老いの風景〈13〉グループホーム探し

平均寿命が延び、高齢の親御さんやご親戚家族の健康について、悩みを抱える方が多いのではないでしょうか。私自身、予期もせず元気で健康、快活だった母の言動に異変を感じたのは数年前のことでした。そして以降だんだんと認知症の症状が見受けられるようになりました。今も独り暮らしを続ける89歳の母、民江さん。母にまつわる様々な出来事と娘の思いを一人語りでお伝えしてゆきます。同じような困難を抱えている方々に伝わりますように。

母は週に5日デイサービスに通い、デイサービスに行かない日には私が身の回りの手助けをするために通っていますが、衛生面や安全面において危険を感じることがあります。先々のことを考えなくてはならない時期がきたようです。

私はケアマネージャーYさんへ相談に行きました。小さな調剤薬局の薬剤師さんで、民江さんとのお付き合いは20年以上、性格から日々の習慣、現在の状態までよく把握してくださっている方です。まず私が、一緒に住むことは難しいと打ち明けると、「夏さんのご自宅に引き取るよりも、お世話は専門の方々にお任せして、ご家族はいつも笑顔で接してあげる方がいいんじゃないでしょうか」と。気持ちが軽くなったというか、安心したというか、罪悪感が減ったというか、そんな感じでした。

そして、グループホームというものを勧められました。「この近くにいくつかありますから、見学に行ってみるといいですよ」と。グループホーム? 確かに最近住宅街で見かけるようになったけれど、どんなもの? 自分で探して問い合わせるの? 私はインターネットで介護サービスについて調べました。

いろいろな種類のサービスや施設がある中、グループホームとは、重い病気のない認知症の人に特化した施設であることがわかりました。スタッフの介助を受けながら、9人が1ユニットで、各々ができる範囲で役割を持ち、共同生活をするようです。費用は介護度が高くなるほど上がりますが、入れないほど高額ではなさそうです。民江さんは内科的疾患はありませんので、これはなかなかよさそうです。

役所の福祉窓口へも相談に行ってみました。そこではいくつか提案をされましたが、私が興味を持ったのは「小規模多機能型居宅介護」というものでした。それは、通いのデイサービスと、宿泊するショートステイと、自宅へ来てもらう訪問サービスを一カ所が請け負っているために、組み合わせて利用することが容易で、しかもグループホームを併設している所もあります。『通い』『泊まり』『訪問』のスタッフが同じというのが魅力的です。『通い』で慣れてきたら『訪問』や『宿泊』を挟み込み、『宿泊』の延長で『グループホーム』へ移行できれば、精神的な負担が少ないかもしれません。

場所を、民江さんの家のなるべく近くで私の家の方向に絞り、グループホームとグループホームを併設している小規模多機能へ下見に行くことにしました。もちろん姉妹も誘って。

全部で7カ所、共通していたのは、グループホームは「お風呂は毎日入らない」ということでした。デイサービスは入浴がメインと言っていいかもしれません。毎回介助していただいて安全に入浴し、昼食を頂き、全員で日替わりのリクリエーションゲームをし、ぬり絵や漢字ドリルをして、おやつを食べて帰ってきます。

一方、どこのグループホームも、お風呂は週に2回か3回だそうです。洗濯物を干したりたたんだり、ごはんの準備を一緒にすることもあれば、お散歩でお買い物に行くこともあり、そういう日常生活の場がグループホームのようです。と言っても、実際に洗濯物をたたんだり、掃除をしている姿などを見たわけではないので、実態はわかりません。

何より、施設によって随分と特徴がありましたので、実際に見に行ってよかったと思っています。しんと静まり返ったきれいな施設もあれば、地域密着型でカフェ(認知症カフェと言い、食堂のような所にご近所さんがお茶を飲みに来る)を併設し、人の出入りが多い賑やかな施設もありました。物が多くて雑然としている施設、重度な方が多く目につく施設、介護度によって居住階を区別している施設もありました。看取りまでを謳う施設と、自立歩行ができなくなったら退所しなければいけないというルールを設けている施設もありました。

さあ、民江さんにとって、何処が一番いいでしょう。重度な方に囲まれるのは辛いかも。室内犬は嫌いかも。静かすぎるのは寂しいかも。スタッフさんとボランティアさんと遊びに来るご近所さんと、大勢いたら混乱してしまうかも。

現在どこも満員で、複数の施設に申し込む方が多いと聞きましたが、幸い民江さんは急いでいません。一番きれいで、ゆったりしていて、自立歩行ができなくなったら隣接の特別養護老人ホームに移動ができて、費用も中程度、介護福祉事業で30年以上実績のあるTグループホームだけに入所申し込みをしました。待機の方が数名いらっしゃるそうなので、順番が回ってくるのは1年後か、2年後か。それまでにタイミングを見計らって民江さんに話をすればいいわけです。キープをしつつ難しいことは先送りし、私にとっては都合のいい形で、とりあえず一段落しました。ケアマネージャーYさんに相談してから8カ月が過ぎた夏のことでした。

▼赤木 夏(あかぎ・なつ)[文とイラスト]
89歳の母を持つ地方在住の50代主婦。数年前から母親の異変に気付く

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日帝支配の歴史を清算したい韓国左派政権 思うように言わせればいい

日韓関係の冷え込みは、まさに極北まで達した。従軍慰安婦問題での約束の不履行(日本が出資した財団の解体)、徴用工にたいする個人補償を最高裁が決定する、自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射、そして天皇にたいする謝罪要求である。これら、国際慣例から逸脱する韓国の言動に、日本国内では「約束を守らないとは、まともな国家ではない」「日韓条約に反している」「無礼きわまりない」などと、世論が湧き起こっているかのようだ。嫌韓イデオロギー、ヘイトクライムもこの世論を沸騰させている。だが、よくよく考えてみると、韓国の政治家の言動には無理からぬところがあるのではないか。


◎[参考動画]【報ステ】悪化する日韓関係 外相会談の結果は?(ANNnewsCH 2019/02/15)

◆韓国人が戦犯だった時代

現在の文在寅(ムンジェイン)政権は、朴槿恵(パククネ)政権を打倒した大衆運動で誕生した左派政権である。かつて全斗煥(チョンドゥファン)のもとで光州蜂起を担った世代であり、朴正煕(パクチョンヒ)政権によって、血の海に沈められた1960年4月学生革命の末裔といってもよいだろう。つまり革命と反革命の血みどろの歴史の中から出現したのが、文政権なのである。

一昨年の蝋燭革命は穏健なものに終始したとはいえ、その背後には数百万の組織された運動があり、いっぽうでは朴政権による戒厳令も準備されていたという。朴槿恵が逮捕され、生涯を獄中で暮らさなければならなくなったのも、革命のゆえんである。大統領を殺す国、革命と軍事クーデターが連続する国家ならではの歴史の書き直しこそが、このかんの韓国政府の言動にほかならないのだ。したがって「友好国なのに」とか「国と国の約束を反故にするなんて」などという日本人の反応は、かの国の姿を見誤っている。

たとえば、ナチス政権の蛮行を批判しない欧州諸国がないように、そしてヒトラーのもとで立法された「反ユダヤ法」の数々を、今日のドイツ人が認めないように、韓国においても旧政権の「約束」は「売国の約束」にほかならないのである。そう考えれば、最近の韓国政府の言動はまったく不思議ではなくなる。いや、政権交代だけではない。韓国政府および韓国の国民の大多数は、日本との関係を清算したがっているのだ。それは現在の日本人である、私たちとの関係ではない。韓国民のなかにある日本との決別なのだ。


◎[参考動画]関係悪化の韓国と外相会談 “天皇謝罪”発言抗議へ(ANNnewsCH 2019/02/15)

◆日韓条約は「日韓併合条約」と同等?

