2007年に第一回大会を実施した東京マラソンが今年も2月28日行われる。10回目大会となる。

1964年東京オリンピックでの都内中心コースのマラソンが実施されて以降、東京の都心では「経済的影響を考えると実施は不可能」と言われ、大阪、名古屋などの大都市が女子マラソンを中心にフルマラソンの大会を活性化させても、長く東京都(あるいは「国」)や陸上関係者は東京都心でのマラソン実施に熱心ではなかった。23区内ではないが青梅マラソンが市民参加型として歴史を持つこともあり、「東京マラソン」は「経済的観点から」長期間現実的なものとして考えられることがなかった。

◆石原都知事時代の布石──ビックレスキュー2000と「三国人」発言

その風向きが変わったのが2003年、当時の石原慎太郎都知事が「東京マラソン実施」構想を発表して以来だった。石原は「経済波及効果、スポーツ観光の振興につながる」ことを理由に「東京マラソン」実現に相当な力を注いだが、日本財団会長(当時)だった曽野綾子や笹川スポーツ財団などが強く後押しをした。

それに先立つこと3年前の2000年9月3日、石原は「東京総合防災訓練(ビックレスキュー2000)」を実施している。この訓練には警察・消防の他に自衛隊が参加し、表向きは災害・緊急時の訓練を装っていたものの、多くの人から「治安維持訓練ではないか」との疑問が呈された。1万余名の参加者のうち7000名を自衛隊員が占め、都心を工装車が走る異様な姿が見られた。パラシュート部隊落下訓練もあった。

1999年から東京都の災害対策担当参与に就任していた元自衛官で好戦派として知られる志方俊之が訓練に参加していたことも「治安維持訓練」疑念を湧き起こさせる理由となった。災害対策の訓練に何故装甲車が必要なのか? パラシュート部隊が災害の際に何の役に立つのか? 直下型地震やそれに付随する災害への対応というが、今から振り返っても東日本大震災で自衛隊が活躍した場面で装甲車やパラシュート部隊などが役割を果たす場面は皆無だった。

「ビックレスキュー2000」の真の目的は、石原自身の口から、それに先立つ同年4月9日、自衛隊練馬駐屯地で語られている。「今日の東京を見ると、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している」「こういった状況で、すごく大きな災害が起きたときには大きな騒擾事件すら想定される」から「こういうときに自衛隊に出動してもらって、災害の救急だけではなく治安の維持も自衛隊の大きな目的として遂行してもらいたい」

つまり災害対策ではなく「治安訓練」もしくは「軍事訓練」を実施したいとするのが石原の本音だった訳だ。上記の発言はその内容もさることながら「三国人」という差別語を差別的な意味で使用したことが大きな批判を撒き越した。

◆「経済の理論」を「治安の理論」が凌駕した「東京マラソン」

話が逸れたようだが、東京マラソンの実施も石原及び日本財団などからは単なるスポーツイベントとしてではなく、治安訓練を兼ねた一種の「演習」と最初から位置付けられていた。石原は前述のように東京マラソン実施の理由に「経済波及効果」を挙げてはいたが、それは端から飾り言葉であり、真の目的は有事(戦争)の際の人口移動や統率・管理のシュミレーションと情報収集にあったのだ。つまり「経済の理論」を「治安の理論」が凌駕した結果産れたのが「東京マラソン」なのだ。

それを裏付けるのが下記のテレビ番組だ。2009年に放送された「ウソかホントかわからないやりすぎ都市伝説スペシャル」で「東京マラソンの裏にある国家機密」が3分余り取り上げられているが、この中ではかなり的を射た指摘がなされている、最後の風水についての言及を除いて(この真偽を私は知らないので)語られていることは全て真実ばかりである。著作権の関係でいつ消去されるかわからないので要点を抽出しておく。


◎[参考動画]東京マラソンの裏にある国家機密【やりすぎ都市伝説】(2009年SP)

・主要幹線道路を7時間も封鎖すると交通がマヒするとの反対意見が開催前には多かった。
・しかし国にはどうしても実施しなければいけない理由があった。マラソンコースを見ればわかる。明らかに都心の中心部で混雑を誘発するコース設定だ(カギ十字、風車型になっている)。その中心は霞が関だ。
・通常のマラソンは給水程度しかないのに、東京マラソンはバナナ、パン、チョコ、白米、みそ汁など食事が用意されていた。
・有事の際の人間がどう移動するかのデータを知りたくて行われているのではないか。その証拠にランナーには「RC」チップを付けることが義務付けられているが、これを付けていると主催者はどの人間がどう動いたか完全に掌握が出来る。人の動きのデータが取れる。
・実際に2008年に東京マラソンが実施された2か月後に国は東京に直下型地震が起きた際の避難シュミレーションを発表した。多くの専門家は「実際に何万人かの人間を動かさないと算出できるはずのないデータだ」と驚いている。

◆「東京オリンピック」並みの嫌悪感

東京マラソンの参加者は2007年第一回大会、申込者が95,044人で参加者は30,870人(出走者)だったが、昨年は申込者が305,734人で参加者は35,797人と参加希望者は年々増加している。運営のために「一般財団法人東京マラソン財団」が2010年に設立されており、この財団は基本財産だけで8億8千万円を保持するマンモス財団だ。フルマラソン参加者は10,800円の参加費用(国内、海外からは12,800円)を参加費として支払うが、それ以外にも多数の協賛スポンサーからの収入もあるだろう。

昨年からは一般ランナーに交じって「ランニングポリス」と呼ばれる警察官が(主催者要請により)走っている。昨年10キロ交代で計64人の警察官が「参加」したと発表されている。

私はマラソンが嫌いではない。でも東京マラソンだけはその出自が元より気持ち悪かったので関心が薄い。否、正直に言えば「治安訓練」に他ならない「東京マラソン」には「東京オリンピック」並みの嫌悪感が消えない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◎「戦中」突入社会──民間船員の予備自衛官化は「徴兵制開始」である
◎間近に迫った日弁連会長選挙──日弁連がネットの「言論の自由」を弾圧か?

