイッターが日々エスカレートし、またこれに付和雷同して彼女の周辺から日増しになされる誹謗中傷を目の当たりにして、会社の経営者としては、せっかく長年(本年50周年!)苦労して継続してきた会社を守らなければならないということからでした。法的手段に訴えても誹謗中傷、罵詈雑言を食い止めなければならない──李信恵氏らは、まさか訴訟に訴えることはないと甘く踏んでいたようですが、さらに過熱化してからでは手遅れになりかねません。もう少し泳がせておく手もあったかもしれませんが、私たちにそんな余裕がありませんでした。

さすがに、提訴を機に、当社への誹謗中傷は、全くなくなったわけではありませんが、鎮静化しました。提訴の第一の目的は果たせました。

◆「反差別」運動の旗手と持て囃される者が汚い言葉を使い、気に食わない者を罵倒していいのか!?

もう一つの目的は、それまでわが世の春のように、みずからが気に食わない人たちに対して、汚い言葉で悪罵を投げつける李信恵氏。いやしくも「反差別」とか「人権」とかいう言葉を使う者が、とりわけそのリーダーとして広く知られる者が、こういう汚い言葉を使う子にこと反省を促すことです。

かの「カウンター大学院生M君リンチ事件」で、李信恵氏は刑事・民事共に法的に免罪され開き直っているようですが、だからといって社会的、道義的に免罪されるわけではありません。李氏はリンチの現場に同座し、M君の胸倉を掴み暴行の口火を切り、一方的に長時間暴行を受けているのに止めもせず、悠然とワインを飲み(それをSNSで流し)、瀕死の重傷を負って倒れているM君を師走の空の下に放置し立ち去った──言葉がありませんし、永久にリンチの連帯責任を免れることはありません。

私たちが懸念するのは、この事件によって、反差別運動、人権運動が、世の人々に誤解され、かつての部落解放同盟による糾弾闘争同様、運動の後退をもたらすのではないか、ということです。

李信恵氏とその周辺の人たちは、「リンチ事件を隠蔽したらよかったのではないか」という倒錯した考えで乗り切ろうとしましたが、マスコミが報じず私たちの力不足もあり、それは表面的には成功したように思えます。

『真実と暴力の隠蔽』グラビアより

◆蟻の一穴でダムも崩壊する!

しかし、私たちが必死の想いで取材し出版した5冊の本は、少なからずの人たちの目に触れ、真相究明はほとんど果たされたと考えています。それまでこのリンチ事件を知らなかった方にこれらの本を送ったら、みなさん大変驚かれました。野田正彰(精神科医)、山口正紀(元読売新聞記者)、黒藪哲哉(ジャーナリスト)、前田朗(東京造形大学教授)の各氏らもご存知ありませんでしたが、知ることになり私たちの営為を理解くださいました。特に前田朗先生は、李信恵氏が対在特会を訴えた訴訟では意見書を出されたそうで、「このような不正義を許してはならない」「C(注・李信恵氏)は非難に値する」「反差別・反ヘイトの闘いと本件においてCを擁護することは矛盾する」「本書が指摘するように、今からでも遅くない。背筋を正して事実と責任に向き合うべきである」(いずれも『救援』2017年8月10日号掲載「反差別運動における暴力」)と怒りを込めて批判されています。

それにリンチの最中の阿鼻叫喚の音声は、聴く者を恐怖に陥れます。この音声は、第4弾本『カウンターと暴力の病理』にCDとして付けられ、また誰がやったのかYou Tubeに流され8万人近くの人たちが視聴しています。リンチ直後の被害者M君の顔写真も併せ、これで「リンチはなかった」などという詭弁が通用するのなら、世も末です。だいたい神聖な対在特会訴訟が終わり集まった支援者がその余韻に浸っている一方で、5軒の飲食店を飲み歩き「日本酒にして1升」(李信恵氏本人の供述)を飲み泥酔する神経が私には理解できませんが、そんな情況で格闘技の達人ら4人の親衛隊を従えM君を呼び出せばどうなるか想像はつかなかったのでしょうか。

まだまだ小さな範囲ですが、蟻の一穴からダムが崩壊するといいます。ソ連崩壊も、ゴルバチョフが開始したグラスノスチ(情報公開)によってなされていったともいいます。私たちの出版の営為は、李信恵氏が守られている巨大なマスコミに対しては「蟻の一穴」にすぎませんが、この「情報公開」が、李信恵氏とその周辺によるリンチ隠蔽を覆すと信じています。

 

代理人の神原弁護士も凄いことを仰いますね

◆「報告事件」に指定されたら絶対勝てない!

ところで、先のリンチ被害者M君が、くだんの李信恵氏らリンチの現場に同座した5人を訴えた訴訟は、勝訴したとはいえ、決して満足のいく内容ではありませんでした。〈歴史的誤判〉と言っていいほど、肝心なところは敗訴でした。行政訴訟は、ほぼ住民側が敗訴します。M君訴訟や本件訴訟で李信恵氏の代理人である神原元弁護士は「正義は勝つ」と豪語しますが、世の中、必ずしも「正義」が勝つとは限りません。例えば、神原弁護士が事務局長を務める植村隆氏(元朝日新聞記者、現金曜日発行人)が氏の従軍慰安婦記事について「ねつ造」とした櫻井よし子氏らを訴えた訴訟、この訴訟では神原弁護士同様、「正義」は植村氏にあると私たちも考えていますが、一審札幌地裁は植村氏敗訴です。

裁判所は、必ずしも「正義」の判決を出すとは限らず、むしろ逆が大半です。これはなに故でしょうか?

 

同上

これについて、ジャーナリストの黒藪哲哉氏に教えていただきましたが、裁判所には最高裁事務総局が指定する「報告事件」というものがあり、「報告事件」に入れられると絶対に勝てない、M君訴訟は「報告事件」ではないか、というのです。これはなにも黒藪氏独自の考えではなく、元大阪高裁裁判官で22年間裁判官を務めた生田暉雄氏が証言するところです(『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』三五館刊)。

明日判決の対李信恵第1訴訟において、被告の李信恵氏は、1度も出廷せず、本人尋問も拒否し陳述書も出しませんでした。これで李信恵勝訴(つまり原告鹿砦社の請求棄却)となれば、M君訴訟と関連する本件李信恵第1訴訟も「報告事件」と言ってもいいかと思います。明日の判決に注目を!(判決は午後1時、大阪地裁1010号法廷にて)

◆いつ風向きが変わらないとも限らない!

