朝日新聞労働組合が本日主催する「言論の自由を考える5・3集会」

朝日新聞阪神支局襲撃事件から30年が経過した。実感としてあの事件を覚えている人はもうわずかだろう。朝日新聞の記者でさえ。

そう思わざるを得ない事情は、たとえばこの催しものに登場する顔ぶれが示している。朝日新聞労働組合「5・3集会事務局」が主催する「言論の自由を考える5・3集会」だ。

◆むのたけじさんら2012年集会の顔ぶれはしっかりしていたが……

「新聞は民衆の合作だ」と語る故・むのたけじさん(2012年集会)

HPを見ると過去の同集会演者の顔ぶれを2012年までさかのぼって見ることができる。2012年は、むのたけじ(故人)の基調講演に続き、《不信の壁を超えて 3・11後の言論と社会》をテーマにしたパネルディスカッションが行われている。パネラーは斎藤貴男(ジャーナリスト)、林香里(東京大学大学院教授)、マーティン・ファクラー(当時ニューヨークタイムズ東京支局長)、依光隆明(朝日新聞編集委員)の各氏で、コーディネーターは元朝日新聞編集局長の外岡秀俊氏だ。この顔ぶれに大きな違和感は覚えない。依光氏は原発事故後、独走する東京新聞の報道に読者を奪われつつあった朝日新聞の中で「プロメテウスの罠」の執筆に関わった記者でもあり、マーティン・ファクラー氏は報道人でありながら、この国のメディアからは「取材対象」として取り上げられることも多く、問題提起者として適切な人物だろう。斎藤貴男氏も硬派ジャーナリストだ。

◆「なにか言っているが、その実、なにも言っていない」人たちの台頭

だが翌2013年のシンポジウム《対話がきこえない「つながる」社会の中で》あたりから登場するパネラーには疑問が生じる。安田浩一(ジャーナリスト)、開沼博(福島大学特任研究員)、小田嶋隆(コラムニスト)、稲垣えみ子(朝日新聞論説委員)でコーディネーターは津田大介氏だ。朝日新聞労組が取材する「5・3集会」にこの顔ぶれは相応しいだろうか。ご存知ない方のために解説をしておくと開沼博は「福島学」なる新たな学問領域を自ら(勝手に)打ち立て、一見原発事故後の福島を社会科学的に解明している素振りを見せながら、その実事故の被害を矮小化し、学問の名を傘に最近では避難者の死亡原因が「反原発運動」だとまで主張しだしている大罪人だ(開沼の罪については「週刊金曜日」4月14日号、明石昇一郎氏の記事が詳しい)。

若手中堅の社会学者には「何かを言っているのだろうが何を言いたいのかわからない(その実、なにも言っていない)」人間が激増しているが、その「何を言いたいかのかわからない」振りをしながら、巧みに世論を「安全神話」へ誘導する役割を担っているのが開沼だ。原発事故後完全に「いかれた」池田香代子(翻訳家)のように露骨ではないだけに余計にたちが悪い。

2013年集会

◆「M君リンチ事件」隠蔽の主犯格として暗躍した安田浩一の言

そして安田浩一の最近の言動は鹿砦社が出版する書物でお伝えしている通りであるが、とりわけ「M君リンチ事件」隠蔽の主犯格として暗躍が著しい。その安田が「5・3」集会前インタビューで興味深い発言を行っている。在特会についての質問を受けた安田は以下の様に述べている。

――記事化は困難を伴ったのではないでしょうか。

安田 僕は当時から、どうしても記事として取り上げたかったんです。それで新聞社系を含めてあらゆる週刊誌に話を持っていったんですが、すべての媒体に断られた。
 編集者の中では在特会の存在を知っている人もいたし、彼らが醜悪だということも認める。でも、彼らのロジックを誌面に反映させたくない、もっと言うと彼らのカギ括弧を載せると誌面を汚す、誌面で扱うことで何より彼らを認知してしまう、放っておけばいいんだと言われた。「あんなのが社会的な支持を得るわけがないから、放っておけば消えてなくなるんだ」と。
 それは編集者のスタンス、保守・リベラル問わず、口をそろえて同じ事を言ったわけです。僕はそのときまでは、半分同意しつつ、同時に何を逃げているんだろうという思いもやっぱりあったわけですね。だって、現実に目の前に「外国人を叩き出せ」と叫ぶ人間がいて、しかもそれなりの動員力を持ちつつある。社会現象として無視していいのかという思いは僕の中にもあって、悶々としたものを抱えていたわけです。

このインタビューの「在特会」を「M君リンチ事件」に置き換えてみよう。

――「M君リンチ事件」の記事化は困難で、鹿砦社はどうしても記事としてとりあげたかったんです。それで新聞社系を含めてあらゆる週刊誌に話を持って行ったんですが、すべての媒体に断られた。――

歴史は巡るというが、わずか数年で主客転倒している現実には、唖然とする。そしてコーディネーターは茶髪の売れっ子、津田大介。亡き小尻記者はこの人選をどう感じるだろう。

◆古市、田母神、香山リカ──あきれ返るほどの人選の不見識

しかし、凋落はそんなものではない。2014年の同集会のテーマは《戦争なんて知らない ――「断絶」と向き合う》で、パネラーは古市憲寿(社会学者)、西谷文和(フリージャーナリスト)、中田整一(ノンフィクション作家)、田母神俊雄(元航空幕僚長)だ。西谷、中田両氏はしっかりした仕事をしている方だが、古市は先に述べた「何かを言っているのだろうが何を言いたいのかわからない」社会学者の筆頭であり、さらにどうして田母神を呼ぶ理由があるのだ。この集会は朝日新聞労組が企画する、私的な集会であるから誰を呼ぼうが自由だ。よってそれに対する批判も自由が担保される。何たる人選かとあきれ返る。不見識にもほどがある。

2014年集会

2015年集会

2016年集会

それでも止まらない。2015年の《戦後70年 メディアの責任 1億総発信社会で》には、憲法9条2項改憲主義者の高橋源一郎(作家)、御厨貴(東京大学名誉教授)、瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター理事長)、西村陽一(朝日新聞取締役編集担当)が並び、コーディネーターは堀潤(ジャーナリスト)が登場。さらに2016年の《デモ×若者 社会は変わるのか》には、最近しばき隊リーダーの感がある、香山リカ(精神科医)と五野井郁夫(高千穂大学経営学部教授)、言説「巧み」な隠れ右翼こと佐藤卓己(京都大学大学院教育学研究科教授)、千葉泰真(SEALDs、明治大学大学院生)のお歴々が……。コーディネーターはまたしても津田大介。

◆労組までもが朝日の真似をすることもあるまいに

そしてきょう行われる《「不信」「萎縮」を乗り越えて》のパネラーは、再度、憲法9条2項改憲主義者の高橋源一郎(明治学院大学教授)、西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)、高橋純子(朝日新聞政治部次長)で、コーディネーターは佐藤優のように、何を聞いても知っている、だけれどもあなたの本音はいったい何なの?と質問すると「いい質問ですね」とは答えてくれない、ヌエのような池上彰だ。

そりゃ負けるだろう。改憲論議でも、阪神支局襲撃事件でもこんな連中が論陣を張っているようでは。朝日新聞への幻想と幻滅。労組までもが会社の真似をすることもあるまいに。もう日本国憲法は死んでいる。

鹿砦社代表・松岡と「デジタル鹿砦社通信」管理人が共同して朝日新聞阪神支局襲撃事件の直後に緊急出版した『テロリズムとメディアの危機~朝日新聞阪神支局襲撃事件の真実』。日本図書館協会と全国学校図書館協議会の選定図書にもなった

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

7日発売『紙の爆弾』6月号!森友、都教委、防衛省、ケイダッシュ等今月も愚直にタブーなし!

