前人未踏「プリズンコンサート」400回──Paix2(ペペ)の旅はまだまだ続く

取材を受けるPaix2の二人
Manamiさん
Megumiさん
千葉刑務所での400回記念公演を終えて深々とお辞儀をするPaix2の二人

今回の取材は東京都内からワゴンでコンサート前日に千葉刑務所で設営と音合わせを行い、同日の夕食もご一緒させて頂いた。お二人はアルコールは嗜む程度にしか召し上がらないが、食欲は旺盛であった。

TVのインタビューや記者会見で2日の間に彼女たちが何度も強調していた言葉は、
「プリズンコンサートをするからには、『良い心のスイッチを押す』ことをしないと、やっている意味がないなと思いながらいつもステージに上がっています。ステージに上がるからには何かが皆さんの心にとどまって、社会に出る良いきっかけになるものをやらなければ意味はないなとずっと考えています」(Megumiさん)

「規則の中で思いを伝えていかないといけないので1時間ですけどエネルギーは凄く使うんですね。だから終わったあとは、いい意味でかなりの疲労感がありますね」(Manamiさん)

「言葉は出せないので、表情からよみとるしかないんですけど皆さんの表情の中からその人の人生を垣間見ることがあって、貴重な体験をさせて頂いているんだなぁと感謝の気持ちがあります」(Manamiさん)

「プリズンコンサートは心のキャッチボールやっている面があるので、皆さんの表情を見ないと、どういう言葉をかけたらいいのかわからないんです。最初の頃は皆さんも緊張感があるから、こちらも固くなっていたんです。でも回数を重ねるうちに皆さんの表情を読み取ることができるようになって、こちらにも余裕が出てきたのでコンサートが終わる頃には皆さんの表情が変わるのが感じられるようになりました」(Manamiさん)

「ステージに立っていると、そこから話しかけただけでも『上から目線』な距離感になるんです。それを無くすためにコンサートの中だけでも同じ気持ちになれるように心がけています」(Manamiさん)

ステージ上の二人は歌うだけでなく、語りも交え、しかも刑務所ならではの用語(報奨金、領置金、願箋)を交えたトークで場を和ませる。そして必ず鹿砦社から出版された『逢えたらいいな』に収められた、受刑者の家族からのメッセージが読み上げられる。内容から察するに、かなり重い罪を犯した受刑者の娘さんが初めて父親の面会に刑務所を訪れた際のエピソードだ。このエピソードを通じて受刑者の皆さんに、社会へ出ることの心の準備や、再犯を犯さない気持ちを喚起したいとお二人は考えているそうだ。

「400回は長かったような気もしますし、あっという間だった気もします。最初は30回が目標だったんですが、それが50回、100回となって。でも初期から回数だけを目標にはしていなかったのが良かったのかと思います」(Manami)

「はじめて1年くらいした時に、私たちの第一回のコンサートを見てくださった方が、出所されて、手紙を持って見に来てくれたんです。それでわざわざ会いに来てくれる下さったことで、ただ楽しませるだけじゃだめだと思って、メッセージをより込めるようになりました。感想文を頂きますが、それ以外に被害者の方からもメッセージを頂くことがあります。その中で私たちも色々考えて伝えるメッセージどうしたらいいか、追っかけて来ました」(Megumi)

Manamiさん

Manamiさんは刑務所の施設や建物に詳しい。「奈良少刑(少年刑務所)は立派な建物だけど、来年で終わりになるんですよね」、「ある県の刑務所は署長さんがとても優しい方でしたが、施設管理が緩くって、これで大丈夫ですか?とお話していたら、そのあと脱走がおこっちゃって……。ちょっと気の毒でした」。

膨大な訪問経験がそうさせるのか、一目見て施設の弱点を見抜くのだからManamiさんの眼力は専門家並だといえよう。

Megumiさん

Megumiさんはハードよりも人間や各地で起こったことを詳細に記憶(記録も)している。刑務所内の人間関係や雰囲気についての洞察が深く、Paix2二人の記憶と印象を合体させると、全国の刑務所像についての立派な論評ができあがる。事実刑務所に勤務する方、あるいは法務省関係者でも全国全ての刑務所への訪問経験のある方は彼女らをおいてはいないだろう。

今回の取材を通して印象的だったのは、彼女たちのハードワークと、ハートワークだ。限られた時間と規則の中に彼女たちが重ねる思いを詰め込む作業は、常人にはまねることのできない「荒業」ですらある。

そんな緊張感の逆にこんな本音があった。コンサート前日設営を終えて、音合わせをするお二人を、お手伝いの刑務官の方々が体を揺らしながら見ていた。

「こういういイベントは貴重でしょうか」と聞くと、
「いやー自分は大ファンでしてね。楽しみで楽しみで(この間表情崩れっぱなし)。2年ぶりに逢えて本当に嬉しいんですよ。自分は刑務官向いてないのかもしれません」。
「『受刑者のアイドル』と言われていますけど刑務官にはファンがたくさんいます『刑務所のアイドル』です」
私たちにもめったに見せない刑務官の方々の笑顔は、底抜けに明るかった。

最後列には車椅子の受刑者の方々もいた

コンサートを終え、ワゴンに乗り込み東京に向かって出発したのは13:00をまわっていた。当然皆さんお腹が空いている。千葉刑務所近くのファミリーレストランで昼食をとることになった。食事をはじめてほどなくManamiさんが切り出した「終わったから言いますけど、昨夜から熱があって、今朝も38度くらいあったんです」、「え!」と片山マネージャーと私は声を挙げた。

しかし、さすがというべきか、看護師の経験と資格を持つMegumiさんは常備している薬の中から適切な薬をManamiさんに朝服用させていたそうだ。「飲んだのが8時だから、そろそろ切れてくる時間だね。一応風邪薬も飲んでおいて」と漢方薬を手渡す。食後ぐったりするManamiさんの姿を見て「インフルエンザじゃないでしょう。インフルエンザならこんなに落ち着いてないはずだから」。見事なチームワークだ。

 
 

12月13日17:00から法務大臣による表彰が行われた。大臣室で金田勝年法相は彼女らの到着を待つ間に「『元気出せよ』は何年の発売だったっけ?」と、法務省職員に問いかける。「大臣お詳しいですね」と声をかけると、「代表曲だから知っとかないと失礼にあたるからね」とかなり詳しいご様子だ。

