オウム真理教死刑確定囚〈戦後最大〉7人同日死刑執行は国家の暴虐

7月6日早朝から「麻原彰晃死刑執行」のニュースが、列島を襲う大雨情報の中を狙ったかのように散発的に報じられ始めた。オウム真理教関連の死刑確定囚は13人。そのうち実に7人の死刑がこの日正午までに執行された。

オウム真理教関連の死刑確定囚は3月に東京拘置所から、全国の「死刑執行」施設のある拘置所に移送されており、「東京五輪前に一斉執行があるのではないか」と関係者の間では推測されていたが、「東京五輪前」どころか国会会期中で、全国的気象災害が懸念される非日常的天候の中、戦後史最大人数の「同日死刑」が執行された。

◆「人の死を止められなかった」経験から死刑制度を考える

私は「死刑廃止」論者である。

どんな悪党でも、何人殺人を犯そうが、国家による死刑には絶対反対である。理由は簡単だ。「人を殺す」ことは(正当防衛や殺意のない過失致死などを除いて)、絶対にあってはならない「悪行」である、と確信するからだ。この議論になると必ず「じゃあお前の家族や子供が殺されたらどうする?」という問いを投げかけてくる人が多い。私の回答は、

「私はたぶん殺人者に敵意や殺意を抱くだろうが、私的復讐感情を吸収するのが、成熟した法治国家の姿である。私が殺人者を殺せば、復讐感情の連鎖が起こる。『感情』の問題と『法』の問題を混乱させるべきではない」

である。表面的に格好をつけているように聞こえるかもしれないが、私は過去に、「ひとの死を止められなかった」経験がある。それも複数人である。私がもう少し注意深かったら、神経が繊細であったら、忙しくなかったら彼ら・彼女らが命を失うことを止められた可能性がある。つまり私は人の死に積極的に関与したわけではないが、自然死ではない「死」を止めることができたかも知れない立場の人間であった。その経験は私をいまだに「縛って」いる。ときどきに彼ら・彼女らの顔や言葉を思い出す。私は「殺人犯」としての責任はなかったにせよ、彼ら・彼女らの命を「途絶えさせる」ことに関係した責めを負って生きている。

と同時に私は殺意に近い感情を長年抱いている対象者が複数いる。私を「殺そう」と企図した人間や、私を破滅させようと徒党を組んでいた連中である。しかし、私は前述の原則に則って、絶対に怨嗟による「殺人」を犯さない、と決めている。決めているが情念の部分では「憎い」ことに変わりはない。

後先考えずに「殺(や)ろう」と思えば、「殺(や)れた」瞬間はいくらでもあった。が、愚かな私でも社会を学び、世界に接し、法に触れる中で「殺人」には絶対に手を染めてはならない、と確信が持てるようになった。「殺人」は個人による殺意に基づく「殺人」や、権力による法を後ろ盾とした「殺人」(死刑)、さらには国家間の意思による「大規模殺人合戦」(戦争)があり、それらは規模や動機の違いはあれ「人を殺す意思を持った行為」である点においては共通ではないのか。であるならば「公の言い訳」を与えられた大規模殺人合戦(戦争)は、ほぼ「絶対悪」(侵略者に対する抵抗など少数を除き)であるとの結論に至った。

回りくどいようであるが、「戦争」を嫌悪し、忌避するのであれば、「死刑」にも反対せねば理屈が一貫しない(世間では「戦争」も「死刑」も賛成の言説が増えているようである)。極めて簡単な論理なのだが、いまだに「被害者の復讐感情」を過剰評価する、精神性から抜けきることができない日本文化では、まだ「死刑」が存置されている。私は被害者感情を「無視しろ」、「放置しろ」と思ってはいない。私自身、殺意に基づいて「殺され」かけた経験があるので、被害者感情の一端は理解している。だから被害者感情は「死刑」ではない、それこそ国家によるケアーで解決が目指されるべきものであると考える(被害者感情が解消できるか解消できないかは、簡単な問題ではないが)。

ようやく日弁連も「死刑廃止」を遅まきながら方針として打ち出した。繰り返すが理屈は簡単だ。「人殺し」は「悪」なのだ。「人殺し」に対する処罰が「人殺し」であるのは、明白な矛盾であり倒錯だ。

◆オウム真理教はなぜ権力から放置されたのか?

この期に及んだので当時からの疑問を披歴する。オウム真理教はどうしてあそこまで肥大化し武装するまで、権力から放置されたのか? オウム真理教が急成長したのは、新左翼対策に大幅な人員増がなされた公安警察や公安調査庁の人員が余り、彼らが「仕事」を探さなければならない時期であった。新左翼の退潮により「仕事を探していた」はずの公安警察、公安調査庁は、1989年に坂本堤弁護士一家殺人事件を起こし、素人目にも危険性が明らかであったオウム真理教をどうして、監視対象にしなかったのか(公安調査庁に対しては「廃止論」が現実的に議論されていた時期でもあった)。

ヘリコプターや武器材料をロシアから輸入していること、ロシアでも広範な布教活動を行い現地から短波ラジオ放送を行い、マフィアと結びついていたことを、公安警察や公安調査庁は、本当にまったく知らなかったのか。この点がどうしても納得できないし、なによりも不自然である。

同日7人の死刑執行という「国家による暴虐」が行われた日に、他人事としてではなく「死刑」を考えよう。その延長線上に、おぼろげであった輪郭が像を結びだしてきた「戦争」があるのだ。内に向けては「死刑」、外に向けては「戦争」。国家の実像がそこにある。


◎[参考動画]オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(63)ら7人の死刑執行を受けて「ひかりの輪」の上祐史浩代表が会見(ANNnewsCH 2018/07/06公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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伊藤詩織氏は山口敬之氏との訴訟でレイプドラッグ被害を主張していない

 
英BBCは伊藤氏を取材し、「日本の秘められた恥(Japan's Secret Shame)」というドキュメンタリー番組を放送した(同局のHPより)

伊藤詩織氏というジャーナリストの女性が、山口敬之氏という元TBSワシントン支局長の男性にレイプされたと実名で告発したうえ、1100万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した件では、伊藤氏が海外のテレビに出演したりして、ますます注目度を高めている。

ツイッターなどを見ていると、この伊藤氏の活躍を支持者の人たちは大変喜んでいるようだが、1つ注意したほうがいいことがある。それは、山口氏が伊藤氏にレイプドラッグを飲ませたという話については、事実であるかのように吹聴しないほうがいいということだ。

なぜなら、伊藤氏はこれまで会見や取材、『Black Box』という著書などで再三、「レイプドラッグを飲まされたと思っている」などと訴えていたが、訴訟の中では、山口氏にレイプドラッグを飲まされたとは主張していないからである。

◆「山口はレイプドラッグを飲ませた」と吹聴するリスクとは

そのことを私が初めて知ったのは、今年1月に東京地裁でこの訴訟の記録を閲覧した時だった。正直、意外性は感じなかった。なぜなら、伊藤氏本人も著書などでは、山口氏にレイプドラッグを飲まされた確証が得られていないことを明かしていたからだ。

伊藤氏の著書によると、事件があったという日、山口氏にレイプドラッグを飲まされたと考える根拠は、(1)山口氏と一緒にお酒を飲んではいるが、自分は酒がとても強く、意識を失ったことなど一度もないこと、(2)その時の自分の記憶障害や吐き気などの症状が、インターネットで調べたレイプドラッグの症状と驚くほど一致していること――などだが、その程度の根拠では、たしかに訴訟の場で裁判官に事実と認定してもらえる可能性は低いだろう。

 
BBC「Japan's Secret Shame」より

そう考えると、伊藤氏が訴訟の中で、山口氏にレイプドラッグを飲まされたと主張していないのは、賢明な判断だ。上記の(1)や(2)程度の根拠でレイプドラッグを飲まされたなどと主張すれば、むしろ裁判官の心証も悪くなりかねないからである。

だが、伊藤氏はそれでいいとして、ツイッターなどで確証もないのに「山口は詩織さんにレイプドラッグを飲ませてレイプした」などと吹聴している支持者の人たちはどうだろうか?