朴槿恵の父親・朴正煕が満州国の陸軍士官学校に志願入学し、日本の陸軍士官学校に留学したことは、ひろく知られている。帰国後は満州軍の将校となり、八路軍(中国共産党軍)やソ連軍と戦い、内モンゴル自治区で終戦を迎えている。つまり、朴正煕は日本の傀儡政権である満州国の軍人だったのだ。

したがって、1965年の日韓基本条約は、親日派であるばかりか、間接的にとはいえ日本軍に所属していた軍人政治家がむすんだ条約なのである。これを文民革命政権が「歪められた条約」とするのは当然であろう。そればかりではない。韓国政府は、1910(明治43)年に結ばれた日韓併合条約を否定するために、日本との政治紛争を、ある意味では意識的に実行しているのだ。

「ソウル聯合ニュース」から引用しよう。文在寅大統領は2月15日、青瓦台(大統領府)で主宰した国家情報院・検察・警察改革戦略会議において、「今年を、日帝時代(日本による植民地時代)を経てゆがめられた権力機関の影から完全に脱する元年とすべきだ」と述べ、権力機関の改革に強い意欲を示したという。情報機関の国家情報院と検察、警察は「ひとえに国民のための機関として生まれ変わる覚悟が必要だ」と指摘した。つまり、ひとり政府のみならず、情報機関や司法、警察権力もすべて、日帝時代から脱却しなければならないと宣言したのだ。


◎[参考動画]【報ステ】韓国国会議長「盗人猛々しい」批判激化(ANNnewsCH 2019/02/18)

◆日帝時代の脱却が始まっている

日帝時代からの脱却を意識しているのは、政府だけではない。たとえばスポーツの日韓戦において、フィギュアスケートやスピードスケートにおいて、韓国人たちは日本を徹底的に意識し、その勝敗を絶対に負けてはならない戦いに置き換えて観る。日本人が「友好国」だと思っている当の相手は、日本を激しく戦って勝たなければならない、永遠のライバルと思っているのだ。

これは日本文化に親しみ、観光においては圧倒的に友好的である同じ韓国人でありながら、まったく別の面である。われわれ日本人が韓流文化を愛すいっぽうで、かの国の不可解な言動に困惑するのと、好対照であり同質なのである。

歴史の棘という意味では、たとえば靖国神社に2万柱をこえる韓国出身日本軍人・軍属の御霊が祀られ、あるいは朴正煕のみならず、洪思翊(ホンサイク)など日本の陸軍中将として戦犯処刑となった人々があったのを、われわれは知っておく必要があるのではないだろうか。たとえばナチスドイツに併合されたオーストリアが、被害国家なのか加害国家(枢軸側)だったのかという評価は、終戦時とはまったく逆転している。いまやユダヤ人を迫害したナチス側の国家だったと評価されているのだ。かように歴史は書き換えられる。われわれと違って、世界では歴史の物差しが長いのである。


◎[参考動画]Pres. Moon vows to fulfill his duty to 23 last survivors of Japan’s sexual slavery(ARIRANG NEWS 2019/01/29)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で 〈全3話-2〉

◆前回のあらすじ

現代は西欧文明の衰退により、中国やロシア、イスラームなどがその存在を主張し、国際秩序が再編されつつある。そのような変動に関わらず、相変わらずアメリカに身売りして「日米同盟はゆるぎない」と繰り返すことは時勢に対して鈍感である。最近、日本でインドネシアなどからムスリムが増え、その存在はもはや無視できない。しかし、多くの日本人はイスラームに対して「不可思議な宗教」という印象を持っている。しかし、今後はイスラームと日本の同盟に視野に入れるべきである。戦前の日本は国家を挙げてイスラームに友好的だった。

◆アメリカの「下僕」としての日本 日本政府・公安当局のムスリム敵視政策

話を今の日本に戻そう。国際政治学者のサミュエル・P・ハンチントンによると日本は、「日本文明」という独自の文明圏に属すという。この文明は、2世紀から5世紀にかけて中華文明から独立して成立した文明圏であり、日本一国のみで成立する孤立文明である。また、一国だけの文明でありながら複数の国で構成される大きな文明(中華文明や西欧文明など)と同等であるという。

しかしながら、今の日本は西欧文明のアメリカに服属する「朝貢国」「下僕」「臣下」である。米軍基地への「思いやり予算」や東京上空の飛行規制、辺野古移設の問題など、全く主体性は見られない。また日本政府も公安当局も「主君」であるアメリカ政府の「ご意向」に忠実に従い、国内のムスリムを敵視している。私の日本人ムスリムの知り合いから聞いた話であるが、2018年8月22日に京都市国際交流会館(京都市)で開かれた「犠牲祭」(アラビア語でイード・アル・アドハー。ラマダーン明けの祝祭の1つ)の会場には私服警官と見られる人物が会場周辺を徘徊していたという。また2010年10月には、警視庁公安部外事三課のデータファイル114点がネット上に流出、これによって公安が、在日ムスリムの尾行、モスクの監視、家族関係の調査、使用している金融機関などの民間情報の取得など、違法と言える捜査を行っていることが明らかとなった。

このように今の日本当局はイスラームを敵視しているのである。先ほど言及した戦前の、政府を挙げてイスラームを支援していた時とはまるで正反対である。2014年にイスラーム国に戦闘員としてシリアに渡航しようとした北大生が警視庁から事情聴取を受け、それをサポートしたとして日本人ムスリムでイスラーム学者のハサン・中田考氏も同様に事情聴取を受けた。中田氏は現在、公安の監視下にあるとされる。中田氏の本望とは異なるだろうが、もし戦前の軍部であったならば、世界のムスリムとネットワークを持つ中田氏を重用したかもしれない。今の日本当局のように敵視政策はとらなかった可能性が高く、中田氏が今のように冷遇されることはなかったかもしれない。

◆日本が知らぬ間に進むイスラームの復興運動 トルコ・インドネシア・インドでの動向

しかしこのような行いは、日本の外交的な選択肢を狭め、その将来を不安定にさせるだけである。衰退を続けるアメリカではなく、イスラームに目を向けるべきである。

近年、ムスリム諸国ではシャリーア(イスラーム法)に基づく政治を求める声が高まっている。その背景には、アラブ諸国に見られるような独裁政権による抑圧といった現状への不満がある。多くのイスラーム諸国では西欧式の近代化が成功せず、イスラームへの回帰を志向する声が強い。

その中心にいるのが、親日国のトルコである。その大統領であるエルドアンはイスラーム政党出身であり、ネオ・オスマン主義を採用している。ネオ・オスマン主義とはかつてのオスマン朝の伝統を再評価し、オスマン朝の中心地であった中東を21世紀のハートランドの中核とする考えである。オスマン朝のかつての支配地域である中東諸国、さらには民族主義の観点から同じチュルク系の中央アジア諸国や新疆ウイグル自治区も連携の視野にいれる。270万人に及ぶ(2016年地点)シリア内戦の難民を受け入れたことで、トルコはその地域での存在感を強め、さらに南アジアやインドネシアでもエルドアンを支持する声が高まっているのである(ただし、エルドアンは2016年の軍の一部の反乱を鎮圧後、強権的になりジャーナリストの投獄や自分の親族に官職を与えるなど、問題がないわけではない)。