職員の方が彼女らの到着まじかになると、インストロメンタル版の「元気出せよ」を小音量で流し始めた。お堅い印象の法務省の表彰式にしては、粋な優しい心づかいだ。

正装したPaix2のお二人が大臣室に入室して早速表彰が行われた。大臣表彰などそうそう経験するものではないだろうが、実はPaix2にとってはこれが3回目でお二人も堂々とした様子だった。

Paix2の前人未踏の旅はまだまだ続く。「プリズンコンサート」から「矯正」の大切さへの周知をも視野に入れた活動は、大きな歓声や派手な観客のアクションのない中、受刑者の心の中に輝きをともし、感涙を誘う。地道な偉業には頭の下がる思いしかない。

 

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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ASKAさんのドライブレコーダー映像を流出させたタクシー会社の反社会性

タクシーに安心して乗れる日は来るのだろうか? 11月28日、歌手のASKA(58)が覚せい剤取締法違反で再び逮捕された(12月19日、不起訴処分・釈放)。その際にワイドショー等で報道されたタクシー内のドライブレコーダー映像はいまだに注目を浴びている。ネット上をはじめとして「映像流出は乗客のプライバシー保護の点で問題だ」との批判が噴出している。

三陽自動車交通HPに掲載された「お詫び」

件の映像を流出させたのは三陽自動車交通株式会社(東京都江東区)である。同社は取材に対し「担当者が不在で対応できない」とのことだったが、同社が所属するタクシー会社加盟団体チェッカーキャブは取材に応じ、「ドライブレコーダーは乗務員が見たり持ち出したりできるものではなく、会社の役員レベルが複数人で取り扱うものです。なので、今回の件は会社ぐるみだったと言って間違いありません。詳しい経緯が明らかになった後、映像流出に対しグループとして同社を厳罰に処す予定です」と語った。

タクシー会社全体の質に疑いの目が向けられかねない今回の事態。全てのタクシー会社が危険、というのは暴論にも思える。しかし一部のタクシー業界関係者には反社会的な面もあるようだ。暴力団事情に詳しい、作家の影野臣直氏は語る。

「ヤクザを辞めてタクシー運転手になる人は多いですよ。この前もたまたまタクシーに乗った人が元ヤクザでした。関西方面にはよく元ヤクザのタクシー運転手に出くわします。まあそんなに堅気の上司と顔を合わせることもないし、時間も選べるので元ヤクザには向いているのでは? 映画『仁義なき戦い』でもタクシー会社を経営しているヤクザが出てきましたのでやはり歴史的なものがあるでしょう」

乗り込んだタクシーの運転手が元ヤクザということはあり得るわけだ。過去には元ヤクザのタクシー運転手がタレントを脅迫したという事件も実際にあり、恐怖感はぬぐえない。またASKA逮捕報道の際に流れた映像で明らかになったように本来、安全なタクシー運行のため設置されているドライブレコーダー映像が、カップルのエッチ画像の流出など別の用途で使われることもあるから危険だ。

一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会は「今回の報道でタクシー業界に厳しいご意見が寄せられていることは承知しています。ただ大多数のタクシー会社は適正な業務に従事しています。お客様に安心してタクシーを利用していただけるよう一層邁進していくのみです」としている。タクシー業界全体の一刻も早いイメージの是正が待たれる。

(伊東北斗)

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千葉刑務所でPaix2(ぺぺ)プリズンコンサート400回記念公演を密着取材!

千葉刑務所を囲む高い壁
千葉刑務所正門に到着
千葉刑務所に入るPaix2のワゴン
テレビクルーと共にステージに向かう

刑務所を中心とした本格的な「プリズンコンサート」を2000年から継続してきたPaix2(ペペ)が12月10日、千葉刑務所で400回目の偉業を達成した。

かねてよりPaix2の活動に共感し彼女らの著作『逢えたらいいな』を出版していた鹿砦社は、関係各氏のご協力を得て、今回記念すべき400回目の「プリズンコンサート」に密着取材の許可を得た。

12月9日、片山マネージャーがハンドルを握るワゴンに都内から同乗させて頂き、翌日の音響設備設定とリハーサルを行うべく、千葉刑務所に向かう。助手席にMegumiさん、運転席後ろの後部座席にManamiさんが座るのが定位置だそうだ。

よほどのことがない限り、片山マネージャーがハンドルを握るが、どうしても眠い時は運転をManamiさんに変わることもあるという。これまで全国すべての刑務所を訪れ、総走行距離は120万キロを超えるそうだ。重い機材の積載と長距離の走行で車の消耗も激しく、現在のワゴンは4台目だ。

Paix2が千葉刑務所で「プリズンコンサート」を行うのは今回で5回目だ。千葉刑務所の壁面が見えてくるとManamiさんが「あ!ここ」と小さく呟いた。「やはり現場に着くと気持ちが変化しますか」と伺うと「そうですね。やっぱり気持ちが入りますね」と笑みを浮かべる。正面入口にワゴンが到着すると、明治40年に建てられた煉瓦造りの中央の柵が開き敷地内に通された。

刑務官の方々が左右から「お疲れ様です」「よろしくお願いいたします」と声を掛けて来る。

Paix2が刑務所、法務省関係者の間では既に「特別な存在」と認知されていることが、正門での応対からも伺えた。とは言え、刑務所内に通信機器(携帯電話やパソコンなど)は持ち込めないので、全員が携帯電話を門衛所に預ける。

会場となる体育館近くに駐車したワゴンに、刑務官の方々が台車を次々に押しながらやって来る。ワゴンは4人乗って快適な広さがあったけれども、その後ろにはアンプ、スピーカー、ミキサーなどコンサートで使われるすべての機材が搭載されていた。しかもそれらは寸分の隙間もなく空間を残さずに詰め込まれているので、一見するとそのような大量の荷物が載せられているようには全く見えない。

片山マネージャー、Paix2のお二人は刑務官の方々の手助けを部分的に得ながらも、三人で設営を進めてゆく。物理的かつ技術的にも目配りしなければならない緻密な重労働を限られた時間でこなしてゆく。私も何かお手伝いをしたいと思ったが、彼女らの驚嘆すべき手際の良さと、緊張感に圧倒され、ついに声をかけることができなかった。

設営後は音あわせとリハーサルも行わなければならない。Paix2の活動が単に400回という数字以上に、いかに激烈なものであったのかを設営の場面からも痛感し、そのパッションに圧倒された。会場最後部に設けられたミキサーや調整機材が置かれた机の複雑な配線を終えると、片山マネージャーの合図でリハーサルが始まった。翌日のコンサートで演奏される楽曲の順番にそって、ギターやマイク、音響のバランスをステージ上の二人は短時間で手際よく確認してこの日の作業は終了した。

