日常の中に仕掛けられた地雷──「旅する大日本帝国」の薄気味悪さ

予兆の無い天変地異を避けることは出来ない。でも自然災害ですら、事後にはその発生のメカニズムや原因についての「憶測」が専門家によってまことしやかに語られる。曰く「この気圧配置で平地では竜巻が起こりやすいんです」「この地震はプレート型ではなく極めて浅い断層が動いた。その真上であったため震度が大きくなったのだと思われます」などなど。

◆個人とマスメディア間の不健全な条件反射

自然現象の専門家ではない一般人は「ああそうなのか」と自分が解っているのかどうか、それすら理解できない「識者談話」を聞いたり、目にすることで、その解説がどれほど不確であるか、あるいは語られた内容が空疎であるかに関わらず、一応の「納得」を示すという個人とマスメディア間の不健全な条件反射が出来上がっている。

自然災害が発生すると間をおかずにそのメカニズムや原因、さらには被害状況を知りたくなり身近なマスメディアにアクセスする行為はもはや、人間の反射と決めつけてよいほどに固定化している。

◆「歴史」についての感性や視点は多様である

さて、自然災害とは異なり、人間社会が刻んでいた「歴史」についての感性や視点は多様である。公教育では(世界中どの国でも程度の違いはあれ)その国の「勝者」から眺めた歴史しか教示されることはない。数百年前に民衆が画策した政権打倒の試みや、権力者に対する異議申し立ての実力闘争などは、それが現在の社会に地下水脈として続いていようがいまいが公教育からは、「邪史」として排除される運命にある。

逆に一度は途絶え、敗北したかに見えながら、我慢強く復権の日を虎視眈々と狙っている連中の存在感は増すばかりだ。かつて「覇権」を手にした勢力が表舞台に再登場しようと鼻息を荒くしている様子は、少し斜めから社会を眺めれば毎日、そこここにその証左を見つけることが出来る。

◆京都新聞連載コラム「旅する大日本帝国」という名称の薄気味悪さ

ここに紹介する写真は京都新聞の「地域プラス」欄に週2回ほど連載されている「旅する大日本帝国」というコラムだ。文末に「ラップナウ・コレクション(絵はがきより)」とあることから当時の絵葉書を紹介しながら「大日本帝国」時代に起きた出来事を紹介するのが京都新聞の趣旨だと想像される。

これだ。このコラム名称に私は薄気味悪さを直感した。

注視すべきは一見何の悪意も纏わない振る舞いを装ったこのコラムの題名だ。無謀な戦争に突入していったあの時代が「絵葉書」を読み返すといった、ある種無垢で微笑ましくさえある回顧作業の様に紹介される禍々しさ。これこそが2016年現在の日々を蝕んでいる「かつての勝者」が復権を目指して画策する謀略の一例だと感じるのは私の錯覚だろうか。

無謀な戦争に突入して行き、例えようもない惨劇を招いた「連中」は敗戦後も無傷だった。一部の指導者が戦犯として処刑された以外には、軍国主義指導者の大半、軍需で大儲けした財閥、そして関東大震災の際に「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」との流言飛語に多数の朝鮮人を虐殺した市民たちもついぞ反省することはなかった。「大日本帝国」の大元帥にして現人神であった天皇ヒロヒトの罪が全く問われることなく、急に「神」から「人間宣言」を行い「象徴」として自然死を遂げたことが、この欺瞞に満ちた歴史の全てを総括する。

このコラムの題名とそこで紹介されている記事を目にして、特段何も感じないか、「なぜ今、『旅する明治・大正』ではなくこのコラムの題は『旅する大日本帝国』なのか」との捻くれた疑問を持たなければならないところにまで時代の病が進行している。いつかは来るだろう、私の生きているうちだろうか、死んでからだろうかと案じていた時代は既に始まってしまった。

京都新聞の「旅する大日本帝国」7月27日は「大正と大震災編19避難列車」だ。コラムでは、
「関東大震災は一瞬にして首都圏の姿を変えた。上下水道、電気、ガス、道路、橋、堤防などあらゆる都市機能が壊滅的な打撃を受け、東海道、横須賀、中央、東北、山手、総武など鉄道各線にも影響が出た。しかし、比較的早く応急処置を完了し、運転を再開する路線もあり乗車が可能となった駅では、焼け野原から逃れようと大勢の避難民が押し寄せた(後略)」。

引き続き7月28日は「大正と大震災編20火災旋風の脅威」で、
「関東大震災で最大の犠牲者を出した地として、東京市本所区横網町の陸軍本所被覆廠跡が有名だ。約3万8千人が亡くなり、東京全体の死者約7万の半数以上を占めた(後略)」(写真参照)

「旅する大日本帝国」は絵はがきを題材に時代を振り返っているから、この解説文は京都新聞の記者がどこかで調べて書いたものだろう。

歴史を振り返る方法には多彩な手法や視点があろう。個人が幕末の歴史にのめり込んだり、戦国武将の虜になったりするのは全くの自由であるし、また別の人間が「正史」で描かれることがほとんどない「叛史」に入れ込むのも自由だ。

京都新聞は「旅する大日本帝国」で読者にある強制を強いている。それは明治以降(おそらくは敗戦までの時代を)「大日本帝国」の視点から振り返ることを容認することを読者に押し付けているからだ。

このコラムで、これまであからさまな皇国史観が登場したことはない。しかしあくまでも時代を振り返る題材と視点は「大日本帝国」のそれに限定される。繰り返すが歴史の実証的紹介であればなぜ「旅する明治・大正」であっては不具合であったのか。どうして「旅する大日本帝国」でなければならならなかったのか。その回答は読者諸氏の日常のそこここに地雷のように敷設されている。その数はポケモンの数の比ではないだろう。

