特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部の射殺事件で、殺人罪などに問われた同じ組の組長、木村博被告に、福岡地裁が求刑通り無期懲役の判決を言い渡したニュースを昨年の秋に聞いてショックを覚えた。なぜか。木村博氏にはひとことでは言い表せないほど激励を受けたからだ。共犯の組幹部、渡部公章被告(43)は懲役15年(求刑懲役18年)とした。

 

産経WEST2016年10月31日付記事

2012年11月末、僕は古い友人のライターと九州・小倉に飛んだ。工藤會の木村博幹事長(当時)に会うためだ。その木村氏に会ったタイミングで僕は出版社の契約社員を解雇された直後で、仕事は枯渇していた。「どうやって稼ごうか」と悩むあまり、自殺を考えていた。道を歩くたびにビルを見上げて「人は何階から落ちれば苦しまずに死ぬのか」と統計を求めたりしていた。

そのさなか、工藤會は警察からのマークが激しく、「特定危険指定暴力団」に指定される直前で法律的な理論を持ち出して警察と激しいバトルを繰り広げていた。結果的にこの年の12月に「特定危険指定暴力団」に指定される。

「もうどうせ死ぬのだ」という精神状態の中で工藤會幹部の木村氏とやりとりするのはそんなに苦しくはなかったが、マスコミを歓待する、紳士然とした態度の木村博氏にしだいに僕は“人間的魅力”を感じていった。その取材は滞りなく終わり、僕らは「取材者」と「被取材者」という関係から進歩することはなかったが、暴力団排除の機運でしのぎがきつくなってきたにも関わらず「わしらはマグロやカツオなどの回遊魚と一緒。泳いでなければ酸欠で死ぬ」と言い切るその男気には任侠魂というよりも“人間としての魅力”を感じてふと「仕事がないと自殺を考えますよね」と漏らしたことがある。しばらく、工藤會の屋台骨を支えてきた木村氏は電話の向こう側で沈黙したあと「小林さんも朝から早く起きて、予定をたくさん入れて忙しくしたほうがええですよ。人間、暇だとろくなことを考えん」と説得された。

このとき、修羅を生きる彼らから「最後まで抵抗すること」の美学を教わった。それにしてもここから僕はなんとかして踏ん張って生きていくのだから、人生は異なもの味なものだといえるだろう。僕は工藤會を守る弁護士からこんなつぶやきを聞いた。

「工藤會はさ、どうしてあんなにも頑張れるのだろうか」と。
 その答えは、僕が懸命に生きてみないとわからないだろう。

 

産経WEST2017年2月14日付

そんな中、淡海一家の高山総長に関するニュースが入ってきた。
『産経WESTオンライン』が『京都府立医大を家宅捜索、暴力団総長の収監逃れで虚偽診断疑い 地検に出頭』との見出しでこんな記事 を報じたのだ。

「京都府立病院の院長と高山総長は昵懇」という情報も乱れ飛んでいる。僕はかつて竹書房から、高山総長の父親である高山登久郎氏の自伝マンガを出したが、これは宮崎学氏が緻密に取材した書籍をもとにしている。にもかかわらず、この漫画は福岡県警からの横やりが入り、宮崎氏が激怒して福岡県警と福岡県を相手に裁判を始めた(宮崎学公式サイトから)。これが2010年4月1日のことだ。そして僕は出版社の意向に逆らい、宮崎側に立って陳述書を提出し、担当の弁護士とも仲がよくなった。実は工藤會をつないでくださったのは、このときの弁護士だ。

なので、高山登久太郎氏の漫画を作るにあたって、許諾をくださったのは、淡海一家の高山義友希総長だ。高山総長に対しても、僕は足を向けて寝られない。

ここではスペースが足りないが、工藤會を声高に糾弾する福岡県警こそ、窃盗や強盗、恐喝など枚挙にいとまがない「悪の巣窟」だ。次回はこいつら「正義の仮面をかぶった似非警察屋」に焦点を当てていこう。

▼小林俊之(こばやし・としゆき)
裏社会、事件、政治に精通。自称「ペンのテロリスト」の末筆にして中道主義者。師匠は「自分以外すべて」で座右の銘は「肉を斬らせて骨を断つ」。

財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は2月8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。

 

朝日新聞2017年2月9日付け

 

朝日新聞2017年2月9日付け

◆神道の崇高な理念とはかけ離れた疑惑

朝日新聞、久々のビッグスクープだ。公示価格が14億2300万円の国有地が、1億3400万円で「森友学園」に売却されていたことが判明した。「森友学園」のHPからは改憲右翼の巣窟「日本会議」の大阪役員である籠池泰典総裁と、安倍首相の夫人であり三宅洋平氏のお友達(?)である安倍昭恵氏の名前が確認できる。

安倍夫人は現在、塚本幼稚園を運営しているだけの「森友学園」が4月からの開校を予定している「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長として「森友学園」のHPに登場している。14億円余りの国有地が10分の1以下、1億円余りで払い下げられ、そこに校舎が建設された「瑞穂の國記念小學院」。同小学校は日本で初めて(同校HPによる)の神道小学校として開校する寸前だ。しかし朝日新聞のスクープにより、同小学校が掲げる神道の崇高(?)な理念からかけはなれた疑惑が明らかになった。

 

「森友学園」ホームページより

 

「森友学園」ホームページより

◆籠池先生を絶賛する安倍昭恵氏

「フフフ、御代官様もワルですなぁ」
「なにを申すか『森友屋』、おぬしの業突く張りにはかなわんわい」
「ハハハ」

と、勧善懲悪の時代劇、前半の悪代官と商人の密議の場面を見せられているような気分だが、関係者の発言がまたふるっている。安倍昭恵氏は「森友学園」ホームページの中で、

「籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました。 瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。そこで備わった『やる気』や『達成感』、『プライド』や『勇気』が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております」

