「BLACK BOX」のその後 山口敬之反訴で新段階の「レイプ裁判」〈後編〉 「同意のない性交」だけでは刑法上罰則もない「強姦天国」

「BLACK BOX」(伊藤詩織著・文藝春秋)がふたたびスポットライトを浴びている。ほかならぬ「加害者」とされている山口敬之元TBS記者が、1億3000万円の損害賠償請求の訴訟を起こしたからだ。これに対して、伊藤詩織の支援者は「オープン・ザ・ブラックボックス」というサイトを立ち上げて、支援団体(伊藤詩織さんの民事裁判を支える会)を発足させた。

以下は本稿〈前編〉に続き、山口敬之の反訴で新段階をむかえた「レイプ裁判」の〈後編〉だ。

伊藤詩織『Black Box』(2017年10月文藝春秋)

「私の意識が戻ったことがわかり、『痛い、痛い』と何度も訴えているのに、彼は行為を止めようとしなかった」「何度も言い続けていたら、『痛いの?』と言って動きを止めた。しかし、体を離そうとはしなかった。体を動かそうとしても、のしかかられた状態で身動きが取れなかった。押しのけようと必死であったが、力では敵わなかった。私が『トイレに行きたい』と言うと、山口氏はようやく体を起こした。その時、避妊具もつけていない陰茎が目に入った」

しかし、それでもなお、山口の「行為」は終わらなかったようだ。

「抵抗できないほどの強い力で体と頭をベッドに押さえつけられ、再び犯されそうになった」「体と頭は押さえつけられ、覆い被さられていた状態だったため、息ができなくなり、窒息しそうになった私は、この瞬間、『殺される』と思った」

いわばセカンドレイプを覚悟で、血を吐くような思いで書かれたから『BLACK BOX』の記述が正しいわけではない。「下腹部に感じた裂けるような痛み」「再び犯されそうになった」と、具体的なこ事実関係を書いているから、信ぴょう性が感じられるのだ。したがって、山口がとくにおもんぱかる必要もない。

◆なぜ不起訴になったのか

上記のとおり、両者の言い分をふまえて、その後の司法手続きをたどってみよう。
2015年4月9日に伊藤は警視庁に相談し、所轄の高輪警察署が4月末に準強姦容疑で告訴状を受理した。6月初めに逮捕状が発行された。逮捕状が警察の要請にしたがい、裁判所の責任で発行されたのは言うまでもない。しかるに、山口の身柄はアメリカにあった。執行は翌2016年、山口が帰国する6月8日に、成田空港で行なわれるはずだった。

 
BBC「Japan's Secret Shame」レビュー(2018年6月28日付けガーディアン)

ところが逮捕する直前に、警視庁刑事部長の中村格が執行停止を命じたのだ(「週刊新潮」)。7月22日に、検察が不起訴処分とした。嫌疑不十分がその理由である。のちに伊藤詩織は出勤途中の中村格を直撃取材したが、中村は全速力で逃走。何らの説明もしていないという。その後、検察審査会で審議されたが、9月21日に不起訴相当となった。

安倍晋三の意を受けた警察官僚が暗躍したと、週刊誌は警察・検察の不可解な動きを批判する。だがいまや、この国の社会および司法の仕組み自体に問題があると、わたしは思う。というのも、レイプされた女には「隙がある」「性ビジネスである」などと、男性のみならず女性(たとえば杉田水脈議員)からも批判が浴びせられるジェンダーの硬い障壁があるからだ。とりわけ、性暴力をめぐる司法判断に疑問の声がひろがっている。

4月11日の夜、東京駅付近に400人以上が集まって「MeToo」「裁判官に人権教育と性教育を!」などのプラカードが並んだという(朝日新聞4月17日夕刊)。娘の同意なく性交をした父親に無罪判決が出されるなど、強姦事件の無罪判決が続いているというのだ。そもそも実の娘と「同意」があっても、やってはいけない行為ではないのか。

いや、そうではない。日本では1873年に制定された改定律例には親族相姦の規定があったが、1881年をもって廃止されているのだ。刑法に盛り込まれなかった理由は、日本近代民法の父と言われるボアソナード博士が、近親相姦概念は道徳的観念の限りにおいて有効であると反対したためだとされている。

強姦罪もきわめて緩い。日本の刑法は「同意のない性交」だけでは罰則がなく、「暴行または脅迫」が加わった場合の性交に「強制性交罪」が成立するのだ。今回、実の娘を強姦した男は、娘が「抵抗が著しく困難ではなかった」ことで、無罪とされたのだ。そして酔って抵抗できない場合にも、同意があったとされる可能性があるというのだ。伊藤詩織事件にも、これが検察の判断となった可能性がある。裁判官の資質だけではないようだ。なんと、日本は法的にも強姦天国だったのだ――。

◎「BLACK BOX」のその後 山口敬之反訴で新段階の「レイプ裁判」
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30267
〈後編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30272


◎[参考動画]#MeToo in Japan: The woman speaking out against rape(FRANCE 24 English 2018/06/28公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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独立国ではないことが明白すぎる安倍〈対米隷属〉外交の揺るぎなき支離滅裂

《外務省は(4月)23日の閣議で、2019年版の外交青書を配布した。北朝鮮に関する記載を大きく変え、18年版にあった「圧力を最大限まで高めていく」などの表現を削除。ロシアについて「北方四島は日本に帰属する」との表現を削った。拉致問題や北方領土問題の打開に向け、北朝鮮やロシアへの配慮をにじませた。》 ※2019年4月23日付朝日新聞 

遅すぎても全く見当違いの方向に突っ込んでいる方針が、修正されたことは評価すべきだろう。わたしが指すのは〈北朝鮮に関する記載を大きく変え、18年版にあった「圧力を最大限まで高めていく」などの表現を削除。〉の部分についてだ。

米国トランプの後ろでしか歩けない、誠に情けない外交姿勢。首相安倍もそうなら、外相河野もそうだ。2回にわたる米朝首脳会談は、2回目が決裂と伝えられているけれども、朝鮮が一貫して指弾してきた米国軍と韓国軍が朝鮮との戦争を想定した演習を取りやめたことから、一気に緊張が緩和されたといっていいだろう。

このこと一つをとっても世界の軍事・地勢地図にとっては大ニュースのはずなのであるが、日本国内でことの正確な意味と今後を的確に言い当てることができる「識者」は極めて少ない。

◆日韓条約は、そもそもが「不平等条約」である

テレビは全くダメらしい。朝鮮半島の緊張緩和に汗を流す文在寅韓国大統領の人気低下に、無理やりこじつけて朝鮮半島の「和平前進」を揶揄する報道ばかりだと、テレビ視聴者から聞いた。徴用工についての韓国裁判所での判決に、こともあろうに首相安倍以下、外相河野、そしてテレビでは田中秀世やリベラル面した連中まで「韓国けしからん!」との言説で溢れていたらしい。

しかし、この連中は全員間違っている。そもそもが「不平等条約」である「日韓条約」(短い文章である)の政府解釈すら、頭の中にないことで明らかだ。繰り返すが「日韓条約」は不平等条約だ。なぜならば、日本の朝鮮半島における植民地支配の「賠償」を一切行わず、「経済支援」との名目で、「植民地支配」の実質を無化しようとして締結された条約だからである。

「日韓条約」締結に関しては、韓国国内で強い反対があったばかりでなく、日本の学生を中心とする勢力の中にも「植民地支配を正当化する条約だ」との反対があり、激しい闘争が繰り広げられた。そして日本政府は正式見解して「韓国の日本に対する賠償権は消滅した」と不当にも言い放ったが、一方個人賠償権については、今でも日本政府はその権利を公式に認めている。

1991年8月27日の参院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長は、日韓請求権協定の第2条で両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決」されたとのべていることの意味について、「これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということ」であり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と明言している。