反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

天敵のようにこの島国の政府、メディアから看做されている「朝鮮民主主義人民共和国」が、自称「水爆実験」を行ったのは1月6日だった。読売新聞は号外を出し、聞くところによると同日夕刻NHKテレビは7時のニュースを通常の30分から1時間に広げて報道したそうだ。

朝鮮の核実験は過去にもあった。その都度朝鮮のプロパガンダも含めこの島国のメディアはあたかも「明日にも核ミサイルが飛んでくる」かのごとき報道をした。その際に本質的には関係のない「拉致被害者家族」のコメントを添付することを忘れはしなかった。それは今回も同様だ。2001年に小泉首相が電撃訪朝し、結果として拉致被害者の一部が帰国出来て以来、拉致被害者帰国へ向けた日本政府の効果的な働きかけは私が見るところ皆無だ。

「圧力と対話」などという成立しない矛盾を平然と掲げ恥じることなく、多くの国会議員の左胸には青いバッチが見て取れ得る。「拉致被害者」は政争の具に使われている、と察知したかつての「家族会事務局長」蓮池透氏は「家族会」から離れた。弟の薫氏が羽田空港に降り立った時、彼の胸にある金正日バッチを指さし、悲しい時間を忘却するように弟を指弾した蓮池透氏は呪術から解かれたように柔和な表情で、朝鮮との関係や原発問題(彼は福島第一原発3号機に勤務する東電社員であったが定年を待たずに退職している)を語るようになった。

蓮池透氏の態度の変貌にこそ我々は学ぶべきではないか。「信用に値しない」仮想敵国が自国の国民向けに発表した時点で「北朝鮮水爆実験」の号外を出す読売新聞社の価値判断基準はどこにあるのだ。仮想敵国の勝手な言い分ならば少なくとも過去同様の検証があって後の断定でなければ間違いの可能性はないのか。朝鮮は毎日のように韓国との緊張の高まり、戦争の可能性をニュースで流し続けているけども、毎度毎度のプロパガンダを本気で取り合っていればこれまでに何百回南北間で戦争が起きていなければおかしいではないか。

当日私に知人から何通かのメールが来た。「北朝鮮が水爆実験?大丈夫か?」との疑問に私は「今発表されているのは朝鮮本国の言い分だけであり、米軍機が上空で核種の取集を行っているが過去と異なり現在のところ何の核物質も検出されていない。これが核実験の可能性は排除できないが、極端な話単に多量のTNT爆薬を集めての『偽装核実験』の可能性も排除できないと思う」と回答した。

2日とおかずに米国政府は朝鮮が「水爆実験」と発表した事件が「水爆実験」ではなかったとする見解を明らかにする。安倍首相も水爆実験を否定する。で、読売新聞は「号外」の誤報をいったいどのように抗弁したのであろうか。私は読売新聞「程度」のレベルの低い反応をするメディアを軽蔑するので彼らの報道を検証する気すらない。彼らの報道には何の思想も一貫性もない。そのことを恥に思わないのかとだけ聞いてみたいのだ。

常に天皇制に依拠する自民党権力に寄り添いながら、中国、朝鮮を仮想敵国視しながらも、その「虚言」を検証することもなく「号外」として出す。このような行為を日本語で「無知」、「破廉恥」と呼ぶ。

そこで形式ばかり配慮されるのは「拉致被害者」の家族だが、政府は「北朝鮮憎し」の世論喚起のためだけに彼らを利用しつづけているだけで、本気で拉致被害者の帰国を実現する気などさらさらない。しかもその背後に本来は強く意識されるべき日本の朝鮮半島侵略行為という重大な歴史についての配慮など微塵もありはしない。

日本と韓国の間には「日本国と大韓民国の間の基本関係に関する条約」(通称「日韓基本条約」)が1965年に締結されている。戦時(侵略)補償について極めて不平等な「日韓条約」が存在する。「日韓条約」締結を巡っては日本・韓国両国の国民の間で激しい反対運動が展開された。この条約が日本の戦争(侵略)賠償を十分に行うものでなく、条約に盛り込まれた以外の全ての請求権を韓国に放棄させるという「不平等条約」だったからだ。しかしながら不充分であっても一応の補償をしたのは事実ではある。

他方、日本が侵略した当時は1つの国の一部であった朝鮮に対しては、今日に至るまで戦争(侵略)賠償は1円もなされていない。「日韓基本条約」では朝鮮半島における唯一の政府を韓国と決めつけている無茶もあり、「拉致問題」を議論する前提としての「戦後処理」すら終わっていないのが日本と朝鮮の関係だということが、この島国の多数の国民には知られていない。

朝鮮の核開発に私は反対だ。また朝鮮の政治が世襲的独裁体制であることも好感しない。だが、日本政府があたかも「北朝鮮より日本は自由ですよ」と垂れ流すプロパガンダにも大きな嘘が内包されていると感じる。朝鮮での軍事パレードや一連の政府行事に動員される市民は、おそらく「強制」であって拒否する権利などないだろう。

では、正月の「一般参賀」に皇居を訪れる日本人はどうだろうか。強制もされていないのに日の丸を持って「自らの意思」で皇居を訪れ「天皇陛下万歳」を叫ぶ。この姿は明治憲法で「大元帥」(戦争の最高指揮官)として中国侵略、第二次大戦開戦を行った昭和天皇が存命時から一向に変わらない姿だ。

朝鮮の専制は酷かろうが、日本のこの様はどうだ。ドイツでヒットラーやナチスをいまだに有難がり「カギ十字」を振る大衆が居るか。イタリアでムッソリーニの子息を有難がり戦争時代を懐かしむ馬鹿がいるか。「自由」と言いながら朝鮮と何変わらぬ風景を皇居や靖国神社で毎年繰り返している(そこへ向かう大衆の数は増えているという)この島国は朝鮮を笑えるか、批判できるか。 

朝鮮の核実験には言わずもがな反対だが、原発4機を爆発させていながら再稼働に突き進むこの島国の為政者と経済団体の感覚は朝鮮の無茶さと同等だとすら言えまいか。

さて、7日以来大騒ぎの朝鮮による「実質的ミサイル打ち上げ」騒ぎには深く言及する気さえ起らない。理由は既に米国が確認している通り「人工衛星」2つが確認されており、打ち上げられた物体が「ロケット」であることが明らかだからだ。

それを「ミサイル」だと大騒ぎする国際世論、マスコミには「馬鹿だ」と一言だけいっておく。

踊らされてはならない。「馬鹿」どもに。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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2016年のジャパン・カオス──2026年正月に記された日系被曝難民家族の回想記
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反骨の砦に集え!7日発売『紙の爆弾』!