エルドアンの写真とポーズを決めるインドネシア人たち(出典『Erdogan’s uncanny popularity in Indonesia reflects growing preference for conservatism』2019/2/7閲覧)

例えば、インドネシアでは「Sahabat Erdogan」(インドネシア語で「エルドアンの友人」)というfacebookグループが存在し、その投稿にはエルドンを支持するインドネシア人がエルドアンの写真の隣でポーズを決めている。実際、私が知っている京都在住でインドネシアのマカッサル出身の男性は、エルドアンを評価していた。インドネシアは世界で最もムスリム人口が多く、2億人を超えている。また近年、急激に経済成長していることもありその存在感は極めて大きい。2007年にはジャカルタで国際カリフ会議が開催され、そこでは前述の中田氏がアラビア語と日本語で演説している。


◎[参考動画]国際カリフ会議で演説するハサン・中田考氏。動画の2:00から8:00が日本語での演説である(『INTERNATIONAL KHILAFAH CONFERENCE (Prof. Hasan Ko Nakata)』2019/2/10閲覧)

 
インド出身ムスリムがエルドアン支持を呼び掛けている(出典『Caliph Erdogan? Why Turkey's President Is Quietly Courting Indian Muslims』2019/2/7閲覧)

  
インドでも近年ヒンドゥー・ナショナリズムが高まっており、それに危機感を持つムスリムが外部に支援者を求めるようになってきている。その支援者としてトルコが選ばれ、ここでもやはりインドのムスリムとトルコとの間にはネットワークが形成されている。インドではかつて、反英闘争の中でヒンドゥー教徒がカリフ制を支持したことがある。

また、イスラームの学術界ではアラビア語に次いで英語が第二公用語となっており、インド亜大陸からは英語が堪能なムスリムが数多く輩出されていることもあり、インドのムスリムは国際的なイスラーム運動の中で大きな役割を担っている。

ムスリム人口数としても、少数派でありながらインドには1億7200万人以上(2011年インド国政調査)もいて、それはサウジアラビアやトルコ、イラン各国の人口よりも多い。インドもイスラーム世界で存在感は大きいのである。(つづく)

◎日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で〈1〉
◎日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で〈2〉
◎日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で〈3〉

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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《対李信恵氏第1訴訟判決解説》この勝訴を突破口に、リンチ被害者M君救済、隠蔽策動を粉砕し真相究明を勝ち取ろう!

「主文、被告(李信恵氏)は原告(鹿砦社)に対し、10万円……を支払え」

末永雅之裁判長がそう読み上げた瞬間、取材班は傍聴席で顔を見合わせ、メモを取る手も止まってしまった。傍聴席からは「よし!」の声や拍手が沸き上がる。裁判長が「静かにしてください」と注意をするが主文の読み上げは短時間で終わった。傍聴席にいたある取材メンバーは判決主文の読み上げが終わると同時に「ありがとうございました!」と大声で叫んだ。

被告席には誰の姿もない。つまり普段は「正義は勝つ!」と威勢のいい神原元、上瀧浩子両弁護士の姿がないということだ。傍聴席にも鹿砦社支援者の姿しかなく被告側の人間は誰も来ていない。このかん、「M君リンチ事件」裁判で勝訴ながらも、不可思議な事実認定に、砂を噛むような思いをしてきたわれわれとしては、このような瞬間が(事実関係からすれば当たり前の判決なのであるが「報告事件」化している「M君リンチ事件」裁判との関係から、本件訴訟でも「不当判決」が出されるのではないかと憂慮していたのだ)訪れるのは、この問題に関わって初めてであった。

われわれは、たとえ敗訴しても、松岡を先頭に堂々と法廷で判決を粛々と聞き、その報告をこの通信などで行うつもりであったが、被告李信恵氏本人も、神原・上瀧両弁護士も、また彼らと連携する人たちも、誰もがこの判決に口をつぐんでいる。負けは負けと認めたらどうなのか!? 

◆裁判所は被告李信恵氏の言動に不法行為と「リンチ事件」の存在を認定した!

判決言い渡し後、書記官室に判決文を受け取りに行き、その内容を読み、松岡をはじめ取材班は驚きを隠すことができなかった。これまでの「不当判決」とはまったく異なり、判決は、われわれの主張が、一部を除きほぼ全面的に認められ被告李信恵氏の不法行為が認定されている内容であったからだ(その割に「異常に損害賠償金額が安すぎる」という指摘を各方面から頂いている。それはその通りだろう)。

言い換えればわれわれの「裁判所不信」がそこまで高じていたということである。ほぼ「全面勝利」と言っても過言ではない内容だ。見えない力が働くかのように裁判では無敗を誇っていた被告李信恵氏が初めて敗れたのだ。おそらく、10万円という金額以上に、本判決は、松岡がいつも言うようにダムを決壊に至らしめる〈蟻の一穴〉になるだろう。かのソ連崩壊を見よ! ゴルバチョフがペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を開始した時、やがて鋼鉄のようなスターリン主義体制が一気に崩壊すると誰が想像しただろうか。

そして、重要な付加的な成果があった。末永裁判長は判決文3頁において、「M君リンチ事件」を《大学院生集団リンチ事件。以下単に「リンチ事件」という。》と記している。本件訴訟は被告が李信恵氏ではあるが、鹿砦社がこの事件取材に至る契機として「リンチ事件」との言葉が裁判官により用いられたのである。判決直後鹿砦社ツイッターアカウントで「勝訴」を速報したところ、リツイートが集中した。それほどにこの事件は関心を集めていたということが証明された。ところがである。

◆司法記者クラブ、またしても記者会見開催拒否!

判決後打ち合わせをしている際に、取材班の一人が「これは確実なニュースなんだから記者クラブへ記者会見を申し込みましょうよ」と発案した。これまで提訴の際などにことごとく「記者会見開催拒否」を食らっていたので、われわれの頭の中からは大阪地裁に「記者クラブ」が存在していることが、幻のようになっており、この当たり前すぎる「権利行使」にすら思いが至らなかったのだ。

早速記者クラブへ電話をかけ会見を開きたい旨伝える。ま・た・し・て・も幹事社は朝日新聞だ! 担当記者は「イッシキ」(男性)と名乗り「各社に諮ってみます」と言い、電話を切ったが、折り返しの電話は、なんと非礼にも「非通知」でかかってきた。「本日は立て込んでおり、資料を配布してもらうのは構わないが、記者会見は行わない」といった趣旨の話をする。そんなバカな話があるか! 著名人が名誉毀損で勝ったり負けたりしたら、新聞は小さくとも記事にするじゃないか。李信恵氏が勝訴したら、ほとんどのメディアが取り上げて、彼女が敗訴したら全メディアが無視をする。不公平じゃないか。

このようなことを繰り返すから、われわれは「大阪司法クラブ」は李信恵氏及びその陣営と結託した「情報カルテル」と再度糾弾せざるを得ないのだ!「では、明日でも構わないから会見を開かせてください」と要請するも答えは「NO」である。つまり「立て込んで」いようがいまいが、われわれに会見は開かせない──これが一貫した「大阪司法記者クラブ」の姿勢だ。さらに、「イッシキ」氏だと思うが、あえて名を聞くと、「名乗れない」と言う。失礼にもほどがある。

そして、この不公正な態度はかえって「差別」を助長するものであることに、記者たちは思いを巡らせないのか。「大阪司法記者クラブ」はリンチ被害者M君の要請を含め、一体このかん、何回われわれの会見開催要求を踏みつぶしてきたか。逆に李信恵氏が訴訟で勝訴した際には、支援者の一般人は記者室に招き入れ、鹿砦社は社名を名乗ると部屋にも入れなかった。