この件はあまりに明確であるのでもうこれ以上は言及しない。異議のある方は証拠を示してご反論頂きたい。

◆誰の目にも明らかな対ロシア関係の決定的矛盾

一方、わたしの予想通り、ロシアに対してはどうやら外務省は「4島返還」を完全に諦めたようだ。

《ロシアの部分では、18年版で強調していた北方四島の帰属については触れず、これまでの日ロ交渉の過程を明記。「両首脳の強いリーダーシップの下、領土問題を解決して平和条約を締結すべく、交渉に粘り強く取り組んでいく」とした。》

こういうちぐはぐな外交姿勢に終始するから、日本はいつまでたっても「独立国」と呼ばれず「米国の属国」扱いをされるし、居丈高にアジア諸国に威張ったところで、対ロシア関係の決定的矛盾は誰の目にも明らかだ。

「北方領土の日」(2月7日)に内閣府が新聞各紙に掲載する政府広報。最新の2019年版(左)では2018年版(右)に記されていた「北方領土は日本固有の領土です。」という表記が割愛されている

「北方領土かえる日、幸せの日」。どこの役場にも必ずこのメッセージが書かれた、古ぼけた横断幕が、倉庫かどこかにしまってあるに違いあるまい。倉庫の中でだけではなく、東京メトロ、とりわけ永田町駅には「北方領土」についてのロシアへの敵意むき出しのポスターが張られ、古くはなったものの大都市のそこここには「北方領土」への意識啓発を訴えるメッセージが錆びつきながらも現存する。いったいいくら使ったのだ?この意味のない結末を迎えそうな「北方領土」返還運動に。

わたしは、ロシアの北方4島支配は不当だと考える。地政学的にも、第二次大戦終了直前に対日戦に参戦して、もう青色吐息の日本から「とれるものは分捕ろう」との意図が明確な史的経緯を考えれば、北方領土のロシア(旧ソ連)から続く支配に、正当性は見いだせない。

◆対米従属、アジア蔑視、支離滅裂

もちろん、そのことと日本帝国主義がやけっぱちになりアジアを中心に、3000万人ともいわれる人々を犠牲にし、日本人も300万人が戦死もしくは戦争の影響で命を落とした「愚」が正当化されるものではまったくない。わたしは繰り返し「帰るはずのない北方領土返還運動」の利権を指弾しているのであり、それは安倍がプーチンを、山口県にまで招くに至り、誰のも目に明々白々ではないか、との問題意識を呈しているに過ぎない。

祖父がCIAの援助で戦犯から解放され、父が大した活躍もできず、自民党総裁選で敗れた孫の安倍晋三が抱く「外交感」がいかなるものだのか、一度聞いてみたい。直接聞くまでわたしが感じ続けるのは「対米従属、アジア蔑視、支離滅裂」である。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

「BLACK BOX」のその後 山口敬之反訴で新段階の「レイプ裁判」〈前編〉 山口敬之と伊藤詩織──両者の言い分を再検証する

「BLACK BOX」(伊藤詩織著・文藝春秋)がふたたびスポットライトを浴びている。ほかならぬ「加害者」とされている山口敬之元TBS記者が、1億3000万円の損害賠償請求の訴訟を起こしたからだ。これに対して、伊藤詩織の支援者は「オープン・ザ・ブラックボックス」というサイトを立ち上げて、支援団体(伊藤詩織さんの民事裁判を支える会)を発足させた。

伊藤詩織『Black Box』(2017年10月文藝春秋)

本欄の読者諸賢におかれても、事件のことも記憶が薄くなっているのではないだろうか。山口敬之は上記のとおり元TBS記者だが、現在は一般財団法人日本シンギュラリティ財団の代表理事である。財団の住所は東京都渋谷区恵比寿3丁目31-15、つまり山口敬之の実家なのである。評議員に山口博久弁護士(敬之の実父)がいることから、山口家を中心とした人脈で形成されたものとみていいだろう。そしてこの財団の理事に、斎藤元章という名前がみえる。

この斎藤元章という人物は、巨額助成金詐取問題で2017年暮れに逮捕されたPEZY社の代表である。この事件は「科学技術振興機構」からの助成金60億を、事業外注費を水増しで計上していたものだ(別件で法人税法違反=所得隠しでも逮捕され有罪判決を受けている)。詐取事件の背後には財務省、つまり麻生太郎の存在が噂された。山口自身も、このPEZY社の顧問になっているという。

それにしても、ジャーナリストでありながら時の権力におもねる「総理」「暗闘」(いずれも安倍総理に近い見城徹の幻冬舎刊)などの著書しかない点で、すでにアウト(政治権力の随伴者)だが、TBS退社後の「事業」も怪しい人脈で作ったものだったのだ。

山口敬之から訴状が届いた旨を伝える小林よしのりのブログ(2019年2月7日)

事件について、それを漫画化した小林よしのりが、山口敬之に訴えられた(2月9日)。この小林よしのりに対する訴訟は、「レイプ犯」などと勝手に決めつけると、相応の法的な責任を取らせるぞという、いわゆるスラップ訴訟であろう。メディアはまさに、触らぬ神に祟りなしという具合に山口敬之の動向を報道しようとはしない。じっさいに、小林よしのりも「この件については反論も議論もしない」としている。この小林の宣言は戦線を拡大しない、という意味にほかならない。

だからといって、世を騒がせた「レイプ裁判(準強姦被疑事件)」の報道を止められるわけではない。スラップ訴訟であれ正当な反訴であれ、みずからの主張はかならず報道と議論によって検証されなければならないからだ。もうひとつ付け加えておけば、相応の思いこむに足る条件があれば、名誉棄損の構成要件は成立しない。それは食品や商品に対する批判が、たとえば週刊金曜日の「買ってはいけない」などの企業批判が有効であるのと同様である。ほんらい「レイプ事件」は社会的な公共性が高くなくてはならない。少なくともまったくの冤罪ではなく、事件現場(ホテルのベッド)に山口本人がいたのは事実であり、そこでの事実関係こそが裁判の焦点である。

◆両者の言い分

そこで「レイプ事件」の経過、というよりも両者の言い分を復習しておこう。以下は「BLACK BOX」による。

2015年4月3日、伊藤詩織はニューヨークでの就職相談や就労ビザの相談のため、当時TBSの政治部記者(ワシントン支局長)だった山口敬之と会食した。その後、居酒屋で瓶ビール2本を2人でのみ、別にグラスワイン1杯を飲んだ。山口は安倍総理や鳩山元総理の人脈話をするばかりで、就労の話はしなかったという。2人は寿司屋に移動したが、そこで伊藤は気分が悪くなった。

伊藤はワインを3本空けても平気な上戸であり、このときの気分の悪さを「レイプドラッグ」ではないかとしている。何を食べたのかも、ブラックアウト(意識が飛ぶ)で記憶にないという。

その後、タクシーに乗って伊藤は「駅で降ろしてくれ」と言ったが、山口は「まだ仕事の話があるからホテルに行こう。何もしないから」と言い、運転手にホテルに向かうよう指示した。運転手は、山口が伊藤を抱きかかえるように連れ込んだと証言している。2018年の民事訴訟の弁論においても、この事実はホテルの防犯動画が証拠として提出されている。伊藤は意識がもどると、全裸あおむけの状態で山口が体にまたがっているところだったという。避妊具を付けていない山口の陰茎も見ている。激しいやり取りがあったのち、伊藤はホテルから脱出した。

山口敬之元TBS記者が「私を訴えた伊藤詩織さんへ」と題した手記を掲載した『月刊Hanada』2017年12月号

これに対して、山口敬之は「月刊Hanada」(2017年12月号)において、「私を訴えた伊藤詩織さんへ」と題した手記で、事件の態様をあきらかにしている。まず山口は「誰が見ても、一人で電車に乗って帰すことは困難な状態だった」と、ホテルに同道させた理由にしている。山口はホテルで仕事を終えたあとに、送っていくつもりだったという。伊藤が「駅に行ってください」とタクシーの運転手に要求したことは、山口も認めている。「嘔吐し、朦朧とした泥酔者が『駅で降ろしてください』と言ったからと言って、本当に駅に放置すべきだと思いますか?」と、山口は自分の行動を正当化している。ここまでは、そういう理由も成り立つかもしれない。しかし、部屋に入ってからの事実関係には、おおいに疑問が残るところだ。引用しよう。