 

 

 
前回の本コラムでご紹介した通り、今回の主人公はこのパネル展実行委員会の共同代表の一人である岡本朝也である(もう一名の代表者、能川元一も関西の「カウンター」運動の参加者だ)。

毎日新聞デジタル版2017年4月20日

◆岡本朝也は関西大、甲南大等の非常勤講師

岡本朝也は、1969年奈良県生まれ。関西大学、甲南大学等で非常勤講師として教壇に立っている。専門は家族社会学。内縁の妻は桃山学院大学社会学部准教授の村上あかねである。

ツイッターでは「るまたん」と名乗っているが、これは仏語の“le matin”(英訳すると“the morning”)を自分の名の「朝也」に当てはめたものであろう。

なお、岡本は「岡本弘二」「岡本交人」という変名を使っていることがある。その理由は岡本に過去、逮捕歴があるためだと思われる。

◆岡本朝也はリンチ事件前までM君と親しかった

岡本はリンチ事件の被害者M君と同様、2013年の初期から関西の「カウンター」に参加していた。ただし岡本は関西の「カウンター」関係者の中では、やや浮いた存在であったようである。M君によると、李信恵や凡ら当時の関西の「カウンター」関係者の中心人物は岡本を一方的に毛嫌いしていたらしい。

特に後にリンチ事件の主犯となるエル金の岡本に対する嫌悪は凄まじく、エル金は岡本のことを、当人のいないところでは「あいつはコミュ障(編集部注:「コミュニケーション障害」の通俗的略称。差別感情に溢れた言い回しである)やから居場所を求めてカウンターに来てるんや」と言い回っていたそうだ。これは岡本が野間易通に対して批判的な意見の持ち主だったことが原因とみられる。ここにも「しばき隊」の歪(いびつ)な構図が見て取れる。

M君はこれら「カウンター」関係者の岡本に対する冷遇には、度々苦言を呈していた(つまり岡本をかばっていた)。このことがM君と加害者らとの確執を深める一因にもなったことは岡本自身も認めている(後詳参照)。
 
また岡本は、2014年4月の凛七星の逮捕においても、他の大多数の「しばき隊」=「カウンター」関係者とは異なる態度をとった。多くの「しばき隊員」が沈黙を決め込んで凛を見捨てた。また後に「M君リンチ事件」を引き起こした凡や李信恵のように、凛の逮捕を好機ととらえ、運動の「ヘゲモニー」掌握に血眼になる連中を横目に、岡本は仲間である凛を見捨てずM君とともに凛の支援をしていた。このようにリンチ事件発生前、岡本はM君とは親しかった。

2014年になると、関西における「カウンター」運動は凡や李信恵の専横がひどくなり、M君や岡本は、独自の路線を模索していたようだ。次のようなやり取りを、「秘密裏」に行っていたことから、当時からいかに「カウンター」内部の風通しが悪かったかを窺い知ることができる。

 

 

◆しばき隊の十八番! 岡本朝也は手のひら返しでM君を裏切った

M君リンチ事件発生後間もない2014年12月20日、作家で法政大学教授の中沢けいが「男組」組長の高橋直輝こと添田充啓とともにわざわざ大阪まで来て、事件の隠蔽工作を行ったことは、『反差別と暴力の正体』第4項および第5項において取材班が詳述した通りである。

このとき、中沢と添田はM君と親しかった凛七星、岡本ともう1名に対し、M君の刑事告訴を阻止するように要請している。そして中沢の要請をただ一人忠実に実行したのが、なんと岡本である。翌21日M君は岡本の求めに応じて面会しているのだがM君はこの時に、中沢らの来阪を岡本の口から聞いたという。同日岡本はM君に「中沢先生もエル金側についた」と伝えている。岡本によると中沢は「私は何があってもエル金を守る」とまで宣言したそうだ。

事件について、M君はあくまで徹底究明の姿勢を崩さなかったためか、年改まって2015年1月17日、岡本は直接にM君に「刑事告訴をするな」と強要している。かつては親しかった岡本の口から、こんなセリフを聞かされたM君の落胆と失望は察するに余りある。

その後、2015年1月29日岡本は言い訳がましく次のようなメッセージをM君に送りつけている。岡本はリンチ事件が起きた背景には「自分にも責任がある」と明言している。しかしその後岡本は、自身が認める「責任」一切とっていない。「責任」という言葉をここまで軽々しく扱う岡本が、日帝の「戦争責任」にも言及したパネル展の代表者なのだ。一般の方には隠蔽されたこういった欺瞞を「茶番」という。

M君は岡本が刑事告訴の断念を強要したことにつき、抗議の意を示しているが、それに対する岡本の回答は大臣並みに立派である(つまり嘘くさいということだ)。岡本はM君に「刑事告訴をするな」と迫ったことに「倫理的に批判されるいわれは全くない」と開き直っている。岡本が堂々とそのように言っているので、M君とのやり取りの一部始終を公開されても岡本に文句はあるまい。ここにご紹介しよう。岡本とM君のやり取りは、岡本の人間性を理解するうえで極めて重要であるので、「私信の公開」云々などというご都合主義的批判を、取材班は一切唾棄することをあらかじめ申し上げておく。

 

 

この後M君と岡本の間に連絡はないが、岡本は2015年5月「エル金は友達祭り」に参加している。

「エル金は友達祭り」とは、2015年5月1日から2日にかけて、「あらい商店」店主(当時)の朴敏用が、M君を精神的に追い詰めることを目的に、多数の「しばき隊」=「カウンター」関係者を扇動し、一斉に「(リンチ事件主犯の)エル金は友達」という書き込みを行った出来事のことである。冒頭述べた通り、岡本とエル金の確執はとくに深かったにもかかわらず、岡本は不思議な人間だ。

リンチ事件が明るみに出てからも、岡本は「あれは喧嘩だった」「レイシストを利することをするな」等と、M君への「セカンドリンチ」に余念がない。もはやいちいち紹介しないので、2016年5月頃の岡本のTwitterなりFacebookなりをご覧いただきたい。

◆岡本朝也は思想的に「うろたえ続けている」ことを白状している

ここまでお読みいただいた読者にはもはや説明するまでもないだろうが、岡本は「運動内部のヒエラルキー」への「忖度」にいそしみ、意思も良心もかなぐり捨てて「運動内部の暴力的権力構造」に媚びへつらっている。そして、身近で起きた暴力事件、それも親しかった被害者M君に刑事告訴の断念を迫って恥じることもない。このような人物を代表者にすえ、そして関係者が皆それを知って平然と展示を開催し続けている。それが「未来のための歴史パネル展」(みれぱ)の実態である。