本番前ステージ上の二人
受刑者の方々を前にいよいよ開演
400回記念公演を祝うパネルを背に歌うPaix2

翌12月10日はホテルを7時半に出発だ。事前にテレビ朝日とフジテレビから取材の要請があり、テレビのクルーがホテルの入り口に控えている。彼女たちがホテルを出てワゴンに乗り込むシーンから撮影を始める。私を含めた関係者はタクシーに乗りワゴンの後を追う。15分ほどで千葉刑務所正門に到着した。

既に取材許可は下りているので、この日は千葉刑務所に用意していただいた控室に通される。コンサート前の意気込みや、この日にかける気持ちをテレビ取材陣は質問するが、Paix2のお二人は、特に400回という数字に大きな思い入れはない様だ。というのも実は400回目のコンサートというのは、正確な数字ではない。過去に何度も同じ日に2回、3回のコンサートをこなした経験が彼女たちにはある。しかし、同日に複数回のステージをこなしたものも「1回」としかカウントしていないので、正確にはコンサート自体の数は400回を大きく上回る。

通常のコンサートは1時間から1時間半だが、彼女たちはその中に全精力を注ぎこむので、2回、3回のステージをこなしたあとは、気を失いそうになるほど心身のエネルギーを使い果たしたという。また刑務所の講堂や体育館には、ほとんど冷暖設備がない。そこに多い時には1000名以上の受刑者の皆さんがぎっしり席を埋めるので、夏期は当然猛烈な暑さとなる。だからPaix2は7月から9月の間には受刑者の方の体調も考慮してコンサートを行うことは控えているという。

コンサート開始午前10時が近づいて来たので、Paix2をはじめわれわれ取材陣も控室から会場の体育館に移動する。刑務所の中は建物の出入り口が必ず施錠されているので、いくつもの開錠、施錠を繰り返し、ようやく体育館に到着する。天気は快晴だ。会場後ろの入り口から入場すると、すでに受刑者の方々が着席している。この日取材陣が撮影を許可されたのは、会場最後部からだけだった。

午前10時になると、刑務官の方が注意事項を口頭で伝え、ステージに降りていた幕が上がり1曲目『いのちの理由』からコンサートが始まった。

通常、刑務所の慰問やコンサートで、受刑者の方は曲のはじめと終わりの拍手以外は一切の動きを禁じられている。横を向いてもいけないし、肩より上に手を上げることも禁止されている。もちろん私語は一切禁止だ。ちなみにこの日も受刑者の方はコンサート開始の直前まで、全員目を閉じるように指示を受けていた。

「元気出せよ」を歌い始めると、刑務所内では通常、許されないアクションが起る
400回記念公演の幕が閉じる
刑務所長から感謝状授与されるPaix2の二人
感謝状を手に

1曲目が終わるとManamiさんが「皆さん!おはようございます!」と観客席に声をかける。観客席からも「おはようございます」と控えめな声が上がる。本来「こんにちは」であっても私語に該当するので、厳密には許されないのだが、Paix2は前述の通り千葉刑務所だけで5回、トータル400回以上の活動実績があるので「特別」に挨拶や手拍子が許されるのだ。

ちなみに千葉刑務所は初犯で懲役10年以上の受刑者の方が収容されている施設だ。無期懲役の方も収容されている。だから受刑者の方の中にはPaix2を見るのが5回目という方も少なくない。

Manamiさんは「ちょっと元気ないですね。もう一回。皆さん! おはようございます!」と再度観客席に声をかける。先ほどよりかなり大きな「おはようございます!」の声が上がる。受刑者の方の中には初めてPaix2のコンサートを聴く方も当然いるので「私語」についての特別扱いが受刑者の皆さんに認識されると、徐々に拍手や手拍子も大きくなる。

この日のコンサートでは合計9曲をPaix2は歌い上げ、大拍手の中で成功裏に記念すべき第400回目、節目のコンサートは幕を下ろした。終了後控室に戻ったPaix2のお二人に朝日新聞、毎日新聞と私が20分ほどインタビューを行い、次いで、テレビ朝日、フジテレビの順でインタビューが続いた。

その間受刑者の方が退場した体育館では、あの膨大なPAやミキサーなどの後片付けを、片山マネージャーがお一人で完了していた。改めてその体力と手際の良さに驚かされた。

私は12月9日の東京出発から10日コンサート終了後東京帰着まで同行させていただいた。2日間で普段は見られないPaix2の活動のすさまじさと、人柄に接することができた。そして実はコンサートの最中にハプニングが起こっていたことを帰路知ることになる。詳細は次回報告しよう。

Paix2(左からManamiさん、Megumiさん)と二人を支える片山マネージャー(右)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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日本にもあるIS(イスラム国)の募集事務所

ある気楽な集まりで顔見知りの市議会議員が難しい顔をしている。
アルコールが入っているせいか、ポロリともらした。
「××の裏に中東物を扱う雑貨店があるだろう?」
そこがIS(イスラム国)の日本拠点だというのである。野党系の市議会議員である。

だが、なぜにそう難しい顔をしているかと問うと、
「選挙に利用できないか、考えている」のだった。
しかし、ISとなれば国際的なテロ組織だ。本職、つまり公安や、警察がほっておかないだろう。
関わりを持つのはまずい。

「この話も警察から流れてきた話だ。だからこそ、いまのうちなんだ」
本音は次の統一地方選選挙で敵対候補を潰したい、と言うことらしい。
敵対候補がISと繋がりがあると噂を立てられれば、次の選挙は勝てる。

店の地権者が対立党の関係者だというのまでは調べがついた。
そこで地元の市議氏におはちが回ってきた。
が、そこから先、どう持っていくべきか判らない。
その時の話はそのまま終わった。

特定のテロ団体が、他のテロ団体の『仕事』を請けおうことがある。いわゆるテロネットワークである。
テロ団体といえども活動資金は必要である。金で仕事を請けおう。
テロ団体同同士が利害が一致する場合もある。

たとえば、9.11テロを起こしたアルカイダは反米イスラムテロ組織である。
アルメニア革命軍は南米を拠点に反米活動を続けている。
これらは主義主張はまったく異なるが「反米」という目的は一致している。