◎[参考]京都新聞の関連旧連載記事「絵はがきに見る大日本帝国」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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原爆投下71年──絶望の8・6ヒロシマと8・9ナガサキ

2016年8月6日を迎え、私にはまたしても多くの人びとと共有できないだろう、強い怒りと絶望に支配された。8月6日を迎えるにあたり今年は是非ともなされるべき検証があった。5月27日に広島を訪れたバラク・オバマ米国大統領の行動と、そこで発せられたメッセージだ。

就任直後、オバマは「ノーベル平和賞」を授与される。何の実績もないのに「平和賞」が授けられたオバマは「ノーベル平和賞」初の「先物取引オプション」の対象となった。しかしオバマの受賞式での長ったらしいスピーチの中では、

米中枢同時テロの後、世界は米国のもとに集い、アフガニスタンでの私たちの取り組みを支援し続けている。無分別な攻撃を恐れ、自衛の原則を認識したからだ。同じように、(イラク大統領だった)サダム・フセインがクウェートに侵攻したとき、世界は彼と対決しなければならないことを悟った。それは世界の総意であり、正当な理由のない攻撃をすればどうなるか、万人に向けた明確なメッセージとなった」(注:太文字は筆者)

と、「平和賞受賞スピーチで」戦争を行う言い訳を並べるという、前代未明の「好戦的演説」を行い、会場はスピーチ終了後、授賞式の会場は、つかの間静まり返った。

黒人であるオバマが米国大統領に就任したことを、確かに世界は驚きを持って受け止めた。わずか半世紀と少し前の時代には、黒人と白人の同席すらが許されなかった国で、被抑圧者の黒人から最高指導者が出るのは、米国の歴史が200年余りと比較的短く、良くも悪くも表面上の「変化」(決して本質的な変化ではない)には柔軟に対処できる素地を持っているからだろう。その事は「トランプ」という共和党大統領候補を生み出すのと同根の現象である。

そのオバマ。ノーベル平和賞先物取引オプションで最高のレバレッジが付与された「米国大統領」が5月27日広島を訪問した。平和記念資料館を10分ほど「視察」(通常入館者は館内が混雑していなくとも主要部分を見学するのに最低30分は要する)した後、献花をして、17分に及ぶ「演説」を行った。

ここに17分間の演説を引用するのは読者に退屈を強いることになるので、それは控える。ただ、オバマの演説には「原爆投下の責任」、「原爆投下への謝罪」、「被爆者の苦痛への言及」などは一切なかった。修辞に長けたスピーチライターによって用意された、ボーとして聞いていると、なんだか格調高そうに聞こえて、具体的には何も語らない(その点米国のスピーチライターの腕前は安倍のスピーチライターより数段上だ)17分の演説の感想を私なりに一言でまとめれば、「オバマ、いい加減にしろ」だ。

「反省や謝罪の意は要らないから、とにかく広島に来て!」という何のことやらさっぱりわからない「オバマを広島へ」機運は数年前から散見された。そして彼らの望み通り「一切反省や謝罪を述べない」オバマがやって来た。まず驚いたのは平和記念資料館をたった10分で「掛け抜けた」ことだ。最低でも30分と先に書いたが、多くの外国人観光客は通常1時間以上を見学に費やす。

さらに、私にとっては青天の霹靂の図が展開された。「原爆投下を全く反省しない米国大統領」に被爆者の代表が抱かれたのだ。「加害・被害」、「犯罪・贖罪」、「虐殺・そ殺された者」、これらの言葉の意味はこれでもか、これでもかとねじ曲げられ、「贖罪を行っていない加害者に永遠の被害者が抱かれるの図」が何やら、世紀の美談のように新聞紙面を飾った。加害者と被害者の対話無き「似非和解」。この姿は被爆者が永遠に救済されないことを言外に宣言したおぞましい光景だ。

そしてあろうことか8月6日松井一実広島市長は「ヒロシマ平和宣言」の中で、オバマの広島における演説を引用した。

「今年5月、原爆投下国の現役大統領として初めて広島を訪問したオバマ大統領は、『私自身の国と同様、核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器を持たない勇気を持たなければならない』と訴えました。それは、被爆者の『こんな思いを他の誰にもさせてはならない』という心からの叫びを受け止め、今なお存在し続ける核兵器の廃絶に立ち向かう『情熱』を、米国をはじめ世界の人びとに示すものでした。そして、あの『絶対悪』を許さないという思いがオバマ大統領に届いたことの証しでした」

同じニュースを伝える誌面には広島大学名誉教授、葉佐井博巳さん(85)のコメントが紹介されている。「日本政府も被爆者団体も原爆投下への謝罪を求めず、オバマ氏が広島に来ただけで、和解したかのような歓迎ムードが醸成されたと感じた。『家族や友人を殺された被爆者の怒りを忘れたのか』違和感があった」

葉佐井氏の感覚こそが自然ではないか。オバマが仮に広島訪問で原爆投下への謝罪を述べたのであれば松井市長もスピーチ引用の価値があっただろう。だが、どこに「加害者」と「被害者」の和解があるというのだ。繰り返すがオバマは一言も謝罪をしていないではないか。「あの『絶対悪』を許さないという思いがオバマ大統領に届いたことの証しでした」と松井市長は語ったが、この文章は、巧妙にねじれていて、実は主語がない。あたかも「原爆死者慰霊碑」に刻まれた「安らかに眠って下さい、過ちは繰り返しませぬからから」のように。