 

これは鹿砦社に対するものではないが、李信恵被告の仲間でリンチの現場に同座した伊藤大介氏の発信。怖くて震えるわ!

かつて私たち鹿砦社は、3件の出版差し止め訴訟を闘った対ジャニーズ訴訟や、逮捕・長期勾留・有罪判決、高額賠償金(600万円)を食らった対アルゼ(大手パチスロメーカー。現ユニバーサルエンターテインメント)訴訟の際に、「血の一滴、涙の一滴が涸れ果てるまで闘う」と叫びました。今もその気持ちに変わりはありません。実際に地獄も見ました。それに比べれば、どのようなことも怖くはありません。この歳になって、このような複数の訴訟に関わるとは思いませんでしたが、訴訟は訴訟、仮に訴訟で負けても“本当の勝負”に負けたわけではありません。

私を地獄に落とし鹿砦社に壊滅的打撃を与えた張本人、当時のアルゼの創業者オーナー・岡田和生氏は息子や子飼いの部下らに会社を追われ香港やフィリピンで逮捕されたと報じられ、実際に弾圧を指揮した当時の神戸地検特別刑事部長・大坪弘道検事はのちに「厚労省郵便不正事件」証拠隠滅に連座し逮捕・失職、さらに私に直接手錠を掛けた宮本健志主任検事は深夜泥酔して一般市民の車を傷つけ連行され戒告・降格処分を受け、当時の雇われ社長で警察キャリア、参議院議員を歴任した阿南一成氏も耐震偽装企業との関係で社長解任となるなど、その後不思議と不幸が訪れています。当時、わが世の春を謳歌していた人たちばかりです。「松岡の呪いか、鹿砦社の祟りか」といわれる所以です。一時は苦杯をなめましたが、“本当の勝負”には勝ったと思っています。

李信恵氏らも今は「反差別」運動の旗手の如く持て囃されていても、いつ風向きが変わらないとも限らない、とだけ言っておきたいと思います。それまで私たちの闘いは終わりません!

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

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2月7日滋賀医大附属病院で岡本圭生医師による小線源治療を希望する、患者さん7名と岡本医師が大津地裁に「病院による治療妨害の禁止」を求める仮処分の申し立てを行った。「治療しますよ」と意欲を明かしている医師と、「治療をしてくれ」と求める患者を病院が「妨害」すること自体が、聞いたことのない話であるが、相次ぐ要請や行動にも滋賀医大附属病院は、まっとうな反応を示さないことから、ついに関係者は「仮処分」に打って出た。「滋賀医科大学小線源治療患者会」は治療を希望する患者さん(待機患者)を支援すべく、この日13時から大津駅前で集会を行い、申し立ての時間に合わせ、大津地裁正面前まで申し立て患者を先頭に、約100名が行進した。

 

 

弁護団長の井戸謙一弁護士

仮処分の申し立て終了後、滋賀教育会館で記者会見が行われた。冒頭、弁護団長の井戸謙一弁護士が仮処分申し立ての内容について説明と解説を行った。

「1時50分に大津地裁に仮処分申請を申し立て、受理されましたのでご報告させていただきます。『癌治療を受けさせて仮処分事件』というペーパーについて説明いたします。冒頭に『癌治療を受けさせて』というのは、私がこのペーパーを書くときに、なにかひとことで本質を現す言葉がないかなと考え、思いついた言葉です。申し立ての皆さんや他の弁護士の了承を得ているわけではございません。

この事件の申立人は滋賀医大附属病院小線源治療講座において、岡本医師の治療を待機中の難治性高リスク前立腺癌患者7名の方、北海道から広島まで広範囲に広がっております。そして岡本圭生特任教授の8名であります。相手方は国立大学法人滋賀医科大学です。何を求めているか、申し立ての趣旨を読み上げます。

債務者(滋賀医大附属病院)は債権者岡本圭生に対し、2019年7月1日から同年12月31日までの間において、債権者岡本圭生が滋賀医大附属病院において債権者患者7名ほか債権者岡本圭生が前立腺癌小線源治療の適応があると判断し、その同意を得た患者に対し、前立腺癌小線源治療の施術をすることを妨害してはならない。「妨害の禁止」を求めています。これが第一項。第二項は、債務者は、債権者患者7名に対し、2019年7月1日から同年12月31日までの間において、同債権者からが、滋賀医大附属病院において債権者岡本圭生から前立腺癌小線源治療を受けることを妨害してはならない。こちらも「妨害の禁止」を求めています」

その後細部にわたり、申し立ての理由について詳しい説明があった。なかでも、前立腺癌には摘出、外部照射、小線源治療、ホルモン療法などがあるが、その成績(完治率)において、小線源治療及び、小線源治療と外照射ホルモン治療を組み合わせた「トリモダリティー」療法が非常に優れた治療成績を残していることが、国際的にも確認されていることが解説された。そして岡本医師が開発した「岡本メソッド」は術後5年の非再発率が96.5%。ほとんど再発がない実績を上げていることが紹介された。井戸弁護士は、配布資料の中に参考資料が添えられており、その中には、滋賀医大附属病院が作った冊子があり「岡本メソッド」の紹介があることに言及し、「『小線源療法について全国トップクラスの施設として日本中及び海外から患者が訪れるのが小線源治療チームである』と書いています。また『トリモダリティーという方法で治療の有効性を高め、5年経過後のPSAにもとづく非再発率という根治率を恕数値は96.3%にも上がる』と書いてあります。そして『2人(岡本医師と河野医師)の治療を受けた、全国各地の患者さんからは、感謝を伝える声が絶えず届く』と滋賀医大附属病院が、岡本医師、「岡本メソッド」を高く評価して宣伝してきたわけです。ところが小線源講座を12月31日で閉鎖をするという決定を滋賀医大はしており、最後の半年は小線源治療をしてはならないという決定をしております」と病院側の決定的矛盾を具体的に指摘した。そのあと、法的に債権者(患者7名と岡本医師)には法的に「治療を受ける権利がある」ことが解説された。