現在、アメリカに入国する場合、アラブ系人種は警戒される傾向にある。
一方、南米のラテン系人種はアラブ系より入国しやすい。
そこで、テロ組織同士が協力し合い、活動を行う。

ISに限らずテロ組織は常に協力者を求めている。
こうした募集事務所は世界中に存在する。海外での工作要員として外国人も多く必要だからだ。

話は戻って市内の雑貨屋、しばらくして店を畳んだ。
市議氏は何も言わないし、問いかけても答は返ってこないだろう。
内偵が入って秘密裏に消されたのか、場所を変えたのか、なにも判らない。
その店はいまは中華系の輸入商品店となっている。
この例は氷山の一角にすぎないが、政治家がISとなんらかの接点を持っているのは明らかだ。

(伊東北斗)

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「取締り」という冤罪からわが身を守ったAさんからの続報

例の警察と戦う投稿(2016年4月21日掲載記事)の続報がAさんから届いた。掲載の許可が出たので以下、報告する。

◆軽微な違反であれば警察の裁量で終わりにできるよう導入された反則金制度

しばらくして検察庁から呼び出しが来ました。交通違反も殺人や強盗、窃盗と同じ犯罪ですから検察官の取調を経て裁判、刑罰、となるわけです。もっとも、 取調の様子はテレビなどで見る取調室とはだいぶ違います。指定の時間に待合室に入り、検察官に隣の部屋に呼び出されます。隣室とは言えドアもカーテンもな いすっ通しです。

同じ一室で何人もの取調を同時に進めています。一対一で簡単な説明を受けて「正式裁判にするか、略式裁判にするか」決められます。略式裁判は検察官の主張する金額の「罰金刑」を受け入れる物で、その場で判決が下され、翌日以降の指定日までに納入します。

昔はどんな些細な違反も検察庁の取り調べを受けて裁判、だったそうです。ですが、これでは検察も裁判所もパンクしてしまう。そこで取り入られたのが軽微な違反であれば警察の裁量で終わりにできる現在の反則金制度です。(ちなみに反則金を拒否することもできます。この場合、略式、正式にかかわらず 反則金と同額の罰金が科せられます)。

◆「裁判になると大変だよ」というのは被疑者なく、警察官自身が大変だから

本当に裁判ともなれば警察も本格的に書類を準備して、裁判所の法廷を確保して、裁判官も時間をかけなければなりません。警察が「裁判になると大変だよ」というのは被疑者はなく、警察官自身が大変なのです。

正式裁判と、反則金の間に位置するのが「略式命令」ないしは「略式起訴」という私が受けた措置です。。

検察官はしきりに「略式命令」を進めてきますがこちらは「不起訴がいい」を繰り返します。その場で結論が出ず、もう一度、検察庁へ足を運び、三度目の呼出には「そちらから来てください」と返事しました。しばらくして電話すると「起訴猶予」となっていました。罰金措置はないのです。あっけにとられるほど簡潔で、かつ、予想外の結果でした。

◆行政処分の時効は「前回の処分が終わってから三年」

しかし、ここから先がまた長いものになりました。今度は試験場から「免許停止にする」とのお達し。こちらも異議を唱えに出向きます。起訴猶予なのに免停とはおかしい、と告げると担当警察官は「刑事処分と、行政処分は別だ」との答え。調べ直すと実際に別処分で行政処分は役所が裁判所の判断を待たずに被疑者を処罰できる処分でした。

いずれにせよ「それは違憲ではないか」と反論、別室、と呼ばれる事務所で怒鳴りあいになりました。他にも事務を執っている人が大勢いましたが、このような事例は珍しいらしくかなり驚いていた様子です。

この呼び出しも数度、一度は「免許を出せ」と言われ、担当者の目の前に突きつけ自分のポケットに戻し「あなたが正しいなら、私の免許証はここに あります。ここから持っていったらどうですか」とやりましたが、ポケットや荷物を検査するには検察庁の捜査令状が必要です。担当者は悔しそうに「あなたの 免許、手配がかかってますよ」と告げられましたが、こればかりはいまだにどうなっているのか、判りません。こちらはちゃんと任意出頭しているのですから、 文句をつけられる筋合いはありません。

ここまでの文章で激しいやり取りがあったように思えるかも知れませんが、実際に大声を張り上げるほどだったのは最初の一回だけでした。担当者 (一貫して同じ人でした)は私が引かないのも判っていたようですし、こちらも向こうが単純に事務処理として進めようとしているのが判っているからです。

しばらくたち、要請が途絶えました。三年経って免許更新に行くと違反者講習もなく普通に更新されました。時効として処理されたのか、ないことにされたのかは不明です。いまでは後者ではないかと思います。行政処分の時効は「前回の処分が終わってから三年」だからです。

◆罰金も免停もなくなった

罰金に続いて、免停もなくなりました。

こうかくと「巧くやりやがったなぁ」と思われるかも知れませんが、実際はかなりの重圧で、素直に認めてサインした方がはるかに気楽です。何とか耐えられたのは「自分はウソをついていない」という自信があったからでしょう。

警察や裁判官も人の子で、やはり楽をしたいのです。彼らに有利で、かつ、楽ができるのは真実ではなく、嘘をついてでも違反を自白させることなのです。

確かに昔に比べると交通違反取締りは現実に即した内容になってきました。昔は生活道路、高速道路上区別なく25キロオーバーで免許停止だったのです。ですが、いまはわずか一点です。分別されています。

本当に真面目なおまわりさんもいます。ですが、ノルマ稼ぎや楽をしたいがために手を抜くのも事実なのです。

また投稿が来たら掲載する。戦いはまだ続くようだ。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。

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ハニートラップから暗殺計画まで掃いて捨てるほどあるトランプ大統領失脚工作

◆仕掛けられたハニートラップ

米大統領に当選した共和党で不動産王のドナルド・トランプ氏は、今まで選挙中に批判していた民主党関係者や海外要人が祝福にかけつけるなど「手の平返し」が相次ぐ。が、早くも「不利益をこうむる連中」や「反対派」から“ハニートラップ”が縦横無尽に仕掛けられる可能性がある。

2016年10月9日ABC

「なにしろトランプ氏は女性好き。選挙中にも『テレビ司会者時代にキスされた』という女性や『不動産王として、土地の売買の商談中にベッドに誘われた』などという噂が山のように出てくる。きわめつけは、支持率の低下につながった05年、『スターなら女性はなんでもしてくれる』というテレビ番組司会時代の“女性蔑視、性欲むき出し発言”です。これにはアメリカの女性人権団体が訴訟の動きをみせたほど」(通信記者)