岡本はM君に向けて「うろたえるだけ」と何度も語っている。そうだ。いい年をして、大学で教鞭を取りながら、責任や論理矛盾にも気が付かない岡本の如き人間は、一人で「うろたえ続けて」いればよいのだ。善人面をして毎日新聞に報じられた岡本はまだ「自分自身」が理解できていない。岡本は三田誠広の「僕って何」をまず読むべきだ。岡本は毎日新聞の記事中、「誰が悪いというのでなく、人類の犯した事実を共有したい」と言っている。そんなことはないだろう。中国への日本侵略に当時の中国人民が責任を有するのか。朝鮮半島の植民地支配に朝鮮半島の人民が責任を負うというのか。岡本の主張はつまるところ、安倍や自民党、改憲勢力の主張と変わりない。何よりも岡本自身が終始思想的にも「うろたえ続けている」ことを白状しているに過ぎない。(続く)

毎日新聞兵庫版2017年4月20日朝刊

(鹿砦社特別取材班)

重版出来!『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

AmazonでKindle版販売開始!『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

連合HPより

wikipedia「連合」項より

今日はメーデーだ。東京の「連合」(日本労働組合総連合会)系集会には小池都知事がゲストで呼ばれるという。ご同慶の至りである。メーデーは労働者の祭典、戦う意思を確認する日のはずだが、そこにどうして「保守」の小池都知事が呼ばれるのか。いや、振り返れば別におかしなゲストは、これが初めてではない。郵便局をぶっ壊し、ブッシュの進めたアフガニスタン、イラクへの侵略戦争を世界一支援した小泉元首相もこの大会に呼ばれたことがある。

◆1987年の「連合」発足──この国の労働運動が骨抜きにされた一大転換点

そもそも出自からして「連合」は御用組合化が運命づけられていた。元社会党系を支持していた「総評」(日本労働組合総評議会)が、国鉄解体を機にガタガタにされ、民社党を支持していた「同盟」(全日本労働総同盟)と合体をしたのは1987年11月20日のことだった。今日の安倍政権による急速な反動体制の暴走を「小泉・竹中」の新自由主義から、と規定する方が多いが、私は「総評」解体「連合」発足が、この国で労働運動の決定的な骨抜きが行われた一大転換点だと考える。

その仕掛けは労働界内外から行われた。今では野党の共同代表におさまり、あたかも世直しはこの人しかいないと、80年代には予想もしなかった凋落と評価の変わりようのO氏は、中曽根政権下で国鉄潰しに直接手を下した本人である。

◆超A級の戦犯として山岸章

そして超A級の戦犯として山岸章の名前を挙げなければならない。山岸は電電公社(現NTT)の情報通信産業労働組合連合会の委員長でありながら、「総評解体」=「連合設立」をもくろみ暗躍し、「連合」発足後は初代の会長に就任する。そしてめでたくも2000年4月、山岸は勲一等瑞宝章を受勲している。日本における今日的労働組合運動の退潮と腐敗をもたらした山岸の罪は万死に値する。連合会長就任後、山岸はテレビに知識人ズラをして登場しては、労組潰しの立役者として、間抜けな司会者やコメンテーターからおだてられ、いい気になっていた。

当時、豪州出身の私の友人は、「山岸の役割は、ボブ・ホーク(ロバート・ジェイムズ・リー・ホーク、Robert James Lee Hawke)と同じだ」と語っていた。ボブ・ホークは豪州で1983年から1991年まで首相の座にあった自分物だが、彼がオーストラリア労働組合評議会(Australian Council of Trade Union, ACTU)を骨抜きにして、日本の「連合」化させた役割と山岸の役回りがそっくりだと聞いた。もっとも豪州の労組は「連合」とは比較にならない闘争力をまだ保持はしていたが、20世紀後半資本主義国での労働運動解体に一役買った人物という点で二人には共通点が多かった。

連合2016~2017年度パンフレットより

連合2016~2017年度パンフレットより

wikipedia「民進党」項より

◆「連合」が支える民進党の堕落

そして、「連合」が支える民進党の堕落はどうだ。長島昭久が「憲法について執行部と考えが違う」と離党。細野豪志も執行部の憲法改正に関する姿勢に不満がある」として民進党代表代行を辞任した。「民進党執行部の憲法についての考え方」などはどうでもよいのだが、長島も細野も要するに自民党同様の「改憲」がしたい、という人間なのだ。長島はそのタカ派ぶりを昔から隠すことなく、海外派兵推進、憲法改正を口にいていたし(ちなみに長島の大学時代の指導教授は小林節だ)、細野は静岡選出の議員だが、ルポライターの明石昇一郎さんに「原発のことを教えてください」とわざわざ質問をして「ああそうなんですか」と原発の危険性を「理解したフリ」をしていた人間だ。芸能人との不倫写真を撮られたり、どのみち期待する要素が「ゼロ」の人間なので驚くには値しない。

問題は長島、細野のような「廃棄物」が民進党議員の中では決して珍しくはないとうい事態だ。なぜなのか。それは連中の頭の中に理想とする社会像がないからだ。仮にあってもそれは自民党の連中が発想するそれと大差ない。だから民進党は一向に支持率が上がらないし、どんどん勢力が弱体化してゆくのだ。しかもそこに「投票」をちらつかせるのが「御用労組の集合体」連合では、どうしようもない。

じゃあ、だれを選べばいいの?……との質問が当然予想される。私は自公には投票しない。民進党にも入れない。それ以上は言わない。

◆「真っ当な労組」なしに「真っ当な野党」などあり得ない

民進党は一刻も早く解党し、また「連合」も解体すべきだ。少々時間がかかるかもしれないが、「真っ当な労組」がなければ、「真っ当な野党」はあり得ない。労組は組合員と全労働者の利益を追求して、経営者と対峙する本来の役割を取り戻せば良いだけのことだ。非正規雇用が4割に達し、「食えない労働者」が激増する資本主義末期にあって、内部留保を腐るほど貯めこんだ大企業からそれを吐き出させ、労働者にしかるべく分配を要求するのだ。労働運動の役割は経営者のお手伝いではなく、労働者の権利・利益の追求だろう。

民進党HPより

◆「与党案に反対」が野党の旗幟

また、民進党解党後の野党は「自民党の提案には何でも絶対反対」の旗幟(きし)を鮮明にすればよい。民進党が民主党時代にどうして消費税の引き上げなどを言い出したのだ。菅直人元首相が財務官僚に嵌められて妄言を吐き出したのかもしれないが、消費税率上昇が税収の低減を招くことは過去の実績で明らかじゃないか。「消費税亡者」の中には税率を20%に上げないと……など寝言は寝てから言え!と怒鳴りつけたくなるような間抜けな論を平気でのたまう輩がいる。間違っている。彼らが求めるように「経済成長」を数字で確認したいのなら、まず消費税を全廃してみろ。どれだけ消費が喚起され、内需が潤うことか。そして消費税に苦しめられている中小企業や、低所得世帯が喜ぶことか。財源? 東電に無担保で20兆円貸せるんだろう。それを回せばおつりがくるじゃないか。

と、いうのが野党的には当たり前の姿勢だと思うのだが、小池都知事登場にヤジの一つも飛ばさずに拍手しているうちは、すべて望み薄だろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』タブーなし!の愚直なスキャンダルマガジン

〈原発なき社会〉を求める声は多数派だ!『NO NUKES voice』11号!