間違っている。断じて間違っている。反省と謝罪なきオバマの広島訪問への賛美。その光景を美談に仕立てたがるのが米国メディアであれば、まだ腹の内は解らなくもない。しかし、日本のメディアが揃いも揃って、何故このように卑屈になる必要があるのだ。オバマ広島訪問の茶番を美談に仕立てる「被爆都市」広島市長の感性は犯罪的ですらある。本気であの様子を「和解」や「進歩」の象徴と考えているのか。オバマはノーベル平和賞先物取引オプションだ。要するに似非、疑似餌だ。その疑似餌にこうも安々と騙されて、中には涙を流す人までいる。

広島に来たのだから、せめて人目につかないように布をかけるか、それとは解りにくい容器を準備する程度の配慮があってもよさそうな、「核兵器発射装置」である銀色のスーツケースは、いつも通り常にオバマの至近距離にあったじゃないか。オバマの広島訪問は歴史に「2016年5月27日米国大統領バラク・オバマ広島を訪問」を刻まれるだろう。全くその欺瞞を度外視して。原爆被災の日は年々意味が歪められてゆく。

8月9日午前11時02分──。今日の長崎はどうだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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ATM18億円不正引き出し事件のその後を影野臣直氏と飛松五男氏に聞く!

5月15日、朝の5時すぎから2時間半の短い時間、ATMから偽造クレジットカードで18億6千万円が引き出された事件でつぎつぎと出し子が捕まっている。20日にも、福岡県警は、福岡市東区三苫2丁目、トラック運転手立石啓太容疑者(25)を窃盗などの疑いで逮捕。出し子(引き出し役)の一人とみており、容疑を認めた。すでに逮捕されたのは13人以上。少なくとも600人の出し子が1800台のATMから引きだしたと見られている。

拘留されている出し子は、そろそろ拘留期限が切れていくが「逃がさない」と引きだしを指示した「指示役」やオーダー主と警察からのマークで戦々恐々している。

IT犯罪に詳しい作家、影野臣直氏は語る。
「もちろん出し子がどう動くか、黙秘したとしてもまた気がかわり警察に駆け込まないかはきっちりと『指示役』が監視しています。ですが、この事件はだれが頼んだかわからないようになっているはずですから解明は時間がかかる」
たとえば出し子が「Aさんに頼まれてやりました」と言うとする。A氏は警察に呼ばれるが、「クレジットカードは借金のかたにとられました」とたとえば海外にいる人の名前を出していいわけする。その後を追うのは難しいというわけだ。

出し子のひとりと接触した弁護士は言う。
「拘置所から出るなり、いきなりだれかの追尾が始まるのかと思うとぞっとします、と怯えていました」

弁護士はそれ以上の取材にがんとして口を開かない。

この「ATM引きだし事件」は、今後、暴力団がどうやって金をひねりだすか、というモデルケースになりうる点で警察の注目を浴びる。

「逮捕された出し子に山口組系組員がおり、組の関与が指摘されている。暴力団が、暴力から『頭脳犯罪』にシフトしていくという意味で分岐点となる事件です。もしくは、出し子として動いた組員は捨て石で、もっと巨大な詐欺団体が動いているのかも」(ヤクザ雑誌編集者)

いずれにせよ、出し子を警察がマークする時間は短いとの声もある。

元兵庫県警刑事で、飛松実践犯罪捜査研究所所長の飛松五男氏は言う。
「表向き、釈放された出し子に警察は行動確認をきちんと1ヶ月つけると発表するだろうが、行確など、つけてもせいぜい一週間が関の山でしょう。組織対策課も案件が山積していますし、追尾しても末端からわかることは少ない」

さて、拘留がとけた出し子の一人を、週刊誌がつかまえているようだ。
「余計なことを言わせれば捜査が遅れる。今後、防犯カメラを解析したり、出し子たちの経歴を洗ったりと捜査を慎重に進めないといけない。メディアの人たちは出し子たちの身柄をしつように追わないでほしいね」(警察関係者)

とはいうものの、出し子しか手がかりがない以上、そこからしか事実はたぐれない。神経戦が続いてるようだ。

(伊東北斗)

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相模原障害者殺傷事件──「新出生前診断」の優生思想が差別をつくる

障害者施設で19名が殺された事件が盛んに報道されている。
私が言及する余地もないので、関連して気になったこのニュースを紹介しておこう。

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妊婦の血液から胎児のダウン症などを調べる新出生前診断を受診した人は、検査開始から三年間で3万615人だったとする集計を、各地の病院でつくる研究チームがまとめた。一年目に8千人弱だった受診者は二年目に1万人を超え、三年目は約1万3千人となり、利用が拡大している実態が明らかになった。染色体異常が確定した妊婦の約九割が中絶を選んだ。
(中略)
染色体異常の疑いがある「陽性」と判定されたのは547人。さらにおなかに針を刺す羊水検査に進んで異常が確定したのは417人で、うち94%に当たる394人が人工妊娠中絶を選択した。陽性とされながら、確定診断で異常がなかった「偽陽性」も41人いた。

集計をまとめた昭和大の関沢明彦教授は「検査に伴うカウンセリングの改善など、成果は病院グループで共有している。臨床研究から一般診療に移行するか、今後の在り方を議論すべき段階に来ている」と話した。新出生前診断は、十分に理解しないまま安易に広がると命の選別につながるという指摘もあり、日本医学会が適切なカウンセリング体制があると認定した施設を選び、臨床研究として実施されている。

