不思議だが本当だった──脳内記憶「コマ送り」のミステリー

週末になると田舎のバスは夜9時台に最終が出てしまう。気候が良ければ自宅まで徒歩一時間ほどの距離だが、雨天、しかもかなり激しく道路一面に飛沫が上がっていたのでタクシーに乗った。

道は空いている。国道と交差する信号は赤だったが私の乗るタクシー以外に同じ方向へ向かう車輌は見当たらない。

運転手さんと世間話をしながら、道幅がやや広くなる見通しのきく直接に差し掛かった時だ。100メートルほど前方から大型トラックが車体を揺らし道路左右のガードレールにぶつけ、明らかにコントロールを失いながら近づいて来た。

「うわぁ!」大声を挙げたのは運転手さんだった。道路は片側二車線あるがガードレールが敷設されているから蛇行しながら迫り来るトラックから車体を逃がす場所は無い。

至近にトラックの車体が迫った時、約15年ぶりにあの体験が蘇った。

あの時私は三車線ある国道で信号待ちをしていた。私の前にはワゴン車が停止していて、三車線の真ん中に止まっている私の車の左右も、信号待ちの車が例を成していた。

停止した時の癖で私はバックミラーに視線を向けた。後ろから近づいて来る自家用車はスピードを落とす気配がない。時速は40から50キロほどだろうか、私の車との距離が50メートル以下に接近した時、運転席から飛び出すべきか、と頭をよぎったが、もう間に合うまい。衝突を覚悟し頭を前に向け、両手を緩やかにハンドルに添え衝撃に備えた。

直後後ろから凄まじい音を伴った未経験のGを受けた。予期していたから頭をフロントガラスにはぶつけることはなかったが、相当の勢いで衝突された私の車は大破し、前に停止していたワゴンにもぶつかり、ワゴンは交差点の中央付近まで飛ばされて行った。

私が先日タクシーの中で忘れかけていた「あの」体感を経験したのは背後から迫る自家用車の衝突が不可避だと覚悟してから、実際にぶつかられるまでの間、せいぜい1、2秒の間だった。頭の中で鮮明に浮かび上がったのは幼少期からの記憶の復元だった。全てがカラフルで静止した写真かスライドの様な記憶のコマ送り。少なくとも20を超える、好ましい記憶の数々が瞬間頭を巡った。その中には初めて思い出す、だが確実に体験していた静止画もあった。

背後からの自家用車に衝突される、と覚悟した時、自覚的に恐怖感はなかった。怪我は覚悟したが「死ぬ」とは微塵も考えなかった。

意識的な思考とは別に、脳はその状況に違う判断を下し「コマ送り」が生じたのだろうか。忌の際に「生涯が走馬灯のように蘇った」との説話は何度か目にしたことがあったが、あの「コマ送り」は多分それらと同様の現象だろうと思っている。

そしてタクシーの後部座席に座った私の頭の中では、迫り来るトラックを目前に再び「コマ送り」が展開された。前回同様幼少期からの細やかながら好ましい記憶の「コマ送り」に、今回は別の像が重なっている。それは私の記憶にある経験ではない。どこかで見たことのあるような、初老の男性が過ごした日常の数々だ。

数秒間だが、確かに歩んで来た私の人生の「コマ送り」と、見知らぬ初老男性の愉快とは言い難い「コマ送り」が同時に写し出される。脳内は混乱しそうなものを、何故かしら二つの鮮明に重なる「コマ送り」は混乱も、互いを邪魔することもなく流れて行った。

トラックはタクシーの10メートルほど前で、ガードレールを乗り越え田んぼに突っ込み横倒しになっていた。

運転手さんが「死ぬと思うた!お客さん、ね!」と興奮覚めやらない大声で語りかけて来た。私は「あ、あダメかな」とは感じたがイコール「死」を感じた訳ではなかった。

しかし「コマ送り」は発生したのだ。あれは脳が死を予知した時だけに現れるはずだ。まあそれはよい。それにしてもあの初老男性の愉快ならざる日常の断片は何なのだ。

はっと、なり瞬間呼吸が乱れた。あれは未来の私ではないのか。忌の際に(仮にそうであったとすれば)どうして、あるはずのない未来の「コマ送り」が脳に映写されたのだろうか。初老男性の身の上に起こった出来事を私は鮮明に記憶している。

疲れた。衝突寸前の危機によるショックではなく、あの二重の「コマ送り」に。

運転手さんには「悪いけど警察や救急は運転手さんが手配してください。私はここから歩いて帰る。私がハンドルを握っていた訳じゃない。トラックの自損事故だから証言の必要もないでしょう」と告げ徒歩で帰宅した。

こんな経験読者諸氏にはないだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

「世に倦む日日」田中宏和氏の新刊本日発売開始!『しばき隊の真実──左翼の劣化と暴力化』
脱原発は多数派だ!『NO NUKES voice』11号

那覇地裁で本日初公判『NO NUKES voice』は山城博治さん即時保釈を求める!

不当逮捕で長期勾留されている沖縄平和運動センター議長の山城博治さん

15日に発売された『NO NUKES voice』第11号には福島現地からの声も当然満載されている。特集Ⅰは「3・11から6年──福島の叫び」だ。原発事故をきっかけに大熊町の町会議員になった、木幡ますみさんは震災が起きたあの日、あの時刻に偶然にも友人たちと「原発震災」の話をしておられたそうだ。まさかの偶然が現実の悪夢となって、どれほど恐ろしい思いをされたことであろうか。木幡さんは静かに、ひたひたと怒りをつづっている。

原発推進標語「原子力明るい未来のエネルギー」が街に飾られる標語に採用された経験を持つ大沼勇治さんは、この6年間、被災地で脚光を浴びた方の一人でもあった。自身が「騙されて」作った標語を未来への教訓として残すべく、双葉町に働きかけたり、本誌でご紹介した通り、元の標語の前に立ち原発を批判するメッセージを掲げたり様々な行動をしてこられた。大沼さんだからこそ味あわなければならなかった、苦渋と決意があかされる。佐藤幸子さんは事故後早い時期から文科省をはじめとする政府機関や東電への抗議の先頭に立ち、鋭い批判や行動力を発揮されてきたが、運動の中でも過酷な事態に直面したことを告白されている。福島敦子さんは京都へ避難し裁判闘争に直面せざるをえなくなる。

被災者は異口同音に政府の欺瞞を糾合し、健康被害への過小評価、事故は「無かったこと」にしようとする政府を中心とする動きに真っ直ぐな異議を申し立てている。健康被害同様、事故の「風化」への危機感も同様だ。何よりもまず、被災しながらくじけることなく闘い続ける人たちの声を聞こう。専門家と自称し嘘を語って儲けにしている人間に対しての対抗言語の最強の反撃は、闘い続ける被災者の声の中にある。

特集Ⅱは「逆流の原発輸出 本流の原発破綻」だ。間もなく上場廃止が避けられない状況まで屋台骨が傾いた「東芝」。優秀な電気関連機器、半導体メーカーとしてその名を世界にとどろかせていた「東芝」は原発に深入りし過ぎたために、破たんを迎える。山崎久隆さんの解説は日経新聞よりも正しく詳細にその原因を解き明かす。