そういう人たちは、山口氏に名誉棄損で訴えられるリスクをもう少し考えたほうがいいと私は思う。ツイッターの発言でも名誉棄損で訴えられることはあるし、名誉棄損訴訟では、訴えられた側が自分の発言の真実性について立証責任を負うからだ。

 
BBC「Japan's Secret Shame」レビュー(2018年6月28日付けガーディアン)

伊藤氏本人が訴訟で立証できないレイプドラッグ被害を、その時の状況などを直接的には知らない無関係の第三者が立証できるわけがない。山口氏に訴えられた場合、負ける可能性は決して小さくないだろう。

この訴訟に関しては、当欄で過去2回報告した通り、報道量は多いわりに訴訟記録を「取材目的」で閲覧している者がほとんどいないのが現実だ。中には、訴訟記録も閲覧せず、確たる根拠もなく山口氏が伊藤氏にレイプドラッグを飲ませたのが事実であるかのようにインターネットなどで喧伝している報道関係者もいるが、あまりにも無責任である。そういう人物たちこそ、山口氏に訴えられたらいいのに、と私は心から思う。

なお、伊藤氏は著書などで、山口氏のパソコンにより性行為中の様子を撮られたと感じたとも発言しているが、訴訟では、そのような撮影の被害も主張していない。

◎[関連記事]伊藤詩織氏VS山口敬之氏の訴訟「取材目的の記録閲覧者」は3人しかいなかった 
◎[関連記事]伊藤詩織氏VS山口敬之氏訴訟続報 ホテルの「防犯カメラ映像」をめぐる新情報 

◎[参考動画]BBC「日本の秘められた恥(Japan’s Secret Shame)」
Daily motion https://www.dailymotion.com/video/x6nih2o
ニコニコ動画 http://www.nicovideo.jp/watch/sm33446417


◎[参考動画]#MeToo in Japan: The woman speaking out against rape(FRANCE 24 English 2018/06/28公開)

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
タブーなき『紙の爆弾』2018年7月号!

木下ちがや氏の「鹿砦社への抗議文」について 鹿砦社特別取材班

やはり本通信でお伝えした〈2018年上半期、鹿砦社が投下する最大の爆弾!「関西カウンター」の理論的支柱・金明秀関西学院大学教授の隠された暴力事件を弾劾する!〉の破壊力はとてつもなかった。これは適宜続報していくつもりだ。

そして『真実と暴力の隠蔽』の衝撃も、並大抵ではなかった。7月3日付けで木下ちがや氏が下記の「鹿砦社への抗議文」なるものを自身のブログで書いている。

木下ちがや氏が7月3日に公開した「鹿砦社への抗議文」

木下氏は「私に対して『水面下ですざまじい攻撃』がなされて、糾弾、総括がなされて『口封じ』『隠蔽』がなされているかのようなこと書かれています。しかしながら、そのようなことは一切なされていません。私が6月8日に発表した文章にも書きましたように、家族からの助言、また関係者から事態を整理するためのアドバイスはあったものの、あくまで私自身の自主的な判断に委ねるというものでした」と書いている。

そうか、そうであれば何よりだ。本当に「糾弾」も「攻撃」も何もないのであればよかった。松岡はじめ、われわれなりに心配していたので胸をなでおろすし、われわれに〝事実誤認〟があれば木下氏に率直に謝罪したい。

また木下氏は、「鹿砦社の雑誌における李信恵さんに対する私の発言については、発言したことは事実であるものの、その内容については根拠のないものであり」と書いている。だが、取材班は李信恵に関する木下発言は、前後のやり取りから、どう考えても、しばき隊/カウンター内部における木下氏自身の経験に基づく発言であるとしか理解できない。

その根拠は、木下氏の李信恵評が単一の言葉としてではなく、文脈と論を立て、自身の経験を加味して語られているからである。噂や憶測ではなく木下氏は「自分本人が自慢しているからねえ、『誰とやった』とか『やってない』とか」と李信恵の発言を聞いたことを語っている。そして『真実と暴力の隠蔽』に掲載したとおり、木下氏は長時間にわたり一貫して李信恵の人格的問題を、誰に問われるわけではなく、みずから進んで語っている。

それは、リーダーたるもの、彼女の性的放縦を運動内部に安易に持ち込んではいけないという、木下氏なりの苦言とわれわれは理解した。真っ当な見解である。その他、彼の述べていることをわれわれなりにチェックし直してみると、ほとんど事実であることも、あらためて分かった。木下氏は、なぜこうもみずからが能弁に語った意見を〝否定〟するのであろうか?

また『真実と暴力の隠蔽』にはほとんど掲載しなかったが、C.R.A.C.や男組、特に、先に逝去した高橋直輝氏の問題(高橋氏個人の問題だけではなく、彼に対する周囲の遇し方)について、極めて批判的な言説を、これまた長時間にわたって展開している。しかしながら高橋氏に対する木下氏の見解は『真実と暴力の隠蔽』の出版意図と直接に結びつくものではない(まったく関係がないとは言わないが)ので、高橋氏に関する発言のほとんどは掲載していない。仮に高橋氏、あるいは、C.R.A.C.に対する木下発言を掲載していたら、〝木下批判〟はさらに激しさを増していたことであろう。

さて、前後するが、「糾弾」や「攻撃」などがなかったというのは信用するに値しない。なぜならば「水面下」だけではなく、ツイッター上で木下氏を批判・攻撃する言説が膨大に展開されていたではないか。ほかならぬ李信恵自身が度々木下を批判し、謝罪も受け入れない姿勢まで見せていた事実は動かない。

木下氏が最初にツイッター上で「謝罪」を表明したのは5月31日だったろう。しかしこの「私が批判されている内容は事実です。また、発言の内容も事実であり、いいわけはできません」は、「私は批判されているけれども発言した内容は事実である」ことを述べたうえで「取り返しがつかないことをしました」と誰かに詫びる、文意の通らないものである。

 
5月31日に木下ちがや氏が表明した「謝罪」

重要であるのは、この時点で木下氏は「発言の内容も事実であります」と書いていることである。事実を発言したのであれば謝罪をする必要がどこにあるのだ? 事実であっても誰かには不都合な発言であったので、目に見える形で散々木下氏は批判をされていたのではないか。

木下氏と同様の発言は木下氏、清義明氏、松岡の座談会で清氏からも語られ、清氏へもかなりの批判が見て取れるが、清氏は筋を通して自説を曲げるような態度をとってはいない。また『真実と暴力の隠蔽』に登場して頂いた凜七星氏もほぼ同様に李信恵の人物評を語っているが、凜氏への激しい批判は目にしない。

ここから推測されることは、木下氏は「NO.3」であるかどうかはともかく、現役の「しばき隊」構成員であり、それも幹部クラスであった。ゆえに「反党派発言」は組織にとって絶対に許されるものではないから、批判が木下氏に集中したであろう構造である。そうでなければ凜氏にも同様の攻撃が向けられていなければ辻褄が合わない。

そして木下氏は情けなくも「そしてもちろん、現在にいたるまで、鹿砦社側から私への連絡あるいは私とのやり取りは一切ありません」と書いているが、鹿砦社は6月5日に「木下ちがや氏への暴言、糾弾、査問、謝罪要求を即刻やめろ! 鹿砦社代表・松岡利康」を、6月12日には「『真実と暴力の隠蔽』収録座談会木下ちがや氏の『謝罪』声明に反論します!鹿砦社代表・松岡利康」、そして6月18日には「M君リンチ事件本第5弾『真実と暴力の隠蔽』発売からの反響を振り返る」を掲載し、木下氏への激励と叱咤を断続的に発信してきた。

木下氏自身が6月5日の本通信を取り上げて批判しているのであるから、双方向ではないとはいえ、鹿砦社は木下氏への発信を続けてきたのであるし、それに木下氏も反応している。私信や電話でのやり取りはないものの、意思の疎通は成立していることは、木下氏が本通信に反応することにより示されている。6月18日「M君リンチ事件本第5弾『真実と暴力の隠蔽』発売からの反響を振り返る」は取材班が発売1カ月を振り返っての座談会であったが、その席上でも、

〈D まあ、「木下査問」は見せしめ的に続くのだろうけど、俺たちとしては、彼の発言した事実にこそ注目してもらいたい。それから木下氏から「SOS」が来れば支援は惜しみませんよね、社長?