この『スターなら女性は……』の発言は、トランプ氏が「ロッカールームでの発言」として逃げ切りをはかったが、「ロッカールームでそんな話はしない」とプロ野球選手やMBPプレイヤーが怒りとともに否定。

高田馬場の英会話喫茶にいたアメリカ人商社マンも「トランプをおろすのは簡単。美女を送り込んで不倫の誘惑を繰り返せばいつか引っかかる」と話す。こうした見方は全米共通。
「いつブックメーカーがトランプが女性で失脚するかオッズを出してもおかしくない」(アメリカ人ジャーナリスト)

さらに、2005年の米NBC番組収録前に司会者と交わした会話を録音したものをワシントン・ポストは入手。「既婚女性とセックスしたい」と言い、「他の女性にキスしたい、女性器をわしづかみすればいい」などと、赤裸々な言葉遣いで話しているというこの会話も決定的に女性の軽蔑を払拭できていない。

◆「女の誘惑に弱い」トランプ

この「女の誘惑に弱い」のはトランプ氏の最大のウィークポイント。
「TPPから撤退する」と発言、不利益をこうむるバイオ系食品会社、「この国に入国させない」としたメキシコ企業や、そしてヒラリー・クリントン候補がボロ負けして急心力を失う民主党の行動派などから「美人スタッフを刺客として送り込み、ホワイトハウスで大スキャンダルを起こす可能性もある」(同)

対外的な政策をやめることにより、貿易面で打撃を受ける外資系会社もわんさかとあり、トランプ氏に送り込み、ベッドインさせて弱みをにぎり、大統領から引きずりおろす「工作」はいかにもスピーディに行われそうだ。

こうした「陰謀コーディネーター」は米には掃いて捨てるほどいる。
「同胞である共和党幹部や議員からは祝福の声が殺到しているが、組閣していくうちに、たとえば副大統領候補のマイケル・フリン元国防情報局長が、組閣してみたら閑職にまわされたりしていたら、“大統領おろし”のリベンジが始まるかもしれない」(同)

有名タレントや政治家に、画面上での立ち振る舞いをアドバイスするメディア・トレーナーは「行動をガラス張りにすること。それが大衆に嫌われない最低の条件だ」と話す。

経済が鈍化、苦しむ庶民の事情につけこんで「モンロー主義」をぶちあげて内需拡大をめざして当選したトランプ氏が、側近の女性に手をつけないとは否定できない。性欲の『内需拡大』が止まるかどうか、見ものだろう。

◆メキシカンマフィアが暗殺計画

トランプ氏は、11月13日に放送されたCBSテレビのインタビューで、大統領選の公約通り「メキシコとの国境に壁を築く」とあらためて強く考えを示した。また、犯罪歴のある200万~300万人の不法移民を、速やかに強制送還する考えも強調した。

「このことは、〝強い〟アメリカを再構築するのに強固なメッセージとなりうるだろうが、いっぽうでメキシカン・マフィアのトランプ暗殺計画がたちあがってきた。もっとも勢力を持つといわれるマフィアは『もしドラッグの利権や大麻利権に手を突っ込んでいくなら『魚にする』(死んでもらう)と明確に幹部たちが発言している。つまりトランプ氏は『メキシコと構えるからには、海に浮かんだで〝魚になる〟可能性が高まったというわけですよ』(在米ジャーナリスト)

メキシカンマフィアを駆逐したところで、その黒いマーケットを埋めるのは、実は国内のアメリカンマフィアだが、これとてもとをたどれば中国系だったりイタリアン系だったりする。いずれにしても犯罪は消えないのだ。

「ただし、今はトランプ次期大領にとって正念場で、移民系のマフィアを一掃した場合は、今度は海外の金持ちがシンガポールやベトナムからの投資を引き上げて、国内の多少、うさんくさい企業であっても『移民系マフィアがけつもちとして去ったのならと投資先として考え直してくれるかもしれない。いまは投資家たちを振り向かせるならチャンスなのです』(同)

マネーロンダリングしていた金持ちたちが国内市場に目を向ければ、確かにGDP成長率が鈍化している米経済が活性化しているだろう。

「しかしどうだろう。バイオとうもろこしを輸出した〝モンサート〟に代表されるように、アメリカの最先端の企業は、国力にいわれて強引に海外に商品を購入させてきた。いっせいに海外の取引先がひいて、はたして国力がもつかどうか」(同)
トランプの描く「移民追い出し策」が何をもたらすのか。注目したい。

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鹿児島、福島、TPP──〈弛緩し尽くした社会〉の行方

不幸なことに私の予感は的中してしまった。11月28日の時事通信は〈三反園鹿児島県知事が事実上容認=川内原発、検査後の再稼働〉との見出しのあと以下の様に伝えている。

 
2016年11月28日付時事通信

 
要するに選挙では「再稼働を認めない」と公約しながら、180度主張を翻し、再稼動容認に早くも転じたわけだ。以前このコラムで三反園知事と三宅洋平を並べ、ボロクソに論じたが、三反園は私の予想を超える速度で「馬脚を現した」わけだ。私は「どうだ見立てが当っただろう!」と自慢をしているのではない。ああ、やっぱりと落胆しているのだ。このニュースが報じられたのは、福島第一原発事故の収束費用が当初の倍近い20兆円かかるとの報道がなされたのと同日であった。 

 
2016年11月27日付毎日新聞

 
◆「時代は狂っている」

公約を掲げた候補に投票しても、当選後公約を変えられたり、ひどい場合は所属政党を変えたり、政治家は誠に節操がない。おそらくこの病巣には何らかの懲罰でも設けない限り、対処不能だろう。また、11月28日の朝刊では安倍内閣の支持率が6割をこえたとも掲載されている。1年で一番暇なはずの11月だが、新聞紙面で報じられている内容は尋常ではない。むしろ「狂っている」。もうどんな約束もどんな嘘も、どんな規範も意味のない時代になった。私はかなりの確度で上記のニュースが並列される新聞を見て確信する。「時代は狂っている」と。

あれほど明確に反対を掲げていたTPPを政権奪取後推進に転じた安倍政権は、米国が「やーめた」と放り出したのでもうTPPを諦めざるをえまい。一体全体国会内外で必死に反対を訴えていた人びとの意思や思いなどはどのように総括されればよいのだ。58万円もするゴルフクラブを手土産に駆け付けたって、大富豪のトランプが翻意するとでも安倍は思っていたのだろうか。

またベトナムがここにきて「原発やーめた」と言い出し、日立との契約を白紙に戻すという。誠にご同慶の至りだが、これまた必死に原発輸出の馬鹿さ加減を訴えていた人びとの思いはいかばかりか。喜ばしいことに間違いはないがどこかに「肩透かし」感を否めないのは私だけであろうか。

 
2016年11月28日付NHK

 
◆弛緩しつくした社会に未来があるとどうして思えるのか?