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

 

 

「M君リンチ事件」の情報が鹿砦社にもたらされたのは、2016年2月のことだった。ことの重大さに驚いた鹿砦社は特別取材班を結成し、取材に乗り出して1年余、M君リンチ事件の全容解決にまでは未だいたらないものの、その一定の成果は『ヘイトと暴力の連鎖』『反差別と暴力の正体』の2冊として 世に出すことができた。M君の裁判も今なお継続中であるが、真相解明とM君の権利回復の一助にはなれたのではないかと、取材班も自負している。

ところで、きょう4月28日は、取材班にとっては忘れえない日である。1年前の2016年4月28日、M君リンチ事件が1年以上にわたる隠蔽工作を打破して明るみに出される先鞭をつけた『週刊実話』による報道があった日であったのだ。奇しくも今日はM君の裁判の弁論準備手続の期日でもあり、取材班としても運命的な巡り合わせを感る。そこで最近行われた、しばき隊関連の行事を、4回シリーズでご紹介する。

◆しばき隊が深く関与する「未来のための歴史パネル展」(「みれぱ」)

「未来のための歴史パネル展」というパネル展活動を行う団体がある。「みれぱ」と略称されているこの団体は、「日本における歴史修正主義と闘う」といったようなことを目的に、2014年に準備が始まり、2016年1月から本格的に活動している。これまで関西を中心に10回以上のパネル展示を展開している。パネル製作等の費用は、寄付により充当されているようで、「李信恵さんの裁判を支援する会」とは違って、実行委員会によりインターネット上で会計報告も公表されている。過去の活動等の詳細については、彼らのホームページやフェイスブックページを参照されたい。

◎「未来のための歴史パネル展」ホームページ http://mirepa.tumblr.com/
◎「未来のための歴史パネル展」フェイスブック https://www.facebook.com/mirepa/
つい先日、4月22日と23日にも、神戸でパネル展示をやっており、これについては4月20日に「日本と朝鮮 パネル展」という見出しで毎日新聞の地方版において報道された[写真1]。

[写真1]毎日新聞兵庫版2017年4月20日朝刊

毎日新聞デジタル版2017年4月20日

なぜ取材班がこのパネル展に注目するのか。それはこの「未来のための歴史パネル展」は「しばき隊」「カウンター」の関連事業であり、なおかつM君リンチ事件とも無関係ではないからだ。そして、取材班は「未来のための歴史パネル展」においてもまた「しばき隊」「カウンター」およびこれに連なる運動、人物らに共通する、筆舌に尽くしがたい腐敗の事実を突き止めたのである。

◆「みれぱ」と「しばき隊」「カウンター」とのつながり

おそらく当人らは否定するであろうが、「未来のための歴史パネル展」(みれぱ)は明白に「しばき隊」「カウンター」とは密接な関係がある。百聞は一見に如かずという。これをご覧いただこう。

「未来のための歴史パネル展」実行委員会の役員一覧

「未来のための歴史パネル展」実行委員会の役員一覧

 

 

これは、2015年6月29日付で公表された、「未来のための歴史パネル展」実行委員会の役員の一覧である。これ以降現在にいたるまで役員の変更があった旨は公表されていないので、現在も役員の体制はこのままだということであろう。まずは「顧問」の面々にご注目いただきたい。

筆頭に名前が挙がっているのは、関西学院大学社会学部教授の金明秀だ。金は社会学者としてよりも、M君リンチ事件の最も悪質な「セカンドリンチ」を行った二次加害者の一人としての悪名の方がはるかに高いのではないだろうか。2016年5月18日にM君への恫喝書き込みを行ったことを筆頭に[写真2]、リンチ事件に関する金の所業の詳細は『反差別と暴力の正体』第4項において触れたので割愛するが、M君が弁護士とともに関西学院大学社会学部まで出向いて抗議したにもかかわらず、現在に至るまでこの件について金明秀本人からも、関西学院大学当局からも、M君に対して一切の謝罪がないことは改めて強調したい。金はこの他にも複数の暴力事件を引き起こしており、このような人物に教授職を与えている関西学院大学の良識も疑われるところだ。

[写真2]金明秀=関西学院大学社会学部教授のツイッター書き込み

弁護士の林範夫(イム・ボンブ)。ここでの肩書は弁護士だが、林は(特非)コリアNGOセンターの代表理事という顔も持つ。コリアNGOセンターは「反ヘイトスピーチ裁判」と称する李信恵が在特会らを訴えた裁判の事務局を担当しており、M君リンチ事件の隠蔽工作と二次加害に最も深く関与した組織である。

これだけ見ても、「未来のための歴史パネル展」実行委員会と「しばき隊」「カウンター」の繋がり、さらにはM君リンチ事件とは無関係とはいえないものだが、今回取り上げるのは金や林ではない。共同代表の一人であり、毎日新聞の取材も受けた岡本朝也(弘二、交人というような変名を使っていることもある)、この人物が、今回の特集の「主人公」である。

岡本の人となりについては続編で報告する。

(鹿砦社特別取材班)

重版出来!『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

AmazonでKindle版販売開始!『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

東京電力福島第一原発事故の自主避難者に対する発言で批判を浴びた今村雅弘復興相が4月21日の閣議後記者会見で、フリーランスの記者からの質問を「もういいよ」と遮る一幕があった。

記者は「自主避難者への住宅支援が打ち切られ、行き場のない人もいる。国が調査しないと、実態が分からないのでは」と質問。今村復興相は「いろんな方がいらっしゃる。よく聞いてから対応したい」と答えた。同じ記者が「把握できるのか」と再質問しようとしたところ、いらだった様子で「もういいよ。他の人どうぞ」と質問を打ち切った。会見の最後にも質問されたが、答えずに退席した。

今村復興相は4月4日の会見で、同じ記者とのやり取り中に激高し、自主避難者が帰還できないのは「本人の責任」と発言。その後、謝罪して撤回し、「感情的になりおわびする。今後は冷静に対処したい」と釈明していた。

◎<今村復興相>また質問打ち切り(2017年4月21日付毎日新聞)

 

◆今村は正直だ

今村は正直だ。各官庁に設けられた記者クラブ所属の記者から、本質を突く質問が発せられることは、まずない。定例で行われる首相官邸での記者会見の様子をご覧になればわかる。幹事社が質問者に挙手をさせ、指名された記者が「○○新聞の○○ですが」と名乗り、机の上に薄く積もったホコリふき取るような、上っ面の質問しかしない。会見に参加している他の多くの記者は、その質疑を聞きながら「タイピング専門家」と化してひたすらパソコンのキーを叩いている。それはジャーナリストの姿ではなく、いかに早く発言を入力できるかを勝手に自らに課した、技術職の競い合いだ。あんな弛緩した記者会見に意味はないし、あの場所で何かが暴かれることも金輪際ありはしない。

それでも「失言」という名の「暴言」を吐いてしまう不注意者が時に現れるが、あれは「今日は無礼講だから」という宴会で「いやここだけの話、うちの会社ブスが多いね」と発言する社長のようなものだ。人間として最低限の資質さえない大間抜けしか今の記者クラブでは、「不都合な事実」を暴かれることはないのだ。

 

◆記者クラブという「村社会」

そもそも記者クラブという、一部大手マスコミにだけ振り当てられる「特権部屋」で行われる会見では、なれ合いが常態化し、鋭い質問など許されない「村社会」が形成される。近年、マスメディアの見事なまでの凋落急速の根源にはいくつかもの要因があるが、記者クラブの弊害はその主たるものである。

復興省は、東日本大震災を受けて発足した時限付きの例外的省なので、ここには記者クラブがなく、フリーの記者も入ることができる。だから、フリージャーナリストの西中誠一郎氏が今村復興相に質問することが可能であり、彼はジャーナリストとしてごく自然な質問をぶつけただけの話である。