松岡 もちろん、彼が原則的な助けを求めてきたらその準備はあります。〉

と木下氏救済の用意が鹿砦社にはある(あたかも日大アメフト部のディフェンスの選手が監督の指示により関西学院大学の選手に危険なタックルをして大問題になったのと同様に、鹿砦社は関西学院のような木下氏支援の準備があった)ことを明示している。そして木下氏は本通信を読んでおり、その内容を知っているのであるから「そしてもちろん、現在にいたるまで、鹿砦社側から私への連絡あるいは私とのやり取りは一切ありません」は、彼らのすき好む表現を用いれば完全な「デマ」である。

さらに木下氏は「そのうえで、私自身を支え、適切な問題解決の方向に誘ってくれた家族を含む関係者を」と「家族」を同文章の中で複数回登場させているが、鹿砦社・取材班は一度も木下氏の「家族」に言及したことはない。木下氏自身が「家族」「家族」と、「家族の関与」を何度も書き込んでいるようであるが、木下氏の「家族」は木下氏の発言には何の責任も関係もないのであるから、われわれは「家族」には関心も言及も行う発想自体を持ち合わせない。木下が勝手に「家族に世話になった」と思うのであれば、家族に礼を述べればよいだけである。どうして無関係の鹿砦社が木下氏の家族に「謝罪」しなければならない理由があるのだ。

「仕事は家庭に持ち込まない」のと同様で「家族を騒動に巻き込まない」ほうが家庭の安寧を保てるのではないか(この期に及んでも木下氏にはまだ〝親切心〟で忠告しておこう)。

そして見逃せない事実は、このかんに「M君リンチ事件隠蔽」を指示した師岡康子弁護士のメールが明らかにされたことと、関西学院大学の金明秀教授の「暴行事件」を取材班が明らかにしたことである。師岡康子弁護士は『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波新書)の著者であり「ヘイトスピーチ対策法」に大いに尽力した「人権派弁護士」と世間から「誤解」されている人物であるが、実は集団リンチ事件被害者のM君を犯罪者扱いするなど、弁護士として、人間として絶対に許されざる行為に手を染めた人物である。あまりに悪質であるのでそのメールを再度掲載する。

2014年12月22日、師岡康子氏から金展克氏宛に送信されたメールの内容
2014年12月22日、師岡康子氏から金展克氏宛に送信されたメールの内容
2014年12月22日、師岡康子氏から金展克氏宛に送信されたメールの内容

「運動のためであれば、立法のためであれば被害者は泣き寝入りしろ!」と指令する師岡弁護士のこのメールが、もし「ヘイトスピーチ対策法」成立より前に明らかにされていれば、師岡弁護士の弁護士生命も、言論弾圧法である「ヘイトスピーチ対策法」も成立することはなかったであろう。

こういう「非人道的」な心情を持つ輩が「しばき隊」のオピニオンリーダーであることが暴露されたことに、しばき隊が極めて深刻な危機感を抱くことは想像に難くない。それに止まらず「M君リンチ事件」だけではない激烈な「暴力事件」を金明秀教授が起こしていた証拠を本通信で取材班は明らかにした。

師岡康子弁護士がしばき隊全体のイデオローグであるとすれば、金明秀教授は関西における活動の理論的リーダーといえよう(その主張内容は甚だ怪しいが、ここでは議論が複雑化するのでそれは省く)。師岡康子弁護士は被害者を犯罪者扱いし「事件隠蔽」を指示し、金明秀教授は激烈な暴力事件を起こし、かろうじて代理人(弁護士)を介して被害者と和解しているも、その後も問題は収束していない(これについては、またしても読者諸氏が腰を抜かす証拠が取材班の手元にはある。しかるべき時期に公開する)。街頭やツイッターで程度の低い諍いを好む〝コマンド〟(兵隊)とは異なり、幕僚の中にあって戦略を指示する立場の〝コマンダー〟(指揮官)が、揃いもそろって「事件隠蔽」と「暴力事件」に手を染めていた証拠が明らかになり、しばき隊の屋台骨はシロアリに食い尽くされて倒壊寸前の家屋のようなありさまである。

そこで、奇異なめぐりあわせではあるが、自身も金明秀教授の暴力被害者である木下氏が、戦況の攪乱と逆転の手がかりを創作すべく表明したものが「鹿砦社への抗議文」の意図するところであろう。

繰り返すが鹿砦社は一度も木下氏の「家族」に言及などしていないし、木下がネット上で猛烈なバッシングを受けた証拠は山ほど残っている。だから「木下ちがや氏への暴言、糾弾、査問、謝罪要求を即刻やめろ! 鹿砦社代表・松岡利康」を即座に掲載したのだ。

 
 
 
 

50代になっても定職を持たず、ネット荒らしに人並み外れた執着心を持つ比類なく性格のひねくれた変人(もういい加減このような悪質な人物は放逐されるべきだろう)や、僧籍を持ちながらネット中毒から回復不可能な人物、その他取材班が自宅住所、電話番号、勤務先を掌握している人物たちが「デマ」だ「デマ」だと舞い上がっているようだが、再度忠告しておこう。諸君の中の数人は既に気づかないうちに取材班の取材を受けており、いつでもその内容は公開が可能だ。

そして木下氏に告ぐ。鹿砦社が「家族」を巻き込んだかのような「デマ」(事実無根)を速やかに撤回せよ! そして「関係者」=「しばき隊/カウンター」に鹿砦社が謝罪する理由は皆無である(あまりにも明白ではあるが)! 

木下氏よ、あなたは促されるではなく、自分から進んで語った事柄を「撤回」する、まったく信用に値しない人物であることをみずから証明した。くだんの座談会で松岡(そして取材班)を驚かせた慧眼は偽物だったのか、と遺憾ながら首を傾げざるを得ない。あなたの(そして、あなたの所属するしばき隊/カウンターの)発言が世の常識人に今後信用されることはないであろう。

今回の件は、木下氏にとって〈知識人〉としての矜持、行き方来し方を問う重大問題だ。この期に及んでも腐臭を放つ「しばき隊/カウンター」に戻るのか、一人になっても自律した〈知識人〉として再出発するのかの転換点になるだろう。

以上が、われわれからの木下氏への最後の忠告である。白い犬に赤いペンキを塗っても犬に変わりはないのか……〈知識人〉とはそんなに軽いのか!?

(鹿砦社特別取材班)

『真実と暴力の隠蔽』 定価800円(税込)

【金明秀教授暴力事件続報】関西学院大学に質問状送付! 鹿砦社特別取材班

6月29日付け本通信に〈2018年上半期、鹿砦社が投下する最大の爆弾!「関西カウンター」の理論的支柱・金明秀関西学院大学教授の隠された暴力事件を弾劾する!〉を掲載したところ、非常に大きな反応があった。そこで同日、鹿砦社アカウントから、関西学院大学@KwanseiGakuinと金明秀教授ご本人@han_orgにもそれぞれ質問を投げかけた。

これに対して金明秀教授からは、

と回答があったが、内容があいまいであり論を逸らしているので、再び、

と質問を続けたが、以降金明秀教授から回答はない。

「ちなみに『和解書』は偽造ですか? 端的にお答えください」とのYESかNOの簡単な質問にも回答がない。なぜだろうか? 研究者、学者そして大学教員たるもの、自身の社会的責任には回答するのが筋であると取材班は認識するが、金明秀教授にとっては目を背けたい(可能であれば「無かったこと」にしたい)事実でもあるのだろうか?