証券会社の個人顧客担当者が忙しくなってきた。好調な推移を見せていた株価の下落と主として利回りの高い外国債の為替差益が大きくマイナスに転じ始めたからだ。

ブラジルの通貨リラや南アフリカの通貨ランドは米ドルと連動しない動きをする通貨として市場関係者の間では知られているが、この10年程円高、日本株低迷の中で個人投資家を対象とする証券会社の営業担当者は積極的にブラジル国債、インド国債などへの投資を勧めてきた。

利回りが高いこれらの国の国債は為替差益で含み損が出ない限り、利息も含めかなりの高収益を生む。だが利回りが高いことは、それだけ「不確定要因」も高いことを意味する。かつてデフォルトを起こしたアルゼンチン国債同様の事態は高利回りの国債商品には付き物のリスクであることは言うまでもない。

円安の中ブラジルのリラが下落し始めた。原油価格は1バーレル30ドル台(数年前の最高時には1バーレル160ドルを超えていた)、連動して天然ガスの価格も暴落している。

◆米大統領選挙の年には世界経済が大きく振動する

今年は米国大領選挙の年でもある。大統領選挙の年には世界経済が大きく振動することは常識といってもいい。

円は現在ドルに対して110円代後半だが、これは輸出産業を優遇するために安倍政権が恣意的に引き起こした「円安」誘導の結果であり、長く続くものではない。このレベルの為替相場が続けば産油国をはじめとする原材料輸出国や米国が必ず圧迫をかけて来るに違いない。現在の極端な原油安もその先で利益確保を狙った投機筋の意図的操作と見て間違いないだろう。

既に米国FRB(連保準備制度)は利上げ実施し、これまで世界各地、とりわけアジアに滞留していた資金を急激に米国本国に引き上げようとしている(追加の利上げは今のところ見送られている)。

そういった基本的な状況を認識しつつも今後の景気予想、株価予想は大きく分かれている。週刊現代は数カ月前まで「株価3万円も!」と株価の増進をひたすら予想する記事を毎号組んでいたが、ここへ来て急に弱気になっている。最近号の広告では「株価1万4千円台も」がメインの記事だ。一方、週刊ポストは「まだまだこれから」派のようだ。「半年後株価2万3千円これだけの根拠」が特集されている。

◆サミット後には急激な円高がやってくる

中国の景気後退が明らかになり、成長率が昨年は6.5(統計によっては6.8)%だったと発表された。だがこの数字は多分に疑わしい。上海株式市場は取引停止銘柄が半数を超え、日本でいう「ストップ安」の際に働く自動取引停止システムが起動しっぱなしだ。これに対して中国の投資家からは厳しい批判が沸き起こっている。売り逃げが出来ないからだ。

要するに世界経済は「中国の成長」という、大前提に立った1つの時代が終焉を迎えているのだ。日本では「バブル」という時代があった。あの時代が日本における「あぶく銭」多量流通の最後のあだ花だったことは今となっては明らかだ。「爆買い」で日本を訪れる中国からの観光客の姿もあと数年で終息するだろう。東アジアの成長は頭打ちで、産業成長の中心はいまだに人口増を続けるベトナムやビルマ、マレーシアに移行していくだろう。

だから、証券会社の営業担当者は忙しいのだ。手持ちの顧客の資産を減らさないように、それでいてある程度の取引を定期的に行わせて手数料収入を確保するために。株式相場は企業の収益や利益を素直に反映するものではない。だから予想が困難なのだが、米国の利上げが決まったからには海外の機関投資家は日本株をどんどん売りに走るだろう。日本ではこれから株価が下がると私は推測している。

日銀は「マイナス金利」を打ち出した。日銀の当座預金にも「手数料」をかけることにより、金融機関が日銀に設ける当座預金の資金を市場へ吐き出させようとの狙いらしい。日銀がここまで必死になるのは「2%」の物価上昇を実現するためだと言う。デフレスパイラルからの脱却(インフレ誘導政策)を掲げた安倍政権の公約実現が目標だそうだ。

しかし、そんなもの意味があるか? 消費税8%への引き上げで末端消費者だけでなく、中小企業も仕入れ値の実質的上昇を食らっている。さらに便乗値上げも相次いで「デフレ」感など財務省や大企業以外感じていないのではないか。昨年は(「連合」を中心とする「労組」の闘いではなく)安倍の要請により経団連は賃上げを受け入れ、今年も引き続き経団連は賃上げを表明している。儲かっているんじゃないのか。大企業は。

そしてサミット後には急激な円高がやってくるだろう。そのタイミングで今も青色吐息のシャープが台湾の「鴻海」に完全に買い叩かれるだろう。かつては世界をリードした液晶のシャープはかくして日本企業ではなくなる。同時期に全国のマクドナルドが閉店するかもしれない。ご本山米国のマクドナルドの経営不振も深刻なようだ。

昨年私がこのコラムでマクドナルドの不調を取り上げて以来、日本マクドナルドの収益はさらに悪化し、米国のマクドナルドも日本マクドナルド株の売却を検討しているとの情報もある。

間もなく株価が下がり、円高が進み、シャープが売られ、マクドナルドの閉店が相次ぐことを予想しておく。

上記はいずれも私には全く関係のないことである。
貧乏でよかった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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戦争へ向かう潮流はついに実質的な「徴兵制」を立ち上がらせ始めた。1月29日、全日本海員組合は記者会見を行い、下記の声明を発表した。

「一昨年からのいわゆる『機動展開構想』に関する一連の報道を受け、全日本海員組合は、民間船員を予備自衛官として活用することに対し断固反対する旨の声明を発し、様々な対応を図ってきた。しかしながら、防衛省は平成28年度予算案に、海上自衛隊の予備自衛官補として『21名』を採用できるよう盛り込んだ。われわれ船員の声を全く無視した施策が政府の中で具体的に進められてきたことは誠に遺憾である」

全日本海員組合の2016年1月29日付け声明

※全文は全日本海員組合のHPを参照

この「事件」は明らかな「徴兵制」あるいは「徴用」が海洋部門で始まったことを示す重大事だ。大々的に報道され、多くの人が知るべきだが私が知る限り毎日新聞がそこそこの紙面を割いて報道している以外に大きな報道は見当たらない。
<船員予備自衛官化>「事実上の徴用」海員組合が反発(毎日新聞 2016年1月29日配信)