これらの姿勢は、明らかな「鹿砦社排除」である。法律で禁止されている「村八分」行為である。

勝訴してもどのメディアも書かない、扱わないから、いきおいネット上では、きつい(場合によっては差別的な)論調で李信恵氏への批判が展開される。われわれは何度繰り返すが「原則的に差別に反対する」立場である。仮に誹謗中傷を向けてきた相手が、李信恵氏ではなく男性であろうが、日本国籍の人物であろうがケント・ギルバートであろうが同様の内容には同様のアクションを起こしたであろう。「大阪司法記者クラブ」の偏向した姿勢は、かえって差別助長に加担しているのではないか。属性が何かではなく「なにを発信したか」、「なにをしたか」が問題なのである。このような簡単な原則も理解できない記者連中にはもう何の期待も持たない。少しはわれわれの闘志を見習え、と忠告しておく。ぬるま湯につかっている“マスゴミ病”患者には理解できないかもしれないが……。

ともかく、3年近い、けっして短くない期間の、われわれの苦闘が報われ、巨大なダムに〈蟻の一穴〉が刺されたのだ! われわれはこれを突破口に、リンチ被害者M君救済を勝ち取り、被告李信恵氏とこれと連携する徒輩らによる隠蔽策動を打ち破り“真の勝利”を勝ち取る決意である。

(鹿砦社特別取材班)

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

五輪とサイバーセキュリティ担当の桜田大臣こそ、この国の政治文化の体現者

不用意な発言、自分の言葉で答弁ができない桜田義孝大臣(五輪担当相・サイバーセキュリティ戦略担当相)が批判の矢面に立たされている。これほど無能な大臣が辞任(更迭)できずに、しどろもどろになりながら居座る不思議は、あまりにも情けない日本の政治文化を映しているというほかない。まずは、その桜田大臣の惨憺たる「政治手腕」を確認しておこう。いまだに辞任しないというのであれば、水に落ちた犬は叩けのことわざどおり、追撃の狼煙を上げるしかない。

発言を確認しておこう。池江璃花子選手が白血病と診断されたことについて、桜田大臣は記者団に「金メダル候補で、日本が本当に期待している選手なので、がっかりしている」「早く治療に専念して頑張ってもらいたい。また、元気な姿を見たい。1人リードする選手がいると、みんなつられて全体が盛り上がるので、その盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」と語ったのだ。


◎[参考動画]桜田五輪大臣 がっかり発言を謝罪・撤回(ANNnewsCH 2019/02/13)

ようするに、オリンピックで金メダルが減しかねないことに落胆し、リードするはずだった池江選手の出場が危ぶまれるので、盛り上がりが下火になると心配しているのだ。すなわち、選手はメダルを獲得するためのコマ、手段にすぎず病気になってしまったことを「がっかり」だと言うのだ。そこには選手の病状を気づかう気持ちは微塵も感じられない。ただひたすら、国威発揚の場としてのオリンピックの盛り上がりを心配する、常識はずれの政治屋の姿があるばかりだ。

そしてそれは、端なくもオリンピック選手が国に奉仕する存在、盛り上げる存在だと位置づけられていること。さらにいえば、オリンピックは国家意識の盛り上がりというナショナリズムを本質にしていることを露呈したのである。そうでないというのなら、オリンピックから国旗を排除すべきであろう。桜田大臣を批判する人々も、そのことには無自覚である。アスリートファーストを云うならば、国威に従属したオリンピックそのものの改革が必要なのである。さて、桜田大臣である。なぜ、このような人物が大臣席に座っているのだろうか。ふたたび、これまでの惨憺たる行状を確認したい。


◎[参考動画]櫻田義孝東京オリンピック・パラリンピック担当大臣 就任記者会見(2018/10/03)

◆ほとんど無能としか思えない言動

桜田大臣は2016年に二階派に入会し、2018年の第4次安倍改造内閣において初入閣した。記憶に新しい大臣就任会見で「東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣の桜田義孝です」と自己紹介するところを「東京ぱらんぴっく、ぱらぴっく、パラピック競技大会、東京パラリンピック競技大会担当大臣の桜田義孝でございます」と3回も間違えた上に「オリンピック」を飛ばして自己紹介したのだった。

2018年11月14日の衆議院内閣委員会において、無所属の今井雅人議員から「自分でパソコンは使っているのか?」という質問に「秘書とか従業員に指示してる。自分でパソコンを打つことはありません」と答弁。国民民主党の斉木武志議員からは、イランの軍事施設がUSBメモリーにより悪質なコンピューターウイルスに感染した事例について「日本の原発もサイバー攻撃を受ける可能性がある」とした上で、「日本の原発にもUSBメモリーはありますか?」と質問され「使う場合は穴を入れるらしいが、細かいことは、私はよくわからないので、もしあれだったら私より詳しい専門家に答えさせるが、いかがでしょう」などと答弁している。

パソコンを使えない大臣がサイバーセキュリティ担当であるという笑えない事態は世界に拡散され、大いに笑われた。英ガーディアンは「もしハッカーが桜田大臣を標的にしても、何も情報を盗むことができない。彼は最強のセキュリティーかもしれない!」などと皮肉を報じたものだ。


◎[参考動画]パソコンしないけど「事務所は対策万全」(ANNnewsCH 2018/11/16)


◎[参考動画]「英語できず首相無理」 桜田五輪相(KyodoNews 2018/12/20)

さかのぼる2013年10月には、福島第一原子力発電所事故で発生した指定廃棄物の処理について「原発事故で人の住めなくなった福島(東京電力の施設)に置けばいい」と発言してもいる。2016年1月14日には、従軍慰安婦に言及し「職業としての売春婦だった。それを犠牲者だったかのようにしている宣伝工作に惑わされすぎだ」との発言をし、その日のうちに撤回している。まさに、修正不可能な政治的失言者。

2018年11月5日の参議院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫議員から東京大会の基本コンセプトなどを訊かれて即答できず、事務方の助けを借りながら答弁している。そのさいに大会予算の国の負担分「1500億円」を「1500円」と言い間違えた。同じ答弁は最近もくり返された。

蓮舫議員との質疑については、閣議後の記者会見で自身がちぐはぐな答弁をしたのは蓮舫側から事前に質問通告がなかったためと主張したが、通告済みだったことが明らかになった。しかし「事実上と若干違う」として撤回したものの、けっきょく謝罪はしなかった。そのさいに、蓮舫(れんほう)の名前を「れんぽう」と言い間違えている。オリンピック憲章を「読んでいない」と答弁したのも記憶に新しい。


◎[参考動画]桜田大臣ちぐはぐ答弁 聞いた蓮舫議員はあきれ顔(ANNnewsCH 2018/11/27)


◎[参考動画]ちぐはぐ答弁の桜田大臣 “事前通告なし発言”撤回(ANNnewsCH 2018/11/08)

◆キングメーカーとしての二階派

それにしても、ここまでお粗末な政治家が大臣で、安倍総理はいまなお「職務をまっとうして欲しい」という国会答弁をくり返している。クビに出来ない理由があるのだ。その理由とは、自民党のキングメーカーとして君臨する二階俊博の存在にほかならない。二階派(志帥会)は河村健夫、平沢勝栄、中曽根弘文といった実力者も擁している。