井戸弁護士は、本申し立てが、「小線源講座閉鎖問題」についての問題にはあえて触れず、仮に講座が閉鎖されるにしても、最低11月まで患者さんには治療を受ける権利、岡本医師には治療の権利がある(12月ではなく11月としたのは経過観察に1月を要するため)ことの確認を求めるものであることが説明された。さらに、岡本医師には滋賀医大との雇用契約上の権利(医師としての自律、独立して診察、治療に当たる権利(プロフェッショナルオートノミー)小線源治療学講座特任教授として、小線源治療の教育研究にあたる権利がある、旨の解説があった。

最後に本件申し立ての特徴として、(1)多くの人の命がかかっているまさに人道上の問題であること(2)緊急性―早期の決定が必要であること(3)このような理不尽な取り扱いが、滋賀県を代表する滋賀医大附属病院でおこっていることを明示した。解説の最後に井戸弁護士は、「実は昨日私の事務所に青森の女性から電話がかかってきました。ご主人が44歳で非常に高いPSA値を宣告された。どうしても岡本先生に治療してほしいと。岡本先生につないで欲しいと、そういう依頼でした。実情をお話しすると、電話の先で、その女性は泣き崩れんばかりでした。高リスクの前立腺癌を宣告された方が、どれだけ不安な思いになるのか。その中で岡本医師の治療に最後の望みを繋ぐのかという思いを電話で直接お聞きして、身の引き締まる思いをしました。『たくさんそういう方がおられるんだ』、ということを胸に刻みながらこの訴えを闘ってゆきたいと思います。報道機関の皆さんにはこの事件の問題を正確に把握していただいて、正確な報道をお願いいたします」と決意を表明した。

 

続いて申し立て患者さんが見解を述べた、全員のコメントをご紹介することはできないので、ここでは岡山の木村さん、北海道の平林さんのお話を詳細する(木村さん、平林さんのコメントは司会の石川賢治弁護士が代読した)。

「私は昨年、倉敷成人病センターで前立腺癌との確定診断を受けました。癌の状況は、ハイリスクであると告知を受けました。そのときに倉敷成人病センターの医師から今後の治療法の提案はありましたが、結局のところ提案された内容で治療したとしても治るかどうかは何とも言えない、それほど癌が進行している状況であると説明されました。私は、がんの可能性があると知ったときからインターネットなどで情報を集めており、ハイリスクの前立腺癌でも治療できる医師が滋賀医科大学の岡本先生であるということを知っていました。そこで私は、藁にもすがる思いで岡本先生をの診察を受けることにしました。初診のとき岡本先生は、「患者を救いたいんだ」、「なんとかしたいんだ、助けたいんだ」、「私ならあなたの癌を治せます」と力強く言って下さりました。私は本当に心を打たれました。倉敷成人病センターの医師に岡本先生への紹介状を書いてもらったとき、「もう知らないから勝手にしなさい」ということを言われました。よって私はもう岡本先生に治療してもらう以外に助かる方法はありません。またいずれにせよ、超高リスクの私の前立腺癌は、岡本先生にしか治せないのです。

私には、病後療養中の妻と障害を持つ長男がいます。このうえ、合併症に苦しんだり、癌の再発におびえる生活を送ることは私には耐えられません。ましてや、本来であれば岡本先生の治療を受ける期間が残されているのに病院側が何の理由もなく治療を打ち切ったことについて全く納得することができません。以上のとおりの状況ですので、私の命が助かるかどうかは今回の仮処分の結果にかかっています。このため、覚悟を決めて仮処分の申立人となることと致しました。何卒よろしくお願いいたします」(岡山県 木村さんのコメント)

「私は、昨年8月に前立腺癌の宣告を受けました。難治性高リスクの前立腺癌でした。北海道の病院では、全摘出手術か外照射の放射線、どちらかの治療を選択してほしいと言われました。いずれも再発する可能性はかなり高く7割以上の確率で再発するかもしれないが、それより残りの3割の確率にかけ治療しましょうと言われました。その言葉を聞いたとき、私の癌は完治が望めないのだな、あと何年生きられるのだろうか、そんな思いが何度も頭をよぎりました。そして、やっとの思いで岡本圭生先生にたどりつきました。岡本先生にしか出来ない治療があること、さらに「転移さえなければ、私が治療すれば治るでしょう、過去同じような病状の方はすべて治っています」と力強く言って頂いた時の、生きる希望と喜びは今も忘れません。しかし、いま、その治療が打ち切られようとしているのです。治療を途中で打ち切られる気持ちは、「死を宣告されたような気持ち」です。「生きる権利を一方的に奪われた気持ち」です。非人道的な病院側の理由で岡本医師の治療を打ち切ろうとする行為は、患者の命を切り捨てることであり、許されてはならないと思います。このようなことが断じてあって良いわけがありません。

どうか、私たち患者の命を奪うようなことをしないで頂きたい。滋賀医大にはこのことを強く言いたいと思いますし、メディアの皆様がたもしっかりと滋賀医大を監視していただくようお願いします」(北海道 北林さんのコメント)

 

岡本圭生医師

次いで岡本圭生医師が次のように語った。

「滋賀医科大学前立腺癌小線源治療学講座 特任教授の岡本圭生と申します。私自身は、これまで14年間にわたり、滋賀県だけでなく、全国から私を頼って来院してくださった1100例を超える前立腺癌患者の方々に対して小線源治療という特殊な放射線治療をおこなってまいりました。今回の滋賀医大附属病院と、その院長が強行しようとしている平成31年7月以降の私の小線源施術を禁止する行為は、ここにおられる7名方々の生命をも脅かし、患者の最善の利益に反するものであります。また同時に患者を診察し、治療する立場である私の医師としての権利を侵害するものです。医師には、その職業倫理を実践し、すべての患者と人々に質の高い医療を提供し、自らの専門的判断を自由に行使できる地位が保障されることが不可欠でであると思います。私と同じ医師であり医師の集まりであり、医療機関である滋賀医大附属病院とその院長が、私の医師とし職業倫理と使命に対する侵害行為を行っていることは、絶対に許されないことだと考えます。今回、私の治療を待つ患者の方々の要請と、弁護団の要請により申し立て人に名前を連ねることを決意しました。その理由は、人道主義の立場から申し立てをおこした患者の方々の命を何としても守らねばならないと考えるからです。私はこれまで自らの職や命をなげうってでも患者の人権と人命を尊重し守ることを実践してまいりました。すなはち、患者の方々への人道主義を最優先してきたつもりです。今後もこれまで同様不退転の気持ちで医道を追及する所存です。是非、裁判所、メディアの皆様におかれても適切なご判断をお願いするしだいです。ありがとうございました」