森山拓也さんはトルコへの原発輸出策動を現地の人がどのように受け止めているかを、トルコの反原発運動家の声を通じて紹介している。井田敬さんは先日憲法裁判所がパククネ大統領弾劾を決定するに至った韓国における市民運動と原発産業の現状を、昨年11月自身が訪韓した際の取材を中心に報告する。100万人を超える集会が開かれている大事件を多くの日本人は知らない。井田さんの報告はパククネ弾劾に至る韓国の多様な市民運動の姿を知る格好のテキストだ。佐藤雅彦さんは「原発ゼロの世界地図」を解説、須藤靖明さんは主として九州の火山と原発の危険性を指摘する。

その他各地の運動情報や報告も満載だ。『NO NUKES voice』は絶対に福島第一原発事故を風化させない。

国際的にも不当な長期勾留が問題視される中、一刻も早い山城さんの保釈を!

◆山城さんの「訂正と謝罪」文をそのまま1頁掲載

ところで、本号には少し異色な1頁がある。本日17日、那覇地裁で初公判をむかえる沖縄平和運行センター議長、山城博治さんからの「山城博治インタビュー記事に関する訂正及び謝罪」だ。山城さんには『NO NUKES voice』10号にご登場頂き、私が伺ったお話をそのまま掲載した。ところが取材直後に山城さんは不当逮捕されてしまい接見禁止とされたために、ご本人にインタビュー原稿を確認して頂くことが出来なかった。

編集部としては問題なしと判断しそのまま前号に山城さんのインタビューを掲載したのであるが、拘置所にいまだに閉じ込められている山城さんが前号をお読みになり、弁護士の先生を通じて「訂正をしたい」旨のご連絡があった。通常の取材であれば、取材に応じて頂けた方に確認をして頂いた後に記事を掲載するのだが、上記の事情により山城さんご本人に確認することなくインタビュー記事を掲載し、それにより山城さんには大変なご心配をおかけしたことを、私自身深く反省し、お詫びを申し上げたい。

山城さんの「訂正と謝罪」は頂いた文章をそのまま1頁掲載した。「訂正と謝罪」にも山城さんのお人柄が溢れている。重ねて山城さんと、訂正記事掲載にご協力いただいた沖縄平和運動センターの皆様と弁護団の先生方にお詫びとお礼を申し上げる。国際的にも不当な長期勾留が問題視される中、一刻も早い山城さんの保釈を!


◎[参考動画]脱原発集会での山城博治さんのスピーチ(2016年3月26日原発のない未来へ!全国大集会)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求める『NO NUKES voice』11号
『NO NUKES voice』11号発売開始!

「合田界隈」から歓喜の声!合田夏樹さんツイッターアカウント凍結解除される!

 
 

 
「凍結解除されましたわ」。
携帯電話に「合田さん」との表示が出てから、いつも元気な声の合田さんだが、ひときわ嬉しそうだった。過日「なぜか」凍結されていた「あの」合田夏樹さんのツイッターアカウントが15日夕刻凍結解除された。

合田さんは昨年「永久凍結」を経験しているが、そんなものはなんのその、再びアカウントを開設し、堂々と自説を展開。旧アカウント時代よりもフォロワーを大幅に増やし、ネット界では「合田界隈」と呼ばれる世界を構成している有名人物だ。

もっとも合田さんは「自由」をモットーとはするが、鹿砦社特別取材班と思想の指向性が同じ方かと言えばそうではない。合田さんは保守的な方であり、原発にも賛成の立場であるから、直接取材をさせて頂いた後の懇親会の席では、特別取材班のメンバーと熱い議論を繰り広げたこともある。しかし特別取材班と合田さんは「言論の自由」の尊重と、差別には原則的に反対する(時に危なっかしい書き込みもあるが)、点で、奇しくも「赤い糸」(!)で結ばれていたのである。

世の中には人の恩も知らずに、思い込みで「ツイッターアカウントを一度永久凍結されたら、二度と大々的には復活できない」など勘違いも甚だしく、まくし立てる人もいるが(あえて名前は明かさない、読んでいる本人にはわかる。読者にもちょっと難解なクイズかもしれないが謎解きに挑戦してみてほしい。誰が「恩知らず」の「思い込み」か)。

ともあれ多趣味でお仕事も忙しく、家庭サービスにも抜かりがない、完璧な家庭人の合田さんではあるが、余技としての「ツイッター遊び」にはまだ未練がおありのようなので、とりあえず凍結解除には「おめでとうございます」と申し上げておいた。

合田さんのツイッターより(2017年3月15日)

「きょうだけでフォロワー40人くらい増えとりますわ」
合田さんの声が弾む。

「でも、奥さんからは『もうやめなさい』と言われていらっしゃるとお伺いましたが」
「そうなんですわ」

 
 

某ニュースサイトでは野間易通氏と合田さんのほぼ同時凍結を話題にニュース記事まで書かれるほどの大事件に発展したが、凍結解除のインタビューはこれまた「特別取材班」の独占スクープとして頂いておく。左右を問わず世間には大きな誤解があるようだが、鹿砦社は「こじらせ左翼」(奥田愛基氏の表現)でも「極左」でもない。鈴木邦男氏の本を最も多く出版しているのが鹿砦社であるし、三島由紀夫についての刊行物もある。そしてある時期日本中を震撼せしめた「ジャニーズおっかけマップ」を中心とする暴露本も作れば、「M君リンチ事件」のようにどのメディアも活字にしない事件を追う。ジャーナリストの田中龍作氏や音楽家の三枝成彰氏からは「本当のことを知りたかったら『紙の爆弾』を読みましょう」とまで評価をいただいているが、多様な側面を持った出版社だ。

われわれは、原則的であり、虚構の権威やイカサマの皮をかぶったいかがわしい「善意」(偽善)の正体を暴露する。なぜか。他のどの出版社もメディアも手を付けないからだ。そのためには一通りの取材では収まるはずがない。時には偽善者の正体を暴露するために体を張った取材もするし、記者クラブでふんぞり返っていても、ブリーフィングのペーパーが回ってくるような腐りきった大マスコミとは違うのだ。

そこで合田さんである。合田さんはある種の「いたずら好き」の確信犯といえよう。彼の主たる「お客様」は、まだ残存している「しばき隊」である。昨年の「凍結合戦」で「漁夫の利」的にフォロワーを増やし、凍結「ウハウハ」の合田さんはこちらが聞かずとも話し出した。