派閥そのものは中曽根派も合流した経緯もありタカ派体質とされているが、亀井派いらいの寛容な体質を持ち合わせている。そのあらわれが、細野豪志(元民主党)の加入である。そのいっぽうで、二階氏の政治力は安倍政権をコントロールするほど、キングメーカーとしての存在感をしめしているのだ。本欄で何度も批判してきた片山さつきが辞めさせられないのも、この二階派だからである。二階俊博が「田中派最後の政治家」と言われるゆえんである。

さきに本欄では安倍総理(総裁)による石破派イジメの実態を暴露したが、派閥の均衡のうえにしか存在しない自民党政権において、桜田大臣のような恥ずかしい存在を辞めさせられない。このような事態は、今後も枚挙にいとまなく出てくるであろう。


◎[参考動画]ザ・櫻田 衆議院議員・桜田義孝ものがたり(櫻田よしたか 2012/10/25)


◎[参考動画]第84回勝兵塾月例会 衆議院議員 櫻田義孝様(shoheijuku 2018/05/18)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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滋賀医大附属病院への「異例の抗議」行われる

2月14日、滋賀医大附属病院前で、「滋賀医科大学小線源治療患者会」のメンバーが、雪の舞う寒い天候の中、「岡本圭生医師による治療の継続」を訴えて、のぼりや横断幕を掲げるマニフェスト(抗議活動)を敢行した。気温2度という、厳しい寒さの中、朝9時30分頃からメンバーは病院敷地の「外側」に集まり、下記写真のように病院に向けての示威行為を開始した。対象が病院だけに患者さんに迷惑が掛かってはならないので、音声を発することはしなかった。

 
 
 
9時45分頃、マスクをした職員らしき人物が現れた

9時45分頃、マスクをした職員らしき人物が病院の建物内から出てきて、様子を観察しだした。

この人物撮影していると「勝手にわたしの写真を撮らないでください」という。「あなたは国家公務員でしょ」と聞くと「そうですが、それが何か?」というので「職務中の国家公務員に肖像権はない」と伝えると、横にいたガードマンが「病院内での写真撮影は禁止です!」とまくしたてだした。「どこにそんな規則があるんですか。入院患者を見舞った家族や友人が一緒に写真を取ってはいけないのですか?」と切り返す。

職員がガードマンに下がるよう指示し、マスクをした職員は「私の写真のデータを消せ」とあたかも警察のような口の利き方をする。「そんな法的義務はない。不当要求には応じられない」と突っぱねるとやがて諦めて病院の建物に帰っていった。

 
10時10分、パトカーがやってきた

10時10分、病院が警察に通報したのであろう。パトカーがやってきた。

パトカーは緊急出動のパトランプは点灯していない。病院玄関前で数名の職員が「プラカードをつけた者がいたり、ああやってのぼりを上げたり妨害行為をしているんです」と警察官に申告している。

パトカーで病院にやってきた2名の警察官がスタンディングをしている「患者会」の皆さんのいる場所へやってきた。

しかし、患者会の誰も全く動じていない。どうしてか? この日の行動を計画したMさんは、「こうなるであろう」ことをあらかじめ予見して、先手を打っていたのだ。Mさんは早い時期に草津警察署に「道路使用許可」を申請し、許可を得ていたのだ。

「患者を患者とも思わぬ滋賀医大附属病院は、病院真近での直接行動を、嫌がるに違いない。スタンディングは何の違法行為でもないが、病院は必ず警察に通報するだろう。その時に道路使用許可を見せれば、警察も文句は言えまい」。

Mさんは市民運動の歴戦の闘士でもなく温厚な紳士だが、この読みは寸分なく的中した。事情を聴きに来た2名の警察官は滋賀医大附属病院最寄りのJR瀬田駅交番の巡査だった。道路許可を見せて納得した警察官は、「どうしてこの先生辞めはるんですか?」と「患者会」のメンバーに質問する。

「辞めるんじゃなくて病院が無理やり辞めさせようとしているから、わしら抗議してますんや。お巡りさんも男性やったら前立腺癌、他人事ちゃいまっせ。ここにおる者は岡本先生に命を救うてもろうた人ばかりです」

さらに警察官が「なんでそんな先生を辞めさそうとするんですか?」と「いい質問」をぶつけるので「さあ、それはわかりませんけど、一層こちらやなくて病院の中を捜査してもらえまへんか」と冗談交じりにお願いするメンバーに「いやちょっとそれは……」と困った表情を浮かべていた。

若い巡査は「いつも瀬田駅前でやってはるやつですよね」とこの問題への関心を口にしたので、メンバーが用意していた『紙の爆弾』3月号のグラビアを提供すると「ありがとうございます」と感謝されていた。

しばらくすると、別のパトカーがやってきた。滋賀医大附属病院は、正門の前が大津市と草津市の堺になっており、先に来た警察は大津市警察からの出動であったが、「患者会」メンバーがスタンディングを行っていた場所は草津市内であるので、草津警察がやってきたのだ。すでに道路使用許可を得ている「患者会」とりわけMさんは、ニコニコしながら「どうもどうも」と使用許可を提示し、穏やかな雰囲気で確認が行われた。わたしが「写真撮影をしてよいですか」と草津署の警察官に尋ねると「構いませんよ」とのことだった。

草津警察所の警察官に余裕の笑顔で警察に応対するMさん

草津警察も引き上げ、寒い中で皆さんひたすら立って抗議を続けていると、参加していた方のお一人が不調を訴えだした。実はこの日の抗議行動には、既に治療が終わった患者さんだけではなく、現在入院中の患者さんも数名参加していたのだ。そのうちのお一人が薄着過ぎたため低体温状態になってしまったのだ。脈をとってみると正常値だ。深刻な状態ではないだろうが、一刻も早く体を温めなければならない。メンバーが患者さんを病室に戻すべく車椅子を病院内にとりに行くと、病院職員がストレッチャーを用意してやってきた。その中の一人はわたしに「写真を撮るな」と迫った職員であったが、体調を悪くした患者さんへの彼の態度は(当たり前ではあるが)丁寧で、親切な対応であったことは記しておく。

入院中の患者さんも厳寒の中参加する病院前での抗議行動など、この国の歴史にあったであろうか。滋賀医大附属病院は、この日大きな衝撃に見舞われたに違いない。「患者会」の皆さんや「入院中の患者さん」までが、治療が受けられないかもしれない「待機患者さん」のために「命がけ」で闘っている。低体温で意識朦朧となりながらも厳寒の中で抗議に参加した「入院患者」さんの姿に直面して、あらためて、心が震える思いをさせられた。願わくば同じ人間として滋賀医大附属病院の皆さんにも「なにか」を感じてほしいものだ。

なお、滋賀医大附属病院問題については、Youtubeにも資料動画があるのでご覧いただきたい。


◎[参考動画]滋賀医大による癌治療の妨害: 岡本医師の妨害阻止に向けた闘い


◎[参考動画]癌患者の滋賀医大病院による治療妨害-阻止に向けて-


◎[参考動画]For Provisional Disposition to save patients(上記動画の英語編集版)