同校総裁・校長の籠池泰典先生を絶賛している

「日本人としての誇りを持つ、芯の通った子供を育て」るそうだ。この小学校の理念、私には気持ち悪い。しかしながらあくまで「私立」学校だ。文科省に認可されれば教育の内容は「学習指導要綱」の範囲内であれば自由だ。ただし、仮に彼らの主張(神道)に立脚すれば「日本の素晴らしさ」を小学生に教育する場所が「瑞穂の國記念小學院」であるはずだ。その「神聖なる場所」が不正払い下げによって薄汚く入手されたことは、「森友学園」の欺瞞性を物語るのみならず、犯罪を構成する疑いが高い。必ず検察が動くだろう。そんな場所で「崇高な教育」ができるのか。

◆籠池先生の明白な「差別表現」

そして、彼らが「崇高」と奉る「神道」とは、神話に立脚した「日本人優越意識」に凝縮される偏狭な人種優越主義にほかならない。籠池先生は、正直だからHPで「韓国・中国人等の元不良保護者」と記載して袋叩きにあったり、塚本幼稚園の保護者には「よこしまな考えを持った在日韓国人や支那人」との表現を用いた文章を配布していた。

これには「よこしま」であることにかけては人後に落ちない松井大阪府知事も「表現の自由があるにしても、下品な表現は使わない方がいい」とコメントしている。違うな。「下品」じゃなくて「差別表現」じゃないのか。松井知事自身、大阪府警の機動隊員が沖縄で「この土人が!」と発言したことを「差別とは思わない」人間だから「よこしま」に「よこしま」を諭させようとしても無理なのである。

◆嘘だらけの安倍「自己陶酔」政権

しかし、一番驚いたのは安倍晋三の発言だ。2月17日の衆院予算委員会で、国有地を格安で買い取った学校法人「森友学園」が設立する私立小学校の認可や国有地払い下げに関し、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と述べたのだ。この軽口叩き、与野党国会議員の中に正常な反応があれば、本国会終了時には首相も国会議員も辞めて「ただの人になる」と明言したのだ。

選挙違反で議員に疑義が及びそうになると「秘書がやった」、官庁で不正が起きれば大臣は「事務方の不正で報告がなかった」、甘利元経産大臣のように言い訳ができなくなれば、大臣辞任から入院へ。それでここしばらく「巨悪」は罪に見合った法的裁きや制裁を受けることなく、「どおってことないよ」と押し通してきた。

安倍は「南スーダンで自衛隊の死者や負傷者が出たら辞任する」とも述べている。その一方で派遣された自衛隊の「日報」が破棄されるか行方不明になる、という不可思議極まりない「不正」が行われている。

嘘だらけなのだ。どの口から「私たちは日本の歴史、それを裏打ちする自然・風土・慣習の素晴らしさを世界の人々に発信してゆく必要があります」だの「世界で歴史・伝統・文化の一番長い國である日本」、はては「その中で積み上げてきた日本人のDNAの中に『人のために役立つ』という精神が刻み込まれていますし、世界で一番混じりっけのない純粋な民族であります」などと平然と吐けるのだ「森友学園」総裁の籠池泰典よ!

日本会議をはじめとする「神道」信奉者(あるいは便宜的にそう装っている者ども)の本音は、戦前と何ら変わらぬ「日本は世界一」、「大和民族は世界一」の倒錯した差別と表裏一体となった低レベルの自己陶酔主義にすぎない。

だから、不正であろうが、嘘であろうがお構いなし。払下げに応じた役所の責任者は「ゴミが埋まっていたからその除去費用も考慮して価格を算定した」などと馬鹿以下の答弁しかできないのだ。

◆この国がもしも「普通の国」ならば「序・破・急」展開は必至

安倍明恵が「関与」しているかいないか。議論の余地などない。籠池先生にほれ込んで「名誉校長」を引き受けているのだから道義的に責任があるのは「普通の国」であれば当たり前だ。いいか、晋三の好きな「普通の国」ならばだ。一々議論するまでもない。世界各国で嘘八百を年から年中言いまくっている安倍晋三、今回の発言はそれにしても軽すぎたぞ。これで野党が安倍の首を取れなければ、全員「瑞穂の國記念小學院」入学からやり直せ!

時代劇ならこのあたりでお裁きが下る。背中の桜吹雪か、深夜の隠密道中か。21世紀進歩しているはずの人間に、時代劇でもお決まりの「序・破・急」を展開できないはずはなかろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

世界中で、私と同じような「危惧」を密かに想起している人が数知れずいるに違いない。ちょっと近・現代史を知っていて、政治に興味があり、政治の裏面は血塗られていることを承知している人であれば、簡単に導かれる仮想だ。

私の「危惧」は表裏合わせ鏡のようなものだ。その対象は米国大統領ドナルド・トランプ──。誤解なきように断っておくが、私はトランプの支持者ではないし、正直に告白すればトランプの政策や人物像にはほとんど興味がない。しかし、就任後数日で9本の大統領令に署名したこの男について、穏当ならざる予感がある。私の予感は2つあり、おそらくその2つともが外れることはないであろう。

もし、トランプが4年間の大統領任期をまっとうすることになれば、いま、予想もできない理由と、構図による大規模な戦争が起きるだろう。米国対中国といった構図ではおそらくあるまい。そしてその戦争に日本は否応なく巻き込まれるだろう。また米国内での内戦が起こる可能性だって排除はできない。

その延長戦上に、不謹慎ではあろうが、私は「トランプ暗殺」の可能性を消し去れない。どう見ても一時的な人気に便乗してはいるトランプではあるが、ウォール街や国際金融資本との利害相反は強まる一方であり、米国では、日本以上に嫌われる「朝令暮改」が外国人の入国制限などで目に余る。米国のテクノクラートやシンクタンク、さらには政権周辺や、中枢には「目障りな」人間がトップに座したとき、それを取り除く「誰が言い出すでもない、いつもの力学」が働く。これは映画『JFK』の中でも指摘されている通りだ。

ニクソンがウォーターゲート事件で辞任を余儀なくされたのも、J・F・ケネディが暗殺されたのも、理由こそ違え米国権力中枢や大資本(エスタブリッシュメント)との利益相反を引き起こしたからに他ならない。トランプは大金持ちの経営者だからそんなことは起こらないだろうと主張する方もいる。私だって「トランプ暗殺」を望んでいやしない。でも過去の米国権力史を紐解けば、これほど「誰が言い出すでもなく、いつもの力学」が動き出すのに条件が整いすぎている人物は、見たことがない。