次いで質疑に移った。

テレビ局、新聞社、通信社からの質問が相次いだ。質疑は多岐にわたったので割愛するがある記者の質問を最後に紹介しておく。
「資料によると『岡本メソッド』に比類する術式が日本に存在しないことはわかったが、世界的に同様の術式はあるのか」

これに対する岡本医師の回答は、「ない」であった。つまり世界に比類ない「前立腺癌制圧術」と呼んでも過言ではない、術式がどういうわけか「無きもの」にされようとしている。この状態を目の当たりにして、何も感じないのであれば、医師やジャーナリストは即刻仕事を辞めるべきであろう。

 

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』3月号絶賛発売中!「前立腺がん治療めぐり滋賀医大病院 底なしの倫理欠如」他

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

「のぞき」、「隠し撮り」は犯罪とされる。それはそうだろう。見てほしいと思わない姿や、他人から勝手に撮影されることは不愉快なことだ(世に「露出狂」という性癖の方がいるが、そういう方は、他人に「みられる」こと、「びっくりさせること」に快感を感じているのであり、「露出狂」の方も「のぞき」や「隠し撮り」は歓迎しないのではないか、とあくまでも推測ではあるが想像する)。

「のぞき」も「隠し撮り」もこっそり行うのが原則だろう。「のぞく」あるいは「隠し撮る」相手にばれてしまったら、怒られるか、逃げられるかしてしまうのだから。その点まったく褒められた行為ではないけれども、まだ「のぞき」や「隠し撮り」には「やましさ」や「慎ましさ」の片鱗が感じられる。翻って以下のメッセージを読者諸氏はどう受け止められるだろうか。

東京、大阪の電車に乗ると年中「テロ特別警戒中」のアナウンスが流れる。あれがけったくそ悪くて、いつも腹が立っていたのだが、先日東京の地下鉄内でこの広告を目にした。

 

「強くなれ、Tokyo」。

「東京メトロは、犯罪などのリスクを想定し、駅のセキュリティ対策を進めています。セキュリティーカメラを駅構内へ増設し。車両内での運用も今秋から開始。」

ただでも監視カメラだらけの「監視(のぞき)」カメラがそこここに設置されているのに、さらに駅にも増設し車内まで撮影するという。地下鉄に乗ったら撮影されることを、東京メトロは広告ではなく利用者一人一人にその可否を問うべきじゃないのか。地下鉄に乗るひとのなかには、あまり人には言いたくない理由で、あるいは知られたくない行き先に行くひともいるだろう。そういう「自由」を侵害されたうえ、勝手に撮影されなければならない法的根拠はあるのだろうか。しかもこの広告には「Go beyond 2020」と訳の分からない英語が書かれている。訳は分からないが「2020」が東京五輪を指すであろうことは間違いない。

東京にお住いの皆さんや通勤通学されている皆さんは、もう日常になっているのでそうはお感じにならないかもしれないが、東京がどんどん監視強化されてゆき、都心が表面上一見「きれい」に変化してゆく様子をここ30年ほど、わたしは薄気味悪く感じており、とくに21世紀に入ってからその勢いは加速度を増しているように思う。だいたい「強くなれ、Tokyo」はそれを読んでいるかもしれない乗客を対象としたメッセージで「もっと監視しますよ」と宣言しているにほかならない。

「2020東京五輪」と題目を唱えれば、土地の不正払い下げは見逃されるし、ボランティアと称する無償労働供与も半強制できる。Dで始まる広告代理店を隠れ蓑にした政府の別働諜報機関は、既に笑いが止まらないほど利益を上げているだろう。天皇の「はとこ」である竹田恆和東京五輪招致委員長は、収賄容疑で起訴されているが、そのことはどういうわけかあまり話題にはならない。「監視カメラ」をどれほど増やしても「贈収賄犯」は見つけられないということか。

 

極端すぎるかもしれないが、檻のない監獄で死活しているようにわたしたちは監視されている。新幹線で東京駅に着くと乗り換え改札口には以前から監視カメラがあった。

いつのころからか知らないけれども、渡り鳥の一群が電線で集団休憩をしているほどに、「これでもか」と「監視カメラ」が設置されている。

カメラの解析度は飛躍的に向上しているし、撮影可能な角度も100数十度はあるのだから、こんなにも監視カメラを並べる必要が果たしてあるのだろうか。

わたしが神経質すぎるのか、Tokyoが「監視したい」欲望のほうが強烈なのか。新幹線改札口天井の監視カメラの列は、刑務所よりも密度が濃く設置されている。

誰が望んで東京五輪は招致されたのだったろう。何が本当の目的で東京五輪は準備されているのだろう。

「強くなれ、Tokyo」

この脅迫的な一語の中にその本質の一端を見る。再度、東京五輪に絶対反対の意を表明する。これ以上加害者に加担してはならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

2019年になり、すでに約1ヶ月。これからの1年も、良し悪しは別としてICTをはじめまた様々な新しい技術が登場するのであろうか。

それはメディアとて無縁ではない。インターネットをはじめとするICT技術の発達で世界各地の情報に一瞬でアクセスできるようになった。情報の受け手にすぎなかった一般市民もブログやSNSで情報を発信できるようになった。そして、今までは隠ぺいされ永遠に闇に葬られていたであろう凄惨な事件も、もはや隠し通すことは不可能となった。しばき隊内部で発生し、大手メディアや多くの「リベラリスト」たちが必死で隠そうとしていた「M君リンチ事件」(他称:「しばき隊リンチ事件」)はまさにその一例であり、事件についての説明や事件の実際の音声がネット上に拡散されることになった。

さて近年、AI(人工知能)による文章作成技術の向上に注目が集まっている。2016年に、松原仁・公立はこだて未来大学教授が率いた「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」が、第3回日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)に4作品を応募し、作品の一部が1次審査を通過したことは、記憶に新しい。AIが小説を書くことに目覚めるというストーリーは、色々な意味で印象的であった。