取材班  今後はどうなさるおつもりですか?
合田さん うーん……。(嬉しそうな声で)まあ凍結解除されましたから当分はやりますわ。
取材班  一番旬の時に、余力を残して『引退』されたらカッコいいんじゃないですか?
合田さん それも考えとったんですわ、でもねちょっともったいないかなと思って。
取材班  ニュースサイトの記事では『野間氏には凍結運動のようなものがあるけど、合田さんの仲間は笑っている』ようなイメージでしたね。私も笑っていましたけど。
合田さん 腹立つな(笑)。なんか僕の知らないところでえらい盛り上がってるんですわ。でも今回の凍結はちょっとおかしかったですよ。ツイッター社からメールが来たんですが、凍結の理由が『あなたは複数のアカウントを持っているから』という理由だったんです。確かに私は3つアカウント持っていますけど、そんな人は山ほどいるでしょう。だから「僕は3つしかもっていませんけど」とツイッター社にメールしたんです。しばらく連絡がなかったけれども、今日になって『調査の結果あなたが不当に多くのアカウントを持っていないことが判明しましたので凍結を解除します』とメールが来たんです。おかしいでしょ。僕が3つアカウント持っているのには理由があるんです。以前は本アカウントで自閉症の息子のことも積極的に取り上げていたけど、政治的な話題にまみれると息子の発信をしている意味が薄れるんですね。だからアカウントを分けた、もう一つは前から持っているものです。
取材班  ツイッター社はそれをすべて手作業でやっているんですね。機械的にメールを送るだけでなくて個別のメールのやり取りをしている。
合田さん そうです。だからツイッター社売上は250億ドルらしいんですけど、経常赤字14%です。
取材班  こんなことやってたら儲からないでしょ。いずれ日本ではツイッター自体がなくなる可能性もあるんじゃないですか?
合田さん あり得ますよ。利益出てないと思いますから。
取材班  やっぱり、合田さんはその前に『引退』されたらかっこいいと思うな。合田さんが引退されたら、その遺志を継いで特別取材班が『続・合田界隈』かなんかの名前でアカウント作って、美味しいところもらいますので。
合田さん それは調子よすぎじゃないですか(笑)

合田さんのツイッターより(2017年3月15日)
 
 

  
取材班  でも、合田さんのように実社会で様々な人と会って、会社もあり、余技でツイッターをやっている人は結構ですが、これにのめりこんでいる人は人間が壊れるんじゃないかという気もするんですが。
合田さん そうだと思いますよ。うっぷん晴らしなんですよ。ツイッターでは自分の口からは実際には言えないことを書き込みますからね。しかもそれがエスカレートする。壊れる人というか、壊れている人もうたくさんいます。フェイスブックとかでもね。パヨチン界隈なんかほとんどがそうじゃないですか。
取材班  至極冷静なご意見だと思いますが、それでもまだ『合田界隈』は発展させたいと。
合田さん いやいや『合田界隈』って誰かがつけた名前ですよ
取材班  ちなみに鹿砦社特別取材班は『合田界隈』に入っているんでしょうか?
合田さん いや、微妙なんですわ。『お前なんであんな左と付き合うの!』って怒られること もありますしね。
取材班  いずれにしても凍結解除おめでとうございました!

意気揚々と円満なご家庭に帰って行かれた。その円満な家庭に脅威が及んだことから特別取材班と合田さんとの連絡が始まったのだ。「有田丸襲撃事件」だ。合田さんの職場及び職場付近の写真を有田芳生参議院議員の選挙カーに乗った人物がネット上に公開するという事件が起きたのだ(『ヘイトと暴力の連鎖』ご参照頂きたい)。実行犯の1名は確定している。特別取材班は引き続き「有田丸襲撃事件」を追う。ツイッターなど一切使わずに。

(鹿砦社特別取材班)

在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
在庫僅少『ヘイトと暴力の連鎖 反原連-SEALDs-しばき隊-カウンター』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

TOKYO 3・11──理由なき過剰規制と発動する従順スイッチ

[参考動画]渋谷3・11

大きなガラス越しに見える東京湾方向ビルの上には黒い煙が見える。都心中央の地上6階にあるこの温泉は揺れに揺れた。サウナに入り共有スペースで韓国から遊びに来た友人夫妻とビールでも飲もうかと、飲食スペースに移ったときに揺れは始まった。耐震建築だろうから、それでも崩壊してしまえば運が悪かったとあきらめるしかない。でも地震経験がほとんどないであろう友人の奥さんには、気の毒すぎる経験となる。

友人はほぼ完全な日本語を話すことができるから、「とりあえずじっとしているしかない。天井には落ちてきそうなものはないけど、奥さんを念のためテーブルの下に頭を入れて」と頼んだ。

[参考動画]東京タワー3・11

大きな船に乗って感じる「時化(しけ)」のような揺れは次第に激しさを増す。外が見渡せるようにしつらえられたガラス窓が割れたら、パニックが起こるだろうし怪我人も出るだろう。数分の揺れが少しおさまったのですぐに「急いで着替えて外に出よう」と夫妻に告げた。床のあちこちに水があふれ、そこに腰を抜かしたご婦人が座り込んでいる。

温泉だけでも数百人は入っているだろうから、さらに上位階の人々が非常階段に殺到したら、そこでの将棋倒しが怖い。長く激しい揺れは気持ち悪かったが、私は阪神大震災を経験している。あの時の揺れが体に染みついていて、ある種の耐性のようなものになっていた。

[参考動画]赤坂3・11

非常階段を降りて地上に出た。地下鉄の出口から人波が駆け出してくる。当然地下鉄は止まっている。地下鉄駅近所の公園に多くの人が集まっていた。周囲に高層ビルがなく災害時の「避難場所」に指定されているからだろう。余震は続く。高いビルがお互いの距離を縮めるように不規則に揺れている。隣に立っている会社員風の若い男性がスマートフォンでテレビのニュースを受信し始めた。

「揺れ激しかったですね」
「死ぬかと思いましたよ。でも東北がやばいみたいです。もう津波来てます」

[参考動画]秋葉原3・11

男性の持つスマートフォンからは早くも、東北地方を襲った津波を撮影した映像が映し出されていた。友人はすべてを理解し、奥さんにハングルで状況を説明している。地震体験のない韓国から来た友人の奥さんは、本当に怖かったろうに、思いのほか冷静で、むしろそのことに驚かされた。

「震源が三陸沖でこの揺れだとまだ余震がかなり続く。電車もいつ動くかわからないだろうからとりあえず歩こう」私は友人にそう提案して三人で投宿地、池袋駅へ向けて歩き始めた。

ビルの6階で感じた揺れは、ずいぶん長かったし大きかったから街中の被害はかなりのものだろうと想像していたが、歩きながら街を観察すると、少なくとも外見は思いのほか(と言っては東京でも被災され亡くなった方もいるので失礼にあたるが)被害が少ない。建物の被害は古い民家に集中していて、それも「崩壊」というまでのレベルではない。これまた阪神大震災の経験が無意識に揺れと被害の関係を比較させるのであろうか。

[参考動画]横浜ランドマーク展望レストラン(70階)3・11

小学校からは防空頭巾をかぶった児童たちが集団下校している。その場で取りうる限りの「防災対策」を少なくとも小学校はとっていることを目の当たりにした。しかし訓練ではない防空頭巾を被った小学生集団下校の列には、地震直後にもかかわらず、自然災害と全く無関係な怖さも感じた。