ケネディは共産主義者、ハーヴェーイ・オズワルドに暗殺された、と一応正史の教科書には書かれてはいるけれども、そんなものを信じ込んでいるのは歴史や政治がテレビの画面や、新聞紙上で伝えられるように、実態から100キロ以上離れた、虚構の意味付けがなされていることに気が付かない、善男全女の皆さんだけだ。横から眺めなければ事実には肉薄できないと知っている人々の間では誰も信じられてはいない。ケネディ暗殺については、その立案者の見立てが浅すぎたという面も指摘せねばならないだろう。

ソ連にシンパシーを持つオズワルドの犯行というストーリーは、分かりやすくはあるが、単純にすぎるのであって、それゆえ逆にリアリティーを欠くのだ。あたかも米国に追放されていたベニグノ・アキノがフィリッピンに帰国したとたん、空港で射殺されたように(この時も犯人は「共産主義ゲリラ」とマルコス政権は発表したが、フィリピンをはじめ国際社会はそれを信用せず、結局マルコス政権は崩壊、マルコスはハワイへ亡命することになる)。

しかしながら米国の伝統ともいえる、「誰が言い出すでもない、いつもの力学」は既にスケジュールを定めて稼働を始めている可能性がある。私の手元にはわずかではあるが、その兆候を示す証拠もある。繰り返し不吉な物言いで恐縮ではあるが、「4年以内の戦争か、トランプの暗殺か」。どちらが選ばれるかを私は言い当てられない。しかしそのいずれかが現実のものにあろうことは、かなりの確信をもってお伝えできる。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

タレントの松本伊代(51)と早見優(50)が京都市内のJR山陰線の線路内に無許可で立ち入り、鉄道営業法違反の疑いで書類送検された事件では、鉄道ファンが激怒している。

2人は今年1月、『クチコミ新発見! 旅ぷら』(読売テレビ)のロケーション撮影の合間に京都市内のJR山陰線の嵯峨嵐山(さがあらしやま)駅近くの踏切内から無許可で線路に立ち入り、さらに松本は写真を撮影して1月14日にブログにアップ。これが「あまりにも非常識だ」として話題を集めていた。とくに怒りが収まらないのは、鉄道ファンだという。

ネットでも『JRに謝罪せよ』『これは天然ではすみませんよね、ヒロミさん?』『犯罪です。そんな善悪もつかないのか!?』『人としてどうなのだろう』などと早見と松本を批判する書き込みで大炎上。松本と早見は「キューティー☆マミー」というユニットを結成して、『急いで! 初恋』(早見)や『センチメンタル・ジャーニー』(松本)などをイベントで披露、多数の集客に成功している。当初のユニットコンセプトは「母親があこがれるママのユニット」ということったが「子供には見せられない母親(マミー)たち」になり下がった。

鉄道ジャーナリストの福田一夫氏が語る。「近頃では、線路の敷居の外から電車を撮影するのにも、鉄道警察から『近寄って撮影するんじゃない!』と激怒されるというのに、モラル的に許せない。鉄道ファンのみならず、鉄道交通に携わる人すべてに謝罪すべき事件ですよ」 

今回の警察の対応について、鉄道ファンからは賞賛の声は多い。「タレントだからといって、甘い裁定はせずに、厳しくしたのは、結果として鉄道ファンにもある一定のモラルをもたらすことになります。はっきりいって、秩父鉄道や日光鬼怒川線など、入ろうと思えば入れる地方の路線はたくさんあるが、僕たちは自制心をきかせて我慢しています。鉄道ファンの間では、線路は神聖なもので、よくある『廃線を歩く』なんていうフォトエッセイですら、否定する連中は多いです。そんな場所を早見と松本は“汚した”のですよ」(同)
  
今度、真岡鉄道が2月19日に蒸気機関車2台を走らせるイベントがある。「このときに鉄道ファンが集まって、早見や松本の事務所への抗議署名を集めるかもしれません。このままでは、僕らが撮影しにくくなるのは必然だと思いますよ」と鉄道ファンの男性。鉄道ファンの中でも不埒な人がいて、「これじゃあ、地方の路線で人がいない場所など今まで『かろうじて侵入して撮影できていた』ポイントまでマークされて僕らはますますいい写真がとれなくなる」とぼやく鉄道ファンに会ったが、こうした連中を『排除』できるのはかえって「災い転じて福」で、これこそ警察の「ルールを守らない撮り鉄排除」の狙いが裏にあるのかもしれない。

「実際に線路に乗り入れる 松本と早見は容疑に関して、1月下旬、京都府右京警察署から任意で事情を聞かれていた。京都府警に「ふたりは反省の色があったか」と聞いてみたが、さまざまな方面から問い合わせがあったのかうんざりした声で「発表しておりません」とこたえた。もはや「うまくいっても半年間の自宅謹慎がベスト」(テレビ局関係者)という声もある中、はたして80年代にアイドルとしてファンたちを喜ばせた松本と早見は、同年代のファンたちを失うのか。その対応に注目が集まる。

(伊東北斗)

 

商業出版の限界を超えた問題作!