しかし、事実は事実であり動かないのだ。金明秀教授は歴史改竄主義者を批判する。取材班も同様に歴史改竄主義者を許さない。ならば自身がまさか“自分史改竄主義者”になったわけではあるまい。

残念ながら「曖昧な回答」は頂けたが、その後金明秀教授からは音沙汰がない(ツイッターでは本事件と関係ないことは書いているようだ)。

一方、関西学院大学からはツイッター上で一切回答はなかった。まあこれは無理からぬことではあろう。同じ西宮市内に位置しているとはいえ、「鹿砦社」をご存知ない可能性もあるし、デリケートな問題をツイッターといった安易なツール上でお答えいただけない事情は理解できる。そこで取材班は鹿砦社代表松岡利康名で7月3日、関西学院大学村田治学長に対して「ご質問」を郵送し7月17日までに回答を頂けるようにお願いをした。

この「ご質問」は「公開質問状」ではないので、本日ここでその内容を明らかにすることはできない。鹿砦社は関西学院大学に対してなんらの悪感情を持ってはいないし、逆に同大学の建学の理念や歴史には正直なところ深い敬意を抱いている。よって、しばき隊幹部や事件隠蔽関係者に送付したような「質問書」とは、かなりトーンも異なるものである。

日大との対比で、優れた人権感覚と教育的視点、学生に対する眼差しを体現し、世間からも高い評価を受けた関西学院大学のことであるから、必ずやわれわれの「ご質問」に対して誠実なご回答を頂けるものと、取材班は信じている。ご回答を頂けた暁には内容に差しさわりのない範囲で読者諸氏にもその内容をご紹介することとしたいので、是非7月18日以降の本通信にご注目頂きたい。

ありはしないだろうが、万が一ご回答を頂けなかった場合、または誠実とは言えないご回答であった場合は、取材班も相応の対処に踏み切らざるを得ないが、関西学院大学に限っては、そのようなことはないと信じる。

取材班には6月29日にこの「暴力事件」のレポートを掲載後も新たな証拠や証言(それもダイナマイト級のもの)が、またしても寄せられている。それらは関西学院大学からのご回答を待って、適宜読者諸氏にお伝えしてゆく。いずれにしても、この夏、同大と世間を震撼させることは言うまでもないであろう。

(鹿砦社特別取材班)

『真実と暴力の隠蔽』 定価800円(税込)

「架空請求」事件に警察はやる気なし ── 警察官一問一答〈後編〉

どこから情報を掴むのかわからないが、いわゆる「架空請求」のメールが時々やってくる。以前は日に数百を超えることもあったが最近では数カ月に一回程度には減って入る。私は送り付けて来る文面自体が気に入らないので、徹底して電話をかけまくり、悪徳詐欺を働く人間を追い詰めて、実際に何件か潰したこともある。しかし世間での「架空請求」詐欺被害はいっこうに減らないようだ。

下記会話は数年前、私の居住地の警察署に「架空請求」の情報を提供したときの会話である。それ以前にも110番通報や電話で何度か警察には情報提供をしていたが、会話にもある通りひどいときは「民事事件は警察の管轄ではない」と言って切られたこともあった。今回はそのやりとりの後編だ。

―― そんな役人みたいなこと言わないで。お巡りさんは鉄砲もってますよね。
警察 ただ持たされてるだけですけどね。
―― 力があるわけでしょ。
警察 そこまでの力はないんですけどね。
―― いえいえ、捜査をする力はあるでしょ。あなたお一人ではなくとも警察として、こういう詐欺事件に緊急に対応する力を持っていらっしゃるでしょ。
警察 当然刑事の方ではそういう形で、対応させていただきますし、安心していただいたらいいと思います。
―― 私はいいんです。私ではなく、ほかの人が引っかかってからでは遅いでしょ。「警察に連絡してください」ってあちこちのポスターに書いてあるじゃないですか。
警察 そうですね。
―― それが電話したら「なかなか……」って言われたら、どうしたらいいのか、となりますよ。
警察 早急に上の方には伝えときますんで。ご住所から伺っていいですか?
―― ○○市の○○と言います。
警察 ○○市以下の住所伺っていいですか?
―― こんないい加減な対応されたら住所までいうのは怖いわ。ちゃんと「やりますよ」と言ってくれたら住所いいますよ。はっきり言いますが、情けないですよ。私は被害申告をしているんですよ。
警察 まあ、たしかにそうなんですけど。
―― そうでしょ。それを「ご意見として伺っておきます」っていうけど意見じゃないですよ。被害申告なんですから。
警察 ご意見というのは別の話で、「電話などの凍結をしろと」とか。
―― 私は「電話の凍結をしろ」なんって一言も言ってませんよ。とにかく電話一本かけて事情を聴くのは令状もなにもいらないでしょ。
警察 うーん……。
―― 要らないよ。痴漢でもなんでもあれば、「あなたどうだったの?」と事情を聞きに行くでしょ。同じじゃないですか。
警察 これが詐欺のメールだというのは、こっちも重々承知なんですよ。
―― でしょ。なら確証もあるわけですね。私は踏み込めとか、検挙しろといってるんじゃなくて、「あなたたちなにをやっているのか」と電話一本入れるだけでも違いますよ。なぜかといえば、警察ではない私が電話したって、そのあと違うんですから。私は民間人ですよ。民間人の私が架空請求の詐欺を2、3件潰したことあるけど。
警察 2、3件。おおお。
―― 「おおお」じゃないでしょ。そんなところで感心されたら困るんですよ(笑)。おまわりさんがしっかりしてくれないから私が電話かけなきゃいけない。かけたくないですよ。電話代使ってね。お巡りさんたちがしっかりしてくれないから私が自腹で電話をかけなきゃいけない。しっかりしてくださいよ。頼みますよ。
警察 おっしゃる通りだと思います。
―― おっしゃるとおりって(爆笑)。「それは違います」と言ってくれたら安心できるけど、「おっしゃる通り」といわれたら、全然信用できない。どうすればいいんですか、市民は?
警察 たしかにこのメールは何千何万という人に連絡して、その回答を待ってようなやつなんですよ。
―― そうよね。
警察 それで、これが本当のものだと勘違いした人だけを対象にしたものなんですよ。
―― 知ってます。
警察 基本的には無視していただく、っていうのを警察は指導させていただいているんですよ。電話番号も何千何万とありまして……。
―― だけど、これはいま申し上げ上げたけれども、インターネットで検索すれば、この番号自体がたくさん……。
警察 それもね、1つだけじゃないんですよ。
―― 知ってます。知ってます。日替わりで変わるし、2、3日しか営業しないわけでしょ。
警察 そうなんです。2、3日しかしないです。
―― だから2、3日のうちに止めておくことが大切でしょ。
警察 そうなんです。それが早急にね、できる……
―― なんで民間の私にできてお巡りさんにできないの?
警察 あのー、できるっていうのはあれですよね?
―― 電話をかけるだけで向こうは萎縮するんですよ。
警察 ああ、萎縮するということですか?
―― そう。
警察 ほー。
―― 私は弁護士に相談してやったこともありますよ。本気で(振込詐欺を)防止しにいきなさいよ。
警察 たしかにおっしゃるとおりですね。
―― なんで民間人の私が電話代を払ってそれをしなきゃいけないの?
警察 あー。
―― 「あー」じゃないよ。
警察 おっしゃられていることも一理ありますね。
―― たしかにこのあたりはお巡りさんの数も予算も少ないとは伺っているので、お忙しくて大変だろうとは思うけど、それでもこれはのんびりほおっておいたらいいものではないでしょ。
警察 そうですね。これについては防犯指導が必要ですね。電話番号をとめたからといって、すべての方の意識づけをまずかえたほうがいい。
―― いや、それは別の話。もちろん広報とかは必要でしょう。けれども年を取ってわからない人に広報してもわからないでしょ。だからいつまでたってもなくならないわけでしょ。
警察 そうですね。
―― 元から断つのは申し訳ないけども、意識づけだけではできない。モグラたたきのように、出てきた奴を警察に叩いてもらうことをやってもらわないと仕方がないわけでしょ。
警察 まず刑事の方に上げさせていただきます。
―― これ以上は申し上げませんけど、上に早く上げてください。
警察 本当に貴重なお話だったんで。
―― だから、本当はね、あなたに気概があったらすぐに電話しないといけないよ。こんなの職務規定違反でもなんでも何でもないんだから。一般市民から連絡が来て、詐欺の電話の話がある。インターネットにもその番号は載っていると申告がある。そちらの署のなかにパソコンが1台もないわけじゃないでしょ。
警察 そうですね。もちろんそれ分かってるのは当然のことやと思うんですよ。それが詐欺で別のところにも相談があるようなものだと思いますので。
―― だから「当然のこと」と気にしているんじゃなくて、1件1件しっかり潰していく。悪い奴は。
警察 なるほど。
―― 「なるほど」じゃないよ(爆笑)。○○さんは元々○○県の方ですか?
警察 ええ。
―― そうか。○○県の人おっとりして性格の良い方多いもんね。
警察 出身は違いますけどね。
―― ご出身は?
警察 ○○県ですね。
―― そうなん。関西弁上手ですね。
警察 ま、ま、ま、妻ももらってますしね。
―― 幸せやな。
警察 いえいえ。でも本当におっしゃることは当然のことやと思いますし。
―― だから思ってもらうだけじゃなくて、お巡りさんには行動してもらわないと。警察のしかるべきところからビシッと行ったら、こいつらはビビりよるから。どうせ飛ばしの電話番号やけどね。
警察 そうなんですよね。
―― 飛ばしの電話番号でもキャリアはすぐわかるから。キャリアたどっていけばわかる。裁判所で令状一枚とればすぐ動けるよ。
警察 そうですね。
―― でしょ? だから早急にやって。しっかり頼みますよ。
警察 ありがとうございます。(了)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