小説だけではない。新聞記事もAIが執筆に加わり始めている。2016年8月13日の日経の夕刊の記事には「ワシントン・ポストがリオネジャネイロ五輪の報道で試合結果やメダル獲得数についての記事をAIによって執筆している」ということが掲載されている。さらには、NTTデータがAI技術の一つである「ディープラーニング技術」を用いた天気予報ニュース原稿の自動生成実験を、2016年9月から4カ月間にわたり実施した。実験の結果、作成されたニュース原稿はおおむね従来の気象と矛盾しないレベルに達していることが明らかとなった。

 

NTTデータ、人工知能を用いたニュース原稿の自動生成に関する実証実験を実施(2017年1月27付け日本経済新聞=NTTデータのプレスリリース)(2019/01/22閲覧)

新聞記事や行政の手続き文章、特許の出願書類などは、伝える内容が明確で文章の典型的なパターンがあるため、機械化が容易と言われる。これらの文章の自動作成は、十分な数のサンプルを集め、そのパターンをAIに学習させれば実現可能だという。

こうなるとジャーナリストや記者は、今まで以上に問題意識を持ち、コンピュータにはできない、より深い調査やフィールドワークをしていくことが重要になる。独特な切り口から報道できる能力が求められよう。単に「平凡な」記事を書くだけではAIに取って代わられる可能性もある。よく官邸や官庁の記者会見で、鋭い質問をするわけでもなく、聞き取ったことを素早くPCに入力しているだけの記者クラブの記者をテレビでよく見かける。あるいは何の疑問もなく警察から提供された情報をそのまま記事にしている記者もいるだろう。他にも、冤罪事件に対して過去の自分たちの報道の過ちを反省せず、「ボー」としているような記者もいるだろう。

このような問題意識が薄くて、深い分析ができない、あるいは分析しようとしない記者はやがてAI記者に取って代われてもおかしくない。先ほど紹介したAIによる文章作成技術とより向上した聞き取り能力(例:Android搭載のスマートフォンに「OK,Google」と呼び掛けるとそれを聞き取る)が組み合わさることによって、大臣や企業経営者などの記者会見においてAI記者がその場で瞬時に記事を作成するというケースは十分想定できる。官邸などでの記者会見では、「うまい汁の吸える」記者クラブで政権や公安当局と癒着して、望月衣塑子記者(東京新聞)のように鋭い質問も投げかけず、ただPCに書き取るだけの記者が多数派を占めているという。そのような記者はAI記者に代筆させれば十分であろう。

テレビでも似たような状況になりつつある。少し前の2018年11月に、中国の国営新華社通信ではAIアナウンサーが登場した。実在のアナウンサーの映像と声を用いて、まるで本物の人間のようなアナウンサーが製作された。このアナウンサーは24時間作動し、疲れることも読み間違えることもないという。中国語と英語に対応している。


◎[参考動画]Xinhua’s first English AI anchor makes debut(New China TV 2018/11/07公開)(2019/01/21閲覧)

このようなAIアナウンサーが普及すれば、単に原稿を読み上げるだけの人間のアナウンサーは居場所がなくなる可能性がある(バラエティー番組が主な職場のアナウンサーにはダメージは少ないかもしれない)。ニュース関係となれば、やはりAIにはできないような現地調査や分析を行う能力が今以上に必要になってくる。しかし、日本全国のニュースキャスターで今の政府や社会情勢に批判的な姿勢を持ち、鋭い分析や報道ができるような者がどれほどいるであろうか。

今度もAIをはじめとしてICT技術はメディアに何らかの影響を与えていくであろう。ネットニュースや個人が書くブログなどの普及によって、人々の情報を得る手段が多様化した。それに伴い、これまで一方的に情報を掌握していたテレビや新聞の優位は揺らいでいった。日本において新聞の年間発行部数は年々、減少している。「天下の朝日」新聞も例外ではない(「天下」といっても所詮はこの島国だけの話だが)。

AI記者・AIアナウンサーの出現という技術的な観点からも、原発事件の追及や安倍極右政権の横暴、文明間の世界秩序の再編という社会・政治的な観点からも、今こそ記者やアナウンサーには強い問題意識と優れた分析・調査能力が必要なはずである。それは公共的な視点だけではなく、彼ら自身の将来に関わる事である。

しかし、大手マスコミをはじめほとんどのメディア(の記者)は今日の社会・政治の危機的状況に対して鈍感である。そして徹底的に腐敗している。冒頭でも触れた「M君リンチ事件」はそれを決定的に証明することになった。彼らは事件を黙殺し、自らの権益を守るために凄惨な暴力も「見て見ぬふりをする」という手をとった。このような利己主義的で非情なジャーナリストなど、「中立的」でドライなAI記者によって職場から駆逐された方がましである。残念ではあるが自浄能力がない主流メディアは、いずれICT技術によってより一層追い詰められていく運命なのかもしれない。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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25回目のプーチン大統領との首脳会談の結果、安倍総理が事前に明言していた「北方領土問題の解決と平和条約の締結を実現する」という目的は果たされなかった。会談後の共同記者発表ではプーチン大統領はもちろん、安倍首相の口からも領土問題の進展についての言及はいっさいなかった。そればかりか、平和条約についてもプーチン大統領は「双方の国民が受け入れ可能で、支持されるものでなければならない」「双方が受け入れ可能な解決策を見いだすための条件をつくり出すには、長く忍耐を要する作業がこの先にあることを強調したい」と主張するだけで、何ら成果を語らなかったのだ。成果が何もなかったかといえば、ロシア側はそうでもない。

◆経済協力のみ約束させられた

領土問題でなんら進展がなかったいっぽうで、両首脳は新たに日露間の貿易額を今後数年で300億ドル(約3兆2900億円)に増やすことで合意したというのだ。ようするに安倍首相は、さらなる経済協力を強いられただけで、二島返還どころか、平和条約の締結も「時間がかかる」「国民に受け入れられるものでなければいけない」と釘を刺されたのだ。

そもそもロシアにとって日ロ首脳会談は、中国の経済成長に圧倒されその経済的支配下に入るしかない現状を打破するために、日本の経済協力を引き出そうとするものでしかない。その導きの糸として二島返還をちらつかせるのはもとより、前提なしの平和条約を先行させようというのも、ひたすら経済協力のための枕詞にすぎないのだ。資源と兵器産業しか経済的資源のないロシアにとって、ITや通信産業で中国の経済圏に受動的に組み込まれる運命にある。その意味ではロシアも必死だが、日本が約束させられた経済協力のいっぽうで、二島返還すらもおぼつかなくなったのが今回の結果だ。