◎[参考動画]滋賀医科大学 倫理規定違反


◎[参考動画]滋賀医大診療予約停止

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連記事》

◎岡本医師の治療を求める患者7名と岡本医師が、滋賀医大附属病院を相手取り、異例の仮処分申し立てへ!(2019年2月9日)
◎滋賀医大附属病院の「治療妨害を断罪」! 岡本医師の治療を希望する前立腺癌の患者さんと、岡本医師が仮処分申し立てへ(2019年2月2日)
◎1000名のカルテを組織的に不正閲覧! 院長も手を染めた滋賀医大附属病院、底なしの倫理欠如(2019年1月19日)
◎岡本医師のがん治療は希望の星! 救われる命が見捨てられる現実を私たちは許さない! 滋賀医大小線源治療患者会による1・12草津駅前集会とデモ行進報告(2019年1月14日)
◎滋賀医科大学 小線源治療患者会、集中行動を敢行!(2018年12月24日)
◎滋賀医大病院の岡本医師“追放”をめぐる『紙の爆弾』山口正紀レポートの衝撃(2018年12月13日)
◎滋賀医科大学医学部附属病院泌尿器科の河内、成田両医師を訴えた裁判、第二回期日は意外な展開に(2018年11月28日)
◎滋賀医科大学に仮処分の申し立てを行った岡本圭生医師の記者会見詳報(2018年11月18日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

衝撃の『紙の爆弾』3月号絶賛発売中!前立腺がん治療めぐり 滋賀医大病院 底なしの倫理欠如
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で 〈全3話-1〉

◆西欧文明の衰退

21世紀に入ってアメリカやEUをはじめとする西欧文明の覇権の衰退が明らかになり始め、それに伴い中華文明の中心国家である中国がその存在を主張し始めた。「一帯一路」構想の提案、南シナ海における主権の主張、アフリカへの進出、ICT分野をはじめとする技術力の急速な拡大など、中国は超大国としての座を狙っている。

こうした非西欧諸国の台頭は各地で顕著である。東方教会文明の中核国家であるロシアも中国に続こうとしている。軍備増強やクリミア半島の不法占拠、アメリカと対立するベネズエラへの支援などを通じてその存在を世界にアピールしようとしている。ヒンドゥー文明のインドでも近年、ヒンドゥー・ナショナリズムが強まりつつあるという。イスラーム文明でも近年はイスラーム国(IS)がシリアとイラクに跨る地域に、既存の国境を否定してイスラーム国家を建設、カリフ制の復活を宣言した。このように西欧による主導で進められてきた主権国家体制や「民主主義」や「人権」といったイデオロギーは力を失いつつある。

このような文明間の国際秩序再編の動きを安倍晋三はわかっているのだろうか。安倍はいつも「日米同盟はゆるぎない」と言うが、急激な時代変化の中で弱体化を続けるアメリカに対して、過去と同じように接しようとすることはあまりにも時代の流れに対して鈍感と言えよう。

◆日本とイスラームの同盟 戦前日本とのイスラームの友好

私が考えるのは、今後の日本はアメリカよりもイスラーム諸国と同盟を組むことにシフトすべきではないのかと言うことである。将来的に、イスラームは世界で最大の信者数になるとの予想がある。また近年、インドネシアを中心とする東南アジアからのムスリムが増加するにつれて、日本でもイスラームの存在はもはや無視できなくなった。「ハラール」認証の食品や礼拝室についての話題はよく耳にするようになった。とはいえ何かしら多数の日本人には「イスラームは不可思議な宗教」という考えがあるようだ。また、「9.11同時多発テロ」やイスラーム国の蛮行もあって、イスラームに悪い印象を持っている人も少なくない。

しかし戦前の日本はムスリムに対して、極めて友好的であった。日露戦争開始時の1904年頃より、日本の中央政府内では、日本の勢力拡大を狙う政治家や軍部からムスリムを利用しようとする声が出てきた。これに基づいて実施されたのが「回教工作」であり、対外的に中国や東南アジアのムスリムへの宣撫工作がなされた。日本国内では、軍部や外務省の指導により『大日本回教協会』が設立され、ムスリム諸国との外交や研究を国策として推進していた時期があったのである。

 
代々木上原にある東京ジャーミィの外観(出典『JUST PHOTO iT』2019/2/7閲覧)

1938年5月に代々木にできた東京モスク(後の東京ジャーミィ)は宣伝工作の一環として、日本の寄付で建立されたものである。この時の開堂式には、日本陸軍関係者やイエメンの王子、エジプト大使などが出席している。その後も1939年11月に大阪でムスリム諸国の風俗や文化を紹介した「回教圏展覧会」が開催、同月には東京でも「世界回教徒第一次大会」が開かれるなど、日本におけるイスラームに関する活動は盛んであった。

ムスリムの側としても、西欧列強からの解放を日本に期待する者がいた。ロシア出身でタタール人のアブデゥルレシト・イブラヒムはその一人である。ロシア革命によって無神論の共産主義者が権力を掌握すると、イスラームが弾圧されることを恐れた者はロシア国外に逃亡したが、イブラヒムはその時に日本に亡命した。イブラヒムは回教工作にも関与し、北京のモスクのイマーム(教主)に日本と連帯するよう呼び掛けている。

このころ日本は傀儡国家・満州国を成立させ、ソ連と対峙していた。そこで「中国回教総連合会」を樹立させ、漢人ムスリムや新疆のウイグル族、それと隣接する中央アジアのムスリムとのネットワークを構築、ソ連の包囲網を築こうとしていた。同時にムスリムのスパイ養成や医療・教育支援、モスク修復などを行っていた。さらに、1930年代前半にできた東トルキスタン共和国(現・新疆ウイグル自治区)の元首に、旧オスマン帝国のカリフの末裔を日本の支援で擁立し、新疆に満州国のような親日的傀儡国家を作る計画もあったのである。この計画が実現すれば、中央アジアにカリフの末裔が東トルキスタン共和国のトップとして就任後、傀儡的ではあれ日本がカリフ制を復活させるという歴史展開もありえたと言える。カリフと言えば2014年にイスラーム国のバグダディがカリフ制復活を宣言したが、そのカリフ制の復活に日本もかつては関わっていたかもしれない事はなんとも不思議である。

しかし、戦前の日本であった「イスラーム・ブーム」も終焉を迎える。1945年の敗戦に伴う大日本帝国の崩壊で、日本国内のムスリムは強力な支援者を失い、半場忘れ去られることになったのである。戦後、イスラームに改宗した森本武夫は日本の敗戦により「日本におけるイスラームの夜明けが忽ち暗雲に覆われる有様となった」と述べている。戦後も日本人ムスリムによる布教活動の展開やビジネスマンのイスラーム圏への渡航など、日本とイスラームの接点が消えたわけではなかったが、2000年代に入るまで日本社会全体でイスラームと向き合おうとする風潮は小さなものであった。(つづく)

◎日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で〈1〉
◎日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で〈2〉
◎日本とイスラームの同盟 文明間の国際秩序再編の中で〈3〉

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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速報! 対李信恵氏裁判、大阪地裁で鹿砦社の勝訴!!

