一昨日(3月6日)本コラム掲載の「『平成の黒百人組』野間易通氏ツイッターアカウント凍結の一刻も早い解除を!!」に対して、ある読者から厳しいご批判を頂いた。読者のご意見は「このタイトルでは野間氏のツイッターアカウント凍結解除に利用される、文末も相応しくない。訂正すべきだ」というものであった。

鹿砦社特別取材班の見解は、6日の文章で明らかにした通りである。しばき隊、しばき隊に批判的な方双方に本意が伝わる(揶揄を含めて)ものだろうと考えていたし、概ねしばき隊に批判的な方からは好評を頂いた。だが抗議をしてこられた読者は真剣そのものであったので、あえて解説を加えておく。

あの文章が文字で表現していることと、意図していることをいかように理解するかは、幾通りもの解釈があってしかるべきだろう。しかし、われわれの真意は伝わるだろう、というのが書き手としての心情だった。もっとも、われわれの文章力不足で、その本意が伝わらなかったので抗議をしてこられた方はご立腹であったのだから、表現活動を行う世界の末席を濁すものとしては筆力の不足をお詫びするしかない。

そこで、誤解を解くためにあえて加えるのであれば、ネット上での集団リンチの如き行為をわれわれは忌み嫌うし軽蔑する。さらに野間氏がこれまで繰り返し行ってきた「名誉毀損」、「虚偽」、「本人の望まないプライバシー暴露」などの行為は、法に触れるか触れないかを別にしても、社会通念上許されざる行為だと判断している。野間氏の「罪状」をここでいちいち詳述はしないが、ほかならぬ鹿砦社自身が被害にあっているのであるから、この考えに揺るぎはない。

さらに付言すれば鹿砦社は「M君リンチ事件」を引き続き追っている唯一の出版社であることも思い起こしてほしい。このような状態で鹿砦社が野間氏に対して「親心」を持つ理由があるだろうか。よって6日の文章はその前提の上で読み解かれるとの期待があったが、筆足らずであったようである。

野間氏が常套手段として用いる「ネット上の集団攻撃」にも賛同しない(ここまで言わなければわかっていただけないか……)。このことも再度明言しておく。野間氏は攻撃者としては常連だが、同様な行為がどのような勢力によってなされても、ツイッターを利用している人に「集団加圧」を強いる行為には賛同できない。その例といっては失礼だが、昨年野間氏がアカウントを凍結されたのとほぼ同時期にアカウントを凍結され、その後新アカウントで復活した合田夏樹氏のアカウントが3月7日また凍結された。

両氏の凍結が時期を同じくしていることは、たまたまの偶然か、あるいは何らかの集団が一斉にツイッター社に抗議を送ったのか、はたまた、ツイッター社独自の判断なのかはわからない。わかっているのは昨年同様、しばき隊の最重要人物の野間氏と、しばき隊に批判的な言説を繰り広げてきた合田夏樹氏がほぼ同時期にアカウントを凍結されたということのみである。

 

 

 

合田氏は凍結に先立つ数日前にお子さん襲撃をほのめかすツイートをされていた、いわば現在進行形では確実に被害者であるが、アカウントを凍結された。抗議された方は「これでは野間氏のアカウント凍結解除の材料にされてしまう」と述べておられたが、私たちにそれほどの力があるだろうか。また表題だけではなく、文章を読めばそれが「揶揄」を含んでいると理解はしてもらえないのだろうか、との思いは残る。

何が理由かはわからないが、ツイッターアカウントの凍結劇の理由はブラックボックスの中で、その理由をわれわれが推測してもあまり大きな意味はない。一私企業の恣意的な判断に社会正義があるとは思えないし、ツイッター社の倫理や正義をそこまで信用する気にはなれない、というのがわれわれの感覚である。

しかしながら、われわれの表現力不足で誤解を与えたのであれば、6日の文章を上記のように改める。これで鹿砦社特別取材班の意図はお分かりいただけるものと信じたい。

(鹿砦社特別取材班)

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3月5日正午現在、野間易通氏のツイッターアカウントが凍結されている。「鹿砦社特別取材班」は一刻も早い野間氏アカウントの凍結解除をもとめる。野間氏のアカウントが凍結されたのはこれが初めてではない。また凍結された理由もわれわれには不明である。しかし表現の自由が憲法21条で保障されている日本にあっては、あらゆる言論が封殺されたり、集団圧殺が行われたり、ましてや口を封じられることなどあってはならない。

野間易通氏は最近「のりこえねっと記者」としてご活躍の方でもあるが、今回のアカウント凍結はそのことが影響しているのであろうか。また野間氏は「集団リンチ」事件被害者M君の本名、所属大学などをたびたび掲載するなどしてM君から名誉棄損の訴えを大阪地裁に起こされている人物である(この裁判はすでに結審し5月26日に判決が言い渡される)。野間氏の「暴露癖」はなにもM君に限ったことではなく、彼が気に入らない人物には常套手段として用いてきた手法だ(鹿砦社刊『ヘイトと暴力の連鎖』『反差別と暴力の正体』ご参照)。

産経新聞2017年3月5日付

 

 

  
野間氏の書き込みには明らかな「名誉棄損」に該当するものも含まれ、野間氏はすでに一度敗訴を経験している(判決は確定済)。それでもツイッターにしがみつき度重なる凍結をものともせず、「独自」の発信を続けてきたのが野間氏である。敗訴経験がありながらも同様の名誉棄損を発信し続ける「確信犯的」行為(精神?)には、われわれ鹿砦社特別取材班も、立場はまったく異なるとはいえ、一定の尊敬とその「ぶれない」(森友学園の籠井泰典理事長同様の)姿勢に学ぶものが多い(かな?)。

そして、野間氏は「僕は軍隊を持っている」(外山恒一氏との対談)と自ら語っているとおり、いわゆる「しばき隊」のなかでは「尊師」と奉られている人物でもある。「しばき隊」の主たる武器はインターネット、とりわけツイッターだ。野間氏のアカウント凍結が続けば、一時に比べて激減したとはいえ「軍隊」の兵隊たちはどうすればよいというのだ。指揮官を失った兵卒が路頭に迷うじゃないか。そんな非人道的なことをツイッター社は認めてもよいのか。一人では何も発言する勇気も思想も哲学も持ち合わせなし、行動もできない「しばき隊」の兵隊が泣き寝入りするのを許すというのか!