 

◆今村の激高が示すもの

4月4日の会見で、
西中氏 「福島県だけではありません。栃木からも群馬からも避難されています」
今村大臣「だから、それ……」
西中氏 「千葉からも避難されています」
今村大臣「いや、だから……」
西中氏 「それについては、どう考えていらっしゃるのか」

この質問の後に今村復興相は「うるさい!」と激高した。何がうるさいものか。取材者としては至極基本的な質問ではないか。今村の激高はこの程度の質問も日常の会見では、ほとんど受けていないことを示す結果となった。

◆「森友問題は終わり。政治にこれ以上追及が及ぶことはなくなりました」

 

知人の全国紙記者が先日「森友問題は終わり。政治にこれ以上追及が及ぶことはなくなりました」と連絡してきた。「なにを寝ぼけたことを言っているんだ。やる気が全然ないのか君たちは?」と毎度のことながら呆れかえった。総理大臣夫人が「公人」か「私人」などという議論は、小学生1年生が交通安全のルールを教わったあと、確認のテストをしているレベルの話で、議論すること自体を恥じ入らなければならない。国の最高権力者の夫人は現行法を基準にすれば「公人」に決まっている。だから安倍自身が「私もしくは私の妻が関与していたら、総理だけではなく議員も辞職する」と大見得を切ったではないか。

これほど明白なスキャンダルを目前にして、それを「狩る」生理がなければ、報道関係者はその職を辞すべきだ。「政治にこれ以上追及が及ぶことはなくなりました」と伝えてくれた大手紙記者の発言は「もうこれ以上追及する気はありません」と正確にその意味が翻訳されなければならない。そうであるならば、君たちはいったい何のために大手メディアに勤務しているのだ。何が起ころうが、起こるまいが交通事故と戦争の危機を等価に報道するような「職業道義的犯罪」のルーティンに乗っかっていれば、高額の禄が保証されている。その生活を維持したいだけなのか。それならば一般企業の会社員と同じだろう。

 

◆マスメディアは「権力」である

今日、マスメディアは言うまでもなく「権力」である。そのマスメディア「権力」が「政治権力」と対峙する中で、本来のバランスが維持されるはずだ。しかしこの国の報道の歴史を紐解けば、江戸時代にさかのぼっても、本質的に「政治権力」に長期間にわたり腰を据えて立ち向かった「反権力」報道機関が存在した痕跡はない。もちろん、明治以降はそうであるし、大正、昭和、さらには戦後の含め「反権力」ジャーナリズムの歴史は極めて希薄である。時にみられるのは「ゲリラ的」ジャーナリストの活躍だけだ。

今回今村を激怒させた、西中誠一郎氏はヒーローでもなんでもない。当たり前の質問を当たり前にぶつけただけのことだ。それがあたかも奇異な事件のように扱われるのは時代が歪であるからだ。歪曲されているのは今日的社会であって、個ではない。


◎[参考動画]「もういいよ」〜復興相が再び質問打ち切り(OPTVstaff2017年4月21日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』タブーなし!の愚直なスキャンダルマガジン

 

毎日、毎日アメリカと北朝鮮の緊張を伝えるニュースがひっきりなしに伝わります。アメリカは「あらゆる手段を排除しない」とか北朝鮮は「核攻撃には核兵器で応じる」など、文字だけを追って行けば、戦争直前のようなキナ臭いことばが行き交っています。だからといって日本政府が北朝鮮への「説得」や「外交戦術」に出る気配は一向にありません。あいも変わらず「対話と圧力」を繰り返すばかりの安倍総理。第二次安倍政権が発足してから、北朝鮮と「対話」をしたことがあったでしょうか。「拉致問題の解決に全力であたる」と繰り返していますが、「対話と圧力」の内実は「圧力に次ぐ圧力」で、それこそ封じ込められ「圧力釜」のように内圧が上がった北朝鮮の、暴発を、まさか内心期待したりしていないでしょうね。

現在書店で販売中、『紙の爆弾』5月号の特集は「私たちの『権利』を確認する」です。特集の紹介分は以下の書き出しからはじまります。

私たちには「人権」がある。言うまでもないことだが、ならば、私たちの人権は守られているだろうか。それに基づく「権利」は侵害されていないだろうか。社会で差別に出会ったり、職場で不当な扱いをされたりすれば、人権侵害を意識し、時に告発を行う。いまだに差別はなくならないし、搾取はあちこちで行われており、明らかに解決すべき課題である(後略)。

鹿砦社はいつから岩波書店のような「模範生」になったのか、と目をこすって、もう一度読み返したくなる文章です。『紙の爆弾』のサブタイトルは、表紙に小さな赤い文字書かれている「タブーなきラディカルスキャンダルマガジン」です。ほんとうは読者が「これちょっとな……」と時には顔をそむけるような暴露記事やスキャンダルを、満載したいはずです。でもどうですか。この真っ当なラインナップ。

●政治の「契約違反」にNOを 国家に異議を唱える権利 
 松村比奈子(首都大学非常勤講師組合委員長)に聞く
●高額供託金・運動規制「自由な選挙」を追求する 林克明
●権力による情報統制で進む「笑顔のファシズム」 本間龍
●ヨーロッパから見た自民党の「憲法改正草案」  広岡裕児
●捜査 裁判 報道以上の人権侵害 最高裁での逆転無罪の2冤罪事件 片岡健
●〝福祉行政”の魂胆が垣間見える 自治体「人権担当」という仕事 三谷誠
●「戦争絶滅受け合い法」制定のすすめ まず総理から前線へ!  佐藤雅彦

いつからこんなに硬派になったんでしょうか?(もちろん東陽片岡さんの「シアワセのイイ気持ち道講座」、エロイ重里さんの「風俗広告代理店マンの営業日誌」や読者から人気が高い、村田らむさん「キラメキ☆東京漂流記」やマッドアマノさんの「世界を裏から見てみよう」も健在ですが)

さらには、≪森友学園「国有地払い下げ」"8億円減額”詐欺行為の全貌 悪い奴らを眠らせるな!青木泰≫と続きます。

ジャーナリストの田中龍作さんや音楽家の三枝成彰さんが「本当のことが知りたければ『紙の爆弾』を読みましょう」と言われたことがあります。あれは冗談半分かと思っていましたが、いまや本当になりました。最近の『紙の爆弾』(私たちは「紙爆」と呼びます)は、毎号目が離せません。大手新聞社の記者に聞くと「『WILL』や『正論』は読まないけど、『紙爆』は必ず読んでいますよ」という人が多いのも、なるほどとうなずけます。

でも、『紙の爆弾』は「タブーなきラディカルスキャンダルマガジン」の基本姿勢を修正したのではなくて、世の中が「一見真っ当なようなスキャンダル」だらけになってきたと言うべきでしょうか。これだけ閣僚がボロボロになっても誰も辞任しないし、更迭されることはありません。おかしな世の中です。

5月号では≪〝籠池爆弾”で大揺れ 安倍政権「崩壊」と「その後」を予想する 朝霞唯夫≫や、≪米軍基地反対運動中に不当逮捕、五ヵ月の長期勾留から保釈 沖縄取材班≫とカバー範囲の広さが印象的です。今の『紙爆』は80年代後半の弛緩した時代の『朝日ジャーナル』より硬派かもしれません。ぜひご一読くださいね。

(伊藤太郎)

※『紙の爆弾』編集部からの訂正とお詫び
《米軍基地反対運動中に不当逮捕、五ヵ月の長期勾留から保釈 沖縄取材班》の本文中に誤りがありました。112ページ下段5-6行目「正和さん夫妻と博治さんの奥さん」とすべきところ、「正和さん夫妻と博治さん」と表記しておりました。お詫びして訂正いたします。

『紙の爆弾』タブーなし!の愚直なスキャンダルマガジン

久しぶりの講演に会場は満員!
「共謀罪」が政治過程に上る中、
「名誉毀損」に名を借りた自らの逮捕・勾留事件の体験を話す!