2月13日13時10分から大阪地裁1010号法廷において、鹿砦社が李信恵氏に対して提起した、損害賠償事件(取材班注:この訴訟から派生し別訴となった訴訟があるため、便宜的に本件訴訟を「第1訴訟」とし、別訴を「第2訴訟」とする)第1訴訟の判決言い渡しがあった。

末永雅之裁判長は、「被告に10万円の賠償を命じる」と主文を読み上げた。

鹿砦社への損害賠償額は少額ではあるが、われわれの間違いのない勝利であり、判決自体は素直に歓迎する。 12日の本通信で松岡が指摘していた通り、この訴訟も「報告事件」とされている疑義がぬぐえず、この日判決を耳にして判決文を目にするまで、油断はならなかった。この訴訟に限れば裁判所は常識的な判断を下したと評価できよう。

松岡(左)と代理人の大川伸郎弁護士(右)。2019年2月13日大阪地裁にて

ただし、ご存知の通り裁判は3審制であるから、被告側(李信恵氏)側が控訴する可能性はある。われわれは主張の主たる部分が認められれば、いたずらに係争を長引かせるつもりはないので(判決文を精査したのちにではあるが)、今後の態度を速やかに明らかに表明する。

しかしながら、李信恵氏との間では、李信恵氏が原告となり鹿砦社を被告とした、いわゆる「第2訴訟」も同時に大阪地裁に進行中であり、こちらは「準備手続」のため、傍聴はいただけないが2月21日に次回期日が迫っている。この日の判決は一応妥当なものであると評価できるものの、「第2訴訟」の今後のゆくえ、あるいは「第1訴訟」の控訴審があれば、まだまだ気を許すことはできない。勝訴判決を受けて、どこかの誰かのように「祝勝会」を挙げ虚勢を張ることなく、気を緩めずに引き続き法廷闘争に臨む所存である。

現在「準備手続」で進められている「第2訴訟」でも、われわれは証人調べの申請を行う予定である。証人調べは公開法廷で行われるのでぜひ引き続きご注目いただきたい。きょう法廷に足を運んでいただいた傍聴支援者の方にお礼を申し上げるとともに、鹿砦社を支援いただいている本通信の読者の皆さんに深く御礼を申し上げる次第である。しかし、繰り返しになるがまだ「闘い」は続く。われわれは最後まで気を抜くことなく、全力で対李信恵氏裁判闘争全面勝利を目指し闘争を継続することを、あらためて宣言する。

この闘争は、たんに鹿砦社の名誉のためだけではなく、日本における「反差別運動」の将来を憂い、その問題点を指摘する裁判でもある。われわれは原則的に「あらゆる差別」に反対するがゆえに、対李信恵氏闘争を、正面から戦う必要を感じているのであり、それは本質的な意味において「社会的正義」を希求する闘いであると認識する。

(鹿砦社特別取材班)

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

安倍晋三のファシスト的な不寛容 衆参同時選挙は「石破イジメ」になるのか?

昨年9月の自民党総裁選挙では、石破茂が大半の予想をくつがえして地方票の45%を獲得する善戦をみせた。議員投票をあわせると、わずか20名の石破派が254票を獲得し、他の5派にささえられた安倍晋三を脅かした。

 
自民党総裁選挙2018HPより

総得票率でいえば、安倍晋三553、石破254と、31%の党員・国会議員が石破を支持したことになる。かさねて言うが、404名中、石破派はわずか20名である。安倍総理の出身母体である細田派が99名、麻生派56名、竹下派56名、岸田派48名、二階派44名、石原派12名、谷垣グループ16名、無派閥が55名である。その意味では、前々回の総裁選で地方票では多数派を占めた石破茂氏は、ポスト安倍の筆頭という言い方もできないではない。

◆石破派を排除するメッセージか?

 
自民党総裁選挙2018HPより

ところで、石破派をのぞく6派閥の事務総長が総理公邸に集まったと報じられた。それも5カ月前の総裁選の祝勝会だというのだ。この時期に「祝勝会」とは、何とも意味ありげではないか。この会合で何が話し合われたのかは定かではないが、わざわざ公邸の裏口から入ることでマスコミのチェックを避けている。つまり秘密会合だったのだが、総理官邸・公邸での秘密会合とはすなわち「コソコソと政治工作をしているぞ」という政局を印象づけることにほかならない。マスコミが嗅ぎつけることを想定したうえ、わざと秘密めいたことをしたぞと、耳目を集めるのである。

ここで安倍総理周辺が流したかったのは、参院選および同時に行なわれるかもしれない総選挙において、石破派を排除するというメッセージにほかならない。いささか当方の深読みながら、このメッセージは「党中央に逆らう者は徹底的に排除する」というものであろう。思い出してほしい。自民党内では女性総理候補ナンバーワンと言われる野田聖子の総裁選出馬(推薦人20人が必要)を封じたのも官邸だった。

こうした政治手法は、旧来の自民党にはないものだった。自民党はもともと政治理念ではなく、権力の利権をつうじた利害結合体だが、親分子分の絆によって求心力を維持してきた。そのことは派閥をこえた寛容な体質が、戦後保守政治をある意味では文化として体現されてきた。総裁選が終われば、ラグビーのノーサイドのような雰囲気で、なおかつ清濁併せ呑む気風に支配されてきた。ところが、安倍政権になっていらい、その自由闊達な気風は排除されてきた。

◆政敵を徹底的にイジメる、ファシスト的な手法

ヒトラーが金融独占資本およびドイツ鉄鋼資本との蜜月を深め、国防軍を掌握するさいに、内部の政敵を排除したことを想起してみるといい。ヒトラーはナチス突撃隊のレームを「長いナイフの夜」によって粛清し、党の支配権を確立するとともに、国防軍と突撃隊の対立を暴力的に止揚したのである。銃剣によるものではないが、そんな粛清劇が自民党で行なわれる可能性があるのだ。

小選挙区(擁立者1人)への党公認という伝家の宝刀を使いまくることで、他派閥を従属させ、批判をゆるさない安倍晋三の政治手法は、まさにヒトラーの独裁方法に近いものがある。そしてヒトラーよりもいっそう陰湿な感じがする。

女房役の菅官房長官もまた、官邸記者クラブに望月衣塑子記者(東京新聞)の排除を申し入れるなど、陰湿な独裁者としての素顔を剥き出しにしている。独裁(ヘゲモニー)とは、圧倒的な被支配者の指示によって成立する(アントニオ・グラムシ)政体である。いまやわれわれは自民党の党内政治、政局にも警鐘を鳴らす必要がある。


◎[参考動画]【自民党総裁選】投開票ならびに両院議員総会(2018.9.20)

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

明日2・13 対李信恵第1訴訟(原告鹿砦社、被告李信恵氏)判決! 判決の如何にかかわらず闘いは終わらない! 鹿砦社代表 松岡利康

◆鹿砦社への誹謗中傷が過熱化しつつある中で、これを抑止し会社を守るために提訴しました

明日2月13日は、相次ぐ「鹿砦社はクソ」発言に対して鹿砦社が原告となり、「反差別」運動の旗手とされる李信恵氏を被告として訴えた民事訴訟(大阪地裁第13民事部)の一審判決です。(注・この訴訟から派生し別訴となった訴訟がありますので、便宜的に本件訴訟を「第1訴訟」とし、別訴を「第2訴訟」とします)

鹿砦社が李信恵氏を訴えたのは、とても「反差別」や「人権」を語る者とは思えない汚い言葉を使った李信恵氏による鹿砦社に対する誹謗ツイッターが日々エスカレートし、またこれに付和雷同して彼女の周辺から日増しになされる誹謗中傷を目の当たりにして、会社の経営者としては、せっかく長年(本年50周年!)苦労して継続してきた会社を守らなければならないということからでした。法的手段に訴えても誹謗中傷、罵詈雑言を食い止めなければならない──李信恵氏らは、まさか訴訟に訴えることはないと甘く踏んでいたようですが、さらに過熱化してからでは手遅れになりかねません。もう少し泳がせておく手もあったかもしれませんが、私たちにそんな余裕がありませんでした。

さすがに、提訴を機に、当社への誹謗中傷は、全くなくなったわけではありませんが、鎮静化しました。提訴の第一の目的は果たせました。

◆「反差別」運動の旗手と持て囃される者が汚い言葉を使い、気に食わない者を罵倒していいのか!?

