以下は対李信恵訴訟(第2訴訟。原告李信恵、被告株式会社鹿砦社)において、9月12日に提出した陳述書を、その後の展開を加味し一般用に平たく書き換えたものです。訴訟用の原告・被告という言葉も用いず「原告」を「李信恵さん」と表記し、また被害者も陳述書では本名を用いましたがここでは「M君」と表記しました。この文章は、私がなぜM君リンチ事件支援と真相究明に関わり持続して来たのかという〈原点〉を想起するために書き綴ったといってもいいでしょう。
 
はじめに

私は長年、兵庫県西宮市において「株式会社鹿砦社(ろくさいしゃ。以下当社と表記します)」という出版社を営んで来ている者です。創業は1969年(昭和44年)、1972年(昭和47年)に株式会社化し、1988年(昭和63年)に私が代表取締役に就任し現在に至っております。当社は現在、定期発行雑誌3点(月刊2点、季刊1点)はじめ毎年100点近い新刊雑誌・書籍を発行し、年間売上は直近の決算で約3億円、業界では中堅の位置にあります。東京に支社があります。

私は1951年(昭和26年)生まれ、今年で67歳になりました。本来なら現役を退いてもいい歳ですが、本件集団リンチ問題を知り、この2年半ほど、この問題の真相究明と被害者救済・支援に関わっています。

1 当社の出版物や「デジタル鹿砦社通信」の記事はすべて事実であり、真に「名誉を毀損」され「精神的苦痛」を与えられたのはリンチ被害者のM君であり、李信恵さんの主張は失当です

本件訴訟は、「カウンター」と称される「反差別」運動の、李信恵さんら主要メンバーによる、その一員だった大学院生・M君への集団リンチ事件について、当社が出版した書籍と、当社のホームページ上に掲載している「デジタル鹿砦社通信」の記事に対して、これら書籍の販売差し止めと記事の削除、そしてこれらによって李信恵さんの「名誉を毀損」され「精神的苦痛」を与えたから賠償せよ、というものです。

李信恵さんが挙げている箇所を、あらためていちいちチェックしましたが、記事化されているものはすべて事実ですし、私は真実であると確信いたしました。もともとこれらの書籍や「デジタル鹿砦社通信」において記述する際には、事実関係については入念にチェックしており、万が一誤りなどがあった場合、指摘してもらえれば、いつでも訂正することは常々申し述べているところです。李信恵さん側からきちんとした具体的な誤りの指摘など、これまでありません。

さらには、本件訴訟の以前、このリンチ事件について取材を開始した頃に李信恵さんに電話取材を申し込んだところ拒絶されました。これはみずからが関与したとされるリンチ事件についての申し開きや反論・抗弁を拒否したものと私たちは認識しています。

また、当社の出版物や「デジタル鹿砦社通信」の記述が李信恵さんの「名誉を毀損」し「精神的苦痛」を与えたという主張は、なにをかいわんやです。リンチの被害者のM君は、一方的に殴られ続けましたが、この暴力こそM君の「名誉を毀損」する最たるもので、この肉体的苦痛はもちろん「精神的苦痛」を李信恵さんはいかに思っているのでしょうか。さらに被害者M君は事件後も、李信恵さん、及び彼女の仲間らからネットリンチ、セカンドリンチを加えられることによってさらに「名誉を毀損」され、リンチの後遺症と悪夢に苦しみ、この「精神的苦痛」は、原告が与えられたとする「精神的苦痛」を遙かに上回るものです。

そして、当社が主にマスコミ出版関係者、ジャーナリスト、当社支援者、そしてリンチ事件とこの隠蔽に陰に陽に関係した人たちに献本送付したことに原告は「強い精神的苦痛を受けた」としていますが、当社では、本件に限らず月刊誌や書籍を発行するごとに、各方面にそれ相当の献本送付を行い、意見や批評、批判などを求めています。それが対象となった人に都合の良い記事もあるでしょうし逆もあるでしょう。献本送付は本件に限ったことではありません。献本行為を批判するのは、憲法21条で保障されている「表現の自由」を不当に制限する主張でしかありえません。当社に限らず出版社にとって、献本はごく当たり前であることをライターである李信恵さんが知らないはずはないでしょう。

よって、李信恵さんの主張は失当です。

2 私が本件リンチ事件を知った経緯と、被害者M君を支援する理由

ここで、被告とされた当社、及びこの代表である私が、この問題、つまり本件リンチ事件を知った経緯、被害者M君を支援する理由などを申し述べたいと思います。

一昨年(2016年)2月28日、偶然に時折当社主催の講演会などに参加していた知人から神戸大学大学院博士課程に学ぶM君が、李信恵さんら「反差別」を謳う「カウンター」、あるいは「しばき隊」と称するメンバー5人から受けた集団リンチ事件のことを知り大変驚きました。特にリンチ直後の被害者M君の顔写真とリンチの最中の録音データには声も出ませんでした。今回審理される裁判官含め血の通った人間の感覚を持つ者であればみな、そうではないでしょうか。

そのあまりにも酷い内容からM君への同情と本件リンチ事件への義憤により爾来M君への支援を行なっています。リンチ事件が起きた2014年師走から1年2カ月余り経っていましたが、それまでこのリンチ事件のことを知りませんでした。なぜか一般に報道されなかったからです。いわば“マスコミ・タブー”になっているようです。

そうしたことから、半殺し(M君がラクビーをやっていて頑強な体格でなければ、おそらく死んでいたでしょう)と言っても過言ではない被害を受けたM君への同情とリンチへの義憤により、被害者M君の正当な救済を求めると共に、リンチ事件の真相究明を開始することにいたしました。

まずは被害者M君への聴取と、彼が持ってきた主だった資料の解析です。何よりも驚いたのは、前記したリンチ事件直後の酷い顔写真と、リンチの最中の録音です。暴力団でもあるまいし、今の社会にまだこういう野蛮なことがあるのか――M君の話と資料には信憑性を感じ嘘はないと思いました。私は、この若い大学院生が必死に訴えることを信じることにしました。僭越ながら私も、それなりの年月を生き、また出版の世界でやって来て、何が真実か嘘かの区別ぐらい経験的動物的な勘で判ります。

私の生業は出版業ですので、その内容が公共性、公益性があるものと判断、世に問うことにし、取材に取材を重ね、その具体的成果として、これまで5冊の出版物にまとめ刊行し世に送り出しました。

これまでどれも発行直後から大きな反響を呼び、「こんな酷いリンチ事件があったのか」「言葉に出ない」等々の声が寄せられています。私もリンチ事件を知った直後に感じたことで当然です。

私は、私の呼びかけに共感してくれた人たちと、被害者M君が、李信恵さんら加害者5人によって受けたリンチ事件の内容と経緯を私たちなりに一所懸命に調査・取材し編集いたしました。李信恵さんには取材を拒絶され、加害者の周辺にも少なからず取材を試みましたが、なぜかほとんどの方が全くと言っていいほど答えてくれませんでした。そうした困難な取材の中でも、心ある多くの方々が情報提供などに協力してくださいました。

これまで刊行した5冊の本(本件訴訟で問題とされているのは、そのうちの4冊。5冊目は本件提訴の後に発行したので対象外)で、少なくとも事実関係の概要は明らかにし得たと、私たちは自信を持っています。

取材を開始して間もない第1弾書籍『ヘイトと暴力の連鎖』の頃はまだ事情に精通していないところもあり不十分だったかもしれませんが、第2弾、3弾と出す内に内容の密度も濃くなっていったと思います。特に第4弾、第5弾は外部(加害者周辺の人たちも含め)から高い評価を受けています。しかし、加害者やこの周辺の人たちからは、反論本の1冊もなく、具体的な反論どころかネット上で、ただ「デマ本」「クソ記事」といった悪罵が投げられるのみです。

加害者のひとり李信恵さんと本件訴訟代理人のひとり上瀧浩子弁護士は最近、共著で『黙らない女たち』という書籍を出版されましたが、リンチ事件についての謝罪や反省、あるいは上記5冊の本への言及や反論はありませんでした。「黙らない」でリンチに謝罪や反省の言葉を、また私たちの本への言及や反論を行ってください。
加害者らがあれこれ三百代言を弄し弁明しようとも、この5冊の本で示した内容を越えるものでない以上、社会的に説得力はないと思います。

3 M君への集団リンチ事件について私が思うこと

ところで、事件当日(正確には前日から)リンチに至るまでに、李信恵さん本人自ら供述しているように、あろうことか、キャバクラをはじめとして5軒の飲食店を回り、日本酒に換算して1升ほどの酒を飲み酩酊状態だったということです。全く理解できません。李信恵さん本人が言うのですから間違いないでしょう。

事件の詳細は5冊の本に譲るとして、私が特に申し述べたい概要を記載してみます。――

① これは集団リンチですから、関わった全員に連帯責任があることは言うまでもありません。李信恵さんだけが免れえることはありえません。

② その中でも中心的首謀的立場の李信恵さんの責任は他の誰よりも重いでしょう。首謀者は、他の4人の誰でもなく、あくまでも李信恵さんの他に考えられません。

③ M君が、呼び出されて李信恵さんらが待つワインバーに到着するや否や、李信恵さんは「なんやねん、お前! おら」と胸倉を摑み一発殴り(このことはエル金も認めています)、のち約1時間に及ぶリンチの口火を切りました。胸倉を摑んだことは一審判決でも認め、突然のことで混乱したM君が平手なのか拳骨なのかの記憶が曖昧なことで、遺憾ながら大阪地裁はM君の主張を信用できないとしました。

④ 主にエル金による連続的暴行を傍目に悠然とワインを飲んでいた神経が理解できません。

⑤ リンチの途中で、これは有名になっていますが、「まぁ、殺されるんやったら店の中入ったらいいんちゃう?」と言い放っています。普通だったらリンチを止め介抱するのではないでしょうか。酩酊してまともな感覚が失せていたのかもしれませんが、一方的に殴り続けられているM君が死ぬことも想定していての言葉としか思えません。