松岡利康=鹿砦社代表

4月15日(土)夕刻、東京・水道橋の「たんぽぽ舎」が運営する会議室「スペースたんぽぽ」に多くの方々に集まっていただきました。久しぶりに私が12年近く前(2005年7月12日)の自らの逮捕・勾留事件について話す機会を与えていただいたからです。会場は、予想を越えて90名近くの方々で満員、熱気溢れる講座でした。菅直人元首相の講演以来の盛況だったとのこと、当初用意したレジメ・資料30セットでは足りずに、慌てて増刷りをしたほどでした。

この集まりは、たんぽぽ舎が3・11以来適宜継続的に行っている講座の一環で、実に今回が460回目だということです。今回は「浅野健一が選ぶ講師による『人権とメディア連続講座』」の第8回で、テーマは「表現の自由弾圧事件--懲罰としての逮捕、長期勾留」。私は「私が巻き込まれた、『名誉毀損』に名を借りた出版弾圧事件」について自らの体験と、逮捕以来12年近く思ってきたことを話させていただきました。

単なる地方小出版社の経営者にすぎない私の話になぜ多くの方々が関心を抱き参加されたかというと、「共謀罪」なる稀代の悪法が政治過程に上り国会審議が始まったからだと思われます。主催のたんぽぽ舎や浅野健一さんの狙いもここにあるのでしょうか。

つまり、私が逮捕・勾留された当時は、これに至るには刑事告訴→検察(あるいは警察)受理→捜査という一定のプロセスを経るわけで、それなりの日数もかかりますが、「共謀罪」が制定されれば、法的なお墨付きが出来るわけですから、そのプロセスは必要なく、すぐに逮捕することが可能になります。参加者が多かったのは、この危機感をみなさんが感じ取られていたからでしょうか。

◆「表現の自由」「言論・出版の自由」は〈生きた現実〉の中で語るべきだ

講座の内容は、追ってYou Tubeでも配信されるということですから、詳しく知りたい方はそれをご覧になっていただきたいと思いますが、私の話の概要は次の通りです。

一 事件の経緯、二 人権上問題となること、三「表現の自由」「言論・出版の自由」とは何か?、四「表現の自由」「言論・出版の自由」上の問題
ということでした。

私が最も言いたかったことは、憲法21条に高らかに謳われながらも形骸化、空洞化しつつある「表現の自由」「言論・出版の自由」──耳障りの良いこれらの言葉を机上でこねくりまわすのは簡単ですが、それではまさに〈死んだ教条〉になってしまいます。「共謀罪」や権力弾圧がリアルに〈生きた現実〉として迫っているのですから、私たちも〈生きた現実〉として語らなければならないということです。

事件の経緯を振り返れば、事件の一因となった書籍を刊行したのが2002年4月、それから出版差止仮処分、刑事告訴、逮捕→勾留、有罪判決(懲役1年2カ月、執行猶予4年)と民事訴訟での高額賠償金(600万円+利息)、控訴審、上告審を経て確定、執行猶予を不服とする再告訴、これが不起訴となる2011年6月まで9年間の月日が掛かり苦しめられました。本当にきつかった。これは体験した者でないとわかりません。

この間に、私が経営する出版社「鹿砦社」は壊滅的打撃を蒙り、いちどは地獄に堕ちました。正直「もうあかん」と思いましたし、弁護士もそう思ったとのことでした。しかしながら多くの方々のご支援により運良く再起できました。私も「このままでは終われない」と死に物狂いで働き運良く再起できましたが、普通は死に物狂いにもがいて地獄に堕ちたままでしょう。

「こいつはイジメたらんといかん」と警察・検察・権力に目をつけられたら、それは凄まじいものです。当時「ペンのテロリスト」を自称し、「巨悪に立ち向かう」と豪語、これが当時警察キャリアを社長に据えていた警察癒着企業や警察・検察を刺激し、警察のメンツにかけて本気にさせてしまったようです。

今でも「われわれにタブーはない!」をモットーとする私たちの出版活動に対しては批判も少なからずありますが、私たちを批判する人たちの多くは、自らは〈安全地帯〉にいてのものです。果たしてどれだけ体を張った言論を行っているのか!? 私は半年余り(192日間)ですが、1カ月でも2カ月でも拘置所に幽閉されたらキツいぞっ!

◆心ある方々のご支援で奇跡的再起を果たした私たちは〝支援する側〟に回ります

私、および私の出版社「鹿砦社」は、奇跡的ともいえる再起を果たすことができました。私も死に物狂いに働きましたが、保釈後挨拶に出向き塩でも撒かれ追い返されるかと思いきや高級すし屋に招いてくれ、「人生にはいろんなことがあります。私は支援しますので頑張ってください」と激励し仕事を受けてくださった印刷所の社長(当時)はじめライター、デザイナーさんら多くの方々のご支援の賜物と言わざるをえません。私の能力など、出版業界では並で、大したことはありませんから。本当に有り難い話で、事件から12年近く経ち、あらためて感謝する次第です。

私たちは今、再建なった中で、3・11以降、たんぽぽ舎はじめ幾つかの脱原発の運動グループを継続して些少ながら支援しています。いちどは壊滅的打撃を蒙りながら地獄から這い上がってこれたことへの〝恩返し〟です。かつて支援された側が、今度は支援する側に回ります。もう支援される側には戻りたくありません。

また、私たち鹿砦社は脱原発を今後の出版方針の一つとして定め、たんぽぽ舎のお力を借りて脱原発情報マガジン『NO NUKES voice』を創刊し、すでに11号を数えました。脱原発の老舗市民グループ・たんぽぽ舎はもう30年近くになるということですが、脱原発をライフワークとされる柳田・鈴木両共同代表はじめスタッフの方々のピュアな想いにも励まされ、齢65になった私の今後の方針も見えてきました。鹿砦社東京編集室の〝隣組〟ということもありますが、今後共、最大限共同歩調を取っていきたいと思います。

最後になりましたが、今回の講座で東京で久しぶりに、くだんの「名誉毀損」逮捕事件について話す機会を与えてくださったたんぽぽ舎のみなさん、及び逮捕直後から支援され今回も自身の連続講座の一つに組み入れてくださった浅野健一さんに感謝いたします。 

(鹿砦社代表・松岡利康)

〈原発なき社会〉を求める声は多数派だ!