◎[参考動画]北方領土で進展は?日ロ首脳が共同発表ノーカット1(ANNnewsCH 2019/01/23)

◆領土問題は軍事力ぬきでは解決できない

そもそも領土問題において、軍事的な圧力なしに交渉が成立した歴史はない。たとえば沖縄返還においてすら、核を配備した米軍基地の存続というオプション抜きにはありえなかったのは、現在もなお沖縄県民が基地問題で苦しんでいることに明らかだ。その意味では東西冷戦という冷たい戦争、すなわち日本による駐留費の肩代わりという戦争支援行為こそが、沖縄の返還をもたらしたのだ。

ヒトラーにおけるラインラント(第一次大戦後の非武装地帯)進駐も、日本の仏印進駐(フランス領インドシナへの軍事駐留)も、駐留する軍隊があってこそ、戦争を避けたい側(フランス・イギリス)に許容されたのである。ラインライトも仏印もヒトラーおよび大日本帝国にとって薄氷を踏むような軍事行動だったが、フランスは戦争によって領地をうしなうことを怖れて、軍事進駐を容認したのである。


◎[参考動画]北方領土で進展は?日ロ首脳が共同発表ノーカット2(ANNnewsCH 2019/01/23)

◆共同統治こそ、島嶼紛争の解決策である

だから軍隊を北方領土に派遣しろと言っているのではない。島嶼領土紛争の平和的な解決はおよそ不可能であって、もしも本気で解決したいのなら「共同統治」という形式しかありえないのだ。韓国との竹島もしかり、中国との尖閣諸島も同様である。領土をめぐる外交交渉で他国に折れた政治家は、政権をうしなうだけでは済まない。売国奴としてその生命を奪われかねないと指摘しておこう。それはプーチンにおいても、安倍においても同様なのである。

ところが安倍総理は、あたかも歯舞、色丹の二島返還に向けて前進しているかのように印象づけて「プーチン大統領の考えがよくわかった。双方の理解が深まった」などと、交渉の行き詰まりを糊塗しているのだ。すでに四島一括返還という北方領土返還運動の原則は掘り崩され、日ソ共同宣言時の二島返還すら実現できない趨勢となってきた。25回もの首脳会談を行ないながら、ロシアから経済協力として国民の血税を奪われたうえに、本来の目的である北方領土の返還が絶望的になった今、もはや安倍政権は売国政権というべきではないか。


◎[参考動画]「私とプーチン大統領で終止符」 安倍総理が強調(ANNnewsCH 2019/01/06)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

松岡 あけましておめでとうございます。特別取材班の皆さんにはこのかん、大車輪のご活躍をお願いし、鹿砦社としても前例のない、5冊の書籍にまとめることができました。年頭に当たりこの問題について忌憚のないご意見をお願いいたします。

◆M君原告の控訴審判決で、すべてが見えた

A  昨年M君原告の控訴審判決で、すべてが見えたような気がします。あれはM君勝訴なんで、それは勘違いされたら困るんだけど、明らかに「何かの力」が働いていると。

B  いわゆる「報告事件」というやつですね。最高裁から審議や判決を注視されているという……。

C  どこにも証拠はないから、推測の域を出ませんけど、法律の専門家に聞くと「そうだろう」と見解は一致していますね。

D  俺たちの取材を朝日新聞、大阪司法クラブの連中は、こっぴどく「クレーマー」扱いしたじゃない。あの件を内緒だけど、ベテランの朝日新聞記者や幹部に話したら「なにやってるんだ! うちの記者の間違いです。書きたくなければ書かなければいいけど。『複数回記者会見を開かせない』なんて、傲慢に過ぎるし、明らかに間違い」と異口同音だったよ。朝日新聞の中からでさえね。

A  それ、かなり重要な情報じゃないですか? 書きませんか?

D  いや。朝日新聞も社内統制がますますきついらしいんだ。取材に応じてくれた人たちはあくまでも「匿名」でだよ。

B  日本マスコミの病巣は深いってことですね。

◆2月13日大阪地裁──鹿砦社が李信恵氏を訴えた裁判の判決

松岡 「病巣」といえば2月13日(水)13:10から大阪地裁1010号法廷で、鹿砦社が李信恵氏を訴えた、裁判の判決がようやくあります。この裁判は本当であれば、昨年の6月頃判決のはずだったんですが、裁判の後半になって「反訴したい」と被告・李信恵氏側が突如主張しはじめてようやく判決です。皆さんにも注目してほしいですね。

C  「中核なの? 革マルなの?」、「鹿砦社はクソ」、「死んでほしいと思ってる」から事実のない喫茶店での松岡社長の「威嚇」でっち上げまで。ネット依存症だからか、そういう性格だからかほとんど争いはないんじゃないですか?

松岡 そんなことはありません。法廷ではあれこれ被告側も主張してきました。ともかく13日の判決には注目頂きたいですね。

D  この裁判で鹿砦社が負けることはまずない。というより「負け方」がないからね。請求棄却以外は。でも油断できないよ。M君裁判の判決やマスコミの尋常ならざる対応を見ているとね。何が起きても不思議ではない。

◆2月21日大阪地裁で2つの裁判──李信恵氏が鹿砦社を訴えた裁判と鹿砦社が藤井正美氏を訴えた裁判

A  そのほかにも2月は裁判がありますよね。

松岡 李信恵氏が鹿砦社を訴えた裁判が21日、13:30から、ただしこれは「準備手続き」なので傍聴はできません。同日13:45から1006号法廷で鹿砦社が藤井正美氏を訴えた裁判が1006号法廷で開かれます。

B  同じ日に「被告」と「原告」で法廷のはしごですか。忙しいですね。

C  かえっていいんじゃないですか。何度も裁判所に出向くのも大変ですしね。13:45から1006号法廷で鹿砦社が藤井正美氏を訴えた裁判は傍聴できますから、お時間のある方は足を運んでほしいですね。

D  たぶんだけども、対しばき隊関連の鹿砦社がかかわる係争は、「対藤井訴訟」で一息だと思うんだ。この裁判で一息という意味は、藤井は仕事をするふりをしながらツイッターに励んでいたことが判明した。でもその時点で鹿砦社は藤井が「しばき隊」の構成員だったり、ましてや「M君リンチ事件」の隠ぺいにかかわっていたことは知らなかった。つまり藤井の素行不良は鹿砦社がこの問題に足を踏み入れざるを得なくなったプロローグなんです。だからエピローグも藤井の件でしっかりオトシマエをつけざるを得ない。宿命だね。

◆ネット上では「しばき隊」VS「反しばき隊」という構図が崩れだした

A  「宿命」か……。ところで、ネット上では相変わらず言論ゲバルトが続いているようですね。

B  かつての「しばき隊」、「反しばき隊」という構図も崩れだしていますね。言ってみれば「内ゲバ状態」が双方に起きている。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

D  予想通りだね。双方とももともと確たる思想があっての集まりではないから、そうなるだろうと思ってたよ。だからあえて鹿砦社のツイッターは緊急時以外には動かさない、でしたね、社長?