彼らの多くはツイッター依存症であり、極言すれば「ツイッターがなければ何をしていてよいかわからない」市民たちだ。そんなか弱い市民に苦痛を負わせてはならない。野間氏のアカウントを一刻も早く凍結解除し、これまで通り彼独特の世界観から「しばき隊」の兵隊を「領導」しなければ、いらぬ混乱や最悪の場合には犯罪を誘発するのではないか。その証拠が「M君リンチ事件」である。野間氏の正しい「お導き」があれば「M君リンチ事件」は防ぐことはできたのではないか(そんなことはない!との意見も多いが……)。

唯一の救いはやはり野間氏がコントロールしている「C.R.A.C」アカウントは凍結されていないことだ。「しばき隊」の諸君!野間氏アカウント凍結解除までは、緊急避難的に「C.R.A.C」アカウントを参照しよう。

念のため申し添えるが、鹿砦社特別取材班は「M君リンチ事件」をメルクマールとし、引き続き「しばき隊」の病巣を、分析し抉(えぐ)り続けることを宣言する。「ヘイト」を金科玉条に浮遊する「下からのファシズム牽引部隊=黒百人組」の本質を追う。そのためにも野間氏の発信方法は確保されていなければならない。「ざまーみろ、野間凍結されやがって」などと表層だけで喜んでいる人がいるとすれば、それは鹿砦社特別取材班の立場とは違うことを明らかにする。われわれは原則的に彼らの病巣に切り込む。こちらの武器はネットでも、権威でもなく地道な取材だけだ。堂々と勝負しようじゃないか。そのために再度繰り返す。

「野間易通氏のツイッターアカウントの一刻も早い凍結解除を!!」

(鹿砦社特別取材班)

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『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン

前回は、現行の国民投票法には広告宣伝活動における制限がほとんどなく、今のままだと電通を擁する改憲派が圧倒的に有利な状況を解説した。

◎[参照]国民投票で何が起きるのか(1)広告宣伝で与党が有利な8つの理由

このようなことを書いても、「それは広告費を伴う活動に限ったことだ。報道や討論番組は広告に関係なく中立なはずだから、宣伝広告費の多寡は関係ない」と考える人もいるだろう。

◆改憲派の宣伝広告を担当する電通の印象操作ビジネス

ところが、残念ながらそうはならない。実際の広告宣伝費の投下額に大きな差が生じた場合、民放各社は広告費の多い方に便宜を図る可能性が高い。また、実際にその放送現場を仕切るのは、改憲派の宣伝広告を担当する電通であることも忘れてはならない。つまりプレーヤーがジャッジの現場に立ち会っているのと同じなのだ。具体的には、以下のような印象操作の可能性が生じる。

《1》スポットCMの発注金額に大きな差がある場合、ゴールデンタイムなどの視聴率が高い時間帯に、金額が多い方のCMをより多く流す(ラジオも同様)。

《2》同じく発注金額が多く、かつ発注が早ければ、通常はなかなか獲得できないタイム枠(提供枠)のスポンサーになることも可能である。

《3》一見公平に見える討論番組でも、スポンサーに改憲派企業がつけば内容操作が可能。例えば改憲派は若い評論家や著名人を出席させるのに対し、護憲派は高齢評論家や学者ばかりを揃える、というように番組制作側による印象操作が可能。また、カメラワークによって映る表情や秒数で差をつけることも出来る。

《4》ワイドショーなどのコーナーでも、放映される時間(秒数)に差をつける、コメンテータの論評で差をつける、そもそもコメンテータも改憲派多数にするなどの操作が可能。

《5》同様に、夜の報道番組に改憲派のCMが多数入れば、それだけでその番組が改憲押しであるように錯覚させることが可能。また、報道内容でも放映秒数に差をつけたり、印象を偏らせたりすることが可能だ。

◆公平性を保つために不可欠な6つの宣伝広告規制

以上のように、特に電波メディアにおける広告資金量の差、発注タイミングの差は圧倒的な印象操作を生む可能性がある。では上記のような状況を防ぐ手だてはあるのか。それには、おそらく以下のような規制を設けるしかないだろう。

《1》あらゆる宣伝広告の発注金額を改憲派・護憲派ともに同金額と規定し、上限を設ける(キャップ制)。例えば、予め総金額を一団体5億円、総額で100億円などと規定し、両陣営ともその金額の範囲内で使用メディアを選定、その内訳を公表する。

《2》TVやラジオCMの放送回数を予め規定し、放送時間も同じタイミングで流す。

《3》先行発注による優良枠独占を防ぐため、広告発注のタイミングを同じにする。

《4》報道内容や報道回数、放映秒数などで公平性を損なわないよう、民放連に細かな規制を設定させ、違反した場合の罰則も設ける(努力目標では意味なし)

《5》宣伝広告実施団体(企業)の討論番組へのスポンサード禁止

《6》ネットメディアへの広告出稿に関しても回数・金額の上限を設ける

◆彼らの「善意」や「公平性」、「正義感」などは全く信用していない

しかし上記のような資金規正を設けても、結局は影響力が強いテレビとネットメディアへの広告費集中は避けられないだろうし、そこに細かな規制を設けるのは相当困難だ。であるなら、思い切って「テレビ広告は全面禁止」にした方が一番スッキリすると思う。これは、一番影響力があるメディアが「資金力の差」によって歪むことを予め防ぐためだ。

私は原発広告によってTVメディアが原発ムラにかしずき、原発を批判するニュースを一切流さなかった歴史を知っているので、彼らの「善意」や「公平性」、「正義感」などは全く信用していない。だから広告費をゼロにし、その影響力が偏らないようにするのがベストだと考える。

だが、テレビCMをゼロになどという提案は当然、民放連の強い反対に遭うだろう。それだけでなく、上述したように圧倒的有利な状況にある改憲派が、みすみすその優位性を崩す法改正に応じる可能性も非常に低い。その場合、護憲派はどうすべきか。手遅れになる前に、動き出すべき時に来ていると思う。

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

「共謀罪」──。なんともおどろおどろしい響きであるが、法務省によれば正式名称は「テロ等準備罪」ということに、今のところなっているようだ。2月28日の京都新聞は1面トップで「共謀罪」の全容が明らかになったと報じ、法案のポイントとして、
・犯罪を実行するために結合している「組織的犯罪集団」が対象
・現場の下見や資金・物品調達などの「準備行為」が要件
・死刑や10年を超える懲役・禁錮を定めた罪で共謀した場合の法定刑は5年以下の懲役・禁錮
を挙げている。また「犯罪実行前に自首した場合は刑を減免する規定を盛り込む」予定だという。要するに「チクれば罪を軽くしてやるよ」ということか。