既に「構想」や「想定」の範囲を超えて、防衛省は2016年度予算に「21名」の民間人を予備自衛官補として「徴用」する予算を確保しているのである。防衛省は「強制はしない」と言っているそうだが、予算を確保し具体的な人数まで明言して「徴用」を行わないはずがない。

◆「強制をするものではない」は空手形の常套句

政権が無茶な法制や施策を導入しようとする際、強烈な世論の反対に少々の配慮をして「強制をするものではない」は必ず用いられる空手形同様の常套句である。「国家・国旗法」が施行された小渕政権時の1999年にも多くの世論の反対を受けた。
小渕は国会答弁で、
「学校におきまして学習指導要領に基づき、国旗・国歌について児童生徒を指導すべき責務を負っており、学校におけるこのような国旗・国歌の指導は、国民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけることを目的として行われておるものでありまして、子供たちの良心の自由を制約しようというものでないと考えております」
「国旗及び国歌の強制についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております」

と「強制はしないと」明言したが、一度法制化して時間が経過すれば、やがて既成事実化が積み重なり、それに対する反対は「踏みつぶせる」ことを予見していたに違いない。事実、近年「日の丸・君が代」は不可侵の色彩さえ帯び始めた。小渕は翌年首相在任中急逝するが、後世に禍根を残す悪法を成立させた罰があたったのかもしれない。

◆防衛省の海員「徴用」は確実に進められる

「国歌・国旗法」施行の際の「空手形」で明らかなように、防衛省の海員「徴用」が確実に進められることは間違いない。全日本海員組合はその歴史を見てもさほど革新的な組合ではなく、むしろ発足当時から民社党(当時)を支持する系統の組合だ。現在は連合に加盟しているが、過去には「海の日導入運動」を提唱するなど、思想的には右派的な性格も包含する組合のようである。

しかし、この声明は国民と周辺諸国に向けた最大級の警鐘だ。

実質的「徴兵制」が、昨年の戦争推進法案成立後1年も経たず起動する。海洋部門に目を付けるとはさすが、大手広告代理店に政策立案や広報の相談を怠らない安倍政権らしい選択だといえる。不思議な現象だが報道の世界では昔から一般の「事故・事件」でも同様の被害が「陸上」で発生した場合と比べると「海上」は軽視されやすい傾向にある。権力はやがて導入されるであろう奨学金返納の困難者に対する「自衛隊におけるインターンシップ」と称される若者を狙った「徴兵制」には反論が予想されることから、まずは「海洋」での「徴兵制」に着手したのだ。

◆時代はすでに「戦中」

多くの高校生が受験する「一般曹候補生」の志願者数が急減している。2015年度の全国分は前年度と比べて19%減の2万5092人で2012年の半数近くにまで激減している。解釈改憲が行われた2014年も前年比10%減だったが、前年比約20%の落ち込みは過去最大級に際立っている。原因を防衛省は「景気好転で民間企業に流れたため」と言うが、解釈改憲から戦争推進法案成立へ繋がる流れが要因であることはこの数字が示している。同様の志願者減少は第二次湾岸戦争後イラク派兵が本格化した2004年に前年比11%減を記録したことがあり「戦争」が現実化を帯びれば帯びるほど自衛隊の志願者は減ることが明らかになっている。

一方2012年、つまり東日本大震災の翌年には自衛隊志願者は増加している。景気のありようもさることながら、被災者救援の活動に従事する自衛隊の姿を目にして「災害救助」つまり「人の命を救う」仕事に就きたいと考えた若者が増加したことは想像に難くない。

自衛隊が戦争に赴くのは時間の問題だ。安倍自民党政権が続く限りその加速は止まらない。「戦争は嫌だ」と考える若者は自衛隊を志願しない。戦争を全く知らない親だってここまで戦争が現実化すれば子供が自衛隊を志願することに異論を唱えだすだろう。自衛隊は今後も減り続ける人員不足分を「徴兵制」で補う。21世紀型「赤紙」の印刷は既に始まっている。

誇張なく時代は既に「戦中」に入っている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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日本弁護士連合会(日弁連)会長の選挙が行われている。大阪弁護士会所属の中本和平弁護士と東京弁護士会所属の高山俊一弁護士が会長候補に立候補している。

投票は2月5日で現在激しい選挙戦が展開されているが、知人の弁護士から不可思議な情報提供があった。ある弁護士が匿名の自身のブログで片方の候補を応援したところ、日弁連から注意を受けたとのことだ。その方が現在掲載しているブログの内容を引用する。

「さっき、日本弁護士連合会選挙管理委員会の副委員長さんから、わざわざお電話をいただきました。 わたくし、なんかの選挙に出た覚えがないので、ビックリしたのですが、なんと私のブログ記事が日弁連の選挙管理規定に違反するので、削除して欲しいと言うのです。
  問題となったのは以下の記事。2016年1月17日付け記事で、
【悲報】日本弁護士連合会の執行部側○○○○候補が、稲田朋美自民党政調会長に何度も献金していた。というもの。
  取り敢えず非公開にしましたのでリンク切れになっていますし、候補者の名前も匿名にしました。
  今回の日弁連会長選挙にはふたりしか立候補者がいないので、片方の先生を批判すると、もう片方の先生を応援したことになるから選挙運動だ、という話なんです。
  そして、会長選挙管理規定が今回の選挙から「改正」されて、WEB選挙活動が認められるようになってたけど、それは各陣営に1つずつのオフィシャルホームページだけ。
他の人は、選挙対策本部の弁護士も一般会員も、WEB上で1人の特定の候補に有利になる発言は許されないという驚くべき改定がされたというのです。
こんなの、WEB選挙が認められるようになったと言えますか?
逆に、明らかに言論の自由が制限を受けるものです。」
◎「宮武嶺のエブリワンブログ」より

◆「言論の自由」を守るべき日弁連に「言論の自由」感覚が欠如している

本当だろうか。事実を確かめるべく日弁連に電話取材した。応対に出た日弁連総務課の事務担当者(氏名は名乗らなかった)に上記質問をぶつけたところ「選挙管理委員会の副委員長がそう述べたのなら事実でしょう」との回答であった。