本当に何も学ぶことが出来ない、愚かな人間の集まりだとまた憂鬱な気分になる。救いがたいのは、政治家どもやマスコミどもだけではなく、ああだの、こうだの言いながらも「明日がある」ことが絶対的に保証されているかのごとき「幻想」の中で、日々「勤勉」な日常を送るこの島国の人びとだ。その中にはもちろん私も含まれる。

これほどまでに呆けてしまった、弛緩し尽くした社会に未来があるとどうして思えるのだろうか。私は毎日不思議でならない。「弛緩し尽くした社会」は語弊を招くだろう。決して安楽ではなく、労働に見合った賃金を得ることも出来ない労働者がカツカツの生活をしているのだ。

「弛緩」しているのは市民生活ではなく、敢えて乱暴に言えば「民度」だろう。「弛緩」し「劣化」しつくしているこの国の「民度」は相当深刻な状況にあると、痛感する。「劣化」という言葉自体が、散々使いまわされてそれこそ、ボロボロになっているじゃないか。今年ももう12月だ。冬の訪れは早い。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

7日発売!『紙の爆弾』2017年1月号
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊)
 
『NO NUKES voice』第9号 特集〈いのちの闘い〉

「浪速の歌う巨人」趙博の不可解すぎる裏切りの連続

 
 

  
『反差別と暴力の正体』は私たちの予想を超えて広く読まれている。編纂に関わった者としてはありがたい限りだ。そして予想通りながら読後感の多くに「正直びっくりした」「何か重たい気持ちが残った」が共通している。本書に綴った事実の羅列は、たしかに性悪の作家が敢えて、最悪の終末を用意した小説のようである。

しかしながら事実はそのように進行し、現在も加害者たちは同様の行為を継続しているのだから手に負えない。しかも一部の人間どもはさらに精鋭化しM君や鹿砦社への露骨な敵意を剥き出しにしつつある。

当該人物の名誉毀損攻撃はすべからく保存してあることは言うまでもない。鹿砦社の「言論弾薬庫」には次々と新型兵器が搬入され続けている。このようなことはわれわれの望む手法ではないが、これ以上の攻撃が続くようであれば、小型の迎撃ミサイルの1発くらいは発射せねばならない局面がやって来るかもしれない。

事件の周辺では、どす黒い思惑を持った連中が蠢いている。その中でまた不思議な動きが先日あった。M君に対して、驚くべき〈裏切り〉を行った趙博(通称パギヤン)が知人を介してM君に「会いたい」と打診をしてきたのだ。

仲介を依頼された知人はM君を助ける立場で一貫した発言を続けている方であり『反差別と暴力の正体』に仮名で登場する方だ。謎解きのような気分でツイッターを「ネットパトロール」して頂ければ、読者諸氏にもその書き込みは容易に発見することが可能だろう。ただ膨大な書き込みから当該箇所を見つけるのには骨が折れる作業なので、書き込まれたのは12月1日とだけ、ヒントを差し上げておく。

この書き込みの中で当該の方は「パギやんが謝罪を行ったのは、彼がツイッターの事情がよくわからないまま暴力事件のまとめサイトを作ったことで、ひどいツイートを集めてしまったことで混乱を招いた点について謝罪したのであって、事件への批判について謝罪をしたのではないということです。つまり印象操作です」と書いておられる。しかし事実は違う。「事件への批判について謝罪をしたのではない」は嘘だ。証拠を示そう。下記の趙博による《■李信恵さんへの謝罪文■》をご覧いただきたい。これは本年5月7日に趙博自身が当人のフェイスブックに書き込んだものだ。

この中で趙は、
「5月5日の会談で、私の『確信』はすべて根拠のないことが充分にわかりました。傷つき孤立しているCさん(著者注:M君を指す)を思う余り、私は彼の情報だけを頼りにしてきたのです。しかし、今その誇張と虚偽が判明した以上、私は李信恵さんに謝罪するしかありません(以下略)」
と書いている。

趙博による■李信恵さんへの謝罪文■
趙博による■李信恵さんへの謝罪文■
 
 

  
趙は事件後自ら「事件のことを知りたい」とM君に接近してきて、表面上は親身にM君のことを心配し、M君も趙に信頼をおいていた。しかし、5月初頭に趙は上記にある通り、腰を抜かすような〈手のひら返し〉を行う。この時も趙はM君を自分の事務所に呼び出し、何らかの話をしようと企図していた。過去に支援してもらった恩義を感じていたM君も「男と男の話をして来ようと思います」と趙の誘導に乗りかけていたが、取材班と松岡がそれを思いとどまらせた。当時松岡と趙の間で交わされたのが、下記のやり取りだ。

▼2016年5月6日 18:52 (※趙博から松岡及び複数の人たちに送られたメール)

昨日、李信恵とじっくり話しました。先ず、信義の問題として私が謝罪します。次に、被害者たるM君(著者注:元文ではM君の本名)の誇張と嘘がはっきりしました。今日、彼と会う約束でしたが「精神的にしんどいので日を改めて欲しい」とのことでした。僕は逃げたと判断します。ともあれ、大阪の運動を潰すわけにはいかないので、僕が悪者になります(笑)。李信恵たちとの信頼関係は全然壊れていませんので、ご心配なく

▼2016年5月7日 7:31(※趙博への松岡からのメール)