しかし、それ以前に世間知らずの私は、「テロ」の正確な定義を理解できていない。「戦争」と「テロ」の違いは何か、「ゲリラ」と「テロ」の違いは何か、「集団リンチ」と「テロ」の違いは何か……。

◆法務省刑事局に「テロ」の定義を聞いてみた

そこで法案の作成にあたっている法務省刑事局に電話で聞いてみた。電話口に出たのはやや中京地域の訛りがあるアンドウという若い声の男性だった。

―― 「テロ」の定義や概念について教えてほしいのですが。
アンドウ氏 法務省は現段階で『テロ』の定義を持っていません。

―― え! 国会でこの法案については今法務大臣なども答弁されていると思うのですが。
アンドウ氏 まだ法案の作成段階なので、中身については決まっていません。

―― 新聞に「共謀罪の全容が明らかになった」と報道がありますが、まだ法案の作成段階なのですか?
アンドウ氏 まだ閣議決定をしたわけでもありませんし、法案を提出したわけでもないので……。

―― 閣議決定をしたわけではない、ということは法案の原案が出来上がっているということではないのですか?
アンドウ氏 そうですね。こちらでは詳しくわからないのですけれど。

―― この法案は議員立法ではありませんよね。ということは閣議決定待ちならば、もう提出予定の法案が出来ていないとおかしいのではないですか?
アンドウ氏 そうですね。

―― あなた、さきほどはまだ「作成中」だと言われましたが、間違いですね?
アンドウ氏 そういうことになりますね。

―― もう一度伺いしますが「テロ」の定義とはどのようなものでしょうか? 「テロ特措法」というのは既にあるわけですからその定義を教えて頂きたいのですが。
アンドウ氏 テロ特措法はこちらの管轄ではなく内閣官房の担当なので、そちらにお聞きいただく方がよいかと思います。

―― でも既に「テロ等準備罪」の原案は出来上がっているわけですよね?
アンドウ氏 そうですね。ただ、まだこれから変わる可能性もありますので。

―― 原案段階では国民に内容を開示して頂けないということですか?
アンドウ氏 まだこれから変わり得るものですので……

というわけで、「知らぬ存ぜぬ」の一点張り。でも「共謀罪」の原案がすでに作成されていることくらいは素人にもわかる。アンドウ氏は役職上、知り得なかったか、もしくは知っていても私には教えて頂けなかったかのどちらかであるが、新聞記者は詳細を知っているのだから、ふざけた話である。

しかし、驚いたのは「テロ」について法務省が「定義や概念を持っていない」と堂々と回答したことである。

◆内閣官房にも「テロ」の概念を聞いてみた

「テロ特措法」を管轄する内閣官房に聞いてくれと流されたので仕方なく内閣官房に聞いてみた。代表番号に電話をかけて「テロ特措法」を担当している部署につないでくれと告げると、かなり待たされたあとに、ドスのきいた声の男性が電話に出てきた。

「テロ」の概念を知りたい旨告げると、「それはこちらの担当ではなりませんね」という。「法務省に聞いたら内閣官房の担当だと言われたのでこちらに聞いたのですが」というと「『事態室』の担当でもありませんし、他省庁の担当ではないでしょうか」と回答が帰って来た。内閣官房には「事態室」なる部署が置かれていることを不勉強な私は知らなかったが、これはこれでまた驚いた。

◆「事態室」って何だ?

「事態室」は「周辺事態」=「周辺有事」=「戦争」を想起させる。念のため再度内閣官房に電話をかけて正式名称を尋ねたら「(事態対処・危機管理担当)付室」というそうだ。しかし不思議なことにこの「(事態対処・危機管理担当)付室」は内閣官房の組織図には掲載されていない。

別のページでは説明があるが、やはり怖い部署であることに変わりはないようだ。

役所で頻繁に経験する縦割り行政(あるいはそれをを盾に取った)による、責任転嫁、たらいまわしをされた挙句、予想通り「テロ」の定義や概念を行政機関から教えてもらうことは出来なかった。

これ「自体」が実に恐ろしいことではないか? 定義も概念も曖昧に「テロ」という言葉が使われているが、行政機関によれば「その定義はない」もしくは「どこかほかの省庁」しか知らないのだ。曖昧にして極めて高圧的な殺し文句である「テロ」。「テロ」の語感は決して、緩やかだったり、安穏としていたりはしていない。内容は不確かであるけれどもどこかに「のっぴきならない事件」、や「衝撃」の感覚を含んでいるように私は感じる。だから「テロ防止」といえば、大方の人が理由なく黙って従うのだ。

首都圏で電車やバスに乗れば、1年中「テロ特別警戒中です」のアナウンスが流れている。あれだ。毎日毎日「のっぴきならない」単語を聞かされているとそのうち耳が慣れてしまう。そして不確かな語彙に無感覚に従うようになる。

国自体が明らかにできない「テロ」は妖怪のような言葉で、どんな行為にでも拡大解釈できるだろう。法案の内容を論じる前に体がすくんでしまった。

◎[参考資料]「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
(朝日新聞2017年3月1日付より転載)

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の全容が判明した。対象は91の法律で規定した277の罪。政府の分類では、「テロの実行」に関するものはこのうち罪にとどまる。277の罪名は次の通り。

【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚せい剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃砲刀剣類所持等取締法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【航空機の強取等の処罰に関する法律】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】無許可廃棄物処理業等
【火炎びんの使用等の処罰に関する法律】火炎びんの使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質による強要行為等の処罰に関する法律】人質による強要等▽加重人質強要
【細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律】薬物犯罪収益等隠匿
【絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン等による人身被害の防止に関する法律】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器の移植に関する法律】臓器売買等
【スポーツ振興投票の実施等に関する法律】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産の流動化に関する法律】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律】海賊行為
【クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