「架空請求」事件に警察はやる気なし ── 警察官一問一答〈前編〉

どこから情報を掴むのかわからないが、いわゆる「架空請求」のメールが時々やってくる。以前は日に数百を超えることもあったが最近では数カ月に一回程度には減って入る。私は送り付けて来る文面自体が気に入らないので、徹底して電話をかけまくり、悪徳詐欺を働く人間を追い詰めて、実際に何件か潰したこともある。しかし世間での「架空請求」詐欺被害はいっこうに減らないようだ。その理由の一端をご紹介しよう。

下記会話は数年前、私の居住地の警察署に「架空請求」の情報を提供したときの会話である。それ以前にも110番通報や電話で何度か警察には情報提供をしていたが、会話にもある通りひどいときは「民事事件は警察の管轄ではない」と言って切られたこともあった。警察署とのやりとりを前編と後編の2回にわけて公開する。

◆民事は警察(の管轄)じゃない……?

警察 かわりました相談係の○○と申します。
―― お願いいたします。
警察 これに対するお金等振り込みをされていますかね。
―― もちろんしていません。
警察 良かったですね。
―― していないです。明らかに全く身に覚えがないのですが、拙い文章がメールで来ました。「裁判をする」、「延滞金がかかる」などとあって電話番号が書かれているので、これにはお巡りさんから電話をかけて頂いき、早急に警告していただいた方がよいと思いまして。インターネットでこの番号を調べても「詐欺だ」という情報がたくさん出ています。電話番号は03-XXXX-XXXXです。
警察 ちなみにこれどういう経緯で入って来たんですかね?
―― 私のメールアドレスに来ました。
警察 その相手のメールアドレスわかりますか?
―― はい………(メールアドレス)です。
警察 これ何年ごろ入ってきました?
―― 最初に来たのは昨日の朝9:18です。嘘でしょうが会社名も書かれています。
警察 要は有料コンテンツの未払いとかそういう内容ですか?
―― そうです。そんなのは全然使っていませんので、昨日あえてそこに電話をしたんですが、どういうわけか取り合ってくれなくて。私はこの手の詐欺・架空請求が来ると、徹底的に電話をして追い詰めるんですね。
警察 ほー。
―― 今朝電話したら「かけ直す」と言っていましたがかけてこないし、先ほども言いましたが「この番号は詐欺だ」との情報はネットに多数出ています。一刻も早く警察で対応していただくべきだと思いご連絡しました。
警察 なるほど、ありがとうございます。とりあえずおっしゃられた通り「詐欺」のメールですんで、一切相手にしなかったらいいですから。それで相手にどう話されたんですかね?
―― 昨日は電話をかけたら、向こうは私の生年月日を聞くわけです。正直に言うことはないから、本当ではない非常な高齢者を名乗りました。それ以降かかってこなくなりました。
警察 ほー。そうですか。電話はどういうふうにかけられたんですかね。
―― 普通に番号が通知されるようにかけましたよ。
警察 通知でかけているんですか? ほー、なるほど。
―― そのあと20回くらいかけましたけれど取らなかったですね。
警察 ほー。そんなにかけたんですね。わかりました。それでしたら全く騙される要素なさそうですし。
―― 私は騙されませんよ。私はいいのですが、お巡りさんにはこういう詐欺は止めてもらわないといけないでしょ。
警察 はい。
―― 止めてもらわないと。架空請求しているわけだから。
警察 あ、そうです。架空請求です。
―― 詐欺未遂でしょ。
警察 そうですね。
―― だからこの番号に電話していただくなり、捜査していただくなりして、至急これを潰していていただくと。
警察 なるほど、ごめんなさい。これについてはですね、情報として上げさせていただくんですけれども、「早急に」というのはなかなか難しいんですよ。
―― え、なんでですか? 電話一本かけたら向こうがどんな連中かわかるでしょ。
警察 そうなんですよ。
―― 前にも連絡したけど、おたくのお巡りさん「民事は警察じゃありませんから」って言って切られたよ。
警察 民事は警察じゃない……?
―― 「民事事件は警察の管轄ではありませんから」といって。この番号に電話したらそういわれた。なんで動けないんですか? これだけ証拠や情報を提供しているんですから。「振込詐欺に誤魔化されるな」と広報してるでしょ。だったら電話一本かけるくらいのことはできるじゃない。
警察 ええ。これは詐欺の電話だっていうのは分かってるんですよ。

◆目の前にパソコンはないんですよ。その関係で本部に投げてですね……

―― だったら令状がなくても、電話を一本かけて「警告」くらいしとけばいいんじゃないですか。
警察 ええ。
―― 「ええ」じゃない。これをほっておくから被害が広がるんじゃないですか。
警察 まあおっしゃるとおりですね。
―― 警察から電話したら奴らだって萎縮するでしょ。
警察 それが全く萎縮しよらへんのですよ。
―― しなかったら令状取って踏み込んだらいいじゃないですか。
警察 ええ。ご忠告は上げさせていただきますんで。
―― いえいえ。対応してくださいよ。私理解できないのだけど、「情報があったら警察に知らせてくれ」とポスターが街のあちこちに貼ってあるでしょ。私は情報提供何度もしていますが、そのたびに「すぐ動けない」と。それだったら何の意味もないじゃないですか。
警察 うーん。おっしゃる通りかもわかりませんね。
―― 私はいいですよ。騙されませんから。でもほかの知らない人や気の弱い人は騙されますよ。相手はプロなんだから。お巡りさんわかってると思うけど。
警察 そうなんですよ。
――  「そうなんですよ」じゃ困るの(苦笑)。それを止めるのが警察の仕事でしょう?
警察 そうなんです。
―― 「そうなんです」じゃないでしょ(爆笑)。いや笑っている場合じゃないですよ。
警察 全くの正論をおっしゃられているんで。だからその通りですよ。
―― なんでできないんですか?
警察 私の立場では何ともお答えができないんですよ。わかんないんですよ。
―― 「わかんない」ってなに?(再度大爆笑) なに言ってんのあなた。
警察 専門じゃないんで。
―― 「専門じゃない」って、バカなこと言うんじゃないですよ。あなたお巡りさんでしょうが。
警察 うーん。刑事の方にはこういうことがあったと報告させていただくんですが、そのあとすぐに対応できるかというところは、なかなか難しいところがあるみたいなんです。
―― なぜですか? これは110番通報と一緒ですよ。詐欺未遂申告の。私が詐欺にあっていれば詐欺ですが、詐欺未遂で不法行為が成立しているでしょ。
警察 そうなんですよね。
―― 「そうなんですよね」じゃなくて。わたしは弁護士に相談しているんじゃないんですよ。警察官でしょあなたは。
警察 そうです、そうです。
―― こういうのは迅速に対応しないとね……。 
警察 そうなんです。それが出来たらいいんですけどね。一番は。
―― 出来たらじゃない。なぜ対応しないのよ?
警察 それがね。なんとも……。
―― 「なんとも」ってあなた。いい加減な業者みたいなこと言わないで。
警察 詐欺と認められてすぐに措置が出来たらいいんですけどね。
―― 目の前にパソコンあるでしょ。
警察 パソコンにあがってくるんですか?
―― パソコンの検索エンジンにこの番号を入れたら、「この番号は詐欺だ」との情報がたくさん出てきます。調べてみましたか?
警察 あのー。目の前にパソコンはないんですよ。
―― え! ないの?
警察 予算の関係やらそんなんもありますし。
―― 予算の関係?
警察 その関係で本部に投げてですね。
―― そんな悠長なことやってるんですか?
警察 そうなんですよ。現状はそんな形なんですよ。
―― お巡りさんいらっしゃるのは「生活安全課」?
警察 刑務課ですね。
―― そんなスローな対応してたら、絶対に根絶できませんよ。
警察 それは、ご意見その通りだと思います。(つづく)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