 <新出生前診断> 妊娠10週以降の早い時期に、妊婦の血液に含まれるDNA断片を解析し、胎児の3種類の染色体異常を高い精度で調べる検査。ダウン症や心臓疾患などを伴う染色体の異常を判定するが、確定診断には羊水検査が必要となる。2013年4月、日本医学会が認定した15の医療機関で臨床研究として始まった。受診できる人は、出産時に35歳以上となる高齢妊娠で、染色体異常のある子どもの妊娠や出産歴などの条件がある。

◎引用元=新出生前診断3万人超 臨床研究3年 染色体異常で中絶394人(東京新聞2016年7月20日)

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ああ、やっぱりそうなったかと少しばかり落胆した。私は「新出生前診断」が開発され、臨床に移される前から、これはとんでもない「優生思想」の産物で、剥き出しの差別ではないかと危惧していた。また「羊水検査」の歴史はそれよりも古いが、母体や胎児への危険があり、かつ妊婦やそのパートナーに「堕胎」の選択を迫ることになることから、かねてより反対の立場だった。

というのは私自身がある若い夫婦から「妊娠したが羊水検査を受けるべきかどうか」という問いを20年程前に投げかけられたことがあり、その機会に一通り自分なりにこの問題については調べて悩むという契機があったからだ。

羊水検査で発見されるのはダウン症を中心とした染色体異常が中心で、胎児が持っている可能性のある疾病のごく一部に過ぎない。しかもダウン症は致命傷ではなく、世間では「障害者」と呼ばれるがそれぞれの個性により、相当程度の差があるものの、多くの人が社会生活を送っている。

目出度く妊娠はしたものの、胎児が「ダウン症」のお子さんであることが判明すれば母親やパートナーが戸惑うことは無理のないことだろう。でも「個性の差」と言い換えることが可能なダウン症のお子さんが生まれたら「不幸」だと考え、その子の将来のためにか(あるいは親が「手間」や「面倒」を煩わしいと思うからか)胎児のうちに「命を絶つ」という選択には納得できない。というのが当時の私の結論であり、その思いは今日まで維持されている。

「羊水検査」より簡便な「新出生前診断」が2013年に導入されてから3万人以上の妊婦が検査を受けたそうだ。病院にもよるが「新出生前診断」は平均20万円ほどで、羊水検査は15万円ほどの費用を要する。

この検査を受けることが出来るのは「出産時に35歳以上となる高齢妊娠で、染色体異常のある子どもの妊娠や出産歴などの条件」があるとされているが、知り合いの産婦人科医に聞いたところ「現場ではそんな厳格に条件を制限してないよ。35歳以下でも検査を受け付けている病院もあるし」とのことだ。

多くの女性が不妊に悩む中、この3年間に「新出生前診断」が行われた結果として、394人の胎児が人工中絶されている。先日の「衝撃的」な事件の被害者は19人だ。人口中絶された胎児の中には「誤診」であった胎児が含まれる可能性も排除できない(紹介した記事中「陽性とされながら、確定診断で異常がなかった『偽陽性』も四十一人いた」と指摘されている通り、専門家の間でもこの検査の精度については議論がある)。

否、ポイントはそこではない。誤診ではなく、ダウン症として生まれてきたらその子は「不幸」なのだろうか。「不幸」と決めつけているのは本人ではなく、直接には「親」や「社会」ではないのか。

人工中絶全体に私は反対の立場ではない。母体の健康状態や妊娠の原因などによっては選択されることのあり得る対処ではあると思う。しかし、「新出生前診断」を受ける対象とされている妊婦やそのパートナーは、「望まない妊娠」をした人ではなく「望まない障害児」が生まれて来ることを懸念する人達や社会ではないだろうか。

敢えて問題提起をしたい。19名の殺人事件は残虐で凄惨なイメージを提供するが、394人の中絶された「胎児」は法に則り、合法的に「生まれて来ることを許されなかった」のだ。だから社会問題化されはしない。数の問題じゃなんだ。耳触りの悪くない「新出生前診断」などを導入するから検査を受ける妊婦が出て来る。そして結果は「堕胎」じゃないか。

私は「新出生前診断」は不要かつ害悪であると考える。生前からの「障害者」に対する偏見が命を奪う。これ以上の差別があるだろうか。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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揺らぐ感性──個人の自我や自由を侵食・誘導・支配する「同調圧力」社会の脅威

命令されても、懇願されてもそうは簡単に動かないものがある。感性や感覚だ。

絵画を目にする、映画を観る、旅行に出て初めての風景に接する、政治的集まりに参加者の一員となる。各々の場面で「気持ち良く」あるいは「好感」を持つか、逆の感情・感覚に支配されるかは他人に命令や指示・懇願されてもどうなるものでもない。

「好きなモノ」は「好き」なのであり「嫌なモノ」は「嫌い」であることは、少々時間をおいて周辺の理由を探し出せば「論理的」、「客観的」に他者への説明が可能となるが、直感的・反射的に感じる「好感・非好感」は得てして論理の外にある。

だから「これを『綺麗』だと思え」、「このシーンに『感動』しろ」、「この景色は『素晴らしい』と感嘆せよ」と命じられてもそれは無茶な要求だ。さらに「この人間を『好き』になれ」、あるいは「この人間を『嘲笑』え」と言われたってそう感じなければ心は動くものではない。美味と感じない食物を「『旨い』と思え」と言われたって(幼少時の躾は例外として)形成された舌の感覚は簡単には調整が出来ない。それが「個性」だろう。