おいおい、言論の自由もへったくれも日弁連には無いのか? 通常の国政選挙、地方選挙でも実質的にネット選挙はほぼ全面的に解禁されている。それに対して、時には国を相手に闘う職務にある弁護士が全て所属する「日弁連」がこのように矮小な、選挙運営を行っていては、日本司法における対抗勢力の脆弱性、もしくは偏狭性の現れと感じられても仕方がないであろう。

「言論の自由」を守るべき日弁連に「言論の自由」感覚が欠如している。これは重大かつ深刻な問題と言わざるを得ない。

さらにこのブログ執筆者が、中本弁護士の過去、自民党稲田朋美政調会長に政治献金をしていたことに言及していたが事実であろうか。中本弁護士所属事務所に取材してみた。それによると中本弁護士は「一水会」(鈴木邦男氏が発足させた「一水会」とは同名だが無関係)という大阪の弁護士集団の実力者で、その後輩である稲田朋美氏を応援していたことは事実であるという。

3万円の政治献金も過去確かに行っていた。ただし電話応対に出た弁護士の話では「中本弁護士は憲法などについてはむしろ稲田氏と全く逆の考え方で社民党の福島瑞穂さんや民主党議員との付き合いの方がはるかに深いです」とのことだった。なるほどそう言われればそうか、と騙されそうになるが、この曖昧さこそ現在日本を覆う困難を引き起こした「どっちつかずの態度」なのではないのか。

中本弁護士は安倍のような改憲主義者ではないだろう。しかし「後輩だから」という理由で稲田朋美を応援していた過去があるようでは日弁連の会長を任せようとは思わない。社民、民主を応援しながら小選挙区制を進めたり、2大政党制を進めた大学教員のようなものだ。

私はもちろん弁護士資格など持っていないので自由に発言できる。日弁連会長候補者としての中本氏を私は支持しない。一見リベラル、一見穏当な姿勢の中にこの時代を誘引した細かであっても、過ちを包含している人物のように思えて仕方がない。
一方、高山俊一弁護士の主張全てにおいて中本弁護士よりは余程明白だ。何よりも「反戦」に対する考え方が極めてはっきりしている。私自身の考えに近い。
一般人には関係なさそうではあるが日弁連は本気になれば相当な力を国に対しても発揮しうる団体だ。選挙の推移を注視したい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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◎「先頭で行動する政治学者」山口二郎氏を迎えて前田日明ゼミ第4回開催!

『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン

1月16日西宮市甲子園ノボテルで第4回の「前田日明ゼミ」がゲストに法政大学教授で政治学者の山口二郎氏を迎え80余名の参集のもと行われた。

松岡社長の挨拶に続き、山口氏の講演がはじまった。「おとなしくアカデミズムの世界で仕事するのは終わりかなと考え東京に移った」という山口氏は、この間、先頭に立って行動してきた学者である。

山口二郎氏


「天皇制と、戦争放棄が密接な関係にある憲法、天皇陛下の方が安倍総理より余程真っ当な歴史認識を持っている、無責任な支配の特徴、主観と客観の区別がつかない。かつての自民党には官僚出身の合理的政治家、地べたを這いずるように弱者を助けようとする政治家がいた。政治に蔓延する『反知性』主義、今年は闘いの年、自由は突然奪われるのではなくひたひたと圧迫や弾圧のレベルが上がってくる。民主主義をどう育てるか、私自身も野党結集を画策している。選挙に行かないとどうにもならない。安倍政治が本当にいいかどうか考えたら変わる。やればできる」(山口氏)

山口二郎氏と前田日明氏


休憩をはさんでホストの前田氏との対談に移った。

前田氏が対談で訴えたことは、「小泉政権から始まった偽りのグローバルスタンダード」「安倍政権は経団連株を買っている」「学生の連中も安保法案に対いて頑張った。そこが日本政治を変えて行けるように期待している。次の選挙は18歳から選挙権が与えられるので注目している」ということだった。

これに対して、山口氏も強い危機感で反応した。
「日本はまとまった見解を米国にぶつけたことがない。それが出来る政治家を作り上げていかなければいけない」「選挙で下手をすると二大政党制は無くなってしまう」「政権奪取の意欲が民主党に薄れている」「自信喪失。新しい物を議論すればいいのに、おおさか維新と組みたいとか『集団的自衛家』一部容認など言い出せば国民への訴求はない」

前田氏はさらに「日本の美しさ、理念の破壊が90年代頃から進んでいる。日本人は自国のものでなくとも技術を磨きそれを改良していく美しい連鎖があったが、アメリカの『グローバルスタンダード』で潰されそうだ。そのきっかけを作ったのは小泉純一郎だ」と喝破する。

次いで両氏が最近の動向について意見を交わす。

山口 大人が若者に利用され搾取されている。マスコミの現場の人が頑張って視聴者が応援していく。

前田 はっと気づいたらおかしな時代になっているのではないか。安保法制はどうとも思わないけど憲法9条は絶対守るべきだと思う。自国は自国で守るべきだと。国として自衛をするんだったら自分は賛成。自衛隊法のような不備な法律では戦えない。でも安倍はアーミテージから言われたこを実行しているだけ。

丁々発止の議論がテンポよく行われた。次いで会場からの質問が出された。

質問者「日本へのアメリカの影響力具体的な行動を教えてください」

山口 「90年代から日米安保運用が変化してきた。実務的には既に様々な関係がある上に安保法制を上乗せするのはおかしいと言うのが言いたかったこと。でも米中には絶対戦争しない黙約がある。尖閣も棚上げて数十年前に戻すべきだと思う。これからISの地上戦にアメリカが進む時に日本はどう対処するかを考えておくべき。ISを軍事力で解決できるかという問いがある。下等生物は切っても、切ってもまた増殖する。アメリアの軍事力行使と距離をおいて考えていくべきだ」

前田 「東京オリンピックにおける『テロ』が怖いと思う。報道にも大きな問題があり一概にISが悪いとは言えない。アメリカの誤爆、誤射にも大きな原因がある。安倍首相はそこで何か起こったら『ほらこんな体制では危険だろ』といってさらに強化を図ろうと考えているのではないか」

と多岐にわたる話題展開され、あっという間に終了時間を迎えた。

「ゼミ」終了後はお二人の講師を交えて懇親会が行われた。時あたかも甘利経済再生担当大臣への1200万円の賄賂疑惑が沸き起こり、株価は連日暴落を続けている。
益々の混迷が明らかな2016年。鹿砦社主催の「西宮ゼミ」は今年も多様な価値をお届けし続けることだろう。

次回2月28日(日)には木村草太氏をゲストにお招きし手の開催が決定している。受講ご希望の方は早目のお申し込みを。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎第3回「前田日明ゼミin西宮」──田原総一朗氏を迎えて聴衆120人の大盛況!
◎第1回前田日明ゼミ開催!──新右翼鈴木邦男さんと「真の愛国者」を問う!