1時間強ほど歩いたであろうか、目的地池袋駅に到着した。しかし多数ある池袋駅の入り口はすべて閉鎖されていて駅構内を通り抜けることができない。私たちが泊まっていたホテルは駅の向こう側である。駅の構内を通り抜けるか、おそらく大きく遠回りをしなければたどりつけないのだが、恥ずかしいことに私は池袋駅周辺の地理がほとんどわからない。迂回するにしても誰かに聞かなければたどり着くことはできないだろう。

[参考動画]液状化3・11

蟻が密集したように、数千人の人が、駅の封鎖解除と電車運転の再開を待っている。日が傾いてきて寒さも増してきた。友人は私と同年齢だ。韓国には兵役がある。かれは徴兵されたときに朝鮮との国境沿い(危険度がかなり高いとされる場所)に配置されたそうで、実戦の経験こそないが夜間に銃撃戦を経験したことがある、と過去に何度も聞いていた。日本に長く住んでいたから小さな地震の経験もある。

「どうしようか。このままでは膠着状態だよ。もしここが韓国だったら市民はどう行動する?」私がそう聞くと
「日本人はおとなしいね。さっきの温泉でも火事があるかもしれないのに精算の列に黙って並んでいたでしょ。あんなこと考えられない。自分の命を守るために脱出すると思うな」

[参考動画]品川3・11

「だから、私が精算係に『こんなことしている場合じゃない、早く非常階段を開放しろと怒鳴ったんだよ』」
「田所さんは日本人じゃないから(笑)。でも駅だって電車が止まっているだけだから封鎖する理由ないんじゃないかな」
「そうだよ。これはおそらく治安対策で、万が一の暴徒化に備えているんだと思う。そうと決まれば答えは簡単だな」
「アリゲスムニダ(わかりました)」
といたずらっぽく答えた友人は、私たちが言葉では相談してはいないけれども内心同意した行動を奥さんに説明し始めた。
「いいかな? もし警察が捕まえに来たらハングルだけをしゃべるようにね。先頭は私が歩く」

[参考動画]靖国3・11

頷いた奥さんの顔を確認して、三人は規制線の最先端まで人波をかき分けて進んだ。
「行くよ」
と声をかけて私は規制線のロープを持ち上げて誰もいない池袋駅構内に足を踏み入れた。友人と奥さんが続く。なんのことはない。警察も駅員も誰も私たちをとがめはしない。やましいことはないので悠々と歩く。規制線の向こう側からは多数の人が私たちを眺めている。でも誰も私たちに続こうとしない。

「これが日本だね。日本の良いところでもあるし、日本人の弱いところでもある」
そろそろ目的の出口に近づいたころ友人が口走った。

[参考動画]池袋3・11

「そうだね。そうかもしれない」
出口では警察官が数人立っていて駅構内への人の入りをけん制している。私たちはその逆からやってきて警察官の背中を見ながら規制ロープを持ち上げて駅の外へ出た。

「しかし考えてみれば怖いね。理由の説明もなく駅が封鎖されても誰も文句を言わない。23区内で今日よりもう少し大きな地震が起きたら自家用車は使用禁止になるらしいし」
「北韓(朝鮮)が攻めてきたらソウルもそうなるよ」
「それは戦争でしょ」
「ああそうか」

「日本では別に大規模な訓練をしているわけでもないけど、市民はこの通り不気味なくらいおとなしい。規制に理由があれば仕方ないけど、あのまま駅の向こうにいたら、夜まで待たされていたよ」

[参考動画]ミヤネ屋放送時3・11

東北地方の惨事を知りながら、まだ原発が危機的状況にあることを知らなかった3・11夕方都心にいた私の最も強い印象は不謹慎にも、人々の行動の過剰なまでの整然さ(不気味さ)であった。不必要に整然とした人々の姿は時に不可視のようでいてますます常態化しているかのような感覚がある。錯覚か。

理由なく規制された池袋駅構内を歩いて通過した人は、われわれのほかにもいたのか、いなかったのか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。


[参考動画]NHK3・11

『NO NUKES voice』11号3月15日発売開始!
『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン

鹿砦社は野間易通氏アカウント凍結解除をツイッター社に求めるものではない!!

 
 

 
一昨日(3月6日)本コラム掲載の「『平成の黒百人組』野間易通氏ツイッターアカウント凍結の一刻も早い解除を!!」に対して、ある読者から厳しいご批判を頂いた。読者のご意見は「このタイトルでは野間氏のツイッターアカウント凍結解除に利用される、文末も相応しくない。訂正すべきだ」というものであった。

鹿砦社特別取材班の見解は、6日の文章で明らかにした通りである。しばき隊、しばき隊に批判的な方双方に本意が伝わる(揶揄を含めて)ものだろうと考えていたし、概ねしばき隊に批判的な方からは好評を頂いた。だが抗議をしてこられた読者は真剣そのものであったので、あえて解説を加えておく。

あの文章が文字で表現していることと、意図していることをいかように理解するかは、幾通りもの解釈があってしかるべきだろう。しかし、われわれの真意は伝わるだろう、というのが書き手としての心情だった。もっとも、われわれの文章力不足で、その本意が伝わらなかったので抗議をしてこられた方はご立腹であったのだから、表現活動を行う世界の末席を濁すものとしては筆力の不足をお詫びするしかない。

そこで、誤解を解くためにあえて加えるのであれば、ネット上での集団リンチの如き行為をわれわれは忌み嫌うし軽蔑する。さらに野間氏がこれまで繰り返し行ってきた「名誉毀損」、「虚偽」、「本人の望まないプライバシー暴露」などの行為は、法に触れるか触れないかを別にしても、社会通念上許されざる行為だと判断している。野間氏の「罪状」をここでいちいち詳述はしないが、ほかならぬ鹿砦社自身が被害にあっているのであるから、この考えに揺るぎはない。

さらに付言すれば鹿砦社は「M君リンチ事件」を引き続き追っている唯一の出版社であることも思い起こしてほしい。このような状態で鹿砦社が野間氏に対して「親心」を持つ理由があるだろうか。よって6日の文章はその前提の上で読み解かれるとの期待があったが、筆足らずであったようである。

野間氏が常套手段として用いる「ネット上の集団攻撃」にも賛同しない(ここまで言わなければわかっていただけないか……)。このことも再度明言しておく。野間氏は攻撃者としては常連だが、同様な行為がどのような勢力によってなされても、ツイッターを利用している人に「集団加圧」を強いる行為には賛同できない。その例といっては失礼だが、昨年野間氏がアカウントを凍結されたのとほぼ同時期にアカウントを凍結され、その後新アカウントで復活した合田夏樹氏のアカウントが3月7日また凍結された。

両氏の凍結が時期を同じくしていることは、たまたまの偶然か、あるいは何らかの集団が一斉にツイッター社に抗議を送ったのか、はたまた、ツイッター社独自の判断なのかはわからない。わかっているのは昨年同様、しばき隊の最重要人物の野間氏と、しばき隊に批判的な言説を繰り広げてきた合田夏樹氏がほぼ同時期にアカウントを凍結されたということのみである。