⑥ 約1時間に及ぶリンチののち、師走の寒空の下に重傷を負ったM君を放置し立ち去っていますが、人間としての良心の欠片も見えません。

こうしたことだけを見ても李信恵さんの刑事、民事上の責任は免れません。

また、これだけの凄惨な集団リンチの現場に居合わせ関与していながら、李信恵さんは刑事、民事共に罪も責任も課せられてはいません。本件集団リンチ事件の中心にあったのが李信恵さんだと思慮されることを想起するに不可解と言う他ありません。かつて日本中を震撼させた、いわゆる「連合赤軍リンチ事件」において首謀者永田洋子は、みずから手を下さず輩下に殴らせ多数の死者を出し死刑判決を受けています。事件の規模は違いますが、リンチの現場の空気を支配し、誰が見ても中心人物、主犯と見なされる李信恵さんが、なんらの罪や責任を問われないのは到底理解できるものではありません。実際に殴られ血を流した被害者M君は尚更でしょう。

裁判所におかれましても、私たちがみずから足で回り額に汗して取材してまとめた、この5冊の本に記述された事実と内容も踏まえた審理をされることを強く望み、裁判所の良心を信じ妥当な判断が下されるものと信じています。

4 被害者M君が心身共に受けた傷を蔑ろにし開き直る、集団リンチの加害者で中心人物の李信恵さんの言動は許せません

被害者M君が心身共に受けた傷は、リンチ直後の顔写真に象徴されています。裁判官も、この写真をご覧になったら驚かれるでしょうし、逆に何も感じないとしたら、もはや人間ではないと断じます。人間として失格です。さらにリンチの最中の音声、聴くに耐えず、言葉を失います。ぜひお聴きください。

被害者M君は、リンチ以降、この悪夢に苦しみPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩んでいるといいます。本人にしかわからない苦しみでしょうが、私たちにも一定程度は察することができます。しかし、あろうことか、これだけの傷を受けていながら未だ1円の治療費、慰謝料も受け取っていませんし、事件後も引き続きネットリンチ、セカンドリンチを受けてきました。酷い被害写真のコラージュまで作られ回されています。

また、李信恵さんは、いったんは「謝罪文」を寄越し(たとえ形式的、ヌエ的ではあれ)反省の意思を表わしていながら、突然それを覆し「リンチはなかった」「無実」と開き直り、これに異議を唱えると、後述しますように、「鹿砦社はクソ」とか誹謗中傷を行っています。これは私たちに対しだけでなく、李信恵さんに異議を唱える者すべてに対してです。

李信恵さんの、人間として到底考えられない言動に真摯な反省を求め、そして、これだけの酷いリンチと、その後の事件隠蔽やセカンドリンチ、ネットリンチを受けているM君の名誉回復がなされなければなりません。常識的に考えて、リンチ直後の写真やリンチの最中の録音を目の当たりにしたら、「リンチはなかった」とか、加害者で中心的首謀的立場にあった李信恵さんが「無実」とは考えられず、まともな人間としての感覚があるならば、非人間的で酷いと感じるはずです。そうではないでしょうか?

裁判所が「人権の砦」であり、裁判官も血の通った人間ならば、そうしたことは当然理解されるものと信じています。

5 李信恵さんによる相次いだ「鹿砦社はクソ」発言に対して、やむなく民事訴訟を起こしました

前述しましたように、李信恵さんら加害者らは、彼らと繋がる者たちと連携し、被害者M君や、彼を支援する人たちに対して、あらん限りの罵詈雑言、誹謗中傷を続けています。

例えば、M君の後輩の同大大学院生は母子家庭で、先輩が酷いリンチにあったということで支援していたところ、名前や住所をネット上にアップされたり執拗に攻撃され、お母様に累が及ぶことを懸念し表立った支援を差し控えたといいます。

また、四国で自動車販売会社を経営しM君支援を行っておられる合田夏樹社長に対しては、国会議員の宣伝カーで自宅まで押し掛けられたり、娘さんが東京の大学に進学し一人暮らしを始めたところ、近くのコンビニなどから住所を突き止め暴くぞと恐怖を与えたりしています。

さらに、やはりM君を支援する作家の森奈津子さんには、「森奈津子にネットでいやがらせして鬱病に追い込もう」とか「こんな奴は潰さんとダメだろ」とか「森奈津子さん大便垂れ流していますよ」とか、さらには、森さんは乳がんで片方の胸を摘出されていますが、「正気かどうかも保証されてない病人」と揶揄してみたり、とても「反差別」や「人権」を語る者がやることとは思えません。

M君を支援する当社に対しても、「鹿砦社はクソ」「クソ鹿砦社」とか「鹿砦社、潰れたらええな」「下衆」「害悪」「ネトウヨ御用達」などと李信恵さんや彼女の仲間らはこぞって誹謗中傷を行ってきました。遺憾なことです。

あまりにエスカレートしつつあり、当社としても取引先に悪影響を与える具体的な懸念が生じたため、そうした誹謗中傷を抑止する目的もあって、株式会社鹿砦社を原告として李信恵さんに対して民事訴訟(大阪地裁第13民事部 平成29年(ワ)第9470号。第1訴訟と記します)を起こし損害賠償金300万円と謝罪を求め現在係争中です。本件第2訴訟は、本件原告の李信恵さんが当初上記第1訴訟の反訴として起こし、それを取り下げ、その後別訴として併合審理を求め提訴したものが却下されたものです。

さて、李信恵さんのツイッターの一部を引用してみましょう。――

2017年7月27日 「鹿砦社はクソですね。」

同年8月17日 「しかし鹿砦社ってほんまクソやなあって改めて思った。」

同年8月23日 「鹿砦社の件で、まあ大丈夫かなあと思ったけどなんか傷ついてたのかな。土曜日から目が痛くて、イベントの最中からここに嫌がらせが来たらと思ったら瞬きが出来なくなった。」

同日  「鹿砦社の人は何が面白いのか、お金目当てなのか、ネタなのかわかんないけど。ほんまに嫌がらせやめて下さい。(中略)私が死んだらいいのかな。死にたくないし死なないけど。」

同日  「クソ鹿砦社の対立を煽る芸風には乗りたくないな あ。あんなクソに、(以下略)」

同日  「鹿砦社からの嫌がらせのおかげで、講演会などの  告知もSNSで出来なくなった。講演会をした時も、問い合わせや妨害が来ると聞いた。普通に威力業務妨害だし。」

同月24日  「この1週間で4キロ痩せた!鹿砦社の嫌がらせで、しんどくて食べても食べても吐いてたら、ダイエットになるみたい。」

李信恵さんの発言に頻繁に見られる「クソ」という言葉が、対象を侮蔑する際に用いられることの多い、公的な場面では用いられることのない、品性を欠く表現であることは一般常識です。李信恵さんは「クソ」という言葉を「論評」などと評価しているようですが、「クソ」だけを用いた「論評」など目にしたことがありません。「差別」に反対し「人権」を守ると公言し、多数の人たちの支援を受けている人間が使うべき言葉ではなく、品性に欠けることはもちろん、当社に対する強い悪意を持ってなされたものであることが明瞭です。

しかも、2018年9月1日現在で1万3,818ものフォロワー数を持ち(ちなみに当社の「デジタル鹿砦社通信」ツイッター版は3分の1の3,412にすぎません)、マスメディアによって「反差別」運動における一定の社会的評価を得ている李信恵さんがかかる表現を用いたということ自体、影響力は大きく、当社に対する刑事、民事上の各名誉毀損行為に該当すると言わざるを得ません。

私や当社、あるいは当社関係者が、李信恵さんに対して「嫌がらせ」や「(威力業務)妨害」など行った事実などありませんし、また当社やこの関係者の「嫌がらせのおかげ」で「講演会などの告知もSNSで出来なくなった。」とか「しんどくて食べても食べても吐いてたら、ダイエットになる」とか「イベントの最中からここに嫌がらせが来たらと思ったら瞬きが出来なくなった。」などの発言は、いずれも李信恵さんの一方的な言い掛かりであり、根拠のない牽強付会なものです。当社に対する名誉毀損の程度は、マスメディアで持て囃される「差別と闘う旗手」によってもたらされた「お墨付き」の言葉として大きな影響力を持って拡散されました。甚だしく遺憾です。

6 李信恵さんはリンチ事件の中心人物として適正に刑事・民事責任を問われるべきです

考えてもみましょう、真に差別に反対し人権を守るという崇高な目的をなさんとするならば、まずは脚下照顧、率先垂範でみずからが犯した過ちを真摯に反省し、集団リンチ被害者のM君に心から謝罪することから始めるべきではないでしょうか。人間として当然です。それなしには、いくら「反差別」だとか「人権を守る」とか公言しても空語、空虚ですし、「反差別」を錦の御旗にすれば何をやっても許されると考えている節もあり遺憾です。

特に加害者のリーダー的存在の李信恵さんは、在特会らネット右翼に対する2件の差別事件訴訟の原告となり勝訴しマスメディアによって大々的に報道もされていますが、裏ではこのような集団リンチ事件に関わっているのです。在特会らネット右翼の差別行為を批判する前に、まずはみずからを律すべきではないでしょうか。

これだけの厳然たる事実が明らかになりながら、リンチ直後に出した「謝罪文」を覆し、未だに開き直っていることは驚きです。加害者で中心的首謀的立場の李信恵さんがまずなすべきことは、血の通った人間として被害者M君への真摯な謝罪ではないでしょうか。このためにも、李信恵さんの「不起訴」と、被害者M君が李信恵さんら加害者5人を大阪地裁に提訴し李信恵さんに責任を課さなかった民事訴訟判決は、一般人の感覚、世間の常識からは著しく乖離しています。刑事責任も民事責任も当然あるというのが一般人の感覚、世間の常識でしょう。M君は民事、刑事ともに判決・決定を不服として、民事については大阪高等裁判所に控訴しましたが、賠償金はアップしたものの内容に不満の残る判決でした(直ちに最高裁に上告しました)。また刑事については、大阪第四検察審査会に不起訴不当の申立てを行いましたが、遺憾ながら不起訴相当の議決でした。刑事、民事共に検察、検察審査会や裁判所の判断は、将来に禍根を残すことを強く懸念いたします。

7 安易に出版や販売の差止めを求めるべきではありません

李信恵さんは鹿砦社が出版した出版物に対し、販売の差止めを求めています。また、当社のホームページで日々展開している「デジタル鹿砦社通信」の一部記事の削除も求めています。

周知のように日本国憲法21条は「表現の自由」「言論・出版の自由」を高らかに謳っています。民主主義社会にとって「表現の自由」「言論・出版の自由」は必要不可欠なものです。万が一差止めがなされるのは、その出版物や表現物に高度の違法性があり、差止めなければ名誉毀損やプライバシー侵害等の被害が拡大するという強度の緊急性がなければならないことは言うまでもありません。