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

辺野古の海上工事がいよいよ再開された。高江と辺野古で沖縄人の意向を全く無視した新たな米軍基地建設が進む。もちろん誰もが黙っている訳ではない。逆だ。全国から「どう考えたっておかしいだろう!」と基地建設反対の人びとが、運動の戦列に加わるために沖縄に足を向けている。

川口真由美さん

◆真由美さんは毎月のように沖縄に通っている

京都生まれ京都育ちで、障がい者の作業所の所長さんにして3人のお子さんのお母さん、川口真由美さんもそんな人の中の一人だ。でも彼女は歌手でもある。知人から紹介され真由美さんのCDを聴いた。真由美さんを紹介して下さった方によれば、「彼女の迫力は生で聞いたらパワーが違います」とのことだったが、音楽センターから発売されている『想い 続ける─沖縄・平和を歌う─』からは、ガツンと直撃弾を食らったような詩とメロディーがシンプルな演奏で奏でられる。

真由美さんは毎月のように沖縄に通っている。辺野古や高江の現地で座り込みに参加したり、抗議行動に加わり続けている。だから彼女のオリジナル曲には、とても直接的な詩が多い。政治的であり、情熱的であり即物的なようでいて、情の深い部分を射抜く。

◆『闘う人』は異端者ではない

川口真由美さんCD「想い 続ける—沖縄・平和を歌う—」

音楽から力が失われてどのくらい経つだろう。かつては詩歌が直接的でなくとも、多くの人の心を揺さぶる楽曲が珍しくはなかった。だが近年そのような新しい楽曲に接することが少なくなったように感じる。

私の生きている世界が狭いからだろうか。時代が剥き出しの暴力をすすめ、日々が戦争めく時代にあって、優しさにくるまれた歌詞や、解釈がいかようにも可能な楽曲は、はかなくも力なく聞こえる。何も知らない子供は騙せても、大人の心を揺らせはしない。たしかに人びとの心のひだを丁寧に歌う歌はあるだろう。それらは「癒し」や「共感」には溢れているかも知れない。でもそこから「闘い」の意思と「怒り」を感じることは稀である。

時代は『闘う」ことが、なんだか不思議なことのように人びとに思わせることに成功しつつあり、『闘う人』を異端視する勘違いの罠を巧みに仕掛けている。

◆山城博治さん作詞の『沖縄 今こそ立ち上がろう』を艶やかに歌う

真由美さんの歌を私なりに解釈すれば『21世紀版闘争歌』だ。『El Condor Pasa(コンドルは飛んでゆく)』も真由美さんが歌えば、たちまち『闘争歌』へ装いを変えるし、いま、囚われの身である山城博治さんが作詞した『沖縄 今こそ立ち上がろう』を歌えば、艶やかな色を帯びた曲へと深みが増す。『翼をください』だけは詩も原曲通りだが、この曲くらいしか真由美さんの身体に納まる歌はないということだろうか。この人のエネルギーをのぞき込むのは、なんだか原発事故でメルトダウンした格納容器内のデブリを見に行くような怖さすら感じる(あえてこの表現を使う)。


◎[参考動画]辺野古作業用ゲート前で山城博治さんと共に歌う『ケサラ』、『軟弱者』(2015年1月13日)

でも本当に彼女が歌いたいのは『闘争歌』ばかりではないだろう。彼女は「躍動する声を出すようにこだわっています。鳥の声や動物の声も気にしています。自然に響くように歌わないと人の心にも響かないから。私は人間として当たり前な、人間らしさを歌いたいだけです」という。そう、彼女はいま『闘争』に忙しくとも、本当は情熱に満ちた愛情や自然を歌いあげたいのではないだろか。でも時代はそれを許さない。

◆2月25日(土)京都での真由美さんコンサートに先着5名様ご招待!

『共に歌う歌姫・闘うシンガー』とも呼ばれる真由美さんの歌を生で聞くのは正直少し怖い気もする。こちらのエネルギーが試されるのではないかと。「聴き倒れ」てしまうんじゃないか。自分に自信のない私などはちょっと不安だけれども、彼女の歌を聴くチャンスがやってくる。

2月25日(土)、京都市呉竹文化センターで1:30開演、川口真由美さんのコンサート『想い 続ける ―沖縄・平和を歌う―』が行われる。コンサートは当日2000円(前売1500円)、小学生~高校生・障がい者1000円だが、ご紹介者のご厚意により先着5名様に同コンサートのチケットをプレゼントする。チケットをご希望の方はtadokoro_toshio@yahoo.co.jpへお名前、ご住所、連絡先電話番号を明記の上メールをお送り頂きたい。先着5名様(多数の場合は抽選)にチケットを差し上げます。

2月25日(土)川口真由美『想い 続ける -沖縄・平和を歌う-』コンサート(京都市呉竹文化センター)

川口真由美さんについてのご質問は、京都音楽センター(TEL:075-822-3437、Email:info@wawawa.ne.jp)まで。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

在日本大韓民国民団(民団)は1月12日、都内のホテルで新年会を開き、呉公太(オ・ゴンテ)団長が韓国・釜山の総領事館前に設置された慰安婦像について「撤去すべきだというのが、私たち在日同胞の共通した切実な思いだ」と述べた。その上で、一昨年12月の慰安婦問題に関する日韓合意の堅持を訴えた。

産経新聞2017年1月12日付

呉氏は日韓合意を「両国政府が苦渋の末に選択した結果で、関係発展のための英断だ」と評価し、会場の拍手を浴びた。その上で「誠実な態度で履行されなければ問題は永遠に解決されない」と強調。「合意が履行されずに再び両国関係が冷え込み、私たち同胞はまたも息を殺して生きなければならないのか」と切々と述べ、「(韓国)国民の冷静かつ賢明な判断と、日本政府の冷静な対処」を求めた。

※参照元=産経新聞2017年1月12日付 

一昨年安倍と朴の間で交わされた「日韓合意」を民団は評価しているようだ。私には異議がある。全く賛同しない。「日韓合意」とはなんだろうか。外務省によると日本側(岸田外務大臣)は以下を明言している。

(1)慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

(3)日本政府は上記を表明するとともに、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

対して韓国側(尹外交長官)は、韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、韓国政府として、以下を申し述べる。

(1)韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し、日本政府が上記1.(2)で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。

(2)韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。

(3)韓国政府は、今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

※引用元=外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html

長い引用になったが、この「合意」は注意深く読まれる必要があるのでご容赦頂きたい。本合意は2015年12月28日になされたものである。韓国側の外交長官尹(ユン)氏は朴槿恵政権下の日本に置き換えれば外務大臣である。朴槿恵は文字通り韓国国民の力によって大統領の座から引きずり降ろされ、間もなく刑事訴追が待っている人物だ。振り返れば大統領選挙に勝利したが得票率では51.5%で野党候補である文在寅の48.02%と大差があったとは言い難い。