ともに思想家で武道家でもある内田樹と鈴木邦男が、己の頭脳と身体で語り尽くした超「対談」待望の第二弾!!『慨世の遠吠え2』

残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

塚本幼稚園twitter(2013年2月18日)より

塚本幼稚園HPより

文部科学省初等中等教育企画課によると、塚本幼稚園ならびに籠井理事長が運営していた幼稚園関係者3名が文部科学大臣優秀教員に表彰されていたことが判明した。

そもそも文部科学大臣優秀教員表彰は2006年第一次安倍政権時代に発足した制度である。2006年は教育基本法が大幅に改悪された年でもあり、それに付随して導入された教育現場へのアメとムチともいえる。この表彰に当たっては文科省から全国の都道府県に推薦枠の割り当てがあり、国公立、私立学校(幼稚園から高等学校)別に人口比により推薦枠が割り当てられるという。私立学校については各県最低1名から大阪府では10名程度、東京都ではその倍程度の推薦枠が与えられているという。

塚本幼稚園HPより

森友学園(塚本幼稚園)の被表彰者は2008年と2012年に各1名、2008年には学校法人は違うものの籠井氏が理事長を務めていた「南港さくら幼稚園」(当時の名称)からも表彰を受けた人物がおり、実質的にこの問題にかかわった幼稚園教諭から3名が表彰されていたことになる。

文科省初等中等教育企画課によると、前述の通り私立学校への推薦枠は各都道府県1名から10数名とのことであるが、実際に推薦された人数は制度発足以来年ごとに、おおよそ40名前後であったそうだ。そうすると2006年の表彰制度発足から昨年までおおよそ400名の表彰候補者がいたという計算が成り立ち、その中から3名の「森友学園」関係表彰者が選ばれていたことになる。ちなみに受賞者のうち2名は2008年(自民党麻生政権時代)の表彰であり、残り1名は2012年(民主党野田政権から安倍政権へ移行した年)の表彰である。

単純計算で100倍以上の競争率をかいくぐり表彰を得ているのが「森友学園」の幼稚園教諭だということである。文科省初等中等教育企画課は「あくまで全国から推薦された先生を文部科学大臣が選考するものです」と回答してくれたが、文科省の方の口調は「森友学園」については突き放している印象を受けた。

瑞穂の國記念小學院HPより

どう考えても異常な割合だ。否、「異常な制度だから、当たり前」という人がいるかもしれないが、それにしても文科省をも包み込んだ1幼稚園(実質2幼稚園だが経営者は同じ)の受賞劇としては、あまりにも極端な数字にすぎるのではないだろうか。

2月28日森友学園に電話取材を行い「4月から瑞穂の國記念小學院は発足されるのでしょうか」と尋ねたところ「はい、認可を得ているので間違いありません」と電話口に出た女性は答えた。

認可は下りてはいない。現場で働く方のご苦労を考えながらも「安倍首相がんばれ! 安倍首相がんばれ!」と園児に洗脳教育を行っていた教育機関としては、当の安倍首相とともにしかるべき「責任」をとっていただきたいものだ。


◎[参考動画]福島伸享(民進)の質疑(2017年2月27日衆院・予算委員会)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

2月13日、参院議員会館で「国民投票法の改正を求める会」の集会が開かれた。長きに渡り、世界各国の国民投票を取材されてきたジャーナリストの今井一氏が主催する会で、私も出席して意見を述べた。

法改正を求める、などというと何だか難しいことをやっているようだが、このままの国民投票法で投票を実施すると、あまりに不公平なことになるから法改正すべきだという提案で、要求は実にシンプルだ。

◆大抵の法案は通ってしまう与党絶対多数への危惧

2月13日「国民投票法の改正を求める会」集会の告知

国民投票法は2007年に施行された法律で、その実施は細かく規定されている。現状では、護憲派はまだ機が熟していないとして憲法審査会での引き伸ばしを図っているが、実際は国会発議に必要な3分の2以上の議席を与党(改憲派)が握っているのだから、現実的に言えば、明日国会発議があっても通ってしまう状況にある。秘密保護法もカジノ法案も野党は絶対阻止と言っていたが、成立した。与党が絶対多数を握っていれば、大抵の法案は通ってしまうのだ。

現行の国民投票法最大の問題点は、国民投票運動期間における広告宣伝に関して、「投票日から14日以内のテレビCM放映禁止」以外は、ほぼ何の制約もないことにある。

広告宣伝に投入できる資金の縛りすらない。つまり、カネのある方は期間中無制限に広告宣伝を打てるのに対し、そうでない方はメディアで何も主張できないことになる。

◆衆参選挙の対メディア宣伝費はおよそ100億円

もう少し具体的にいうと、国民投票が国会で発議されると、そこから最低60日、最長180日間の「投票運動期間」となる。衆参の選挙運動期間が約2週間なのに対し、かなり長い。そしてこの運動期間中、賛成・反対派共に、あらゆるメディアで無制限に広告を展開できることになっているのだ。

ちなみに、衆参の選挙でメディアに投入される宣伝費は100億円程度(選挙公営からの拠出の他、各政党独自の広告費を含む)であるから、少なく見てもその4~5倍のカネが投入されることになるだろう。

このように書くと、改憲派・護憲派双方が自由に宣伝合戦できるならいいではないか、と錯覚しがちだが、ことはそんなに単純ではない。なぜなら、予想される国民投票は与党(自民・公明)が主導し、好きなようにスケジュールを組み立てられる。つまり、広告宣伝における「メディア戦略」を早くから構想し、自分たちに一番都合の良いように展開できるからだ。では具体的に、どのようなことが起こり得るのか列挙してみよう。

《1》 改憲派は自民党を中心に結束して宣伝戦略を実行し、最初から電通が担当することが決まっているのに対し、護憲派はバラバラで何も決まっていない。改憲派は国会召集以前から周到なメディア戦略を構築することが可能である。

《2》 改憲派は国会発議のスケジュールを想定できるのに対し、護憲派はあくまで発議阻止が大前提のため、国会発議後にようやく広告宣伝作業を開始する。この初動の差が非常に大きい。

《3》 改憲派は自民党の豊富な政党助成金、経団連を中心とした大企業からの献金を短時間で集めて広告宣伝に使えるのに対し、護憲派は国民のカンパが中心となると思われ、集めるのに時間を要する。さらに、集まる金額も桁が違うことが予想される。広告代理店とメディアは支払い能力の有無を厳しく査定してから広告を受注するので、ここでもタイムラグが生じる。