松岡 そうですね。「ここは!」という時以外論争には足を突っ込まなかったのは正解だったと思います。

B  でも、印象的だったのは香山リカから「どこに送ったのか送り先ちょっと書いてみて」と挑発されたときに、すかさず送付先を書き込んだこと(爆笑)! 自分で「書いてみて」って言っといて、書いてやったら次の日に神原元弁護士から「削除してくれ」って。子供のいたずらだ。

C  ああいう「遊び心」は社長一流ですね。普通書きませんよ。

松岡 そうでしょうか。わたしは「頼まれたから」依頼に応じただけですよ。

A  この感性に至るまでには僕たちもまだまだ修行が必要ですね。

D  ともあれ裁判闘争はあと1年くらいで、1審はいずれも片が付くでしょう。

B  売り上げはどうか知らないけど、この事件にかかわって鹿砦社の知名度は確実にアップしたでしょうね。

C  そうかな? だといいけど。社長、原稿料なんですけど、もう少し何とかならないでしょうか?……

D  社長に代わって俺が答えるよ。君たちみんな原稿料もらってるだろ? 初めて明かすけど、俺は5冊目の原稿料は辞退したんだ。君たちにも「そうしろ」という意味じゃないぜ。俺はこの問題に「仕事」でかかわっているつもりはないんだ。もちろんいままでは正当な原稿料をもらってきたけど、周辺で起きる色々な事を見ていて俺から辞退した。特別取材班は「金儲け」のために取材しているわけじゃないからね。これでいい? 答え。

C  は、はい。

(鹿砦社特別取材班)

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

去る1月31日、いわゆるスキャンダル雑誌の先駆者で月刊『噂の眞相』(1979年3月創刊。以下略称『噂眞』と記載)編集長、岡留安則さんが亡くなられました。肺がん、享年71歳。「スキャンダリズム」という語を生み出したのも岡留さんでした。

 

2月3日付け朝日新聞

毎号著名人のスキャンダルを満載する雑誌を発行しながら、これほど愛され高評価されたのも岡留さんぐらいで、その後、残念ながら『噂眞』を超える雑誌は出てきていません。『噂眞』休刊(2004年4月号。事実上の廃刊)からしばらくして、わが鹿砦社も、その「スキャンダリズム」を継承せんとして月刊『紙の爆弾』(以下『紙爆』)を創刊(2005年4月)し、もうすぐ14年が経とうとしていますが、発行部数も内容の密度も、まだまだ足下にも及びません。

類似点といえば、両誌とも創刊直後に廃刊の危機に瀕する大事件に遭ったということでしょうか。『噂眞』は創刊から1年後の1980年6月に、いわゆる「皇室ポルノ事件」に遭いました。張本人は、いまや鹿砦社ライターとなった板坂剛さん。皇室に対する不敬記事で、右翼からの総攻撃を受けますが、攻撃は張本人の板坂さんではなく、岡留さんが一身に受けます。それでも偉いのは、印刷してくれる印刷所を探しながら1号も絶やさず毎月発行し続けたことでしょう。なかなかできないことです。

板坂剛の激励広告(『映画芸術』)。下段の府川氏は、この頃から松岡に出版のノウハウを指導。

鹿砦社も、『噂眞』休刊を受けて、多方面からの要請を受け、上記のように、新米の中川志大を編集長に据え、彼がみずから取次会社を回り、新規の取得が難しいといわれる雑誌コードを取り月刊『紙爆』を創刊しました。それから3カ月経った後、警察癒着企業の大手パチスロメーカー「アルゼ」(現「ユニバーサルエンターテインメント」。ジャスダック上場)創業者らからの刑事告訴を受け「名誉毀損」容疑で神戸地検特別刑事部により大弾圧を受けました。大掛かりな家宅捜索、聴取は製本会社や倉庫会社へも及び、取次各社へも調査がありました。私は逮捕され192日間も勾留され鹿砦社も壊滅的打撃を蒙りました。創刊したばかりの『紙爆』も、ライターさんや取引先などの支援で(私が“社会不在”だったこともあり『噂眞』のように月刊発行はできませんでしたが)断続的に発行を継続し現在に至っています。

岡留さんはその後、雑誌の部数も増えるにつれ多くの訴訟攻撃を受け、なかでも作家の和久峻三氏からの刑事告訴によって東京地検特捜部に「名誉毀損」容疑で在宅起訴され有罪判決を受けます。岡留さんがなんで在宅起訴で私が身柄拘束され長期勾留されたのか、いまだに判りません。岡留さんのほうが圧倒的に大物なのに……。

晩年(といってもまだ50代で)岡留さんは、情報が乱れ飛ぶ東京を離れ沖縄に渡り飲み屋を経営しながら執筆活動を行なってきました。まだ50代から60代で、勿体ないといえば勿体ないですし、ある意味、うらやましい転身です。僭越ながら私も、それなりの資金を貯めたら帰郷し、岡留さんのような生活をしたいな、と望んでいましたが、起伏の激しい出版業、少しお金が貯まっても、すぐに出て行きます。

おそらく、岡留さんの死去について、ジャーナリズムや論壇で、安全地帯からあれこれ“解釈”したり、したり顔で講釈を垂れる人が出てくるでしょう。いや、ほとんどそんな人ばかりだと思います。

私たちがやっていることが「ジャーナリズム」だとは思いませんが、岡留さんのように身を挺してスキャンダルや権力、権威に立ち向かうという気概だけは学んだつもりです。そのことで手痛いシッペ返しを受けましたが(苦笑)。今は「苦笑」などと笑って語ることができますが、弾圧直後には、明日銭(あしたがね)にも窮する有様でした。

今のジャーナリズムや論壇で、岡留さんを美化したり持ち上げる人は数多くても、岡留さんが文字通り身を挺して体現した〈スキャンダリズム〉の精神を、わがものとしている人が果たして何人いるでしょうか?