感性・感覚は、各々の成育歴と、独自に持ち合わせる特質、それに教育や情報が加味され形成されるものだ。この精神構造形成過程を変数に置き換えてみる。成育歴を「X」、独自の特質を「Y」、教育や情報を「Z」と仮定する。「X」×「Y」で個性の原型は形作られる。「X」は多様ではあるが、世代により相当程度の共通因子を包含するので社会的態度を同一化させる要因ともなりうる。「Y」は純粋に各個人が別々に持つ遺伝子情報に基づくものだから多様性を拡大する方向へと働く。

そこに「Z」が加味される。「Z」は「Y」と真逆に社会的態度を同一化させること(順社会的行動)を自然に行うことの出来る人間の育成を目指して情報注入や社会的態度の訓練が行われる。「義務教育」はまさにそれに該当する。

初等教育には(私立学校に進学するあるいは「不登校」になるほかは)「選択」の余地はなく、高等教育進学時にようやく何を学ぶかを選び取ることが出来るようになるが、その年齢に至る頃には教育と情報により、本人がそうと気づかなくともかなりの程度の「人格形成」が進んでいる。

これは全員の画一化が既に進行しているという意味では決してない。しかし人格形成における変数の中で「Z」が占める役割はかなり昔からこの島国では大きな力を持ってきたし、近年さらにその拡大を見せている。「Z」は「Y」を研磨するなり、叩き割るなどして「X」との融合の中で「望ましい社会的態度」だけではなく、個の嗜好領域にまで浸透が進んでいる。

画一化の主犯は教育だけではない。「情報」だって充分に個性を削ぎ落す役割を果たしている。何の防備もなしに降り注がれる情報を浴びていれば「何とはなしに今日の連続で明日が来る」、「10年、20年後も今と似たような生活が続く」かの如き錯覚に陥っても不思議ではない。大手メディアが提供する情報は生活不安を煽る因子を極力排除して、あたかも「経済発展、科学技術進歩の向こうには明るい明日」があるかのような文句をつける気さえ萎えさせるような情報流布に余念がない。

そんなことは真っ赤な嘘だ。10年後、20年後に今よりも安寧で幸多い生活などが成熟する、期待できる要因があれば教えてほしい。拙稿の冒頭で「命令されても、懇願されてもそうは簡単に動かないものがある。感性や感覚だ」と書いた。だが実はそれは今日的には不幸にもアイロニーではないかと感じる。

「嫌でも嫌と言えない」、「皆がそうしているのだから和は乱したくない」程度の同調圧力は今に始まったことではなく、いわばこの国のお家芸ともいえる。今年の干支は猿だが「見ざる、聞かざる、言わざる」という完全に「自我」を捨てることの推奨が格言になるようなお国柄である。

薄意味悪いのは教育や情報の成果によって完成させられた「大人」でさえ徐々に「感性や感覚」を自己抑制する傾向を感じてしまうことにある。上司や権力者だけでなく、ちょっと物言いが強い人の前では二の句が継げない(逆に言えば図々しく態度の大きい人間が幅を利かせる)。そして強い物言いにどこかしら違和感を覚えながらも、結局従ってしまう。服従してしまう。

命令されても、懇願されてもそうは簡単に動かないものがある。感性や感覚だ。だがそれすらが揺るぎだしてはいないだろうか。

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無防備「ポケモンGO」ユーザーに忍び寄る歌舞伎町「新手のしのぎ」

 

大流行しているスマホむけ人気ゲーム「ポケモンGO(ゴー)」で遊びながら歩行、もしくは自転車走行中の事故が激増している。

「夢中になってキャラクターをゲットするために歩いている女子のスカート中を盗撮する輩が増えていると報道されているが、この連中をあえて〝おびき寄せて慰謝料をとる〟という新手のしのぎを暴力団関係者が思いついたようです」(実話雑誌ライター)

日中でも深夜でも、キャラクターをゲットするために交通事情や周囲にかまわずふらふらと歩いている若い女性は確かに無防備だ。

「とくに後ろはまったく無防備で、性犯罪者たちがミニスカートの中などを下からスマホで撮影し放題なのは確かです。夏ですし、盗撮する連中が、画面を向ける角度によってはキャラクターを探しているのか、女性の股間を盗撮しているのか見分けにくいのでやっかいです」(警視庁関係者)

さて、この状況を利用して、ヤクザがどう金もうけにつなげるのか。仕込みの美女がミニスカで囮となって町中でスマホを片手に「ポケモンGO」のキャラ探しでうろつく。そこを盗撮する輩を見つけて「この野郎、今、俺の女を盗撮しただろう。スマホ見せてみろ」と〝美人局〟のごとくごつい男が仲間とともに登場。

「そのあと、カラオケボックスなどの〝密室〟にその盗撮野郎を連れ込んで、『もう、会社に訴えてやる』などと泣いている演技をしている囮美女を尻目に、数十万円の賠償金をとるというものです。この一連の流れを30分かからずにスピーディにやるのがポイントです」(同)

新宿の歌舞伎町や町田などでは「70万円まきあげた強者もいる」(都心の組関係者)という話が伝わっている。

「ただし、ヤクザは今、組の名前を出しただけで恐喝になる。そこを逆手にとって、明確に組員がやっているのがわかったら、そうしたしのぎをしている連中に対して、脅しをかけるかも。警察のマークがまだついていないギャングや暴走族集団たちが、ヤクザ相手に『あんたら、せこいことやってんじゃねえよ。警察にチクってやろうか』と逆ネジで口止め料を恐喝する可能性もある」(実話雑誌ライター)