《4》 改憲派は電通を通じて発議までのスケジュールを想定して広告発注を行い、TVCMのゴールデンタイムをはじめあらゆる広告媒体(新聞・雑誌・ラジオ・ネット・交通広告等)の優良枠を事前に抑えることが出来る。その際、電通は「自動車」「家電」などのダミーネームで広告枠を抑えるため、護憲派は察知できない。発注が遅れた護憲派のCMや広告は、視聴率などが低い「売れ残り枠」を埋めるだけになる可能性が高い。

《5》 もし投票日が発議後60日後の最も短い期間になった場合、改憲派は事前準備して発議後翌日から広告宣伝をフル回転(広告を放映・掲載)できるのに対し、護憲派がTVCMなどを放映開始できるのは(制作日数を考慮すると)どんなに早くても2~3週間後となり、その間は改憲派の広告ばかりが放送・掲出されることになる。この初動の差を埋めるのは至難である。さらに週刊誌や月刊誌などへの広告掲載は既に優良枠を買い占められて、ほとんど何も掲載できないまま投票日を迎える可能性すらある。

《6》 改憲派は雑誌関係でも国会発議予定日に照準を合わせ、「国民投票特集」のような雑誌タイアップ本、ムック本・新書・単行本の企画・発売を計画できるが、護憲派にそんな時間的余裕はなく、書店店頭は改憲派関連書籍によって占拠される。

《7》 改憲派は豊富な資金に物を言わせて大量のタレントを動員し、出演者が毎日変わる「日替わりCM」も制作可能。老若男女に人気の高いタレントや著名人をターゲット層に合わせて出演させ、「改憲YES!」「改憲、考えてみませんか」と毎日語りかける演出が出来る。

《8》 改憲派は国会発議のスケジュールに合わせて自前の番組枠を持つことも可能だ。MXテレビの「ニュース女子」のように、スポンサーが資金を出して制作プロダクションに番組を作らせ、テレビ局に持ち込む方式にすればよい。国会発議後、民放深夜枠やBS・CS放送の時間枠を買い切れば十分可能。

というように、初動の遅れが護憲派に壊滅的打撃を与える可能性が非常に高い。仮に護憲派が相当な資金を集め得たとしても、それを使う場所が全て事前に抑えられていたら、どうしようもないのだ。総金額で同じ広告費を投入しても、視聴率の低い時間帯にいくらCMを流しても無駄だし、購読率の低い雑誌や新聞の広告枠をいくら大量に買っても、やはり意味がないのである。

さらに、ことは広告宣伝だけに止まらない。巨額の広告費投入は、クロスオーナーシップで構成される日本の報道現場にも、大きな影響を与える可能性が高い。そこで何が起きるのかは、次回で解説しよう。

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!

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◆産経新聞「安倍日誌」の決定的情報

次々と安倍首相が「森友学園」不正払い下げに関与した疑いを補強する事実が明らかになってきているが、決定的な情報が明らかになった。全国紙は首相の動静を報じるが、2015年9月3日の安倍首相の動静を翌4日付産経新聞が実に緻密に報じていた。

産経新聞2015年9月04日付「安倍日誌」

2017年2月17日衆院・予算委員会

2017年2月17日衆院・予算委員会

2017年2月17日衆院・予算委員会

[以下同記事引用]
【午前】8時47分、公邸発。48分、官邸着。52分から9時33分、世耕弘成官房副長官。54分、官邸発。56分、国会着。57分、参院第43委員会室入る。10時、参院厚生労働委員会開会。
【午後】0時2分、参院厚労委休憩。同室出る。3分、国会発。6分、官邸着。2時2分から12分、内閣府の松山健士事務次官、黒羽亮輔賞勲局長。17分から27分、財務省の岡本薫明官房長、迫田英典理財局長。3時から21分、佐田玄一郎自民党道州制推進本部長。礒崎陽輔首相補佐官同席。22分から45分、斎木昭隆外務事務次官。4時1分から34分、伊原純一外務省アジア大洋州局長。37分から55分、二階俊博自民党総務会長らによる小笠原諸島の振興に関する申し入れ。5時4分から32分、北村滋内閣情報官。6時23分、官邸発。32分、東京・芝公園の東京プリンスホテル着。宴会場「サンフラワーホール」で自民党の政策グループ「きさらぎ会」の懇親会に出席し、あいさつ。7時19分、同所発。27分、公邸着。[引用了]

ご注目頂きたいのは「(午後2時)17分から27分、財務省の岡本薫明官房長、迫田英典理財局長」である。今話題沸騰の「森友学園」への不正売却疑惑を管轄しているのは近畿財務局だが、財務省はその上位官庁であり、しかも官房長、理財局長は極めて責務と権限の大きい役職である。

この日の動静には他にも多数の人物が登場するが、実は翌9月4日に安倍首相は国会開会中にもかかわらず、大阪へ出向いている。このことと併せ考えると、近畿財務局への指示や伝達の調整が首相と財務省の間で行われた可能性が疑われる。未だに近畿財務局が「非公開」としている森友学園への「借地」が始まったのは2015年だった。そして5日には森友学園の名誉校長に安倍昭恵夫人が就任している。この見事なまでの流れは偶然だろうか。

東京新聞2017年2月25日付

◆なぜ森友学園の売却額だけ「非公表」だったのか?

怪しい事実は更に明らかになってくる。2014年から2016年の間で財務省が国有地の売却額を非公表にしたのは693件の内、「森友学園」の1件だけであることが判明した。

以下は東京新聞(2017年2月25日付)の報道だ。

[以下同記事引用]
大阪府豊中市の国有地が学校法人「森友(もりとも)学園」(大阪市淀川区、籠池(かごいけ)泰典理事長)に評価額の14%の値段で売却された問題で、財務省が国有地の売却額を非公表にしたのは2014~16年度の693件のうち森友学園の事例1件だけだったことが分かった。政府は取引を透明化するために金額を原則公開しているが、異例の扱いをしていた。 

問題になっている国有地は、小学校用地として当初の評価額9億5600万円から8億円余りも安い1億3400万円で売却された。国有地の売却結果は、1999年の大蔵省(現財務省)の通達で原則公表することになっている。

近畿財務局(大阪府など二府四県を管轄)が実施した森友学園への売却は、適当な相手と考えられたり特殊な技術が必要な場合に行われる随意契約。財務省によると、近畿財務局は過去3年間に随意契約で国有地を36件売却したが、非公表は森友学園との取引一件だけだった。同時期に近畿財務局以外で行われた売却はすべて公表していた。