「部屋に入ってどのくらい時間が経ったのか。私がまどろんでいると、あなたが突然起き出して、トイレに行きました。ほどなくトイレが流れる音がして、下着姿のあなたが戻ってきました」「そして、ペットボトルの水を何度かごくごくと飲んだあなたは、私が横たわっているベッドに近寄ってきて、ペットボトルをベッドサイドのテーブルに置くと、急に床に跪いて、部屋中に吐き散らかしたことについて謝り始めました。面食らった私は、ひとまずいままでにあなたが寝ていたベッドに戻るよう促しました。ここから先、何が起きたかは、敢えて触れないこととします。あなたの行動や態度を詳述することは、あなたを傷つけることになるからです」

ようするに、何があったのかは「あなたを傷つける」から詳述できないというのだ。一見して、女性の立場をおもんぱかっているような記述だが、一度は逮捕状を裁判所に発行された人物の手記とは思えない。伊藤詩織の告訴によって、世の人々に「あいつ(山口)は卑劣な強姦魔だ」と思われているのに、何があったか、事実関係を詳述しないのである。とりわけ、強姦か合意の上の性交渉であったかが、この「事件」の論点であり構成要件である。その重要な点を山口は記述していないのだ。

いっぽう、伊藤詩織の『BLACK BOX』は具体的である。

「目を覚ましたのは、激しい痛みを感じたためだった。薄いカーテンが引かれたベッドの上で、何か重いものにのしかかられていた。頭はぼうっとしていたが、二日酔いのような重苦しい感覚はまったくなかった。下腹部に感じた裂けるような痛みと、目の前に飛び込んできた光景で、何をされているのかわかった。気づいた時のことは、思い出したくもない。目覚めたばかりの、記憶もなく現状認識もできない一瞬でさえ、ありえない、あってはならない相手だった」

この「二日酔いのような重苦しい感覚はまったくなかった」実感が「レイプドラッグ」ではないかという疑惑につながるのだ。いずれにしても、彼女はレイプされていたと証言する。(つづく)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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社会「総右傾化」も追い風にならない産経新聞の危機から見える新聞社の未来

かねてより新聞・週刊誌をめぐる状況が厳しいことを本通信で紹介してきた。それを裏付ける顕著な数字が明らかになっている。産経新聞はこの春の新卒採用で実に「2名」しか入社しなかったことがわかった。産経新聞は、2018年4~9月の連結業績は約4億7000万円の営業赤字。「新卒2名」だけではなく、業績不振で180名の希望退職を募っている。

◆今の時代は産経新聞にとって追い風かと思いきや……

 
ハフポスト2019年2月25日付け

毎日新聞は過去実質的に2度「倒産」しているが、どうやら全国紙の中で最初に姿を消すのは産経新聞になりそうな雲行きだ。産経新聞は常時過剰なまでのアジア蔑視が紙面の特徴だと感じていたので、「総右傾化」のこの時代は産経新聞にとって追い風かと勘違いしていたが、一番の逆風を受けていることが証明されてしまった。ネット上のニュースで扇動的な記事の見出しがあり、それをクリックすると、出典が産経新聞やFNN(フジニュースネットワーク)に突き当たることが多いので、こちらでは健闘しているのかと思っていたが、ネット上の収入は屋台骨を支えるほどの力にはなっていない。

ネット上のビジネスでも産経新聞だけではなく、新聞社は苦戦を強いられているようだ。ニュースサイトは玉石混合、山ほどあるが紙媒体からスタートしたサイトよりも、ネットを「新たなビジネス」ととらえて既に構築を終え、回収期に入っている先行組が、大きな利益を上げているようだ。そのような企業はメインの顧客に10-50代を据えており、新聞・雑誌のターゲットと見事なくらいに重なっていない。10代、20代が自由に使えるお小遣いは大した金額ではないが、仮に1000円の商品でも、繰り返し購買されれば売り主としては立派に計算のでき得る顧客となる。

逆に年金生活で資産もある高齢者は、通信販売までは手が出せても、ネット上での商品購入までには(技術的・心理的)に手が出ない人が多い。あと数年して現在の60代が70代になったら、おそらくほとんどの人がネットになじんでいるだろうから、また購買行動には変化がみられるかもしれないが。

◆ジャーナリズムが機能不全に陥った社会で自由は持続できるのか?

 
産経新聞社採用サイト「SANKEI SHIMBUN RECRUIT 2020」より

それにしても報道やジャーナリズムは、新聞が急速に衰え、テレビが今日のように娯楽化した結果、ますます機能不全に陥るだろう。権力監視や腰を据えた調査報道には、経験や勘(そして取材に要する費用)も必要とされる。それに100万部単位の発行部数がなんといっても影響力を持つ。ネットサイトに軸足を移しながらも世界中でクオリティーペーパーがなくなった例はまだ耳にしない。いまのところ世界はまだ、新聞的な情報伝達メディアを必要としている(それがネット上であっても)ということであろう。

いっぽう、大新聞と比べるべくもないが、鹿砦社も独自の調査報道を行っているが、ほぼ大手マスコミから無視されるので影響力は限定的だ。例外的に代表・松岡が逮捕192日も勾留された、名誉棄損事件とされる「アルゼ」事件についてだけは近年、数々のスキャンダルが噴出し岡田親子の覇権争いが、注目を集めている。この件ではロイターや内外の報道機関が鹿砦社へ取材に訪れている。

 
産経新聞社採用サイト「SANKEI SHIMBUN RECRUIT 2020」より

関係者によれば、若手裁判官の2割はまったく新聞を読んでいないという。それでも司法試験に合格し、裁判官に任用されるのには問題はないとうことだ。産経新聞が遠からず姿を消すことは間違いなさそうだ。それについで、他の全国紙や地方紙もやがては消滅してゆくのだろうか。若年層の行動を観察していると、新聞にとって未来はかなり厳しいものであることはまちがなさそうだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダリズム・マガジン『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態
〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

「日本の国は冷和(つめたいわ)」── それでも世界に広がる支援・連帯の輪! 4月22日(月)大阪地裁で「センターつぶすな」第3回住民訴訟! 大阪維新に反対するみなさんも西成あいりん総合センターに来たらええねん!

 

◆自由に休めるセンターに約100人が集まる!

「前はシェルターも使ったけどね、ここ(センター)にきてからは好きな時間に休むことができるから、暖かい昼間に寝ることが多いですわ」。センターで自主管理が始まって以降、テントの近くに布団を敷いて寝泊まりする男性、70代半ばか。最初に会ったとき、下着の上に直接カッパのズボンを履いていたため、 支援物資の中から、小柄な彼にあわせたズボンを渡した。「ありがとね。大事に使わせてもらいますわ」と丁寧にたたんで枕元に置く。きちんと揃えられたズックの横。

4月1日から自主管理が始まったセンター内では、現在約100人もの人たちが寝泊まりしている。テントには全国から救援物資が届けられ、ドイツなど海外からの連帯メッセージも届いている。また直接現場に訪れる人も後を絶たない。東京から車で毛布を運んできた仲間は、渋谷での野宿者排除を許さない闘いの報告を行ってくれた。外から釜ヶ崎やセンターに来るきっかけになればと、これからも様々な催しが予定されている。自主管理が続く釜ケ崎の現地から報告する。

◆「100円の値打ちもない!」と言われたセンター仮庁舎の実態

仕事がないことを示す「かまやん」ばかりが映っている仮庁舎の求人募集の液晶パネル

南海電鉄高架下で業務を開始し、約1ケ月が経過したセンター仮庁舎に対しては、「使い勝手が悪すぎる」との声をあちこちで聞く。大阪府は仮庁舎での求人業務について、

〈1〉これまで業者が車両に提示していた「求人プラカード」を廃止する
〈2〉駐車スペースは1業者について1台とする
〈3〉各業者の求人は(仮庁舎内の)液晶パネルで表示してセンター職員が案内する、との政策を打ち出した。

これまで朝のセンターでは相対(あいたい)方式(求人プラカードを見た労働者がカードを提示する車両にいる手配師に直接声をかけ、話し、仕事に就く)をとっていた。

しかし、仮庁舎ではこのカードの提示をやめ、代わりにセンター職員が表に車を停めた業者に募集内容を聞きにいき、それを中の液晶パネルで表示、応募してきた労働者をセンター職員が当該業者の車両に案内するという、なんともまどろっこしい方法に変えた。こんなやり方が、慌ただしい朝の寄り場で通用するのか?