趙 博 様
拝復 メール拝受いたしました。 人の心の変わりようとはこんなものかと驚くばかりです。残念です。30年余りの付き合いのある私の親友も「わからんなあ」と頭を抱えておりました。 M君は真に趙さんを信頼していたんですよ。一夜でガラッと趙さんの態度が変わり、彼の精神的打撃は察するにあまりあります。何か一夜で趙さんが心変わりするほどの重大なことがあったのでしょうか? M君は直前まで趙さんに会いに行くつもりでしたが、私たちが止めました。彼が逃げたのではなく私たちが逃がしたのです。一昨年の12月、何かあると察し逃げていれば、くだんのリンチ事件は起きなかったわけで、今回も何か起きそうな予感がしましたので、会いに行くのを止めた次第です。特に精神的に参っている中で一人でのこのこ出かけていけば、自らの意に沿わないことにでも従わざるをえなくなりかねないからです。趙さんはどういう意図で彼を呼ばれ何を話されようとしたのでしょうか? 「誇張と嘘」──趙さんはこれまでM君の「誇張と嘘」に騙されていたんですね? また、私たちも彼の「誇張と嘘」に騙されているのでしょうか? 彼の「誇張や嘘」とは具体的にどのようなことでしょうか、教えてくだされば幸いです。 果たしてM君の「誇張と嘘」とはいかなるものか、臭いものに蓋がされることなく、裁判や報道などで、その〈真実〉が明らかになることを願ってやみません。 李信恵さんら加害者3人の謝罪文、事件翌朝の悲惨な写真、録音テープなどもあるのに、M君に「誇張や嘘」があるとは到底思えません。 私もこの歳になると争い事や暴力の匂いがあることから避けたいと思い生きてきたところ、ひょんなことで、この問題に関わるようになりましたが、これだけの証拠もあるのに「誇張や嘘」があると言われると、逆に私は〈真実〉を知りたいと思います。この件に限らず、私の信条として、あくまでも被害者や弱い立場の者の側に立ち、今後も陰に陽にM君をサポートしていく所存です。 趙さんは近々に「謝罪文」を出される由、大きな関心を持って拝読させていただきたいと思っています。 趙さんの更なるご活躍を祈っています!

敬具
5月7日 鹿砦社 松岡利康

その時、趙博に多大の期待をしていたM君のみならずわれわれの驚きと落胆は大きかった。この悔しさは忘れることができない。

5月のGW前後、4月28日に『週刊実話』がM君リンチ事件のことをコラム記事で小さく報じたところ加害者側が『実話』に抗議、『実話』はあえなく「謝罪・訂正文」をそのHP上に出し形勢逆転、機を見るに敏な趙は、それまでの勢いはどこに行ったか、加害者側に寝返った。その後、高島章弁護士や『世に倦む日日』らが、李信恵らの「謝罪文」、辛淑玉文書、そしてリンチ場面の生々しいテープ起こし、リンチ直後のM君の顔写真らを公開、一気に形勢再逆転、さらにくだんの『ヘイトと暴力の連鎖』『反差別と暴力の正体』出版によって形勢はM君側に大きく傾いてきている。そうした情況での、今回の「話し合い」の申し出、いくらなんでも虫が良過ぎるのではないだろうか!? 他のところでも、趙の似たような言動の情報が寄せられているが、風見鶏はやめろと言いたい。

趙博は「浪速の歌う巨人」と自称しているが、一連のコウモリ的行為を表するならば「浪速の謡う虚人」と言われても仕方ないのではないか。どれだけM君の精神を無茶苦茶にすれば気が済むのだ。

われわれ取材班は趙博の裏切りの連続に、たとえようもない腐臭を感じる。

(鹿砦社特別取材班)

在庫僅少『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』
重版出来『ヘイトと暴力の連鎖』!

『反差別と暴力の正体』残部僅少!M君裁判当日に表れた彼らの焦り

 
 

 
好評を頂いている『反差別と暴力の正体』の在庫がついにゼロになった。残りは書店でまだ売れておらず、あなたに買われることを待っている残部少々である。やや自慢のようになるが、増刷をかけなければ『反差別と暴力の正体』は、近く必ずプレミア価格が付与され、ネット上で取引されることになるだろう。

ここでは詳述しないが、直接、間接の「反発」も今回は散発的に見られた(見当違いの指摘がほとんどではあったが)。また11月28日大阪地裁で行われたM君が李信恵氏をはじめとして5氏を訴えた裁判の開廷前に、廊下で開廷を待っていると、被告(反訴原告)の伊藤大介氏がM君に近づき「何を気持ち悪い視線で見てるんだ!」「メンチ切ってるんじゃないよ!」と毒ついてきた(「M君の裁判を支援する会」ツイッターより)のも、追い詰められた彼らの焦りの表れといえよう。

 
2016年11月28日付け「M君の裁判を支援する会」ツイッターより
2016年11月28日付け神原元弁護士ツイッターより

沖縄、高江で抗議行動に参加していたとされる、しばき隊のメンバーが次々に逮捕されている。中には東京で沖縄県警に令状逮捕され、沖縄まで移送されたと言われている人物もいる。

鹿砦社特別取材班は沖縄県警の、この逮捕弾圧を糾弾し、被逮捕者の早期釈放を求める。逮捕された人間がしばき隊の人間であろうが、なかろうが権力の弾圧に与するような姿勢を鹿砦社は断じて取らない。沖縄現地の闘いと連帯し、不当長期勾留が続く山城博治さんの奪還同様に、しばき隊であろうが逮捕されている人々の奪還も求める。

まかりまちがっても「逮捕してくれてお巡りさんありがとう」などといった、社会運動の大原則を踏みにじる言動に鹿砦社は1ミリも与しないし、認めない。しばき隊にも人権があり、権力からの不当弾圧には、正面から抗議し被逮捕者の奪還を戦うべきだと考える。

しかし、ここで考えてほしいのは、鹿砦社の原則的な立場と、しばき隊がいまだに拘る言説の軽薄さの差異である。のりこえネットTVでは現地レポーターとして横川圭希氏などまで登場するようになっているが、横川氏は昨年経産省前で3名が不当逮捕された際、勾留理由開示公判のあと知人たちに「警察の逮捕には全く問題はなかったんだから」、「救援連絡センターがその場面の動画を上げるなって言ってきた。わけわからねぇ」と発言していた。

訳が分かっていないのは横川氏である。有料メルマガを配信し、いつのまにかしばき隊の隊列に加わった横川氏は、いまだに、いい歳をして〈権力対反権力〉の基本的構図すら理解できていないようだ。のりこえTVに出演した横川氏や現地での行動報告者の発言には司会の辛淑玉氏ですら「今何を言っているのか見ている人にはわからないと思うんだけど」と、ムッとして発言の要領の悪さを指摘される一幕もあった。

 
 


◎[参考動画]のりこえねっとTV「-高江特派員報告-とことんノーへイト!」(のりこえねっとTube 2016年11月22日ライブ配信)