朴正煕の七光りと韓国社会の閉塞感が「なんとなく」初の女性大統領を生み出したという側面と、野党が候補者選定に手間取りすぎたことも朴には有利に働いた。しかし、この選挙結果を受けて、韓国では絶望のあまり少なくない自死者が出たことは日本であまり知られていない。

安倍晋三と朴槿恵の絶望的同時就任。朝鮮半島を日本が侵略していた時代にさかのぼれば、ともにそこで甘い汁を吸った人間の世襲である安倍と朴に、本質的な対立が生まれる理由はない。2014年4月セウォル号事件で、全くの無能ぶりを暴かれた朴には転落の道しか残っておらず、そこですがりついたのが、韓国政権の常套手段「反日」感情の喚起と利用だ。この時期から実際には中国と日本にすがりつき米国からの側面射撃なしに政権維持は困難を極めたのだが、朴は対日政策に矛盾だらけの外交を展開する。「反日感情」利用の一方で、日本との「融和」を演出することによって外交での得点稼ぎを試みた。その思惑の中で生まれたのが大きな捻じれ、将来への禍根を包含した「日韓合意」である。

文言は一見妥当のようにも見える。中でも「安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」が明文化されているのは、日頃の安倍の発言からすれば、「え、そんな約束していたの?」と感じるほどだ。

しかし、鍵は(3)である。「日本政府は上記を表明するとともに、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」だ。国家間の約束だから、どんなに危うい条約や合意でも声明を出したからには文言にせずとも、「課題にされた問題は解決した」と理解するのが国際的には常識であるが、ここではわざわざ「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」との念押し文言がわざわざ付け加えられていることに着目すべきだ。

その背景には、多くの韓国国民が安倍の本音や日本で沸き起こる差別的世論を認識しており、また朴槿恵のステンドプレーに対する嫌悪を抱いたこと、そして何よりも被害者である元慰安婦方からの意見を韓国政府が無視して「日韓合意」が結ばれた事情を再度指摘する必要があろう。私は韓国という国家に特段の思い入れはない(どの国家にもそうであるが)が、韓国人の友人が少なからずいる。親友と呼んでも過言ではなくなんでも話すことができる友人がいる。

そんな彼らに聞くと、やはり「日韓合意は欺瞞だ。だから破棄されるべきだ」との声が少なくない。私も同意見だ。「日韓合意」によれば韓国政府は日本大使館前の少女像を適切に扱う(意味としては撤去させる)と約束している。これが当時から韓国社会の反感を買ったのだ。「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と対になった「少女像撤去」の宣誓。私は必ず「日韓合意」が災禍を招くであろうと直感した。

そして、釜山の日本領事館前に新たな少女像が民間の団体によって造られたことに腹を立てた日本政府は、1月6日長峰安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事の「一時帰国」にまで踏み切った。「一時帰国」というが、実際には「大使召還」であり、これは国際関係において、相当程度の緊張が双方の国に生じていることを象徴する行為だ。そして本稿執筆時(2月6日)にいたるも大使・総領事は韓国へ帰るタイミングを見つけられず、まだ日本に留まっている。

基本を踏まえていない「日韓合意」と、ヒステリアが「大使召還」などという恥ずかしい行為に及んでいる。韓国は実質大統領不在、内政は混乱を極めている。大統領選挙にはこれといった決め手となる候補者も不在だ。そんな内政の国を相手に、少しは冷静にならないか、日本政府と外務省。韓国内に日本同様民族右翼がいることを私は知っている。彼らは日本の右翼同様に非論理的で感情的である。話にならない。そして不幸なことに間もなく倒れる現政権に親和性が高い。

殴り合いになりそうな議論をしても、歴史認識につて激論を交わしても翌日にはまた普段通り仲良く語り合える友人関係を築きたいとは思わないか。もとより表面では対立したり、仲良さそうにしたりしても根源の利益で両国の支配層は戦後一貫して繋がって来た。つまり受益者は「喧嘩ごっこ」や「仲良しごっこ」の猿芝居を、延々演じているのだ。両国政府のどす黒い政治的目論見に何故市民が踊らされる必要があるのか。それほど信用に値する政権なのか。日本も韓国も。

カードゲーム(トランプ)に世界中の目が集まっていて、当該国もどうやら肝心な問題をお忘れのようだ。ボーっとしていると、韓国大使は帰るタイミングを逸してしまうのではないか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

LCC(格安航空会社)の遅延の多さやサービスの悪さが世界的に問題となっている。11月末に成田空港から「スクート航空」(シンガポール)でタイのドンムアン航空にとんだ50代会社員A氏は怒り心頭だ。

「2時間前の午前8時に空港に着いたのに、到着するや否や10時00分発の便は『2時間遅れ』と表示が出ていました。ドンムアンへの到着予定時刻は14時55分で、計算するとどう見積もってもドンムアン空港から17時15分発のウドンタニ空港行きへの便がまにあわなくて、一緒にいった友達ともどもドンムアンからウドンタニ行きのチケットを2枚捨てて、もっと遅い便を買いなおすはめになりました」

遅れの原因は、「使う航空機が来ていない」とのことだが、当日、「つぎの便にまにあわないが補償してくれるのか」との問いに成田空港のスタッフは「遅延証明書なら出します」と問いとはまったくかみ合わない答え。

ただでさえ遅れていてイライラしているのに、飛行機内では座席上部のバケットが閉まらずに荷物が落ちそうになったり、そもそも「遅れたことに対して謝罪すらもない」とA氏の怒りは収まらない。

A氏の悲劇はさらに続く。帰りもスクート航空を使ったのだがドンムアンから成田空港への便でも55分遅延を食らった。

「私たちはさておき、配席がめちゃくちゃで、同じ席を2枚発行して振り分け直していたり、トイレの後ろの存在しない座席番号を渡された客が立ち往生して泣きそうになっていました。女子大生っぽいグループが『せっかくいい旅をタイでしてきたのに、帰りの便が友達とバラバラにされて幻滅です』と泣きそうになっていたのです」