2018年上半期、鹿砦社が投下する最大の爆弾!「関西カウンター」の理論的支柱・金明秀関西学院大学教授の隠された暴力事件を弾劾する!鹿砦社特別取材班

まず冒頭、金明秀(キム・ミョンス)関西学院大学社会学部教授にはお詫びと訂正をせねばならない。『真実と暴力の隠蔽』で金明秀教授のお名前を複数個所「金秀明」と誤記してしまった。ここにご本人並びに読者諸氏にお詫びして訂正を申し上げます。

さて本論である。

アメリカンフットボール日本大学フェニックス(同大アメフト部の名称)との定期戦で、危険なタックルを受けたQB(クオーターバック)の事件で、おおいに話題になった関西学院大学ファイターズ(同)。日大のどうにもならない対応に比べ、学生を大切に考え、日大の加害学生までにも救いの手を伸ばす、との姿勢は(過剰なほど)大きく報道された。だが「人のうわさも75日」の諺も今は昔。「人のうわさは7.5日」くらいにしかひとびとの興味は続かない。良くも悪くも日大に関する話題も、既に「むかしの話」の感が否めないのも事実ではないだろうか。

関西学院大学社会学部の金明秀教授が、書籍を出版したそうで、自身のツイッターで絶賛している。これは自著への「自画自賛」という行為で、まっとうな大学教員のなかでは、そうそうみられる行為ではない。まあ、個性なのでそれは良しとしよう。しかし、金明秀教授には、驚くべき過去があったことが、このほど取材班に持ち込まれた情報で明らかになった。『真実と暴力の隠蔽』で木下ちがや氏が述べてる通り、金明秀教授は過去木下氏を殴ったことがあるのは、被害者木下氏が認めているところである。これについては「謝って来たから許した」と木下氏は納得しているようだが、金明秀教授による「暴力事件」はこれだけではなかった。

『真実と暴力の隠蔽』P.156

(『真実と暴力の隠蔽』当該ページで「金明秀」を「金秀明」と誤記しています。お詫びして訂正いたします)

まず以下の「和解書」をご覧頂こう。

金明秀(キム・ミョンス)関西学院大学社会学部教授が被害者と交わした「和解書」
同上

被害者の名前、代理人(弁護士)名前は消してある。「平成25年2月8日午後10時過ぎ」に金明秀教授が被害者に「暴行」を加え、被害者の治療費、慰謝料として、115万9295円を被害者に支払い、「振込を確認した日をもって大阪府淀川警察署に届け出ていた被害届を取り下げる」とある。

暴行被害者が一度は淀川警察署に被害届を出していたが、双方弁護士のとりなしで「和解」を交わし、警察への被害届は取り下げることになった。

では、被害者の受けた暴行、怪我はどの程度だったのであろうか。金明秀教授の代理人の表現によれば「顔面やのどを手拳で殴打した行為」と表現している。被害者自身の言葉によれば、「げんこつで顔や喉を何度も殴られました。口から血が出て喉が痛かったので医者に見せたら声帯が破損していると言われました」という。

声帯が破損するげんこつでの殴打は、決してミスや軽いものではない。事件当時は飲み会の最中で双方酒が入っていたが、被害者は殴られる一方で金明秀教授は被害者に「殴ってみろよ! どうだ? 殴れよ」と顔を近づけ、何度も挑発を繰り返したという(被害者はその挑発には乗っていない)。その態度を見て「彼はこういうこと(暴力)に相当慣れているのだと思いました。私は教師なのだから、喉は殴るなといったのですが、彼はさらに『それがどうした! 殴り返してみろよ』」と暴力を続けたと被害者は語る。

金明秀教授の一方的な暴力に対して被害者は、いったん淀川警察署に被害届を出す。しかし上記の通り加害者が非を認め謝罪の意を明かしたので、代理人を挟んでの「和解」に至ったようである。しかし金明秀教授は被害者に対して「殴られてもないくせに『殴られたと嘘をついている』」と悪口・陰口を言っている。その態度に被害者は怒りを隠さない。加害者が被害者の悪口を言い続ける。「M君リンチ事件」と同様の構図がここでもみられる。

金明秀教授といえば、取材班が電話でインタビューをした際(2016年8月16日)サバティカル(在外研究期間)で韓国にいるはずのご本人が、「出張で日本に一時帰国しており」電話に出てこられたことがあった。大学の「在外研究」で外国に出かけている教授が「出張」で国内に戻っている、とは本当のことであったのだろうか? ちなみに、サバティカルとは研究のための制度であり、これは学納金と文部科学省からの交付金によって運営される私立大学教員にとって、最大の研究機会である。逆にいえば、血税と学生とその保護者たちの血の出るようなお金で認められたものだといえよう。それを大学に報告もせず一時帰国したとしたら、これは科学研究費や個人研究費の不正使用とまったくかわらない、立派な研究不正だといえまいか。それは日割りで返せばいいというものではないのだ。日大とは異なり優れた「人権感覚」を世間に発揮していた関西学院大学だ。この金明秀教授の「一時帰国」は問題がないのか、是非学内で精査して頂きたいものである。

それにしても、なんとか「ハラスメント」や、自分の著書をツイッターで「自画自賛」するのは結構ではあるが、それ以前に、こうも激烈な「暴力」を振るう人間が、それらを主張しても説得力があるだろうか。さらに金明秀教授は『反差別と暴力の正体』でもご紹介したが、下記の書き込みを行った人物である。

金明秀(キム・ミョンス)関西学院大学社会学部教授が2016年5月19日、ツイッター上でM君に向けて行った書き込み

アメリカンフットボール部の事件をめぐるドタバタで日大の評価は、大きく落下した。世間は忘れても受験生や、受験生の保護者は忘れないだろう。関西学院大学も金明秀教授の扱いを間違えれば、せっかくの「金星」が一転して「黒星」に転じる可能性もあろう。それくらいの可能性をこの事件は包含している(本件、続々と証言、証拠が寄せられており、必要に応じて続報の予定です)。

鹿砦社特別取材班

 

開港から40年の三里塚(成田)空港〈14〉援農と反対同盟の人々の思い出

◆援農という政治工作

膝づめで親しく話をして、酒を酌みかわしながら信頼関係を築いてゆく。そして政治的な課題を共有して、ともに行動計画を練る。そんなのが三里塚における、理想的な「政治工作」というものだったのだろう。まだ二十歳になったばかりのわたしは、現闘キャップが言う「政治工作」という意味があまりよくわからなかった。とは言いながらも、援農をすることで反対同盟農民への「政治工作」を、わたしも果たしていたのだ。三里塚における「政治工作」とまちがいなく、農民たちに恩義を売るという意味だったに違いない。農民たちにとってわたしたち支援学生は、使いやすい労働力だったのである。予期せぬ援農の朝は、こんな感じで始まったものだ。朝もはやくから、現闘小屋の電話がリーンと鳴る。

