12月12日14時から大阪地裁で鹿砦社が李信恵氏を訴えた訴訟(第1訴訟)の本人尋問があった。本来であれば原告、被告双方の尋問が行われるはずなのだが、被告側代理人は、前回期日で尋問に同意していたにもかかわらず、李信恵氏側が裁判所に証人申請をしなかったために、この日は、鹿砦社代表・松岡利康だけの尋問となった。いささか肩透かしの感がした。原告側は松岡利康鹿砦社代表と大川伸郎弁護士が出廷し、被告側は上瀧弘子弁護士が出廷した。傍聴席には約10名が姿を見せたが、李信恵氏界隈の人間は誰もいなかった。
14時定刻に開廷後、原告側が新たな証拠を提出しようとしたところ、裁判官からその理由が尋ねられ、被告側弁護人・上瀧弘子弁護士は採用に「不同意」の意思を示したため、いったん裁判官(合議体なので3名)が合議に入った。約4分後に法廷に戻った裁判官は「合議したが、関連性が全くないとは思われないので採用する」と裁判長は述べた。
次いで、松岡が宣誓をしたうえで、松岡の尋問に移った。大川弁護士の質問が始まった。
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大川 甲11号証を示します。この陳述書はご自身が作成されたものに間違いはありませんか。
松岡 はい。
大川 この陳述書に沿ってお聞きします。この訴訟で問題にされている、被告の一連の発言について、どのように感じていますか。
松岡 「酷い」の一言です。私は長く会社を経営してきて、社員や取引先の皆さんに助けられここまでやってきました。それをこういう形で、侮辱、毀損されると本当にやりきれない気持ちです。
大川 原告がどのような会社であるのか、ここに書いてある通りですね。付け加えることはありますか。
松岡 特にないですが、来年で創業から50周年になります。私は3代目の社長ですが長くやってきたのに、「クソ鹿砦社」と激しい言葉で名誉を毀損をされました。
証拠資料として提出しようとして裁判の冒頭で裁判所と応酬した資料(『真実と暴力の隠蔽』より)
大川 問題になっている被告の一連の発言によって、原告の会社、従業員の皆さんにどのような影響がありましたか。
松岡 従業員は7名ですが、みな動揺しています。取引先は大きいところからライターさんまで月に100社ほどの支払いがあります。
大川 あなたご自身について。被告から中核派や革マル派と関係があるような発言がありますが、この点何かありますか。
松岡 私は学費値上げに反対して学生運動に参加しました。しかし私はノンセクト・無党派でやっていました。当時どこにでもいたような一活動家にすぎません。ましてや中核派や革マル派、ちょうど私が学生のころから殺し合いが始まりましたが、このように「中核派か革マル派か」という言い方をされると、本当にやりきれない気持ちです。
大川 今回訴訟を提起されましたが、その理由を簡単に教えてもらえますか。
松岡 当社のみならず、いろいろな方々に李信恵さんは酷い言葉を投げかけていました。私はとにかく(酷い発信を)やめさせないといけないと考え、あえて提訴しました。
大川 被告に対して何か求めたいこと、はありますか。
松岡 被告は「差別に反対する」、あるいは「人権を守る」とし、マスコミでも報道される中で、やはり(私たちの主張に)きちっと反論してほしいですね。きょう来られています上瀧先生と一緒に『黙らない女たち』とのタイトルの本が出ていますが、「黙らない」じゃなくちゃんと出廷して、反論なり意見を言ってほしかったし、ご本人の陳述書も出ていません。きちっと本人の意見を言ってほしかったです。
大川 もしこの訴訟を提起しなかったら御社としてはどうなっていたのか?