後日、この2つの便については「一度くらいまともにつけや」「亀よりも遅いスクート航空へようこそ」などと炎上していたが、海外に出かけることが多い人たちに取材を続けるとスクート航空については悪評ばかりが飛び込んできた。

「機内食を運ぶキャリーにたたき起こされたが謝罪の言葉がまったくない」

「シートベルトを着用するように言われたが、なかなかしなかった客に対して断りもなく僕の眼の前にCAの腕が伸びてきて、強引に隣の客のシートベルトを締めた。スリかとおもった」

「積み込んだ荷物をなくされたが、『ラック(運)にもよります』とスタッフが言い放った」

などなど。とにかく「スクート航空を使って5月にシンガポールからシドニーへのチケットで乗りましたが、30分ほど遅れたのですが、到着したシドニー空港からラゲージが出てくるまで1時間30分待ちました。なぜ遅れているのかと聞くと『混んでいるから』という禅問答のような答えがスタッフから返ってきまいた。私も人間というよりも、荷物扱いをされているような感覚になりました」(40代デザイナー)

サービスが悪くとも、きちんと時間につけば文句は出ないはずだが、スクート航空は遅延の多さでネット上では炎上しているほどだ。日本支社に電話したが「日本語がわからないんでシンガポール本社に電話してください」とのこと。スクート航空のシンガポール本社に問い合わせて「遅延については改善しようとしているのか」と日本語専門ダイヤルに電話取材してみた。

「プレスですけど、会社としては遅延について改善、努力をするつもりはあるか」と聞いてみたが担当はなんと「このこたえは上司がもっていますが、英語のみになります」と日本語専門ダイヤルとしては予測しなかった答えがかえっきた。逐一、こちらが質問すると「上司に聞いてきます」という担当の女性は、「飛行機である以上、遅延はどうしようもないと上司が言っています」「3時間を超えれば遅延の補償の対象となりますが、それ以内は補償できかねます」と言い張るのみ。

それでは「遅延の補償はするつもりもないし、『I’m sorry』でもないのですね。それは会社としての見解ですね」と聞くと「いえ、もうしわけございません。なるべく時間を守るようにいたします」ととってつけたような答えが返ってきた。2013年には「Terrapinn Holdings」が発表した、アジアの「ベスト ローコスト キャリア」に選出されたこの航空会社。まさに看板に偽りあり、だ。

2020年の「東京五輪・パラリンピック開催」に向けてシンガポールから東京への便を増やすべく、ロビイ活動に精を出して自民党議員などに接触しているようだが、まずは時間通りに客を運ぶ努力から始めたほうがよさそうだ。

(伊東北斗)

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

 

商業出版の限界を超えた問題作!

『芸能界薬物汚染 その恐るべき実態』

東京スポーツ2017年1月26日付

女性ボーカルデュオのPaix2(ぺぺ)が2001年からほぼ無給のボランティアで続けてきたプリズンコンサートが、昨年12月10日の千葉刑務所で400回を達成したという。これは世界的にみても例がなく、すでに幾つものメディアがこの偉業を伝えているが、なんとあの東スポまでもが(東スポ様、失礼!)が1月26日付けの紙面で記事にした。そこで私は、彼女たちの歌を塀の中で聞いた元受刑者としての思いを書いてみたい。

◆慰問公演は娯楽のない受刑者にとって貴重な機会

刑務所では懲役作業がない週末に、様々な人々が慰問に訪れる。歌手はもちろん、劇団やアマチュア楽団、落語、伝統芸能団体など多岐にわたり、月によっては毎週末に予定が組まれていることもある。娯楽がない受刑者にとって、同囚と刑務官以外の人々と接する貴重な機会だ。

Megumiさん

Manamiさん

翌月の慰問予定はその前の月にはプリントに印刷され、ムショ内の食堂等に掲示される。私がいた黒羽刑務所は2008年当時、過剰収容で2300名もの受刑者がいたから、こうした慰問への参加は自主的な申し込み制だった。受刑者はそれぞれ参加したい演目に申し込むが、定員オーバーの場合は、受刑年数が長い者が優先される。シャバから隔離されている年月が長いものへのささやかな配慮というわけだ。

だが逆に、残念ながら不人気の演目もある。毎年来てくれるのは有難いが、あまりにも前衛的すぎて何をやっているのか分からない劇団や、超高齢で全く声が聞こえない演歌歌手などは敬遠されて席が埋まらない。わざわざ慰問に来てくださっているのに無礼千万ではあるが、受刑者側にも好みがあるから仕方がない。でも空席があっては慰問に来てくださる方に失礼だということで、そういう場合は逆に入所年月が浅い者から強制参加させられ、会場を満員にするのだ。

◆古参受刑者ほど一日千秋の思いで待ちわびるぺぺのコンサート

そんな中で、ぺぺのコンサートは間違いなくダントツ1位の人気演目で、毎回申し込みが多すぎて抽選となり、それでも収容しきれずムショによっては午前・午後2回公演という所もあるという。私は入所時、迂闊にもぺぺを知らなかったのだが、同僚が「本間さん、今年もぺぺが来てくれます。これは絶対にオススメですよ!」と興奮気味に語ってくれたのを今でも思い出す。

彼女たちがほぼ1年に一回慰問に来てくれるのを受刑者たちは皆知っており、古参受刑者ほど一日千秋の思いで待ちわびるのだ。さらに、「ぺぺのコンサートの前は懲罰が減る」という伝説がある。これは懲罰を受けると慰問にも参加できなくなるから受刑者同士の喧嘩や諍いが減るというもので、確かに黒羽でもその通りだった。

『逢えたらいいな』の一文を朗読するManamiさん

Megumiさん

◆受刑者たちの心を捉えるMC(語り)の絶妙さ

ではなぜ、彼女たちは「刑務所の女神」と称されるほど人気があるのだろうか。その秘密は、美しいハーモニーもさることながら、受刑者たちの心を捉えるMC(語り)の絶妙さにある。年輪を重ねたことで、受刑者たちに向けたトークが彼らの心をわしづかみにするのだ。