しかも実際の仮庁舎では液晶パネルに、仕事がないことを示す「かまやん」が映っていることが多いという。じつは4月1日以降もシャッターが開いているセンター側に車両を停め、これまで通り「求人プラカード」を提示し、募集する業者が多い。例えば「一般土工、8時~17時、時間外労働あり、賃金10000、宿舎費総額3200」のカードには朝食などの写真付き。このわかりやすい求人プラカードをなくして、液晶パネルで……と考えた「識者」は、早朝の現場を見たことがあるのか。

求人プラカードを見た労働者がカードを提示する車両にいる手配師に直接声をかけ、話し、仕事に就く従来の「相対(あいたい)方式」

◆労働者の「寄り場」をなくすこと、それがセンター建て替えの狙い!

こうした仮庁舎の実態を見るにつけ、建て替えられる新センターがどうなるのか、不安は増すばかりだ。1970年「日雇い労働者の就労斡旋と福祉の向上」を目的に設置されたセンターが、今後どうなろうとしているのか、釜ヶ崎地域合同労組委員長・稲垣氏に話を伺った。

── 昨日(18日)の朝、センターのトイレ掃除をしていましたね?あれだけ広いと時間かかるんじゃないですか?

稲垣 そうやね、2人で20~30分位かかったかな。トイレ掃除は毎日交代でやってます。自主管理なので自分たちで清潔にしないとね。

── ごみ問題はどうなりましたか?

稲垣 先日、釜ヶ崎公民権運動の大谷さんと、国(大阪府の労働局)に申し入れに行ってきました。電灯をつけるように、ごみの収集をするようにと要望書を提出してきました。

── 自主管理を続けるにあたって、取り決めなどありますか?

稲垣 今のところセンターは期限なく開放されているが、いつまた国や大阪府、警察がシャッターを閉めにくるかわからない。その時はまたみんなの力で跳ね返そうと話しています。またそれまでにくれぐれもセンター内にあるものには手をつけない、壊さない、持ち出さないことを守って下さいと。センター内のキーワードは「自由」だけど、やりっぱなしはダメ、そしてみなで仲良くやっていきましょうと話し合っています。

── さてセンターの仮庁舎が業務を始めて約1ケ月経ちました。いろいろ不備な点が出ているようですが?

稲垣 不備なんてもんじゃないですよ。仮庁舎の南側出口に段差があって、先日そこで足を滑らせ転倒し、右足のサラ(膝蓋骨)が割れて大怪我して入院中の方がいます。「高齢者特掃輪番労働者」の方で、労災を受けることになりましたが。

── 求人活動はどうなっているのでしょうか?

稲垣 釜ヶ崎ではずっと労働者と業者が直接交渉するという「相対(あいたい)方式」でやってきました。もちろんこれにも問題がある。ちゃんとした企業ならいいが、釜ヶ崎は手配師や人夫出しやから。相対方式が全面的にいいとは思ってないが、仮庁舎では求人プラカードがないから、余計わかりにくくなった。これからヤミ手配が確実に増えると思いますよ。

── そうした仮庁舎の実態を見ると、センターの本移転(建て替え)は何を目的としたものと考えられますか?

稲垣 はっきりしているのは、新しく建てられるセンターは、労働者を寄せ付けないものになるはず。そうやって労働者の「寄り場」をなくすことがセンター建て替えの狙いだと思う。

── 労働者がバラバラにされるということですか?

稲垣 そう、バラバラに孤立させられる。労働者自体を見えなくさせる、また矛盾や問題点も見えなくさせる、そういうことだと思います。

── 携帯電話で呼ばれて現場に行く、派遣労働者と同じ、労働者同士が団結しにくくなるでしょうね。

稲垣 それが狙いでしょうね。しかもさっき言ったようにヤミ手配が増えたりするから、労働環境はさらに悪化するやろね。

「100円の値打ちもない」。先日仮庁舎から出てきた労働者が吐き捨てるようにそうつぶやいていたという。

◆使い勝手の悪いセンター仮庁舎に府民の税金が7億5000万円!
  4月22日(月)「センターつぶすな!」第3回住民訴訟へ!

このように労働者にとってじつに使い勝手の悪いセンターの仮庁舎だが、そこには府民の税金(公金)が7億5000万円も投入されている。しかも同じ仮庁舎である「あいりん職安」の建設費用と比較して坪単価が1万円以上も高い点、仮庁舎終了時に土地を返却する際の「現状回復義務」を定めていない点など、極めて不明瞭・不可解な点が多い。確認しておくが、公金を使う際には必要最小限でなくてはならないという原則が前提としてあるにも関わらずに、だ。

第1回口頭弁論で稲垣氏の意見陳述書に添付された、老朽化した南海電鉄高架下の写真がある。これらぼろぼろになったスラブ、ハリ、柱などは、センター仮庁舎の建設費用で補修されたうえ、重量鉄骨で何十年も使用可能な建造物になった。しかも「現状回復」せずに南海電鉄に返却するということは、公金で補強された施設を南海電鉄が転用し、さらに儲けるということだ。前述したように、労働者に犠牲を強いるセンター仮庁舎が、その後南海電鉄を儲けさせことに使われるなんて、しかもそれに府民の税金(公金)が投入されるなんて、絶対に許されない。大阪維新の都構想につながる西成特区構想を末端から突き崩そう!

大阪維新に反対するみなさんもぜひ、センターに来たらええねん!

◎大阪地裁1007号法廷で、4月22日(月)午前11時から(当日はセンターから9時半、バスが出ます)
 
◎支援物資は、〒557-0004 大阪府大阪市西成区萩之茶屋1丁目3-44 あいりん労働福祉センター1Fテント小屋宛

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

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〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

「消費税廃止」をはじめアベノミクスに全面対決の反緊縮政策(新政府八策)を公約に掲げた山本太郎議員の新党「れいわ新選組」はトレンド転換の起点となるか?