松岡 さすがに提訴したことにより激しい意見はやみましたが、提訴しなかったらおそらくそのままだったと思います。それから多くの取引先、デザイナーさんたちも心配しておられました。
大川 御社の取材方法に問題があることはありませんか。
松岡 それはないと思います。今マスコミの取材はもっと熾烈ですから。
大川 ご自身は被告の各種発言について、信用性がないとおっしゃっておられますが、その根拠はありますか。
松岡 ダイレクトに「クソ」と言われているわけですから、何をかいわんやです。
(裁判官と若干のやり取り)
大川 甲15号証の2ページ目、「とある裁判の日に早く裁判所に到着した被告が、男性に付きまとわれた」と。それがあなたご自身であるとツイッターで述べていますが。
松岡 そういう事実はありません。喫茶店で会っていないですから。
(裁判官から意見)
大川 あなたはそれ以外被告に嫌がらせをした、付きまといをしたそんなことを匂わせることを何かしていませんか。
松岡 していません。
大川 今回被告がかかわっている暴行事件にかかわっておられますね。これは何か理由がおありですか。
上瀧 異議です。被告が暴行事件にかかわっている事実はありません。
大川 被告は刑事処分では不起訴となっていますが、この事件に会社としてかかわっておられますね。
松岡 大学院生が酷い暴行を受けたにもかかわらず、相手にされなかったので相談に来ました。僕も血の通った人間ですから、最初は半信半疑だったんですが、話を聞いて取材班を結成して事実を取材して、真相究明に尽くしました。
大川 乙9号証の部落解放同盟山口県連合会、書記長の方の陳述書があります。これについて原告として何かご意見はありますか。
松岡 どういう理由でこういう「証拠」みたいなものを出してきたのか、わかりませんけど、私及び私の周辺のものが、集会を妨害した事実はまったくありません。いわゆる印象操作というのか。裁判所に「原告は悪い」とイメージ付けをしようとしているのではないかと思います。事実でないことを「証拠資料」で出すのは、本当におかしな話ですね。さっきの「喫茶店で付きまとわれた」もそうですけど。理解できません。
(裁判官から意見、「損害だけについて聞くように」)
大川 最後付け加えたいことはありますか。
松岡 李信恵さんは出廷しない、陳述書さえ出さないのではなく、きちっとした主張をしていただきたい。それからこんな汚い言葉を使うのはやめていただきたいし、代理人の上瀧先生も指導をしてほしいです。私の裁判がそのパイオニアというか先陣になればと思います。
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以上で大川弁護士の質問が終了し、上瀧弁護士の質問に移った。
上瀧 乙2号証の6ページ目です。「リンチ事件をめぐる関連人物の反応」ていう。
裁判官 下のページ数で言うと何ページですか。
上瀧 下のページ数で言うと167ページ。これは原告の文章ですか。「リンチ事件をめぐる関連人物の反応」というのは原告の文章でしょうか。
松岡 全部が私の文章ではないです。
上瀧 読み上げます。167頁の下の段最初から「確かに私は学生時代の1970年代前半新左翼系の学生運動にかかわっていましたが、卒業後は『極左』の活動はやめている」と書いておられますがこれは原告の文章ですか。
松岡 そうですね。
裁判官 原告は会社なんですけど、原告代表者のという意味ですか。
上瀧 そうですね。原告代表者のということです。
裁判官 では私のほうから聞きますけど、あなたの文章ですけども、そうですということでいいですか。
松岡 それは取材班全員で書きましたが、その部分は私が書きました。
上瀧 ここで「極左」と書いてありますがそれは間違いありませんか。
松岡 それは神原弁護士が殊更「極左」「極左」と言うから、そう書いたわけです。
上瀧 以上です。
法廷画家・桜真澄さんが描いた尋問の様子
上瀧弁護士の質問は1つだけであった。再度大川弁護士が質問した。
大川 上瀧先生が示された「新左翼系のノンセクトの学生運動にかかわった」とありますが「新左翼系ノンセクトの学生運動」とはなんなんですか。
松岡 当時学費値上げが問題になっており、その時にセクトには入っていないと。
大川 学費値上げ反対運動にかかわっていたということですね。
松岡 そうですね。主には。沖縄が返還前でしたのでそれにも関わっていましたけど。なぜ私がしつこくかかわったといえば、私は母子家庭です。学費が上がることは許せないと思い、それが動機です。
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その後裁判官からいくつか質問がなされたが、質問の趣旨が松岡に伝わっていなかった(松岡が理解していなかった)かのようなやり取りで、本質的な質疑ではないので以下は割愛する。
この日で長きにわたった「鹿砦社対李信恵裁判」その①(第1訴訟。その②は李信恵が原告になり鹿砦社を提訴している訴訟。第2訴訟)は結審し、判決は来年2月13日、13:10から同法廷で言い渡されることになった。
この裁判は本来本年中頃に判決が出ていてもおかしくはない進行をしていたが、被告側が終盤になり突如「反訴」の意思を表明し、その後それを取り下げ別訴(第2訴訟)を起こしたことから、係争が長引いた経緯がある。その割には松岡が繰り返し述べていたように、肝心の李信恵氏本人は証人として出廷しないし、陳述書も提出しない。「逃げた!」と言われても仕方ないだろう。まったくこの事件と関係のない部落解放同盟山口支部の書記長が陳述書を出す、という不可思議な展開を経てきた。
そしてこの日上瀧弁護士の松岡への質問はわずか1問だけであった(前回期日で上瀧弁護士は李信恵を証人請求するかのごとき発言をし、神原弁護士に「いらんことは言うな。黙っておけ」と叱責でもされたのであろうか)。被告側の非常に消極的な姿勢が印象的であった。
裁判所の常識は、必ずしも一般社会の常識と同じではない。よって予断は許されないものの、この日の尋問までに原告である鹿砦社は、書面による主張は尽くしたので、あとは判決を待つばかりだ。2019・2・13にご注目を!
(鹿砦社特別取材班)
M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!