例えば、舞台登場後すぐに、「こんにちは、ぺぺです。今年もここ○○刑務所にお邪魔することが出来ました。さて、私たちのコンサートが初めての人は挙手をお願いします。2回目の人は? 3回目の人は?・・・え、5回目の人もいる? ダメですよ、早く出所しないと!」などと言って笑わせる。

そうかと思えば、受刑者からの手紙を読んだり、出所してからぺぺに送られた感謝の手紙を読んだりして、涙を誘う場面もある。その緩急が絶妙なのだ。私も黒羽刑務所で彼女たちのコンサートを体験したが、一緒に声を出して歌い、手を振り上げ、体を揺らして楽しむなど、他の慰問の演目では考えられないほどの自由さに驚いた。そして、「早く家族や待っている人の元に帰ってくださいね」という優しい語りかけに、そこかしこですすり泣きが聞こえ、涙をぬぐう受刑者がいた。

◆慰問を続けてきた彼女たちに対する官側の信頼と敬意

慰問に訪れる人たちは多いが、ここまで受刑者の心に寄り添い、語りかけを続けてきた存在は稀だ。念のために言っておくが、このコンサート中の「挙手」などもぺぺだけに許されている特別な行為だ。通常、受刑者はコンサート中に手を振りかざしたり、体をゆすったり、声援を送ることは禁止されている。つまりはひたすら手を膝の上に乗せた姿勢で「拝聴」しなければならないのだが、ぺぺは話の仕方も上手く、経験も積んでいるのでムショ側も安心して受刑者たちとの「交流」を許しているという訳だ。これは10年以上に渡って慰問を続けてきた彼女たちに対する、官側の信頼と敬意の表明でもある。

「元気出せよ」を歌い始めると、刑務所内では通常、許されないアクションが起る

罪を犯した受刑者といえども家族がいて、待つ人がいる。だが長く辛いムショ生活で自暴自棄になり、その存在を忘れそうになる者も多い。そうした中で毎年、手弁当でムショに来てくれるぺぺは、自分たちの悩みや苦しみを本当に分かってくれている、と多くの受刑者が感じ、感謝している。ぺぺのお二人は意識していないかも知れないが、実は受刑者たちに人の心の温かさを思い出させ、もう一度社会に戻る勇気を与えるという、非常に重要で難しい役割を担っているのだ。プリズンコンサート400回に心からの感謝と、今後もさらに受刑者たちの心の拠りどころとして、活動を続けていって頂ければとせつに願う。

Manamiさん(左)とMegumiさん(右)


◎[参考動画]Paix2 逢えたらいいな 第二回 東京拘置所矯正展

Paix2(ぺぺ)公式チャンネル

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

Paix2『逢えたらいいな―プリズン・コンサート300回達成への道のり』(特別記念限定版)

タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!

 

 

 
私たちの奮闘及ばず芥川賞受賞を逃した岸政彦先生であったが、朗報だよーん!  2月5日(日)紀伊國屋書店グランフロント大阪店でトークショーとサイン会が行われるんだ。

2月7日(火)には東京の紀伊國屋でもサイン会が予定されており、まさに「向かうところ敵なし」の勢い。嬉しいですね。大阪のトークショーは既に満員だそうですが、特別取材班は既に整理券を入手しているので、岸先生からどんなお話が聞けるのか、今からワクワクが抑え切れません。

トークショーのお相手が奥様の齋藤直子さん! やけちゃう! 「夫婦漫談」だなんて。岸先生こんなところでも愛妻振りのイチャイチャ披露しちゃうんですか! 特別取材班が嫉妬し過ぎて倒れたら岸先生のせいですからね! もう!!

サイン会は岸先生の『ビニール傘』新潮社 1512円(誰だ! 高いなーなんて失礼なことを言っているのは! )を買えばだれでも参加できそうだから(整理券がいるらしいがまだ余裕はありそうだ)。Do not miss it ! これ、関西の人は行くしかないしょ。そう岸先生はご自身のツイッターでも宣伝なさっているから、私たちは絶対に行かなくちゃ!

特別取材班はトークショーはもちろん、サイン会には二桁の人数でお邪魔して、貴重な『ビニール傘』に各自の名前を、直接岸先生に書いてもらおうと思ってるんだ。もちろんツーショットの写真撮影もお願いしちゃお(岸先生、今度は顔を隠さないでネ)。握手して頂いてた手は1年は洗わない。キャーあの岸先生に会えるんですもの!

 

 

特別取材班にはむくつけき男ばかりではなく20代の女性もいるんです。ジェントルマン岸先生は女性には優しいですよね。でも要注意ですよ。うちの若い女の子、ひょっとしたら取材班中で一番過激かも。見た目はおとなしいけど、突っ込みだすとベテランが顔色変えて止めないとどこまでも突っ走っちゃうんですよね。もちろん紀伊國屋様や岸先生にご迷惑をおかけすることはありませんよ。

でも仕事じゃなくてあくまで個人的に出かけて行って、岸先生にお話するのを私たちは止められません。言論の自由は憲法で保障されているのですから。

どんな質問をするのかなぁ。

「岸先生、初恋はいくつでしたか? 」

「4年間も肉体労働をされていたんですよね。ちょと胸の筋肉触ってもいいですか?(ウフッ)」

「『派手でもコテコテでもなく、希望やいいことはなく、貧しい高齢者が多い、そんな大阪が好き。この街に死ぬまで付き合っていきたい』っておっしゃっていましたが、『大阪に希望やいいことはなく』って大阪人のアタシからすると、ちょっと? やねんけど……」

「おいらも『大阪に希望やいいことはなく』って大阪ヘイトじゃないかと思う。岸さんを見損なった。マイノリティーの気持ちがわかってたらこんなこと言わないよね」

「とにかく『M君事件』ですよ。『M君事件』岸先生は事件直後に知ってたというじゃないですか。『ビニール傘』買いましたけど、『反差別と暴力の正体』持ってきたからこちらにサインもらえません? 」

「岸先生お久しぶりです。この顔写真と僕の顔見たら思い出してくれますよね」

何十発も殴られても、ひたすら耐えたM君

「岸先生お久しぶりです。この顔写真と僕の顔見たら思い出してくれますよね」

ワオ!