 
映画『三里塚のイカロス』

「はい、もしもし。○○団結小屋です」
「いま、そっちに学生さん、いるのかい?」
「は?」(現闘のキャップ)
「援農な、頼めないべぇか?」

電話を掛けてくるのは、決まって「おっ母ぁ」である。家父長である当主が掛けてくることは、めったになかった。親父たちは面倒なことはすべて、おっ母たちに任せたものだ。

「どうなんだべ?」
「はぁ……」

 現闘キャップ、ここで寝起きのわたしの顔を見ていますね。
「援農、来てくれない? 学生さんいるんだべ?」
「ええ、ひとりいますけどね」
「頼むわぁ。来させてよ!」

ややあって、現闘のキャップがわたしに問う。
「政治工作、いや援農、行けるかい?」
「は、はぁ」
「頼んだぞ。よろしくね」
「は、はい!」

かくして、その日のわたしの活動が決まったのである。本当は前日の夜まで鉄塔(岩山鉄塔)当番で、今日はオフだったはずなのに。現闘のキャップはクルマの修理に行かなければならないので、わたしが援農をすることになったのだ。こういう緊急呼び出しの援農というのは、きまって待遇が悪い。そもそもボランティアの援農に「待遇」の良し悪しもなかろうと思われるかもしれないが、貧乏学生にとって昼飯と晩御飯の「待遇」はきわめて重要なのである。若い身に三里塚の地は何の楽しみもなく、ひたすら食べることだけが生きがいだった、ような記憶がある。思い返してみると、現闘団が二名ほどの党派で、しかも実働部隊が学生なのに、反対同盟の方針を左右する「政治工作」など行なえるはずもない。援農で恩義を売ってはその恩義をもとに、自分たちのイベント(当時は「総決起集会」などと呼ばれた)に参加してもらう。そんなことだった。

◆ケチだった援農先、豪華だった晩餐

農作業に慣れない学生にとって、援農は大変だった。大変なのは、その対価である食事だった。関西から援農に入った学生が言ったものだ。

「あそこ、昼飯がひどかったやん。サトイモの煮ッころがしだけやろ。なんじゃいこら、で、僕らは納屋で寝てましたよ。ベタベタに疲れてたし」

なんと、昼飯が気に入らなかったから、作業をサボって納屋で寝ていたというのだ。たぶんその時は、援農の人数が多かったのだろう。2~3人しかいない場合は、そうはいかない。朝の9時ごろから始まって、夕方6時を過ぎるまでひたすら働いたものだ。

その代わりに、青年行動隊の若手の農民がその大半だったが、農作業後の食卓は豪勢だった。すきやき・焼き肉・寿司の店屋物、お酒も出て三里塚闘争の将来を語り合いながら、という具合だった。援農土産に「持っていきなさい」と言われて持ち帰る採りたての野菜、とくに真冬のニンジンや大根は美味しかった。シャキッと歯ごたえのあるみずみずしさは、都会のスーパーで買ったものでは味わえない。採りたての野菜が美味しいのだという記憶は、いま市民農園を借りた野菜づくりに生きている。

◆反対同盟の人々

反対同盟の人々についても、印象を記しておこう。東峰部落の石井武さんは、わたしたちの団結小屋の庇護者であるとともに、横堀要塞戦ではわたしの相被告だった。石井という名前は三里塚・芝山地区には多い名前で、例の「731部隊」は石井部隊とも呼ばれていた。石井武さんは731部隊ではなかったが、満州で活躍された関東軍の陸軍将校である。「おれは匪賊を何人××したか知れない」が酒を飲んでの口ぐせだった。元将校だけに、戦略的な視点や戦術的な判断は卓抜だった。

三里塚闘争の軍師といえば、岩沢吉井さんをおいて他にない。ほかならぬ3・26管制塔占拠の作戦立案は、この人が空港建設説明会の混乱のさいに公団事務所から手に入れていた図面がもとになっている。それは地下水道の精緻な見取り図であり、空港の地下構造の全容である。すなわち、空港を裸にしたようなものだったという。この山林の向こうを掘れば、空港中枢に通じるマンホールがあるはずだ、という感じだったらしい(映画「三里塚のイカロス」)。


◎[参考動画]映画『三里塚のイカロス』予告編

とくに名前は控えますが、戸村一作委員長亡きあと、反対同盟の顔として活躍されたK氏は、そのオモテ向けの顔と、裏側の顔が乖離する人物だった。とは言っても、他の幹部たちのようにウラ金づくりに走ったりしたわけではない。「他の幹部」というワードが気になる方にはI副委員長など、善意でありながら自分の土地をひそかに売ってしまったり、闘争の資金を私的に流用した方々のこととしておきます。

さて、そのK氏は凛とした演説の風情とはまったく逆に、宴席(全国集会の会場係の慰労会)になると、へらへらとした顔になる。若い女性が大好きだったのだ。何かといえば、「こっちに来なさい」と、若い女性活動家に言葉をかけては、身体を押し付けるように、にじり寄る。ああ、見た目は立派な人なんだけど、こういう面があるのだなぁと、わたしはその光景を眺めていたものだ。ただし身体を押し付けようとしても、直接には触れなかったように記憶している。その意味では、けっしてセクハラではなかった。

わたしの相被告で、秋葉哲救対部長は温厚な人格者だった。わたしたちと要塞に立てこもった反対同盟幹部のなかでは唯一煙草を嗜まれない方で、最初の意志統一の会議で「嫌煙権を主張しますぞ」などと、みんなを笑わせたものだ。地下道(脱出用トンネル)では最後までわたしたちと一緒にあり、最後は「上に掘って酸素を入れなさい」と指示してくれた。酸欠寸前だったわれわれは、秋葉さんに生命を救われたと言っても過言ではない。(つづく)

▼横山茂彦(よこやましげひこ)

著述業・雑誌編集者。3月横堀要塞戦元被告。主著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)、『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

タブーなき『紙の爆弾』7月号!
横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

福島原発連続爆発を防げなかった国の知見は「朝鮮非核化工程」に活かせるか

 
2018年6月24日付け読売新聞

〈政府は、北朝鮮の非核化工程で人的な貢献をする方向で検討を始めた。複数の政府関係者が明らかにした。原子炉の廃炉に関わる民間の技術者や専門家らの派遣を想定している。東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい考えだ。〉(2018年6月24日付け読売新聞

だそうだ。「制裁!」、「制裁!」ばかり叫んでいて、まさか本当に米朝首脳会談が行われるなどと、予想も予見も、さらに言えば独自ルートでの情報収集もできなかったのがこの島国の政府と、その外交能力である。トランプには電話で「拉致問題を話題にしてくれ」と頼み、何の証拠もないのに「拉致についての言及があった」と一人よがりしているのが、安倍晋三という男であり、その恥ずかしい姿を頂くのに痛痒を感じないのが、外務官僚の低能ぶりだ。

米国にとっては「どーでもいい」日本の拉致問題をたった40数分の会談の中でトランプと金正恩が議論した、などと信じている人はまずいまい。初対面の休戦国(米国と朝鮮はいまだに「戦争状態」であり「休戦」が続いているに過ぎない)首脳同士の会談で、他国の問題を議論する余地などあるはずがないだろう。

米朝首脳会談前に、この島国ではことさら「拉致問題」を新聞は大きく取り上げ、さらには「北朝鮮への制裁足並みに乱れはでないか?」と底意地が悪く、恥ずかしいほど的はずれで、短射程のコメントが飛び交った。それらをのうのうと口にした「識者」は今でも同様のだらしないコメントを垂れ流しているけれども、状況は世界屈指の外交音痴の安倍ですらが、冒頭紹介したように「朝鮮非核化に人的貢献を検討する」と発言せざるを得ないところまで来ているのだ。

6月21日朝日新聞は、
〈政府は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定して今年度中に全国各地で予定していた住民避難訓練を中止する方針を固めた。米朝首脳会談が開かれるなど対話ムードが高まる中、北朝鮮によるミサイル発射の可能性は低いと判断した。21日、政府関係者が明らかにした。政府関係者によると、訓練を中止するのは宮城、栃木、新潟、富山、石川、奈良、徳島、香川、熊本の9県。総務省が近く通知を出し、正式に伝える方向だ。
 訓練は政府や自治体が主催し、ミサイル発射を全国瞬時警報システム(Jアラート)や防災行政無線で伝え、住民らが学校や公共施設に避難するもの。昨年3月以降、25都道県で計29回行い、12日の米朝首脳会談の直前にも群馬と福岡の各県で実施した。〉と報じた。(2018年6月21日付け朝日新聞