『NO NUKES voice』11号

自民党憲法改正草案表紙

この世の中は誰が支配しているのだろう。神か、国際金融か、各国においてはその政府か。地域社会においては何の肩書も持たないけれども、世襲的に力を持つ地域ボスであろうか。市長や村長、地方行政か、それとも……。

◆自民党「改憲草案」前文に表れたこの島国の支配者

自民党の改憲草案の前文をご覧になったことがあるだろうか。この中には自民党の望む国家像が描かれている。支配権力を縛るはずの憲法の前文の書き出しが「日本国は」で始まるなど、現行憲法の精神とは全く異なるトーンは明確だが、この極め付きの悪文の中には、誰がこの島国を支配しているか、支配したいのかを知るのヒントがある。

【自民党憲法改正草案前文】http://constitution.jimin.jp/draft/

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。

我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。

自民党憲法改正草案(上段が改正草案、下段が現行憲法)

日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。

我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。

日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

◆国民の権利や幸福より「経済成長」を重視する自民党「改憲草案」前文の意味

将来到達しようとする国家像がいかに貧弱で、おそまつな発想にとどまっているかは現行憲法の前文と比較すれば明らかである。それはともかく、ここでは、「我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる」に注目をする。

この期に及んで「経済活動を通じて国を成長させる」という文言は、その到達目標の低さや、即物性剥き出しの格調の低さもさることながら、現体制、自民党の本音を語っているといえよう。つまり国民の権利や幸福よりも「経済成長」を憲法前文で謳うほどに重視しているということである。

自民党憲法改正草案(上段が改正草案、下段が現行憲法)

国の形や到達目標を掲げる憲法前文で、一内閣の施政方針演説ではあるまいに「経済成長」など、文言にしても、まったく格調の低い言葉が用いられているが、これが現在の支配実態を示すものであり、さらなる「経済による国民支配」を目指していること示していると理解できる。

◆歴代経団連会長の思想と行動

そこで、いまこの島国の経済に強い力を持っているのはどのような勢力か、人物かを点検してみようという動機が湧く。全国的には経団連や日経連といった企業の集まりが政府に対して相当強い発言力を有していることは、周知の事実だ。歴代経団連の会長の顔ぶれを振り返ってみよう。

初 代  石川一郎(日産化学工業社長)
2代目  石坂泰三(東京芝浦電気社長)
3代目  植村甲午郎(経団連事務局)
4代目  土光敏夫(東京芝浦電気会長)
5代目  稲山嘉寛(新日本製鐵会長)
6代目  斎藤英四朗(新日本製鐵会長)
7代目  平岩外四(東京電力会長)
8代目  豊田章一郎(トヨタ自動車会長)
9代目  今井敬(新日本製鐵社長)
10代目  奥田碩(トヨタ自動車会長)
11代目  御手洗冨士夫(キャノン会長)
12代目  米倉弘昌(住友化学会長)
13代目  榊原定征(東レ会長)

ざっと見渡すと重厚長大産業からの会長輩出が多いことに気が付くが、東京芝浦電気=東芝関連の石坂と土光が会長の座にあったのは、東芝破たんを目の前にした現在からは隔世の感がある。経団連には会長に次ぐ評議員会議長、審議員会議長のポストがあり、そこへ名を連ねているのも重工業関連者中心であるが、東京電力関係者の名前も散見される。平岩は第7代会長(1990年12月21日~1994年5月27日)の座におり、菅礼之助、那須翔の二人も幹部の中に見つけることができる。平岩は2002年の原発トラブル隠し事件に関与した人物で、菅礼之助は鉱山畑を歩んできた人間、那須翔は平岩同様2002年の原発トラブル隠し事件に関与し、東電会長を辞任した人物だ。

◆地方経済界の電力会社ヘゲモニー

経団連の会長はその人物の個性にもよるが、常に政権に対して財界からの要求を突き付ける役割は発足以来一貫している。時に政権に取り入り(土光が臨調に重用されたように)、時には大企業の利益確保のために政権に圧力をかける。御手洗や米倉の業つくぶりはまだ読者の印象にも残っているかも知れないが、経団連は常に政権に対する最大ともいえる圧力団体として君臨し続けている。

しかし、「さすがに3・11後の経済団体の重要な役職に電気事業者が名を連ねることは難しくなった」とスラスラ筆を進めることができるのが当たり前なのだけれども、実は地方においては、電力会社の地域経済界支配は、まったく揺らいではいない。2011年3月11日時点で、全国の経済連合会の会長は全員が電力会社の社長もしくは会長だった。現在はどうだろう。本年3月末時点で以下の通りだ。

北海道経済連合会 会長=髙橋賢友(北電興業取締役会長) 
  ※筆者注:北電興行は北海道電力の関連会社

東北経済連合会 会長=海輪誠(東北電力会長)

中部経済連合会 会長=豊田鐵郎(豊田自動織機会長)
  副会長=水野明久(中部電力会長)

北陸経済連合会 会長=久和進(北陸電力会長)

関西経済連合会 会長=森詳介(関西電力相談役)

四国経済連合会 会長=千葉昭(四国電力会長)

九州経済連合会 会長=麻生泰(麻生セメント会長)  
  副会長=貫正義(九州電力会長) 石嶺伝一郎(沖縄電力会長)

中部と九州を除いて、相変わらず電力会社の人間が会長の座にある。中部と九州にしても副会長には、しっかりと中部電力と九州電力の会長が居座る。各地方の「電力会社の経済界支配」はまったくといってよいほど変化していない実態が明らかだ。

これでは、「新電力会社」が参入しようにも、有形無形で既存勢力からの牽制や、新たなハードルが待ち受けることは想像に難くない。新電力に原発事故の処理代金を電気代に上乗せして、電気料金の高止まりを強いているのもこのような勢力図の影響が波及していると容易に想像できる。

「経済に理性を求めること自体が愚かである」とある著名な経済学者から聞かされたことがある。こうした顔ぶれを見るにつけ、「人間に理性を求めること自体が愚かである」と言い換えなければならいのか、とすら感じさせられる。私の知る少なくない数の理性のある方々はどうお感じになるであろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

〈原発なき社会〉を求める声は多数派だ!『NO NUKES voice』11号!

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』

「ふるさと納税」制度がスタートしてから9年弱。2017年2月24日に開かれた記者会見で、菅義偉官房長官は「ふるさと納税で多くの地域が活性化した」と述べ、また「2016年度のふるさと納税の寄付額が前年度の2倍になる」との見通しを明らかにした。2015年度の寄付総額は約1653億円であるから、今年度の寄付総額は3000億円を超えるだろうということだ。

2008年4月30日に交付された「地方税法等の一部を改正する法律」により、個人住民税の制度の一つとして同年5月よりスタートした「ふるさと納税」。制度が始まった2008年度の寄付総額は約81億円だったが、各自治体が高級肉や家電などの返礼品を用意したことが話題になり、利用が拡大。2014年度は約389億円。2015年度はその約4倍と寄付額は急増していた。

2016年度上半期の町別寄付額ランキングで1位になった佐賀県上峰町。人気の的となっている「佐賀牛」を中心に、野菜や果物といった自慢の農産物を多くの人に知ってもらおうというイベントが品川の「QUEEN’S ISETAN」にて催されていたので立ち寄ってみた。

しっかりとデザインされたチラシとイベント用に用意したと思われるポップやユニフォーム。会場内に5箇所あるコーナーで試食をすると、チラシにシールを貼ってくれる。シールを3枚集めれば抽選会に参加でき、特産品の「天衝米」などが当たる。こんなスタンプラリーも行われていた。