 
 

 

合田氏は凍結に先立つ数日前にお子さん襲撃をほのめかすツイートをされていた、いわば現在進行形では確実に被害者であるが、アカウントを凍結された。抗議された方は「これでは野間氏のアカウント凍結解除の材料にされてしまう」と述べておられたが、私たちにそれほどの力があるだろうか。また表題だけではなく、文章を読めばそれが「揶揄」を含んでいると理解はしてもらえないのだろうか、との思いは残る。

何が理由かはわからないが、ツイッターアカウントの凍結劇の理由はブラックボックスの中で、その理由をわれわれが推測してもあまり大きな意味はない。一私企業の恣意的な判断に社会正義があるとは思えないし、ツイッター社の倫理や正義をそこまで信用する気にはなれない、というのがわれわれの感覚である。

しかしながら、われわれの表現力不足で誤解を与えたのであれば、6日の文章を上記のように改める。これで鹿砦社特別取材班の意図はお分かりいただけるものと信じたい。

(鹿砦社特別取材班)

3月23日発売開始!「世に倦む日日」田中宏和『しばき隊の真実──左翼の劣化と暴力化』
在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
在庫僅少『ヘイトと暴力の連鎖 反原連-SEALDs-しばき隊-カウンター』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

「平成の黒百人組」野間易通氏ツイッターアカウント凍結の一刻も早い解除を!!

 
 

   
3月5日正午現在、野間易通氏のツイッターアカウントが凍結されている。「鹿砦社特別取材班」は一刻も早い野間氏アカウントの凍結解除をもとめる。野間氏のアカウントが凍結されたのはこれが初めてではない。また凍結された理由もわれわれには不明である。しかし表現の自由が憲法21条で保障されている日本にあっては、あらゆる言論が封殺されたり、集団圧殺が行われたり、ましてや口を封じられることなどあってはならない。

野間易通氏は最近「のりこえねっと記者」としてご活躍の方でもあるが、今回のアカウント凍結はそのことが影響しているのであろうか。また野間氏は「集団リンチ」事件被害者M君の本名、所属大学などをたびたび掲載するなどしてM君から名誉棄損の訴えを大阪地裁に起こされている人物である(この裁判はすでに結審し5月26日に判決が言い渡される)。野間氏の「暴露癖」はなにもM君に限ったことではなく、彼が気に入らない人物には常套手段として用いてきた手法だ(鹿砦社刊『ヘイトと暴力の連鎖』『反差別と暴力の正体』ご参照)。

産経新聞2017年3月5日付
 
 

  
野間氏の書き込みには明らかな「名誉棄損」に該当するものも含まれ、野間氏はすでに一度敗訴を経験している(判決は確定済)。それでもツイッターにしがみつき度重なる凍結をものともせず、「独自」の発信を続けてきたのが野間氏である。敗訴経験がありながらも同様の名誉棄損を発信し続ける「確信犯的」行為(精神?)には、われわれ鹿砦社特別取材班も、立場はまったく異なるとはいえ、一定の尊敬とその「ぶれない」(森友学園の籠井泰典理事長同様の)姿勢に学ぶものが多い(かな?)。

そして、野間氏は「僕は軍隊を持っている」(外山恒一氏との対談)と自ら語っているとおり、いわゆる「しばき隊」のなかでは「尊師」と奉られている人物でもある。「しばき隊」の主たる武器はインターネット、とりわけツイッターだ。野間氏のアカウント凍結が続けば、一時に比べて激減したとはいえ「軍隊」の兵隊たちはどうすればよいというのだ。指揮官を失った兵卒が路頭に迷うじゃないか。そんな非人道的なことをツイッター社は認めてもよいのか。一人では何も発言する勇気も思想も哲学も持ち合わせなし、行動もできない「しばき隊」の兵隊が泣き寝入りするのを許すというのか!

彼らの多くはツイッター依存症であり、極言すれば「ツイッターがなければ何をしていてよいかわからない」市民たちだ。そんなか弱い市民に苦痛を負わせてはならない。野間氏のアカウントを一刻も早く凍結解除し、これまで通り彼独特の世界観から「しばき隊」の兵隊を「領導」しなければ、いらぬ混乱や最悪の場合には犯罪を誘発するのではないか。その証拠が「M君リンチ事件」である。野間氏の正しい「お導き」があれば「M君リンチ事件」は防ぐことはできたのではないか(そんなことはない!との意見も多いが……)。

唯一の救いはやはり野間氏がコントロールしている「C.R.A.C」アカウントは凍結されていないことだ。「しばき隊」の諸君!野間氏アカウント凍結解除までは、緊急避難的に「C.R.A.C」アカウントを参照しよう。

念のため申し添えるが、鹿砦社特別取材班は「M君リンチ事件」をメルクマールとし、引き続き「しばき隊」の病巣を、分析し抉(えぐ)り続けることを宣言する。「ヘイト」を金科玉条に浮遊する「下からのファシズム牽引部隊=黒百人組」の本質を追う。そのためにも野間氏の発信方法は確保されていなければならない。「ざまーみろ、野間凍結されやがって」などと表層だけで喜んでいる人がいるとすれば、それは鹿砦社特別取材班の立場とは違うことを明らかにする。われわれは原則的に彼らの病巣に切り込む。こちらの武器はネットでも、権威でもなく地道な取材だけだ。堂々と勝負しようじゃないか。そのために再度繰り返す。

「野間易通氏のツイッターアカウントの一刻も早い凍結解除を!!」

(鹿砦社特別取材班)

在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
在庫僅少『ヘイトと暴力の連鎖 反原連-SEALDs-しばき隊-カウンター』(紙の爆弾2016年7月号増刊)
『紙の爆弾』タブーなきスキャンダルマガジン

《本間龍19》国民投票で何が起きるか(2)不可欠な6つの広告宣伝規制

前回は、現行の国民投票法には広告宣伝活動における制限がほとんどなく、今のままだと電通を擁する改憲派が圧倒的に有利な状況を解説した。

◎[参照]国民投票で何が起きるのか(1)広告宣伝で与党が有利な8つの理由

このようなことを書いても、「それは広告費を伴う活動に限ったことだ。報道や討論番組は広告に関係なく中立なはずだから、宣伝広告費の多寡は関係ない」と考える人もいるだろう。

◆改憲派の宣伝広告を担当する電通の印象操作ビジネス

ところが、残念ながらそうはならない。実際の広告宣伝費の投下額に大きな差が生じた場合、民放各社は広告費の多い方に便宜を図る可能性が高い。また、実際にその放送現場を仕切るのは、改憲派の宣伝広告を担当する電通であることも忘れてはならない。つまりプレーヤーがジャッジの現場に立ち会っているのと同じなのだ。具体的には、以下のような印象操作の可能性が生じる。