李信恵さんは、みずからにとって不都合な表現や言論、出版に対しては妨害したり隠蔽したりする傾向にあるようです。

「言論には言論で」という言葉があります。李信恵さんは、出版物の販売の差止めを求めたりするのではなく言論で対抗、反論すべきです。李信恵さんも、代理人のお二人の先生も著書を出されていますので、出版物を出せる環境にありますし、実際に出せると思います。李信恵さんらは出版物で堂々と反論することを強く望みます。

8「人間の尊厳」や「人権」に反するM君リンチ事件の〈真実〉を知れば、言葉に表わせないほど酷いと感じるでしょうし、裁判所の公平、公正な判断に期待いたします

ところで私事に渡りますが、私は、縁あって2015年4月から2年間にわたり関西大学で「人間の尊厳のために~人権と出版」というテーマで教壇に立たせていただきました。このリンチ事件と、その後の加害者李信恵さんらの言動、また被害者M君への不当な扱い(=ネットリンチやセカンドリンチ)は、まさに「人間の尊厳」も「人権」も蔑ろにしたものと断じます。

私は学生に「人間の尊厳」や「人権」を教える時、普段いくら机上で立派なことを言っても、「人間の尊厳」や「人権」に関わる現実に遭遇した場合、みずからが、いかに対処するかで、あなた方一人ひとりの人間性が問われると話しました。「人間の尊厳」や「人権」は、「死んだ教条」ではなく、まさに〈生きた現実〉だからです。

普段立派なことを言っている人たちが、このリンチ事件の現実から逃げ、語ることさえやめ、ほとんどが沈黙しています。こういう人を私は〈偽善者〉と言います。くだんの5冊の本に、リンチ事件(と、その後の隠蔽)に陰に陽に、大なり小なり、直接的間接的に関わっている人たちの名が挙げられ、質問状や取材依頼を再三送りましたが、全くと言っていいほどナシの礫(つぶて)です。その多くは、この国を代表するような、その分野で著名な人たちです。公人中の公人たる国会議員もいます。良心に恥じないのでしょうか?

私も偶然に、このリンチ事件に遭遇しましたが、学生に「人間の尊厳」や「人権」を話したのに、実際に「人間の尊厳」や「人権」を蔑ろにする事件を前にして、みずからが日和見主義的、傍観者的な態度を取ることは決して許されないものと考え、このリンチ事件の真相究明や、被害者M君の救済・支援に関わっています。

このように、「人間の尊厳」や「人権」について学生に教えた私にとっては、それが言葉の上でのことではなく、その内実を問う、まさに〈試金石〉だったのです。

おわりに

「反差別」を謳う「カウンター」といわれる運動内部で、その中心的なメンバーである李信恵さんらによって起こされた、M君に対する悲惨な集団リンチ事件について私の率直な意見を申し述べさせていただきました。

李信恵さんが今まずなすべきことは、みずからが関与した集団リンチ事件についての真摯な反省であり、かつ被害者M君への心からの謝罪であり、そう考えると、李信恵さんによる本件第2訴訟は、そうしたことが垣間見れず、まさに〈開き直り〉としか思えません。

李信恵さんらによる集団リンチ事件は、私たちが取材、調査、編集、出版した5冊の出版物で多くの方々に〈公知の事実〉として知られるに至っています。特に、第4弾『カウンターと暴力の病理』に付けられたリンチの最中の音声(CD)と巻頭グラビアのリンチ直後のM君の顔写真は強い衝撃を与え、多くの方々がM君に同情と救済の声を寄せてくださっています。

このように多くの方々が多大の関心を持って2つの対李信恵訴訟の審理の推移と結果に注目されています。多くの方々がリンチ事件の内容を知り注目しているのです。裁判所が公正、公平な判断をなされなかったら、リンチ事件を知る多くの人は「人権の砦」という看板に疑問を持ち信頼が揺らぐでしょう。

裁判所は、当然ながら軽々な審理を排し、公正、公平なご判断をなされるよう強く要望してやみません。

李信恵さんの請求は当然のことながら棄却となることを信じてやみません。

これまで申し述べた内容を盛り込み私の「陳述書」として提出させていただきます。

【追記】

9月12日の本件訴訟の準備手続きにおいて、私は急病で出席できませんでしたが、私方が準備したリンチ本5冊の提出が「邪魔」だとして拒絶されました。証拠資料の原本の提出が「邪魔」だとして拒絶されるなど聞いたことがありません。多くの元裁判官や弁護士の方々も首を傾げておられました。私も「おかしいな」と思っていたところ、この担当裁判官が、李信恵さんが訴えた在特会らに対する民事訴訟で李信恵さん勝訴の判決を下した裁判長だったことが判明しました。フェアではないですよね? 幸いに突然京都地裁に異動になりましたが、そのままこの訴訟の裁判長としてあり続けていたら、どのような結果になったかは言わずもがなでしょう(この件、11月2日付け「デジタル鹿砦社通信」参照)。なお、対李信恵第2訴訟(第24民事部)の次回弁論期日は11月14日(水)午前11時30分からです。

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松岡 お疲れ様です。M君裁判の高裁判決からまだ日も浅いですが、本日はこのかんの動きについて話し合ってみましょうか。

◆M君リンチ事件控訴審判決以後の動き

A  M君控訴審判決は複雑ですね。でも、はっきりしておかなきゃいけないのは、M君が勝訴したという事実ですね。もちろん、判決内容に不満はあるにせよ、賠償金額が113万円超に増額されました。このことはキッチリしておくべきでしょう。

B  しかし判決直後から、判決文にも目を通さないで、東京新聞の佐藤圭記者や、中沢けい、例によって香山リカなどが素っ頓狂な発信をしてましたね。

C  あれは非常に無責任で、知識人(仮にあの人たちがそうだとすれば)には、考えられない行為ですね。

D  彼ら得意の「印象操作」だね。ここ数年もう嫌というほど見せられてきた。嘘を平気で発信する。中学生や子供じゃないんだから、最低限言論のルールは守るべきなんだけど、そのあたりの常識がもはや通用しないのが、彼ら・彼女らだと見ています。

A  判決の日にM君は上告を決めましたね。あの判断は早かったですね。弁護団や支援会の中で議論はなかったんですか?

松岡 それは明かせません。けれど「1%でも可能性があるのであれば最後まで闘おう」と最後は全員一致で決まりました。もちろんM君の意思が最優先されたことは、言うまでもありません。

D  一つ紹介しておきたいんだけど、判決後の報告集会に、凛七星さんが来て発言されたんだ。泣いてたよ。「デジタル鹿砦社通信」でも紹介したけど、そのときに「凜さん、今の心境を短歌に詠んでくれませんか」とお願いしたんだ。凜さんから3首頂いたから紹介します。

過ちも 愚かさもなお 繰り返す 世と縁切れず 酒酌むわれは

情熱と 幻滅の間で 灰色の 街に正義は きょうも闊歩す

十三夜 おもいもよらぬ 声を聴き 月の曇れる 空を眺めり

A  奥深いですね。

B  凜さんには感謝ですね。

◆鹿砦社元社員・藤井正美に「通告書」送付、神原弁護士を代理人として無味乾燥な回答

D  ところで社長、もうあの件は公表してもいいんじゃないですか?

松岡 そうですね。『カウンターと暴力の病理』は事件音声のCD付きで販売して、それが注目を集めましたが、鹿砦社にとっては重大な“事件”についても詳細なレポートを掲載していました。

A  あ、鹿砦社元社員の藤井正美ですね! 業務中にツイッターや私的メールに励み、企業・団体恫喝もしていた…。

松岡 藤井正美さんは、仕事をさぼって膨大な時間、ツイッターをやっていたり、企業・団体恫喝をしていたことは証拠があります。ツイッターに膨大な時間を費やしていたことはわかっていましたが、企業・団体恫喝や、「M君リンチ事件」隠蔽の中心的役割を業務時間中にやっていたことなどは、わからなかったんです。ですから、退職金やボーナスまで支給して会社を辞めてもらいましたが、会社が被った損害が並大抵ではないことがわかりましたので、損害賠償として3千万円支払うように、弁護士を通じて「通告書」を出しました。

B  藤井は誠意ある回答をしてきたんですか? あそこまで証拠が挙げられていたんじゃ、なんの抗弁もできないでしょ?

松岡 ところが、返答の締め切り期間近くになって、ある弁護士から連絡がありました。

A  ある弁護士って、まさか神原弁護士じゃないですよね?

松岡 その通りです。

A、B、C  えっ!!

松岡 神原弁護士から、喧嘩を売るような誠意のない回答が鹿砦社の弁護士に届きました。

A  もし、ですよ。もし俺が藤井の立場なら、絶対に神原弁護士にだけは依頼しませんよ。だって「いまだにしばき隊です!」って再宣言しているようなもんじゃないですか。

松岡 私もびっくりしました。こちらとしては、企業恐喝もどきのことが明らかになった以上黙っているわけにはいきませんよね。でも、血の通った人間らしく、ちゃんとした対応をしてくれれば、穏便に済まそうと思っていましたが、神原弁護士が送ってきた文面には、奇妙な決めつけもあり(弁護士法に抵触する可能性あり)、再度弁護士を通じて藤井さんには通告書を送り回答を待っているところです。

B  腰抜かしかけたよ。なに考えてるんだろうね。

C  藤井の行状の数々には「証拠」が山ほどあるんだけどなぁ。

D  まあ、様子見ですかね。でも、いつまでも「好々爺」が続くとは思えないんだよね、俺には。社長「棺桶に半分足突っ込んだ」(藤井にそう評された)身としてはどうします?

松岡 さあ、粛々と処理するだけですね。

A  あえて左翼用語を使うか、黙んまりが常の社長が「粛々と処理」って、かえって怖いな…。

B  いやはやまた注目事件が破裂しそうですね。

◆鹿砦社対李信恵訴訟の1つ(大阪地裁第13民事部)に李信恵さんの出廷が決定! しかし逃げを打とうと画策か!?