◆野党共闘の枠組みから飛び出る

4月1日、山本太郎参議院議員(自由党共同代表)が新たな政治団体「れいわ新選組」を届け出、10日の記者会見で発表した。

最大のポイントは、アベノミクスに対抗して「反緊縮」の経済政策を前面に押し出したことにある。

その目玉は、消費税廃止。現職の国会議員を要する政治団体が初めて消費税の制度そのものを廃止する公約を掲げた。4月15日現在、消費税廃止を主張する政党は他にない。

いまのところ現職の国会議員の参加は山本議員ひとりであり、政党要件を満たしていないので「政治団体」だが、実質「新党」結成と表現していいだろう。

2015年夏の安保関連法制反対運動の挫折から、共産党からの呼びかけもあり安倍政権を打倒するために「野党共闘」が叫ばれてきた。

統一地方選前半戦の結果を見ても、野党共闘しても自民・公明に勝つのは難しいことを改めて示した。

たとえば、北海道知事選挙。自民・公明・大地から推薦を受けた鈴木直道氏が約162万票、立民・国民・共産・自由・社民から推薦を受けた石川知裕氏は約96万票。与党系候補が圧勝したのは象徴的だ。

山本太郎参議院議員

◆党名の裏にひそむ150年ぶりの政権交代の夢

「れいわ新選組」という党名が発表されてから、党名に対して賛否両論があり、違和感や疑問を呈する意見もインターネットなどに出ている。

筆者も、最初に党名を聴いたとき違和感を覚えた。しかも記者会見の前日4月9日のテレビ朝日の報道によれば、表記する文字が「新撰組」と表記されていた。

新選組は、江戸末期の江戸公儀(徳川政府)の武装警察組織として尊王攘夷派などを取り締まった。とりわけ尊王攘夷派の中心になった長州藩士らを弾圧した。

4月10日の記者会見で、新撰組は権力側についたのではないかとの質問に山本代表は、「新『選』組は、あたらしい令和という時代に選ばれれる人々。そして今の権力とは主権者・国民です」と答えている。

つまり、国民を守る意味だということだ。さらに、「党名にはアイロニーが込められており、解釈は各人の自由です」という趣旨の発言もしている。

アイロニーとは、表面の意味と逆の意味を込めた表現であり、、皮肉であり風刺でもある。新元号の令和を私物化するかのようにパフォーマンスを演じた安倍首相への痛烈な皮肉という見方もできる。

筆者の解釈はこうだ。

戊辰戦争の勝利により、尊王攘夷派が明治国家をつくった。間もなく尊王攘夷派内の長州が実権を握り、手を変え品を変えて、第二次大戦敗北後はおろか、現在まで”長州尊王攘夷派”的なレジーム(思想・政治・体制)が続いている。

現在の安倍政権は当然、長州の流れである。「新撰組」の最大の敵は長州尊王攘夷派だった。

つまり、新選組ならぬ「れいわ新選組」を結成したということは、1868年に長州らにお奪われた政権を、奪還すること。言い換えれば約150年ぶりの政権交代を実現しようという意味合いが党名に秘められているのではないか。

◆新政府八策とは?

旗上げ記者会見では、「政権を奪ったらすぐ実行します」と8つの政策を発表した。

(1)消費税廃止
(2)最低賃金全国一律1500円(政府が補償)
(3)奨学金徳政令(奨学金返済チャラ)
(4)公務員を増やす
(5)一次産業個別所得補償
(6)トンデモ法の一括見直し・廃止
(7)辺野古新基地建設中止
(8)原発即時禁止

「れいわ新選組」の公約「新政府八策」

ひとことで言って反緊縮財政の推進だ。前述したように、国会議員を擁する政治団体としては唯一消費税廃止を政策のトップにかかげている。

厚生労働省の国民生活基礎調査(2018年)で56.5%が「生活が苦しい」と答えている。また、一人暮らし女性の3人に1人が貧困であり、貧困と格差は拡大している。このような人々を救うための政策だ。

山本代表は、「国債を発行して財政を出動させる」と表明している。国の借金が増えて破綻するなどとありえないことを喧伝する一部の人がいるもが、自国通貨・円建ての借金だから破綻はしない。

破綻といえば、ギリシャを思い起こすかもしれないが、ユーロという”外国通貨”を借りて返せなくなったギリシャとは、まるで違うのだ。

消費税に代わる税収としては「とれるところから取る」(山本議員)という。消費税がなくても不公平税制を正せば38兆円の財源が生まれるとの試算もある。(「不公平な税制をただす会2018年度試算)。

◆10億円で衆参ダブル選、3億円で参議院10人候補者

今年夏の参院選挙、場合によっては衆参ダブル選挙もあり得る。当然、選挙資金が必要となるが、それは個人からの寄付に頼る。集まった金額によって戦略戦術を立てていくという。

〇衆参ダブル選で挑戦する場合、10億円が必要。

〇参院選で最大限の挑戦をする場合、5億円が必要。

〇参院選で10人の候補者を擁立する場合、3億円が必要。

無謀な挑戦にならないように、5月31日までに1億円集めることを第一目標にし、1億円集まらなければ、山本太郎議員のみが東京選挙区から立候補する。
 
◆消費税5%減税で窮地におちいるか?

ここ3年以上、野党共闘が叫ばれてきた中での新党結成になるが「別の角度からの野党共闘」(山本議員)という考えで、新党の旗を降ろす場合もありえることも明らかにした。

政策で野党が歩みよれば旗を降ろすというのだが、山本議員は、廃止までは行かなくとも消費税5%減税で野党がまとまったような場合だという。

もしそれを実行すれば、新党はおろか野党勢力・市民勢力が壊滅する可能性もある。

すでに、安倍総理は「消費減税」を訴えて衆院を解散し、衆参ダブル選挙を仕掛けてくる可能性があるという話も流れ始めているからだ。

そうなれば、5%減税などと主張していては、壊滅的な敗北になるだろう。仮に与党が消費税減税を主張しなくても、消費税存続か廃止かの二者択一を有権者にせまるほうが勝利の可能性は高まるだろう。

今回の新党結成はトレンド転換の起点となるか。5月末から6月初旬には、ある程度先が見えてくるかもしれない。

◎れいわ新選組ホームページ https://www.reiwa-shinsengumi.com/index.html


◎[参考動画]山本太郎参院議員、自由離党で新党結成へ 午後6時から記者会見(2019年4月10日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

創業50周年!タブーなき言論を!『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態
〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来

税金ファシズムをぶっとばせ!法人税に累進性を取り入れ、消費税を廃止せよ! 4月20日の草の実アカデミーは荒川俊之氏「過去の成功体験に学ぶ消費税廃止」

◆消費税は、差別する「凶器」

差別といえば、宗教や人種、性的マイノリティー差別のことが叫ばれるが、それだけではない。大金持ちと巨大企業を優遇し、貧乏人から搾り取る税制も差別そのものだ。

そのシンボルが消費税であり、これを廃止して公正な世の中にして日本を蘇らせようという講演会が、4月20日(土)午後2時から東京都豊島区の巣鴨地域文化創造館第1会議室で行なわれる。

不公平な税制をただす会の荒川俊之事務局長による「成功体験に学ぶ消費税廃止
~法人税・所得税・住民税の大改革を提言~」という講演会だ。

1989年に消費税が日本に導入されてから、3%、5%、8%と増税したのに、30年間も税収は変わらない。

それは、巨大企業と大資産家・超高所得者を大幅減税し、その穴埋めに庶民が支払った消費税を、そっくりそのまま充当しているからである。

その一方で、「日本の法人税は高い」というデマがはびこるが、実際は中小零細企業より巨大企業の税金は安い。所得が1億円を超えると税が安くなる驚くべき事実もある。

まさに「消費税は差別のための凶器」なのだが、この消費税を廃止する公約を第一に掲げた新党「れいわ新選組」(山本太郎代表)が生まれた意義は大きい。

◆日本転落の元凶=消費税
 
消費税が私たちの暮らしに決定的なマイナスをもたらしたのは、1997年4月1日に3%から5%に増税したことだ。

このときからデフレが起き、実質賃金が下がり始め、生活水準がじわり、じわりと下がり、中小零細行差の困窮が始まった。まさに日本転落が始まったのである。
 
まずしい人も大金持ちも同じ比率で支払う消費税は、所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性の最たるものだ。このような“年貢”の取り立てに対し、納税者一揆が起きてもおかしくない。

◆輸出戻し税、受取配当利益不算入など大企業優遇のオンパレード

優遇されているのは二つ。大企業と大資産家・超高額所得者だ。まず、法人税法のほかに、本来なら時限立法として企業への「租税特別措置」を大量につくり、それが恒久法化しているのだ。