近畿財務局は非公表にした理由について昨年6月の契約の際、森友学園からの要請があったためとしている。財務省は「取引相手が公表に同意しない場合は公表していない」と説明している。

だが、この取引の不透明さが報道され、同財務局が今月(2月)10日に金額を公表した。一転して価格を公表したことについて財務省は「非公表のままだと、森友学園が国有地を不当に安く取得したという誤解を受けると判断し、公表に同意した」と話している。[引用了]

◆2015年9月名誉校長就任記念講演での安倍夫人が語ったこと

2015年9月5日付安倍昭恵氏Facebookより

さらに、安倍首相は「安倍晋三記念小学校」としての寄付集めを、「止めるように要請していた」と国会で答弁していたが、2015年9月に行われた「森友学園」名誉校長就任記念講演で安倍夫人は、

「こちらの教育方針は大変主人もすばらしいという風に思っていて、(学園理事長の籠池泰典)先生からは、安倍晋三記念小学校という名前にしたいという風に当初は言っていただいていたんですけれども、主人が、総理大臣というのはいつもいつもいいわけではなくて、時には、批判にさらされる時もある」

「もし名前をつけていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたいということで……」

と語っていたことも明らかになった。

2017年2月17日衆院・予算委員会

◆パズルのピースは寸分たがいなく埋め込まれた……

全然断っていないじゃないか。「もし名前をつけていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたいということで…」とは、断りではなく「総理大臣を辞めた後には『安倍晋三記念小学校』にしてね」と懇願していると理解するのが一般的な感覚だろう。

再度繰り返すが「この件に私や妻が関わっていたら私は、総理も国会議員も辞めます」と明言したのは安倍本人だ。ここまでの事実を前にどのように弁明するんだ。パズルのピースは寸分たがいなく「安倍は虚偽を述べている」事実を示している。もはや次のなる関心は安倍の辞任時期が何時かに移ったといっても急ぎ過ぎではあるまい。


◎[参考動画]2017年2月17日衆院・予算委員会

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

何度電話をかけても誰も出ない。が、懲りずに何時間も電話をかけ続けた。『森友学園』、瑞穂の國記念小學院開校準備室(以下、開校準備室)は、お見事というほかない、無茶苦茶な対応であった。

朝日新聞2017年2月23日付け記事

NHK2017年2月23日付け記事

朝日新聞2017年2月24日付け記事

読売新聞2017年2月24日付け記事

◆開校準備室「事務の者」との一問一答

開校準備室 お電話ありがとうございます。、瑞穂の國記念小學院開校準備室です。

―― おじゃま致します。
開校準備室 はい。

―― わたくし田所と申します。
開校準備室 はい、こんにちは。

―― いつもお世話になっております。
(突然保留音が聞こえてくる)

―― もしもし、もしもし!
開校準備室 いつもお世話になっております。

―― 恐れ入ります、2、3教えていただきたいのですが。
開校準備室 はい、わたしは事務の者でお答えしかねるのですけれども。

―― いえいえ、お分かりいただける範囲で結構なんです。
開校準備室 はい。

―― 今開校を目指していらっしゃる、瑞穂の國記念小學院開校準備室がですね。
開校準備室 はい、あのう どなた様でしょうか?

―― ですから私は田所と申し上げております。
開校準備室 はい、あのー、わたくしお電話口に出る者なので、事務にお電話のあったことだけをお伝えさせていただきます。

―― いえいえ、わたしが今から質問しようとしているんですよ。それにあなたはさきほど「私は事務の者」と仰ったじゃないですか。
開校準備室 わたしは答える立場ではないですので。

―― いやいや、そうじゃないでしょ。
開校準備室 申し訳ございません。

―― ではどなたにお伺いしたらよろしいのですか?
開校準備室 担当者は席を外しております。

―― ではいつお戻りですか?
開校準備室 わかりかねます。すみません。

―― いまお電話にお出になってる方はお名前何とおっしゃいますか?
開校準備室 事務の者です。

―― 事務のなんという方ですか?
開校準備室 それは控えさせていただきます。

―― 名前もおっしゃらない。
開校準備室 はい。質問されてもわたしもわからないですので。

―― あなたご自身のお名前はおわかりでしょう。それに私はまだ質問してませんよ。
開校準備室 あ、そうなんですね。わかりました。すみません。(電話を切ろうとする)

―― 待ってください、待ってください!
開校準備室 とんでもないです。

―― とんでもないのはあなたの対応ですよ。
開校準備室 すみません。失礼いたします。

まったく会話にならないばかりか、途中で保留音に切り替えられるは、「事務の者」であったはずの人が「電話口に出る者」に変身し、再び「事務の者」に戻る。焦っているのは分かるけれども、何も答えない以上にこんなドタバタの対応ではさらに、不信感を増されても仕方ないだろう。2月24日にもコメントを得るべく電話を鳴らし続けたが、この日はついに誰も出なかった。

東京新聞2017年2月24日付け記事

◆「やましいことはない」はずの安倍夫人はなぜ、名誉校長を辞任したのか?

しかし、『森友学園』のHP上では前日と顕著な違いがみられた。2月23日まで「名誉校長」として顔写真とコメントが掲載されていた安倍首相夫人、安倍昭恵氏が抹消されている。いったいどうしたことなのか、と思っていたら24日午前の衆議院予算委員会で安倍首相は、「弁護士と相談して、妻は、名誉校長を引き受けていることで、子どもたちやご両親にご迷惑をかけ続けることになるので辞任させていただくと、(学校側に)申し入れた」と語った。

「迷惑がかかるといけない」? 安倍本人は「何もやましいことはない」と繰り返し述べていたし、近畿財務局も答えにならない答えながら、前日私の取材に応じていた。さらにこの小学校建設を巡っては「安倍晋三記念小学校」の名前で寄付集めが行われていた事実も判明している。安倍は「何度も止めてくれと申し入れた」と被害者であることを強調しようとしているが、そんな過去があったにもかかわらず、夫人が名誉校長に就任、さらには急に辞任するのはどうにも不思議ではないか。

朝日新聞2017年2月24日付け記事

◆「当方の事務所は関係ありません」と語る安倍晋三事務所秘書

疑わしいのは現役総理夫人が名誉校長に就任(2015年)してから、どう考えても不正払い下げとしか思えない国有地の取得を森友学園が受けていることだろう。安倍晋三記念小学校名での寄付集めについて、籠池理事長は「無断ではない。申し入れをしたがタイムラグがあった」との見解を以前明らかにしている。安倍晋三記念小学校名での寄付集めが行われていたのは「自民党が野党であった時代だけだ」とも述べている。

このあたりは籠池氏本人が捕まらないので、つぶさに検証することが出来ないのだが、23日安倍事務所の秘書は私の取材に対して「一切関知していません。どういう意図でやられたのかも説明がないのでわかりません。当方の事務所は関係ありません」と述べている。真実はどこにあるのだろうか?