《1》スポットCMの発注金額に大きな差がある場合、ゴールデンタイムなどの視聴率が高い時間帯に、金額が多い方のCMをより多く流す(ラジオも同様)。

《2》同じく発注金額が多く、かつ発注が早ければ、通常はなかなか獲得できないタイム枠(提供枠)のスポンサーになることも可能である。

《3》一見公平に見える討論番組でも、スポンサーに改憲派企業がつけば内容操作が可能。例えば改憲派は若い評論家や著名人を出席させるのに対し、護憲派は高齢評論家や学者ばかりを揃える、というように番組制作側による印象操作が可能。また、カメラワークによって映る表情や秒数で差をつけることも出来る。

《4》ワイドショーなどのコーナーでも、放映される時間(秒数)に差をつける、コメンテータの論評で差をつける、そもそもコメンテータも改憲派多数にするなどの操作が可能。

《5》同様に、夜の報道番組に改憲派のCMが多数入れば、それだけでその番組が改憲押しであるように錯覚させることが可能。また、報道内容でも放映秒数に差をつけたり、印象を偏らせたりすることが可能だ。

◆公平性を保つために不可欠な6つの宣伝広告規制

以上のように、特に電波メディアにおける広告資金量の差、発注タイミングの差は圧倒的な印象操作を生む可能性がある。では上記のような状況を防ぐ手だてはあるのか。それには、おそらく以下のような規制を設けるしかないだろう。

《1》あらゆる宣伝広告の発注金額を改憲派・護憲派ともに同金額と規定し、上限を設ける(キャップ制)。例えば、予め総金額を一団体5億円、総額で100億円などと規定し、両陣営ともその金額の範囲内で使用メディアを選定、その内訳を公表する。

《2》TVやラジオCMの放送回数を予め規定し、放送時間も同じタイミングで流す。

《3》先行発注による優良枠独占を防ぐため、広告発注のタイミングを同じにする。

《4》報道内容や報道回数、放映秒数などで公平性を損なわないよう、民放連に細かな規制を設定させ、違反した場合の罰則も設ける(努力目標では意味なし)

《5》宣伝広告実施団体(企業)の討論番組へのスポンサード禁止

《6》ネットメディアへの広告出稿に関しても回数・金額の上限を設ける

◆彼らの「善意」や「公平性」、「正義感」などは全く信用していない

しかし上記のような資金規正を設けても、結局は影響力が強いテレビとネットメディアへの広告費集中は避けられないだろうし、そこに細かな規制を設けるのは相当困難だ。であるなら、思い切って「テレビ広告は全面禁止」にした方が一番スッキリすると思う。これは、一番影響力があるメディアが「資金力の差」によって歪むことを予め防ぐためだ。

私は原発広告によってTVメディアが原発ムラにかしずき、原発を批判するニュースを一切流さなかった歴史を知っているので、彼らの「善意」や「公平性」、「正義感」などは全く信用していない。だから広告費をゼロにし、その影響力が偏らないようにするのがベストだと考える。

だが、テレビCMをゼロになどという提案は当然、民放連の強い反対に遭うだろう。それだけでなく、上述したように圧倒的有利な状況にある改憲派が、みすみすその優位性を崩す法改正に応じる可能性も非常に低い。その場合、護憲派はどうすべきか。手遅れになる前に、動き出すべき時に来ていると思う。

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』

法務省、内閣官房が「テロ」の定義をしないまま法制化を進める共謀罪の真意

「共謀罪」──。なんともおどろおどろしい響きであるが、法務省によれば正式名称は「テロ等準備罪」ということに、今のところなっているようだ。2月28日の京都新聞は1面トップで「共謀罪」の全容が明らかになったと報じ、法案のポイントとして、
・犯罪を実行するために結合している「組織的犯罪集団」が対象
・現場の下見や資金・物品調達などの「準備行為」が要件
・死刑や10年を超える懲役・禁錮を定めた罪で共謀した場合の法定刑は5年以下の懲役・禁錮
を挙げている。また「犯罪実行前に自首した場合は刑を減免する規定を盛り込む」予定だという。要するに「チクれば罪を軽くしてやるよ」ということか。

しかし、それ以前に世間知らずの私は、「テロ」の正確な定義を理解できていない。「戦争」と「テロ」の違いは何か、「ゲリラ」と「テロ」の違いは何か、「集団リンチ」と「テロ」の違いは何か……。

◆法務省刑事局に「テロ」の定義を聞いてみた

そこで法案の作成にあたっている法務省刑事局に電話で聞いてみた。電話口に出たのはやや中京地域の訛りがあるアンドウという若い声の男性だった。

―― 「テロ」の定義や概念について教えてほしいのですが。
アンドウ氏 法務省は現段階で『テロ』の定義を持っていません。

―― え! 国会でこの法案については今法務大臣なども答弁されていると思うのですが。
アンドウ氏 まだ法案の作成段階なので、中身については決まっていません。

―― 新聞に「共謀罪の全容が明らかになった」と報道がありますが、まだ法案の作成段階なのですか?
アンドウ氏 まだ閣議決定をしたわけでもありませんし、法案を提出したわけでもないので……。

―― 閣議決定をしたわけではない、ということは法案の原案が出来上がっているということではないのですか?
アンドウ氏 そうですね。こちらでは詳しくわからないのですけれど。

―― この法案は議員立法ではありませんよね。ということは閣議決定待ちならば、もう提出予定の法案が出来ていないとおかしいのではないですか?
アンドウ氏 そうですね。

―― あなた、さきほどはまだ「作成中」だと言われましたが、間違いですね?
アンドウ氏 そういうことになりますね。

―― もう一度伺いしますが「テロ」の定義とはどのようなものでしょうか? 「テロ特措法」というのは既にあるわけですからその定義を教えて頂きたいのですが。
アンドウ氏 テロ特措法はこちらの管轄ではなく内閣官房の担当なので、そちらにお聞きいただく方がよいかと思います。

―― でも既に「テロ等準備罪」の原案は出来上がっているわけですよね?
アンドウ氏 そうですね。ただ、まだこれから変わる可能性もありますので。

―― 原案段階では国民に内容を開示して頂けないということですか?
アンドウ氏 まだこれから変わり得るものですので……

というわけで、「知らぬ存ぜぬ」の一点張り。でも「共謀罪」の原案がすでに作成されていることくらいは素人にもわかる。アンドウ氏は役職上、知り得なかったか、もしくは知っていても私には教えて頂けなかったかのどちらかであるが、新聞記者は詳細を知っているのだから、ふざけた話である。

しかし、驚いたのは「テロ」について法務省が「定義や概念を持っていない」と堂々と回答したことである。

◆内閣官房にも「テロ」の概念を聞いてみた

「テロ特措法」を管轄する内閣官房に聞いてくれと流されたので仕方なく内閣官房に聞いてみた。代表番号に電話をかけて「テロ特措法」を担当している部署につないでくれと告げると、かなり待たされたあとに、ドスのきいた声の男性が電話に出てきた。

「テロ」の概念を知りたい旨告げると、「それはこちらの担当ではなりませんね」という。「法務省に聞いたら内閣官房の担当だと言われたのでこちらに聞いたのですが」というと「『事態室』の担当でもありませんし、他省庁の担当ではないでしょうか」と回答が帰って来た。内閣官房には「事態室」なる部署が置かれていることを不勉強な私は知らなかったが、これはこれでまた驚いた。

◆「事態室」って何だ?