そのひとつが輸出還付金(輸出戻し税)で、輸出大企業は消費税を税務署に納めないどころか、巨額の還付金をもらい続けている。

そのため、トヨタのお膝元、愛知県の豊田税務署は大赤字。ほかの中小企業などが納めた税金が、輸出還付金としてトヨタに渡されている信じがた状況である。。

『消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制』(不公平な税制をただす会=編/2018年1月大月書店)

今回の講演者である荒川俊之氏が事務局長を務める「不公平な税制をただす会」編集による『消費税を上げずに社会保障財源38兆円を生む税制』(大月書店)は、納税者必読本だろう。

この本には、具体的な数字や事実、改革した場合のシミュレーションが豊富に掲載されている。

たとえば、いま例を挙げた輸出戻し税は、トヨタ自動車一社だけで税務署からもらう還付金は3,231億円。以下、日産自動車、マツダなど輸出が多い自動車メーカーが続く。その合計は8,311億円。

自分が納めた税金の全額もしくは一部を還付してもらうのではなく、下請けや仕入れ先が税務署に納めた税金から還付される。

その結果、管内に輸出大企業を抱える8つの税務署が赤字というマンガのような事態になっている。

ワーストスリーは、豊田税務署3,043億円(トヨタ)、神奈川税務署788億円(日産)、広島・海田税務署533億円(マツダ)。数字は赤字額。

これはほんの一例だが、このような企業優遇税制がまかり通っている。

◆大企業はまともに税金をはらっていない

にもかかわらず、「日本の法人税は高い」などというデマもしくは”都市伝説”がはびこり、消費税が必要かのように喧伝されている。

日本の法人税は、零細企業から超巨大企業まで一律に23.2%なのだ。(あくまでも特例措置として零細企業の法人税をを低くする措置はある)。これだけでも驚くべき差別だが、その約23%の税金さえ支払っていない有名大企業がずらりとならぶ。

トヨタ自動車は、08年度から5年間、トヨタは法人税を1円も払っていなかった。零細事業者や低所得の派遣労働者らが血税を払っているのに、である。

消費税を上げろと主張する人たちが「日本の法人税は高い」と言っているのを耳にしたことがあるだろう。実は、明らかなデマであり、騙しのテクニックが存在する。

報道における「法人税率」とは「法人実効税率」のこと。「実効」というと実際に支払うことのように感じるが、法人税・法人事業税・法人住民税の合計を指す。

実際は大企業が優遇されて、法人実効税率32.11%だった11年から5年間、トヨタは21.0%、日産自動車7.6%、伊藤忠商事3.0%、三菱電機1.0%などが実際の負担率だった。

資本主義の権化アメリカでさえ、法人税は、15%、25%、34%、38%、39%の6段階の累進課税である(16年度)。

日本の法人税を5%、15%、25%、35%、45%の5段階の累進性にすると、約19兆円の増収になり、これだけで消費税はいらなくなる。

◆大企業優遇をやめると23兆円の税収アップ

受取配当金益金不算入もある。企業が持つ他社の株の受取配当金を利益に組み入れなくてもいい制度、国内の子会社や関連会社の株配当金は100%除外できる。

それ以外の企業の株配当も、50%を利益に入れなくていい。さらに、あれだけ稼いでいるトヨタの税金支払いが極少額なのは、海外からの配当のうち95%が非課税だから。

海外からの配当が100万円とすると95万円非課税で、5万円分だけ法人税をかけるのと同じことである。

「ただす会」によると、大企業に対する減税は総額23兆円を超えており、企業優遇税制を変えるだけで、その分がまるまる税収増になり、消費税などまったく必要ない。

そして「ただす会」の18年度の試算では、不公平税制をただすと、国税と地方税あわせて37兆3104億円の財源が生まれる。

高額所得者や大資産家への課税も必要だ。所得約1億円を超えると税負担率がどんどん下がっていくありえない事実もある。

高額所得者ほど株譲渡や配当金の占める割合が高くなり、金融所得は5,000万円でも3億円でも100億円でも、税率は一律に20.42%のまま。

給与や事業と分けて計算する分離課税だ。入ってくるものをすべて合計して税率を計算する総合課税にすべきだろう。あるいは、金融所得に累進性を採用してもいい。

当日は、あきれた差別税制の実態と、どこをどう改善すればよくなるか具体的に指摘される予定だ。

消費税廃止を第一公約にかかげる新党「れいわ新選組」も結成されたし、消費税廃止の是非は、国政選挙の最大の争点になるかもしれない

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《講演情報》
第114回 草の実アカデミー
過去の成功体験に学ぶ消費税廃止
~法人税・所得税・住民税の大改革を提言~

講師:荒川俊之氏(税理士・不公平な税制をただす会事務局長)
期日:2019年4月20日(土)13:30開場、14:00開始、16:45終了
場所:巣鴨地域文化創造館第1会議室(東京都豊島区巣鴨4丁目15)

交通:JR山手線・都営三田線 巣鴨駅徒歩15分 巣鴨商店街
資料代:500円
主催:草の実アカデミー
http://kusanomi.cocolog-nifty.com/blog/
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▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

創業50周年!タブーなき言論を!『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態
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な・に・が「れいわ」だ!「新選組」だ!どあほうが! 「維新」さえ下回る最低最悪な党名「れいわ新選組」を掲げた山本太郎議員への絶望

国会議員の中で「リベラル」から支持を得ていた(得ている)山本太郎参議院議員(現自由党共同代表)が、同氏のブログの中で、

 
山本太郎議員HPより

《山本太郎は、自由党を離党、新党を結成します。ただし、離党は4月の後半。国民民主党と自由党の合流の可否が出たのちその結果にかかわらず離党します。》

と自由党を離党する意向を明らかにしている。

新しく設立される党の名前は「れいわ新選組」だ。

ここから山本太郎氏についての私見を述べるが、「れいわ新選組」との絶望的な命名を決めた山本太郎氏に、

「あなたには最終的に絶望した」と、まずは一切の遠慮なく本心を述べておく。

◆れいわ新選組──これ以上深い私を絶望へと導いてくれる名前はない

山本太郎氏は才能豊かな俳優であり、2011年3月11日後には、NHKなどメジャーな地上波放送局で数多くのドラマに出演したり、ナレーターをつとめていたにもかかわらず「反原発」を明言するなど「社会派俳優」として、マスコミから無視されるなか、少なくない人々から期待を寄せられていた。全国各地を飛び回りデモに参加したり、自主避難をしている福島からの原発事故被害者に寄り添う姿勢は、「知識人俳優」が絶えて久しい芸能界の中では光り輝いていた。

 
山本太郎議員HPより

山本太郎氏は2013年の参議院選挙で、東京選挙区から立候補し見事当選を果たした。当時は「新党ひとりひとり」を名乗り、実質無所属の議員だった。その後自由党の共同代表に就任し、このほど自由党と国民民主党の合流(あるいは両党の合流は成就しないかもしれないが)議論に向き合う過程で「れいわ新選組」なる政党の立ち上げを宣言した。

「れいわ新選組」。この時期に立ち上げる政党の名前として、これ以上わたしをさらに深い絶望へと導いてくれる名前はない。

◆挙げられた政策の順番が違うのではないか?