松岡 藤井さんの件はさておき、鹿砦社が李信恵さんを訴えた裁判、10月31日の弁論で、てっきり結審になると思っていたら12月12日に、私と李信恵さんの証人調べが行われることが決まったのもニュースですね。このことを当日(31日)夕方、早速ツイートしたところ、当日出廷した上瀧浩子弁護士や李信恵さん自身からは何のリアクションもなく、2日夜になって当日出廷しなかった神原元弁護士から「緊急訂正」として「鹿砦社と李信恵さんの訴訟について、12月12日の法廷に李信恵さんが出廷するということはありません」とのツイートがありました。おかしいですね、裁判所も、3人の裁判官がわざわざ退席し法廷外に出て合議、双方の意見を聞いて期日と尋問の時間配分を設定したにも関わらず、今さら出廷しないなどと言うことに驚きます。出廷しないということなら李信恵さんは不利になるだけですし、李信恵さんもここは堂々と法廷で「鹿砦社はクソ」と主張したらいいでしょう。

D  でもね、これに関してはちょっと気になる部分があるんです。こちら側は証人申請していたでしょ。被告側は上瀧浩子弁護士が「原告の尋問が行われるのであれば、こちらも申請します」と、たしか発言してました。当日神原弁護士は来ていなかったからね。あとになって「証人の申請をしない」という手で逃げる可能性はないか、と。

松岡 もしそうであれば、いったんは法廷で申請すると言ったことの撤回ですし、裁判所もわざわざ尋問するということで期日を入れたわけですから、法的にどうのこうのではなく「逃げた」と見なされて仕方ないでしょう。

D  そう。法解釈はともかく、素人には「逃げた」としか見えないね。

B  社長、被告で尋問されることはたくさんあっても、原告の本人尋問って初めてじゃないですか?

松岡 失礼なこと言わないで下さい。私はこれまでも原告で何度も本人尋問の経験があります。銀行を訴えた、ある裁判では、「(郷里の熊本弁で)なんば言いよっとか!?」と資料を放って大声を出したこともありました。

B  そうでしたか、失礼しました。

C  いずれにしても12月12日は注目ですね。

A  李信恵出廷となると、連中はまた全国動員かけてくる可能性ありますね。50代のネット荒らしや、どうかしちゃった会社役員、その筋の人みたいな外見のあの人も来るかもしれない。

松岡 法廷闘争では今年最後の大舞台になりますね。

D  この裁判は12月12日で結審、来年3月までには判決でしょう。

◆もうひとつの対李信恵訴訟(第24民事部)をめぐる奇妙な転回と今後の方向性

A  それから、もう一つの対李信恵訴訟で、こちらが提出しようとしたリンチ本の原本5冊を裁判長が「邪魔」と言って拒絶し持ち帰らされた一件はひどかったですね。

松岡 私はその数日前に急病が発症し、当日は行けなかったのですが、悔しさとともに、「なにか変だな」と思っていたんですね。その裁判長、実は李信恵さんが在特会らを訴えた訴訟で李信恵勝訴の判決を下した人だということが判明して、「ああ、そうだったんだ」と“得心”がいきました。そのままではまた李信恵勝訴の判決を下すことは火を見るよりも明らかですが、幸いと言おうか、その担当裁判官、増森珠美裁判長は、年度末でもなく、また月の途中(10月22日付け)で京都地裁に異動になりました。100人以上もいるとされる大阪地裁の裁判官の中で、なにか"動き”があるのでしょうか。

D  それはそうと、社長、"あの件“はどうされるつもりですか?

松岡 どの件ですか?

D  ほら、例のいったん“沈没”したあの人の…。

松岡 その公表は、まだ先にしましょう。

A  「まだ弾は残ってる」ってこの間社長書いてましたけど、どれだけ残っているんですか? 

D  秘密に決まってるだろ。俺が代わりに答えよう。こっちが弾を撃って弾倉が空になりかけると、どこからともなく次々に新しい弾倉が持ち込まれるんだ。「弾は尽きない」ってことだよ。李信恵さんにしろ野間にしろしばき隊の連中にしろ、社長を見くびっていたかもしれないけど、このところすっかり相手にしないじゃない(笑)。俺は関係してなかったけど、昔の話とはいえ、一時は「暴露本出版社」として世にその名をとどろかせた鹿砦社。やはりここは「暴露本出版社」として昔の勢いを取り戻してほしいところですね(笑)。

松岡 ノーコメントです(苦笑)。「ペンのテロリスト」などと嘯いていた、あの頃の元気はありませんよ。私はあくまでも、この事件がひどすぎて、人間として許せないということでやってきただけです。私は一貫して言っているように、李信恵さんらがM君に公に心から謝罪して、それ相応の金銭的な償いなどをやってくれるのであれば、和解に向け汗を流させてもらいますよ。それどころか、最近エル金などは、左翼体験者は私しかいないのでおそらく私に向けて言っているものと思いますが、「極左ゴロ」などと詰(なじ)って、この期に及んでも喧嘩売っていますよね。若い頃だったら、「誰に向かってもの言うてんねん!」てなもんですが、もう「棺桶に片足突っ込んだ爺さん」ですからね(苦笑)。

ついでなので、最後に一言。M君リンチ事件は、この国の反差別運動にとっても社会運動全体にとっても最大の汚点です。今のまま反省もなく開き直っていれば、将来陰に陽に悪影響を与えます。今はマスコミタブーとして、また李信恵さん周辺の国会議員やジャーナリスト・大学教員・知識人らによって隠蔽されていても、必ず将来的には歪みが出てきます。それでは遅いんです。私たちの力は微力で、私たちの力では、この5冊の本ぐらいしか出せませんでしたが、それでも理解してくださる方はおられました。

比較の対象として適格かどうかはともかく、ゴルバチョフがペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を始めた時、その後のソ連崩壊やベルリンの壁崩壊につながるとは誰も想像しませんでした。蟻の一穴からダムが崩壊することもあるんです。昔風に言えば、「小さな火花も荒野を焼き尽くす」と言おうか、私たちは今は「小さな火花」にすぎませんが、やがては「荒野を焼き尽くす」ことができると信じています。ちょっとアジ調になりましたが…。

C  特別取材班のメンバーが数人入れ替わって、前以上に意思統一が簡単になりましたね。

D  「原則的に行く」と。差別問題でも言論戦でも。おっちょこちょいや、付和雷同はそぎ落としたからね。まあ引き続き頑張りましょう。

松岡 皆さんよろしくお願いします。

(鹿砦社特別取材班)

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政府は11月2日、入管法(「出入国管理及び難民認定法」)を改正し、新たな在留資格を作り出し、単純労働も含めた幅広い分野での、外国人労働者受け入れに本腰を入れ始めることを閣議決定した。その一方で安倍晋三は「これは移民ではない」と本音を述べている。

日本の人口は着実に減っている。ここ数年、政府発表では毎年40万人余りの減少とされているが、民間の調査では「死者数が意図的に低く算定されていて、実際の人口減は100万人に迫るのではないか」との報告もある。どちらにせよ、日本は急激な人口減、そして経済第一主義者たちにいわせれば「労働人口の不足」に直面している。


◎[参考動画]入管法改正案を閣議決定 2種類の新たな在留資格(ANNnewsCH 18/11/02)

◆有効求人倍率が史上最高に近い値を記録した理由

他方で有効求人倍率が史上最高に近い値を記録している。有効求人倍率は「有効求職者数に対する有効求人数の比率」をあらわすが、その数値はあくまでも職業安定所(ハローワーク)で算定された数字である。

お時間がある方は一度最寄りの職業安定所に出向いて、求人にはどのような条件の職業が並んでいるかをご覧になると、「有効求人倍率」がどうしてこのように高いのかがお分かりいただけるであろう。

職業安定所で閲覧できる求人情報のなかに、月収20万円以上の手取りを保証するものは決して多くない。公的機関である職業安定所が紹介する求人情報であるから、最低賃金などはクリアしたものばかりだ。

だが、その中で将来にわたり、家庭を持ち2人の子供(「標準家庭」と政府は定義していた)を育てられる給与を保証する求人は、多数ではない。簡単に言えば「これだけ働いてこれだけの給与では割が合わない」と求職者が感じてしまう求人情報が多いがために、応募へとは至らず、結果として有効求人倍率が上昇する現象を生じさせている、といえよう。

「無職のくせに仕事の選り好みなんてするな」、「そんな贅沢を言っているからいつまでたっても定職につけないんだよ」と求職者を非難する声が、陰に陽に聞こえる。だが、片方ではなんだかわからないカタカナ名の会社で、怪しげな金融商品を右から左に売ったり、企業を売り買い(M&A)して、20代や30代でも身体ではなく、情報と指先で年間数億円の稼ぎを得る人間がいることを、求職者たちは知っている。

◆企業の利益と労働者の利益に連動しない仕組みづくり

また、破格の好景気といわれながら、その好況感の波及範囲は大企業にのみとどまり、中小企業には全く好況感が実感されない。その現実は職業安定所の求人条件を見れば手に取るようにわかる。大企業においてだって、下手をすれば「過労死」に追い込まれかねない。

つまり企業の利益が労働者の利益に、まったく連動しない仕組みが組み立てられてしまい、職業安定所に持ち込まれる求人の多くには、求職者にとって魅力を欠いていることが有効求人倍率上昇の理由である

このようないびつな構造を成立せしめた原因はいくつもあるが、なかでも「社会保障目的税」という嘘八百、当初3%で導入され、嘘の上塗りで現在8%、近く10%に引き上げられようとしている消費税の罪を指摘しなければならない。消費税はほかのどの税金よりも「逆進性」(富裕層には穏やかで、低所得層に厳しい)の強い「悪税」である。

消費税はどんどん引き上げられるのに対して、所得税の累進税率や法人税は著しく引き下げられてきた。

簡単に言えば「大企業や金持ちの税金は減って、低所得層への課税が増している」のが現在の日本税制である。さらに「労働ビッグバン」という名の「雇用ルールにおける労働者の権利排除」により、雇用主はほぼ好き勝手に労働者を、雇用主が希望する形で雇用することが可能となった。言い換えればプロレタリアートはブルジョワジーによって、雇用形態に関する限り、ほぼすべての権利を奪われてしまったのが今日の姿である。

ところが大企業にしたところで、明確な未来図を描くことはできない。差し当たり今期、あるいは来年、もしくは5年程度の将来に対する基本計画しか描けない。なぜならば、おおよそ10年先にはほぼ確実に日本という国家は、財政破綻で破産する(国債の償還が不能になり予算が組めなくなる)からだ。