「事態室」は「周辺事態」=「周辺有事」=「戦争」を想起させる。念のため再度内閣官房に電話をかけて正式名称を尋ねたら「(事態対処・危機管理担当)付室」というそうだ。しかし不思議なことにこの「(事態対処・危機管理担当)付室」は内閣官房の組織図には掲載されていない。

別のページでは説明があるが、やはり怖い部署であることに変わりはないようだ。

役所で頻繁に経験する縦割り行政(あるいはそれをを盾に取った)による、責任転嫁、たらいまわしをされた挙句、予想通り「テロ」の定義や概念を行政機関から教えてもらうことは出来なかった。

これ「自体」が実に恐ろしいことではないか? 定義も概念も曖昧に「テロ」という言葉が使われているが、行政機関によれば「その定義はない」もしくは「どこかほかの省庁」しか知らないのだ。曖昧にして極めて高圧的な殺し文句である「テロ」。「テロ」の語感は決して、緩やかだったり、安穏としていたりはしていない。内容は不確かであるけれどもどこかに「のっぴきならない事件」、や「衝撃」の感覚を含んでいるように私は感じる。だから「テロ防止」といえば、大方の人が理由なく黙って従うのだ。

首都圏で電車やバスに乗れば、1年中「テロ特別警戒中です」のアナウンスが流れている。あれだ。毎日毎日「のっぴきならない」単語を聞かされているとそのうち耳が慣れてしまう。そして不確かな語彙に無感覚に従うようになる。

国自体が明らかにできない「テロ」は妖怪のような言葉で、どんな行為にでも拡大解釈できるだろう。法案の内容を論じる前に体がすくんでしまった。

◎[参考資料]「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
(朝日新聞2017年3月1日付より転載)

犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の全容が判明した。対象は91の法律で規定した277の罪。政府の分類では、「テロの実行」に関するものはこのうち罪にとどまる。277の罪名は次の通り。

【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等
【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿
【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等
【外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等
【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
【労働基準法】強制労働
【職業安定法】暴行等による職業紹介等
【児童福祉法】児童淫行
【郵便法】切手類の偽造等
【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
【競馬法】無資格競馬等
【自転車競技法】無資格自転車競走等
【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
【覚せい剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
【旅券法】旅券等の不正受交付等
【日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
【補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律】不正の手段による補助金等の受交付等
【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
【水道法】水道施設の損壊等
【銃砲刀剣類所持等取締法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
【特許法】特許権等の侵害
【実用新案法】実用新案権等の侵害
【意匠法】意匠権等の侵害
【商標法】商標権等の侵害
【道路交通法】不正な信号機の操作等
【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律】業として行う指定薬物の製造等
【新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法】自動列車制御設備の損壊等
【電気事業法】電気工作物の損壊等
【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
【公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
【著作権法】著作権等の侵害等
【航空機の強取等の処罰に関する法律】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】無許可廃棄物処理業等
【火炎びんの使用等の処罰に関する法律】火炎びんの使用
【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
【航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
【人質による強要行為等の処罰に関する法律】人質による強要等▽加重人質強要
【細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
【貸金業法】無登録営業等
【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】有害業務目的の労働者派遣
【流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法】流通食品への毒物の混入等
【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
【日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
【国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律】薬物犯罪収益等隠匿
【絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律】国内希少野生動植物種の捕獲等
【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
【化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
【サリン等による人身被害の防止に関する法律】サリン等の発散▽サリン等の製造等
【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【臓器の移植に関する法律】臓器売買等
【スポーツ振興投票の実施等に関する法律】無資格スポーツ振興投票
【種苗法】育成者権等の侵害
【資産の流動化に関する法律】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
【対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
【児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
【公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
【電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
【国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
【放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
【海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律】海賊行為
【クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
【平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

ともに思想家で武道家でもある内田樹と鈴木邦男が、己の頭脳と身体で語り尽くした超「対談」待望の第二弾!!『慨世の遠吠え2』
残部僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)

森友学園・塚本幼稚園の尋常でない表彰歴が意味するものは何か?

塚本幼稚園twitter(2013年2月18日)より
塚本幼稚園HPより

文部科学省初等中等教育企画課によると、塚本幼稚園ならびに籠井理事長が運営していた幼稚園関係者3名が文部科学大臣優秀教員に表彰されていたことが判明した。

そもそも文部科学大臣優秀教員表彰は2006年第一次安倍政権時代に発足した制度である。2006年は教育基本法が大幅に改悪された年でもあり、それに付随して導入された教育現場へのアメとムチともいえる。この表彰に当たっては文科省から全国の都道府県に推薦枠の割り当てがあり、国公立、私立学校(幼稚園から高等学校)別に人口比により推薦枠が割り当てられるという。私立学校については各県最低1名から大阪府では10名程度、東京都ではその倍程度の推薦枠が与えられているという。

塚本幼稚園HPより

森友学園(塚本幼稚園)の被表彰者は2008年と2012年に各1名、2008年には学校法人は違うものの籠井氏が理事長を務めていた「南港さくら幼稚園」(当時の名称)からも表彰を受けた人物がおり、実質的にこの問題にかかわった幼稚園教諭から3名が表彰されていたことになる。

文科省初等中等教育企画課によると、前述の通り私立学校への推薦枠は各都道府県1名から10数名とのことであるが、実際に推薦された人数は制度発足以来年ごとに、おおよそ40名前後であったそうだ。そうすると2006年の表彰制度発足から昨年までおおよそ400名の表彰候補者がいたという計算が成り立ち、その中から3名の「森友学園」関係表彰者が選ばれていたことになる。ちなみに受賞者のうち2名は2008年(自民党麻生政権時代)の表彰であり、残り1名は2012年(民主党野田政権から安倍政権へ移行した年)の表彰である。

単純計算で100倍以上の競争率をかいくぐり表彰を得ているのが「森友学園」の幼稚園教諭だということである。文科省初等中等教育企画課は「あくまで全国から推薦された先生を文部科学大臣が選考するものです」と回答してくれたが、文科省の方の口調は「森友学園」については突き放している印象を受けた。

瑞穂の國記念小學院HPより

どう考えても異常な割合だ。否、「異常な制度だから、当たり前」という人がいるかもしれないが、それにしても文科省をも包み込んだ1幼稚園(実質2幼稚園だが経営者は同じ)の受賞劇としては、あまりにも極端な数字にすぎるのではないだろうか。

2月28日森友学園に電話取材を行い「4月から瑞穂の國記念小學院は発足されるのでしょうか」と尋ねたところ「はい、認可を得ているので間違いありません」と電話口に出た女性は答えた。