 
山本太郎議員HPより

同党の政策には、

《れいわ新選組は、ロスジェネを含む、全ての人々の暮らしを底上げします!》との前文のもとに、

・消費税は廃止
・安い家賃の住まい敷金・礼金などの初期費用や家賃、高くないですか?
・奨学金チャラ
・全国一律!最低賃金1500円「政府が補償」
・公務員を増やします
保育、介護、障害者介助、事故原発作業員など公務員化
・一次産業戸別所得補償
・災害に備える
・コンクリートも人も~本当の国土強靭化、ニューデイールを~
・お金配ります~デフレ脱却給付金・デフレ時のみ時期をみて~
・財源はどうするの?~デフレ期にしかできない・財政金融政策~
・真の独立国家を目指します~地位協定の改定を~
・「トンデモ法」一括見直し・廃止
・原発即時禁止・被曝させない ~エネルギーの主力は火力~
・DV問題
 被害者支援と加害者対策、防止教育を基本とし、DV・虐待のない社会の実現へ。
・児童相談所問題
・動物愛護

が紹介した順番に挙げられている。

全体としての問題意識に大きな反論はないが、「順番が違うだろう」と指摘させていただかねければならない。

◆「天皇制にまで切り込め」とまでは要求はしない。だが、しかし……

山本氏は芸能界に入る前から、同世代のなかでは例外的といってよいほど社会問題に対する意識を「隠し持った」人物であった(山本氏に直接インタビューをする中でその知識と感性は幾度も感じさせらた)。今般「俳優」や「役者」はもっぱら顔かたちが整うか、あるいは姿に個性があるか、表層の演技力の有無だけで銀幕やテレビドラマの出演機会が決定されるようだ。

つまり「俳優」、「役者」は「知識人」とまったく同等ではないし、多くの観覧者も「俳優」・「役者」に「知識人」の役割を期待してはいない。演じるものも、観るものも頭のなかには、刹那の感情の揺れ程度の短射程しか期待していないし、関心はないのだ。しかし、わたしはベテランの「俳優」・「役者」から、直接この惨状についての嘆きや、諦めをいくつか聞いたことがある(往年の銀幕スターの多くは、おそらくいまの「役者」の10-100倍の読書経験があろう)。

そのような趨勢にあり、2011年3月11日以降、山本氏の言動には刮目すべきものがあったことは確かである。この通信の発信元鹿砦社が出版する書籍や雑誌のなかでも山本氏には幾たびもご登場いただいた。

山本氏に「天皇制にまで切り込め」とまでは、要求はしない。だがしかし「差別の元凶=天皇制」になんら批判なく党名を「れいわ新選組」などと、日の丸を立てた街宣車を走らせる右翼団体かと勘違いするような、命名をしてしまった愚は取り返しがつかない。これは山本氏の限界を示した象徴的かつ決定的な選択(新選組ではない)として、わたしと近い考えのひとびとには受け止められても仕方がないであろう。

◆「れいわ新選組」は「維新」を下回る「最低最悪」の党名だ!

どうして、右を向いても、左を向いても皇室称賛、改元翼賛が、行政から民間までを巻き込み荒れ狂うるこの時期に、ありとあらゆる機会に「ありがとう平成」などという主語のない、極限の思考停止のフレーズが街にあふれる「異常事態」のタイミングで、敢えて「れいわ新選組」などという、一縷の期待(わたしの期待ではない)をも踏みつぶす名称をあえて選んだのだ。なんとなく少しソフトで若者を引き寄せられたら、次の選挙で票の上積みができるとでも考えたのだろうか。若者はそんなに賢くもないし、政治なんかに興味はありはしない。

山本太郎氏よ、あなたには「政治家」としての資質がある。ときに直接、ほとんど距離を置き、あなたを当選前から眺め、なんども話を聞いたわたしには、あなたが小沢一郎を利用したことは意外ではなかった。なんせ当選が決まった直後の選挙事務所で、あなたはこう発言していたのだから。

「政権を取るまで頑張りましょう!」

あの発言に支援者からは拍手があふれたけれども、わたしは別のことを感じていた。そしてそれは「れいわ新選組」という「維新」を下回る「最低最悪」の党名を選んだあなたの行為によって証明されてしまった。

◆「原発即時禁止・被曝させない」がなぜ、政策の13番目に後退しているのか?

どうして「原発即時禁止・被曝させない ~エネルギーの主力は火力~原発」が16項目ある政策の中で、13番目にもってこられているのだ。ほかの政策が悪いといっているのではない。山本氏、あなたが主張しなければほかのどの国会議員も「筆頭公約」としては掲げない、「原発即時禁止・被曝させない ~エネルギーの主力は火力~」が13番目に後退していることに、あなたの「政治家」としての資質を、わたしは再確認するのである。

もとより、一部を除き「決定的に取り巻きが悪い」という状態が6年続いて、まだ上記の政策を維持できているのは、むしろ「現実的」には評価すべきなのかもしれない。けれども、6年前、山本氏に投票したひとの多くは「現実的」という名の「妥協」をに満足せず、「闘い」や「当たり前でありながらドラステックな変革」を求めていたのではないだろうか。

6年間であなたは「政治家」としては見事に成長した。しかし、あなたは決して取り戻せない貴重な数々を失った。もう「絶望の中にしか希望はない」との思いで投票所であなたの名前を書いたひとびとへの言い訳は、百万語を費やしても成立はしないだろう。


◎[参考動画]山本太郎参院議員、自由離党で新党結成へ 午後6時から記者会見(2019年4月10日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』19号 特集〈3・11〉から八年 福島・いのちと放射能の未来
創業50周年!タブーなき言論を!『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

金曜夜、新宿駅西口地下で3時間話し倒すおしどりマコ『ガチ街宣』NO NUKES

新宿駅西口の地下。高層ビルの立ち並ぶ新都心方面へ向かう通路の手前に、新宿にしては広々とした空間が広がっている。4月12日金曜日の午後6時。ロータリーから見える円形の、色味を深めて夜景になりつつある空を背に、本日の主役がマイクを握った。

漫才コンビ〈おしどり〉のマコさんは、本年7月21日の投開票が有力視されている参議院議員選挙へ、立憲民主党の議員〈おしどりマコ〉として出馬を予定している。『ガチ街宣』と銘打った今日のステージは、約3時間の長丁場となった。

ふと立ち止まり、いつにまにか中央にまで進んで話を聞き続けるサラリーマン。通行の邪魔だと言わんばかりの顔つきで、わざわざ参加者のあいだを通り抜けようとする者。「やば、これテレビ映ってるんじゃね? キャハハ」という(マンガに登場するギャルのように典型的な)明るい声を残して去る、綺麗な女の子2人組。自分からこちらへ歩いてきた女子高生もいる。ひっきりなしに流れる人混みのなか、だんだんと輪が広がり、20時頃には50人ほどの参加者が集まっていた。

今日はとても寒く、気温は9度。運営の方が「使い捨てカイロを持ってきたんですけど、配れません! 公職選挙法でダメなんですね。30円で売ってますのでよろしければ」とアナウンスしていた。

「3.11のすぐあとから、サポートというか、マコさんのツイキャスをずっと見ていて、いろんなことを教えてもらっています。政治のなかでタブー視されてしまっている原発とか被曝とか、そういうところを深く切り込んで追求してもらいたいし、あと、隠されてることも沢山あるので、そういうのをキチンと国民に知らせることができるような議員さんになってほしいな、と思っています」と語るのは、通行人に声をかけパンフレットを配るモリモトさん。

「ホットスポットとか、廃棄物、ああいうものがこのままの状態で忘れ去られるというか、みんな諦めてどこかに埋められてしまうとか、そういうことにすごく危機感を覚えています。将来わたしたちが死んだあと、次の世代、次の次の世代の人たちが苦しむことがないように、今のときにできることをやりたいなと思っています」

講演の内容についてはここに記さない(気になる方はYouTube等でご覧いただくとよいだろう。そして可能であれば、是非現場へ足を運んでおしどりマコさんのお話にどっぷり浸かっていただきたい)が、2日前に『れいわ新選組』を結成した山本太郎氏についてのみ、新鮮な話として載せておくことにする。

「太郎くんがいたからこそ、国会議員ってどういうものなのか、どういう動きがあるのか、どういうことができるのか、知ることができたんですね。で、私が選挙に出るのであれば〈2人目の山本太郎〉みたいな動きをするのではなく、もっと違う、中に入り込んで、中から連携して動かしていくっていうことをやろうと思ってます。太郎くんがまたひとり飛び出して、いろいろ新しい動きをしていくっていうのは、私のやりかたとは全然違うんですけど、すごく面白いし、楽しいことになってきたなと思ってます」