国家の破綻を前提に企業が将来像を描けるはずはないのだ。「破局」はほぼ確実であるのだが、この重大な事実を凝視しようとするひとが不思議なほど少ない。読者諸氏におかれても、この事実はしっかりと踏まえられておくべきであろう。これまで経験したことのない、経済の大クラッシュは必ずやってくる。

◆破格の入管ハードル下げ

だが、そこまで行く前に、目前の課題となるのは、現状の成長至上主義が放棄しない限り、「圧倒的な(単純)労働力不足」である。「AIの進歩によりこれからは経理事務の人材が大幅に不要になる」などと、相も変わらず「科学技術進歩盲心者」は的を外れた予想の中に、未来を想定せよと迫る。演算速度高速化による「AI」と呼ばれるテクノロジーは社会の諸相に幾分、影響を与えるかもしれないが、もっとも深刻な「労働力不足」への根本的な回答とはなりえない。

そんなことを政権は先刻ご承知であるので、これまで「どうしてそこまで嫌がらせをするのか」と思えるほどに、ハードルの高かった外国人の日本入国ハードルを破格に下げようとしているのだ。「出入国及び難民認定法」はこれまでも何度も改定されてきたが、その節操のなさは関心を持つ人々の間で長年批判されてきた。

ノービザ(実際には入国時ビザ発給)で渡航できる国々の人と、「短期滞在」であっても事前にビザを取得しておかなければ日本に入国できない人との間には、大きな「差別」が存在する。それも国によって「短期ビザ」ですら発給の困難度合いが異なる。たった数日の訪日のために10数種類の書類を用意し、事前に入国管理局や、当該国の日本大使館、領事館にビザ発給を求めなければならない国までもが存在する。

◆「安価で使い捨て可能」な外国人労働に人権や国際主義などの配慮はない

また最近は研修生として多数の外国籍の人々が来日し、実質的には労働に従事している。20年ほど前に同様の減少が大学、専門学校などで学ぶ「留学生」(当時は「留学生」と「就学生」に分かれていた)で発生したことがある。

1980年代に貿易黒字の過多で、国際社会から叩かれた日本は「留学生10万人計画」(2000年までに留学生を10万人受け入れる)を打ち上げた。種々困難はあったものの、「留学生の数を増やす」とのなんとも安直な目標は、文科省による各大学への有形無形の強制や、留学生への奨学金のバラマキなども追い風になり、数自体は増加をみた。

しかしその裏で「留学ビサ」を取得するのには当初相当な困難が伴った。形ばかりの身元保証人を用意し、銀行の残高証明書にはじまり、あきれるほどの無意味な書類を用意してようやく「留学」(あるいは「就学」)ビサ獲得に至る。日本に来る前に「身元保証人」になってくれるような知人・友人がいる人は稀だから、保証人のかなりの数は金で買われた(要請された)人々だった。

そんな人が万一の際に何かの保証をしてくれるだろうか。当時まだ今ほど経済大国ではなかった中国で100万円近い預金残高を持っている人など実在するのか。と思いながら、それでも入国管理局の言う通りに、煩雑なビザ取得作業を重ねていたら、ある日法務省から通達が来た。「以後留学ビザの発給は入学許可書と本人の写真のみでよろしい」という内容だった。業務は楽にはなったけれども、これまで留学生が負っていた、あるいは教育機関関係者が負わされていた負担はなんだったのだろうか、とあきれた記憶がある。

入管行政は、気まぐれで無責任だ。

為政者はこの国への外国人の定住を本音では歓迎してはない。しかし、労働力は欲しい。納税者も欲しい。「日本人は贅沢になって嫌がる仕事でも、貨幣価値の違う国からの人であれば、少々の苦労を厭わず、厳しい職場に安価で利用できる」。これが入管法を改正し「安価で使い捨て可能」な外国人を多数呼び込もうとする真の動機である。そこには人権や国際主義などの配慮は何もない。新自由主義下の「新たな奴隷政策」と言っても過言ではないだろう。見ているがよい、多くの職場や地域で、これから必ず予想を超えたハレーションが発生するだろう。


◎[参考動画]入管法改正案の意味は? 失踪者は半年間で4000人超(ANNnewsCH 18/11/01)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊紙の爆弾10月号

『NO NUKES voice』Vol.17 被曝・復興・事故収束 ── 安倍五輪政権と〈福島〉の真実

 

10月31日は、鹿砦社や私に対する、李信恵さんによる度重なる「鹿砦社はクソ」誹謗中傷発言に対して、株式会社鹿砦社を原告とし李信恵さんを被告とする民事訴訟(大阪地裁第13民事部。以下便宜上「第1訴訟」とします)の弁論期日でした。

本件と無関係の山口の部落解放同盟幹部の陳述書を提出したり訳の分からない動きはあっても、被告からの反論らしい反論もなく、事実関係はハッキリしているので今回で結審かと思っていたところ、次回12月12日に被告・李信恵さんと、原告鹿砦社の代表の私に対する証人尋問が行われることが決まりました。私は原告会社の代表ですし陳述書も提出していますが、李信恵さんは被告として訴えられているにも関わらず1度も出廷せず陳述書も出さないとなると、裁判所が李信恵さんを尋問することは当然だといえます。

12月12日は、昨年12月のM君が李信恵さんらリンチの加害者5人を訴えた訴訟の尋問同様、対李信恵第1訴訟においても大きな山場となります。予想外の展開です。李信恵さんと法廷で直接対決ができます。畏れ多くも神原弁護士との応酬も楽しみです。

多くの皆様方が傍聴に足を運ばれることをお願いいたします。おそらく李信恵支持者らも多く蝟集するでしょうが、これを圧倒的な結集で凌駕しようではありませんか!

◆ 李信恵対在特会訴訟で李信恵勝訴判決を下した裁判長が、李信恵対鹿砦社訴訟(第2訴訟)の担当裁判官に就任、不公平な言動も異動 ◆

もうひとつ、上記第1訴訟において途中から李信恵側が反訴し、それを取り下げ、新たに別訴となった訴訟(大阪地裁第24民事部。以下「第2訴訟」とします)ですが、こちらも重大な事実が判明しました。李信恵側はとうに周知だったと思われますが、私方は迂闊にも今頃になって気づきました。おかしいなとは思っていたのですが……。

第2訴訟は、鹿砦社がこのかん出版した4冊のリンチ関連本(本年5月に発行した第5弾『真実と暴力の隠蔽』は提訴後の出版なので対象外)中の李信恵さんについて記述した部分に対して李信恵さんが原告となり鹿砦社を被告として訴えたわけです。ところが原告李信恵側からは、書籍の原本ではなく一部だけをコピーして証拠として訴状に付け裁判所に提出されていました。

名誉毀損の裁判ですし相手方に大金や販売差止めを求めていることから、本来ならば当然原本を提出すべきなことは常識中の常識です。そこで私方のほうで原本を用意し9月12日の準備手続きに証拠資料として提出しようとしました。ところが担当裁判官は「必要ない」「邪魔だ」として、あろうことか却下し突き返して当方代理人は持ち帰させられました。こんなことがあるでしょうか!? 私は急病で当日欠席せざるをえませんでしたが、私がいたなら押し付けてでも受け取らせたでしょう。あとから聞き悔しかったことは言うまでもありません。「這ってでも裁判所に行くべきだった」と。

そこで、多くの元裁判官や弁護士の意見も聞き、裁判官忌避申立てをしようと思い、申立書を提出しようとした、その日(10月22日)にその裁判官は京都地裁に異動となりました。年度変わりであるまいし思案していたところ、思わぬ事実が判明しました。まずは次の記事をご覧ください。──

増森珠美=大阪地裁裁判長

「ネット上の民族差別発言で精神的苦痛を受けたとして、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と、元会長の桜井誠(本名・高田誠)氏に対し、フリーライターで在日韓国人の李信恵(リ・シネ)さん(45)が計550万円の損害賠償を求めていた裁判で、一審・大阪地裁の増森珠美裁判長(太字:筆者)は9月27日、人格権の侵害を認め、在特会側に計77万円の支払いを命じる判決を言い渡した。」(2016年9月27日付け産経WEST)

つまり李信恵勝訴判決を下した「増森珠美裁判長」こそ、原本提出を「邪魔だ」として拒絶した担当裁判官だったのです。驚きました。みなさんはどう思われますか? はたして偶然でしょうか? 公平でしょうか?

もし、このまま増森珠美裁判長が本件訴訟(第2訴訟)の担当裁判官(長)を務めていたならば、不公平、不公正ですし、おそらく〈李信恵勝訴=鹿砦社敗訴〉は必至だったでしょう。

今回、裁判所内でどのような動きがあったのか分かりませんが、幸いにも増森裁判長は異動になりましたので本件第2訴訟から外れました。裁判所は、こうした公平性を欠く担当裁判官の配置ははじめからやめるべきでしょう。そうではありませんか?

先のM君が李信恵さんらを訴えた大阪地裁―高裁判決は、いずれも、賠償金は一部勝ち取ったとはいえ内容的には不満の残るものでした。高裁判決では賠償金の増額はあったものの、司法による被害者救済には程遠いものでした。

ジャーナリストの黒藪哲哉さんは、
〈この裁判は、「報告事件」ではないかと推測している。大阪高裁の元判事で現在は弁護士の生田暉雄氏が著した『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』(三五館)によると、裁判所の内輪で「報告事件」と呼ばれている事件が存在するらしい。これは最高裁事務総局が暗黙のうちに判決の方向付けをする事件のことで、提訴しても最初から勝ち目がない。いわば原告をペテンにかけている裁判のことである〉
と推測されています。当初、「そんなアホな」と思っていましたが、あながち否定できないものがあるようです。何しろ大阪高裁の元裁判官が実名で告白しているわけですから――。

裁判所が「ファシズムの出先機関」(トロツキー)といえるような事例は数多くあります。原発再稼働反対訴訟や行政訴訟は、よほど心ある裁判官でない限り、まず勝つことはありません。権力の意志を体現し「報告事件」とされる訴訟は、遺憾ながら勝てるはずはありません。私たちは裁判所の前でうなだれている住民の姿を数限りなく見て来ています。裁判所は、まさに“権力の番犬”だと思わざるをえません。