『紙の爆弾』!タブーなきラディカル・スキャンダル・マガジン

「今やヤクザは山口組の分裂騒動からというもの、警察のマークがきつく、おいそれとスナックやキャバクラに足を運べなくなった。秋葉原もかつてはヤクザがケツを持っている『JKお散歩』や『JK耳かき』という名の「JK本番」サービスが大流行していたが、警察のチェックがきつく、ヤクザもJKビジネスの後ろにいて、かすりをもうけるのは難しい。その隙間を縫って、韓国マフィアが韓国人のローティーンを使ってJK本番サービスを仕掛けています」(秋葉原の性風俗業者)

秋葉原を深夜11時過ぎに歩いていると「お兄さん、お兄さん、ひとつだけ教えてください。未成年に興味はありますか?」と中年の男性が声をかけてくる。

「ついていくと、上野のラブホテルに連れて行かれ、5万円前後で韓国人の十代前半の女の子がフェラを上手にしてくれる。プラス2万円にて、『ゴムつき本番』になだれ込みます。もちろん地元のヤクザに話は通していますよ」(同)

そして、12月に入って「写真を撮られて十数万円もぼったくられた」という被害者が続出、地元警察も、キャッチに目を光らせ始めた。

「コスプレ喫茶のようなスタイルで『喫茶いかがでしょうか』と声をかけてくる女の子たちも、たどたどしい日本語の場合葉『JKK』、つまり韓国嬢の女子高校生バージョンでのエッチプレイである可能性が高い。まあ日本の風俗サービスがエアポケットに入ったような状態なので、そこにスーッとアングラなJKKサービスが入ってきたのです。午後11時すぎて『未成年に興味ありますか』と聞いてくるキャッチの出没時間は、わずか5、6分にすぎない。警察に通報されて駆けつけても、もう影も形もないというわけです」(同)

秋葉原や上野あたりの繁華街でも新宿の歌舞伎町ばりに「キャッチは違法です。ついていかないようにしましょう」というアナウンスが流れるが、やはり「ローティーン好き」にはたまらない魅力のある街となった。

「まあ山口組の分裂騒動が続くかぎり、韓国風俗は儲かるでしょうね」(同)
秋葉原の2016年が始まった。今年もロリコン好きの男がわんさかと集まりそうだ。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎メールストーカーの心理状態を推察し、挑戦状を出す!
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化
◎国勢調査の裏で跋扈する名簿屋ビジネス──芸能人の個人情報を高値で売買?

月刊『紙の爆弾』2月号!総力特集─安倍政権を支える者たち

山田は、2002年に住んでいた大阪の寝屋川近くで、男の子を監禁する事件を連発している。

「山田容疑者は窃盗、傷害、覚せい剤など前科8犯……山田が住んでいる自治会では、『あの人に近寄らないほうがいい』と囁かれたことがあります。理由は、気にいった大人のOLや中学の男の子を撮影して逃げる、ということが頻繁に起きたからですね」(寝屋川の住民)

このように男女どちらでも愛せる山田容疑者は、刑務所で何を思い、どんな恋人を探していたのだろうか。

過去、服役経験もある、前出の作家の影野氏がさらに解析する。「僕はこの事件を知ったとき、Y・Kという1人の人物を思い出しましたね。Y・Kは13年前、山田同様に刑務所に服役していました」彼は、懐かしそうに服役時代を振り返る。

「当時のY・Kの罪名は、少年への『過失傷害致死』です。彼は性的にはヘテロ(=異姓愛)のようでしたが、大人の女性より幼少女が好きで、中性的な少年も彼の性の対象となりました。しかも、幼児童に対しての虐待癖があるため、このときの懲役も少年を縛って窒息死させたものだったのです。Y・Kは12才より類犯に類犯を重ね、36才(服役中)に至るまでの人生のほとんどが塀の中でした。服役中も、そのころ爆発的人気だった『モーニング娘』の写真集を買って『昨日は燃えたよ』などと、自慰行為を自慢するかのように囁いてきたのが印象に残っています」

Y・Kは、大人になりきらない少年少女を愛すバイセクシャルだったようだ。

「Y・Kは大人のオンナには、まったく興味がないようでした。少女か、いまだ男になりきっていない中性的な少年が性の対象だといってました。今回の寝屋川の事件と、どことなく似てませんか」

実際、Y・Kはどんな男だったのか。その風貌や、受刑生活を影野氏に訊いてみた。
「そうですね。Y・Kはガリガリに痩せ細り、腹には胃潰瘍の手術痕が生々しい。なんとも、不気味な男でした。同性愛者でもあると認定された彼は、夜間独居での生活を余儀なくされていました。1人で舎房に還えるとき、ニヤニヤと笑う顔が異常性愛者特有のように思えましたね。刑務所で罪を償うという状況下であれば、山田も刑務所で手紙だけが唯一の心のよりどころであり、同時に名前をロンダリングして出所したときに暮らしやすくするつもりだったのかもしれません」

世間を震撼させた山田浩二容疑者が、獄中結婚や養子縁組による「名前と過去の犯罪歴のロンダリング」をしていた形跡が明らかになる。

同時に、なぜ中学1年生が連日、夜中に遊び歩いているかについて、社会評論家や教育評論家が侃々諤々の議論を重ねており、この事件がきっかけで「寝屋川近郊では、大人たちが防犯パトロールを強化して、子供の夜遊びを注意する体制ができた」きっかけができたという。

大阪の警察関係者が語ってくれた。
「この事件のポイントは、中学生たちが山田の誘いに簡単に乗ってしまったこと。つまり、まったく無警戒に変質者が中学生に声をかけることができたという事実に焦点を当てて事件を考え直さなければいけない」