もう一つの目的は、それまでわが世の春のように、みずからが気に食わない人たちに対して、汚い言葉で悪罵を投げつける李信恵氏。いやしくも「反差別」とか「人権」とかいう言葉を使う者が、とりわけそのリーダーとして広く知られる者が、こういう汚い言葉を使う子にこと反省を促すことです。

かの「カウンター大学院生M君リンチ事件」で、李信恵氏は刑事・民事共に法的に免罪され開き直っているようですが、だからといって社会的、道義的に免罪されるわけではありません。李氏はリンチの現場に同座し、M君の胸倉を掴み暴行の口火を切り、一方的に長時間暴行を受けているのに止めもせず、悠然とワインを飲み(それをSNSで流し)、瀕死の重傷を負って倒れているM君を師走の空の下に放置し立ち去った──言葉がありませんし、永久にリンチの連帯責任を免れることはありません。

私たちが懸念するのは、この事件によって、反差別運動、人権運動が、世の人々に誤解され、かつての部落解放同盟による糾弾闘争同様、運動の後退をもたらすのではないか、ということです。

李信恵氏とその周辺の人たちは、「リンチ事件を隠蔽したらよかったのではないか」という倒錯した考えで乗り切ろうとしましたが、マスコミが報じず私たちの力不足もあり、それは表面的には成功したように思えます。

『真実と暴力の隠蔽』グラビアより

◆蟻の一穴でダムも崩壊する!

しかし、私たちが必死の想いで取材し出版した5冊の本は、少なからずの人たちの目に触れ、真相究明はほとんど果たされたと考えています。それまでこのリンチ事件を知らなかった方にこれらの本を送ったら、みなさん大変驚かれました。野田正彰(精神科医)、山口正紀(元読売新聞記者)、黒藪哲哉(ジャーナリスト)、前田朗(東京造形大学教授)の各氏らもご存知ありませんでしたが、知ることになり私たちの営為を理解くださいました。特に前田朗先生は、李信恵氏が対在特会を訴えた訴訟では意見書を出されたそうで、「このような不正義を許してはならない」「C(注・李信恵氏)は非難に値する」「反差別・反ヘイトの闘いと本件においてCを擁護することは矛盾する」「本書が指摘するように、今からでも遅くない。背筋を正して事実と責任に向き合うべきである」(いずれも『救援』2017年8月10日号掲載「反差別運動における暴力」)と怒りを込めて批判されています。

それにリンチの最中の阿鼻叫喚の音声は、聴く者を恐怖に陥れます。この音声は、第4弾本『カウンターと暴力の病理』にCDとして付けられ、また誰がやったのかYou Tubeに流され8万人近くの人たちが視聴しています。リンチ直後の被害者M君の顔写真も併せ、これで「リンチはなかった」などという詭弁が通用するのなら、世も末です。だいたい神聖な対在特会訴訟が終わり集まった支援者がその余韻に浸っている一方で、5軒の飲食店を飲み歩き「日本酒にして1升」(李信恵氏本人の供述)を飲み泥酔する神経が私には理解できませんが、そんな情況で格闘技の達人ら4人の親衛隊を従えM君を呼び出せばどうなるか想像はつかなかったのでしょうか。

まだまだ小さな範囲ですが、蟻の一穴からダムが崩壊するといいます。ソ連崩壊も、ゴルバチョフが開始したグラスノスチ(情報公開)によってなされていったともいいます。私たちの出版の営為は、李信恵氏が守られている巨大なマスコミに対しては「蟻の一穴」にすぎませんが、この「情報公開」が、李信恵氏とその周辺によるリンチ隠蔽を覆すと信じています。

 
代理人の神原弁護士も凄いことを仰いますね

◆「報告事件」に指定されたら絶対勝てない!

ところで、先のリンチ被害者M君が、くだんの李信恵氏らリンチの現場に同座した5人を訴えた訴訟は、勝訴したとはいえ、決して満足のいく内容ではありませんでした。〈歴史的誤判〉と言っていいほど、肝心なところは敗訴でした。行政訴訟は、ほぼ住民側が敗訴します。M君訴訟や本件訴訟で李信恵氏の代理人である神原元弁護士は「正義は勝つ」と豪語しますが、世の中、必ずしも「正義」が勝つとは限りません。例えば、神原弁護士が事務局長を務める植村隆氏(元朝日新聞記者、現金曜日発行人)が氏の従軍慰安婦記事について「ねつ造」とした櫻井よし子氏らを訴えた訴訟、この訴訟では神原弁護士同様、「正義」は植村氏にあると私たちも考えていますが、一審札幌地裁は植村氏敗訴です。

裁判所は、必ずしも「正義」の判決を出すとは限らず、むしろ逆が大半です。これはなに故でしょうか?

 
同上

これについて、ジャーナリストの黒藪哲哉氏に教えていただきましたが、裁判所には最高裁事務総局が指定する「報告事件」というものがあり、「報告事件」に入れられると絶対に勝てない、M君訴訟は「報告事件」ではないか、というのです。これはなにも黒藪氏独自の考えではなく、元大阪高裁裁判官で22年間裁判官を務めた生田暉雄氏が証言するところです(『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』三五館刊)。

明日判決の対李信恵第1訴訟において、被告の李信恵氏は、1度も出廷せず、本人尋問も拒否し陳述書も出しませんでした。これで李信恵勝訴(つまり原告鹿砦社の請求棄却)となれば、M君訴訟と関連する本件李信恵第1訴訟も「報告事件」と言ってもいいかと思います。明日の判決に注目を!(判決は午後1時、大阪地裁1010号法廷にて)

◆いつ風向きが変わらないとも限らない!

 
これは鹿砦社に対するものではないが、李信恵被告の仲間でリンチの現場に同座した伊藤大介氏の発信。怖くて震えるわ!

かつて私たち鹿砦社は、3件の出版差し止め訴訟を闘った対ジャニーズ訴訟や、逮捕・長期勾留・有罪判決、高額賠償金(600万円)を食らった対アルゼ(大手パチスロメーカー。現ユニバーサルエンターテインメント)訴訟の際に、「血の一滴、涙の一滴が涸れ果てるまで闘う」と叫びました。今もその気持ちに変わりはありません。実際に地獄も見ました。それに比べれば、どのようなことも怖くはありません。この歳になって、このような複数の訴訟に関わるとは思いませんでしたが、訴訟は訴訟、仮に訴訟で負けても“本当の勝負”に負けたわけではありません。

私を地獄に落とし鹿砦社に壊滅的打撃を与えた張本人、当時のアルゼの創業者オーナー・岡田和生氏は息子や子飼いの部下らに会社を追われ香港やフィリピンで逮捕されたと報じられ、実際に弾圧を指揮した当時の神戸地検特別刑事部長・大坪弘道検事はのちに「厚労省郵便不正事件」証拠隠滅に連座し逮捕・失職、さらに私に直接手錠を掛けた宮本健志主任検事は深夜泥酔して一般市民の車を傷つけ連行され戒告・降格処分を受け、当時の雇われ社長で警察キャリア、参議院議員を歴任した阿南一成氏も耐震偽装企業との関係で社長解任となるなど、その後不思議と不幸が訪れています。当時、わが世の春を謳歌していた人たちばかりです。「松岡の呪いか、鹿砦社の祟りか」といわれる所以です。一時は苦杯をなめましたが、“本当の勝負”には勝ったと思っています。

李信恵氏らも今は「反差別」運動の旗手の如く持て囃されていても、いつ風向きが変わらないとも限らない、とだけ言っておきたいと思います。それまで私たちの闘いは終わりません!

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!