鹿砦社vs李信恵訴訟2件については、先の「報告事件」説を聞き、正直のところデスペレート感を覚えていましたが、第13民事部係属の第1訴訟で李信恵尋問が決定し、第24民事部係属の第2訴訟は不公平な言動を行った担当裁判官が異動になり、少しは私たちに期待感を持たせるようになりました。あまりに不公平感があることに裁判所内の良識派が動き、今回の事態になったのかどうかは知る由がありませんが、裁判所には、あらためて公平、公正な審理に努められることを心より望むものです。

この2件をめぐる動きで、何としてでも私たちのほうに潮目を変えなくてはなりません。

尚、次回期日ですが、第1訴訟は12月12日午後2時から、第2訴訟は11月14日午前11時30分からです。ご注目いただき、ぜひ傍聴をお願いいたします。

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

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鹿砦社 http://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000541

平均寿命が延び、高齢の親御さんやご親戚家族の健康について、悩みを抱える方が多いのではないでしょうか。私自身、予期もせず元気で健康、快活だった母の言動に異変を感じたのは数年前のことでした。そして以降だんだんと認知症の症状が見受けられるようになりました。今も独り暮らしを続ける89歳の母、民江さん。母にまつわる様々な出来事と娘の思いを一人語りでお伝えしてゆきます。同じような困難を抱えている方々に伝わりますように。

◆一つ目の壁 お医者さんに診てもらう

一昨年、87歳だった民江さんの異変に気付いて真っ先に思ったのは、「一度専門のお医者さんに診てもらわなくちゃ」ということでした。けれども、問題はどうやって言い含めて連れて行くかです。自分がボケてるなんて全く思っていないプライドの高い民江さんをどんな言葉で説得しよう……当時私はそればかり考えていました。

かかりつけのお医者様にお願いしておいて、先生から本人に話してもらったという人の話を聞きましたが、民江さんにそんな主治医はいません。本人から「心配だから医者に連れて行ってほしい」と頼まれたという人の話も聞きました。その人は自分より母親が先に気が付いたことをとても悔やんでいらっしゃいました。もちろん民江さんにそれは望めません。かわいい孫から言わせた、そんな話も聞きました。さて、何と切り出しましょう。

少し機嫌の良さそうな日、「ねぇ、お母さん。お母さんは若い頃、めまいがして脳のCT撮ったことあったけど、最近は検査してないよね。年齢も年齢だし、一度検査してもらわない?物忘れも時々あるでしょ、それもお薬でよくなるかもしれないらしいよ。ね。」

反応を見ながらゆっくり聞いてみました。すると「そうね、なっちゃんが連れて行ってくれる?」あっさりオッケーの返事がきました。すかさず「じゃあ、伯母さんの通っていた病院に予約を入れておくね。」と言いました。病院が済んだらそのままフランス料理のお店に行き、姉と三人で久し振りのランチまでセッティングして備えていたのに、そんな鼻先に人参のような小細工は必要ありませんでした。

◆二つ目の壁 デイサービスへ行かせたい

こうして無事に認知症専門のクリニックで診ていただき、ついでにフレンチも美味しくいただき、一つ目の壁を越えることができました。今からちょうど一年半前のことです。

2か月ぐらい経った頃、次に私はデイサービスへ行かせたいと考えました。認知症の薬というのは、進行が遅くなるのに僅かでも役立てばいいという程度で、実はあまり当てにはしていません。それよりも、自由気ままに一人で過ごしていることが悪い方に作用しているのではないかと思い、人と接して話をしたり考えたりする機会を増やし、刺激を受けることが大切なのではないかと思ったからです。

以前にも何度か勧めてみましたが、その時は馬鹿にして全く聞き入れてくれませんでしたので、これをまた説得するのは私にとって高い壁です。数年前にハイキングで転倒し腰椎圧迫骨折をした時でも、せっかく頼んだヘルパーさんをたった三回で勝手に自分から断った実績があります。ヘルパーさんに対する文句ばかり聞かされたことを思い出しました。

ところが、その二つ目の壁も案外簡単に超えることができたのです。民江さん自身の口から「デイサービスに行こうかな。」と言ってきました。驚いて聞き返したことを覚えています。

理由を聞いてみると、「○○ちゃんも行ってるらしいから」と。その方は小学生の頃からの友達で元開業医、とても知的な方です。だんだん同級生が減っていく中で、たまに電話でお喋りをしたり一緒に映画に行ったりお食事をしたりできる数少ない友達のお一人でした。おかげで民江さんは自分から行ってみようという気になってくれたのです。早速ケアマネージャーさんに手配をしてもらい、お試しに行きました。するとどうでしょう、大変気に入った様子で翌週から週に三回デイサービスに行くことになり、現在は週に五回も通っています。

受診もデイサービスも私が心配していたよりも案外と壁は低かったのです。二つ目に関しては低いというより壁などなかったということでしょう。不思議な感じです。でもこれが老いというものなのかもしれません。

▼赤木 夏(あかぎ・なつ)
89歳の母を持つ地方在住の50代主婦。数年前から母親の異変に気付く

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あきれる。あなたは新聞記者なのか? 人権を守る弁護士なのか? 教養をそなえた大学教員なのか? 10月19日大阪高裁で言い渡されたM君が李信恵ら5名を訴えた控訴審判決が大阪高裁で言い渡された。その後ネット上で上記の人々の発信には、その不埒さにおいて唖然とするしかない。「伊藤さん、李さん、神原さん、おめでとうございます!」、「正義は勝つ!!」、「(誰に対して?)よく耐えたね」……。あなたたちの神経はどうなっているのか?

それら侘しい人たちの発信を吟味する前に、この裁判がとてつもない〈闇の力〉に支配されているのではないか、を判決当日われわれは、またしても体感することとなった。その報告をせねばなるまい。

◆被告席には誰の姿もない。神原、上瀧弁護士らの姿もない

14時からの判決言い渡しは、予定時刻通り行われた。原告側はM君、大川弁護士、瀬川弁護士が出廷。被告席には誰の姿もない。神原、上瀧弁護士らの姿もない。カウンター側の支援者は誰一人来ていない。

傍聴席には15名ほどであろうか。開廷後稲葉重子裁判長は、判決の主文を読み上げる。「ああ、こう来たか」と取材班は判決を聞き、瞬時に評価を頭の中では整理できなかった。主文はどうあれ、高裁がどのような根拠で判断したのか、判決文の全文を読まない限り、軽率に判断はできない。

閉廷後、大川弁護士ら数名は書記官室に、判決文を受け取りに向かった。そして事件はそこで起こった。判決言い渡しのあとに、原告、被告が判決文を入手するのは、極めて常識的なプロセスである。ところが書記官室に判決文を受け取りに行ったところ、職員が「できればきょうではなく後日お渡ししたいんですけれども」、「すぐにはお渡しできないので……」と耳を疑うような言葉を平然と述べた。

「どうして判決言い渡しがあったのに判決文がもらえないのですか」、「ちょっと待て。M君が原告の裁判では、1人も記者が来てはいなかったが、司法記者クラブが記者会見を用意していたら、裁判所は記者たちに判決の要旨を配布するではないか」の問いに職員は「それはそうなんですけど……」とおかしな反応を示す。

「今すぐ判決文を受け取る権利がある。出してください」と要請すると「検討します」と逃げるので「検討ではない、原告の正当な権利として判決文を渡しなさい」とやり取り後、原告側はいったん、廊下で待たされ、約10分後にようやく判決文が原告側に渡された。

◆神原元弁護士はなぜ14時33分に「勝利宣言」をツイートできたのか?

主文は掌握していたが、裁判所の判断などを原告側が初めて目にしたのは、14時17分から14時20分の間だ。

ところが、のちに明らかになったのであるが、神原元弁護士は14時33分に「勝利宣言」をツイートしている。彼はおそらく電話で判決の主文を問い合わせたのであろう(原告、被告の代理人が遠隔地の場合電話で判決主文を問い合わせることは行われているそうだ)。

しかし大川弁護士をはじめとするわれわれは「少し廊下で待ってくれ」と言われ、仕方なく待機を余儀なくされた。判決全文を読まないことには評価が下せないが、神原元弁護士はどうやら、電話での確認だけで、「勝利宣言」を発信したようである。

仮に職員の申し出に「ああそうですか」と引き下がっていたらM君は判決当日判決文を入手できなかったのだ。どなたさんたちとは違い、慎重なM君や弁護団は主文を聞いただけで、判決の総合的な評価は下さないから、当然発信もしない。ネット上では勝手に被告支持者の「勝った! 勝った!」、「おめでとう」という言説が流布される。

東京新聞東京社会部佐藤圭記者の10月19日付けツイート

香山リカの10月19日付けツイート

◆「リンチは判決によって否定され、原告M君が敗訴した」かのような印象操作や鹿砦社攻撃に余念がない人たち

「こんな経験はありません」。廊下で待たされる間に大川弁護士は次から次へと起こる”摩訶不思議”な出来事に、あっけにとられていた。通常の裁判所の事務手続きでは考えられない「翌日に判決文を取りに来い」との物言いに、「裁判所は完全にあちら側に懐柔されているのではないか」と何度も複数の人々が主張した”何らかの力・意志”の存在を認識せずにはいられなかった。

度重なる記者会見申し入れの拒否、一審判決の著しい偏向、そして控訴審判決直後の不自然な対応……。挙げればきりがないが、後日、判決文と周辺事態の感想を複数の弁護士、法律の専門家に尋ねたところ、「最高裁の意を受けたり、政治的な力学で判決が左右されることは常識といってよいほどにある。原発再稼働容認の判断などを見ればわかりやすいだろう」との意見が多数であった。

市民が合法的に民事の争いを持ち込む場所は、裁判所をおいてほかにない。しかし裁判所が「中立」であったり「真摯に事実に向き合う」機関ではないことは、過去あまたの冤罪事件(民事も刑事も)や、「これはおかしいだろう」との判決が山積している事実を見ればわかる。「裁判所に過剰な期待や信頼を置くのは危険だ」と取材班は、もはや断言せざるをえない。そして「M君リンチ事件」の裏には“何らかの思惑”が確実に働いている。

そんな裁判所、大阪高裁判決に対して、東京新聞の佐藤圭記者、法政大学中沢けい教授、そして香山リカ氏……。彼らはそろいもそろって、あたかも「リンチは判決によって否定され、原告M君が敗訴した」かのような印象操作や鹿砦社攻撃に余念がないが、それは全く間違っている。

10月26日付け伊藤大介フェイスブックでの中沢けい(法政大学教授)とのやり取り

東京新聞東京社会部佐藤圭記者の10月26日付けツイート

◆「集団暴行」による賠償は一審に引き続き認定されているにもかかわらず……

そもそも彼らは「リンチ」の定義を勝手に「組織的な集団暴行」と決めつけているように窺えるが、その前提がまず間違いだ。「リンチ」は「私刑」を意味するのであり、法律や条例により定められた刑罰ではない、「私的な制裁」が元の意味である。「リンチ」=「集団暴行」ではなく、正確には「リンチ」の概念の中に「集団暴行」が包含されるというべきである。それでも彼らが主張するように「集団暴行」を「リンチ」と解釈する前提に立てば、高裁判決は「リンチ」を否定したのか? してはいない!