◆籠池理事長の息子、照明氏は本当に「維新の党」所属議員の秘書だったのか?

問題の核心部分ではないが、籠池理事長の息子に籠池照明という人がいる。籠池照明氏は「籠池照明のブログ」に経歴を綴っており、その経歴の中に、「足立康史衆議院議員私設秘書」と書かれている。足立康史議員は「維新の党」所属議員だ。

籠池理事長の息子、照明氏による「籠池照明のブログ」

籠池照明氏の経歴の真偽のほどを確認すべく、足立事務所に電話取材を行った。足立議員の秘書は「面接に来たことはありますが、断りましたので、1日たりとも秘書であったことはありません」という。「彼本人は自分のプロフィールに足立議員の私設秘書と書いていますが」と聞くと「らしいですね。でもうちは全く関知しないところで。何回も『削除してくれ』という要請を地元の方がしたんですけど、書き続けているということです」、「では秘書採用の面接には来たけれども、採用した事実はないと?」「はい、そういうことです。こんなことになるとは思わなかったので何度も抗議はしたのですが……」ということであった。

「森友学園事件」は安倍政権にふさわしい「虚偽」にまみれた事件だ。やましさがなければ安倍夫人が名誉校長を辞めることはあるまい。やましさではなく「危険さ」を感じ取っているのではないのか、首相周辺は。そしてこの問題のキーになるのは安倍首相同様、大阪の「維新の党」だろう。その内紛やゴタゴタから生みだされた形跡が至る所でみられる。引き続き森友学園事件を追ってゆく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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日本で一番素晴らしい小学校、瑞穂の國記念少學院への不正土地譲渡の疑いが晴れない。そこで当の学校法人森友学園と近畿財務局へこれから徹底して取材を行う。きょうは土地を売却した近畿財務局へ電話取材を行った。

朝日新聞2017年2月22日付け記事

◆「個別内容はオープンには出来ないんで……」

―― 森友学園の土地売買につてお伺いしたいのですが……
近畿財務局 はい、担当者にかわります

―― 土地にゴミのようなものが埋まっていたので安く払い下げたという事ですが、それはその理解で間違いないでしょうか?
近畿財務局 報道の内容と似たりよったりはなるんですけども。もともとここの土地を小学校用地としてですね、『森友学園』さんにお貸ししてたんですね。

―― それはいつからですか?
近畿財務局 2015年からですね。借地というのですが『貸し付けの契約』ですね。

―― 借地居ている間には財務局さんは借地代のようなものを取られたということですね。それはおいくらぐらいですか?
近畿財務局 そこの個別内容はオープンには出来ないんで……。

朝日新聞2017年2月22日付け記事

―― だってここは国有地ですよね。2015年の5月から貸されていて、2016年の1年間貸していたんですね。なぜ賃貸料を公表出来ないのですか?
近畿財務局 借地契約の中で、小学校契約の中で、借地する前から、土地に瑕疵がないかは調査するようになっているんですね。最初、国が調査した時に埋設物が出きて、それを向こうに伝えた中で借地が始まったんですけれども、校舎建設しているときにうちが建設している時にうちが調べた時よりも、まだ地下の方から凄いゴミが出てきたんですね。

―― うちというのは近畿財務局さんですか?
近畿財務局 国が調べたのは地表から3メートルだったんですけど。校舎建設をするうえで、当然それが支障になったので、ことしの4月に開校予定という事情もありまして、早急にそこは買い取ってですね。

朝日新聞2017年2月23日付け記事

―― ちなみになにが埋まっていたのですか?
近畿財務局 廃材であるとか、生活ごみであるとか色んなものがうまっていたのですが……。

―― 毒物ではなかったのですね?
近畿財務局 土壌汚染の関係ではないと思います。

―― いろいろ埋まっていたので取り除かなければいけないと……。
近畿財務局 費用を国の方で持ったのですが、それを差し引いて、売買した形となっています。

―― ゴミがなかった時の価格はいくらでしたか?
近畿財務局 9億5,000万円ですね。ゴミを撤去するのに8億円ぐらいかかると見積もって、撤去費用を差し引いて売買したということになります。

―― 結局おいくらで売却されたのですか?
近畿財務局 1億3,300万円ですね。

毎日新聞2017年2月23日付け記事

―― ゴミを除去するのに8億円もかかるものなのですか?
近畿財務局 そこは、あのー学校建設に、ごみを撤去するうえで、土砂の搬出であるとか……。

―― このように国有地の安い売却は豊中あたりでもほかにありますか?
近畿財務局 国が土地や建物を売買する時は、不動産鑑定評価に対してく国が調べている土壌汚染とかを考慮に入れて売買するということになってきます。

―― では、豊中あたりでは珍しくないということですね?
近畿財務局 そうですね。地域によりますが……。

―― たとえば評価額から埋設物があったから価格が軽減されたという例は?
近畿財務局 案件によりますね。

森友学園HPより

◆「わたくしの知っている限りでは初めてです」

―― 今回のように顕著に値引きをして売却をなさった例というのは、具体的にはご存知ですか?
近畿財務局 手元に資料がないので詳しくは申し上げられませんね。

―― あなた『こういうことはよくある』とおっしゃっていたじゃないですか?
近畿財務局 よくあるというか、これだけに限ったことではないということですね。

―― 端的にお伺いしますが、評価額の10分の1で払い下げるという事はそこそこあることですか?
近畿財務局 10分の1ということですかね。10分の1という数字に限ればそんなあることじゃないですよ。

―― そんなにはない? 今電話でご担当いただいている方は過去にご覧になったことはありますか?
近畿財務局 わたくしの知っている限りでは初めてです。


◎[参考動画]自由法曹団による「瑞穂の國記念小學院」現地視察(2017年2月15日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
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残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