認可は下りてはいない。現場で働く方のご苦労を考えながらも「安倍首相がんばれ! 安倍首相がんばれ!」と園児に洗脳教育を行っていた教育機関としては、当の安倍首相とともにしかるべき「責任」をとっていただきたいものだ。


◎[参考動画]福島伸享(民進)の質疑(2017年2月27日衆院・予算委員会)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《本間龍18》国民投票で何が起きるか(1)広告宣伝で与党が有利な8つの理由

2月13日、参院議員会館で「国民投票法の改正を求める会」の集会が開かれた。長きに渡り、世界各国の国民投票を取材されてきたジャーナリストの今井一氏が主催する会で、私も出席して意見を述べた。

法改正を求める、などというと何だか難しいことをやっているようだが、このままの国民投票法で投票を実施すると、あまりに不公平なことになるから法改正すべきだという提案で、要求は実にシンプルだ。

◆大抵の法案は通ってしまう与党絶対多数への危惧

2月13日「国民投票法の改正を求める会」集会の告知

国民投票法は2007年に施行された法律で、その実施は細かく規定されている。現状では、護憲派はまだ機が熟していないとして憲法審査会での引き伸ばしを図っているが、実際は国会発議に必要な3分の2以上の議席を与党(改憲派)が握っているのだから、現実的に言えば、明日国会発議があっても通ってしまう状況にある。秘密保護法もカジノ法案も野党は絶対阻止と言っていたが、成立した。与党が絶対多数を握っていれば、大抵の法案は通ってしまうのだ。

現行の国民投票法最大の問題点は、国民投票運動期間における広告宣伝に関して、「投票日から14日以内のテレビCM放映禁止」以外は、ほぼ何の制約もないことにある。

広告宣伝に投入できる資金の縛りすらない。つまり、カネのある方は期間中無制限に広告宣伝を打てるのに対し、そうでない方はメディアで何も主張できないことになる。

◆衆参選挙の対メディア宣伝費はおよそ100億円

もう少し具体的にいうと、国民投票が国会で発議されると、そこから最低60日、最長180日間の「投票運動期間」となる。衆参の選挙運動期間が約2週間なのに対し、かなり長い。そしてこの運動期間中、賛成・反対派共に、あらゆるメディアで無制限に広告を展開できることになっているのだ。

ちなみに、衆参の選挙でメディアに投入される宣伝費は100億円程度(選挙公営からの拠出の他、各政党独自の広告費を含む)であるから、少なく見てもその4~5倍のカネが投入されることになるだろう。

このように書くと、改憲派・護憲派双方が自由に宣伝合戦できるならいいではないか、と錯覚しがちだが、ことはそんなに単純ではない。なぜなら、予想される国民投票は与党(自民・公明)が主導し、好きなようにスケジュールを組み立てられる。つまり、広告宣伝における「メディア戦略」を早くから構想し、自分たちに一番都合の良いように展開できるからだ。では具体的に、どのようなことが起こり得るのか列挙してみよう。

《1》 改憲派は自民党を中心に結束して宣伝戦略を実行し、最初から電通が担当することが決まっているのに対し、護憲派はバラバラで何も決まっていない。改憲派は国会召集以前から周到なメディア戦略を構築することが可能である。

《2》 改憲派は国会発議のスケジュールを想定できるのに対し、護憲派はあくまで発議阻止が大前提のため、国会発議後にようやく広告宣伝作業を開始する。この初動の差が非常に大きい。

《3》 改憲派は自民党の豊富な政党助成金、経団連を中心とした大企業からの献金を短時間で集めて広告宣伝に使えるのに対し、護憲派は国民のカンパが中心となると思われ、集めるのに時間を要する。さらに、集まる金額も桁が違うことが予想される。広告代理店とメディアは支払い能力の有無を厳しく査定してから広告を受注するので、ここでもタイムラグが生じる。

《4》 改憲派は電通を通じて発議までのスケジュールを想定して広告発注を行い、TVCMのゴールデンタイムをはじめあらゆる広告媒体(新聞・雑誌・ラジオ・ネット・交通広告等)の優良枠を事前に抑えることが出来る。その際、電通は「自動車」「家電」などのダミーネームで広告枠を抑えるため、護憲派は察知できない。発注が遅れた護憲派のCMや広告は、視聴率などが低い「売れ残り枠」を埋めるだけになる可能性が高い。

《5》 もし投票日が発議後60日後の最も短い期間になった場合、改憲派は事前準備して発議後翌日から広告宣伝をフル回転(広告を放映・掲載)できるのに対し、護憲派がTVCMなどを放映開始できるのは(制作日数を考慮すると)どんなに早くても2~3週間後となり、その間は改憲派の広告ばかりが放送・掲出されることになる。この初動の差を埋めるのは至難である。さらに週刊誌や月刊誌などへの広告掲載は既に優良枠を買い占められて、ほとんど何も掲載できないまま投票日を迎える可能性すらある。

《6》 改憲派は雑誌関係でも国会発議予定日に照準を合わせ、「国民投票特集」のような雑誌タイアップ本、ムック本・新書・単行本の企画・発売を計画できるが、護憲派にそんな時間的余裕はなく、書店店頭は改憲派関連書籍によって占拠される。

《7》 改憲派は豊富な資金に物を言わせて大量のタレントを動員し、出演者が毎日変わる「日替わりCM」も制作可能。老若男女に人気の高いタレントや著名人をターゲット層に合わせて出演させ、「改憲YES!」「改憲、考えてみませんか」と毎日語りかける演出が出来る。

《8》 改憲派は国会発議のスケジュールに合わせて自前の番組枠を持つことも可能だ。MXテレビの「ニュース女子」のように、スポンサーが資金を出して制作プロダクションに番組を作らせ、テレビ局に持ち込む方式にすればよい。国会発議後、民放深夜枠やBS・CS放送の時間枠を買い切れば十分可能。

というように、初動の遅れが護憲派に壊滅的打撃を与える可能性が非常に高い。仮に護憲派が相当な資金を集め得たとしても、それを使う場所が全て事前に抑えられていたら、どうしようもないのだ。総金額で同じ広告費を投入しても、視聴率の低い時間帯にいくらCMを流しても無駄だし、購読率の低い雑誌や新聞の広告枠をいくら大量に買っても、やはり意味がないのである。

さらに、ことは広告宣伝だけに止まらない。巨額の広告費投入は、クロスオーナーシップで構成される日本の報道現場にも、大きな影響を与える可能性が高い。そこで何が起きるのかは、次回で解説しよう。

▼本間龍(ほんま りゅう)
1962年生まれ。著述家。博報堂で約18年間営業を担当し2006年に退職。著書に『原発プロパガンダ』(岩波新書2016年)『原発広告』(亜紀書房2013年)『電通と原発報道』(亜紀書房2012年)など。2015年2月より鹿砦社の脱原発雑誌『NO NUKES voice』にて「原発プロパガンダとは何か?」を連載中。

『NO NUKES voice』第10号本間龍さん連載「原発プロパガンダとは何か?」新潟知事選挙と新潟日報の検証!
タブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』