「今日、なんかめっちゃマニアックな話ばっかりしました。マニア増えたらいいなと思って!」と言うマコさんだが、そのマニアックな内容を、長時間飽きさせずに話し伝えることができるのだからスゴい(実際、20人以上が最初から最後まで聴き続けていた)。

◎おしどりマコさん Facebook https://www.facebook.com/oshidorimako
イベント・街宣予定 https://www.oshidorimako.page/home


◎[参考動画]NNNドキュメント:お笑い芸人 vs 原発事故 おしどりマコ・ケン

▼大宮 浩平(おおみや・こうへい) [撮影・文]
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
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タブーなきスキャンダリズム・マガジン『紙の爆弾』5・6月合併号【特集】現代日本の10大事態

佳境を迎えた滋賀医科大問題 ── 全国から「岡本医師の治療継続」を求める声

4月9日16時30分から大津地裁で患者さん4名が滋賀医大病院附属病院泌尿器科の河内・成田両医師を相手取り「説明義務違反」により損害賠償を請求した民事訴訟と、岡本圭生医師の治療を望む「待機患者」7名と岡本医師が滋賀医大を相手取り「治療妨害の禁止」を求めた仮処分の審尋が大津地裁で同じ日に連続して行われた。

この訴訟と仮処分の日に患者会のメンバーは12時半頃から滋賀医大附属病院前で抗議のスタンディングを行った。患者会は昨年末に「岡本医師の治療継続」を求める署名活動を全国で展開し、短期間に2万8千筆を超える署名が集まった。3月13日署名の現物をもって厚労省、国会議員に嘆願・陳情を行った。それと相前後して病院前での「スタンディング」による抗議活動が始まっていた。冷え込みが強い今年の冬、早朝病院前での「スタンディング」は患者さんにとって、体力的にも厳しいに違いないが、毎回20名を超える参加者が集まり「抗議活動」が続けられてきた。

この日はこれまで最大規模の約35名が病院前に集まり、晴天ながらやや寒い風が吹く中約2時間にわたり、静かに大規模な抗議が展開された。抗議行動に音を上げたのか、病院の事務室ガラス窓は、途中からブラインドが下ろされる。これまでにはなかった病院の狼狽ぶりが観察できた。

約35名が病院前で約2時間にわたり、静かに大規模な抗議を展開した
患者会アドバイザーでフリージャーナリストの山口正紀さん

15時30分からは裁判所にほど近い大津駅前で集会が開かれた。患者会代表の惠さんが「きょうも晴天です。患者会の活動はきっと幸運に見守られているのでしょう」と挨拶をして集会がはじまった。患者会アドバイザーでフリージャーナリスト山口正紀さんが最初のスピーチにたった。

「3月13日厚労省への申し入れも取材しましたが、課長は 『違法行為が確認できないと動けない』というので『違法行為が確認できなくとも、異常なことが起こっていることはわかるだろう』と発言しました。翌日(3月14日)には病院のHPで『新たな小線源治療をはじめる』との告知がありましたが、なんとそれを担当するのは、いま説明義務違反で被告になっている成田医師だそうです。まったく施術の経験がない成田医師。研修を受けた、見学をしたから大丈夫と病院はいっていますが、驚くべきことです。わたしもガンと闘っていますが皆さん共に頑張りましょう」

山口氏はこの日スタンディングから記者会見までの始終を取材されていた。

待機患者の鳥居さん

続いて待機患者の鳥居さんが「わたしには心強い仲間が居ました。ご自身の治療は終わっているのに、手弁当で全国から集まってこられる先輩方の存在です。先日病院前のスタンディングに参加していたら『君は待機患者だろう。体を大切にしなさい。私が変わろう』と言葉をかけて頂きました」と名も知らぬ患者同士の結びつきにより支えられている患者会の運動についての感想を語った。

待機患者の宮内さん

同様に待機患者の宮内さんは「裁判所は常識的に『治療継続』との判断をしてくれると信じています。しかし目的はそれだけではありません。未来の患者にわれわれ同様『岡本メソッド』を受けられるようにする必要があります。そのためには岡本先生が大学に残り、後進の医師を育ててもらう必要があります。皆さん!がんばりましょう!」と元気な訴えを行った。

そのあと、提訴原告の大河内さんと患者会代表幹事で、街頭活動のリーダーが挨拶をし、頑張ろう三唱で集会は結びとなった。到底傍聴席には入りきれない80余名の集会参加者は裁判所前に移動し開廷をまった。

患者会のメンバーが、傍聴できないひとを裁判後、記者会見が行われる教育会館に誘導する。16時20分、傍聴席の扉が開いた。法廷の最後尾にテレビカメラが準備されている。この日の裁判は「冒頭撮影」がおこなわれることがわかった。社会的に注目の高い裁判に限り、テレビ局が裁判所に申請をすれば、代表撮影が2分間許される。

傍聴席には入りきれない80余名の集会参加者が裁判所前に移動し開廷をまった

いよいよ滋賀医大附属病院、泌尿器科を発信源とする問題の数々への注目が、本格的に広がりだしたことを示す証だろう。そういえば、この日病院前のスタンディングから、従来より継続取材と放送を続けているMBS(毎日放送)に加えてABC(朝日放送)の取材陣も新たにカメラを持って現れていた。

16時30分から予定通り「説明義務違反」の裁判が始まり、原告被告双方が準備書面の弁論を行い、参加人である岡本医師の代理人も準備書面を提出した(弁論)。原告側からは、証人として、塩田浩平滋賀医大学長、松末吉隆病院長、原告の申請がおこなわれたが、裁判長は被告に対して、再度の釈明(反論)を求め、被告が5月17日までに書面の提出を行い、次回期日は6月11日13時30分からと決まった。

弁護団長の井戸弁護士

引き続いて仮処分の審尋がおこなわれた。仮処分は非公開なので、傍聴席を埋めた患者会のメンバー取材陣は、記者会見が行われる、教育会館に移動した。仮処分の審尋はせいぜい15分から、長くとも30分程度と考え、記者会見は17時30分開始の予定であったが、記者会見がはじまったのは18時15分であった。

弁護団長の井戸弁護士が会見の遅れた理由などを説明した。井戸弁護士によると仮処分の審尋についての話し合いが長引き、5月中の結論を出せと要請しているが、和解のための期日が4月19日に設けられたとの説明があった。ただし、和解についてはデリケートな内容であり、申立人との確認が必要であることから詳細な説明はなされなかった。仮処分は、早くも決定的な局面を迎えることになった。

岡本医師が会場に現れ参加者に挨拶

記者会見終了後、岡本医師が会場に現れ参加者に挨拶をした。

「本日はお忙しい中、遠方からもお集まりいただきい誠にありがとうございました。私は本日も3名の方の治療を終えて駆け付けた次第であります。私自身、唯一の願いはなんとか待機患者さんを救えるように、また、まだ私の受診すらできず待っておられる患者さんを救いたい。そのことに頑張りたいその一念であります。さて私たちは患者さんの人権や人命を守るために一緒に闘っているわけです。しかし私たちが初めて闘いをしたわけではないことを最近知ることになりました。(中略)私はこの事件を知りとても勇気づけられました。私や私の待機患者さんには既に治療を終わられ、ひたすら利他の気持ちで患者さんを救いたい。なんとかそれに行動したいという多くの方がおられることに大変ありがたく思って居ることと、本当に誇りに思っております。2015年に泌尿器科の不当行為から原告を含める20数名の患者さんを救い出した時から、私の気持ちは一切変わっていません。私はこれまで通り命を懸けて待機されている前立腺がん患者の皆様を救えるように、これからも頑張っていきたいと思いますので、引き続きどうぞご支援のほどよろしくお願いいたします」

岡本医師の挨拶のあと、拍手が鳴りやまなかった。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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