いっぽうで、「結婚をして、名前を変える」とすぐに社会に「潜伏」できるというシステムも問題なのではないだろうか。

「そうした意味では、マイナンバー制度がもしかして第二の山田の登場を防ぐかもしれません。名前を変えてもナンバーで犯罪歴がわかりますからね。だとしても亡くなった中学生にとっては、制度の確立が遅すぎましたけどね」(同)

今もなお、中学生たちの死体遺棄現場には花束が山のように置かれている。最後に、山田の足取りを追った影野氏が感慨深げに語る。

「寝屋川の現場に行きましたが、犯人の山田が辿ったであろう道を歩くたびに、感慨にふけったものです。山田は何を思い、何がしたかったのだろうか。ただ、殺害目的のためだけに、2人を連れまわしたのだろうかと。そして、山田は遺体遺棄した日に、養父と何を語ったのだろうか。今生の別れとでも思ったのだろうか。裏切っていると分かっていても、自らの欲望を抑圧することができない山田容疑者も、私が刑務所で出会った受刑者と同じで、更生の道は難しいのかもしれません」

投稿された手記には、「今まで自分は32年間の人生の中で、たくさんの人の期待を裏切ってきました」と綴っている。

このとき書いた殊勝な手記は、彼の本心だったのだろうか。現在、山田は『完全黙秘』のため、『接見禁止』(=面会、読書、手紙の初受信などのすべてが禁止される)を余儀なくされている。だが、裁判が進み、事件の概要が明らかにされたとき、山田容疑者が何を語るか注目したい。(了)

寝屋川中一男女殺害事件容疑者山田浩二が手記を投稿していた受刑者の同人雑誌『獄同塾通信』(現『獄同塾友会』)

(小林俊之+影野臣直) ※取材協力『獄同塾友会』

◎忘れられた衝撃事件の真相──寝屋川中1男女殺害事件容疑者の意外な手記(上)

◎小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

1月6日付の本コラムでハイセーヤスダ氏がメールストーカーに対して気炎を上げている。ストーカーがどのような人物かは伺う術もないが、ハイセーヤスダ氏を軽く見ない方がいいことだけは警告しておこう。

私はこれでも腕っぷしには自信があり、少々のストリートファイトでかすり傷一つ負ったことはないけれども、ハイセーヤスダ氏と一戦交えようとは思わない。彼の130キロはありそうな肉体と鍛え上げられた全身を覆う筋肉は、多少格闘技を齧ったことのある人間なら直ぐに察知できる。そして厄介なことに彼の筋肉は打撃戦だけではなく、寝技になっても必ず持久力を発揮する弾力も兼ね備えている。

だから私はかすり傷を負うかもしれない危険を冒そうとは思わない。

◆SNSヘビーユーザーたちが陥る言説と心性の劣化

ハイセーヤスダ氏の肉体はともかく、彼の論考には私も賛同する部分がある。スマートフォンや携帯電話、SNSへの言及の件である。「スマートフォンを使うと鬱になる」という説は初耳だが、不思議には感じない。またFacebookやTwitterに強い習慣性があることはそのヘビーユーザーの没頭振りを見れば明らかだ。特定の空間でしか通用しない言語や理屈から、独自のルールは私自身が最も忌み嫌うものだ。

よって最低限の情報収集以外に私はSNSを覗くことはしないし、ましてや自分が利用することなどない。日本ではmixiというサービスがこれらに先行する形で利用者を広げたが、日記風に自分を語ること、自分の趣味や考えを展開するこのサービスには当初「招待制」だったので、今日に至るも内容をつぶさに検証したことはない。しかし引用された文章などを読むにつけ利用者の思考、趣味、同傾向の人間との結びつきなどが、その気になれば管理運営者によって全て網羅的に掌握されるシステムであることがわかる。

この特性はTwitterやFacebookでも同様だ。利用方法次第では商売上の広告として無料で利用できたり、イベントや集会の告知に利便性があることは理解できる。だから利益追求のためには使い方次第で便利なサービスである。しかしながら個人がその瞬時の思いや感情、意見を発表する場としては相当な危険と落とし穴を備えているのがTwitterやFacebookだと心しておいた方がいいだろう。

その危険性の第一は前述の通り「強い習慣性」、さらに言えば「依存性」である。冗談ではなくニコチン中毒の比ではない。Twitterで段々フォロワーやフォローが増えてくるとスマートフォンや携帯電話で利用しているユーザーは膨大な書き込みへの反応が半ば強制的に要求されてくる。反応しないと「あの人冷たい」とか「あの人最近アクティブではない」とか思われるのではないかという潜在的な脅迫観念が湧いてくるので、取り立てて書きたいことが無くとも「ああ疲れた」とでもとりあえず存在を示しておかなければいけないし、顔も姿も知らないけれどもSNS上で懇意にしてくれる人々への好意を持続性するためにはリツイートを忘れてはならない。

かくして、SNS利用者が持つ24時間の中で相当数の物理的具体的な時間がSNSへと強制的に割かれて行き、さらに「何を書こうか」、「誰々には暫く連絡していないなぁ」と頭の中で気にしたり思案する時間を考えれば、相当程度「SNSに支配」されていると決めつけても過言ではない状態に陥る。

そして、そのようなヘビーユーザーは時としてSNSと実際生活上の人間関係の重要さを測りかねるようになり、ついには日常生活において対人関係に支障を来たす。

畳みかけるように恐ろしく不幸なことはユーザーが書き込んだメッセージやフォロー、フォロワーの関係は管理運営会社が全て吸い上げて、その人の人物像のかなりの骨格まで明らかにしうるほど、知らない間に「裸の状態」で踊らされてしまっていることだ。そしてそのことに気が付いてSNSを止めようとしても、止めてももう遅い。全ての情報を削除しアカウントを閉鎖しても管理運営会社には全ての情報が残る。

◆「交換日記」の時代は健全だった

むかし、「交換日記」という牧歌的なお遊びがあった(今もあるのだろうか)。友人同士(女の子に多かったように思う)で自分の日記を書き、次の日には友達(だけ)に渡し友人が日記を書く。また次の日は自分にノートが戻ってきて、つらつら日記を書く。ノートはもちろん手渡しで、日記の内容も交換している友人間だけの「秘密事項」が基本ルールであったと思う。ちょっと「いやらしいな」と当時は好感しなかったけれども、「顕名」で「手渡し」の交換日記は今考えればSNSよりもあらゆる面において余程健全と言える。