「ポケモンGO」では、夢中になって歩いている人へ自転車でぶつかる「当たり屋」も急増している。開発した連中たちが想像もしないような展開がなされている。

別な意味でモンスターを育てたのは、開発した任天堂ではないだろうか。

(伊東北斗)

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都知事選より「ポケモンGO」で盛り上がる東京の人々

 

7月26日、午後7時すぎの上野広小路交差点、松阪屋前で街宣する、アイドルフェイスの都知事候補、七海ひろこ(幸福実現党)がいた。道行く人の一部が元気いっぱいの美女の声に足を止める。

だが多くは演説にいまひとつ集中せずに「早く終わらないかな」という渋い表情で七海を見つめていた。七海候補は「東京を,ニューヨークを超える超高層都市にして、若い世代でも『安くて、広い家』に住めるようにします」と笑顔いっぱい叫んでいるのに見ている聴衆たちは渋い顔。

OL風の女子が言う。

「この街宣車がとまっているポイントに、『ポケモンGO』のモンスターが数匹いるのですが、近づけないんですよ」

ようやく納得した。22日に配信スタート、モンスターにボールを投げつけることでキャラクターを集めて『ポケモン図鑑』を作り、やがてモンスターどうしバトルさせる目的のゲーム『ポケモンGO』は町を歩いてモンスターをゲットするのがもはや国民的行事。スマホ片手に自転車と歩行者が、あるいは車と歩行者がぶつかる事故などが激増中。七海の街宣車が止まっているポイントは、ちょうど数匹のモンスターが登場したポイントで、『ポケモンGO』ファン目線では邪魔でしょうがなかったというわけか。

 

夜7時30分ごろ、パラつく雨に限界を感じたのか「まったく今日にかぎっては別の場所で演説してほしかったぜ」と40代風サラリーマンがしびれを切らし、スマホをポケットに入れて去っていった。

それでも、「AKB48」にいてもおかしくないルックスのキュート系、七海ひろこは最後まで声を枯らして「24時間、ときめくことができる都市・東京の実現にがんばります」と訴え、その演説そものもを聞きに来た聴衆も満足の拍手を送った。

「なんだか今の時代を象徴する出来事だったねえ。都知事選のPRより、モンスターをゲットするほうがよほどみんな大事なんだろう」(上野のアパレルショップ店員)

都知事選挙も、「ポケモンGO」とコラボして候補をイラスト化したモンスターを街宣スポットでゲットできるなどしたら、もっと都知事選挙も盛り上がるような気も。

「都知事選挙なんて一部の老人しか感心がない。7月31日なんで夏休みの入り口で行楽まっさかり。投票率は40%(舛添都知事が当選した前回は46.14%)なんて事態も心配しています」(都知事選選挙管理関係者)

政策というボールを投げても、聴衆には届かない。

まさに倒れないモンスターこそが、今どきの都知事選の聴衆なのかもしれない。

(伊東北斗)

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三宅洋平と三反園訓──私はなぜ、彼らを信用できないのか?

「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました。とてもチャーミングな方でした。かつ、こちらの率直な言い分を、胆で受け止める人でした。だから最後は、泣いてました。ココカラ…♪ 」

これは先に参議院選挙東京地方区に出馬し、落選した三宅洋平のツイッターだ。なるほどね、と驚きはしない。3年前の参議院選挙で三宅洋平は緑の党から全国比例で出馬し、落選したが落選者の中では最高の176,970票を得ていた。緑の党ではなく、他の党だったら当選していた可能性はある。

◆三宅洋平と山本太郎の大きな違い

そして、3年前の選挙で三宅洋平と選挙事務所を同じ場所に構えていたのが現参議院議員山本太郎だ。選挙事務所では「太郎さん・洋平君」と二人纏めての広報活動に余念がなかったが、私は当時から山本太郎と三宅洋平は全く異なる政治的方向性の人間だと感じていた。それを証明してくれたのが冒頭ご紹介した三宅洋平と安倍昭恵のやりとりだ。

三宅洋平はアイヌの話し合い文化である「チャランケ」をしばしば口にし、演説では「もう、人と人が殺し合う時代は終わりました!」などとしばしば語っていた。そこが山本太郎と全く正反対だった。山本太郎は、奨学金問題、TPP、改憲の危険性などを正面から追求し「今回あなたが自民党に入れた1票は、赤紙になって帰ってくる」と、夢物語ではなく、実際の危機に正面から斬り込んでいた。三宅洋平は「狙われるのであればターゲットは2つあった方がいい」と山本太郎に自身の出馬の意思を持ちかけたらしい。

山本太郎は共同代表を勤める「生活と……」(党名が長いので略)から出馬した高所者の応援より、圧倒的に三宅洋平の選挙に関わりっきりだった。しかし山本太郎には申し訳ないが、三宅洋平はそれほど価値のある「タマ」ではなかったのだ。三宅洋平程度の認識では、当選しても早晩自民党に丸め込まれていただろう。私はこの仮説にかなりの確信を持つ。

◆私が三反園訓=鹿児島県知事を信用できない理由

さて、もう一人目が離せない人物がいる。鹿児島県知事に当選した三反園訓だ。三反園は元テレビ朝日の解説委員だが、80年代は久米宏がキャスターを務めていた「ニュースステーション」の国会担当だった。当時の「ニュースステーション」は久米宏を中心に比較的骨太で、権力監視の役割を相当程度果たしていた。今のテレビニュースとは大違いであった。