都道府県別寄付額第1位である北海道をはじめ、多くの自治体でその制度が評価されている「ふるさと納税」だが、自治体間の競争が過熱し、返礼品にかかる費用の負担が重くなるなどの弊害も出ている。自治体の税収に関わることなのだから、こういった議論は絶えないだろう。絶やす必要もない。しかし、寄付額ランキングで上位であることを看板に掲げて「QUEEN’S ISETAN」などというプチブルスーパーマケットでキャンペーンを展開できるのだから、税制としては異例にポップである。その点を僕は面白いと思うし、法や制度というものが極めて身近なものだということを知るきっかけとしても有効なのでは、なんてことも考えてしまう。

余談だが、帰宅して佐賀県上峰町の寄付額を調べてみると2016年度上半期の市町村別ランキングでは7位となっている。あら、と思ったが、よく見ると上峰町が1位と謳っているのは“市町村”別ではなく“町”別ランキングなのであった。市や村は除き、日本の町の中で1番です、と言っているのだ。なるほど、“過去最高”や“歴代新記録”が量産されるように、1位を獲得する方法も様々である。

[撮影・文]大宮浩平

▼大宮 浩平(おおみや・こうへい)
写真家 / ライター / 1986年 東京に生まれる。2002年より撮影を開始。 2016年 新宿眼科画廊にて個展を開催。主な使用機材は Canon EOS 5D markⅡ、RICOH GR、Nikon F2。
Facebook : https://m.facebook.com/omiyakohei
twitter : https://twitter.com/OMIYA_KOHEI
Instagram : http://instagram.com/omiya_kohei

『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン!

脱原発は多数派だ!『NO NUKES voice』11号

辺野古キャンプシュワブ

沖縄に向けられる視線から、基地問題を除外することは難しい。2020年には海兵隊の主力をグアムに移す、とするロードマップはまだ破棄されたわけではないのだから、基地の縮小・撤去は当然にしても、新たな基地建設はロードマップに矛盾するし、何よりも「もう基地は要らない」と何度も選挙で示された沖縄の民意と相いれない。知事選などの選挙はともかく、小選挙区制が導入された国政選挙の選挙区で野党が議席を得るのは容易ではないがここ数回の国政選挙、沖縄では比例での復活当選はあっても、自民党は選挙区では1議席も獲得できていない。

◆「基地は要らない」が沖縄の民意

繰り返すまでもなく、沖縄の民意は「基地は要らない」である。しかし現実はなかなか動かない。政府は選挙結果など横目に見ることすらせず、ひたすら米国の意向を「忖度」し、時に米国が基地を引き上げようと持ち掛けたら「とどまってくれ」と懇願したことさえあるほどに、「自主的な従属」姿勢に拘泥している。第二次対戦で「鬼畜米英」と罵(ののしり)、「1億玉砕」とまで狂気に満ちて敵に回した米国に、どうしてここまでへつらえるようになるのであろうか。誠に主体性なき、不思議な心象をこの国の政府や多数の国民は有していると言わざるを得ない。

辺野古キャンプシュワブゲート前

◆ゲート前に座り込む人たち──お握りを勧める行為に「優しさ」以外のどのような感情があるのか?

しかし、そんな観念論はともかく、沖縄の基地建設現場には現実がある。工事が再開された辺野古キャンプシュワブゲート前には基地建設に反対する人々が毎日集い、工事車両の基地への資材搬入に座り込みで抵抗したり、海上ではカヌーやカヤックで工事に対する抗議が連日行われている。3月14日現地を訪れた際には抗議の座り込みが983日に達していた。ゲート前にはテントが張られ、読書する人や歓談する人の姿が見られたが、いざ工事車両接近となれば、皆がゲート前に座り込む。

3月14日現地を訪れた際には抗議の座り込みが983日に達していた

米国人の若者(学生)と思われる集団がキャンプシュワブゲート入口近くにやって来た

海兵隊員たち

われわれが現地を訪れたのは昼過ぎで、座り込みをしている方々も昼食を採っている時間だった。「お握りありますよ、食べますか」と勧めていただいたが、直前に昼食は済ませていたのでご厚意は辞退した。

右翼たちはこのような「助け合い」行為の上げ足を取り、現地では「日当をもらった人間が妨害をしている」などと吹聴するが、実態はこのような「助け合い」が行われているのであり、なんら批判されるような行為ではない。初対面の人間にも空腹を心配してお握りを勧める行為に「優しさ」以外のどのような感情があるだろうか。

◆迷彩服を着た屈強な海兵隊員たち

しばらくゲート周辺を観察していると。米国人の若者(学生)と思われる集団がキャンプシュワブゲート入口近くにやって来た。彼らは米国流の「平和学習」をしに来たのだろうか。残念ながら話を聞くチャンスがなかったが不思議な光景であった。

さらに立ち並ぶゲート向かいのテントを取材していると私にぶつかりそうになりながら、一人の海兵隊員が重たい荷物を背負い駆け抜けていった。おそらく訓練であろうが、自動小銃こそ持たないものの、迷彩服を着た屈強な兵士にぶつかられそうになるだけで、ひやっとする。

少し間をおいて今度は2人の兵士が息をあげながら近づいていた。テントの中にいた人たちからは「なんでこんなところでこれ見よがしに訓練をするんだ!」、「帰れ!」の声が飛ぶ。この「訓練」は取りようによっては米軍によるある種の「挑発行為」とも感じられる。基地建設反対行動をしている人がいる場所を、わざわざ選んで兵士を走り抜かせる必要があるのか。基地内には膨大な敷地があるのだ。なぜ彼らはテント前を走り抜けねばならないのか。

なぜ彼らはテント前を走り抜けねばならないのか

◆沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さんに聞く

沖縄平和運動センター事務局長の大城悟さん

沖縄平和運動センター事務局長で山城博治さん逮捕後に、現場での指揮を執る一人大城悟さんに伺った。

―― 新たな埋め立てを政府は、県への認可をせずに強行しようとしています。
大城 もうね。三権分立とか法治国家とか無茶苦茶ですね。
―― まだあの地域の漁業権は放棄されていませんね。
大城 そうです。もう法律や裁判所を信じる気持ちが無くなってきています。先の最高判断もそうですが、やりたい放題ですね。山城さんの逮捕勾留もそうです。私たちはここで頑張ります。

 

◆沖縄の日常の一断面

ゲート前を去って、数キロ離れた公道の脇に米軍車両が2両駐車されているのが目についた。辺野古の建設現場から遠くないので何らかの監視をしているのだろうか。せっかくだから兵士に話を聞こうと近づいた。

椅子に座って黙っている兵士に、「ここでの任務はなんですか」と聞くと視線だけをこちらに向け、口は開かない。

「ここは日本の敷地なので条約や法律には詳しくないが、あなたたちが物騒な格好で、こうやって監視のようなことをしているのが不思議なのだが」と聞くと、もう1両止められていた車両の中の兵士が無線連絡を取り始めた。

頬を緑色に塗っている白人兵士にも尋ねた。「ここでに任務は何ですか」、すると車両から出てきたほかの兵士が「うるさい!立ち去れ」という。相手は兵隊なので、恐怖心もありそれ以上の質問は諦めた。こんな光景も沖縄の日常の一断面なのだろう。

 

(鹿砦社沖縄取材班)

『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン!

在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)

在庫僅少『ヘイトと暴力の連鎖 反原連-SEALDs-しばき隊-カウンター』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

« 次の記事を読む前の記事を読む »