Twitter、Facebook、LINE、さらに言えば(私も利用しているけれども)電子メールなどは多少の違いはあれ前述の通りあなたを「真っ裸」にする危険性があるツールであることは認識しておいた方がよいだろう。「ただほど高いものはない」の典型と言ってもよいかも知れない。

◆一点だけハイセーヤスダ氏の誤解を招くコラムに反論する

最後にハイセーヤスダ氏の以下の部分には反論する。

「君が敵にまわしたのは僕だけじゃなくて『鹿砦社』全体だ。右翼にも左翼にも縦横無尽に人脈があり、ヤクザにも警察にも通じている鹿砦社と君と、どちらが勝負になるのか決着をつけようじゃないか」
穏便かつ平和主義の鹿砦社をこのように誤解させるような記述をしてはならない。「右翼にも左翼にも縦横無尽に人脈があり、ヤクザにも警察にも通じている」などとの表現は「普通の人」に大いなる誤解を生む恐れがある。しかもこの表現では鹿砦社関係者が総出でハイセーヤスダ氏の私戦に加担すると誤解される。

だから、私なりに当該部分を書き直す。

「貴殿が何らかの誤解で悪意を抱いていると思れる対象は私個人のみなならず、これまで左右の思想を分け隔てなく紹介し、出版の実績もある出版社でもあります。また同社は所謂『反社会的勢力』とされる人々についての論考や取材も積極的に行ううとともに、適切な距離を取りながら警察、検察といった国家の権力機関も研究し、また必要があれば情報収集のためには接触も辞さない出版社であると申し添えます」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎2016年のジャパン・カオス──2026年正月に記された日系被曝難民家族の回想記
◎負け続けた2015年──「普通の人」たちが生み出した絶望と病理の行方
◎2015年日本の現実──日本に戦争がやってくる

月刊『紙の爆弾』2月号!総力特集─安倍政権を支える者たち

昨年8月、大阪の寝屋川市で中学1年生の平田奈津美さん(13)、星野凌斗(りょうと)くん(12)の2人が殺害され、遺体で見つかった事件は衝撃的だった。ちょうどお盆にあたる2015年8月12日に、平田さんと星野くんが行方不明となり、周囲は騒然とした。調べから、2人が寝屋川のコンビニに一緒にいたことが判明。お互い行動を共にしていたと推測された。だが、翌13日の深夜には高槻市の物流センターの駐車場で、粘着テープにまかれた平田さんが遺体で発見され事件は進展した。そして、事件発生から8日後の21日に、近くに住む山田浩二(45)が容疑者として逮捕された。

その後、残念ながら星野くんも、大阪府柏原の山林で遺体として発見されている。大阪地検は山田浩二容疑者を、平田さんに対する殺人罪で起訴した。平田さんの死体遺棄容疑については、遺棄した時点で平田さんが死亡していたことをさらに詳しく立証する必要があると判断し、現在(2015年12月1日)は処分保留としている。

前科もあり、出所後は福島原発で除染作業をしていたこともあるという、契約作業員・山田浩二容疑者の闇は深い。中学時代、窃盗、傷害などさまざまな犯罪に手を染めていた山田は、過去には覚醒剤の売人などの前科もあるという。

しかも服役中に何度も名前を変えた山田(金、渡利、柴原、岸本)は、塀の中からの『手紙』により女性との交際を求めていた節がうかがえる。刑務所事情に詳しく、獄中の受刑者の更生と社会復帰を支援する同人雑誌『獄同塾友会』の編集長を務めている作家の影野臣直氏が語る。影野氏もこの事件に興味をもち、現場への取材などを敢行している。

寝屋川中一男女殺害事件容疑者山田浩二が手記を投稿していた受刑者の同人雑誌『獄同塾通信』(現『獄同塾友会』)

「なぜなら、山田は少なくとも3度、『獄同塾友会』に投稿してきます。といっても、12年前(2003年)に刑務所内での同人誌としては異例の2000部もの発行部数を誇った、塾友会の前身である『獄同塾通信』でのことですがね。投稿のたびに、彼は名前を渡利だったり岸本だったり改姓していますが、明らかに最初の投稿で、女性や同じ境遇にいる方たちとの文通を求めているように思えます」

山田の手記は獄同塾通信の15号(2003年6月15日発行)、16号(同年9月15日発行)、17号(同年12月15日発行)に掲載されている。15号では渡利浩二で、16、17号では岸本浩二と改名している。なぜ、名前が頻繁に変わったのだろう。

「結婚や養子縁組によって名前や本籍地を変えれば、前科がいくつあってもブラックな履歴は残らないといわれています。だから、ローンなども組めるようです。まぁ、山田の場合は車で移動するので名前や住所などを変えていなければ、交通違反などで捕まったときに面倒なことになります。そのため、薬物で逮捕された履歴を消さなくてはならない。違反だけでなくとも、警察に職質されたとき、クスリの前科がある者はすぐ尿検査を促されます。そうしたことを避けたかったのではないでしょうか」(前出・影野氏)

影野氏が指摘した手記は、初代編集長を務めていた大場知子編集長の時代に投稿されたものだ。

たとえば『渡利浩二名義』の獄同塾通信15号のタイトルは、『未だ見ぬ悠紀へ』とあり、こんなことが書かれている。

「起訴事件が5件有りなので5~6年と少しを務めることになりそうです(涙)。考えただけでゾッとしますが、今は自分なりに反省しています腹を括っています。
……(中略)……
還暦を過ぎた両親には、少し遅くなったけど親孝行をしてやりたい、するなら今しかないですから。また、1日も早く運命の女性と出会い結ばれて、遠いどこかで『早よ、生んでくれやぁ!』と叫んでいる未だ見ぬ子供をこの世に誕生させてやりたいです。これでも、子供の名前は決めているんです。……以下、省略」

影野氏が続ける。
「もちろん、手紙の原本などは残っていないが、本文中では贖罪の箇所が多くみられます。文面は普通の青年のそれであり、中学生を誘い込んで殺すような残虐性は本文中からは見いだせません。むしろ、結婚願望というか、子をなして普通の生活への憧憬を感じますね」(続く)

(小林俊之+影野臣直)? ※取材協力『獄同塾友会』

◎小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

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