が、「国会記者クラブの三反園さーん」と久米宏が呼ぶと、他の局の記者と変わらぬ、これと言った特徴のない凡庸な報告を毎回語るのが三反園であった。そしてなによりも三反園は政治部上がりであるので、自民党の政治家たちと極めて近しい関係で、その人脈から染みついた「与党に甘い」コメントと、緊張感のない表情が「ニュースステーション」の価値を下げていた。要するに三宅洋平同様、私にとっては昔から信用ならない人物だったわけだ。

三反園が鹿児島知事選に出馬するとニュースを聞いた時に、私はてっきり与党候補から出るものだとばかり思っていた。三反園も当初はその腹積もりであったのではないかと推測する。しかし現職の伊藤祐一郎が自公の支持を得て出馬することが明らかになり、野党統一候補として三反園は担がれる。

◆公約=川内原発停止を守ってくれれば何の問題もないのだが……

鹿児島には国内唯一稼働している川内原発がある。知事選は、ご存知の通り熊本地震の壊滅的被害の後、参議院選挙と同日に実施され、三反園は当選する。

彼の公約の中には、

「熊本地震の影響を考慮し、川内原発を停止して、施設の点検と避難計画の見直しを行うとともに、情報発信に取り組み、県民不安解消に努めて参ります」

「原子力問題検討委員会を県庁内に恒久的に設置し、答申された諸問題についての見解をもとに県としての対応を確立する場を設けます」

があるけれども、HPに掲載された6つの公約の中では最後に書かれている。そして知事選挙当選翌日のインタビューでは、この日は報道陣が原発の質問を始めると、「もうちょっと待って下さい。答えられない」と話すにとどまり、各政党への支援要請や支援者へのあいさつ回りに向かうと説明して足早に事務所を出発した。

三反園が政策協定で確約した公約を守ってくれれば何の問題もない。でも私には三反園が「裏切る」のではないかとの疑念を消しきることが出来ない。それは「ニュースステーション」時代に三反園が国会記者会館からのレポートで見せた、あの政権よりのコメントと、敢えて言えば三反園の「顔」からの印象に由来する。

鹿児島をはじめ、全国の人々は三反園知事が「寝返る」ことの内容に厳しく、監視の目を光らせる必要があろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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人気AV女優たちの決起──対マークス社長訴訟で業界の未来絵図は刷新されるか?

人気AV女優の香西咲が同僚とともに「タレントとして勧誘されたのにAVに出演させられた」としてかつての所属事務所「マークス(後にマークスインベストメントと社名変更)」の青木亮社長(40)を相手取って刑事・民事の両面で訴訟を起こす報道がAV業界を震撼。「一歩まちがえば業界が縮小する原因となる」とAV関係者が胃が痛い思いで注目している。

◆1本2、3万円なんてザラ

AVライターは語る。
「本人の意志に反してAV出演を強要されたことが立証されれば、事務所は労働基準法違反に問われる。これがもし判例となれば、AVに女を出演させるには、『本人の意志である確認』『金額条件がある確認」 など二重、三重に事務所サイドは女優志望者に確認せねばならなくなる。となれば、ほかのアダルト業界に人材をとられることになり質が低下する」(AVメーカー)

ことは「女優たちの下克上」ではなく、業界の未来絵図を変えようとしているのだ。つまり虐げられてきた女優たちの「地位改善」の千載一遇の機会だ。

「今のAV女優たちは一本あたりの単価が低くて、1本2、3万円なんてザラ。企画系女優などは、普段はOLや派遣会社をしているが、地方から上京してきて土日に事務所が契約しているマンションに泊まり、デリヘル嬢として客をとるのが通例」(同)

◆事務所社長は元関東連合

さらに、愛人クラブのサイトに登録して「ネットパパ」からお小遣いをもらうという強者女優もいる。

「要するに、稼ごうと思えばいくらでもできるが、女優をやめるのは至難の業。事務所によっては稼ぎの2割しか払わない会社もありますし」(同)

香西咲らが訴訟に踏み切ったのは、事務所社長の青木が元関東連合であり、金をふんだんにもっているから「大枚を使って和解に応じるはず」という計算があるという見方も。

「もともと青木は、最大手のAVプロダクションのバンビ出身で、バンビこそヤクザ系事務所。そうした裏人脈も強い。青木を守るためなら億単位のカンパがあっというまに集まるでしょう」(ヤクザ雑誌デスク)

かくして、さっそく各AVメーカーたちが「女優に法人を作らせて、メーカーと契約する」というウルトラCを悪徳弁護士と考え始めた。

法人どうしで「A社はB社のタレントにAV出演を依頼する。解除する場合は…」などとガチガチの契約をするなら、労働基準法違反を逃れることができる。

◆AV関係業者が生きる道はアジア市場?

「そうしてメーカーたちが女優たちの叛乱に対応に苦慮しているうちに、中国系のAVメーカーが台頭してきました。ピエロやギョクモンエンターテイメントなどがそうですが、中国や台湾、韓国の女優をスカウトたちが捜し始めました。大きくAV界の女優勢力図は変わるでしょう」

たとえばメーカーのDEEPSは、中国まで足をのばしてAV女優志望者を捜している。(タイトルは「楊麗玲デビュー! 本物中国人 大手電子メーカーの箱入り令嬢が好奇心で最初で最後のAV出演!日本上陸3秒で言葉より先にSEX! 婚約者より先に初中出し!」など)。

「女衒」ともいわれたAV関係業者が生きる道を見つける術はこの先あるのか。
たとえば台湾にはかなり日本のAVのニーズがあり、ここを経由して東南アジアに出て行くのだが、台湾政府は著作物とは認めていない立場だ。前とちがいこのルートはあてにならない。街のレンタルショップのAVは激減か? エロ好きの 諸兄には転換期がきている。

(鈴木雅久)

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関西大学最終講義は「受刑者のアイドル」Paix2ミニライブ&トークのサプライズ!