伊藤大介の「幇助」を認定しなかったものの、高裁判決はエル金と凡にそれぞれ損害賠償を命じている。2名の責任を認定しているのだから「個人間」の「暴行」ではなく「集団暴行」による賠償は一審に引き続き認定されており、その額も一審判決よりも増額されている(一審判決79万9,740円から113万7,640円へ)。

そして重要なことは、この裁判は事実を争うことのみが主眼ではなく、M君が受けた心身の被害に対する、当然受け取る権利のある、損害賠償請求が争点の中心であったことである。「集団暴行」が間違いない事実であったことは、本訴訟を待つまでもなく、既にエル金と、凡が罰金刑に処されたことにより確定しており、両者にはこの刑事罰についての異議はないようである。法廷でもエル金、凡は自己の責任を認め、M君に対する謝罪の意思を証言している。また当然のことながら、判決文のどこにも「集団暴行はなかった」旨断定する記載はない。

そしてあまり重視されていないが、伊藤大介が提起した反訴が一審に続き、棄却されている。

この総体をどう解釈すれば、どこかM君に非があったり、「リンチはなかった」、「正義は勝つ」などと判断できるのか。いい歳をして社会的にも地位があり、知識人として名前の売れている方々であまりにも不用意な発信を続けている人々には、上記の事実に真っ当な反論をしていただきたいものだ。「印象操作」は嘘と同等にネット社会では罪深い。それくらいは、だれでも理解できるだろう。(本文中敬称略)

(鹿砦社特別取材班)

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多彩なエロス、SFから児童文学まで縦横無尽な世界観織りなす作家、森奈津子さん。ツイッター上ではM君支援を宣言してくださり、そのためか、しばき隊から現在も集中攻撃を受け続けている方でもある。大好評だった前回までのインタビュー記事に続き、特別取材班は再び森さんに電話でインタビュー。「表現の自由」をはじめ様々な問題についてご意見を伺った。

◆反権力を気取っている人が、治安維持法みたいな法律を作ろうとしている

 

森奈津子さんのツイッターより

── (反差別という点で)その点、われわれは原理主義的にあらゆる差別に反対です。ただしわれわれはあらゆる差別をしていないつもりでも、知らないが故に言葉遣いとか振る舞いで差別を犯しているということがあるかもしれませんので、あらゆる差別を否定するではなくて反対するという表現でいつも統一しているつもりです。今新たにご示唆いただいた議論をするということですよね。何かコードを作ってしまって、レイシストだからとか、差別主義者だからとか、右翼だから左翼だから、とあるカテゴリーにはめて、だからどうのこうのということは非常に短絡的だと感じます。短絡的な人は実際にたくさんいます。それを助長する一つの要因が、適切にツイッターとかSNSを使えない人たちではないかと思います。

森  そうですね。合田夏樹さんが「彼らは反差別というよりは、反差別を言い訳にしていじめをしたいだけのいい歳をした大人だ」と仰っていましたけれども、おそらくその通りでしょう。やはり、叩いてそれで終わりでいいの? というの思いは常にあります。今、LGBT差別解消法という、アウンティングを禁じるとかLGBTに対する差別をなくすための法律を作ろうという動きがありますよね。あれだって「ホモ・レズ・オカマは差別用語です」という主張をする人が出てくる中で、そんな法律作って大丈夫なのかと。それこそLGBTが自分たちの首を絞めることになりかねないし、そんな治安維持法みたいなものを作るために、LGBTを利用しないでくれとも思います。でも賛成している当事者もいて、ちょっと驚きますね。何が差別かどうかという線引きを体制側に任せて、それで大丈夫なのかと。普段は反安倍とか言ってる人が何を言っているのかと思いますよ。反権力を気取っている人が、治安維持法みたいな法律を作ろうとしていて、体制側を信用しているのかと驚きます。

◆左翼リベラルの凋落

── 既にヘイトスピーチ対策法という法律は、理念法ですけれども成立をしています。その成立に関してはしばき隊の人達は非常に熱心に活動されたようです。ところで本来知識人の中に入れてはいけない人が、新たに知識人の中に入ってしまっている。かつて知識人であった人たちがどんどん堕落している。ある意味ではあたっていると思いますが、左翼リベラルというものが凋落している。一面では事実だと思います。それを森さんはどのようにお感じになりますか。

森  本来だったらリベラルと名乗ってはいけない人がリベラルを名乗っているのは驚きですし、多様性多様性と言っている人が何であんなに一生懸命自分と意見の異なる人を中傷して叩いているのか、本当に疑問に思います。なんであのような人達がリベラルと名乗っているのでしょうね。私は自分のことをリベラルだと思っていましたけれども、リベラルと名乗れなくなりました。あのような不寛容がリベラルだなんて、いつの間に言葉の意味が変わったのだろうと疑問に思っています。

── 明らかに変わりましたね。リベラルというのは大雑把にですけど、良い語感でしたものね。

森  そうですね。それが攻撃的で印象の悪い不寛容な人達を指す言葉になりつつあるようです。あの人達が自称しているから言葉の意味が駄目になったのでしょうかね。

◆香山リカは何でリベラルを名乗るのか?

── それもありますが、たとえば80年代頃の香山リカはリベラルの範疇だったと思うんです。かつてリベラルだった人達がどんどん堕落してしまった。書籍はあまり読まれない。本来は書物から得られる多様なものの考え方というところの回路が、通じなくなっているのではないのかなという気もするのですが、どうでしょう。

森  はっきり言って、この人が何でリベラルを名乗ってるの? と思いますけれども、皆さんリベラルと認識しているようですし。また、ツイッター上ではフェミニストを名乗る人たちが平気で男性差別発言をしてるため、フェミニストが男性を差別する差別主義者だと見なされつつあります。それと同じような現象でしょうか。

── 穏健ではない偏狭な人達の意見が目立つから、フェミニズムというのはそういうものだとある意味では実態化しつつあるでしょ。

森  本来は、フェミニズムって人権を基礎とした理論じゃないですか。そして、人権というのは全ての人が持つものですよね。なのに、フェミニストを名乗っている人が男性の人権を侵害したら、フェミニズム自体が崩壊するはずなのに、わかっていない人たちがそれを信じてしまうのか。ああいう人達はフェミニストとは言えないのだ、というちゃんとした反論よりも、「フェミニストって男性差別をする人なんだね」「ミサンドリストのことをフェミニストと呼ぶんだね」という認識の方が主流になってしまって、「フェミニストを名乗る人は差別主義者」みたいなところまで行っていますよね。リベラルに関しても同じかなと思います。(つづく)

◎森奈津子さんのツイッター https://twitter.com/MORI_Natsuko/

◎今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー(全6回)

〈1〉2018年8月29日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27255
〈2〉2018年9月5日公開  http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27341
〈3〉2018年9月17日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=27573
〈4〉2018年10月24日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28034
〈5〉2018年10月30日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28042
〈6〉2018年11月8日公開 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=28069

(鹿砦社特別取材班)

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◆事務所スタッフの憤懣がリークの発端か?

 

片山さつき氏HPより

「週刊新潮」(11月1日号)によると、「週刊文春」を相手に民事訴訟に踏みきった片山さつき地方創生大臣に、新たな口利き疑惑が生じているという。大阪のパチンコ業者が銀行融資の口利きを依頼し、片山大臣が財務省経由で融資のあっせんを行なったというものだ。そしてその結果はというと、融資工作は遭えなく失敗に終わったという。なんとも頼りにならないセンセイではないか。

それはともかく、同日発売の「週刊文春」には、片山事務所の関係者が匿名を条件で事実関係を語っている。すなわち「実は、X氏と片山氏は携帯電話で何度も連絡を取り合っている」そのやり取りのなかで、100万円の見返りにも言及しているというのだ。さらには、直撃取材を受けたあとに南村博二元秘書に「あなたと私は、会ったことなかったわよね」などと口封じを行なったうえで、週刊文春にリークした下手人を捜したという。

ヒステリックになったら、事務所で荒れるという片山センセイのことだ。事務所スタッフに修羅場が到来したのは想像にかたくない。その意味では、事務所関係者からボロボロと情報が漏れてしまうのは、センセイのガバナビリティの不足としか言いようがないのだ。短気は損気。

◆秘書ではなかったと強弁するも、事実は記録されている

100万円を受け取った事実そのものを否定する片山大臣だが、元秘書の南村氏は受け取りをみとめている。週刊文春が入手した「書類送付状」および福岡銀行大牟田支店の「振込・振替(状況照会)にも「議員名・片山さつき」と「秘書名・税理士南村博二」が明記されているのだ。にもかかわらず、片山センセイは週刊文春への訴状の中で「南村が原告(片山)の私設秘書であったことはない。原告は、秘書として契約したこともなく給与・報酬などを払ったこともなく、原告が指揮・命令する立場にあったことはない」などと、事実を180度ねじ曲げようとしている。まさに語るに落ちるとはこのことだろう。すでに何度となく、片山事務所は文章や音声に「私設秘書・南村博二」は刻印されてしまっているのだから──。

よしんば秘書としての報酬を受けていないなど抗弁ができたとしても、片山センセイが代表をつとめる政治団体や後援会事務所、あるいは「片山さつき政治経済研究所」は、いずれも南村氏の麻布十番のマンションに置かれている。その意味では秘書であるか否かも意味はない。片山センセイの政治活動に南村氏は大きく寄与し、重要な役割りを得ているのだ。