岡留さんが周囲の友人らの出資を受け『噂眞』を創刊した頃、1970年代後半から80年代にかけては、こういう雑誌を出すことの機運があったように想起します。まだ30になるかならないかの時期に、月刊誌を創刊するなど無謀としか言いようがありませんが、この無謀な冒険も若さゆえやれたのでしょうか。今はどうでしょうか?

 

岡留・松岡共著『闘論 スキャンダリズムの眞相』目次

岡留さんとは一度、3日連続で対談をやり、『闘論 スキャンダリズムの眞相』というブックレットとして上梓しました(2001年9月発行)。もう18年余り経ったのかあ……本棚から出して来ました。今では懐かしい想い出となりました。ここで展開した“闘論”の内容と問題点は、今でも継続していると思います。あらためて読み直してみたいと思います。古い本ですが、少し在庫がありますので、みなさんもぜひご購読ください。

岡留さんは、数多くの訴訟を抱えたり刑事事件の被告人となり有罪判決を受けたりしましたが、晩年はみずからの希望で沖縄で悠々自適に暮らし、ある意味で幸せな人生だったと思います。誰もが、望んでもできるわけではありませんし、私もできません。

岡留さんは遺骨を沖縄の海に散骨して欲しいとのこと、綺麗な海で安らかに眠ってください。合掌。

闘論を終えてくつろぐ松岡(左)と岡留さん(当時の新宿の噂眞事務所にて)

岡留・松岡共著『闘論 スキャンダリズムの眞相』(鹿砦社2001年9月発行)

参加者はメッセージや訴えの方法を工夫していた(2019年1月12日草津駅前集会)

 

滋賀医大小線源治療患者会による草津駅前集会とデモ行進は長蛇の列に(2019年1月12日)

本コラムでたびたびお伝えしてきた、滋賀医大附属病院問題で、近く大きな動きがある。消息筋によると岡本医師による治療を希望する、高リスク前立腺がんに罹患した患者数名と岡本医師がともに、滋賀地裁に「滋賀医大附属病院による『治療妨害』」の撤回をもとめ2月7日仮処分の申し立てを行う。

滋賀医大附属病院は、6月末で岡本医師の治療停止、12月には実質上の追放を宣言しているが、「岡本メソッド」と呼ばれる岡本医師の前立腺がん治療は高リスク前立腺癌でも再発率が5%以下という卓越した結果を残していることから、いまでも全国から岡本医師の治療を希望する患者さんが滋賀医大附属病院には「診察の申し込み」を行っているが、そのほとんどは窓口で門前払いされているという。また現在岡本医師の診察を受けていても、6月末までに手術の予定が間に合わない患者さんもいる。患者の一人は「岡本先生でしか私の前立腺癌の治療はできないと思います。その機会を奪われることは私の命が奪われることと同じです」と訴えている。

 

岡本圭生医師

岡本医師は「目の前にいる私に治療できる患者さんを治療しないことは、人道的に許されません。私が希望するのは『患者さんを治療させよ』ということだけです」と語る。

滋賀医大附属病院をめぐっては、昨年の8月1日に、岡本医師の治療を受けられると思っていたら、泌尿器科の医師による手術が画策されていたことがのちにわかり、心身の損害賠償を求め、4名の患者さんが原告となり民事訴訟が提起されているほか、昨年11月16日には病院のホームページや院内の掲示物に書かれた内容に事実と異なる点がある、として岡本医師が仮処分を申し立てた。

さらに、今年に入って岡本医師の手術を受けた患者さんに対するQOL調査に、本来あってはならない氏名欄が設けられていただけではなく、氏名が当該患者さんではない何者かによって記入されたり、質問への回答が改竄されていた事実が判明。次いで実に1000名に上る患者さんのカルテが不正に閲覧されていたことなどが、次々に明るみになっている(この不正閲覧には院長、泌尿器科医師のほとんど、事務職員もかかわっている)。これら連続する不祥事に対して滋賀医大附属病院は1月31日になり、同病院のホームページに、

との見解を発表したが、当の松末吉隆院長が「不正閲覧」を行っていた本人であるので、このように何の証拠も、検証もされていない文章では説得力がない。

泌尿器科外来で診察を待つ患者さんに聞いたところ「問題があるのは知っていますよ。でもいまさら滋賀でほかの病院に行けないからねぇ。滋賀県の病院は滋賀医大の先生が多いから転院しようにもねぇ」と困った表情で本音を語っていた。

仮処分申し立ての詳細はまだ不明であるが、患者と医師が「治療をさせろ」と裁判所に判断を仰ぐのは、極めて稀な事態であることは間違いないだろう。医師や病院は患者さんがそのような属性の人であれ、目の前の患者に対して(物理的に治療が無理な場合などを除けば)「治療拒否」はできないはずだ。そもそも治療希望者を追い返す国立病院など存在が許されるのであろうか。仮処分の詳細は明らかになり次第、本コラムで引き続きご紹介する。

滋賀医大小線源治療患者会による草津駅前集会(2019年1月12日)

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連記事》

◎1000名のカルテを組織的に不正閲覧! 院長も手を染めた滋賀医大附属病院、底なしの倫理欠如(2019年1月19日)
◎岡本医師のがん治療は希望の星! 救われる命が見捨てられる現実を私たちは許さない! 滋賀医大小線源治療患者会による1・12草津駅前集会とデモ行進報告(2019年1月14日)
◎滋賀医科大学 小線源治療患者会、集中行動を敢行!(2018年12月24日)
◎滋賀医大病院の岡本医師“追放”をめぐる『紙の爆弾』山口正紀レポートの衝撃(2018年12月13日)
◎滋賀医科大学医学部附属病院泌尿器科の河内、成田両医師を訴えた裁判、第二回期日は意外な展開に(2018年11月28日)
◎滋賀医科大学に仮処分の申し立てを行った岡本圭生医師の記者会見詳報(2018年11月18日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

月刊『紙の爆弾』2019年2月号 [特集]〈ポスト平成〉に何を変えるか

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