国民の危機意識を扇動し、「北朝鮮憎し」の世論を高め、軍事膨張の隠れ蓑に利用していた「まったく意味のない訓練」を中止すると発表した。この訓練のバカさ加減を証明するのには多言を要しない。例えば朝日新聞に掲載された下の写真だ。

東京都23区内の多くの小学校の防災(主として地震)訓練では、ヘルメットや防空頭巾が登場する。2011年3月11日、東日本大震災の日にも集団下校する小学生は、防空頭巾をかぶっていた。私は本物の防空頭巾を目にするのは初めてで、小学生の姿に驚いたが、地震後の集団下校にはふさわしい防御具だと言えるので、その準備の良さに感心した記憶がある。

 
2018年6月21日付け朝日新聞

それに対してこの写真である。こんな無意味な訓練をさせる行政や、何の問題も感じずに記事化する朝日新聞のトボけた感覚には、もうあらゆる論評をする気力も失せかける。それにしても仮に「ミサイル」が飛来したときに「倉庫の中で頭を守る」行為がなにを意味するか、誰か思案する人はいないのだろうか。

「ミサイル」は通常火薬や爆発物質(時には核爆弾)を搭載して攻撃に利用する。それに対して「倉庫の中で頭に手をのせたら」何らかの防御になると、考えている人がいるのであれば、私にその根拠を教えて頂きたい。メールアドレスは本文の下に明記してある。

ガラスの破片や屋根瓦の落下を頭部に受ければ、深刻は怪我が予想される。だから集団下校する小学生が、防空頭巾をかぶっていたのは理にかなった防御策だといえる。他方直撃を受ければ、建物そのものが破壊(消えてしまう)される「ミサイル」飛来に対して、この姿は何を意味するか。

そもそも朝鮮の危機を煽るだけでなく、「対話と圧力」と言っていたはずの姿勢が、一方的に「制裁!」、「制裁!」と狂信的にエスカレートし、「世界で一番悪い国」のように政府が国民を洗脳し、また外交政策上も各国にそのような方向を牽引する方向でのみにあくせくしていたから、緊張が高まったのではないのか。そして誰にでもわかるが、今回の米朝首脳会談実現に、日本政府は「まったく」寄与していない。むしろ婉曲な妨害を画策していたのではないと、思われるほど「意地悪」を貫徹していたし、今でもそうである。

まったくの「他力」で実現した結果としての緊張緩和によって、無意味な「訓練」が中止になったのは結構なことであるが、もうこの島国の国民は、こんなにも無意味で、害悪でしかない「国民総動員」を企図する訓練に参加することを、なんとも思わなくなっていることに薄気味悪さを感じる。

そして、冒頭の「朝鮮非核化への人的貢献」である。私は日本にその資格はないと考える。その理由は記事中にもある通り、「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見を役立てたい」が理由とされているからだ。

通常の原子炉の廃炉作業は多くの、原発保有国に経験がある。この国にもある。しかし「東京電力福島第一原子力発電所の事故対応などで蓄積された知見」とはなんだ。原子炉冷却のため、ひたすら水を入れ続け、汚染水が溜まり続けたら「希釈して海に流す」という。こんな知識を「知見」と呼べるか? 世界初の原子炉4機連続爆発を防げなかった国に、どうしてわざわざ核関連施設の解体作業を依頼する理由があるのだ?

最近の出来事を目にするたびに、「私の頭はずいぶん狂っている」ような気がする。でもひょっとしたら、私以上に政府や社会がとんでもないのかもしれないとも穿っている。どなたか教えて下さらないものであろうか?

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

浅野健一さん、米朝首脳会談取材報告会から「浅野名語録」

6月17日に、浅野健一さんの「朝米首脳会談」シンガポール取材報告が行なわれた。書くものもめっぽう面白いが、しゃべりの面白さにかけては右に出るものがない。いや、自虐ネタも交えたトーク、まなざしのある語りは聴く者を元気にさせる。そんな浅野健一同志社大学大学院教授がすこし喉を痛められ、やや滑舌にかげりを感じさせた。どうかご自愛ねがいたいものだ。

氏の報告記事は次号『紙の爆弾』(7月7日発売)に掲載されると思われるので、ここでは氏独特の節まわしで語られる語録を挙げてみよう。14回を数える訪朝では、同志社の学生を引率したこともあるという。

浅野健一さん

「学生も連れて、何度か訪朝してきました。共和国に行くなんて、親御さんが危ないんじゃないかと言うから、わたくし浅野健一が付いてるからだいじょうぶだ。いや、浅野が引率するから危険なんじゃないか、ぜったいにダメだ。となる。ですからゼミ生が10数人いても、行くのはいつも2、3人。まぁ、仕方ないですね。その代わり、河合塾の経験者はだいじょうぶですね。浅野先生がいっしょなら問題ないと。河合塾はわたしみたいに、偏向した先生が多い、いたって開明的なところですから」

歯に衣着せぬ発言からか、朝4時からの番組しか呼ばれなくなった浅野さんは、ワイド番組には厳しいことを言われる。いやいや、言うところはいちいち、頷くしかないものだ。

「トランプの気まぐれで、朝米会談が中止になりそうになった時のことです。テレビのワイド番組は『それ見たことか!』『やっぱりだ』と、みんな喜んでましたよね。平和のための会談が流れそうになったことを、かれらは喜んでいたんですよ。とくにテレ朝の羽鳥さんの番組に出てる長島一茂ね。べつに政治に見識があるわけではなし、どうして彼なんか出すんですかね。父親が偉かったというだけで、あれは野球でダメだった人でしょ。AKB48に語らせるなら、まだわかるんですよ。若い人がどう思っているのかと。あんなのを出すくらいなら、わたしを出せと言いたい。こいうことばっかり言うから、朝の4時にしかお呼びがかからないんですけど」

これは記事にされる思うが、浅野さんの新聞の読み方にはいつもながら感心させられる。

浅野健一さん

「今回の会談の記事で、歴史的な出来事である『朝鮮戦争の終結』をきちんと報じたのは、じつは4月19日の読売新聞でした。一面のここにちゃんと見出しで出てます。朝日も毎日も、この点は読売の後塵を拝しています。とくに毎日がダメで、朝日はいちおう紙面の中のほうを見ると『戦争終結』が出てるのに、毎日は活字にしていません。とは言っても毎日がなくなると困りますから、頑張ってほしいものです。というわけで、読売はやはり一流紙なんです、社説と論評さえ読まなければですね、しっかりした記事が読める」

自虐ネタや批判ばかりではない。このまなざしを読め。

「わたしは戦後の食糧難のなか、ユニセフやGHQのミルクとパンで育ちました。昨日まで敵国だった日本の子供に、国際社会は手を差しのべてくれた。中国も日本の人民も軍国主義の犠牲者だったと、自国民が日本人を殴るのを禁じた。アジアの人々は、日本人(軍民)が無事に祖国に帰れるよう、配慮してくれたのです。共和国の人々が飢えていることを笑うのではなく、手を差しのべるべきじゃないでしょうか」

そういえば、冒頭で浅野さんは「わたしは高校生の時に米国に留学しましたし、米国の建国の精神である自由・平等・博愛を愛しています。そのいっぽうで、軍事力で世界をねじ伏せようとする米国は嫌いです」イベントの後段では「いわば青い米国と赤い米国がある。青い米国(民主党)を愛しています(※赤と青は党の色であって、思想という意味ではない)」と述べた上で「今回は赤い米国(共和党)が思いきった判断をした」と。

そしてこれも、氏が記事にするであろうと思われるが、今回の米朝会談を契機にした和平への流れは、トランプ大統領と金正恩委員長の思いつきや単なるパフォーマンスではなく、韓国の文在寅政権の成立(朴大統領の追放)が舞台を準備し、朝鮮労働党中央委員会の意志統一があり、米国共和党の判断のもとに、会談と朝鮮戦争の終結への意思確認が行なわれたのだと。この政治の裏側を読み取る視点は、いまのマスメディアには露ほどもないものだろう。

横山茂彦。著述業・雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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