相変わらず分かっていないのだ。極々基礎的なことが理解できていない。結果的にそれが沖縄現地の人々の足を引っ張ることに繋がってはいまいか。しばき隊連続逮捕劇が意味するも、それはもう権力はしばき隊が不要になった。いや邪魔ですらあるから「一掃してしまおう」との意思だ。本気になれば権力は遠慮などしない。

数年にわたり警察権力、なかんずく公安警察と懇ろであったしばき隊には、つけが回ってきたということだ。国会前で闘う学生や市民を「あいつら過激派だから逮捕してくださいよ」と警察に懇願した、あの許しがたい大罪が、今警察の翻意によって、しばき隊に襲い掛かっているのだ。彼らは可及的速やかにこれまで展開してきた運動の過ちを反省し、総括すべきだろう。

問題とする社会現象のすべてに「ヘイト」の冠をつけて語ろうとする無理無茶に早く気が付くべきだ。綱領なき(しかし暗黙の病理的体質を持つ)運動は、一度解体をして再構築するしかないだろう。

そうでなければならない理由のカギが『反差別と暴力の正体』には詰め込まれている。残部僅かである。一刻も早く書店へ!

(鹿砦社特別取材班)

『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)

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地獄に堕ちた「AV界の寵児」バッキー栗山にもあった冤罪疑惑

出演強要被害を訴える女性の声を伝えるなどAVを「社会問題」として扱った報道が増えている。そんな中、私の脳裏に蘇ってきたのが、10年余り前に「ガチンコ」の輪姦AVが強姦致傷の容疑で立件されて世を騒がせた「バッキー事件」だ。あの事件の「首謀者」とされるバッキー栗山に「冤罪疑惑」があることを、あなたはご存じだろうか――。

◆地獄に堕ちた「AV界の寵児」の腑に落ちない裁判結果

バッキー栗山こと栗山龍(当時40)は2000年代初頭、AVメーカー「バッキービジュアルプランニング」(以下、バッキー社)を設立。それ以前の経歴は謎めいていたが、アメックスのブラックカードを2枚所有する大金持ちというフレコミで、会長の自分自身が広告塔となって会社を売り出した。当時、男性週刊誌やスポーツ紙では、同社の作品や企画を紹介した記事がすさまじい頻度で掲載されており、栗山はまさに「AV界の寵児」だった。

しかし2004年になり、同社がウリにしていたガチンコ輪姦AVの撮影中、女優が肛門などに重傷を負う事故が発生。それ以降、水責めや強制的な飲酒など、同社の非人道的な女優の扱いが社会問題になり、ついに警察も本格的捜査に乗り出した。そして強姦致傷罪などで起訴され、「首謀者」とされた栗山は07年12月に東京地裁で懲役18年の判決を受ける。こうしてAV界の寵児は地獄に堕ちた。

ただ、それ以前に栗山と会い、言葉を交わしたことがある私は、裁判の結果が腑に落ちないでいる。

栗山の裁判が行われた東京地裁

◆子供のように澄んだ瞳

私が栗山と会ったのは03~04年頃、週刊誌の仕事で同社の「AVの虎」というシリーズ作品の撮影現場を取材した際のことだ。この作品は当時の人気テレビ番組「マネーの虎」をパクったもので、参加者がプレゼンするAVの企画が面白ければ栗山が金を出し、実際にAVを撮らせるという内容だ。正直、作品の詳細はまったく覚えていないが、この時一度会っただけの栗山の印象は今も記憶に鮮烈だ。

「栗山です。よろしくお願いします」

それは、とてもソフトな声だった。栗山は金髪に日焼け顔、華奢な体をホスト風のスーツに包み、見た目こそいかにも怪しげだが、物腰の柔らかい人物だった。名刺交換した時、屈託のない笑顔と子供のように澄んだ瞳には、不覚にもドキリとさせられた。栗山はなんとも言えない人を惹きつける力を持っていた。

この時、もう1つ印象的だったのが、栗山が制作スタッフに演技指導されながら「バッキー社の会長」を演じていたことだ。栗山はこの日、現場で制作スタッフに「こんな感じでいい?」と聞きながら、札束を鷲掴みにしてカメラをにらみつける“決めポーズ”をつくっていたのだが、何もかもスタッフに任せて言われるままに演技していた。私が裁判の結果が腑に落ちないのは、この時の彼の様子をよく覚えているからである。

というのも、裁判で栗山は、「バッキー社には資金を提供していただけで、作品の制作には何ら関与していない」と無実を訴えていた。マスコミはこの主張を歯牙にもかけなかったが、私には、現場で目撃した栗山の様子からすると、裁判での主張通りにバッキー社において、「金は出すが、口は出さない」タイプのオーナーだったとしても何ら不思議はないと思えるのだ。

ネット上には、今もバッキー作品を販売するサイトが存在

◆真っ二つに割れていた関係者たちの証言

しかも、実は裁判では、関係者たちの証言が真っ二つに割れているのである。共犯者とされた制作スタッフたちは、栗山が「首謀者」だったという趣旨の証言を重ねた一方で、バッキー社の営業や内勤の社員たちは「栗山は月に数回出社するだけで、出社しても仕事の話はしなかった」と全面的に栗山のAV制作への関与を否定しているのだ。

どちらの証言が正しいかは、私も正直、現在把握している情報だけでは断定しかねる。しかし、一般的に複数犯の事件では、罪のなすり合いなどで事実関係が歪みがちだ。また、このような組織ぐるみの事件では、警察や検察は組織の中で少しでも地位が高い人間を罪に問いたがるものである。少なくとも、世間の多くの人が思うほどには、栗山の有罪は絶対的ではないと私は思っている。

実は数年前、私は栗山本人に取材したいと思い、バッキー社の後継会社とされるAVメーカーに連絡し、どこかしらの刑務所で服役しているはずの栗山への仲介を依頼したことがある。その時、電話口の社員は「私自身は当時会社にいなかったので、当時から会社にいた人に話をしてみて、何かわかればお返事します」と丁寧な対応だった。しかし結局、返事をもらえずにそれっきりになっている。

実際、どうだったのだろうか――。AVを「社会問題」として扱った報道が増える中、私はあの日の栗山の笑顔や澄んだ瞳を思い出し、ふと立ち止まって考えている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
 
商業出版の限界を超えた問題作!
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾12月号増刊。11月17日発売。定価950円)