関西大学「人間の尊厳のために」最終回特別授業は
「受刑者のアイドル」Paix2(ぺぺ)のサプライズミニライブ&トークで締めくくりました!

7月15日、関西大学チャレンジ科目に開設された「人間の尊厳のために」の最終講義が行われました。昨年開講され2年間限定の本講義には浅野健一(ジャーナリスト)さん、小出裕章(元京都大学原子炉実験所)さんの両氏、そして私松岡の3人が講師として登壇し、各々専門の立場から学生に問題を訴えかけてきました。

特別授業が始まった

最終講義は、これまで講義が行われていた教室ではなく、階段状のマルチメディアAV大教室に変更されることだけが履修している学生たちには知らされていました。階段状の教室が用意されたのには理由がありました。私が講義で採り上げたPaix2に頼み込んで、特別にミニライブ&トークを行ってもらう“隠し玉”が用意されていたからです。まさに本講義のテーマの「人間の尊厳のために」を体現してきたPaix2の生の歌声と語りを聴いて欲しかったからに他なりません。サプライズのミニライブ&トーク──私も憎いことを考えるでしょう(笑)。

学生たちは何も知らずに教室に集まると担当のS先生から経緯の説明があり、その後私がPaix2を紹介し、引き続きPaix2のミニライブが始まりました。

講義終了後、手伝ってくれた学生らと

学生たちは驚き、あっけに取られていました。しかし日ごろ刑務所でのライブをこなしているPaix2の2人にとって、学生の心を掴むのはたやすいことだったでしょう。最初おとなしく、むしろ圧倒されていた学生の反応も自然に豊かになっていきました。途中、受刑者の娘さんからの手紙を読むところでは涙ぐむ学生も少なからずいました。そして約1時間のPaix2のミニライブ&トークはいったん終了しました。

しかし、なぜか曲目の中に代表曲『元気だせよ』が入っていなかったので、私が「『元気だせよ』はないの?」と言うと、Paix2はここぞとばかり『元気だせよ』を歌い出し、教室は一気に盛り上がりました。

講義終了後に提出されたアンケートでは、Paix2を絶賛する声が圧倒的でした。“生Paix2”の歌声と話を聴くと、これで感動しないほうがおかしいでしょう。Paix2の15年の活動こそ、まさに「人間の尊厳」を体現するものだといえるでしょう。Paix2が全国の刑務所や少年院などを回る「プリズン・コンサート」は現在393回、あと7回で未踏の400回。本年じゅうに達成の予定ということです。

フィギュアスケート世界チャンピオンの宮原知子(みやはら・さとこ)さんも受講してくれました

報道・原発・出版それぞれの視点から観た今日の社会の問題点を衝く「人間の尊厳のために」は華やかに、一応の幕を閉じることになりました。この2年間、本講義をコーディネートされた関西大学文学部のS先生は、
「この科目は何よりも浅野健一さん、小出裕章さん、松岡利康さんという3人の講師の方々のお力があってはじめて成り立ったものであり、また金山晴香さん、谷水麻凜さん、大田恵佳さん、塩山ちはるさん、重山航哉さんという5人のラーニング・アシスタントの学生さんたちが支えてくれたからこそ運営できました。またグループ討論などを交えたアクティブラーニングの手法は学内の教育推進部の新旧のスタッフ(岩崎千晶さん、須長一幸さん、三浦真琴さんら)が一から手ほどきしてくれました。登壇してくださった弁護士の橋本太地さん、『受刑者のアイドル』Paix2さんとマネージャーの片山始さん、いつも励ましてくださった鹿野健一さん、たくさんの来聴者の皆さん、そしてこの講義に参加してくれた300人近い受講生に心から感謝しています。この科目の設置を認めてくれた関西大学と労を厭わず世話をしてくれた事務スタッフにもお礼を申し上げます。この授業の効果はまだ何とも言えません。ただ、即効性はなくとも、受講生たちが社会の問題に直面した時に自ら考え行動する手がかりにしてもらえるよう願っています」
と謙虚に感想を述べておられます。謙虚な先生です。

しかし私から見れば、私はともかく、小出さんや浅野さんらを動かして本講義を実現させたのは、ひとえにS先生の情熱あってのことと思えて仕方がありません。理想家であるS先生の理想とされる講義になったのかどうか、私には分かりませんが、私も、小出さん、浅野さんも、S先生の理想と想いを汲んで一所懸命に取り組みました。S先生が仰る通り、学生たちに即効性があったかどうかも、まだ未知数でしょうが、必ず将来この講義を思い出し、あるいは悩んだ際解決の糸口となるに違いないと確信しています。

私は講義の中で、「人間の尊厳」とか「人権」とか抽象的で耳触りのいい言葉を語る時、<死んだ教条>を排し、<生きた現実>の中で語るように学生諸君に訴えました。また、この講義はきっと、今後の学生生活、あるいは卒業してからも記憶に残る講義になると信じています。そうであれば、私も逮捕・勾留された屈辱的経験を、まさに生き恥を晒して話した意味もあるというものです。 

▼松岡利康(鹿砦社代表)

Paix2『特別限定記念版 逢えたらいいな―プリズン・コンサート300回達成への道のり(DVD付き)』