◆訴訟は答弁のがれである

ところで、訴訟をチラつかせるブラフが自民党政治家の特徴だと本欄で指摘してきたが、訴訟はまた事実関係を答えない言い訳でもある。片山センセイは訴訟を提起しましたという記者会見の場で、さっそく「法的措置に入りましたから」「わたしの一存では喋れないんです」と言い放ったものだった。この対応はおそらく、記者会見の場のみならず国会審議でも貫かれることだろう。「ご質問の件につきましては、訴訟中の案件でございますから、わたくしのほうで発言は控えさせていただきます」などと、答弁を拒否するにちがいない。そしてほとぼりが冷めれば、こっそりと訴訟を取り下げるか和解交渉で終わりにするという手順であろう。

だが、いったん訴状を提出したのである。その訴訟要件が根底から崩壊し、このかんの発言がすべて虚偽であったことを明らかにするまで、報道が止まないことを知っておくべきであろう。あたら小手先のはぐらかし戦術として、民事訴訟をもてあそんだことによって火だるまになるのは「片山さんは2人分、3人分の活躍が期待できる女性政治家」と激賞した安倍総理大臣の任命責任もふくめてのことである。


◎[参考動画]片山大臣「記事は事実と違う」 提訴後初めて会見(ANNnewsCH 2018/10/23公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

『紙の爆弾』11月号! 公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

◆冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない

 

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

きっかけは、いっけん偶然かのように見紛われる。ある日偶然は、主人公が知りもしない世界へ強引に連行し、激烈な鞭打ちを浴びせかける。「どうして?」、「なにがどうなったの?」疑問をゆっくりと巡らせる暇もなく、主人公を「殺人犯人」と決めつける報道が全国を席巻し、主人公の名前や顔写真はおろか、住処の町名までが、量販店のバーゲンセールの広告を掲載するかのような、気軽さで新聞に掲載される。容赦のない取り調べは、有形でこそないが純粋な意味において「暴力」以外の何物でもない。

冤罪が組み立てられる構造は、だいたい似通っている。けれども冤罪被害者がその後たどる道のりは、まったく一様ではない。もっとも不幸な人は、何の関係もない咎により、首切られる(死刑)。または処刑台までいかずとも、長期にわたり拘置所、刑務所に幽閉される。あるいはまれに、嫌疑が晴らされマスコミにより「冤罪被害者」として扱われる場合がある。逮捕当時、あるいは公判中「犯人」と決めつけた報道を垂れ流していた罪など、ついぞ反省することなく、「加害者」を「悲劇の主人公」と報じる矛盾に、うち苦しむ報道機関はない(個人としての反省のケースはみられる)。

冤罪被害から解放されても、失った時間、主人公に襲い掛かった罵詈雑言の数々、報道被害が主人公に残した「加害の総体」は、何らかの尺度で測りうるものではない。主人公の語る言葉を、大衆はわかったような気になっているかもしれないが、それは大方の場合誤解である。わたしがこのように断定的に主人公が被った非道を論じるのは「テレビを見て、普通に笑っているんだと気がついたんです」と、事件解決後20年も経過した、主人公からの言葉をつい最近聞いた衝撃に由来する。笑いながら会話していたが、わたしの心の中は冷え切った。主人公に対して無遠慮であった自分を恥じた。

◆主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る

主人公はしかし、ただの被害者でありつづけたわけではない。「唯言」に登場する、執筆者をはじめとする、広大な人脈は、主人公が能動的に事件のあとを生きた証だ。「唯言」に登場する関屋俊幸、弓削達、高橋宣光、玉光順正、高田千枝子の各氏は主人公がいなければおそらくは出会うことがなかったであろう、それぞれ異なる分野で活躍された方々だ。あたかも書籍を編纂するように、主人公は事件後、「どうしてわたしはこのような仕打ちを受けたのか」を、法学、哲学、歴史などを猛烈に学び、思弁し、人権思想の重要性を重く認識するに至る。その過程及び到達点から、乱反射する日本の姿(歴史・思想傾向・民族性など)の本質を、掌握した主人公が重ねて語るキーワードは「無答責と答責」である。

古代ローマ時代から、日本書紀を経て江戸・徳川時代から、明治維新、諸々の戦争を経て現在へ。主人公の歴史観は教科書で綴られるそれとは、かなり趣を異にする。日本の成り立ちについても同様だ。浅学で史実をほとんど知らない、あるいは「こうあって欲しかった」と幼児のように駄々をこねる、歴史修正主義者に対して、主人公の主張はどう映るか。冷厳な史実を見つめ続け、見つめるだけではなく、みずからが責任を取ろうとの試みは、常人の発想しうるものではなく、後にも先にも同様の試みを耳にしたことはない。

◆人間に暖かい社会とは何か?

主人公は国家が放棄した戦争責任を、「市民がどう引き受けるか」というとてつもない試みに足を踏み入れる。韓国と日本の間で何度もシンポジウムや講演会を開催する「答責会議」の発足は、主人公の存在なしにはありえなかった。その成果は『無答責と答責』(寿岳章子。祖父江孝男編、お茶の水書房 1995年)として世に出ることになるが、じつは『無答責と答責』の実質的編者は、主人公であったと、複数の知人から聞いた。その行動力の源泉は、はたしてなんであるのだろうか。冤罪被害者としての経験だけですべてを説明するのは不可能だとわたしは断じる。

主人公を際立たせすぎて紹介したが、「唯言」執筆者の方々はいずれも、個性的なその分野でトップを走った方ばかりである。当初部数限定の自費出版として編纂された「唯言」を手にした多くのひとびとは敏感に反応した。時代が「唯言」を要求していたといってよいだろう。世界史から物語が消えうせ、歴史が「自己解散」を宣言し、世界的にも事象はもっぱら権力者の気まぐれか、2進法による貸借対象表の合法的改ざんによる幻想のなかにしか存在しないかのごとき今日、「唯言」は無理やりにでも「自己解散」を宣言した歴史に「再結集」を命じる。

主人公・山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)は、冷徹な態度で、人間に暖かい社会とは何かを仲間と語り合った。

鹿砦社の最新刊『唯言(ゆいごん)戦後七十年を越えて』山田悦子、弓削達、関屋俊幸、高橋宣光、 玉光順正、高田千枝子=編著(2018年10月26日発売)

◆懲らしめのための民事訴訟

管制塔被告団グループに1億300万円の賠償請求が来たのは、2005年のことだった。運輸省が提起した民事訴訟は95年に判決が確定し、損害賠償額は4,384万円だった。それに利息が付いて、時効直前の2005年には1億300万に膨らんでいたというわけだ。その年から給与の差し押さえ、財産の差し押さえなどが通告されていた。

管制塔破壊という実害があったとはいえ、スラップ訴訟(公共の利益がないのに、運動を破壊するために行なわれる訴訟)に近い、民事訴訟による判決の履行だった。すでに反対同盟は分裂し、政府の意を受けた「話し合い路線」が軌道に乗っていたから、その意味では空港問題の帰趨とは関係なく、この請求は懲らしめのための「憂さ晴らし」とでも言うべきか――。

 

柘植洋三=元三里塚闘争に連帯する会事務局長による2005年7月18日付アピール文「管制塔賠償強制執行の攻撃を、我等ともに受けて立たん」の文頭(2005年7月22日付『旗旗』に全文あり http://bund.jp/?p=226 )

◆戦友会としての被告団

そこで元被告団が再集合し、1億円カンパ闘争が開始されたのである。元の所属党派を通じたカンパが大口だったが、ネットカンパが広く一般の人々から寄せられたという。われわれの三月要塞戦元被告団も久しぶりに全国結集(弁護士を入れて、たしか20人ほど)で、このカンパ運動を支援することになった。

集れば必ず飲み会というか、集りそのものが飲み会の場で、そこに管制塔元被告が説明に来るという感じだった。何かというと資金源としてあてにされる弁護士さんは「1億円も、ですか……」などと、ぼう然とした雰囲気だったが、すでに数千万円単位でまたたく間にカンパが集っているという報告を聴くと、ホッとした表情になったものだ。

元過激派学生というのは非常識な連中ばかりで、まじめな弁護士さんたちからはあまり信用されていない。それでも、突入ゲートごとの被告団、前年5月の攻防で逮捕されたグループなど、まさに戦友会のごとき集いが復活したのは、このカンパ運動の副産物だったといえよう。この年の11月には、1億300万円が国庫に叩きつけられ(収納され)た。

◆ネット上の議論

それにしても、1億円をカンパで集めるのはいいとして、それを敵である政府に差し出すという運動に、疑問の声もないではなかった。徹底抗戦して、たとい労役を課せられようが何をされようが、政府に「謝罪金」のようなものを出すべきではないと。もっぱら匿名のネットで議論が起きたものだ。匿名の議論だから「政府に恭順の意を表するような、反革命行為は信じがたい」とか「敗北主義だ」などという主張に「おまえ、責任をもって現実の大衆運動をやったことなんてないだろう。口先だけの評論野郎」などと反論があったりしたものだ。

たしかに民事判決の当初は「ないものは払えない」という論理で打っちゃってきたのは本当だ。やがて生活を抱え、家族をつくった元被告たちに、生活破壊の重たい攻撃が掛けられているのだから、カンパ運動はしごく当然だった。それを批判する人たちは、そもそも運動に立場性(責任)がない。安全圏の中に身を置いたとしか思えなかった。お前こそ、いま直ちに空港に突入して管制塔を破壊して来い! である。

◆民事訴訟の怖さ

それにしても、民事訴訟というのは生やさしくない。交通事件で民事訴訟になるのは、示談金をめぐって、すでに任意保険という補償の前提(原資)があるからであって、一般の事件だとなかなか考えにくい。たとえば殺された家族の損害賠償・慰謝料として民事訴訟をしても、相手が塀の中の死刑囚ではどうにもならない。そこで死刑を廃止して、仮釈放のある無期刑ではなく、終身刑を導入してしまう。死ぬまで懲役労働をさせて、その報奨金を被害者遺族への賠償金とする。という議論を、わたしは死刑廃止論の大御所としているところです。

ぎゃくに、犯人を知ってから時効が始まるので、とっくに刑事事件としては時効になっていても、民事訴訟は有効となるのだ。公安事件にかぎらず、被害者のいる事件は墓場まで持っていくというのは、けっして例え話ではないのです。そんな事件、あなたも体験していませんか?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。3月横堀要塞戦元被告。主著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)、『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

衝撃満載『紙の爆弾』11月号! 公明党お抱え〝怪しい調査会社〟JTCはどこに消えたのか/検証・創価学会vs日蓮正宗裁判 ①創価学会の訴訟乱発は「スラップ」である他

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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