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小池百合子都知事の石原慎太郎元都知事とのガチンコ対決が間近に迫りつつあり永田町や都庁のみならず全国注視の的だ。そして、昨年の都知事選では所属した自民党を敵に回して「都民ファースト」を掲げて「崖から」飛び降りた。さらに都議会のドン、当時自民党都連幹事長内田茂都議に喧嘩をしかけ、とうとう千代田区長選挙で圧勝した。さらには、五輪問題ではオリンピック委員会会長の森喜朗元総理に敢然と異議を唱えている。

こうした姿勢にえてして昨今の政治家が「長いものにはまかれろ」「見てみぬふり」の政治家が蔓延する中で都民ばかりか国民の共感が寄せられているのだ。しかし、この彼女の「喧嘩ファースト魂」は近ごろ始まったものではない。

私は、小池氏の動向を国会議員になった当時から見ているが、その蛮勇というか怖いもの知らずというか、驚くべき「喧嘩ファースト魂」姿勢を目の当たりに見て舌を巻いたのは18年前の国会質問の時だった。

 

当時の小池氏は日本新党から次々と党が変わったものの、まだ自民党には入党には至らない「自由党」時代だった。

1999年07月06日、衆議院 大蔵委員会。質問に立った小池氏が扱った問題は「朝鮮総連」「朝銀」そして、総連関連の謎の組織の話だった。今でこそ、北朝鮮問題は多くのマスコミでもとりあげられるようになったが、当時は一部の過激な雑誌など以外は朝鮮総連問題を取り上げることには二の足を踏む空気がまだ色濃かった。まして国会で取り上げるということは極めて難しい問題と見られていた。

しかし小池氏は果敢にこの問題に触れた。小池氏の当時質問ポイントを箇条書きにすると、こうだ。

〈1〉朝銀問題

「朝銀には昨今(1999年当時)の金融不安の中で、預金保険機構を通じ3159億円の日本国民のお金が、経営不振、破綻に陥った朝銀系の信用組合に対し直接間接につぎ込まれている。特に、日本への税金をまともに払う気もない人たちによりますバブルのツケ、そして本国への寄附など北朝鮮への莫大な送金疑惑が消えない中で、日本政府が十分な審査、検査もせずに大盤振る舞いをして、その資金がいかなるルートであれテポドンなどの軍備増強に使われるというふうになっているならば、これはブラックユーモア以外のなにものでもない。国民の生命、安全、財産を守るのが政治の基本的な務めと私は思っている。ということであるならば、これらすべての観点からこの問題を看過することなく追及をしていかなければならないと思う。これは事、日本の安全保障にもつながる問題でもございます。であるならば、もっと真剣に力を注いでいかなければならない、それが政治の責務だと考えております」

〈2〉学習組問題

「朝銀の愛知信組のある方が自分の口座から勝手に預金を引き出された、信用組合の個人なのか信用組合そのものなのか、この辺のところがまだ問われているんですが、預金を引き出されたとして訴えて、勝訴した方がおられます。そして、その提訴の中で、朝鮮総連内の非公然組織とされていた学習組という存在が明るみになったわけでございますが、公安調査庁に伺わせていただきます。この学習組というのが朝鮮総連の意思を伝える一種の実行部隊であるというふうに考えてよいのか。そしてまた、現在の朝鮮総連ですが、構成員の数は今どうなっているのか、過去と比べてどうなのか、この辺のところをお伝えください」

〈3〉送金疑惑

「私が先ほどから申し上げている一番のポイントは、これまでも、こういった朝鮮総連の傘下にあると言っていい朝銀の信用組合、これが足利銀行などを通じ、また現金で北に送られているのではないかという送金疑惑です。ある方は年間で600億とも、またある方は1000億とも言われておりますし、また、93年には、当時の羽田外務大臣が日本記者クラブでの会見で2000億円という数字を認めておられるわけでございますが、まず公安調査庁の方には、この北への送金額はどれぐらいと見積もっておられるのか、それはキャッチするのは難しいのかどうなのか」

まさに二の学習組門隊などは当時の公安関係者から私も言われたものだ。

「慎重に慎重を期してください。これ以上は申しません」

では、〈2〉と〈3〉の問題、当時の国会での公安関係者の答えはどうだったのか。

〈2〉の問題 答弁 公安調査庁調査第二部長

「学習組についてでございますが、学習組は、朝鮮総連中央・地方組織、傘下団体の中に設置されている非公然組織であると認識しております。現在、学習組員数は5000人と見ております」

〈3〉の問題 答弁 公安調査庁調査第二部長

「お答えします。朝鮮総連など北朝鮮関係者による北朝鮮への送金については、公安調査庁といたしましても重大な関心を持って調査を行っているところでございます。しかし、その全体像を把握するには至っておりません。 送金の状況につきましては、今後の業務に支障を来すおそれがありますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います」

つまり、結論でいえば総連、民団の構成員の組織数、学習組の数などはあったが、学習組がどういう行動をしているかなどの明確な答えはなかった。それほど国の公安、警察関係においてもデリケートな問題だったのだ。

それでも国会という世界も注目する最大の公の場に、朝銀問題、学習組問題、そして送金問題をとりあげた反響はすさまじかった。朝鮮総連も、そして北朝鮮もさまざまな意味で大きなボディブローとなったことは間違いない。

 

当時、小池氏は私にこう言ったものだ。
「私は神経はピリピリしている。身辺も気をつけている。でも、こうした問題を曖昧にすることのほうが、どれほど腹立つことか。身を挺してやる」

しかし、一方では、その質問の前に自分の国際的人脈、ありとあらゆるものを通して徹底して裏付けをして精査する。いいかげんな質問はしない。その姿は今日まで少しも変わらない。

つまり小池百合子という女性の「蛮勇」そして臭いものに蓋をするのが嫌いな性格は当時と少しも変りなく、続いているのだ。そして今日、都知事という要職を得て、ますます崖から飛び降りる技にも磨きをかけているのだ。都民ファーストが貫かれることをさらに期待したい。

▼田村建雄(たむら・たてお)
1950年茨城県生まれ。地方紙記者を経てフリージャーナリスト。月刊誌、週刊誌、夕刊紙に、政治、社会問題ルポを中心に執筆。著書に「中国人『毒婦』の告白」(文藝春秋)など。

◎プロデュース=小林俊之

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