あたりまえだけどどこかの団体と違って「日当5万円」などというデマを流されるような資力も能力も鹿砦社にはないから、交通費も『ビニール傘』購入費用も特別取材班は全部自腹だよー。なけなしの細い腹を切ってでも岸先生に会いたい!

君に会いに行くよ~
君に会いに行くよ~
愛してます 好きにしてよ~
君に会いに行くよ~

The Boomの「星のラブレター」を口ずさみながら、日曜午後は紀伊國屋書店グランフロント大阪店にみんな、集まろう!


◎[参考動画]多部未華子出演のTHE BOOM「星のラブレター」MV(Short.ver)

(鹿砦社特別取材班)

在庫僅少『ヘイトと暴力の連鎖 反原連-SEALDs-しばき隊-カウンター』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)


◎映画『この世界の片隅に』予告編

アニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)の大ヒットはもはや社会現象のような趣だ。戦時下の広島県呉市を舞台に、広島市から嫁いできたヒロインの女性・すずとその周囲の人たちがけなげに生きる姿を描いたこうの史代の漫画を、片渕須直監督が6年以上費やして映画化。昨年11月、全国で約60館という公開規模でスタートしたが、あらゆる批評家、そして一般の観客たちがこぞって絶賛して評判が広まり、累計観客動員数は100万人を突破。キネマ旬報が選ぶ2016年のベスト・テンでアニメ作品としては28年ぶりの1位に輝き、現在は上映館数も200館を超えている。

私もこの作品を鑑賞したが、何より感銘を受けたのは、登場人物たちが戦時下の過酷な状況を当然のこととして受け入れ、時勢に対して何の不満も言わず、かといって戦局に一喜一憂するわけでもなく、一日一日をただひたむきに生きていたところだった。戦争は怖いとか、いけないことだというのは、今の日本なら誰でもそう思うことである。しかし戦時下はそうではなく、一般の人々の暮らしぶりとは、この映画のようなものだったのだろう。そんなことをしみじみと感じさせられたのだった。

中国新聞1945年8月2日1面。度重なる空襲で呉市民の多くが生命を奪われても日本の優勢が伝えられ続けた

そして私が改めて気になったのが、当時の戦争報道がどのようなものだったのか、ということだった。戦時下において、この映画の舞台となった広島県呉市の人たちの戦争に関する事実認識や考え方は当然、戦争報道によって形成されていたはずだからだ。そこで、広島地方の地元紙である中国新聞の当時の報道を検証してみた。

◆呉で2000人が犠牲になって以後も日本優勢を伝え続けた地元紙

軍港があった呉市は終戦が間近に迫った1945年3月から7月にかけ、計14回の空襲に見舞われ、約2000人の民間人が犠牲になったと伝えられている。しかし、8月2日の中国新聞は1面に、〈本土の戦備・着々強化〉〈機動部隊 艦上機を迎撃 約八七八機を屠る 我軍事施設の被害僅少〉と、このごに及んでもなお戦局は日本が優勢であるかのように伝えている。まさに「世界の片隅」にいて、地元の状況以外は報道で知るしかない呉市の人たちがこんな報道を見れば、呉市はどんなに悲惨でもそれ以外では日本が優勢なのだろうと誤認しても仕方ないだろう。

その後も同紙の紙面には、〈沖縄の基地艦船猛攻〉〈バリックパパン 斬込みで敵陣撹乱〉(以上、8月4日1面)、〈タンダウン、トング―の線で出血戦 ビルマ皇軍勇戦続く〉(8月5日1面)、〈笑殺せよ 爆撃予告 心理的効果が狙ひだ〉(8月5日2面)・・・と日本の優勢を伝える見出しが躍り続ける。そして1面で、〈敵殺傷四千八百余 タラカン島の総合戦果〉と報じている8月6日の午前8時15分、広島市に原爆が投下され、10万人を超す人が生命を奪われたのである。

中国新聞1945年8月9日1面。原爆投下3日後、地元紙が原爆について最初に報じた記事。今思えば見当外れだ

◆映画が再認識させてくれるもの

原爆投下の翌日と翌々日、さすがに中国新聞は発行されなかったが、3日後の8月9日には早くも発行を再開している。ただ、この日の1面では原爆について、〈新型爆弾攻撃に 強靭な掩体と厚着 音より速い物に注意〉と、今思えばかなり見当外れなことを書いている。社説も〈逞しくあれ〉などと訴えているのだが、「そんなのは無理」というしかないだろう。さらに社説の下には、海軍少将・高田利種の〈この戦争・絶対勝つ 秘策着々進む 挫けるな精神戦〉という訓話が掲載されているのだが、よくもこんな無責任なことを言えたものである。

その後も、同紙の紙面には、〈人類の敵を抹殺せよ〉(8月13日1面)、〈水上機母艦を撃沈 潜水部隊、沖縄へ出撃〉(8月14日1面)、〈空母等二艦を大破 敵機動部隊を捕捉猛攻〉(8月15日1面)・・・と、昭和天皇が玉音放送で日本の降伏を伝える8月15日まで勇ましい見出しが躍り続ける。

中国新聞1945年8月16日1面。日本の優勢を伝え続けながら終戦翌日はこんな紙面に……

そして終戦翌日の同8月16日には、1面で大々的に〈大詔渙發・大東亜戦争終結〉〈神州の不滅を確信し 萬世の為に太平を開く 米英支蘇四国共同宣言を受託〉と終戦が伝えられているのだが、今思えば、こんなデタラメな報道がまかり通っていたというのは本当に恐ろしいことである。

報道の自由や言論の自由が大事なものであるというのは言うまでもないことだが、映画「この世界の片隅に」はそのことを再認識させてくれる作品でもあるように思う。


◎[参考動画]練馬アニメカーニバル2015「『この世界の片隅に』公開まであと1年!記念トークイベント」

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

『NO NUKES voice』第10号[特集]基地・原発・震災・闘いの現場

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